説明

マイクロ波アシスト磁気記録用スピントルクオシレータ

【課題】
マイクロ波アシスト記録を行う磁気ヘッドでは、磁化高速回転体(Field Generation Layer:FGL)の飽和磁化の大きさが大きくなるに従って、端部と中央部の反磁界の大きさの違いが大きくなるため、マイクロ波を発生させるFGLは、単磁区状態で発振しない。
【解決手段】
マイクロ波アシスト記録の磁気ヘッドに用いるスピントルクオシレータは,固定層、非磁性中間層、交流磁界発生層をそれぞれ少なくとも一つ以上有しており、交流磁界発生層の膜中央部における飽和磁化よりも浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化の方を小さくする構造を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波アシスト記録を行う磁気ヘッドにおける磁化高速回転体(Field Generation Layer:FGL)を安定に単磁区状態で発振させる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(Hard disk drive)の記録密度向上に伴い、記録媒体のビットサイズは微細化が進んでいる。しかし、ビットサイズの微細化が進むにつれ、熱揺らぎによる記録状態の消失が懸念される。このような問題を解決し、将来の高密度記録での記録ビットを安定に維持するためには保磁力の大きな(すなわち磁気異方性の大きな)記録媒体を使用する必要があるが、保磁力の大きな記録媒体に記録を行うためには強い記録磁界が必要である。しかし実際には、記録ヘッドの狭小化及び、利用可能な磁性材料の制限により、記録磁界強度にも上限がある。このような理由により、記録媒体の保磁力は、記録ヘッドで発生可能な記録磁界の大きさによって制約される。このように、媒体の高い熱安定性と、記録しやすい保磁力という、相反する要求に応えるため、各種の補助手段を使って記録媒体の保磁力を記録時にのみ実効的に低くする記録手法が考案されており、磁気ヘッドとレーザなどの加熱手段を併用して記録を行う熱アシスト記録などがその代表である。
【0003】
一方、記録ヘッドからの記録磁界に高周波磁界を併用することにより記録媒体の保磁力を局所的に低減させて記録を行う手法も存在する。例えば、特許文献1には、高周波磁界により磁気記録媒体をジュール加熱あるいは磁気共鳴加熱し、媒体保磁力を局所的に低減することにより情報を記録する技術が開示されている。このような高周波磁界と磁気ヘッド磁界との磁気共鳴を利用する記録手法(以降、マイクロ波アシスト記録という)では、磁気共鳴を利用するため、反転磁界の低減効果を得るためには、媒体の異方性磁界に比例する、大きな高周波磁界を印加することが必要である。
【0004】
近年になり、スピントルク発振器のように、スピントルクを用いた高周波磁界の発生原理が提案され、マイクロ波アシスト記録の可能性が現実的なものとなってきた。たとえば、非特許文献1には、外部からのバイアス磁界なしに発振するスピントルク発振器に関する計算結果が開示されている。また、非特許文献2には、垂直磁気ヘッドの主磁極に隣接した磁気記録媒体近傍に、スピントルクによって磁化が高速回転する磁化高速回転体(Field Generation Layer:FGL)を配置してマイクロ波(高周波磁界)を発生させ、磁気異方性の大きな磁気記録媒体に情報を記録する技術が開示されている。さらに、非特許文献3には、FGLに近接する主磁極の磁界を利用してFGLの回転方向を制御するスピントルク発振器が提示され、これにより、効率的に、媒体のマイクロ波アシスト磁化反転が実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−243527号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】X. Zhu and J. G. Zhu, “Bias-Field-Free Microwave Oscillator Driven by Perpendicularly Polarized Spin Current” IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, P2670 VOL.42, NO.10 (2006)
【非特許文献2】J. G. Zhu and X. Zhu, ‘Microwave Assisted Magnetic Recording,’ The Magnetic Recording Conference (TMRC) 2007 Paper B6 (2007)
【非特許文献3】J. Zhu and Y. Wang, ‘Microwave Assisted Magnetic Recording with Circular AC Field Generated by Spin Torque Transfer,’ MMM Conference 2008 Paper GA-02 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロ波アシスト記録用のスピントルク発振器を構成するFGLに求められる特性は、大きな高周波磁界強度を安定して発振させることである。
【0008】
FGLが発生する高周波磁界の強度を増加させる方法は,飽和磁化の大きな材料をFGLに用いることである。
【0009】
安定した発振状態とは,FGL内の磁化が,スピントルクにより回転する際に,同方向にそろって回転している,すなわち単磁区状態で発振していることである。発振が不安定で磁化回転が同方向にそろっていない場合,すなわち多磁区状態の場合,磁化の回転状態が時間に対して一定でなくなる場合がある。この場合にはFGLから発生する磁界強度が時間に対して一定でなくなり,十分に記録をアシストできなくなってしまう問題が起きてしまう。あるいは,多磁区状態の場合には,FGL内で磁化が還流磁区状態を形成してしまう。この場合には磁化は時間に対して一定の回転状態を示すが,FGL内で磁化が還流していることから,FGLから外部に向けて十分な磁界を発生できず,記録をアシストできなくなってしまうという問題が生じる。このように,FGLを単磁区状態で発振させることが,マイクロ波アシスト記録では必要条件である。
FGLが単磁区状態で発振しない要因としては,FGLの端部と中央部の反磁界の大きさの違いがある。FGL端部ではFGL内部と外部の境界に大きな反磁界が発生する。反磁界は、FGL内部と外部の境界に現れる面磁化が、内部の磁化とは逆向きに内部に向かって発生させる磁界である。この面磁化の大きさは、境界を挟んだ2つの磁化の大きさの差に対応して決まる。また、反磁界は、面磁化、即ち境界に近い場所ほど大きく、また、内部の磁化を減磁させる。なお、反磁界は、面磁化、即ち境界の間隔が大きくなるに従って小さくなる。その結果,FGLの中央部の反磁界の大きさとの差が大きくなる。すなわち,FGL端部の磁化が感じる磁界の強さとFGL中央部の磁化が感じる磁界の強さに大きな差ができる。その結果,FGL端部の磁化とFGL中央部の磁化は同一方向に同期して回転しなくなってしまう。すなわち単磁区状態で発振しなくなってしまう。反磁界の大きさはFGLの飽和磁化の大きさに比例するため,FGLに低い飽和磁化の材料を用いれば,反磁界の大きさを低下させることができる。しかし,飽和磁化の小さな材料を用いた場合にはFGLから発生する磁界強度が小さくなってしまうために,アシスト記録の観点からは望ましくない。
このようにマイクロ波アシスト記録では,飽和磁化の大きさを低下させる反磁界を少なくできる構造を提供することにより、FGLを安定に単磁区状態で発振させることが大きな課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明では以下の手段を用いる。従来構造のスピントルク発信器におけるFGLは膜面内において一様の飽和磁化を有している。これに対して,本発明ではスピントルク発振器におけるFGLに,膜面内方向の端部の飽和磁化を中央部分に比べて低下させた膜を用いる。反磁界の大きさは飽和磁化の大きさに比例するため,端部の飽和磁化の大きさを低下させたFGLでは,FGL端部の反磁界は低下する。その結果,FGL端部と中央部における反磁界の大きさの差が小さくなり,FGLの磁化が同期して回転する状態,すなわち単磁区状態で発振しやすくなるのである。
【0011】
このとき,FGLの媒体対向面に沿った端部の飽和磁化については,中央部と同程度の飽和磁化を有しているほうが望ましい。これは,媒体対向面に沿った端部の磁化量が低下すると,媒体に印加されるアシスト磁界強度を大きくすることができるためである。
【0012】
本発明の構造では,飽和磁化を低下させるほど,あるいは飽和磁化を低下させる領域を広げるほど単磁区化が容易になり,磁化が一斉に回転するようになる。しかし,飽和磁化を低下させるほど,あるいは飽和磁化を低下させる領域を広げるほど,FGL全体の磁化量が低下し,媒体に印加されるアシスト磁界強度は低下してしまう。したがって,FGL端部における飽和磁化の低下量 および飽和磁化を低下させる領域には最適範囲が存在する。
【0013】
FGLのトラック幅方向の端部および素子高さ方向の端部における飽和磁化の低下量は,FGLのトラック幅方向長さおよび素子高さ方向長さの比に依存して制御する必要がある。例えば素子高さ方向長さがトラック幅方向長さより長い場合,トラック幅方向のFGL端部は,素子高さ方向の端部に比べて反磁界の大きさが大きい。したがって,トラック幅方向端部の飽和磁化の低下量は素子高さ方向端部より大きくする必要がある。最適な素子高さ方向端部とトラック幅方向端部における飽和磁化の低下量の比は,素子高さ方向長さとトラック幅方向長さの逆数に略一致する。
【0014】
本発明の構造を用いると,飽和磁化の大きさを低下させる反磁界を少なくできるので、大きいアシスト磁界強度と安定な発振が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安定した発振が実現でき、信頼性が高いスピントルク発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による発振器を有する磁気記録再生ヘッドの概略図。
【図2】記録ヘッド部100とその一部である発振器110の詳細な構成例。
【図3】FGL111の膜面内の構成図。
【図4】本発明構成により得られる高周波磁界強度Hacと面積磁化比の関係。
【図5】M_edgeを1.2 Tに固定しS_edge/S_centerを変化させた場合のFGL111の単磁区化率および、完全に単磁区化したときの最大高周波磁界強度のS_edge/S_center依存性。
【図6】S_edge/S_centerが0.55である従来構造とS_edge/S_centerが1である本発明構造AのFGL111の膜面内の磁化状態。
【図7】S_edge/S_center を1 、Ms_centerを2.4 Tに固定し、Ms_edgeを2.4Tから0.0Tまで変化させたときのSDRと最大高周波磁界強度の(Ms_center − Ms_edge)/ Ms_edge依存性。
【図8】M_edgeを1.2 Tに固定しS_edge/S_centerを変化させた場合および、S_edge/S_centerを1.0 または3/7に固定しMs_edgeを2.4Tから0.0 Tまで変化させたときのSDRの面積磁化比の依存性。
【図9】Msが均一な従来構成例。
【図10】Ms_centerが2.4 T、Ms_edgeが1.2 Tである構成例。
【図11】FGL_center とFGL_edge の境界が凸凹の形状である構成例。
【図12】Ms_centerが2.4 T、Ms_edgeが1.0 Tである構成例。
【図13】第2の実施例の構成例。
【図14】第3の実施例の構成例。
【図15】第4の実施例の構成例。
【図16】第5の実施例の構成例。
【図17】従来及び本発明の構成における各値の比較。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。理解を容易にするため、以下の図において同じ機能部分には同一の符号を付して説明する。
〔実施例1〕
図1は、データの記録や再生を行う磁気記録再生ヘッドと、この磁気記録再生ヘッドによってデータの記録や再生が行われる磁気記録媒体300とを含むディスク装置における、本発明による発振器を有する磁気記録再生ヘッドの概略図を示す。
【0018】
図1に示す磁気記録再生ヘッドは、記録ヘッド部100と再生ヘッド部200から構成される、記録再生分離ヘッドである。記録ヘッド部100は高周波磁界を発生するための発振器110、記録ヘッド磁界を発生するための主磁極120、主磁極に磁場を励磁するためのコイル160から構成させる。さらに、主磁極のトレーリング方向にトレーリングシールド130を設けることが出来る。ここで、トレーリング方向はヘッドの媒体に対する進行方向と反対の方向であり、リーディング方向はヘッドの媒体対に対する進行方向であると定義する。また、図1には示していないが、主磁極120のトラック幅方向(紙面に垂直な方向)の外側にサイドシールドを設けても良い。本構成では磁気記録媒体300に対する磁気記録再生ヘッドの進行方向から見て、再生部200が先頭で記録部100が後方の配置であるが、ヘッドの進行方向から見て記録部100が先頭で再生部200が後方になるように配置を逆転した構成であっても良い。
【0019】
再生ヘッド部200は再生センサ210、下部磁気シールド220と上部磁気シールド230からなる構成である。再生センサ200は記録信号を再生する役割を担うことさえ出来れば特に特別な制限は必要がない。再生センサ200の構成としては、例えば所謂GMR(Giant Magneto-Resistive)効果を有する再生センサであっても良いし、TMR(Tunneling Magneto-Resistive)効果を有する再生センサであっても良いし、EMR(Electro Mechanical Resonant)効果を有する再生センサであっても良い。また、外部磁界に対して逆極性の応答をする2つ以上の再生センサを有する所謂差動型再生センサであっても良い。また、下部磁気シールド210と上部磁気シールド220は再生信号品質の向上に重要な役割を担うため設けることが好ましい。
【0020】
図2は本構成例における記録ヘッド部100とその一部である発振器110の詳細な構成例である。図中に示す垂直記録媒体300の記録層は磁気的に浮上面(Air Bearing Surface:ABS)に対して垂直方向に磁化される。磁気記録媒体300は一般的には、保護膜、記録層、軟磁性下地層などから構成されるが、記録層磁化の歳差運動周波数が発振器110の高周波磁界の発振周波数と概ね一致していることが好ましい。磁気記録媒体300は各ビットが連続して存在する所謂連続媒体でも良いし、複数のトッラク間に記録ヘッドにより書き込み不可能な非磁性である領域が設けられている所謂ディスクリートトラックメディアでも良い。また、基板上に、凸状の磁性パターンと磁性パターン間の凹部を充填する非磁性体とを含む所謂パターンド媒体でもよい。
【0021】
磁気ヘッド部100の発振器110は、高周波磁界を発生するFGL111、スピン透過性の高い材料からなる中間層112、FGL111にスピントルクを与えるためのスピン注入固定層113、FGLの磁化回転を安定化させるための回転ガイド層114から構成される。発振器110の構成は、図2に示すように主磁極側から回転ガイド層114、FGL111、中間層112、スピン注入固定層113の順に積層してもよいし、反対に主磁極側からスピン注入固定層113、中間層112、FGL111、回転ガイド層114の順に積層しても良い。発振器110の総膜厚の下限は特にないが、上限は200 nm程度である。これは発振器110の総膜厚が厚すぎると主磁極120とシールド130間距離が広がりすぎるため、発振器110に印加させる主磁極120からの磁界の減衰が激しくなり、FGL111の高周波発振が持続できなくなるためである。また、上記の距離が広がりすぎると、垂直記録媒体300上の磁界の印加部分とFGLからのマイクロ波の印加部分とが離れるため、マイクロ波アシスト記憶が適切に行われなくなる。
【0022】
本構成例の中間層112はCuであり、膜厚は2nm である。中間層112の材料としては非磁性体の伝導材料であることが好ましく、例えばAu,Ag,Pt,Ta,Ir,Al,Si,Ge,Tiなどを用いることが出来る。本構成例のスピン注入層113はCo/Ptであり膜厚は10 nmである。また、本構成例に用いたCo/Ptの異方性磁界Hkは8 kOeである。スピン注入層113には垂直異方性を持った材料を用いることによりFGL111の発振を安定させることが出来、例えばCo/Ptの他にCo/Ni、Co/Pd、CoCrTa/Pd などの人工磁性材料を用いることが好ましい。また、発振の安定性は若干失われるがFGL111と同様の材料を用いることも出来る。本構成例の回転ガイド層114は垂直異方性エネルギーを持ったCo/Niであり、膜厚は10 nmである。また、本構成例におけるCo/NiのHkは5 kOeである。回転ガイド層114の構成もスピン注入固定層113と同様の材料を用いることが好ましい。以上のような発振器110の構成とすることにより、高周波の高周波磁界を印加することができる。
【0023】
本構成例の主磁極120とシールド130の構成としては、飽和磁化が大きく、結晶磁気異方性がほとんどないCoFe合金のような材料を用いることが好ましい。
【0024】
以下に、本発明構造の最大の特徴である,FGLの膜面内における端部の飽和磁化を中央部分に比べて低下させた膜を用いた構成、および得られる効果について詳細に説明する。
【0025】
図3に本発明構造であるFGL111の膜面内の構成図を示す。FGL111の膜中央部であるFGL111_a を FGL_center と表記し、素子高さ方向の浮上面側以外の端部領域であるFGL111_b を FGL_edge と表記する。また、FGL_center の飽和磁化を Ms_center、領域の面積を S_center とし、FGL_edge の飽和磁化を Ms_edge 、領域の面積を S_edge とする。本発明では、Ms_edgeをMs_center よりも小さいFGL111の構成とする。この膜面内で飽和磁化を不均一に分布させることが発明の最大の特徴である。これにより、発振器110のFGL111の磁化が多磁区化する最大の要因であるFGL111の端部FGL_edgeと中央部FGL_centerの反磁界の差分を低減することが可能となり、単磁区発振が容易となる。結果として、本発明構造では高い高周波磁界強度の実現が容易になるのである。
【0026】
図3のように、内部の飽和磁化の大きさ(Ms_center)に比べてその周辺部の飽和磁化の大きさ(Ms_edge)を小さくすることにより、FGLの周辺部に発生する面磁化の大きさ、即ち反磁界の大きさが、FGL111を一様な大きさ(Ms_center)の飽和磁化で構成した場合よりも、小さくなる。これは、図3に示すFGL111の周辺部の飽和磁化の大きさが、FGL111を一様な大きさ(Ms_center)の飽和磁化で構成した場合のFGL111の内部と外部との飽和磁化の大きさ(外部の飽和磁化はほとんど0)の差よりも小さくなる。即ち、本発明は、FGL111を飽和磁化の大きさが異なる領域に分けて外部との飽和磁化の大きさの差を段階的に変化させることにより、その領域の境界に発生する面磁化の大きさを抑止して反磁界を少なくする構造を設けたことに特徴がある。
【0027】
本構成例におけるFGL111のFGL_center の材料はFe70Co30であるとし、Ms_center を2.4 Tとした。高い高周波磁界強度を実現するためには、FGL_centerの材料としては高い飽和磁化を持つものが好ましい。また、飽和磁化が大きい方がFGL_center とFGL_edge の反磁界の差分も増加するので本発明の効果も顕著になるが、どのような材料であっても効果は得られる。例えば、FGL111の材料としてはFeCo合金の他に、NiFe合金やCoFeGe、CoMnGe、CoFeAl、CoFeSi、CoMnSi、CoFeSiなどのホイスラー合金、TbFeCoなどのRe-Tm系アルモファス系合金、CoCr系合金などでもよい。また、CoIrなど負の垂直異方性エネルギーを持つ材料でもよい。また、FGL111の膜厚を17nm、FGL111のトラック幅方向の幅 Twを40nm、素子高さ方向の高さ SHを40nmとした。FGL111の膜厚も飽和磁化と同様に大きい方が、得られる最大の高周波磁界強度は向上するが、FGL_center とFGL_edge の反磁界の差分が増大する。本発明構造では、FGL_center とFGL_edge の反磁界の差分の低減が可能なので高い高周波磁界強度の実現の観点からFGL111の膜厚は厚い方が好ましい。ただし、FGL111の膜厚が100nm程度以下にすることが適当である。なぜなら、FGL111の膜厚が100nm程度以上にまで厚くなると、主磁極120からFGL111のトレーリング側に印加される磁界強度が低下し、発振周波数が大幅に低下しマイクロ波アシスト効果の著しい低下をもたらすためである。FGLに印加される磁界は記録ヘッド部100のコイル160に流れる書き込み電流によって発生する磁界であり、発振周波数は、その磁界の中でスピンが才差運動する時のラーモアの角速度によって決まる。
【0028】
さらに、本発明の効果を安定して得るための詳細条件を説明する。具体的には、FGL111において、S_center、Ms_center、S_edge、とFGL_edge が、
0.05 < (Ms_center−Ms_edge)/Ms_center x (S_edge/S_center) < 1 (式1)
の関係を持つように設定する。以後、簡単のために(Ms_center−Ms_edge)/Ms_center x (S_edge/S_center)を面積磁化比と表記する。
【0029】
図4に本発明構成により得られる高周波磁界強度Hacと面積磁化比の関係を示す。高周波磁界強度は実際に磁気記録媒体300に印加される大きさを想定し、FGL111の浮上面から素子高さ方向の媒体側に10nmの位置における大きさであると定義した。面積磁化比がゼロに近い時には、膜端部の磁化 Ms_edge が膜中央部と等しい、もしくは、膜全体に占める膜端部の磁化が低下した領域の面積 S_edgeの割合がゼロか非常に小さいことを意味している。つまり、従来構造である膜面内の飽和磁化が一様な構成である。反対に、面積磁化比が非常に大きいときには、膜全体に占める膜端部の磁化が低下した領域の面積 S_edgeの割合が大きいことを意味しており、実質的にFGL111のMsを均一に低下させることとほぼ同じである。面積磁化比がゼロに近いもしくは、1以上のときには高周波磁界強度は約1.3 kOeであるが、面積磁化比を適切に制御することにより1.7 kOe程度にまで向上させることが可能である。
【0030】
したがって、図4の高周波磁界強度の面積磁化比依存性から分かるように、面積磁化比には高周波磁界強度の向上効果が得られる適切な範囲が存在する。ここでの面積磁化比の適切な範囲とは、面積磁化比の制御による高周波磁界強度の向上効果が15%以上ある範囲(図4の斜線で示した領域であり、高周波磁界強度が1.5 kOe以上の領域である)である。これが、式(1)に示した範囲となるのである。式(1)に示す本発明の面積磁化比の最適範囲は、Ms_edgeとS_edge のいずれか、もしくはその両方が変化した場合であっても変化しない。
【0031】
図4の面積磁化比は、M_edgeを1.2 Tに固定しS_edge/S_centerを変化させることにより変化した場合、および、S_edge/S_center を1または3/7 に固定しMs_edgeを2.4Tから0.0 Tまで変化さることにより変化した場合を示しており、これからMs_edgeとS_edge のいずれを変化させた場合であっても、面積磁化比の最適範囲が変化しないことが確認できる。
【0032】
以後、この面積磁化比には高周波磁界強度が最大となる最適範囲が存在する理由、および、最適範囲が変化しない理由を説明する。図5は、M_edgeを1.2 Tに固定しS_edge/S_centerを変化させた場合のFGL111の単磁区化率(Single Domain Ratio:SDR)および、完全に単磁区化したときに得られる磁界強度である最大高周波磁界強度のS_edge/S_center依存性を示す。図4に示した高周波磁界強度は、FGL全体の飽和磁化の大きさとSDRとの積と等しくなる関係を持つ。S_edge とS_center は、それぞれの和が常に一定となるように変化させた。これは、FGL111のトラック幅と素子高さが共に40nmであり、面積も常に40x40 nm2 であるためである。ここで、単磁区化率SDRは単磁区化の度合いを測る指標であり、磁化が完全に同一方向にそろっている単磁区状態であれば1、反対に完全に磁化がランダムな方向を向いている場合にはゼロである。
【0033】
SDRは以下の式で定義する。
SDR = {(ΣMx/nMs)2+(ΣMy/nMs)2+(ΣMz/nMs)2}1/2
ここで、Mx, My, Mzはそれぞれ磁化のトラック幅方向、素子高さ方向、および膜厚方向の磁化の大きさであり、nはFGL111内の磁化の個数である。また、最大高周波磁界強度は上述したFGL111のMs_center、Ms_edge, S_center, S_edge,膜厚(17 nm)、および浮上面から高周波磁界強度の観測点までの距離(10 nm) から、電磁気学的に計算することができる。図5からわかるように、S_edge/S_centerが大きくなるほどSDRは急激に増加しやがて1に向かって飽和する。
【0034】
図6にS_edge/S_centerが0.55である従来構造とS_edge/S_centerが1である本発明構造AのFGL111の膜面内の磁化状態を示す。SDRが0.55である従来構造では磁化の方向が特に膜の端部において一方向にそろっていないが、SDRが0.95である構造Aでは磁化の方向は全てほぼ同一方向にそろっていることが確認できる。これは、Msが小さいFGL_edgeの面積を大きくしたことにより、膜端部と中央部の反磁界の差分を低減できた効果である。一方で、最大高周波磁界強度は、FGLの全体の平均飽和磁化が低下するために、緩やかに低下する。以上より、SDRと最大高周波磁界強度のS_edge/S_center依存性はお互いにトレードオフの関係にある。しかし、実際に得られる高周波磁界強度はFGL全体の飽和磁化の大きさとSDRとの積でとなるので、高周波磁界強度の大きい向上効果が得られるS_edge/S_centerや面積磁化比の範囲が存在することになるのである。
【0035】
図7にS_edge/S_center を1 、Ms_centerを2.4 Tに固定し、Ms_edgeを2.4Tから0.0Tまで変化させたときのSDRと最大高周波磁界強度の(Ms_center−Ms_edge)/Ms_edge依存性を示す。 (Ms_center−Ms_edge)/Ms_center が大きいほどFGL_edgeとFGL_center の反磁界の差分が低減するためSDRが大きくなる。一方で、(Ms_center−Ms_edge)/Ms_centerが大きいほどFGL全体の平均のMsは低下するので、最大高周波磁界強度は低下する。(Msの平均値<Ms>=(Ms_center S_center+Ms_edge S_edge)/(S_center+S_edge)=Ms_center−(S_edge Ms_edge/(S_center+S_edge))X、ここでX=(Ms_center− Ms_edge)/Ms_centeであり、Xが大きくなると<Ms>は小さくなる。)SDRと最大高周波磁界強度の(Ms_center−Ms_edge)/Ms_center依存性は、図5に示した(S_edge/S_center)依存性とよく似ている。
【0036】
図8に、M_edgeを1.2 Tに固定しS_edge/S_centerを変化させた場合および、S_edge/S_centerを1.0 または3/7に固定しMs_edgeを2.4Tから0.0 Tまで変化させたときのSDRの面積磁化比の依存性を示す。この結果から分るように、SDRはS_edge/S_centerやMs_edge のいずれを変化させたときも関係なく面積磁化比だけから決まることが分かる。したがって、高周波磁界強度およびSDRは面積磁化比だけから最適範囲が決まるのである。
【0037】
式(1)で規定される本発明の面積磁化比の範囲はMs_center やS_centerが異なる場合についても変化しない。Ms_center が異なる場合は反磁界の絶対値自体は変化するが、単磁区化に問題となるのはFGL111における端部の反磁界と中央部の反磁界の差分が中央分の反磁界に対して大きいことである。式(1)では、Ms_centrとMs_edgeの差分をMs_center で規格化しているためMs_center の値に依らず有効な面積磁化比の範囲が変わらないのである。
【0038】
同様に、S_center が異なる場合についても、式(1)ではS_edgeとS_center の比で面積磁化比を規定しているため、有効な面積磁化比は変化しないのである。しかし、FGL111の面積が200 × 200 nm2程度以上に大きい場合は、磁化同士の方向をそろえる交換結合エネルギーに比べ,磁化を反平行に向かせる静磁気エネルギーの大きさが大きくなってしまうために,本発明の構造を用いても単磁区発振は困難である。ただし、マイクロ波アシスト記録方式が利用されるHDDでは、記録密度の観点から、FGL面積が200×200 nm2以上の素子が用いられることはない。
【0039】
以下に本発明構造の最適な面積磁化比が得られる構成の構成例を図9、10、11、12を用いて説明する。図17の表には従来及び本発明の構成における各値を比較した結果を示す。図9に示しているのはMsが均一な従来構成例であり、SDRは0.55、高周波磁界強度は1.3 kOeである。図10に示す本構成例は、Ms_centerが2.4 T、Ms_edgeが1.2 Tである。Msの低下が起こらないFGL_center は概ね長方形の形状である。S_centerとS_edge はともに800 nm2である。このような構成とすることにより、SDRが0.95となり高周波磁界強度が1.7 kOeにまで向上する。本構成のFGL_center は長方形の形状であるが、図11に示すようにFGL_center とFGL_edge の境界が凸凹の形状であっても、S_centerとS_edgeとの面積比が変化しない範囲であれば、本発明の効果およびその範囲に影響を与えない。
【0040】
図12に本発明の別の構成例を示す。本構成例はMs_centerが2.4 T、Ms_edgeが1.0 Tである。S_centerとS_edge はそれぞれ1120 nm2でと480 nm2である。このような構成とすることにより、SDRが0.85,高周波磁界強度が1.6 kOeとなり、従来構造からの向上が可能である。
【0041】
上述のFGL111の中央部と端部とでの飽和磁化の違いは,例えば同一の磁性材料でFGL111を形成した後に,FGL111端部に酸化,窒化,その他の化学反応処理を行うことで,または窒素,Cr等のイオンを注入することで,FGL111端部の飽和磁化を低減させることにより形成することができる。また,あらかじめ飽和磁化の異なる材料にて形成することも可能である。
〔実施例2〕
図13に本発明における第2の実施例を示す。本実施例では実施例1に対し,FGL111の浮上面対抗面方向の素子高さ方向長さSHがトラック幅方向長さTwよりも長い,長方形形状となっている。このような形状で飽和磁化が均一な場合,トラック幅方向のFGL端部は,素子高さ方向の端部に比べて端部間の距離が短いため,反磁界の大きさがより大きくなる。このため,このトラック幅方向のFGL端部の磁化は他の部分の磁化と同様に回転することが出来ず,つまりは単磁区発振を阻害する主要因となるのである。よって,本形状ではFGL111のトラック幅方向端部の反磁界の大きさをより低減することが必要となる。
【0042】
そこで本実施例のように,例えばFGL111端部の磁化量低下領域S_edgeの飽和磁化Msがその領域内で同一の場合,トラック幅方向の磁化量低下領域S_edge_Twを素子高さ方向の磁化量低下領域S_edge_SHよりも大きくすることにより,トラック幅方向のFGL111端部の反磁界の大きさをより低減させることが可能になる。これによりFGL111のトラック幅方向端部の反磁界の大きさと中央部や素子高さ方向端部の反磁界の大きさの差が小さくなり,FGL111の磁化が同期して回転する状態,すなわち単磁区状態で発振しやすくなるのである。
【0043】
また,例えばトラック幅方向,及び素子高さ方向の磁化量低下領域S_edgeの大きさが同等の場合には,トラック幅方向のFGL111端部の飽和磁化Msを,素子高さ方向の端部よりも小さくすることによっても同様の効果が得られる。ここで,磁化量低下領域S_edge,及び飽和磁化Msはそれぞれ独立に制御する必要はなく,両者を同時に変化させても同様の効果が得られる。この場合,FGL111端部の磁化量低下部111_bの飽和磁化Msと領域S_edgeとの比(Ms/S_edge)に関し,トラック幅方向端部と素子高さ方向端部のそれぞれのMs/S_edgeの比を,素子高さ方向長さSHとトラック幅方向長さTwの比と同等にすることにより,トラック幅方向端部,及び素子高さ方向端部の反磁界の大きさも同等となるため,最も単磁区発振を得やすくなる,つまりは大きな発生磁界強度を得ることが可能となる。
〔実施例3〕
図14に本発明における第3の実施例を示す。本実施例のFGL111形状も長方形形状であるが,実施例2と異なりトラック幅方向長さTwが素子高さ方向長さSHよりも長い形状となっている。よってこの場合はFGL111の素子高さ方向端部の反磁界の大きさがトラック幅方向端部よりも大きくなり,単磁区発振を阻害する主要因となる。この形状では,実施例2で示したように素子高さ方向のFGL111端部の磁化量低下部111_bの磁化量低下領域S_edgeをより大きく,または飽和磁化Msをより小さく,更には両者を同時に制御することにより,素子高さ方向のFGL端部の反磁界の大きさをより低減させることが可能になる。その結果,FGLの素子高さ方向端部の反磁界の大きさと中央部やトラック幅方向端部の反磁界の大きさとの差が小さくなり,実施例2と同様単磁区発振しやすくなる。
【0044】
また、この場合も実施例2同様,FGL111端部の磁化量低下部111_bの飽和磁化Msと領域S_edgeとの比(Ms/S_edge)に関し,トラック幅方向端部と素子高さ方向端部のそれぞれのMs/S_edgeの比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))を,素子高さ方向の長さSHとトラック幅方向の長さTwの比(SH/Tw)と同等にすることにより,トラック幅方向端部,及び素子高さ方向端部の反磁界の大きさも同等となるため,最も単磁区発振を得やすく,且つ十分な発生磁界強度を得ることが可能となる。
〔実施例4〕
図15に本発明における第4の実施例を示す。本実施例は実施例1のFGL111構造においてFGL端部の磁化量低下部の飽和磁化Msが,FGL中央部111_aの飽和磁化に対し2段以上に段階的に低下している構造111_cである。この場合,FGL端部の反磁界の大きさは段階的に低下している磁化量低下部111_cの平均的な飽和磁化Msに応じて低減するため,実施例1と同様にFGL111端部の反磁界の大きさの低減効果から単磁区発振を得ることが可能になる。
【0045】
また,実施例2,3のように素子高さ方向長さSHとトラック幅方向長さTwが異なるFGL111形状においてもFGL111端部の磁化量低下部111_cの平均的な飽和磁化Msと領域S_edgeとの比(Ms/S_edge)に関し,トラック幅方向端部と素子高さ方向端部のそれぞれのMs/S_edgeの比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))を,素子高さ方向長さSHとトラック幅方向長さTwの比(SH/Tw)と同等にすることにより,同様の効果を得ることが出来る。
【0046】
本実施例で示したFGL端部の飽和磁化が段階的に変化している構造は,実施例1で示した形成方法を応用することにより実現することができる。
〔実施例5〕
図16に本発明における第5の実施例を示す。本実施例はこれまでの実施例の磁化量低下部111_bまたは111_cに加え,FGLの浮上面対抗面の端部にも磁化量低下部111_b(飽和磁化が一定)または111_c(飽和磁化が段階的に低下)が存在する構造である。この場合,FGL111の全ての端部に磁化量低下部111_bまたは111_cがあるため,全ての端部の反磁界の大きさを低減することが可能となる。このため,FGL111の単磁区発振が得やすい構造である。
【0047】
この構造では浮上面対抗面端部の飽和磁化Msが低下してしまうため,またFGL中央の高飽和磁化部分111_aが浮上面対抗面から離れてしまうため,FGL111からの発生磁界強度が低下してしまうが,浮上面対抗面端部の磁化量低下部の面積(端部からの距離)を他端部の磁化量低下部よりも低減させる、あるいは、飽和磁化を他端部の磁化量低下部よりも小さくする設計を行うことにより,単磁区発振の実現で大きな発生磁界強度を得ることが可能となる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
100 記録ヘッド部
110 発振器
111 FGL
111_a FGL膜中央部
111_b,cFGL膜端部
112 中間層
113 スピン注入固定層
114 回転ガイド層
120 主磁極
130 トレーリングシールド
160 コイル
200 再生ヘッド部
210 再生センサ
220 下部磁気シールド
230 上部磁気シールド
300 記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波アシスト記録に用いるスピントルクオシレータは,
固定層、非磁性中間層、交流磁界発生層をそれぞれ少なくとも一つ以上有し、
前記交流磁界発生層の膜中央部における飽和磁化よりも浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化の方が小さいことを特徴とするスピントルクオシレータ。
【請求項2】
前記交流磁界発生層において、
膜端部の飽和磁化が小さい領域における飽和磁化と面積をそれぞれMs_edgeとS_edgeとし、膜中央部の飽和磁化が大きい領域における飽和磁化と面積をそれぞれMs_centerとS_centerとするとき、
((Ms_center−Ms_edge)/Ms_center)×(S_edge/S_cente)が0.05以上1以下であることを特徴とする請求項1に記載のスピントルクオシレータ。
【請求項3】
前記交流磁界発生層において、
前記スピントルクオシレータの浮上面対抗面方向の素子高さがトラック幅方向の幅よりも長く、
前記交流磁界発生層のクロストラック方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_Tw/S_Tw)と、素子高さ方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_SH/S_SH)との比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))が、
前記交流磁界発生層の素子高さ対トラック幅方向の長さの比(SH/Tw)と概ね等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピントルクオシレータ。
【請求項4】
前記交流磁界発生層において、
前記スピントルクオシレータの浮上面対抗面方向の素子高さがトラック幅方向の幅よりも短く、
前記交流磁界発生層のクロストラック方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_Tw/S_Tw)と、素子高さ方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_SH/S_SH)との比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))が、
前記交流磁界発生層の素子高さ対トラック幅方向の長さの比(SH/Tw)と概ね等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピントルクオシレータ。
【請求項5】
前記スピントルクオシレータにおいて、
前記交流磁界発生層の浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化が,前記交流磁界発生層の膜中央部から端部に近づくにつれて段階的に小さくなっていることを
特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスピントルクオシレータ。
【請求項6】
前記スピントルクオシレータにおいて、
前記交流磁界発生層の膜中央部と膜端部の飽和磁化低下部は少なくとも2種類以上の異なる磁性材料から構成さることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスピントルクオシレータ。
【請求項7】
前記スピントルクオシレータにおいて、
前記交流磁界発生層の膜端部の飽和磁化低下部は酸化や窒化等の化学反応またはイオン注入等により形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスピントルクオシレータ。
【請求項8】
前記スピントルクオシレータにおいて、
前記交流磁界発生層の浮上面対抗面方向の端部の飽和磁化も膜中央の飽和磁化よりも小さいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスピントルクオシレータ。
【請求項9】
磁気記録媒体に対して、マイクロ波アシスト記録によるデータの記録を行ない、かつ、データの再生を行う磁気記録再生ヘッドは、
高周波磁界を発生するための発振器、記録ヘッド磁界を発生するための主磁極、及び前記主磁極に磁場を励磁するためのコイルを含む記録ヘッド部と、再生ヘッド部とを有し、
前記発振器は、
固定層、非磁性中間層、交流磁界発生層をそれぞれ少なくとも一つ以上有し、
前記交流磁界発生層の膜中央部における飽和磁化よりも浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化の方が小さいことを特徴とする磁気記録再生ヘッド。
【請求項10】
前記発振器における前記交流磁界発生層において、
膜端部の飽和磁化が小さい領域における飽和磁化と面積をそれぞれMs_edgeとS_edgeとし、膜中央部の飽和磁化が大きい領域における飽和磁化と面積をそれぞれMs_centerとS_centerとするとき、
((Ms_center−Ms_edge)/Ms_center)×(S_edge/S_cente)が0.05以上1以下であることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項11】
前記発振器における前記交流磁界発生層において、
前記発振器の浮上面対抗面方向の素子高さがトラック幅方向の幅よりも長く、
前記交流磁界発生層のクロストラック方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_Tw/S_Tw)と、素子高さ方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_SH/S_SH)との比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))が、
前記交流磁界発生層の素子高さ対トラック幅方向の長さの比(SH/Tw)と概ね等しいことを特徴とする請求項9又は10に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項12】
前記発振器における前記交流磁界発生層において、
前記発振器の浮上面対抗面方向の素子高さがトラック幅方向の幅よりも短く、
前記交流磁界発生層のクロストラック方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_Tw/S_Tw)と、素子高さ方向の端部の飽和磁化低下部における飽和磁化と面積の比率(Ms_SH/S_SH)との比((Ms_Tw/S_Tw)/(Ms_SH/S_SH))が、
前記交流磁界発生層の素子高さ対トラック幅方向の長さの比(SH/Tw)と概ね等しいことを特徴とする請求項9又は10に記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項13】
前記発振器において、
前記交流磁界発生層の浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化が,前記交流磁界発生層の膜中央部から端部に近づくにつれて段階的に小さくなっていることを
特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項14】
前記発振器において、
前記交流磁界発生層の膜中央部と膜端部の飽和磁化低下部は少なくとも2種類以上の異なる磁性材料から構成さることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項15】
前記発振器において、
前記交流磁界発生層の膜端部の飽和磁化低下部は酸化や窒化等の化学反応またはイオン注入等により形成されることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項16】
前記発振器において、
前記交流磁界発生層の浮上面対抗面方向の端部の飽和磁化も膜中央の飽和磁化よりも小さいことを特徴とする請求項9から15のいずれかに記載の磁気記録再生ヘッド。
【請求項17】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対して、マイクロ波アシスト記録によるデータの記録を行ない、かつ、データの再生を行う磁気記録再生ヘッドとを含むディスク装置であって、
前記磁気記録再生ヘッドは、
高周波磁界を発生するための発振器、記録ヘッド磁界を発生するための主磁極、及び前記主磁極に磁場を励磁するためのコイルを含む記録ヘッド部と、再生ヘッド部とを有し、
前記発振器は、
固定層、非磁性中間層、交流磁界発生層をそれぞれ少なくとも一つ以上有し、
前記交流磁界発生層の膜中央部における飽和磁化よりも浮上面対抗面方向の端部以外の膜の端部における飽和磁化の方が小さいことを特徴とするディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−108971(P2012−108971A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255700(P2010−255700)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】