説明

マイクロチャネル熱交換器および熱エネルギー抽出方法

【課題】高い表面密集度を維持しつつ湿気の蓄積を減少させるマイクロチャネル熱交換器構造を提供する。
【解決手段】マイクロチャネル熱交換器10は、流体を分配する少なくとも1つのマニホールド14と、このマニホールド14から延びる複数のチューブ12と、を備える。チューブ12は、実質的に曲線形の断面形状を有するとともに、各チューブ12の第1の端部から第2の端部まで延び、流体を供給する複数のポートを備える。複数のチューブ12を横切るようにフィン16が列状に配設され、フィン16に設けられた開口部を通ってチューブ12が延びている。冷媒は、複数のポートを介してチューブ12に亘って供給され、流れがチューブ12と熱的に連通するようにフィン16に亘って供給されて、熱エネルギーがフィン16を介して冷媒に伝えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチャネル熱交換器に関し、特に、マイクロチャネル熱交換器におけるチューブの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチャネル熱交換器は、住居、自動車、航空宇宙産業など種々の用途に用いられている。図9に示すように、従来のマイクロチャネル熱交換器100は、複数のフラットチューブ102を備え、各チューブは、チューブを通って延びる複数のポート104を有する。チューブ102は、通常、各チューブ102の平面106が実質的に水平になるように配置される。チューブ102から延びるフィン108の列に亘って空気が流れ、複数のポート104を通って液体あるいは二相の冷媒流が流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
チューブ102の表面積およびフィン108の表面積の密集度が高いため、熱交換中、マイクロチャネル熱交換器に湿気、凝縮水および霜が堆積しやすくなる。この問題は、チューブ102の平面106が実質的に水平に配設されている熱交換器において、湿気が平面106上に留まる場合に、より深刻化する。湿気および霜が堆積することにより、熱交換器に亘る流れ抵抗および熱抵抗が増加して熱交換器の作動効率が低下してしまう。さらに、湿気により、チューブ102の表面に浸食および孔食(ピッチング)が生じ、チューブ表面の耐用年数が低下してしまう。したがって、従来のマイクロチャネル熱交換器における表面積の高い密集度を維持しつつ、効率を低下させる湿気の蓄積を減少させるマイクロチャネル熱交換器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの態様によると、マイクロチャネル熱交換器は、流体を分配する少なくとも1つのマニホールドと、少なくとも1つのマニホールドから延びる複数のチューブと、を備える。複数のチューブのうち少なくとも1つのチューブは、実質的に曲線形の断面形状を有し、かつ各チューブの第1の端部から第2の端部まで延びる複数のポートを備える。複数のポートは、該ポートを通して流体を供給する。複数のフィンは、複数のチューブの長さに亘って配設される。
【0005】
本発明の他の態様によると、流れ(フロー)から熱エネルギーを抽出する方法は、マニホールドと流体連通するように該マニホールドから複数のチューブに冷媒を供給することを含む。複数のチューブのうち少なくとも1つのチューブは、実質的に曲線形の断面形状を有し、かつ各チューブの第1の端部から第2の端部まで延びる複数のポートを備える。複数のポートは、該ポートを通して流体を供給する。冷媒は、複数のポートを介してチューブの長さに亘って供給される。流れが複数のチューブと熱的に連通するように複数のフィンに亘って供給され、熱エネルギーが複数のフィンを介して冷媒に伝えられる。
【0006】
上記および他の利点および特徴について、以下に記載する発明を実施するための形態および添付の図面により詳細に説明する。発明を実施するための形態は、図面を参照することにより、発明の実施例、利点および特徴を説明するものである。以下、図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施例におけるマイクロチャネル熱交換器の概略図。
【図2】図1のマイクロチャネル熱交換器を示す図。
【図3】他の実施例における図1のマイクロチャネル熱交換器の図。
【図4】一実施例におけるマイクロチャネル熱交換器のチューブの断面図。
【図5】他の実施例におけるマイクロチャネル熱交換器のチューブの断面図。
【図6】さらに別の実施例におけるマイクロチャネル熱交換器のチューブの断面図。
【図7】他の実施例におけるマイクロチャネル熱交換器の断面図。
【図8】チューブ端に設けられたU字コネクタを有するマイクロチャネル熱交換器の概略図。
【図9】従来のマイクロチャネル熱交換器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1にマイクロチャネル熱交換器10の一実施例を示す。熱交換器10は、少なくとも1つのマニホールド14から延びる複数のチューブ12を備える。図1では2つのマニホールド14を示しているが、熱交換器10は、他の数(例えば、1つまたは3つ以上)のマニホールド14を有していてもよい。各チューブ12は、例えば、ろう付け、あるいは他の適切な接続手段により少なくとも1つのマニホールド14に接続される。複数のチューブ12を横切るようにフィン16が列状に設けられる。フィン16は、図2に示すような折り畳み型のフィンから構成されてもよく、あるいは図3に示すような個々のフィンプレート16から構成されてもよい。さらに、フィン16は、ルーバ18、あるいはフィン16の熱伝達能力を向上させる他の促進部材を備えていてもよい。図4に示すように、フィン16は、フィン開口部20を有する。この開口部20は、例えば、押抜きなどの穴開け加工により形成される。フィン開口部20は各チューブ12が通る通路となる。各フィン16は、複数のフィン開口部20を有しており、このフィン開口部20を介して複数のチューブ12が各フィン16を通って延びる。例えば、図4に示すように、各フィン16は、2つのフィン開口部20を有しており、これにより、該フィン16を通って2つのチューブ12が延在可能となる。しかし、例えば、各フィン16に他の数(例えば、3つまたは4つ)のフィン開口部20を開口してもよいことを理解されたい。一実施例では、フィン開口部20は、隣接するフィン16間のスペースを画定するように、フィン開口部20の外周に亘って少なくとも部分的に延在するつば(カラー)22を備える。一実施例では、フィン16は各フィン開口部20においてチューブ12にろう付けされ、これにより、フィン16がチューブ12に対して所定の位置に固定され、フィン16とチューブ12の熱的な接触が向上する。
【0009】
一実施例では、図4に示すように、各チューブ12の断面は、実質的に環状をなす。各チューブ12は、中心軸26を中心に配列され、かつ一実施例では、チューブ12の第1の端部から第2の端部に延びる複数のポート24を含む。ポート24の幅は、約0.1mm〜約5mmである。図4に示す実施例では、各ポート24の断面は環状であるが、図5に示す他の実施例では、各ポート24の断面は円弧形(circular section)である。図4,5に示すポート24の断面形状は例示的なものに過ぎず、ポートおよびチューブは他の断面形状を有していてもよいことを理解されたい。さらに、1つのチューブ12におけるポート24の形状および大きさ、あるいはマイクロチャネル熱交換器10の複数のチューブ12全体におけるポート24の形状および大きさは、マイクロチャネル熱交換器10の性能を向上させるように変更され得る。
【0010】
さらに、図4を参照すると、一実施例では、チューブ12は、チューブ12の長さに亘って延びる中空部28を備える。中空部28は、図4に示すように環状の断面を有していてもよいく、所望の場合は他の断面形状を有していてもよい。図4の実施例では、中空部28は、中心軸26に沿って設けられているが、他の実施例では、中空部28は、中心軸26からオフセットしていてもよい。中空部28を備える実施例では、中空部28と、チューブ12の外面(外壁)30との間にポート24が配設される。中空部28によって、押出成形あるいは他の適正な方法により形成されるチューブ12の形成に必要な材料の量が減少する。マイクロチャネル熱交換器10を作動させる前に、中空部28は、冷媒がポート24をバイパスしないように、あるいは冷媒が中空部28を通流しないように、チューブ12の少なくとも1つの端部において塞がれる。
【0011】
図6を参照すると、チューブ12は、非環状の断面形状をなしている。例えば、図6に示すように、チューブ12の断面は、涙滴(ティアドロップ)形状、つまりエアフォイル形状である。一実施例では、エアフォイル形状の断面には、中空部28と、該中空部28と外面30との間に配列されたポート24と、が含まれる。涙滴つまりエアフォイル形状を有するチューブ12は、チューブ12に亘る圧力低下を向上させ、より優れた伝熱効果をもたらすとともに、チューブ12からの湿気の排出を向上させる。
【0012】
図7を参照すると、各フィン16を複数のチューブ12が貫通するマイクロチャネル熱交換器10の構造では、チューブ12は、例えば、第1の列32および第2の列34におけるチューブ間を通流する流れに相互作用が生じるように互いに近接して配設される。伝熱効果を促進するように相互作用を利用かつ向上させるために、チューブ12の形状および位置が調節される。例えば、第2の列34のチューブ12により方向付けられる流れ36が第1の列32のチューブ12によって妨害されないように、第2の列34のチューブ12は第1の列32のチューブ間に配設される。さらに、第1の列32のチューブ12の後縁部38は、隣接する第2の列34のチューブ12に向かって延在しており、これにより、伝熱を向上させるように流れ36が第2の列34のチューブ12に向かって方向付けられる。
【0013】
一実施例では、マイクロチャネル熱交換器10は、各チューブ12が複数のフィン16を2回以上通過するマルチパス構造である。この構造は、図8に示すように、各チューブ12の少なくとも1つの端部に配置されるU字形のコネクタ40によりもたらされる。コネクタ40は、チューブ12にろう付けされてもよい。コネクタ40は、第1のチューブ部分42からコネクタ40へと流れる冷媒を、複数のフィン16を通過させるように第2のチューブ部分44へと方向付ける。一実施例では、第1のチューブ部分42は、第1の列32に配置され、第2のチューブ部分44は、第2の列34に配置される。
【0014】
限定された実施例により本発明を詳細に説明してきたが、本発明は開示した実施例に限定されないことを理解されたい。本発明は、開示していない種々の変更、修正、置換を含むように本発明の範囲を逸脱することなく修正され得る。さらに、本発明の複数の実施例を開示したが、本発明の形態は、開示した実施例のうちいくつかの実施例だけを含んでいてもよいことを理解されたい。本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の範囲によってのみ決定されるものである。
【符号の説明】
【0015】
10 マイクロチャネル熱交換器
12 チューブ
14 マニホールド
16 フィン
18 ルーバ
20 フィン開口部
22 つば
24 ポート
26 中心軸
28 中空部
30 外面
32 第1のチューブ列
34 第2のチューブ列
36 流れ
38 後縁部
40 コネクタ
42 第1のチューブ部分
44 第2のチューブ部分
100 従来のマイクロチャネル熱交換器
102 従来のフラットチューブ
104 従来のポート
106 チューブ平面
108 従来のフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を分配する少なくとも1つのマニホールド(14)と、
前記少なくとも1つのマニホールド(14)から延びる複数のチューブ(12)と、
を備え、
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)が、実質的に曲線形の断面形状を有し、さらに、
各チューブ(12)の第1の端部から第2の端部まで延び、かつ流体を供給する複数のポート(24)と、
複数のチューブ(12)の長さに沿って配設される複数のフィン(16)と、
を備えることを特徴とするマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項2】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、長さに沿って延びる中空部(28)を備え、この中空部(28)と、チューブ(12)の外壁(30)との間に複数のポート(24)が配設されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項3】
中空部(28)は、流体が中空部(28)に流入しないように一端部において塞がれることを特徴とする請求項2に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項4】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、実質的に環状の断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項5】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、実質的にエアフォイル形の断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項6】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも2つのチューブ(12)は、一端部においてU字形のコネクタ(40)により接続されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項7】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも2つのチューブ(12)は、伝熱を促進するため空気流との相互作用を向上させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項8】
各フィン(16)は、少なくとも1つのチューブ(12)が通る少なくとも1つのフィン開口部(20)を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのフィン開口部(20)は、隣接するフィン(16)間のスペースを画定するつば(22)を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項10】
前記複数のフィン(16)のうち少なくとも1つのフィン(16)は、複数のフィン(16)の伝熱効果を促進させる少なくとも1つのルーバ(18)を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項11】
各ポート(24)の幅は、約0.1mm〜約5mmであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器(10)。
【請求項12】
流れから熱エネルギーを抽出する方法であって、
マニホールド(14)と流体連通するように該マニホールド(14)から複数のチューブ(12)に冷媒を供給するステップであって、前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、実質的に曲線形の断面形状を有するとともに、各チューブ(12)の第1の端部から第2の端部まで延び、かつ流体を供給する複数のポート(24)を備える、供給ステップと、
前記複数のポート(24)を介してチューブ(12)の長さに亘って冷媒を供給するステップと、
前記複数のチューブ(12)と熱的に連通するように複数のフィン(16)に亘って流れを供給するステップと、
前記複数のフィン(16)を介して冷媒に熱エネルギーを伝えるステップと、
を含むことを特徴とする熱エネルギー抽出方法。
【請求項13】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、長さに沿って延びる中空部(28)を備え、この中空部(28)と、チューブ(12)の外壁(30)との間に複数のポート(24)が配設されることを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項14】
流体が中空部(28)に流入しないように一端部において中空部(28)を塞ぐステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項15】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、実質的に環状の断面形状を有することを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項16】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも1つのチューブ(12)は、実質的にエアフォイル形の断面形状を有することを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項17】
前記複数のチューブ(12)のうち第1のチューブ(12)を通して冷媒を流すステップと、
前記複数のチューブ(12)のうち第1のチューブ(12)と第2のチューブ(12)との間に設けられたU字形コネクタ(40)を通して冷媒を流すステップと、
前記第2のチューブ(12)を通して冷媒を流すステップと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項18】
前記複数のチューブ(12)のうち少なくとも2つのチューブ(12)は、伝熱を促進するため空気流との相互作用を向上させるように構成されることを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項19】
各フィン(16)は、少なくとも1つのチューブ(12)が通る少なくとも1つのフィン開口部(20)を備えることを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。
【請求項20】
伝熱効果を促進させるように前記複数のフィン(16)に設けられた少なくとも1つのルーバ(18)に亘って前記流れを供給するステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の熱エネルギー抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256004(P2010−256004A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91856(P2010−91856)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】