説明

マイクロチップ送液システム

【課題】反応効率および検出精度の高いマイクロチップ送液システムを提供すること。
【解決手段】特定の抗原と反応する抗体が固定された反応場を有する微細流路と、前記特定の抗原を含む検体溶液を送液する送液ポンプと、を少なくとも備え、前記送液ポンプが検体溶液を送液することにより、検体溶液が微細流路の反応場を繰り返し通過するように構成されたマイクロチップ送液システムであって、前記送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minの範囲となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップ送液システムに関し、詳しくは、抗原抗体反応を利用した生体物質の検査・分析などに好適に用いられるマイクロチップ送液システムに関する。
【0002】
従来より、極微少な物質の検出を行う場合において、物質の物理的現象を応用することでこのような物質の検出を可能とした様々な検体検出装置が用いられている。
【0003】
このような検体検出装置の一つとしては、ナノメートルレベルなどの微細領域中で電子と光とが共鳴することにより、高い光出力を得る現象(表面プラズモン共鳴(SPR;Surface Plasmon Resonance)現象)を応用し、例えば生体内の極微少なアナライトの検出を行うようにした表面プラズモン共鳴装置(以下SPR装置とする)が挙げられる。
【0004】
また、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を応用した表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS;Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づき、SPR装置よりもさらに高精度にアナライト検出を行えるようにした表面プラズモン増強蛍光分光測定装置(以下、SPFS装置とする)も、このような検体検出装置の一つである。
【0005】
ところで、上述のような検体検出装置では、検出対象となるアナライト(抗原)を含有してなる検体溶液を予め用意しておき、これを微細流路に送液することで、微細流路内に設けられた反応場に固定されている抗体でアナライト(抗原)を補足するようになっており、通常このような検体検出装置には、微細流路内に検体溶液を送液するためのマイクロチップ送液システムが備えられている。
【0006】
このようなマイクロチップ送液システムとしては、検体溶液が一回だけ反応場を通過するワンパス型と呼ばれるものの他に、検体溶液を循環させて繰り返し反応場を通過させる循環型と呼ばれるもの(図9を参照のこと)や、検体溶液を往復させて繰り返し反応場を通過させる往復型と呼ばれるもの(図10を参照のこと)がある。
【0007】
図9に示した循環型のマイクロチップ送液システム100では、微細流路102の入口孔106と出口孔108とに、それぞれ入口側流通路110および出口側流通路112が接続されており、これら入口側流通路110および出口側流通路112は、循環送液ポンプ114と接続されている。
【0008】
そして循環送液ポンプ114は、検体溶液116を収容した検体溶液収容器118から検体溶液116を吸引し、この検体溶液116を入口側流通路110、微細流路102、出口側流通路112の順で循環させ、検体溶液116を繰り返し反応場104の上を通過させることで、検体溶液116が少量であっても、反応場104で所望量のアナライトを補足することができるようになっている(例えば特許文献1,2参照のこと)。
【0009】
また、図10に示した往復型のマイクロチップ送液システム200では、微細流路202の入口孔206と出口孔208とに、それぞれ入口側流通路210および出口側流通路212が設けられており、入口側流通路210には往復送液ポンプ214が接続されている。また、往復送液ポンプ214は、検体溶液216を収容した検体溶液収容器218と接続されている。
【0010】
そして、往復送液ポンプ214を作動させることで、検体溶液収容器218から吸引された検体溶液216が、入口側流通路210、微細流路202、出口側流通路212の順に送液されるようになっている。
【0011】
さらにこの往復送液ポンプ214は、検体溶液216の送液方向を一方から他方、他方から一方へと往復動させることができるようになっており、これにより、検体溶液216を今度は出口側流通路212、微細流路202、入口側流通路210の順に送液し、繰り返し反応場204の上を通過させることで、検体溶液216が少量であっても、反応場204に所望量のアナライトが補足されるようになっている(例えば特許文献3,4参照のこと)。
【0012】
なお、上述した従来のマイクロチップ送液システム100,200は、その微細流路102,202の流路断面が略矩形状をなしており、その流路幅は約0.5mm〜3mm、その流路高は約50μm〜500μmに形成されている。また、その微細流路に送液される検体溶液の流量は、おおむね約1μl/min〜100μl/minの範囲であり、送液量が多いものでも500μl/min程度以下である。このように従来のマイクロチップ送液システムにおいて、微細流路に送液される検体溶液の流量が多くても500μl/min程度以下の低流量域で送液するように構成されているのは、後に詳述するように、流量を小さくした方が流速も小さくなり、検体溶液が反応場をゆっくりと通過するため、検体溶液が反応場を通過する際の反応効率が高くなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−163259号公報
【特許文献2】特開2006−242912号公報
【特許文献3】特開2005−134372号公報
【特許文献4】特開2006−90985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した従来のマイクロチップ送液システムは、反応効率が十分に高いものとは言えず、更なる反応効率の向上が望まれている。
【0015】
また、上述した従来のマイクロチップ送液システムでは、検出されるアナライトの反応量に個体バラツキが生ずる場合がある。すなわち、同一仕様の2つのマイクロチップ送液システムを同一の条件で使用した場合であっても、検出されるアナライトの反応量が異なる場合がある。この反応量の個体間のバラツキは、マイクロチップ送液システムの検出精度を意味するものであり、更なる検出精度の向上が望まれている。
【0016】
このような状況の下、本出願人が鋭意検討した結果、循環型や往復型と呼ばれるマイクロチップ送液システムにおいて、従来は用いられていなかった高流量域で送液するように構成することで、反応効率が向上するとともに、検出されるアナライトの反応量に個体間のバラツキが生ずるのを抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述したような従来技術の課題を解決するために発明されたものであって、
本発明のマイクロチップ送液システムは、
特定の抗原と反応する抗体が固定された反応場を有する微細流路と、
前記特定の抗原を含む検体溶液を送液する送液ポンプと、を少なくとも備え、
前記送液ポンプが検体溶液を送液することにより、検体溶液が微細流路の反応場を繰り返し通過するように構成されたマイクロチップ送液システムであって、
前記送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minの範囲であることを特徴とする。
【0018】
このように構成することによって、送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の範囲とすることで、反応効率を向上させることができる。
【0019】
また、同一仕様のマイクロチップ送液システムにおいて、抗体に補足されるアナライト(抗原)の反応量に個体間のバラツキが生ずるのを抑制することができ、検出精度を向上させることができる。
【0020】
上記発明において、本発明のマイクロチップ送液システムは、
前記微細流路の反応場を通過した検体溶液を一時的に貯留するとともに、その貯留した検体溶液が攪拌されるように構成された、前記微細流路と接続する混合部を備えている。
【0021】
このような混合部を備えていることにより、検体溶液が微細流路の反応場を繰り返し通過するように構成された、いわゆる循環型マイクロチップ送液システム及び往復型マイクロチップ送液システムにおいて、反応効率を低下させることなく、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の検体溶液を繰り返し送液させることができる。
【0022】
また、上記発明において、本発明のマイクロチップ送液システムは、
前記微細流路の流路断面が矩形状をなしており、
その流路幅が0.5mm〜3mmの範囲であり、その流路高が50μm〜500μmの範囲で形成されていることが望ましい。
【0023】
なお、微細流路の流路断面における「矩形状」とは、完全な矩形状である必要は必ずしもなく、流路断面の全体として実質的に矩形状であると評価される形状であればよい。したがって、例えば角部をテーパー状やR状にしたものや、辺部の全体または一部が僅かに凹凸状に形成されているものもであっても、上記の「矩形状」に含まれるものである。
【0024】
このように構成されていれば、送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の範囲とすることで、反応効率を向上させることができるとともに、検出精度を向上させることができる本発明のマイクロチップ送液システムの特徴がより好適に発揮される。
また、送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が5,000μl/min〜50,000μl/minの範囲であれば、このような本発明の効果がより好適に発揮されるため好ましい。
【0025】
また、本発明の検体検出装置は、
上述したいずれかのマイクロチップ送液システムを備えている。
【0026】
このように構成することにより、従来のマイクロチップ送液システムを備えた検体検出装置と比べて反応効率が向上するとともに、個体間のバラツキの小さい高精度の検体検出装置とすることができる。
【0027】
上記において、
前記検体検出装置が、
表面プラズモン共鳴装置(SPR装置)または表面プラズモン増強蛍光分光測定装置(SPFS装置)であることが望ましい。
【0028】
このように、上述した検体検出装置がSPR装置またはSPFS装置であれば、特に極微小なアナライトの検出装置として好適であり、従来のマイクロチップ送液システムを備えたSPR装置またはSPFS装置と比べて反応効率が向上するとともに、個体間のバラツキの小さい高精度のSPR装置またはSPFS装置とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、循環型や往復型と呼ばれるような、検体溶液が微細流路の反応場を繰り返し通過するように構成されたマイクロチップ送液システムにおいて、送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の範囲であるため、反応効率が向上するとともに、検出されるアナライトの反応量の個体間のバラツキが小さい高精度のマイクロチップ送液システム及びこれを備えた高精度の検体検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明のマイクロチップ送液システムを説明するための模式図である。
【図2】図2は、本発明のマイクロチップ送液システムにおける検体溶液の流れを説明するための模式図である。
【図3】図3は、本発明のマイクロチップ送液システムにおける検体溶液の流れを説明するための模式図である。
【図4】図4は、微細流路における検体溶液の流速と、反応場における反応効率との関係を説明する模式図である。
【図5】図5は、本実施形態のマイクロチップ送液システムにおいて、検体溶液の流量を変化させた場合における反応量をシミュレーションした結果を示したグラフである。
【図6】図6は、実施例1の条件下において、検体溶液の流量を変化させた場合における反応量をシミュレーションした結果を示したグラフである。
【図7】図7は、実施例2の条件下において、検体溶液の流量を変化させた場合における反応量をシミュレーションした結果を示したグラフである。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態のマイクロチップ送液システムを示した模式図である。
【図9】図9は、従来の循環型のマイクロチップ送液システムを示した模式図である。
【図10】図10は、従来の往復型のマイクロチップ送液システムを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面などを基に詳細に説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0032】
<マイクロチップ送液システム10>
図1は、本発明のマイクロチップ送液システム10を説明するための模式図であり、図1(a)はその断面図、図1(b)は、本発明のマイクロチップ送液システム10を図1(a)のA−A線矢印方向から見たA−A視図、図1(c)は、本発明のマイクロチップ送液システム10を図1(b)のB−B線矢印方向から見たB−B視図である。
【0033】
図1(a)に示したように、本発明のマイクロチップ送液システム10は、微細流路2と、検体溶液16を送液するための送液ポンプ14とを備えている。また、微細流路2の内部には、その底面上に、特定の抗原と反応する所定量の抗体が固定された反応場4が配設されており、送液ポンプ14によって特定の抗原(アナライト)を含む検体溶液16を送液することにより、検体溶液16が微細流路2の反応場4を繰り返し通過するように構成されている。
【0034】
本発明のマイクロチップ送液システム10において、微細流路2の流路断面の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では略矩形状に形成されている。また、微細流路2の流路断面が略矩形状に形成される場合、微細流路2の流路幅Dは0.5mm〜3mmの範囲、微細流路2の流路高Hは50μm〜500μmの範囲で形成されるのが好ましく、本実施形態ではそれぞれD=2mmおよびH=50μmとなっている。
【0035】
また、微細流路2の流路長L1は2mm〜30mmの範囲で形成されるのが好ましく、2mm〜20mmの範囲で形成されるのがより好ましい。なお、本実施形態ではL1=14mmとなっている。
【0036】
反応場4の形成範囲は、所望量のアナライトが効率よく補足されるように、微細流路2の形状、供給されるアナライトの量などを考慮して適宜設定される。本実施形態では微細流路2の底面の全幅に渡って形成されており、流路方向の長さL2は2mmとなっている。
【0037】
微細流路2は、図1(a)及び(b)に示したように、その流路方向の一端側には、検体溶液16を微細流路2へ流入させる入口である入口孔6が形成されており、その流路方向の他端側には、入口孔6から流入された検体溶液16の出口である出口孔8が設けられている。本発明のマイクロチップ送液システム10では、この入口孔6および出口孔8の径が、微細流路2の流路幅Dと略同一であるφ0.5mm〜φ3mmの範囲で形成されるのが好ましく、本実施形態ではφ2mmとなっている。
【0038】
また、図1(a)に示したように、入口孔6の上面側には検体溶液16が収容されたピペット22が接続される。ピペット22は、その先端22aが入口孔6と略同一の断面形状に形成されており、微細流路2の入口孔6と着脱可能に構成されている。また、ピペット22の基端部22bは、先端22aよりも大径に形成されている。また、本実施形態では、ピペット22に100μlの検体溶液16が収容されている。
【0039】
また、ピペット22の上部には、送液ポンプ14が取り付けられている。この送液ポンプ14は、制御部15と連絡しており、この制御部15からの命令に従って、ピペット22の内部に収容されている検体溶液16を微細流路2へ吐出し、あるいは微細流路2や後述する混合部20に貯留されている検体溶液16をピペット22に吸引するように構成されている。また、送液ポンプ14は、検体溶液16を1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域で送液できるようになっている。
【0040】
また、図1(a)に示したように、出口孔8の上面側には混合部20が接続されている。この混合部20は、出口孔8よりも大きな断面形状、例えば一辺が5mm〜12mmの矩形形状や円形状をなしており、本実施形態では一辺が8mmの略正方形状に形成されている。
【0041】
次に、本実施形態のマイクロチップ送液システム10における検体溶液16の流れを、図2および図3に基づいて説明する。図2(a)〜(c)および図3(a)〜(c)は、本発明のマイクロチップ送液システム10における検体溶液16の流れを説明するための模式図である。なお、図2,図3における矢印は、検体溶液16の送液方向を示している。また、符号glは検体溶液16と空気との境界面、すなわち気液界面を示しており、符号ulは微細流路2の流路上面高さを示している。
【0042】
図2(a)は、検体溶液16が収容されたピペット22を微細流路2の入口孔6に装着し、さらにピペット22に送液ポンプ14を取り付けた状態を示している。
【0043】
この図2(a)に示した状態において、送液ポンプ14を駆動し、ピペット22に収容されている検体溶液16を吐出すると、図2(b)に示したように、検体溶液16が入口孔6を介して微細流路2に流入し、その一部が反応場4の上を通過する。
【0044】
この状態からさらに、送液ポンプ14によりピペット22内の検体溶液16を吐出すると、図2(c)に示したように、ピペット22内の検体溶液16のほとんどが入口孔6を介して微細流路2に流入するとともに、ピペット22内における気液界面glが微細流路2の流路上面高さul付近まで低下する。また、反応場4の上を通過した検体溶液16が出口孔8を介して混合部20に流入し、混合部20内の気液界面glが上昇する。
【0045】
この状態において、今度は検体溶液16を吸引するように送液ポンプ14を駆動する。すると、図3(a)に示したように送液方向が反転し、混合部20内の検体溶液16が出口孔8を介して微細流路2へ流入し、再度反応場4の上を通過して、入口孔6を介してピペット22に流入する。そして、図3(b)に示したように、ピペット22内における気液界面glが上昇するとともに、混合部20内における気液界面glが微細流路2の流路上面高さul付近まで低下する。
【0046】
この図3(b)に示した状態から、今度はまた検体溶液16を吐出するように送液ポンプ14を駆動する。すると、再度送液方向が反転して、ピペット22内の検体溶液16が入口孔6を介して微細流路2に流入するとともに、反応場4の上を通過した検体溶液16が出口孔8を介して混合部20に流入して、図2(c)に示した状態となる。
【0047】
なお、検体溶液16を回収する際は、送液ポンプ14で図3(c)に示した状態となるまで検体溶液16を吸引した後に、検体溶液16が収容されたピペット22を取り外せばよい。
【0048】
このように、本実施形態のマイクロチップ送液システム10は、送液ポンプ14によって吐出、吸引を繰り返すことで、図2(c)→図3(a)→図3(b)→図2(c)の状態を繰り返し移行し、検体溶液16が微細流路2の反応場4の上を繰り返し通過するように構成されている。
【0049】
この際、送液ポンプ14の駆動状態の切り替えは、ピペット22および混合部20内における気液界面glが、微細流路2の流路上面高さulを下回らないように行われるのが好ましい。このようにすれば、微細流路2内に空気が混入することがないため、微細流路2内に空気が混入することにより生じ得る障害、例えば送液抵抗の増大による送液能力の低下や、混入した空気が反応場4を覆ってしまうことによる反応効率の低下など、を防止することができる。
【0050】
また、このような送液ポンプ14の駆動状態の切り替えを自動的に行うために、本発明のマイクロチップ送液システム10を次のとおり構成することが好ましい。
【0051】
すなわち、送液ポンプ14の駆動状態を自動的に切り替えるために、ピペット22および混合部20の少なくともいずれかに一方に、気液界面glを測定するセンサーを配設し、気液界面glが所定レベル以下となった場合には、このセンサーから制御部15に信号が送信されて、制御部15が駆動状態を切り替えるよう送液ポンプ14に命令を出すように構成するが好ましい。
【0052】
また、送液ポンプ14が予め設定された所定量の検体溶液16を送液すると駆動状態が自動的に切り替わるように設定することで、送液ポンプ14の駆動状態を自動的に切り替えるように構成することも可能である。例えば、図3(b)に示した状態におけるピペット22の検体溶液16の貯留量から、図3(a)に示した状態におけるピペット22の検体溶液16の貯留量を差し引いた差分を、送液ポンプ14の送液量として制御部15に予め設定しておき、送液ポンプ14から吐出される(または吸引される)検体溶液16がこの量に達した時に、送液ポンプ14の駆動状態を自動的に切り替えるように構成することも可能である。
【0053】
次に、混合部20を設ける効果について説明する。
【0054】
マイクロチップ送液システムにあっては、微細流路を流れる検体溶液は層流状態、すなわち流体の流線が常に略平行な状態で流れるため、例えば図10に示した従来のマイクロチップ送液システム200のように、単に検体溶液216を往復させるだけでは、常に同じ層の検体溶液216が反応場204に接触することとなり、結果、検体溶液216の一部しか反応場204での反応に寄与しないこととなる。
【0055】
これに対し、本実施形態のマイクロチップ送液システム10では、微細流路2の流路断面よりも大きな断面形状を有する混合部20を有しているため、検体溶液16が混合部20に流入した際に、層流状態で流れていた検体溶液16の流れが乱れることで、混合部20内に貯留されている検体溶液16が攪拌されるようになっている。したがって、検体溶液16が繰り返し反応場4の上を通過しても、同じ層だけが反応場4に接触することにはならず、検体溶液16のほとんどが反応場4での反応に寄与することとなる。また、ピペット22においても同様に、貯留されている検体溶液16が攪拌されるようになっている。
【0056】
したがって、このような混合部20を備えていることにより、検体溶液16が微細流路2の反応場4を繰り返し通過するように構成された本発明のマイクロチップ送液システム10において、反応効率を低下させることなく、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の検体溶液16を繰り返し送液させることができるようになっている。
<検体溶液16を高流量域で送液することの効果について>
次に、上述したマイクロチップ送液システム10において、検体溶液16を1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域で送液することの効果について説明する。
【0057】
なお、ここでいう流量とは、単位時間当たりに流れる流体の量のことを意味し、μl/minで表わされる。また、後述する流速とは、流量を流路断面積で除したもので、単位時間当たりに流体が移動する距離を意味し、mm/minまたはmm/secで表わされる。
【0058】
図4は、微細流路2における検体溶液16の流速vと、反応場4における反応効率との関係を説明する模式図である。なお、図4中の符号vは微細流路2を流れる検体溶液16の流速、符号lはアナライト(抗原)30の拡散距離をそれぞれ示している。また、流速vおよび拡散距離lの矢印の大きさは、それぞれ流速および拡散距離の大小を意味している。
【0059】
ここで、図4(a)に示したアナライト30が、反応場4の上を通過するのに要する時間tは、式(1)のとおり示される。
【0060】
【数1】

【0061】
ここに、L2は反応場4の長さ、vは検体溶液16の流速である。
【0062】
また、図4(a)に示したアナライト30が、反応場4の上を通過する間に微細流路2の底面方向へ移動する拡散距離lは、式(2)のとおり示される。
【0063】
【数2】

【0064】
ここに、tはアナライト30が反応場4の上を通過するのに要する時間であって、上式(1)で算定される時間、Dは拡散定数である。
【0065】
上式(1),(2)から明らかなように、検体溶液16の流速vが早いほど、アナライト30が反応場4の上を通過するのに要する時間tは短くなるため、アナライト30の拡散距離lは小さくなる。反対に、検体溶液16の流速vが遅いほど、アナライト30が反応場4の上を通過するのに要する時間tは長くなるため、アナライト30の拡散距離lは大きくなる。
【0066】
アナライト30の拡散距離lが小さくなると、図4(b)に示したように、抗体32に補足されるアナライト30´は少なくなる。一方、アナライト30の拡散距離lが大きくなると、図4(c)に示したように、抗体32に補足されるアナライト30´は多くなる。
【0067】
このように、検体溶液16の流速vが遅い方がアナライト30の拡散距離lが大きくなり、抗体32に補足されるアナライト30´が多くなることから、これまでのマイクロチップ送液システムにあっては、ワンパス型は勿論、循環型や往復型であっても検体溶液の流速が遅くなるように、例えば約1μl/min〜500μl/minとの低流量域の範囲で検体溶液を送液するように構成するのが技術常識であった。
【0068】
ところが、上述した本実施形態のマイクロチップ送液システム10のように、検体溶液16が繰り返し反応場4を通過するように構成されたマイクロチップ送液システムにあっては、必ずしも低流量域の範囲で検体溶液16を送液することが反応効率の向上に結びつかず、むしろ高流量域の範囲で検体溶液16を送液した方が、反応効率が向上することが分かった。
【0069】
これは、測定時間、即ち反応時間が一定の条件下では、拡散距離lを大きくする効果よりも、単位時間当たりの流量を大きくして反応場を通過する回数を増やす効果の方が、反応効率の向上に寄与することを意味する。しかしながら、本発明のように検体溶液16が繰り返し反応場4を通過するように構成されたマイクロチップ送液システムでなければ、このような効果は生じない。従来のワンパス型のマイクロチップ送液システムにあっては、流速を速くするとアナライト30が反応場4の上を通過するのに要する時間tは短くなるため、反応効率は低下してしまう。
【0070】
図5および表1は、上述した本実施形態のマイクロチップ送液システム10において、検体溶液16の流量を低流量域である100μl/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における単位面積当たりの反応量をシミュレーションした結果を示したものである。なお、図5の縦軸は反応場4における単位面積当たりの反応量、横軸は測定時間である。また、反応場4の有効抗体密度、および検体溶液16中の抗体量は、実施例および比較例の各ケースとも同じ条件に設定している。
【0071】
(条件)
測定時間:1500sec
流路幅 :2mm
流路高 :50μm
反応場の形状:2mm×2mm
検体溶液の量:100μl
【0072】
【表1】

【0073】
また、表2は、上述した本実施形態のマイクロチップ送液システム10を備えたSPFS装置において、上記の表1と同一の条件で、検体溶液16の流量を低流量域である100μl/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における蛍光強度の実測結果を示したものである。
【0074】
なお、SPFS装置においては、補足されたアナライト30が多いほど、すなわち、単位面積当たりの反応量が高いほど、高い蛍光強度が測定される。
【0075】
【表2】

【0076】
この図5および表1から明らかなように、測定時間(1500sec)経過時において、流量が大きいほど単位面積当たりの反応量も高くなった。また、このシミュレーション結果の傾向は、表2に示した蛍光強度の実測結果からも確認することができた。
【0077】
このことは、本発明のように検体溶液16が反応場4を繰り返し通過するように構成されたマイクロチップ送液システム10にあっては、流速を遅くするよりも、流速を早くして検体溶液16が反応場4を通過する回数を多くした方が、反応効率が高まることを意味している。
【0078】
また、図5および表1から明らかなように、低流量域(比較例)の場合と比べて、高流量域(実施例)の場合の方が、流量の変化に伴う反応量の変化が小さくなった。また、このシミュレーション結果の傾向は、表2に示した蛍光強度の実測結果からも確認することができた。
【0079】
本発明のマイクロチップ送液システム10では、送液される検体溶液16の流量は送液ポンプ14の能力に依存するが、この送液ポンプ14は所定の圧力で検体溶液16を吐出または吸引するように構成されるものであり、直接的に所定の流量を吐出または吸引するように構成されるものではない。したがって、例えば同一仕様の2つのマイクロチップ送液システム10において、同一の条件下で検体溶液16の送液を行った場合でも、実際に送液ポンプ14によって送液される検体溶液16の流量は、微細流路2の形状の寸法公差などの影響によって若干異なるものとなる。
【0080】
すなわち、高流量域の方が流量変化に伴う反応量の変化が小さいということは、高流量域で検体溶液16を送液した方が、マイクロチップ送液システム10の流路高さ、流路幅、および流量などのバラツキの影響による個体間における反応量のバラツキが小さくなること、すなわちマイクロチップ送液システム10の検出精度が向上することを意味しており、好ましいものである。
【0081】
なお、本発明において、高流量域で検体溶液16を送液した方が流量変化に伴う反応量の変化が小さくなるのは、高流量域の状態にあっては、低流量域の状態と比べて、アナライト30と抗体32との反応が反応律速に近い状態になるからと推察される。
【0082】
すなわち、アナライト30と抗体32との反応効率を高めるためには、拡散条件を高めること(すなわち、検体溶液16の流速vを遅くして拡散距離lを大きくすること)、供給条件を高めること(すなわち、検体溶液16の流量を大きくして反応場4に供給されるアナライト30の量を増やすこと)の他に、反応条件を高めること(すなわち、反応場4に固定されている抗体32の量を増やすこと)、が考えられる。そして、ある抗体量において、拡散条件および供給条件を高めていき、拡散条件および供給条件を十分に満たした状態になると、これ以上拡散条件および供給条件を高めても反応効率はあまり向上しなくなる。つまり、反応効率が、主として反応条件に支配された反応律速の状態となる。
【0083】
このような反応律速の状態にあっては、検体溶液16の流量を大きくしても、反応効率はあまり向上しない。本発明において、高流量域で検体溶液16を送液した方が流量変化に伴う反応量の変化が小さくなるのは、検体溶液16の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の範囲である場合には、従来の低流量域で検体溶液16を送液する場合と比べて、より反応律速に近い状態になるためと考えられた。
また、検体溶液16を50,000μl/minを超える流量で送液する場合には、送液ポンプ14に非常に大きな送液能力が要求されるとともに、微細流路2に非常に高い圧力が作用するため、反応場4を含む微細流路2に極めて高い製造品質が要求されることとなり、実用的なマイクロチップ送液システムを構成することが難しくなる。したがって、検体溶液16の流量は50,000μl/min以下であることが望ましい。
【0084】
以上、詳述したように、本発明のマイクロチップ送液システム10では、送液ポンプ14によって送液される検体溶液16の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の範囲とすることで、反応効率を向上させることができる。また、同一仕様のマイクロチップ送液システム10において、検出されるアナライトの反応量に個体間のバラツキが生ずるのを抑制することができ、検出精度の向上させることができる。
【0085】
なお、上述した実施形態のマイクロチップ送液システム10は、いわゆる往復型のマイクロチップ送液システムであるが、本発明のマイクロチップ送液システム10はこれに限定されず、図8に示したように、本発明のマイクロチップ送液システム10を、いわゆる循環型のマイクロチップ送液システムとして構成することもできる。
【0086】
この図8に示した本発明のマイクロチップ送液システム10は、上述した図9に示す従来の循環型のマイクロチップ送液システム100に対して、検体溶液収容器18が混合部20としても機能するように構成されている点が異なっている。
【0087】
すなわち、この図8に示した循環型のマイクロチップ送液システム10では、従来の循環型のマイクロチップ送液システム100とは異なり、出口側流路12が送液ポンプ14と直接接続されておらず、検体溶液収容器18を介して接続されている。このように構成することで、出口側流路12を介して流入し、検体溶液収容器18で一時的に貯留される検体溶液16が攪拌されるため、この検体溶液収容器18が上述した実施形態における混合部20と同じ機能を果たすこととなり、反応効率を低下させることなく、1,000μl/min〜50,000μl/minとの高流量域の検体溶液16を繰り返し送液させることができるようになっている。
【0088】
なお、本明細書における各種数値範囲には、その数値自体も当該数値範囲に含むものである。例えば、1,000μl/min〜50,000μl/minとは、1,000μl/min以上、50,000μl/min以下を意味するものである。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明のマイクロチップ送液システム10の効果を確認するために行なったシミュレーション結果について説明する。
【0090】
[実施例1]
本実施例では、上述したマイクロチップ送液システム10において、微細流路2の流路幅を1mm、流路高を50μmとし、検体溶液16の流量を低流量域である100μl/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における単位面積当たりの反応量をシミュレーションした。
実施例1のシミュレーション結果を図6および表3に示す。
【0091】
なお、図6の縦軸は反応場4における単位面積当たりの反応量、横軸は測定時間である。また、反応場4の有効抗体密度、および検体溶液16中の抗体量は、実施例および比較例の各ケースとも同じ条件に設定している。
【0092】
(条件)
測定時間:1500sec
流路幅 :1mm
流路高 :50μm
反応場の形状:1mm×2mm
検体溶液の量:100μl
【0093】
【表3】

【0094】
また、表4は、微細流路2の流路幅を1mm、流路高を50μmとしたマイクロチップ送液システム10を備えたSPFS装置において、上記の表3と同一の条件で、検体溶液16の流量を低流量域である100μl/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における蛍光強度の実測結果を示したものである。
【0095】
【表4】

【0096】
この図6および表3から明らかなように、測定時間(1500sec)経過時において、流量が大きいほど反応量も高くなることが確認された。このシミュレーション結果の傾向は、表4に示した蛍光強度の実測結果からも確認することができた。
【0097】
また、図6および表3から明らかなように、低流量域(比較例)の場合と比べて、高流量域(実施例)の場合の方が、流量の変化に伴う反応量の変化が小さくなることが確認された。このシミュレーション結果の傾向についても、表4に示した蛍光強度の実測結果から確認することができた。
【0098】
[実施例2]
本実施例では、上述したマイクロチップ送液システム10において、微細流路2の流路幅を3mm、流路高を500μmとし、検体溶液16の流量を低流量域である100μml/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における単位面積当たりの反応量をシミュレーションした。
実施例2のシミュレーション結果を図8および表5に示す。
【0099】
なお、図7の縦軸は反応場4における単位面積当たりの反応量、横軸は測定時間である。また、反応場4の有効抗体密度、および検体溶液16中の抗体量は、実施例および比較例の各ケースとも同じ条件に設定している。
【0100】
(条件)
測定時間:1500sec
流路幅 :3mm
流路高 :500μm
反応場の形状:3mm×2mm
検体溶液の量:100μl
【0101】
【表5】

【0102】
また、表6は、微細流路2の流路幅を3mm、流路高を500μmとしたマイクロチップ送液システム10を備えたSPFS装置において、上記の表5と同一の条件で、検体溶液16の流量を低流量域である100μl/min,300μl/min,500μl/min(以上、比較例)、および高流量域である1,000μl/min,5,000μl/min,10,000μl/min,30,000μl/min,50,000μl/min(以上、実施例)とした場合における蛍光強度の実測結果を示したものである。
【0103】
【表6】

【0104】
この図7および表5から明らかなように、測定時間(1500sec)経過時において、流量が大きいほど反応量も高くなることが確認された。このシミュレーション結果の傾向は、表6に示した蛍光強度の実測結果からも確認することができた。
【0105】
また、図7および表5から明らかなように、低流量域(比較例)の場合と比べて、高流量域(実施例)の場合の方が、流量の変化に伴う反応量の変化が小さくなることが確認された。このシミュレーション結果の傾向についても、表6に示した蛍光強度の実測結果から確認することができた。
【0106】
[実施例3]
次に、検体溶液の流量を高流量域の範囲とすることで、流量の変化に伴う反応量の変化が小さくなることを、以下に示した実施例において詳細に説明する。
表7および表8は、所定の流量(μl/min)に対してその流量が±10%変動した際の反応量の変化を変動係数CV値で表したものである。具体的には、形状が異なる3つの反応場4(1mm×2mm、2mm×2mm、3mm×2mm)のそれぞれについて、検体溶液16の流量(μl/min)が50,000μl/minから±10%変動したときのCV値、10,000μl/minから±10%変動したときのCV値、1,000μl/minから±10%変動したときのCV値、800μl/minから±10%変動したときのCV値、および100μl/minから±10%変動したときのCV値をシミュレーションによって求めたものである。
【0107】
表7は、測定時間(sec)を600秒にした場合のシミュレーション結果を示している。また、表8は測定時間(sec)を5400秒にした場合の結果を示している。また、検体溶液16の量、有効抗体密度および抗原量等のその他の条件は、上述した実施例と同様である。なお、変動係数CV値(%)とは、標準偏差を算術平均値で割ったもので、相対的なバラツキを表すものである。
【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

【0110】
表7および表8からも明らかなように、高流量域(実施例)の方が低流量域(比較例)よりもCV値が小さくなっており、高流量域の方が同レベルの流量変動に対して、反応量のバラツキを抑制できることが確認された。このことは、測定時間(反応時間)が短い場合(表7)であっても、長い場合(表8)であっても、同様であった。なお、測定時間(反応時間)が長い方が、全体的に反応量のバラツキが小さくなっているのは、測定時間(反応時間)が長いことで飽和点に近づいているため、バラツキが小さくなっているものである。そのような状況であっても、高流量域である1,000μl/min〜50,000μl/minでは反応量のバラツキを抑制する効果が明らかに高いことが確認できる。
なお、以上詳述した態様では、検体溶液の量、有効抗体密度および抗原量を固定した一例で説明したが、それらの値を変えた場合も同様な傾向を示すものであった。
【符号の説明】
【0111】
2 微細流路
4 反応場
6 入口孔
8 出口孔
10 マイクロチップ送液システム
12 出口側流路
14 送液ポンプ
15 制御部
16 検体溶液
18 検体溶液収容器
20 混合部
22 ピペット
22a 先端
22b 基端部
30 アナライト
32 抗体
100 マイクロチップ送液システム
102 微細流路
104 反応場
106 入口孔
108 出口孔
110 入口側流通路
112 出口側流通路
114 循環送液ポンプ
116 検体溶液
118 検体溶液収容器
200 マイクロチップ送液システム
202 微細流路
204 反応場
206 入口孔
208 出口孔
210 入口側流通路
212 出口側流通路
214 往復送液ポンプ
216 検体溶液
218 検体溶液収容器
gl 気液界面
ul 微細流路の流路上面高さ
H 流路高
v 流速
l 拡散距離
L1 微細流路の流路長
D 微細流路の流路幅
H 微細流路の流路高
L2 反応場の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の抗原と反応する抗体が固定された反応場を有する微細流路と、
前記特定の抗原を含む検体溶液を送液する送液ポンプと、を少なくとも備え、
前記送液ポンプが検体溶液を送液することにより、検体溶液が微細流路の反応場を繰り返し通過するように構成されたマイクロチップ送液システムであって、
前記送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、1,000μl/min〜50,000μl/minの範囲であることを特徴とするマイクロチップ送液システム。
【請求項2】
前記微細流路の反応場を通過した検体溶液を一時的に貯留するとともに、その貯留した検体溶液が攪拌されるように構成された、前記微細流路と接続する混合部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ送液システム。
【請求項3】
前記微細流路の流路断面が矩形状をなしており、
その流路幅が0.5mm〜3mmの範囲であり、その流路高が50μm〜500μmの範囲で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ送液システム。
【請求項4】
前記送液ポンプによって送液される検体溶液の流量が、5,000μl/min〜50,000μl/minの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマイクロチップ送液システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のマイクロチップ送液システムを備えていることを特徴とする検体検出装置。
【請求項6】
前記検体検出装置が、
表面プラズモン共鳴装置(SPR装置)または表面プラズモン増強蛍光測定装置(SPFS装置)であることを特徴とする請求項5に記載の検体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18159(P2012−18159A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123431(P2011−123431)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】