説明

マイクロミラーデバイス

【課題】マイクロミラーチップと電極基板とが高い間隔精度で貼り合わせられるマイクロミラーデバイスを提供する。
【解決手段】マイクロミラーデバイス100は、マイクロミラーチップ110と、電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130の間に接して配置されて両者の間隔を制御する中間部材150と、マイクロミラーチップ110と電極基板130を接合する複数の接合部材170とから構成されている。中間部材150は、接合部材170を収容する複数の貫通孔152を有し、その上下面には逃げ溝154Aと逃げ溝154Bがそれぞれ形成されている。逃げ溝154Aと逃げ溝154Bは、それぞれ、マイクロミラーチップ110と電極基板130と共働して、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔152から排出するための排出経路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2005−316043号公報は、ハンダバンプによって互いに接合されたマイクロミラーチップと電極基板とからなるマイクロミラー素子を開示している。このマイクロミラー素子では、ハンダバンプの支持荷重に応答した熱溶融時の変形量を制御することによってマイクロミラーチップと電極基板の間の距離を所望の距離に調整している。
【特許文献1】特開2005−316043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2005−316043号公報のマイクロミラー素子では、ハンダの変形量のみでマイクロミラーチップと電極基板の間隔を設定し、マイクロミラーチップと電極基板をハンダで貼り合わせているため、ハンダ接合部以外の部分でマイクロミラーチップと電極基板の間隔を高精度に制御することが困難である。そこで、厚み精度の良いガラス基板などで作製した中間部材をマイクロミラーチップと電極基板の間に配置し、マイクロミラーチップと電極基板を中間部材に密着させて間隔を制御し、中間部材に形成された貫通孔に収容されたハンダでマイクロミラーチップと電極基板を接合する手法が考えられる。
【0004】
しかし、この手法では、マイクロミラーチップおよび電極基板と中間部材との相互間の密着性が向上したために、貫通孔内に収容されたハンダを加熱した際に発生したガスなどが逃げ場を失って、マイクロミラーチップと中間部材の接触面や電極基板と中間部材の接触面に入り込み、その結果生じた隙間にハンダが入り込んで、マイクロミラーチップと電極基板の間隔の精度が低下してしまうことがある。
【0005】
本発明は、このような実状を考慮してなされたものであり、その目的は、マイクロミラーチップと電極基板とが高い間隔精度で貼り合わせられるマイクロミラーデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるマイクロミラーデバイスは、第一の部材と、第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材とを接合する少なくとも一つの接合部材と、前記接合部材を収容する少なくとも一つの第一の貫通孔を有し、前記第一の部材と前記第二の部材の間に両者に接して配置されて両者の間隔を制御する中間部材と、前記接合部材の接合余剰物質を前記第一の貫通孔から排出するための、前記第一の貫通孔を外部空間とつないでいる排出経路とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マイクロミラーチップと電極基板とが高い間隔精度で貼り合わせられるマイクロミラーデバイスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0009】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態によるマイクロミラーデバイスについて図1〜図3を参照して説明する。
【0010】
図1と図2に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス100は、第一の部材であるマイクロミラーチップ110と、第二の部材である電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130との間に配置される中間部材150と、マイクロミラーチップ110と電極基板130とを接合する複数の接合部材170とから構成されている。中間部材150は、接合部材170を収容する複数の貫通孔152を有している。中間部材150は、マイクロミラーチップ110と電極基板130に接して配置されて、マイクロミラーチップ110と電極基板130の間隔を制御する。
【0011】
マイクロミラーチップ110は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が形成された半導体基板であってよい。電極基板130は、例えば、シリコンなどの半導体基板であってよい。中間部材150は、例えば、平坦度が良いガラス基板から作られるとよい。ガラス基板の材質は、マイクロミラーチップ110と電極基板130がシリコン製であるとき、例えば、シリコンと線膨張係数が近いホウケイ酸ガラスであるとよい。接合部材170は、例えば、ハンダで構成される。
【0012】
マイクロミラーチップ110は、複数の可動ミラー部122と、これら複数の可動ミラー部122を機械的に支持するための支持部124と、可動ミラー部122のおのおのと支持部124とを機械的に接続しているヒンジ部126とを有している。
【0013】
電極基板130は、可動ミラー部122にそれぞれ対向した位置に、可動ミラー部122をそれぞれ静電駆動するための複数の駆動電極142を有している。
【0014】
中間部材150は、マイクロミラーチップ110の支持部124と同様の形状をしており、可動ミラー部122がヒンジ部126を軸として回転したときに可動ミラー部122との接触を避けるための逃げ穴162を有している。
【0015】
マイクロミラーチップ110と電極基板130は、互いに向き合う面に、複数の接合パッド112と複数の接合パッド132をそれぞれ有している。接合パッド112と接合パッド132は、それぞれ、中間部材150の貫通孔152を介して互いに向き合うようにマイクロミラーチップ110と電極基板130に配置されている。接合部材170は、それぞれ、中間部材150の貫通孔152に収容されており、マイクロミラーチップ110の接合パッド112と電極基板130の接合パッド132とを接合している。
【0016】
中間部材150には、マイクロミラーチップ110と接する面に逃げ溝154Aが形成され、電極基板130と接する面に逃げ溝154Bが形成されている。逃げ溝154A,154Bは、いずれも、貫通孔152から延び、中間部材150の側面または逃げ穴162の側面で終端している。逃げ溝154Aは、中間部材150と接するマイクロミラーチップ110の面と共働して、貫通孔152と外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。同様に、逃げ溝154Bは、中間部材150と接する電極基板130の面と共働して、貫通孔152と外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。これらの流路は、いずれも、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔152から排出するための排出経路として機能する。ここで、接合部材170の接合余剰物質は、接合部材170を加熱した際に発生するガスや、貫通孔152からはみ出す接合部材170の余剰部分を言う。
【0017】
続く説明では、中間部材150と接するマイクロミラーチップ110の面を、図2の向きに合わせて、マイクロミラーチップ110の下面と便宜的に呼ぶ。同様に、中間部材150と接する電極基板130の面を電極基板130の上面、マイクロミラーチップ110と接する中間部材150の面を中間部材150の上面、電極基板130と接する中間部材150の面を中間部材150の下面と呼ぶ。
【0018】
図1〜図3に示した構成では、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔152から排出するための排出経路は、中間部材150の上面に形成された逃げ溝154Aとマイクロミラーチップ110の下面とで規定された流路と、中間部材150の下面に形成された逃げ溝154Bと電極基板130の上面とで規定された流路とで構成されているが、これに代えて、中間部材150の側面または逃げ穴162の側面と貫通孔152との間を延びている中間部材150に形成された貫通孔で構成されてもよい。
【0019】
このように構成されたマイクロミラーデバイス100では、マイクロミラーチップ110と電極基板130の接合工程において、接合部材170を加熱した際に接合部材170から発生するガスは、中間部材150の上面に形成された逃げ溝154Aとマイクロミラーチップ110の下面とで規定された流路と、中間部材150の下面に形成された逃げ溝154Bと電極基板130の上面とで規定された流路とからなる排出経路を通って外部空間に排出される。また、貫通孔152からはみ出した溶融した接合部材170の余剰部分は、排出経路に流れ込む。これにより、中間部材150とマイクロミラーチップ110の接触面や中間部材150と電極基板130の接触面の間にガスや溶融した接合部材170が入り込むことなく、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが中間部材150と良好に面接触した状態で互いに接合される。
【0020】
本実施形態によるマイクロミラーデバイス100では、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが中間部材150と良好に面接触するので、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが高い間隔精度をもって接合される。また、溶融した接合部材170がマイクロミラーチップ110の可動ミラー部122やヒンジ部126にはみ出して可動ミラー部122やヒンジ部126を汚染したり、電極基板130の駆動電極142にはみ出して駆動電極142をショートさせたりすることが防止される。
【0021】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態によるマイクロミラーデバイスについて図4と図5を参照して説明する。図4と図5において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0022】
図4と図5に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス200は、マイクロミラーチップ110と、電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130との間に配置される中間部材250と、マイクロミラーチップ110と電極基板130とを接合する複数の接合部材170とから構成されている。マイクロミラーチップ110と電極基板130と接合部材170は第一実施形態で説明したものと同様である。
【0023】
中間部材250は、マイクロミラーチップ110の支持部124と同様の形状をしており、可動ミラー部122がヒンジ部126を軸として回転したときに可動ミラー部122との接触を避けるための逃げ穴262を有している。
【0024】
中間部材250は、例えば、平坦度が良いガラス基板から作られるとよい。ガラス基板の材質は、マイクロミラーチップ110と電極基板130がシリコン製であるとき、例えば、シリコンと線膨張係数が近いホウケイ酸ガラスであるとよい。
【0025】
中間部材250は、接合部材170を収容する複数の貫通孔252を有している。貫通孔252は、中間部材250の上面に形成されたくぼみ256Aと、中間部材250の下面に形成されたくぼみ256Bと、くぼみ256Aとくぼみ256Bとを連絡している連絡孔258とで構成されている。くぼみ256Aとくぼみ256Bは同じ径を有し、連絡孔258はくぼみ256Aとくぼみ256Bの径よりも小さい径を有している。くぼみ256Aとくぼみ256Bは、それがなければ溶融した接合部材170が貫通孔252からはみ出す余剰部分を収容する空間を与える。
【0026】
また、くぼみ256A,256Bの底面には、それぞれ、メタル層260A,260Bが設けられている。メタル層260A,260Bは、溶融した接合部材170の付きの良い材質で作られるとよい。メタル層260A,260Bは、溶融した接合部材170を良好に引き付けて、そこに留まらせる。
【0027】
中間部材250には、マイクロミラーチップ110と接する上面に逃げ溝254Aが形成され、電極基板130と接する下面に逃げ溝254Bが形成されている。逃げ溝254Aは、くぼみ256Aから延び、中間部材250の側面または逃げ穴262の側面で終端している。逃げ溝254Bは、くぼみ256Bから延び、中間部材250の側面または逃げ穴262の側面で終端している。逃げ溝254Aは、マイクロミラーチップ110の下面と共働して、くぼみ256Aと外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。同様に、逃げ溝254Bは、電極基板130の上面と共働して、くぼみ256Bと外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。これらの流路は、いずれも、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔252から排出するための排出経路として機能する。
【0028】
図4と図5に示した構成では、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔252から排出するための排出経路は、中間部材250の上面に形成された逃げ溝254Aとマイクロミラーチップ110の下面とで規定された流路と、中間部材250の下面に形成された逃げ溝254Bと電極基板130の上面とで規定された流路とで構成されているが、これに代えて、中間部材250の側面または逃げ穴262の側面と貫通孔252(例えば連絡孔258)との間を延びている中間部材250に形成された貫通孔で構成されてもよい。
【0029】
このように構成されたマイクロミラーデバイス200では、マイクロミラーチップ110と電極基板130の接合工程において、接合部材170を加熱した際に接合部材170から発生するガスは、中間部材250の上面に形成された逃げ溝254Aとマイクロミラーチップ110の下面とで規定された流路と、中間部材250の下面に形成された逃げ溝254Bと電極基板130の上面とで規定された流路とからなる排出経路を通って外部空間に排出される。また、溶融した接合部材170の余剰部分は、メタル層260A,260Bによって貫通孔252のくぼみ256A,256B内に保持される。これにより、中間部材250とマイクロミラーチップ110の接触面や中間部材250と電極基板130の接触面の間にガスや溶融した接合部材170が入り込むことなく、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが中間部材250と良好に面接触した状態で互いに接合される。
【0030】
本実施形態によるマイクロミラーデバイス200では、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが中間部材250と良好に面接触するので、マイクロミラーチップ110と電極基板130とが高い間隔精度をもって接合される。また、中間部材250が溶融した接合部材170を収容するくぼみ256A,256Bを有しているため、溶融した接合部材170がマイクロミラーチップ110の可動ミラー部122やヒンジ部126にはみ出して可動ミラー部122やヒンジ部126を汚染したり、電極基板130の駆動電極142にはみ出して駆動電極142をショートさせたりすることが良好に防止される。
【0031】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態によるマイクロミラーデバイスについて図6と図7を参照して説明する。図6と図7において、図1〜図5に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0032】
図6と図7に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス300は、マイクロミラーチップ310と、電極基板130と、マイクロミラーチップ110と電極基板130との間に配置される中間部材250と、マイクロミラーチップ110と電極基板130とを接合する複数の接合部材170とから構成されている。電極基板130と接合部材170は第一実施形態で説明したものと同様である。また中間部材250は第二実施形態で説明したものと同様である。
【0033】
マイクロミラーチップ310は、図7に示すように、複数の可動ミラー部322と、これら複数の可動ミラー部322を機械的に支持するための支持部324と、可動ミラー部322のおのおのと支持部324とを機械的に接続しているヒンジ部326とを有している。
【0034】
マイクロミラーチップ310は、電極基板130と向き合う面すなわちマイクロミラーチップ310の下面に、複数の接合パッド312を有している。接合パッド312は、それぞれ、中間部材250の貫通孔252を介して電極基板130の接合パッド132と向き合うようにマイクロミラーチップ310に配置されている。
【0035】
マイクロミラーチップ310は、接合パッド312の周囲に設けられた複数のくぼみ314と、くぼみ314を外部空間とつないでいる貫通孔316とを有している。貫通孔316は、くぼみ314の底面とマイクロミラーチップ310の上面との間に延びている。貫通孔316は、くぼみ314の径よりも小さい径を有している。くぼみ314は、溶融した接合部材170の余剰部分を収容する空間を与える。
【0036】
くぼみ314の底面には、メタル層318が設けられている。メタル層318は、溶融した接合部材170の付きの良い材質で作られるとよい。メタル層318は、溶融した接合部材170を良好に引き付けて、そこに留まらせる。
【0037】
マイクロミラーチップ310には、中間部材250と接する下面に逃げ溝320が形成されている。逃げ溝320は、いくつかのくぼみ314から延び、マイクロミラーチップ310の側面で終端している。逃げ溝320は、中間部材250の上面と共働して、くぼみ314を介して中間部材250の貫通孔252と外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。これらの流路は、いずれも、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔252から排出するための排出経路として機能する。
【0038】
本実施形態では、マイクロミラーチップ310は、貫通孔316がくぼみ314を介して貫通孔252と連絡するように構成されているが、貫通孔316が貫通孔252と直接連絡するように構成されてもよい。すなわち、マイクロミラーチップ310は、くぼみ314を有さず、貫通孔252に対応する位置に貫通孔316を有していてもよい。
【0039】
このように構成されたマイクロミラーデバイス300では、マイクロミラーチップ310と電極基板130の接合工程において、接合部材170を加熱した際に接合部材170から発生するガスは、中間部材250の上面に形成された逃げ溝254Aとマイクロミラーチップ310の下面とで規定された流路と、マイクロミラーチップ310の下面に形成された逃げ溝320と中間部材250の上面とで規定された流路と、マイクロミラーチップ310に形成されたくぼみ314と貫通孔316とからなる流路と、中間部材250の下面に形成された逃げ溝254Bと電極基板130の上面とで規定された流路とからなる排出経路を通って外部空間に排出される。本実施形態は、第二実施形態と比較して、排出経路を構成する流路が増えているので、その分、接合部材170の接合余剰物質を排出する効率が向上する。また、溶融した接合部材170の余剰部分は、メタル層260A,260Bによって貫通孔252のくぼみ256A,256B内に、またメタル層318によってマイクロミラーチップ310のくぼみ314内に保持される。本実施形態は、第二実施形態と比較して、溶融した接合部材170の余剰部分を収容する空間が増えているので、その分、溶融した接合部材170の接合部分が貫通孔252からはみ出すおそれが少ない。これにより、中間部材250とマイクロミラーチップ310の接触面や中間部材250と電極基板130の接触面の間にガスや溶融した接合部材170が入り込むことなく、マイクロミラーチップ310と電極基板130とが中間部材250と良好に面接触した状態で互いに接合される。
【0040】
本実施形態によるマイクロミラーデバイス300では、マイクロミラーチップ310と電極基板130とが中間部材250と良好に面接触するので、マイクロミラーチップ310と電極基板130とが高い間隔精度をもって接合される。また、中間部材250が溶融した接合部材170を収容するくぼみ256A,256Bを有しているため、電極基板130の駆動電極142にはみ出して駆動電極142をショートさせたりすることが良好に防止される。さらにマイクロミラーチップ310がくぼみ314を有しているため、特に、溶融した接合部材170がマイクロミラーチップ310の可動ミラー部322やヒンジ部326にはみ出して可動ミラー部322やヒンジ部326を汚染することがさらに良好に防止される。
【0041】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態によるマイクロミラーデバイスについて図8と図9を参照して説明する。図8と図9において、図1〜図5に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0042】
図8と図9に示すように、本実施形態のマイクロミラーデバイス400は、マイクロミラーチップ110と、電極基板430と、マイクロミラーチップ110と電極基板430との間に配置される中間部材250と、マイクロミラーチップ110と電極基板430とを接合する複数の接合部材170とから構成されている。マイクロミラーチップ110と接合部材170は第一実施形態で説明したものと同様である。また中間部材250は第二実施形態で説明したものと同様である。
【0043】
電極基板430は、図9に示すように、マイクロミラーチップ110の可動ミラー部122をそれぞれ静電駆動するための複数の駆動電極442を有している。駆動電極442は、電極基板430に接合されたマイクロミラーチップ110の可動ミラー部122にそれぞれ対向する位置に形成されている。
【0044】
電極基板430は、マイクロミラーチップ110と向き合う面すなわち電極基板430の上面に、複数の接合パッド432を有している。接合パッド432は、それぞれ、中間部材250の貫通孔252を介してマイクロミラーチップ110の接合パッド112と向き合うように電極基板430に配置されている。
【0045】
電極基板430は、接合パッド432の周囲に設けられた複数のくぼみ434と、くぼみ434を外部空間とつないでいる貫通孔436とを有している。貫通孔436は、くぼみ434の底面と電極基板430の下面との間に延びている。貫通孔436は、くぼみ434の径よりも小さい径を有している。くぼみ434は、溶融した接合部材170の余剰部分を収容する空間を与える。
【0046】
くぼみ434の底面には、メタル層438が設けられている。メタル層438は、溶融した接合部材170の付きの良い材質で作られるとよい。メタル層438は、溶融した接合部材170を良好に引き付けて、そこに留まらせる。
【0047】
電極基板430には、中間部材250と接する上面に逃げ溝440が形成されている。逃げ溝440は、いくつかのくぼみ434から延び、電極基板430の側面で終端している。逃げ溝440は、中間部材250の下面と共働して、くぼみ434を介して中間部材250の貫通孔252と外部空間とを空間的につなぐ流路を規定する。これらの流路は、いずれも、接合部材170の接合余剰物質を貫通孔252から排出するための排出経路として機能する。
【0048】
本実施形態では、電極基板430は、貫通孔436がくぼみ434を介して貫通孔252と連絡するように構成されているが、貫通孔436が貫通孔252と直接連絡するように構成されてもよい。すなわち、電極基板430は、くぼみ434を有さず、貫通孔252に対応する位置に貫通孔436を有していてもよい。
【0049】
このように構成されたマイクロミラーデバイス400では、マイクロミラーチップ110と電極基板430の接合工程において、接合部材170を加熱した際に接合部材170から発生するガスは、中間部材250の上面に形成された逃げ溝254Aとマイクロミラーチップ110の下面とで規定された流路と、中間部材250の下面に形成された逃げ溝254Bと電極基板430の上面とで規定された流路と、電極基板430の上面に形成された逃げ溝440と中間部材250の下面とで規定された流路と、電極基板430に形成されたくぼみ434と貫通孔436とからなる流路とからなる排出経路を通って外部空間に排出される。本実施形態は、第二実施形態と比較して、排出経路を構成する流路が増えているので、その分、接合部材170の接合余剰物質を排出する効率が向上する。また、溶融した接合部材170の余剰部分は、メタル層260A,260Bによって貫通孔252のくぼみ256A,256B内に、またメタル層438によって電極基板430のくぼみ434内に保持される。本実施形態は、第二実施形態と比較して、溶融した接合部材170の余剰部分を収容する空間が増えているので、その分、溶融した接合部材170の接合部分が貫通孔252からはみ出すおそれが少ない。これにより、中間部材250とマイクロミラーチップ110の接触面や中間部材250と電極基板430の接触面の間にガスや溶融した接合部材170が入り込むことなく、マイクロミラーチップ110と電極基板430とが中間部材250と良好に面接触した状態で互いに接合される。
【0050】
本実施形態によるマイクロミラーデバイス400では、マイクロミラーチップ110と電極基板430とが中間部材250と良好に面接触するので、マイクロミラーチップ110と電極基板430とが高い間隔精度をもって接合される。また、中間部材250が溶融した接合部材170を収容するくぼみ256A,256Bを有しているため、溶融した接合部材170がマイクロミラーチップ110の可動ミラー部122やヒンジ部126にはみ出して可動ミラー部122やヒンジ部126を汚染することが良好に防止される。さらに電極基板430がくぼみ434を有しているため、特に、溶融した接合部材170が電極基板430の駆動電極442にはみ出して駆動電極442をショートさせることがさらに良好に防止される。
【0051】
本実施形態において、接合部材170の接合余剰物質の排出効率と接合部材170の余剰部分のはみ出し防止のさらなる向上のために、マイクロミラーチップ110に電極基板430と同様の貫通孔や逃げ溝を設けてもよい。すなわち、マイクロミラーチップ110に代えて第三実施形態で説明したマイクロミラーチップ310を使用してもよい。
【0052】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一実施形態によるマイクロミラーデバイスの分解斜視図である。
【図2】図1に示したマイクロミラーデバイスの接合断面を示している。
【図3】図2に示した中間部材の平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態によるマイクロミラーデバイスの接合断面を示している。
【図5】図4に示した中間部材の平面図である。
【図6】本発明の第三実施形態によるマイクロミラーデバイスの接合断面を示している。
【図7】図6に示したマイクロミラーチップの平面図である。
【図8】本発明の第四実施形態によるマイクロミラーデバイスの接合断面を示している。
【図9】図8に示した電極基板の平面図である。
【符号の説明】
【0054】
100…マイクロミラーデバイス、110…マイクロミラーチップ、112…接合パッド、122…可動ミラー部、124…支持部、126…ヒンジ部、130…電極基板、132…接合パッド、142…駆動電極、150…中間部材、152…貫通孔、154A,154B…逃げ溝、162…逃げ穴、170…接合部材、200…マイクロミラーデバイス、250…中間部材、252…貫通孔、254A,254B…逃げ溝、256A,256B…くぼみ、258…連絡孔、260A,260B…メタル層、262…逃げ穴、300…マイクロミラーデバイス、310…マイクロミラーチップ、312…接合パッド、316…貫通孔、318…メタル層、320…逃げ溝、322…可動ミラー部、324…支持部、326…ヒンジ部、400…マイクロミラーデバイス、430…電極基板、432…接合パッド、436…貫通孔、438…メタル層、440…逃げ溝、442…駆動電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と、
第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材とを接合する少なくとも一つの接合部材と、
前記接合部材を収容する少なくとも一つの第一の貫通孔を有し、前記第一の部材と前記第二の部材の間に両者に接して配置されて両者の間隔を制御する中間部材と、
前記接合部材の接合余剰物質を前記第一の貫通孔から排出するための、前記第一の貫通孔を外部空間とつないでいる排出経路とを有している、マイクロミラーデバイス。
【請求項2】
前記排出経路は、前記第一の部材と接触する前記中間部材の第一の面と前記第二の部材と接触する前記中間部材の第二の面との少なくとも一方に形成された第一の溝を含んでいる、請求項1に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項3】
前記排出経路は、前記中間部材と接触する前記第一の部材の面と前記中間部材と接触する前記第二の部材の面との少なくとも一方に形成された第二の溝を含んでいる、請求項1または2に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項4】
前記第一の部材と前記第二の部材の少なくとも一方は、前記接合部材が接合される接合パッドと、前記接合パッドの周囲に設けられた少なくとも一つの第一のくぼみと、前記第一のくぼみを前記外部空間とつないでいる第二の貫通孔とを有し、前記排出経路は、前記第一のくぼみと前記第二の貫通孔をさらに含んでいる、請求項2または3に記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項5】
前記第一の部材は、少なくとも一つの可動部と、前記可動部を機械的に支える支持部とを備え、前記第二の部材は、前記可動部と対向する位置に、前記可動部を駆動するための電極を備え、前記中間部材は、前記第一の部材の支持部と同じ形状を有し、前記接合部材を収容する複数の第一の貫通孔を有する、請求項2ないし4のいずれか一つに記載のマイクロミラーデバイス。
【請求項6】
前記接合部材はハンダで構成され、前記第一の貫通孔は、前記中間部材の前記第一の面と前記第二の面との少なくとも一方に形成された第二のくぼみを含み、前記中間部材は、前記第二のくぼみの底面に形成された、前記ハンダを留めておくためのメタル層を有している、請求項2ないし5記載のいずれか一つに記載のマイクロミラーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−157113(P2009−157113A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335322(P2007−335322)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】