説明

マクロモノマー混合物、末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー中間体およびシリコーンハイドロゲル

【課題】重合性基導入率の高い親水性マクロモノマーであって、重合後にポリマー鎖へ結合されない成分が少なく、しみ出しが起こりにくい親水性マクロモノマー混合物を得ること。
【解決手段】重合開始剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーA、および連鎖移動剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は官能基導入率を高めたマクロモノマー混合物、末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー中間体およびシリコーンハイドロゲルに関するもので、該マクロモノマー混合物は良好な濡れ性を示すこと、およびポリマー鎖へ結合されない成分が少なく、しみ出しが起こりにくいことから、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、創傷被覆材および各種の薬剤担体などの医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、連続装用に用いられる素材として、シリコーンハイドロゲル素材を用いたコンタクトレンズが知られている。シリコーンは疎水性であるため、表面に濡れ性を賦与するため、これまで多くの工夫がなされてきた。それらのうちの一つとして、親水性マクロモノマーをモノマー混合物中に加えて他のモノマーと共重合させる方法が知られている(特許文献1)。その親水性マクロモノマーの合成法として、官能基を有する連鎖移動剤を含む親水性モノマーを重合させた後、官能基に重合性官能基を有する化合物を反応させて親水性マクロモノマーを得る方法が知られている。しかしながら、同方法で得られた親水性マクロモノマーは、官能基を持たない重合開始剤断片を有する親水性ポリマーを含むことから、重合性基を導入しようとしても官能基を持たず、重合性基の導入されないポリマー鎖が含まれ、モノマー混合物と共重合して用いた場合、親水性ポリマーのしみ出しが起こるといった問題があった。また、得られる共重合体の濡れ性が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2008/0003252号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分子内に官能基を有する重合開始剤、および分子内に官能基を有する連鎖移動剤を共に用いて親水性ポリマーを重合し、次いでそれらの官能基に重合性基を導入することにより得られる重合性基導入率の高い親水性マクロモノマーを提供することを目的とする。本発明の親水性マクロモノマーを共重合して得られるポリマーは、良好な濡れ性を示すこと、およびポリマー鎖へ結合されない成分が少なく、しみ出しが起こりにくいことから、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズの原料として好適である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。すなわち、
(1) 重合開始剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーA、および連鎖移動剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物。
(2) 下記一般式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
で表される少なくとも1種類のマクロモノマーA、および下記一般式(II)
【0008】
【化2】

【0009】
で表される少なくとも1種類のマクロモノマーBを含むことを特徴とする上記(1)記載のマクロモノマー混合物。(式(I)、(II)中、~~~~~はマクロモノマー骨格を表す。I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。PGは少なくとも1つの重合性基を有する基を表す。)
(3) 前記重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基がそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のマクロモノマー混合物。
(4) 下記一般式(i1)〜(i5)
【0010】
【化3】

【0011】
からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のマクロモノマーA、および
下記一般式(c1)、(c2)、(c3)
【0012】
【化4】

【0013】
からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物。
(R〜Rは下記一般式(m)
【0014】
【化5】

【0015】
で表されるモノマーが重合性を有するモノマーとなりうる基を表す。R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。R〜Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。ただし、(i1)〜(i5)はいずれも少なくとも一つのAを有する。R〜Rは互いに環を形成していてもよい。R10、R11は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに環を形成していてもよい。A、Aはそれぞれ独立に、ラジカル重合可能な官能基を有する炭素数1〜20の基である。)
(5) A、Aがそれぞれアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基からなる群から選ばれたラジカル重合可能な官能基を有する基であることを特徴とする上記(4)記載のマクロモノマー混合物。
(6) A、Aがそれぞれ下記式(a1)〜(a5)
【0016】
【化6】

【0017】
で表される構造から選ばれた重合性基であることを特徴とする上記(4)記載のマクロモノマー混合物。(RはHまたはメチル基を表す。XはO、またはNHを表す。L、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。)
(7) 前記一般式(m)で表されるモノマーが有する重合性基がアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基から選ばれた少なくとも一種である上記(4)記載のマクロモノマー混合物。
(8) 前記一般式(m)で表されるモノマーが親水性モノマーである上記(4)記載のマクロモノマー混合物。
(9) 前記一般式(m)で表されるモノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする上記(4)〜(6)のいずれかに記載のマクロモノマー混合物。
(10) 分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有する重合開始剤、および分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有する連鎖移動剤を用いて親水性モノマーをラジカル重合した後、得られた重合体混合物にラジカル重合可能な官能基を有する化合物を反応させて得られることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマクロモノマー混合物の製造方法。
(11) 前記重合開始剤が下記式(j1)〜(j4)
【0018】
【化7】

【0019】
のいずれかで表される重合開始剤であることを特徴とする上記(10)記載のマクロモノマー混合物の製造方法。
(12) 前記連鎖移動剤が下記一般式(d1)〜(d5)
【0020】
【化8】

【0021】
のいずれかで表される連鎖移動剤であることを特徴とする上記(10)記載のマクロモノマー混合物の製造方法。(Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。R10、R11は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
(13) 重合開始剤に由来する反応性基を有するポリマーx、および連鎖移動剤に由来する反応性基を有するポリマーyを含むことを特徴とする末端反応性ポリマー混合物。
(14) 下記一般式(III)
【0022】
【化9】

【0023】
で表される少なくとも1種類のポリマーx、および下記一般式(IV)
【0024】
【化10】

【0025】
で表される少なくとも1種類のポリマーyを含むことを特徴とする上記(13)記載の末端反応性ポリマー混合物。(式(III)、(IV)中、~~~~~はマクロモノマー骨格を表す。I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。)
(15) 前記重合開始剤に由来する反応性基、および前記連鎖移動剤に由来する反応性基がそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする上記(13)または(14)記載の末端反応性ポリマー混合物。
(16) 下記一般式(x1)〜(x5)
【0026】
【化11】

【0027】
からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のポリマーx、および下記一般式(y1)〜(y3)
【0028】
【化12】

【0029】
で表される構造を有する少なくとも1種類のポリマーyを含むことを特徴とする末端反応性ポリマー混合物。
(R〜Rは下記一般式(m)
【0030】
【化13】

【0031】
で表されるモノマーが重合性を有するモノマーとなりうる基を表す。R12、R13は炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。R14〜R16は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。ただし、(x1)〜(x5)はいずれも少なくとも一つのBを有する。R12〜R16は互いに環を形成していてもよい。R10、R11は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに環を形成していてもよい。B、Bはそれぞれ独立に、反応性基を有する炭素数1〜20の基である。)
(17) (13)〜(16)のいずれかに記載の末端反応性ポリマー混合物からなることを特徴とするマクロモノマー中間体。
(18) 少なくとも1種類のシリコーンモノマーと、少なくとも1種類の上記(1)〜(9)のいずれかに記載のマクロモノマー混合物を含むモノマー混合物を共重合させて得られるシリコーンハイドロゲル。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、官能基導入率が高く、主鎖に結合されない成分が少ないことから濡れ性の低下やしみ出しの起こりにくいマクロモノマー混合物を得ることができる。該マクロモノマー混合物は各種医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例4の重合性官能基導入前ポリマーのMALDI−MSチャートである。
【図2】比較例1のポリマーのMALDI−MSチャートである。
【図3】実施例14のポリマーのMALDI−MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のマクロモノマー混合物は、重合開始剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーA、および連鎖移動剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーBを含むことを特徴とする。
【0035】
前記重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基の好適な例として水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基が挙げられる。それらのうち、反応性が高く、重合性基導入率を高めることができる点で好ましいのは水酸基、アミノ基である。
【0036】
本発明のマクロモノマー混合物の別の好ましい態様として、下記一般式(I)
【0037】
【化14】

【0038】
で表される少なくとも1種類のマクロモノマーA、および下記一般式(II)
【0039】
【化15】

【0040】
で表される少なくとも1種類のマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物が挙げられる。
【0041】
一般式(I)または(II)中、~~~~~はマクロモノマー骨格を表す。マクロモノマー骨格はラジカル重合可能なモノマーを重合して得られるポリマーからなる。そのようなモノマーが有する重合性基として好ましいのはアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基からなる群から選ばれたラジカル重合可能な官能基を有する置換基である。これらのうち、得られるポリマーの物性の点でアクリル基、ビニル基がより好ましく、アクリル基が最も好ましい。
【0042】
前記マクロモノマー骨格に用いられるモノマーとして好ましいのは、(メタ)アクリル酸類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、N−ビニルカルボン酸アミド類、環状N−ビニルピリジン類、N−ビニルイミダゾール類である。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルを表す。
【0043】
前記マクロモノマー骨格に用いられるモノマーがシリコーンモノマーであるの場合の好適な例として、(メタ)アクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル、片末端にメタクリル基を有するポリジメチルシロキサン、下記式(s1)〜(s3)
【0044】
【化16】

【0045】
で表されるシリコーンモノマーが挙げられる。
【0046】
前記マクロモノマー骨格に用いられるモノマーは親水性モノマーであることが好ましく、その場合の好適な例として、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。これらのうち、得られるマクロモノマー混合物の親水性と溶解性のバランスの点から好ましいのはN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)である。
【0047】
本発明のマクロモノマー混合物に含まれるマクロモノマーは、前記マクロモノマー骨格に用いられるモノマーとして複数の種類を用いて共重合した高分子からなるものであってもよい。
【0048】
一般式(I)中、I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。ここで重合開始剤に由来する基とは、重合開始剤の構造の少なくとも一部からなる基を表す。
【0049】
一般式(II)中、CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。ここで連鎖移動剤に由来する基とは、連鎖移動剤の構造の少なくとも一部からなる基を表す。
【0050】
一般式(I)または(II)中、RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。RGの好適な例として水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基が挙げられる。それらのうち、反応性が高く、重合性基導入率を高めることができる点で好ましいのは水酸基、アミノ基である。
【0051】
一般式(I)または(II)中、PGは重合性基を表す。ここで重合性基とはラジカル重合可能な官能基を有する炭素数1〜20の基を表す。ラジカル重合可能な官能基の好適な例として、(メタ)アクリル基、スチリル基、ビニル基などが挙げられ、それらのうち、得られるマクロモノマー混合物の重合性の点で最も好ましいのは(メタ)アクリル基である。さらにその具体的な構造として下記一般式(b1)〜(b6)
【0052】
【化17】

【0053】
で表される置換基が挙げられる。
【0054】
一般式(b1)〜(b6)中、RはHまたはメチル基を表す。
【0055】
一般式(b1)〜(b6)中、XはO、またはNHを表す。
【0056】
一般式(b1)〜(b6)中、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基である。その好適な例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。前記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中でより好ましいのはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であり、最も好ましいのはエチレン基である。
【0057】
一般式(b6)中、Rは水素、または炭素数1〜20の置換基を表す。より好ましくは水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基である。その好適な例として、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中で、より好ましいのは水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、最も好ましいのは水素、メチル基である。
【0058】
本発明のマクロモノマー混合物のさらに別の好ましい態様として、下記一般式(i1)〜(i5)
【0059】
【化18】

【0060】
からなる群から選ばれた構造を有するマクロモノマーA、および下記一般式(c1)〜(c3)
【0061】
【化19】

【0062】
からなる群から選ばれた構造を有するマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物が挙げられる。
【0063】
上記一般式(i1)〜(i5)、(c1)〜(c3)中、R〜R、および下記一般式(m)
【0064】
【化20】

【0065】
で表されるモノマーについては一般式(x1)〜(x5)、(y1)〜(y3)の場合と同様である。
【0066】
一般式(i1)〜(i5)中、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。R、Rが炭素数1〜20のアルキル基の場合の好適な例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中で、より好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0067】
一般式(i1)〜(i5)中、Aはラジカル重合可能な官能基を有する置換基を有する炭素数1〜20の置換基である。ラジカル重合可能な官能基の好適な例として、(メタ)アクリル基、スチリル基、ビニル基などが挙げられ、それらのうち、得られるマクロモノマー混合物の重合性の点で最も好ましいのは(メタ)アクリル基である。さらにその具体的な構造として下記一般式(a1)〜(a5)
【0068】
【化21】

【0069】
で表される置換基が挙げられる。
【0070】
一般式(a1)〜(a5)中、RはHまたはメチル基を表す。
【0071】
一般式(a1)〜(a5)中、XはO、またはNHを表す。
【0072】
一般式(a1)〜(a5)中、L、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基である。その好適な例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。前記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中でより好ましいのはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であり、最も好ましいのはエチレン基である。
【0073】
一般式(i2)〜(i5)中、R〜RはHまたは炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。ただし、(i1)〜(i5)はいずれも少なくとも一つのAを有するモノマーである。R〜RがHまたは炭素数1〜20のアルキル基である場合の好適な例として、H、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中でより好ましいのはメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、最も好ましいのはH、メチル基、n−ブチル基である。
一般式(i2)〜(i5)において、R〜Rは互いに環を形成していてもよい。その好適な例として、−R−R−がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基の場合が挙げられる。それらのうち、形成される環の安定性の点で最も好ましいのは−R−R−がエチレン基の場合である。
【0074】
一般式(c2)中、R10、R11については一般式(y2)の場合と同様である。
一般式(c1)〜(c3)中、Aはラジカル重合可能な官能基を有する置換基を有する炭素数1〜20の置換基を表す。A中のラジカル重合可能な官能基の好適な例として(メタ)アクリル基、スチリル基、ビニル基が挙げられ、それらのうち、得られるマクロモノマー混合物の重合性の点で最も好ましいのは(メタ)アクリル基である。より具体的な例として下記一般式(a1)〜(a5)
【0075】
【化22】

【0076】
で表される構造が挙げられる。
【0077】
一般式(a1)〜(a5)中、RはHまたはメチル基を表す。
【0078】
一般式(a1)〜(a5)中、XはO、またはNHを表す。
【0079】
一般式(a1)〜(a5)中、L、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。より好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基、アリーレン基である。その好適な例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。前記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。
【0080】
本発明のマクロモノマーAのより具体的な構造の例として、下記一般式(e1)〜(e6)
【0081】
【化23】

【0082】
で表される構造が挙げられる。これらのうち、重合性官能基の導入に、完全に除去することが困難な縮合剤を用いる必要がない点、および反応性の高いアミノ基、水酸基とイソシアナート、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の組み合わせで合成可能であることから重合性官能基を高い導入率で導入可能である点で好ましいのは式(e1)〜(e5)で表される構造であり、さらに反応性が高い点でより好ましいのはアミノ基を有する開始剤から得られる構造である式(e1)〜(e3)であり、反応時に塩を生じないことから最も好ましいのは、式(e1)で表される構造、およびそれが加水分解されて生成する式(e2)で表される構造である。式(e1)で表される構造は加水分解される場合があり、例えば本発明のマクロモノマー混合物を眼用レンズに用いた場合には、煮沸滅菌時の加熱により式(e2)で表される構造へ変化することがありうる。式(e2)の構造は加水分解に対してより安定であり好ましい。
【0083】
本発明のマクロモノマーBのより具体的な構造の例として、下記一般式(f1)〜(f5)
【0084】
【化24】

【0085】
で表される構造が挙げられる。これらのうち、重合性官能基の導入に、完全に除去することが困難な縮合剤を用いる必要がない点、および反応性の高いアミノ基、水酸基とイソシアナート、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の組み合わせで合成可能であることから重合性官能基を高い導入率で導入可能な点でより好ましいのは、(f1)〜(f4)の構造であり、反応時に塩を生じないことから最も好ましいのは、式(f1)、(f2)で表される構造である。
【0086】
本発明のマクロモノマー混合物の分子量は、小さすぎるとマクロモノマー混合物の物性が十分に発現せず、高すぎると重合原液の粘度が高くなる、溶解性が低くなるといった問題が生じることから、1000〜200万が好ましく、1万〜100万がより好ましく、20万〜80万が最も好ましい。
【0087】
本発明のマクロモノマー混合物を得る際、マクロモノマーの重合性官能基を導入するための官能基化剤としては、重合性基を有し、さらに、上記重合開始剤および上記連鎖移動剤が有する官能基と反応しうる官能基を有する化合物を用いることができる。その好適な例として、(メタ)アクリル酸塩化物、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。これらのうち、反応性が高いことから好ましいのは、(メタ)アクリル酸塩化物、(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸無水物であり、さらに、脱離基が出ないことから最も好ましいのは(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチルである。
【0088】
本発明のシリコーンハイドロゲルは少なくとも1種類のシリコーンモノマーと、本発明のマクロモノマー混合物を共重合させることにより得られる。
【0089】
本発明のシリコーンハイドロゲルに用いられるシリコーンモノマーの例として、(メタ)アクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル、片末端にメタクリル基を有するポリジメチルシロキサン、下記式(s1)〜(s3)
【0090】
【化25】

【0091】
で表されるシリコーンモノマーが挙げられる。
【0092】
本発明の末端反応性ポリマー混合物は重合開始剤に由来する反応性基を有するポリマーx、および連鎖移動剤に由来する反応性基を有するポリマーyを含むことを特徴とする。
【0093】
前記重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基の好適な例として水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基が挙げられる。それらのうち、反応性が高く、重合性基導入率を高めることができる点で好ましいのは水酸基、アミノ基である。
【0094】
本発明の末端反応性ポリマー混合物の別の好ましい態様として、下記一般式(III)
【0095】
【化26】

【0096】
で表される少なくとも1種類のポリマーx、および下記一般式(IV)
【0097】
【化27】

【0098】
で表される少なくとも1種類のポリマーyを含むことを特徴とする末端反応性ポリマー混合物が挙げられる。
【0099】
一般式(III)または(IV)中、~~~~~は末端反応性ポリマー骨格を表す。末端反応性ポリマー骨格はラジカル重合可能なモノマーを重合して得られるポリマーからなる。そのようなモノマーが有する重合性基として好ましいのはアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基からなる群から選ばれたラジカル重合可能な官能基を有する置換基である。これらのうち、得られるポリマーの物性の点でアクリル基、ビニル基がより好ましく、アクリル基が最も好ましい。
【0100】
前記末端反応性ポリマー骨格に用いられるモノマーとして好ましいのは、(メタ)アクリル酸類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、N−ビニルカルボン酸アミド類、環状N−ビニルピリジン類、N−ビニルイミダゾール類である。
【0101】
前記末端反応性ポリマー骨格に用いられるモノマーがシリコーンモノマーであるの場合の好適な例として、(メタ)アクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル、片末端にメタクリル基を有するポリジメチルシロキサン、下記式(s1)〜(s3)
【0102】
【化28】

【0103】
で表されるシリコーンモノマーが挙げられる。
【0104】
前記末端反応性ポリマー骨格に用いられるモノマーは親水性モノマーであることが好ましく、その場合の好適な例として、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。これらのうち、得られるマクロモノマー混合物の親水性と溶解性のバランスの点から好ましいのはN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)である。
【0105】
本発明の末端反応性ポリマー混合物に含まれるポリマーに含まれるマクロモノマーは、前記マクロモノマー骨格に用いられるモノマーとして複数の種類を用いて共重合した高分子からなるものであってもよい。
【0106】
一般式(III)中、I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。ここで重合開始剤に由来する基とは、重合開始剤の構造の少なくとも一部からなる基を表す。
【0107】
一般式(IV)中、CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。ここで連鎖移動剤に由来する基とは、連鎖移動剤の構造の少なくとも一部からなる基を表す。
【0108】
一般式(III)または(IV)中、RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。RGの好適な例として水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基が挙げられる。それらのうち、反応性が高く、重合性基導入率を高めることができる点で好ましいのは水酸基、アミノ基である。
【0109】
本発明の末端反応性ポリマー混合物のさらに別の好ましい態様として、下記一般式(x1)〜(x5)
【0110】
【化29】

【0111】
からなる群から選ばれた構造を有するポリマーx、および下記一般式(y1)〜(y3)
【0112】
【化30】

【0113】
からなる群から選ばれた構造を有するポリマーyからなる末端反応性ポリマー混合物が挙げられる。
上記一般式(x1)〜(x5)、(y1)〜(y3)中、R〜Rは下記一般式(m)
【0114】
【化31】

【0115】
で表されるモノマーが、重合性を有するモノマーとなりうる基を表す。一般式(m)で表されるモノマーが有する重合性基として好ましいのはアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基からなる群から選ばれたラジカル重合可能な官能基を有する置換基である。これらのうち、得られるポリマーの物性の点でアクリル基、ビニル基がより好ましく、アクリル基が最も好ましい。
【0116】
一般式(m)で表されるモノマーとして好ましいのは、(メタ)アクリル酸類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、N−ビニルカルボン酸アミド類、環状N−ビニルピリジン類、N−ビニルイミダゾール類である。
【0117】
前記式(m)で表されるモノマーがシリコーンモノマーであるの場合の好適な例として、(メタ)アクリル酸3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル、片末端にメタクリル基を有するポリジメチルシロキサン、下記式(s1)〜(s3)
【0118】
【化32】

【0119】
で表されるシリコーンモノマーが挙げられる。
【0120】
前記式(m)で表されるモノマーは親水性モノマーであることが好ましく、その場合の好適な例として、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。これらのうち、得られるマクロモノマー混合物の親水性と溶解性のバランスの点から好ましいのはN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル(重合後、加水分解によりポリビニルアルコールとなる)である。
【0121】
本発明の末端反応性ポリマー混合物に含まれるポリマー、マクロモノマー混合物に含まれるマクロモノマーは、式(m)で表されるモノマーとして複数の種類を用いて共重合した高分子からなるものであってもよい。
【0122】
一般式(x1)〜(x5)中、R12、R13は炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。R12、R13が炭素数1〜20のアルキル基の場合の好適な例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中で、より好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
【0123】
一般式(x1)〜(x5)中、Bは反応性基を有する炭素数1〜20の置換基である。反応性基の好適な例として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられる。それらのうち、反応性の点でより好ましいのは水酸基、アミノ基であり、最も好ましいのはアミノ基である。
【0124】
一般式(x2)〜(x5)中、R14〜R16はHまたは炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。ただし、(x1)〜(x5)はいずれも少なくとも一つのBを有するモノマーである。R14〜R16がHまたは炭素数1〜20のアルキル基である場合の好適な例として、H、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらの中でより好ましいのはメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、最も好ましいのはH、メチル基、n−ブチル基である。
【0125】
一般式(x2)〜(x5)において、R12〜R16は互いに環を形成していてもよい。その好適な例として、−R15−R16−がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基の場合が挙げられる。それらのうち、形成される環の安定性の点で最も好ましいのは−R15−R16−がエチレン基の場合である。
【0126】
一般式(y2)中、R10、R11は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに環を形成していてもよい。好適な例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらのうち、立体障害が小さく、連鎖移動が起こりやすい点で好ましいのはメチル基、エチル基、プロピル基である。互いに環を形成する場合の好適な例として、−R10−R11−がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。これらのうち、形成される環の安定性の点で好ましいのはブチレン基、ペンチレン基である。
【0127】
一般式(y1)〜(y3)中、Bは反応性基を有する炭素数1〜20の置換基である。反応性官能基の好適な例として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられる。それらのうち、反応性の点でより好ましいのは水酸基、アミノ基であり、最も好ましいのは水酸基である。
【0128】
本発明の末端反応性ポリマー混合物は、片末端に反応性基を有する複数種類のポリマーの混合物であり、該混合物中における反応性基を持たないポリマーの含有率を低くすることができるという特長を有する。
【0129】
本発明の末端反応性ポリマー混合物は、その末端の反応性を利用して、各種ポリマー製品の中間体、および各種物品の改質剤(たとえば表面処理剤、コーティング材など)として好適であり、なかでもマクロモノマー中間体として好適である。
【0130】
本発明の末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物をラジカル重合により得る際に用いられる重合開始剤は、分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有する。
【0131】
その好適な例として、下記式(j1)〜(j4)
【0132】
【化33】

【0133】
で表される重合開始剤が挙げられる。上記のうち、得られるポリマーの開始剤末端の反応性が高いという点でより好ましいのは分子内に水酸基、アミノ基を有する上記式(j1)〜(j3)で表される重合開始剤であり、最も好ましいのは分子内にアミノ基を有する上記式(j1)で表される重合開始剤である。また、その使用量は、得ようとする末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物の目標分子量により適宜調整されるべきものであるが、少なすぎると重合が開始せず、多すぎると分子量が低くなりすぎたり、再結合停止が起こりやすくなって両末端に官能基の入ったポリマー、マクロモノマーが生成しやすくなることから、モノマーに対して0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜3モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が最も好ましい。
【0134】
本発明の末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物をラジカル重合により得る際に用いられる連鎖移動剤は分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。その好適な例として下記一般式(d1)〜(d5)
【0135】
【化34】

【0136】
で表される連鎖移動剤が挙げられる。これらのうち、連鎖移動が起こりやすく、かつ反応性の高いアミノ基、水酸基を有することから高い導入率で重合性官能基を導入可能な点で好ましいのは式(d1)、(d2)で表される連鎖移動剤である。
【0137】
式(d1)〜(d5)中、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。より好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基、アリーレン基である。その例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン基などが挙げられる。前記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。それらのうち、立体障害が小さく、連鎖移動が起こりやすいという点で最も好ましいのはエチレン基、プロピレン基である。
【0138】
一般式(d1)〜(d5)中、R10、R11は炭素数1〜20のアルキル基を表す。その例として、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イコシル基などが挙げられる。前記アルキル基は分岐状であっても直鎖状であってもよい。これらのうち、立体障害が小さく、連鎖移動が起こりやすい点で好ましいのはメチル基、エチル基、プロピル基である。R10、R11が互いに環を形成する場合の−R10−R11−の好適な例として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、イコシレン基が挙げられる。それらのうち、形成される環の安定性の点で好ましいのはブチレン基、ペンチレン基である。
【0139】
本発明の末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物を得る際に用いられる連鎖移動剤の好適な例として、2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール、2−アミノエタンチオール塩酸塩、2−チオプロピオン酸などが挙げられる。それらのうち、得られる連鎖移動剤末端の反応性の高さの点から2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール、2−アミノエタンチオール塩酸塩が最も好ましい。また、その使用量は、得ようとするマクロモノマー混合物の目標分子量によって適宜調整されるべきものであるが、多すぎると未反応の連鎖移動剤が系中に残存しやすくなることから、モノマーに対して0.01〜50モル%が好ましく、0.05〜40モル%がより好ましく、0.1〜25モル%が最も好ましい。
【0140】
本発明の末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物を重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、テトラヒドロリナロールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの各種アミド系溶剤、ジメチルスルホキシドであり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中で水、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノールはラジカル重合を阻害しにくい点でより好ましい。
【0141】
本発明の末端反応性ポリマー混合物、マクロモノマー混合物を得る際、重合溶媒を使用する場合のモノマー濃度は、低すぎると十分な分子量が得られず、高すぎると重合熱で暴走する危険性があることから、10重量%〜80重量%が好ましく、15重量%〜65重量%がより好ましく、20重量%〜50重量%が最も好ましい。
【0142】
シリコーンハイドロゲル中のシリコーン成分の含有量は、少なすぎると眼用レンズを連続装用するのに必要な酸素透過性が得られず、多すぎると親水性成分との相溶性が得られにくくなることから、各種モノマーの重量の合計を100重量部とした時に、シリコーンモノマーの含有量は20〜80重量部が好ましく、30〜80重量部がより好ましく、50〜80重量部が最も好ましい。
【0143】
本発明のシリコーンハイドロゲルは親水性モノマーを共重合成分として含んでもよい。共重合される親水性モノマーとしては、重合可能であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、および他の重合可能な炭素・炭素不飽和結合を有するモノマーを使用することができる。
【0144】
以下、その例をいくつか挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸などのカルボン酸類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどである。
【0145】
本発明のシリコーンハイドロゲルを重合により得る際は、良好な機械物性が得られ、消毒液や洗浄液に対する良好な耐性が得られることから、1分子中に2個以上の共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合成分として用いることが好ましい。1分子中に2個以上の共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーの共重合比率は0.1〜20重量%が好ましく、0.3〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。
【0146】
本発明のシリコーンハイドロゲルは、紫外線吸収剤や色素、着色剤などを含むものでもよい。また重合性基を有する紫外線吸収剤や色素、着色剤を共重合した形で含有してもよい。
【0147】
本発明のシリコーンハイドロゲルを重合により得る際は、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有する熱重合開始剤を選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそモノマー成分100重量部に対して1重量部くらいまでの量で使用される。
【0148】
本発明のシリコーンハイドロゲルを重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、テトラヒドロリナロールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの各種アミド系溶剤、ジメチルスルホキシドであり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中でアルコール系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤は得られた医療用材料中から溶剤を水による洗浄で容易に除去できる点で好ましい。
【0149】
本発明のシリコーンハイドロゲルは、単独で所望の形状に成型して使用することもできるし、他の材料と混合してから成型することもできる。また成型品の表面にコーティングして適用することも好適である。
【0150】
本発明のシリコーンハイドロゲルを成型して眼用レンズとして用いる場合、その重合方法、成形方法としては通常次の方法を使用することができる。たとえば一旦、丸棒や板状に成形し、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト法などである。
【0151】
一例として本発明のシリコーンハイドロゲルからなる眼用レンズをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
【0152】
モノマー組成物をレンズ形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってレンズ形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。シリコーンハイドロゲルからなる眼用レンズを製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が充填される。続いて、空隙にモノマー組成物を充填したモールドは、紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて、モノマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0153】
本発明のシリコーンハイドロゲルは、種々の方法で改質処理を行うことができる。具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着およびスパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0154】
本発明のシリコーンハイドロゲルの酸素透過性は、酸素透過係数70×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)以上が好ましい。
【0155】
本発明のシリコーンハイドロゲルの動的接触角(前進接触角)は、90°以下が好ましく、75°以下がより好ましく、60°以下が最も好ましい。
【0156】
本発明のシリコーンハイドロゲルは、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、創傷被覆材および各種の薬剤担体などの医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適である。
【実施例】
【0157】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0158】
分析方法
(1)GPC測定(表1、3、5)
表1、3、5のGPC測定は以下の条件で行った。
装置:東ソー HLC−8220 GPC
カラム:TSKgel SUPER HM−H 2本(粒径:5μm、6.0mmID×15cm)
移動相:N−メチルピロリドン (10mM LiBr)
カラム温度:40℃
測定時間:40分
注入量:10μL
検出器:RI検出器
流速:0.2 mL/分
サンプル濃度:0.4重量%
標準サンプル:ポリスチレン(分子量500〜109万)
(2)MALDI−MS測定
GPCでマクロモノマー混合物ピークの頂上付近を分取し、マトリックスにディスラノール、カチオン化剤にトリフルオロ酢酸を用いてリフレクターモードでMALDI−MS測定(ポジティブ)を行った。
【0159】
(3)動的接触角測定
動的接触角サンプルとして、フィルム状サンプルから切り出した5mm×10mm×0.1mm程度のサイズのフィルム状のものを使用し、ホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に対する前進時の動的接触角を測定した。浸漬速度は0.1mm/sec、浸漬深さは7mmとした。
(4)GPC測定(表7)
表7のGPC測定は以下の条件で行った。
装置:島津製作所 LC-20AD(ポンプ)、RID-20A(RI検出器)、CTO-20A(カラムオーブン)
カラム:TSKgel GMPWXL (粒径:13μm、7.8mmID×30cm)
移動相:水/メタノール=50/50(0.1N LiNO
カラム温度:40℃
測定時間:30分
注入量:100μL
検出器:RI検出器
流速:0.5 mL/分
サンプル濃度:0.1重量%
標準サンプル:ポリエチレングリコール(分子量106〜1258000)
実施例1
500mL三口フラスコにN−ビニルピロリドン(NVP、77.80g、0.70mol)、下式(j1)
【0160】
【化35】

【0161】
で表される重合開始剤(VA−061、和光純薬、0.44g、1.76mmol)、2−メルカプトエタノール(2−ME、10.00g、128mmol)、t−アミルアルコール(TAA、205.89g)を加え、三方コック、温度計、メカニカルスターラを装着した。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、75℃に昇温して、7時間撹拌した。
重合終了後、室温まで冷却し、重合反応液をn−ヘキサン900mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。n−ヘキサン/エタノール=450mL/20mLで2回洗浄した。固形分を真空乾燥機で40℃、16時間乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕してチャック付き袋に移し替えた。真空乾燥機で40℃、3時間乾燥させ、末端反応性ポリマー混合物を得た。得られた末端反応性ポリマー混合物の分子量は表1の通りであった。
実施例2〜4
表1に示す仕込み比で実施例1と同様の重合を行った。得られた末端反応性ポリマー混合物の分子量は表1の通りであった。
実施例5
実施例1で得られた末端反応性ポリマー混合物 50g、BHT 15.0 mg(ポリマーに対して300ppm)、1,4−ジオキサン 330gを500mLの四つ口丸底フラスコに加えた。四つ口丸底フラスコにメカニカルスターラ、玉栓、窒素ラインにつながった連結管、クライゼン管を取り付け、その先にリービッヒ冷却管、曲管、ナスフラスコを接続した。窒素気流下で撹拌しながら126℃(バス温)に昇温し、1,4−ジオキサンの残存量が約110〜120gになるまで、126℃を保持して反応系中から水分を除去した。90℃まで冷却した。ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)30μL、2−イソシアナートエチルメタクリレート(MOI)1.581gを窒素気流下添加し、90℃で3時間反応させた。
【0162】
反応終了後、70℃まで冷却し、エタノールを20g加えて、60分間撹拌する。室温まで冷却後、重合反応液をn−ヘキサン/メタノール600/10mL中に注ぎ入れる。上澄み液をデカンテーションで除く。n−ヘキサン/メタノール=400mL/20mLで2回洗った。固形分を真空乾燥機で40℃、16時間乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕してチャック付き袋に移し替えた。真空乾燥機で40℃、3時間乾燥させ、マクロモノマー混合物を得た。
【0163】
実施例6〜8
実施例2〜4で得られた末端反応性ポリマー混合物を用い、表2のMOI量で実施例5と同様の官能基化を行った。
【0164】
比較例1
重合開始剤VA−061を下式(j0)
【0165】
【化36】

【0166】
で表される重合開始剤(ADVN、和光純薬)に代え、表1のような仕込み比に変える以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
実施例9
実施例4の末端反応性ポリマー混合物について、GPCでメインピークのピークトップ付近を分取したフラクションを濃縮し、MALDI−MS測定を行った。実施例4の末端反応性ポリマー混合物のMALDI−MSチャートを図1に示す。その結果、実施例4の末端反応性ポリマー混合物は連鎖移動剤末端を有するポリマー、開始剤末端を有するポリマー共に反応性基を有しており、重合性基を導入することによって目的のマクロモノマー混合物が得られることが確認された。
【0170】
比較例2
比較例1の末端反応性ポリマー混合物を用いる以外は、実施例6と同様のMALDI−MS測定を行った。比較例1の末端反応性ポリマー混合物のMALDI−MSチャートを図2に示す。その結果、比較例1の末端反応性ポリマー混合物は重合性官能基を導入できない開始剤(ADVN)末端を有するポリマーが含まれていることが確認された。
【0171】
実施例10〜12
N−ビニルピロリドンの代わりにN,N−ジメチルアクリルアミドを用い、表3に示す仕込み比で実施例1と同様の重合を行い、末端反応性ポリマー混合物を得た。
【0172】
【表3】

【0173】
実施例13〜15
実施例10〜12で得られた末端反応性ポリマー混合物を用い、表4のMOI量で実施例5と同様の官能基化を行った。
【0174】
【表4】

【0175】
実施例16
実施例14の重合性官能基を導入したマクロモノマー混合物のMALDI−MS測定を行った。実施例14のマクロモノマー混合物のMALDI−MSチャートを図3に示す。無官能ピークはみられず、目的のマクロモノマー混合物が得られていることが分かる。
【0176】
実施例17
下記式(s1)
【0177】
【化37】

【0178】
で表されるシリコーンモノマー(30重量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(31重量部)、下記式(s2)
【0179】
【化38】

【0180】
で表されるシリコーンモノマー(23重量部)、実施例5で得られたマクロモノマー混合物(6重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(0.75重量部)、光開始剤イルガキュア819(0.23重量部)、tert−アミルアルコール(40重量部)を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で10cm角、厚さ3mmのガラス板2枚(うち1枚には剥離しやすいようにアルミシールを貼付)の間に、厚さ100μmのパラフィルムの中央部を切り抜いたものを2枚スペーサーとして挟み、そこにモノマー混合物を流し込んで、光照射(東芝FL6D、8.4キロルクス、15分間)により板間重合してフィルム状サンプルを得た。
【0181】
得られたフィルム状サンプルを、水中で超音波を20分間照射してガラス板から剥離し、60%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液に60℃で一晩浸漬し、さらに80%IPA水溶液に60℃、2時間浸漬して残存モノマーなどの不純物を抽出し、50%IPA水溶液、25%水溶液、水と段階的にIPA濃度を下げた液におよそ30分ずつ浸漬して水和した。200mLガラス瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬し、該ガラス瓶をオートクレーブに入れ、120℃で30分間煮沸処理を行った。放冷後、フィルム状サンプルをガラス瓶から取り出し、ホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬した。
【0182】
実施例18〜21
表5に示す仕込み比で実施例1と同様の重合、実施例5と同様の官能基化、実施例17と同様のシリコーンハイドロゲルポリマー重合を行った。得られたマクロモノマー混合物の分子量、および動的接触角(前進接触角)は表5の通りであった。
【0183】
比較例3〜6
表5に示す仕込み比で実施例1と同様の重合、実施例5と同様の官能基化、実施例17と同様のシリコーンハイドロゲルポリマー重合を行った。得られたマクロモノマー混合物の分子量、および動的接触角(前進接触角)は表5の通りであった。
【0184】
したがって、実施例18〜21、比較例3〜6において、同程度の分子量を有するマクロモノマー混合物を用いたシリコーンハイドロゲルの動的接触角を比較すると、実施例18〜21の方が動的接触角の値は小さく、良好な濡れ性を示すことが確認された。
【0185】
【表5】

【0186】
実施例22
1L三口フラスコにアクリル酸(以下、AA)144.12g(2.000mol)、水640.0g、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.375g、1.51mmol)、2−アミノエタンチオール(以下、2−AET、15.43g、0.2mol)を加え、三方コック、冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃に昇温して撹拌した。約30分後に重合熱が下がり始めたことを確認してから、70℃に昇温し、3時間撹拌した。
【0187】
重合終了後、室温まで冷却し、重合反応液をエバポレータで約380gまで濃縮し、アセトン/n−ヘキサン=1000mL/200mL中に注ぎ入れて一晩静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。アセトン/n−ヘキサン=500mL/50mLで5回洗浄した。固形分を真空乾燥機で40℃、終夜乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕してチャック付き袋に移し替えた。真空乾燥機で40℃、3時間乾燥させ、末端反応性ポリマー混合物を得た。
実施例23
実施例22で得た末端反応性ポリマー混合物 90.00g、BHT 30.0 mg(ポリマーに対して300ppm)、1,4−ジオキサン 266.67g、N,N−ジメチルアセトアミド400.00gを1Lの四つ口フラスコに加えた。四つ口フラスコにメカニカルスターラ、玉栓、窒素ラインにつながった連結管、クライゼン管を取り付け、その先にリービッヒ冷却管、曲管、ナスフラスコを接続した。窒素気流下で撹拌しながら132℃(バス温)に昇温し、1,4−ジオキサンを94.59g留出させて反応系中から水分を除去した。110℃まで冷却し、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)60μL、2−イソシアナートエチルメタクリレート(MOI)18.08g(0.1144mol、MOI/AET=1.02)を窒素気流下添加し、110℃で2時間反応させた。
【0188】
反応終了後、70℃まで冷却し、エタノールを70ml加えて、30分間撹拌した。室温まで冷却後、重合反応液をアセトン/n−ヘキサン=700/300mL中に注ぎ入れた。一晩静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。沈殿物をアセトン/n−ヘキサン=600mL/150mLで2回、アセトン/n−ヘキサン/水=600mL/150mL/20mLで1回、アセトン/n−ヘキサン=600/150mLで4回洗浄した。
【0189】
固形分を真空乾燥機で40℃、終夜乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕してチャック付き袋に移し替えた。真空乾燥機で40℃、3時間乾燥させ、目的のマクロモノマー混合物を得た。得られたマクロモノマー混合物の分子量は表7の通りであった。
実施例24
表6に示す仕込み比で実施例22と同様の重合を行った。
【0190】
【表6】

【0191】
実施例25
表7に示す仕込み比で、実施例24の末端反応性ポリマー混合物を用いて、実施例23と同様の官能基化を行った。得られたマクロモノマー混合物の分子量は表7の通りであった。
【0192】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は官能基導入率を高めたマクロモノマー混合物に関するもので、該マクロモノマー混合物はコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーA、および連鎖移動剤に由来する反応性基にさらに重合性基を導入した基を末端に有するマクロモノマーであるマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物。
【請求項2】
下記一般式(I)
【化1】

で表される少なくとも1種類のマクロモノマーA、および下記一般式(II)
【化2】

で表される少なくとも1種類のマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物。
(式(I)、(II)中、~~~~~はマクロモノマー骨格を表す。I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。PGは少なくとも1つの重合性基を有する基を表す。)
【請求項3】
前記重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基がそれぞれ独立に水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする請求項1または2記載のマクロモノマー混合物。
【請求項4】
下記一般式(i1)〜(i5)
【化3】

からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のマクロモノマーA、および
下記一般式(c1)、(c2)、(c3)
【化4】

からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のマクロモノマーBを含むことを特徴とするマクロモノマー混合物。
(R〜Rは下記一般式(m)
【化5】

で表されるモノマーが重合性を有するモノマーとなりうる基を表す。R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。R〜Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、またはAを表す。ただし、(i1)〜(i5)はいずれも少なくとも一つのAを有する。R〜Rは互いに環を形成していてもよい。R10、R11は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに環を形成していてもよい。A、Aはそれぞれ独立に、ラジカル重合可能な官能基を有する炭素数1〜20の基である。)
【請求項5】
、Aがそれぞれアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基からなる群から選ばれたラジカル重合可能な官能基を有する基であることを特徴とする請求項4記載のマクロモノマー混合物。
【請求項6】
、Aがそれぞれ下記式(a1)〜(a5)
【化6】

で表される構造から選ばれた重合性基であることを特徴とする請求項4記載のマクロモノマー混合物。(RはHまたはメチル基を表す。XはO、またはNHを表す。L、Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(m)で表されるモノマーが有する重合性基がアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基から選ばれた少なくとも一種である請求項4記載のマクロモノマー混合物。
【請求項8】
前記一般式(m)で表されるが親水性モノマーである請求項4記載のマクロモノマー混合物。
【請求項9】
前記一般式(m)で表されるモノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のマクロモノマー混合物。
【請求項10】
分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有する重合開始剤、および分子内に水酸基、アミノ基、カルボキシル基からなる群から選ばれた少なくとも一つの官能基を有する連鎖移動剤を用いて親水性モノマーをラジカル重合した後、得られた重合体混合物にラジカル重合可能な官能基を有する化合物を反応させて得られることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマクロモノマー混合物の製造方法。
【請求項11】
前記重合開始剤が下記式(j1)〜(j4)
【化7】

のいずれかで表される重合開始剤であることを特徴とする請求項10記載のマクロモノマー混合物の製造方法。
【請求項12】
前記連鎖移動剤が下記一般式(d1)〜(d5)
【化8】

のいずれかで表される連鎖移動剤であることを特徴とする請求項10記載のマクロモノマー混合物の製造方法。(Lは炭素数1〜10の2価の置換基を表す。R10、R11は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項13】
重合開始剤に由来する反応性基を有するポリマーx、および連鎖移動剤に由来する反応性基を有するポリマーyを含むことを特徴とする末端反応性ポリマー混合物。
【請求項14】
下記一般式(III)
【化9】

で表される少なくとも1種類のポリマーx、および下記一般式(IV)
【化10】

で表される少なくとも1種類のポリマーyを含むことを特徴とする請求項13記載の末端反応性ポリマー混合物。(式(III)、(IV)中、~~~~~はマクロモノマー骨格を表す。I-RGは重合開始剤に由来する基を表す。CTA-RGは連鎖移動剤に由来する基を表す。RGは重合開始剤に由来する反応性基、および連鎖移動剤に由来する反応性基を表す。)
【請求項15】
前記重合開始剤に由来する反応性基、および前記連鎖移動剤に由来する反応性基が水酸基、アミノ基、チオール基、エステル基、およびカルボン酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも一種類の官能基であることを特徴とする請求項13または14記載のマクロモノマー中間体。
【請求項16】
下記一般式(x1)〜(x5)
【化11】

からなる群から選ばれた構造を有する少なくとも1種類のポリマーx、および下記一般式(y1)〜(y3)
【化12】

で表される構造を有する少なくとも1種類のポリマーyを含むことを特徴とする末端反応性ポリマー混合物。
(R〜Rは下記一般式(m)
【化13】

で表されるモノマーが重合性を有するモノマーとなりうる基を表す。R12、R13は炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。R14〜R16は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、またはBを表す。ただし、(x1)〜(x5)はいずれも少なくとも一つのBを有する。R12〜R16は互いに環を形成していてもよい。R10、R11は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、互いに環を形成していてもよい。B、Bはそれぞれ独立に、反応性基を有する炭素数1〜20の基である。)
【請求項17】
請求項13〜16のいずれかに記載の末端反応性ポリマー混合物からなることを特徴とするマクロモノマー中間体。
【請求項18】
少なくとも1種類のシリコーンモノマーと、少なくとも1種類の請求項1〜9のいずれかに記載のマクロモノマー混合物を含むモノマー混合物を共重合させて得られるシリコーンハイドロゲル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−152410(P2011−152410A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289984(P2010−289984)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】