説明

マイクロレンズシートの成形型の製造方法、マイクロレンズシートの成形型及びマイクロレンズシート

【課題】非対称の形状をしたレンズを有するマイクロレンズシートの製造に用いられる成形型を製造する方法を提供する。
【解決手段】
母材51にレジストを塗布して、マスク65を形成する(ステップS2)。マスク65に形成される開口66の形状を設定する形状設定工程が行われる(ステップS3)。レーザが、設定された形状に基づいてマスク65に照射され、複数の開口66がマスク65に形成される(ステップS4,S5)。ステップS3において設定される開口66は、仮想分割線66yにより分割される第1領域66R及び第2領域66Lを有する。仮想分割線66yは、開口66を線対称に分割する仮想二等分線66xに直交する。第1領域66Rの面積は、第2領域66Lの面積よりも小さい。第1領域66Rにおけるエッチング速度が、第2領域66Lにおけるエッチング速度よりも小さくなるため、左右非対称の凹部62が、銅めっき層64に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズシートの製造に用いられる成形型の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、マイクロレンズシートをエンボス加工により製造するために用いる成形型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに代表される表示装置は、高い正面輝度を求められる。そのため、表示装置を構成するバックライト装置には、正面輝度を向上するためのマイクロレンズシートが敷設される。
【0003】
マイクロレンズシートの一方の表面(以下、主面という)には、半球状の形状をした複数の凸レンズ(マイクロレンズ)がマトリクス状に配列される。マイクロレンズシートの他方の表面には、光源からの拡散光が入射される。マイクロレンズは、他方の表面から入射した拡散光を、主面に対して垂直な方向に集光して出射する。
【0004】
マイクロレンズシートの製造方法が、下記の特許文献1,2に開示されている。特許文献1,2に開示されているマイクロレンズシートの製造方法は、ロール状の金型を用いたエンボス加工により、マイクロレンズシートを製造する。しかし、下記特許文献1,2には、非対称な形状を有するマイクロレンズを有する光学シートの製造に用いる金型の製造方法が開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−58494号公報
【特許文献2】特開2010−44229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非対称の形状を有するレンズが配置されたマイクロレンズシートの製造に用いられる成形型を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明によるマイクロレンズシートの成形型の製造方法は、塗布工程と、開口形成工程と、エッチング工程と、形状設定工程とを備える。塗布工程は、成形型の母材の表面にレジストを塗布して、レジスト層からなるマスクを形成する。開口形成工程は、マスクにレーザを照射して、複数の開口をマスクに形成する。エッチング工程は、複数の開口を有するマスクが形成された母材に対してウェットエッチングを行い、複数の開口に対応した複数の凹部を母材表面に形成する。形状設定工程は、複数の開口を前記マスクに形成する前に、複数の開口の形状を設定する。形状設定工程により設定される開口は、第1及び第2領域を含む。第1及び第2領域は、開口を線対称に分割する仮想二等分線の中心を通り、仮想二等分線と直交する仮想分割線により分けられる。第1領域の面積は、第2領域の面積よりも小さい。
【0008】
第1領域の面積が第2領域の面積よりも小さいため、第1領域に対応する母材表面のエッチング速度は、第2領域に対応する母材表面のエッチング速度よりも小さくなる。これにより、成形型に形成される凹部の形状を非対称とすることができるため、非対称な形状を有するマイクロレンズが配置された光学シートを製造することが可能となる。
【0009】
好ましくは、開口形成工程では、複数の開口のそれぞれに対応する仮想二等分線が互いに並行する。
【0010】
この場合、各開口における第2領域から見た第1領域の方向が、仮想二等分線の方向に揃えられる。マイクロレンズの向きを制御することができるため、マイクロレンズシートの光学特性を制御することができる。
【0011】
好ましくは、仮想二等分線の指す方向の一方を第1方向とした場合、第1領域は、前記仮想分割線から見て第1方向側に配置される。
【0012】
この場合、各開口における第2領域から見た第1領域の方向を第1方向に揃えられるため、マイクロレンズシートの光学特性を制御することができる。
【0013】
好ましくは、開口は、三角形状である。好ましくは、開口形成工程では、第1領域内に前記マスクの一部が残存するように、前記開口を設定する。本発明によるマイクロレンズシートの成形型は、上述の製造方法によって製造される。
【0014】
本発明によるマイクロレンズシートは、基材部と、複数の光学素子とを備える。基材部は、主面と、主面と反対側の裏面とを有する。複数の光学素子は、主面側に形成される。複数の光学素子は、主面からの高さが最大となる頂点を通り、かつ、主面に垂直な仮想面に対して左右非対称な形状をそれぞれ有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による第1の実施の形態に係る光学シートの平面図である。
【図2】図1に示す光学シートのK−K断面図である。
【図3】図1に示すレンズの拡大図である。
【図4】図3に示すレンズの側面図である。
【図5】光学シートを利用したバックライト装置の構成を示す模式図である。
【図6】バックライト装置の輝度特性を示すグラフである。
【図7】光学シートの製造に用いられる金型ロールの斜視図である。
【図8】金型ロールのロール表面の展開図である。
【図9】図8に示すロール表面のM−M断面図である。
【図10】図8に示すロール表面の拡大図である。
【図11】成形型の製造手順を示すフローチャートである。
【図12】成形型の母材の断面図である。
【図13】マスクに形成される開口を示す図である。
【図14】図13に示す開口の拡大図である。
【図15】光学シートの製造装置の構成を示す模式図である。
【図16】本発明による第2の実施の形態において、マスクに形成される開口を示す図である。
【図17】図16に示す開口の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
{第1の実施の形態}
[光学シート1の構造]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学シート1の平面図である。図2は、図1に示すK−K断面図である。図1及び図2を参照して、光学シート1は、基材部11と、複数のレンズ12とを備えたマイクロレンズシートである。図1及び図2において、一部のレンズ12に対する符号の表示を省略している。
【0018】
以下、図1に示す矢印Xが指す方向を横方向と呼び、矢印Yが指す方向を縦方向と呼ぶ。図2に示す矢印Zが指す方向を上方向と呼ぶ。
【0019】
基材部11は、シート状またはフィルム状であり、可視光に対して透明である。基材部11は、主面13と、裏面14とを有する。主面13には、複数のレンズ12が形成される。裏面14は、主面13と反対側に配置される。基材部11は、樹脂からなる。樹脂は、たとえば、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニルなどである。
【0020】
レンズ12は、主面13上のランダムな位置に形成される。レンズ12は、非対称の形状を有する。本実施の形態では、レンズ12は、たまごを半分に割った形状(以下、半たまご形という)である。レンズ12は、たとえば、活性エネルギ線硬化樹脂からなる。活性エネルギ線硬化樹脂は、紫外線や電子線、可視光に代表される活性エネルギ線で硬化する。活性エネルギ線硬化樹脂は、たとえば、ポリエステル系アクリレート樹脂、ウレタン系アクリレート樹脂、ポリエーテル系アクリレート樹脂、エポキシ系アクリレート樹脂、ポリエステル系メタクリレート樹脂、ウレタン系メタクリレート樹脂、ポリエーテル系メタクリレート樹脂である。
【0021】
図3は、図1に示す領域AR1の拡大図である。図4は、図3に示すレンズ12の側面図である。図3及び図4を参照して、レンズ12において、主面13からの高さが最大となる点を頂点12aとする。ここで、レンズ12の横軸12x、縦軸12y、及び高さ軸12zを定義する。高さ軸12zは、頂点12aを通り、主面13に対して垂直な直線である。横軸12xは、矢印Xに平行な主面13上の直線であり、高さ軸12zと交差する。レンズ12の平面視において、横軸12xは、レンズ12を線対称に分割する仮想二等分線である。縦軸12yは、矢印Yに平行な主面13上の直線であり、高さ軸12zと交差する。
【0022】
レンズ12は、平面視でたまご形の形状である。レンズ12は、横軸12x及び高さ軸12zを含む仮想面に対して左右対称である。レンズ12は、縦軸12y及び高さ軸12zを含む仮想面に対して左右非対称の形状である。つまり、レンズ12は、平面視で、縦軸12yに対して左右非対称な形状を有する。 レンズ12が基材部11に接する縁部のうち、横軸12xと交わる部位を端部12b,12cとする。端部12bは、頂点12aよりも紙面右側(矢印Xの方向)に位置する。端部12cは、頂点12aよりも紙面左側(矢印Xの反対方向)に位置する。端部12cから端部12bを見た方向を、レンズ12の順方向とする。図1を参照して、レンズ12の順方向は、矢印Xの指す方向と一致する方が好ましい。
【0023】
図3及び図4を参照して、レンズ12の表面は、縦軸12yを含む仮想面により、表面12Lと表面12Rとに分割される。表面12Lは、端部12c側に配置される。表面12Rは、端部12b側に配置される。表面12Rは、表面12Lよりより緩やかな曲面を有する。そして、表面12Rの表面積は、表面12Lの表面積よりも大きい。したがって、光学シート1の裏面14から入射した光のうち、表面12Rで屈折する光の量は、表面12Lで屈折する光の量よりも多い。
【0024】
[光学シート1の光学特性]
図5は、光学シート1を利用したバックライト装置100の構成を示す模式図である。バックライト装置100は、エッジライト型の照明装置である。バックライト装置100は、光源101と、導光板102と、反射シート103と、プリズムシート2と、光学シート1とを備える。矢印Z方向を、バックライト装置100の正面方向とする。
【0025】
プリズムシート2の構成を簡単に説明する。プリズムシート2は、基材部21と、複数の光学素子22とを有する。基材部21は、透明なフィルム状又はシート状である。基材部21の上に、紙面手前側から奥方向(Y方向)に延びる複数の光学素子22が形成されている。XZ平面における光学素子22の横断形状は、Z軸方向に関して非対称である。光学素子22は、尾根部30,40を有する。尾根部30は、プリズムシート2の紙面左側の端部2a側に配置される。尾根部40は、プリズムシート2の紙面右側の端部2b側に配置され、尾根部30よりも低い。
【0026】
尾根部30は、一対の傾斜面31,32を含む。尾根部40は、一対の傾斜面41,42を含む。傾斜面31は、端部2a側に配置され、基材部21まで延びる。傾斜面32は、端部2b側に配置される。傾斜面41は、端部2a側に配置される。傾斜面32の下端と傾斜面41の下端とは、つながっている。傾斜面42は、端部2b側に配置され、基材部21まで延びる。
【0027】
光学シート1は、レンズ12の表面12Lが表面12Rよりも光源101に近くなるように、プリズムシート2上に配置される。
【0028】
バックライト装置100における光の経路について説明する。導光板102は、光源101から出射した光を、プリズムシート2に導く。光源101から出射した光は、導光板102の端面から入射する。端面からの入射光は、導光板102の内部を進行して出射面102aから出射光54として出射する。出射光54は、プリズムシート2の下面に入射する。プリズムシート2は、下面から入射した出射光54を、光学素子22の表面(傾斜面32,41,42)でZ方向に屈折することにより、出射光52として出射する。光学シート1は、裏面14から入射した出射光52を矢印Z方向に屈折させることにより、出射光53として矢印Z方向に出射する。
【0029】
出射光54の輝度のピーク方向は、Z軸方向から紙面右側(光源101と反対側)に角度A54傾斜する。同様に、出射光52の輝度のピーク方向は、Z軸方向から紙面右側(光源101と反対側)に角度A52傾斜する。出射光53の輝度のピーク方向は、Z軸方向から紙面右側に角度A53傾斜する。出射光54〜53のそれぞれの輝度のピーク方向は、光学シート1側に進むに従って、矢印Zの指す方向に近づく。すなわち、角度A52〜A54の関係は、角度A53<角度A52<角度A54となる。
【0030】
図6は、図5に示す構成を有するバックライト装置100の輝度特性を示すグラフである。図6を参照して、実線は、出射光53の輝度分布を示し、バックライト装置100の輝度特性に対応する。破線は、光学シート1に代えて、従来のマイクロレンズシートを用いたバックライト装置の輝度特性である。光学シート1を用いたバックライト装置100の輝度特性のピーク(出射光53の輝度ピーク)が、従来のバックライト装置の輝度特性のピークよりも正面方向(視野角0°)に近い。
【0031】
上述のとおり、光学シート1は、レンズ12の表面12Lが表面12Rよりも光源101に近くなるように配置される。そのため、光学シート1は、角度A52だけ傾いた入射した光52を受け、出射光53をZ方向に近づけることができる。
【0032】
また、光学シート1の複数のレンズ12はランダムに配置される。そのため、視野角をある程度広く維持できる。さらに、モアレの発生が抑制される。
【0033】
以上のとおり、本実施の形態の光学シート1をバックライト装置100などの照明装置に用いることにより、上述のとおり輝度特性が改善される。
【0034】
[光学シート1の成形型の構造]
光学シート1は、成形型を用いたエンボス加工により製造される。以下、光学シート1の製造に用いる成形型の構成を説明する。
【0035】
図7は、光学シート1の製造に用いられる成形型50の斜視図である。図7を参照して、成形型50は、ロール状の金型である。成形型50は、ロール胴部60と、ロール軸部70とを備える。ロール胴部60は、円柱状である。ロール軸部70は、ロール胴部60と同軸に配置される。ロール胴部60は、ロール表面61を有する。矢印Cは、ロール胴部60の円周方向を示す。矢印Aは、ロール胴部60の軸方向を示す。矢印Rは、ロール胴部60の半径方向を示す。
【0036】
図8は、ロール表面61の展開図であり、ロール表面61を矢印R方向から見た図に相当する。矢印C,Aは、それぞれ矢印X,Y(図1参照)にそれぞれ対応する。ロール表面61には、レンズ12の形状に対応した複数の凹部62がランダムな位置に形成される。2〜3個の凹部62が、つながるようにして形成されている。これは、図1に示すように、光学シート1において、2個以上のレンズ12がつながって形成されることがあるためである。
【0037】
図9は、図8に示すロール表面61のM−M断面図である。図10は、図8に示す領域AR2の拡大図である。図9を参照して、ロール胴部60の表面には、銅めっき層64が形成されている。ロール表面61は、銅めっき層64の露出面に相当する。凹部62は、銅めっき層64に形成される。
【0038】
図9及び図10を参照して、凹部62は、レンズ12の形状に対応した窪みである。凹部62において最も深い点を最深点62aとする。凹部62において、横軸62x及び縦軸62yを定義する。横軸62xは、ロール表面61上に配置される矢印Cに並行な直線であり、最深点62aの真上を通過する。
【0039】
縦軸62yは、ロール表面61上に配置される矢印Aに並行な直線であり、最深点62aの真上を通過する。横軸62x及び縦軸62yは、レンズ12の横軸12x及び縦軸12yにそれぞれ対応する。凹部62は、縦軸62yを含み、かつロール表面61に垂直な仮想面に対して非対称な形状である。
【0040】
ロール表面61と凹部62との境界に相当する輪郭のうち、横軸62xとの交点を端部62b,62cとする。端部62bは、レンズ12の端部12bに対応し、最深点62aより紙面右側に位置する。端部62cは、レンズ12の端部12cに対応し、最深点62aよりも紙面左側に位置する。端部62cから端部62bを見た方向を、凹部62の順方向とする。凹部62の順方向と、レンズ12の順方向とは、一致する。
【0041】
図9及び図10を参照して、凹部62の表面は、縦軸62yを含む仮想面により、表面62Rと表面62Lとに分割される。表面62Rは、曲面であり、最深点62aから紙面右側に配置される。表面62Lは、曲面であり、最深点62aから紙面左側に配置される。表面62Rは、表面62Lよりより緩やかな曲面を有する。そして、表面62Rの表面積は、表面62Lの表面積よりも大きい。
【0042】
[成形型50の製造方法]
以下、成形型50の製造方法について説明する。図11は、成形型50の製造手順を示すフローチャートである。図12は、成形型50の素材である母材51の断面図である。図12は、現像工程(ステップS5、図11参照)の後における、母材51の断面を示し、成形型50のロール胴部60のM−M断面に対応する。
【0043】
図11及び図12を参照して、最初に、円柱状の母材51を準備する(ステップS1)。母材51は、ロール胴部60と、ロール軸部70とを備える。ロール胴部60の円周面には、既に銅めっき層64が形成されている。
【0044】
塗布工程(ステップS2)では、母材51の表面にレジストを塗布して、レジスト層からなるマスク65を形成する。すなわち、マスク65が、銅めっき層64の上に形成される。レジストとして、たとえば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどを用いることができる。ステップS2の塗布工程が終了した段階では、凹部62及び開口66は、形成されていない。
【0045】
形状設定工程(ステップS3)では、マスク65に形成される開口66の形状が設定される。つまり、マスク65に対してレーザを照射する領域を、レーザ照射装置(図示省略)に対して設定する。
【0046】
露光工程(ステップS4)では、形状設定工程(ステップS3)により設定された開口66の形状に基づいて、マスク65にレーザが照射される。
【0047】
次に、現像工程(ステップS5)では、マスク65のうちレーザが照射された領域のレジストが除去される。これにより、開口66が形成される(図12参照)。レジストの除去には、レジストに用いられた材料に応じた現像剤が用いられる。つまり、露光工程(ステップS4)及び現像工程(ステップS5)は、マスク65にレーザを照射して、複数の開口66をマスク65に形成する開口形成工程である。
【0048】
なお、マスク65の露光にレーザアブレーション露光を用いた場合、露光された領域が開口66となる。この場合、現像工程(ステップS5)を省略することができる。
【0049】
図13を参照して、マスク65に形成された開口66を示す。説明の便宜上、凹部62の位置を破線で示す。開口66は、三角形状であり、マスク65上のランダムな位置に配置される。
【0050】
図14は、開口66の拡大図である。説明の便宜のために、凹部62と、凹部62の各部位を図14に示す。図14を参照して、開口66は、三角形状である。より具体的には、三角形の三辺の一部が階段状となっている。本明細書において、三角形状とは、階段状の辺を有するものも含む。階段状の辺が形成されるのは、図示しないレーザ照射装置の解像度が矩形状に制限されるためである。なお、開口66の各辺は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。
【0051】
開口66は、第1領域66Rと、第2領域66Lとを含む。第1領域66R及び第2領域66Lは、仮想分割線66yにより分けられる。仮想分割線66yは、仮想二等分線66xの中点66Mを通り、仮想二等分線66xと直交する。仮想二等分線66xは、開口66を線対称に分割する。仮想二等分線66xは、端部62bと端部62cとをつなぐ横軸62xの一部である(図10参照)。
【0052】
第1領域66Rの面積は、第2領域66Lの面積よりも小さい。より具体的には、第1領域66Rの形状は、三角形状であり、第2領域66Rの形状は、台形状である。開口66は、仮想分割線66yにより左右非対称に分割される。
【0053】
各開口66における仮想二等分線66xは、互いに並行である。矢印Cの指す方向を第1方向とする。第1領域66Rは、開口66の第1方向側に配置される。第2領域66Lは、開口66の第1方向側と反対側に配置される。つまり、頂点66Aが、仮想分割線66yよりも紙面右側に配置される。底辺66Sが、仮想分割線66yよりも紙面左側に配置される。これにより、各凹部62の順方向を揃えることが可能となる。
【0054】
現像工程(ステップS5)の後に、エッチング工程が行われる(ステップS6)。エッチング工程では、複数の開口66を有するマスク65が形成された母材51に対してウェットエッチングを行い、複数の開口66に対応した複数の凹部62を母材51の表面に形成する。母材51の表面には銅めっき層64が形成されている。そのため、エッチング液として、たとえば、塩化第二銅用液や、塩化第二鉄用液、硫酸/過酸化水素系エッチング液などが用いられる。
【0055】
ウェットエッチングにより、開口66により露出した銅めっき層64だけでなく、開口66の周囲のマスク65の下にある銅めっき層64もエッチングされる。したがって、開口66を三角形状としても、平面視でたまご形の凹部62(図8参照)が形成される。
【0056】
図14を参照して、最深点62aと、仮想二等分線66xの中点66Mとは、一致するとは限らない。第1領域66Rの面積が第2領域66Lよりも小さいために、第2領域66Lに対応する銅めっき層64のエッチング速度が、第1領域66Rに対応する銅めっき層64のエッチング速度よりも大きくなるためである。また、第1領域66Rと第2領域66Lとにおけるエッチング速度の違いにより、なだらかな傾斜を有する表面62Rと、急な傾斜を有する表面62Lとを有する左右非対称の凹部62が形成される(図9参照)。
【0057】
最後に、除去工程(ステップS7)として、母材51の表面に形成されたマスク65を除去する。これにより、成形型50の全ての製造工程が終了する。なお、除去工程(ステップS7)の後に、無電解メッキ法により、銅めっき層64上にニッケル層を形成してもよい。ニッケル層は表面保護の役割を有する。
【0058】
以上の工程により、開口66を有するマスク65を用いて、成形型50が容易に製造される。
【0059】
[光学シート1の製造工程]
上述の成形型50を用いて、エンボス加工により光学シート1を製造する。図15を参照して、光学シート1の製造装置320は、基材フィルムロール321と、巻き取りロール302と、ニップロール303と、バックアップロール304と、遮蔽板305と、照射装置306と、形成型50と、塗布装置308とを備える。基材フィルムロール321は円柱状であり、そのロール表面には、基材部11に相当する基材フィルム(以降、基材フィルム11という)が巻かれている。
【0060】
製造装置320を用いた光学シート1の製造方法は以下のとおりである。まず、基材フィルム11が巻かれた基材フィルムロール321を準備し、所定の位置に配置する。そして、液状の活性エネルギ線硬化樹脂を準備する。活性エネルギ線硬化樹脂は、レンズ12の素材である。
【0061】
配置された基材フィルムロール321から基材フィルム11を巻き出して、基材フィルム11を成形型50に向かって搬送する。
【0062】
塗布装置308は、ダイコータ等である。塗布装置308から、液状の活性エネルギ線硬化樹脂をロール表面61上に塗布する。塗布された活性エネルギ線硬化樹脂は、ロール表面61上に拡がって活性エネルギ線硬化樹脂層200を形成する。活性エネルギ線硬化樹脂層200は未硬化である。
【0063】
基材フィルム11がニップロール303と成形型50との間を通過するとき、ニップロール303により基材フィルム11を成形型50に押しつける。このとき、ロール表面61上の活性エネルギ線硬化樹脂層200に基材フィルム11が接触する。その結果、活性エネルギ線硬化樹脂層200は、基材フィルム11と成形型50のロール表面61との間に挟まれる。このとき、活性エネルギ線硬化樹脂が各凹部62に充填される。
【0064】
次に、照射装置306により、成形型50の下方から活性エネルギ線を活性エネルギ線硬化樹脂層200に照射する。基材フィルム11とロール表面61との間に挟まれた活性エネルギ線硬化樹脂層200は硬化し、レンズ12が形成される。遮蔽板305は、ロール表面61の凹凸が活性エネルギ線硬化樹脂層200に確実に転写された後で活性エネルギ線が活性エネルギ線硬化樹脂層200に照射されるように、活性エネルギ線の拡散を防止する。
【0065】
以上の工程により製造された光学シート1を、成形型50から引き剥がし、バックアップロール304を介して巻き取りロール302に向かって搬送する。そして、巻き取りロール302で巻き取る。以上の工程により光学シート1が製造される。
【0066】
このように、本実施の形態では、露光工程(ステップS4)及び現像工程(ステップS5)により、第1領域66Rと第2領域66Lとを含む開口66が、マスク65に形成される。第1領域66Rの面積は、第2領域66Lの面積よりも小さい。エッチング工程(ステップS6)において、第1領域66Rにおけるエッチング速度が、第2領域66Lにおけるエッチング速度よりも小さくなる。これにより、左右非対称の形状の凹部62を有する成形型50を製造することができる。
【0067】
{第2の実施の形態}
本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、成形型50の製造工程のうち、形状設定工程(ステップS3、図11参照)により設定される開口の形状が、第1の実施の形態と異なる。以下、上記第1の実施の形態と異なる点を中心に、本実施の形態について詳しく説明する。
【0068】
図16は、本実施の形態において、マスク65に形成される開口67を示す図である。図16を参照して、開口67は、第1の実施の形態と異なり、円形状である。開口67は、マスク65上のランダムな位置に配置される。
【0069】
図17は、開口67の拡大図である。図17を参照して、レーザ装置の解像度の制限を受けるために、開口67の周縁は、階段状である。このように、開口67の形状は、正確な円でなくてもよい。本明細書にいう「円形状」とは、円周が、図17に示すような階段状のものも含む。
【0070】
開口67における仮想二等分線67x及び仮想分割線67yを定義する。仮想二等分線67xは、矢印Cに平行な直線であり、開口67を線対称に分割する。仮想二等分線67xは、横軸62xの一部である。仮想分割線67yは、仮想二等分線67xの中点67Mを通り、仮想二等分線67xに直交する直線である。開口67は、第1の実施の形態と同様に、仮想分割線67yにより、第1領域67Rと、第2領域67Lとに分割される。
【0071】
図17において、開口67の内側に残存するマスク65を格子模様で示す。第1領域67Rには、マスク65の一部が残存している。一方、第2領域67Lには、マスク65が残存していない。このため、第1領域67Rの面積は、第2領域67Lの面積よりも小さい。つまり、形状設定工程(ステップS3)では、マスク65の一部が第1領域67Rに残存するように、レーザの照射パターンが設定される。
【0072】
第1の実施の形態と同様に、第1領域67Rの面積が第2領域67Lの面積よりも小さいため、第1領域67Rにおけるエッチング速度が、第2領域67Lにおけるエッチング速度よりも小さくなる。このため、凹部62が開口67に基づいて形成された場合であっても、最深点62aの位置と、中点66Mの位置とが一致するとは限らない。また、第1領域67Rと第2領域67Lとでエッチング速度が異なるため、そのため、開口67を有するマスクを用いた場合でも、母材51には、凹部62が形成される。つまり、開口67により、なだらかな傾斜を有する表面62Rと、急な傾斜を有する表面62Lとを有する凹部62が形成される。
【0073】
このように、本実施の形態では、内部にマスク65の一部が残存する第1領域67Rと、内部にマスク65が残存しない第2領域67Lとが形成される。これにより、第1領域67R及び第2領域67Lのそれぞれに対応する銅めっき層64のエッチング速度を制御することができるため、左右非対称な凹部62を有する成形型50を作成することが可能となる。
【0074】
なお、本実施の形態において、開口67の形状を円形状としたが、これに限られない。開口67の形状は、レンズ12の形状に応じて適宜変更することが可能である。また、上記実施の形態では、光学シート1の製造にロール状の成形型50を用いる例を説明した。しかし、ロール状の成形型50に代えて、平板状の成形型50を用いて光学シート1を製造してもよい。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 光学シート
11 基材部
12 レンズ
12a 頂点
13 主面
14 裏面
50 成形型
51 母材
60 ロール胴部
61 ロール表面
62 凹部
62a 最深点
65 マスク
66,67 開口
66R,67R 第1領域
66L,66R 第2領域
66x,67x 仮想二等分線
66y,67y 仮想分割線
70 ロール軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズシートの成形型の製造方法であって、
前記成形型の母材の表面にレジストを塗布して、レジスト層からなるマスクを形成する塗布工程と、
前記マスクにレーザを照射して、複数の開口を前記マスクに形成する開口形成工程と、
前記複数の開口を有する前記マスクが形成された前記母材に対してウェットエッチングを行い、前記複数の開口に対応した複数の凹部を前記母材表面に形成するエッチング工程と、
前記複数の開口を前記マスクに形成する前に、前記複数の開口の形状を設定する形状設定工程とを備え、
前記形状設定工程により設定される開口は、
前記開口を線対称に分割する仮想二等分線の中心を通り、前記仮想二等分線と直交する仮想分割線により分けられる第1及び第2領域を含み、
前記第1領域の面積は、前記第2領域よりも小さいマイクロレンズシートの成形型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロレンズシートの成形型の製造方法であって、
前記開口形成工程では、前記複数の開口のそれぞれに対応する複数の前記仮想二等分線が互いに並行する、マイクロレンズシートの成形型の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロレンズシートの成形型の製造方法であって、
前記仮想二等分線の指す方向の一方を第1方向とした場合、前記第1領域は、前記仮想分割線から見て第1方向側に配置される、マイクロレンズシートの成形の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロレンズシートの成形型の製造方法であって、
前記開口は、三角形状である、マイクロレンズシートの成形型の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のマイクロレンズシートの成形型の製造方法であって、
前記開口形成工程では、前記第1領域内に前記マスクの一部が残存するように、前記開口を設定する、マイクロレンズシートの成形型の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された、マイクロレンズシートの製造に用いられる成形型。
【請求項7】
請求項6に記載の成形型を用いて製造されたマイクロレンズシートであって、
主面と、前記主面と反対側の裏面とを有する基材部と、
前記主面側に形成された複数の前記光学素子とを備え、
前記複数の光学素子は、
前記主面からの高さが最大となる頂点を通り、かつ、前記主面に垂直な仮想面に対して左右非対称な形状をそれぞれ有するマイクロレンズシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−255618(P2011−255618A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133045(P2010−133045)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】