説明

マグネトロン・スパッタリング・デバイスにおいて使用するための統合したアノードおよび活性化反応性ガス源

【課題】本発明は、マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するための統合したアノードおよび活性化反応性ガス源、ならびにそれを組み込んだマグネトロン・スパッタリング・デバイスに関する。
【解決手段】統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、アノードを備える内部導電性表面を有する容器と、コーティング・チャンバーのチャンバー壁から隔てられている絶縁された外側本体部とを具備する。容器は、コーティング・チャンバーと連通する容器の周に比べて小さい周を持つ単一の開口部を有する。スパッタリング・ガスおよび反応性ガスは、投入口を通して容器内に、また単一の開口部を通してコーティング・チャンバー内に結合される。プラズマは、カソードからやってきて、アノードを通して電源に戻る高密度の電子によって点火される。比較的低いアノード電圧は、化学量論的誘電体コーティングを形成するために活性化反応性ガスのプラズマを十分維持できる電圧である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、材料を基板上に蒸着するためのマグネトロン・スパッタリング・デバイスに関するものである。より具体的には、本発明は、マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するための統合したアノードおよび活性化反応性ガス源、ならびにそれを組み込んだマグネトロン・スパッタリング・デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパッタ・コーティングは、材料の薄膜を基板上に蒸着するための広く使用されている技術である。スパッタリング蒸着プロセスでは、通常、グロー放電においてガス原子と電子との衝突によってイオンが生成される。イオンは、ターゲット材の原子をターゲット表面から放出させる電界によってカソードのところのコーティング材料のターゲットへと加速される。基板は、放出される原子の一部をインターセプトするように好適な場所に置かれる。こうして、ターゲット材のコーティングが、基板の表面上に蒸着される。反応性スパッタリングでは、ガス状化学種も基板表面に存在し、ターゲット表面からの原子と反応し、いくつかの実施形態では結合し、所望のコーティング材料を形成する。
【0003】
動作時に、スパッタ・ガス、例えば、アルゴンをコーティング・チャンバー内に入れると、カソードとアノードとの間に印加されるDC電圧によって、このアルゴンがプラズマに電離し、プラスに帯電したアルゴン・イオンがマイナスに帯電したカソードに付着する。イオンは、実質的なエネルギーでカソードの前面のターゲットに当たり、ターゲット原子または原子クラスターをターゲットからスパッタリングさせる。ターゲット粒子の一部がコーティング対象のウェハまたは基板材料に当たって、堆積し、これにより薄膜を形成する。
【0004】
堆積速度を高め、作動圧力を低くするために、磁気強化カソードが使用される。プレーナ・マグネトロンでは、カソードは、閉ループで配置され、コーティング材料の平坦なターゲット板に関して固定位置に取り付けられている永久磁石の配列を備える。したがって、磁界によって、電子が、ターゲット材料のスパッタリングまたは浸食が生じる経路または領域を画成する「レース・トラック」と一般に称される閉ループ内を移動する。マグネトロンのカソードでは、磁界がグロー放電プラズマを閉じ込め、電界の影響下で移動する電子の経路長を増大する。この結果、ガス原子−電子衝突確率が高まり、これにより、磁気閉じ込めを使用することなく得られる速度に比べてかなり高いスパッタリング速度が得られる。さらに、スパッタリング・プロセスは、かなり低いガス圧力で実行されうる。
【0005】
典型的には,マグネトロン・スパッタリング・システムは、スパッタリング時に2*10^−2Pa〜1*10^−1Paまでの範囲の圧力で動作する。この圧力を確定するために、典型的には、チャンバーの圧力をポンプで<1*10^−4Paに下げ、ガスの制御された流れ、典型的には(また、反応性スパッタリング・アルゴンおよび酸素または窒素の場合には)アルゴンをチャンバー内に供給し、所望の圧力を維持する。ダイオード・システムの場合、つまり、磁石が使用されない場合、プラズマを点火し、持続することができるためには>2Paの圧力が必要である。高圧には、平均自由行路が大幅に短縮され,広範なガス散乱を引き起こすという欠点がある。この結果、かすみがかったコーティングが生じる。
【0006】
マグネトロン・スパッタリング・デバイスでは、アノードは、マイナスに帯電したカソードに電荷差を与える。これは、チャンバー壁に与えられる電荷と同じくらい単純に与えることができる。しかし、スパッタリングされた材料は、スパッタリングされた原子に暴露される表面上にも蒸着される。コーティングが、金属酸化物などの電気的絶縁材料である場合、スパッタリング装置の他の部分に材料が蓄積すると、問題が生じる可能性がある。特に、アノードに絶縁コーティングが蓄積すると、プラズマの荷電平衡を維持するために必要なアノードのプラズマから電子を取り除く能力が阻害される。このため、プラズマの安定性が損なわれ、蒸着の制御が妨げられる。コーティングの蓄積により、アノードの場所がシステム内の別の表面に移ることになる。このような不安定性は、コーティングの品質に影響を及ぼす。アノードがコーティング材料でコーティングされてしまうという問題を解決するために多数の従来技術によるアノードが提案されている。多くの従来技術によるアノードは、アーク放電を生じるという問題も大きくする非常に高い電圧で機能し、コーティングの品質を損なう。一貫したコーティング品質を確保するために安定したアノードの場所を提供することができる低電圧のアノードが望ましい。
【0007】
アノード容器は、低電圧で安定したアノードの場所を形成することができる2005年3月7日に出願した米国特許公開第20060049041号において開示されている。アノードは、コーティング・チャンバーと連通する単一の開口部を有する容器の内面を備える。容器の内面は、電子のための好ましい帰路である。アノード容器は、アノード容器内の入口から単一の開口部を通りコーティング・チャンバー内に入る、スパッタ・ガスの供給源でもある。単一の開口部のサイズおよびその場所は、アノードの帯電した内面上にコーティング材料が蓄積するのを防ぐものである。
【0008】
多くの光学コーティングは、酸化物または他の化合物の蒸着を必要とする。このような材料は、好ましくは、金属ターゲットがスパッタリングされ、酸素、窒素、他の反応性ガスがプロセスに加えられる反応性スパッタ・モードで生産される。スパッタリングされた材料および活性化酸素種は、基板に同時に到達する。最適な酸素分圧に対する、例えば酸素の、最適な流れを見つける必要がある。酸素流が低すぎる場合、薄膜は化学量論的でなく、高い吸収損失を有する。高すぎる場合、ターゲット表面は、可能な最高の堆積速度で必要な予防動作に比べて酸化の度合いが大きくなる。金属ターゲットに対するスパッタ速度は、完全酸化ターゲットのスパッタ速度より10倍速いものとしてよい。酸化の有効性は、酸素が活性化され基板に向けられた場合に増大し、これにより、可能な体積速度が上がりうる。反応性スパッタ・プロセスは、酸化物に関して開示されている。すべての態様は、窒化物または他の反応性プロセスに同様に適用されうる。
【0009】
光吸収プロファイルが低いか、またはまったくないマグネトロン・スパッタリング・デバイスで誘電体コーティングを生産するために、酸素または窒素を供給するための追加の活性化反応性ガス源を備えプラズマを形成することが必要になる。市販の活性化反応性ガス源の例として、JDSU社のPAS、ProVac社のTaurion源、Kaufman & Robinson社のKRI源、Leybold社のAPS源が挙げられる。現在の活性化反応性ガス源は複雑である。高価な電子機器を必要とするものもある。また寿命に限りのあるフィラメントを必要とするものもある。これらのデバイスは、非常に高価であり、頻繁なメンテナンスを必要とする場合がある。
【0010】
アノード容器19および独立した反応性ガス源36の従来技術の構成は、図3Aおよび3Bに例示されている。カソード12は、中心回転軸Cのところの中心とともに位置決めされる。アルゴン・ガスのイオン化源をなすアノード容器19は、カソード12の一方の側に配置され、イオン化酸素の反応性ガス源36は、カソード12の反対側に配置される。基板17は、反応性ガス源36の上のカソード12の周を回転する。標準のカソード12を使用する反応性スパッタリングの場合、ターゲットの利用を制限するターゲット摩耗の大きな変動が観察されている。ターゲット14は、反応性ガス(酸化)源36に近い側の図3Bの断面内に示され、ターゲット摩耗は、ターゲット酸化(毒作用)の増大により、低いが、アノード19に近い側では、ターゲット摩耗は、プラズマ密度の増大により、高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開第20060049041号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マグネトロン・スパッタリング・デバイスにおけるより単純な、安価で、信頼性の高い、活性化反応性ガス源が、非常に望まれている。
【0013】
反応性スパッタリングの堆積速度を高めるために蒸着された薄膜の酸化の効率を高めることも望まれている。
【0014】
感温材料を加工することができるように、電力投入量が増えても低温プロセスを維持することも望まれている。
【0015】
本発明では、アノード容器を反応性ガスの供給源と一体化することによって、活性化反応性化学種をマグネトロン・スパッタリング・デバイス内に供給し、より単純な、効率的で、費用効果の高いデバイスにおいて誘電体コーティングを施すことができることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、コーティング材で物体をコーティングするためのマグネトロン・スパッタリング・デバイスであって、
動作時に排気がなされるように適合されたコーティング・チャンバーと、
コーティングを形成するための材料を備えたターゲットを含むカソードと、
コーティング領域内でコーティングされる物体を支持するための支持材を有する1つまたは複数のコーティング領域と、
容器を備える統合したアノードおよび活性化反応性ガス源と
を備え、容器は、
電源のプラス出力に電気的に結合され、アノードが電子の好ましい帰路となるように電圧差をカソードに与えるためのアノードを備える容器の内部導電性表面と、
チャンバー壁から電気的に絶縁された容器の絶縁外面と、
コーティング・チャンバーと連通する容器内部への単一の開口部と、スパッタリング・ガスを単一の開口部を通してコーティング・チャンバー内に送り込むための容器に結合されているスパッタリング・ガスの供給源と、
反応性ガスを単一の開口部を通してコーティング・チャンバー内に送り込むための容器に結合されている反応性ガスの供給源と
を含む。
【0017】
容器の絶縁された外面がコーティング・チャンバーの外部に配置された本発明の一実施形態がさらに画定される。
【0018】
コーティングされる物体の表面の平面から容器の単一の開口部を含む平面までの距離が、コーティングされる物体の表面の平面からターゲットの表面の平面までの距離以上である本発明の一実施形態がさらに画定される。
【0019】
統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を補強するためにさらなる反応性ガス源を含む本発明の一実施形態がさらに画定される。
【0020】
本発明の一実施形態は、容器を備える統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を備え、容器は、
電源のプラス出力に電気的に結合され、アノードが電子の好ましい帰路となるように電圧差をカソードに与えるためのアノードを備える容器の内部導電性表面と、
チャンバー壁から電気的に絶縁された容器の絶縁外面と、
コーティング・チャンバーと連通する単一の開口部と、
スパッタリング・ガスを単一の開口部を通してコーティング・チャンバー内に送り込むための容器に結合されているスパッタリング・ガスの供給源と、
反応性ガスを単一の開口部を通してコーティング・チャンバー内に送り込むための容器に結合されている反応性ガスの供給源と
を含む。
【0021】
スパッタリング・ガスおよび反応性ガスが単一の入口を通して容器内に供給される本発明の一実施形態がさらに画定される。
【0022】
スパッタリング・ガスおよび反応性ガスが別々の入口を通して容器内に供給される本発明の一実施形態がさらに画定される。
【0023】
次に本発明の例示的な実施形態について、図面に従って説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】外壁を一部取り外した本発明のコーティング・システムの等角図である。
【図2】マグネトロン・スパッタリング・デバイスで使用するためのアノード容器の断面図である。
【図3A】従来技術の独立したアノード容器および活性化反応性ガス源の概略上面図である。
【図3B】従来技術の独立したアノード容器および活性化反応性ガス源の概略断面図である。
【図4A】統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を含む本発明によるコーティング幾何学的形状の概略上面図である。
【図4B】図4Aのコーティング幾何学的形状の概略断面図である。
【図5A】コーティングされる基板がカソードを通り過ぎる、本発明による代替的コーティング幾何学的形状の概略上面図である。
【図5B】図5Aのコーティング幾何学的形状の概略断面図である。
【図6A】統合したアノードおよび活性化反応性ガス源がリンク形状のカソードの中心に配置されている本発明によるコーティング幾何学的形状の概略上面図である。
【図6B】図6Aのコーティング幾何学的形状の概略断面図である。
【図7A】2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源が組み込まれている本発明によるコーティング幾何学的形状の概略上面図である。
【図7B】図7Aのコーティング幾何学的形状の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
典型的な配置構成による2005年3月7日に出願した米国特許公開第20060049041号において開示されているアノード容器がプラズマを含むことに私たちは気づいた。プラズマは、カソード12からやってきて、アノード20を通して電源に戻る高密度の電子によって点火される。イオン生成および活性化学種の生成の効果は、エネルギーe- +Ar=2e- +Ar+ またはエネルギーe- +Ar=>e- +Ar* というカソードで発生する反応と類似している。アルゴン原子のこのような活性化なしでは、アノードにプラズマは見られない。活性化およびイオン化された酸素を発生するかどうかを調べるために、アノードへの酸素追加を調べることに決めた。酸素供給をアノード容器20に結合することによって、透明SiO単層を蒸着することができた。これは、アルゴンおよび酸素とともに動作するアノードが、アノードおよび活性化反応性ガス源として動作することを示す明確な指標である。それに加えて、アノードの内壁の酸化は観察されなかった。
【0026】
マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス10のコーティング・チャンバー2の等角図が図1に示されている。圧力が大気圧より低い場合を意味すると理解される真空状態下で動作するようにポンプ8によりコーティング・チャンバー2の排気を行う。チャンバー壁32を接地し、プラスに帯電したアノード20およびマイナスに帯電したカソード12から絶縁する。遊星歯車駆動装置14は、中心回転軸Cを中心として回転可能なキャリア16またはラックを備え、複数の、例えば7つまたは8つの、遊星歯車17が中心回転軸Cを中心として半径方向に指示されている。リング形状のカソード12、この実施形態では2つのカソード12が図示されている。容器20は、コーティング・チャンバー2と連通している開口部を有する統合したアノードおよび活性化ガス源を構成する。参照番号20および20で、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20の異なる位置を区別する。追加の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、カソード12の中心に示されている。これらの位置は、リング・カソードまたは固体カソードが使用されるかどうかに応じて代替位置とすることができるか、または両方とも図示されているように使用することができる。リング・カソードがない場合であっても、2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、図7AおよびBに示されているように、カソードの反対側に位置決めすることができ、これにより、堆積速度を高めることができる。統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20(図2を参照)は、スパッタ・ガスおよび反応性ガスをコーティング・チャンバー2に供給するための1つまたは複数の入口29を備える。マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス10は、コーティングのために、基板または他の物体23のロードおよびアンロードを行うロード・ロック1を備える。これにより、蒸着チャンバー2はいつでも真空状態の下に留まることができる。
【0027】
統合したアノードおよび活性化反応性源は、パルスDCマグネトロン・スパッタリング、DCマグネトロン、ACマグネトロン・スパッタリングおよびrfマグネトロン・スパッタリングで実現することができる。
【0028】
統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、マイナスに帯電したカソードに電荷差を与える。次に、図2を参照すると、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20が、アノードを備える銅またはステンレス鋼22の内側導電性表面を有し、直接的な結合先となる真空チャンバー2と連通するように第1の端部のところに単一の開口部21を有するコンテナまたは容器の形で示されている。開口部21は、容器の側部または端部に配置することができる。都合のよいように、開口部21は、容器それ自体がチャンバー2の外側にあるチャンバー壁32内に位置決めされうる。これにより、チャンバー内の空間効率が達成され、サービスアクセスがしやすくなる。開口部21は、カソード12に隣接して位置決めされ、これにより、ターゲットからのスパッタリングされた材料のプルームおよび活性化されイオン化された酸素のプルームを、できる限り近い位置で重なり合いコーティングされる基板に同時に到達するように近似的に位置決めする。容器20の外面26は、電気的に絶縁される。断面図では、動作中のアノードの温度を維持するために水冷パイプ28がアノードの周りに実質的に配置されているように示されている。スパッタ・ガスおよび反応性ガス、酸素または窒素を容器20内に入れるための導管を形成するようにガス入口29が示されている。これらのガスを入口29の前で混合するか、あるいは2つの別々の入口29を容器20内に結合することができる。反応性ガスの流れは、コーティング・デバイス10が誘電体コーティングを形成しない場合に遮断されうるため、スパッタ・ガスのみが容器20を貫流する。開口部21のサイズは、比較的小さく、ガスの流れは、容器20を局所的に加圧するように選択することができる。周が容器の周より著しく小さい、比較的小さな開口部21、およびターゲットへの視線方向を外れた開口部21の配置によって、コーティング材料がアノードの内側導電性表面22に入り、コーティングすることが防止される。動作時に、容器20は、コーティング・チャンバー2内のプラズマの形成を一緒になって促進するアルゴン・ガスおよび反応性ガスによってチャンバー圧力より高い圧力に加圧される。プラズマは、カソードからやってきて、アノードを通して電源に戻る高密度の電子によって点火され、その後維持電圧によって維持される。アルゴン・プラズマは、反応性ガスを同時に点火するのに十分であることが実証されている。真空コーティング・チャンバー2の残り部分より高い、容器20内の圧力により、アノード電圧が低くなり、より安定したスパッタリング状態が促進されうる。プラス電源リード25は、電源をアノードの内側導電性表面22に接続する。図2に示されている統合したアノードおよび活性化反応性ガス源デバイス20は、低いアノード電圧で、またアーク放電がほとんど、または全く発生することなく、機能するように設計された。プロセス変動を低減するために、約+15から+80ボルトの低いアノード電圧が好ましい。アノードの内側導電性表面22は、絶縁体33によって接地チャンバー壁32から電気的に絶縁される。
【0029】
好ましい一実施形態では、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、少なくともd=10cmの直径および少なくともh=20cmの長さを有する円筒形の容器を備え、真空チャンバー(2)への開口部(21)は図2に示されているように一方の端部にあり、他方の端部では閉じている。低スパッタリング・プロセスでは、チャンバー圧力は、0.267Pa(2mTorr)未満である。アノードにおけるより高い圧力は、アノード20のより小さな開口部21、および入口29を介して容器20内に入るプロセス・ガスおよび反応性ガスの制御された流れによって達成される。最適な開口部は、約20cmの面積を有し、好ましくは丸形である。動作時に、容器20は、0.400Pa(3mTorr)を超える圧力に加圧されうる。
【0030】
図4Aおよび4Bに示されている、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を組み込んだマグネトロン・スパッタリング・デバイスの一構成では、カソード12は、その中心を中心軸Cに置いて配置される。統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、カソード12に隣接して配置される。コーティング領域に取り付けられた少なくとも1つの基板17は、中心軸Cから統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20までの距離に実質的に等しい半径方向距離で中心軸Cの軌道の周りを回転し、これにより少なくとも1つの基板17は統合したアノードおよび活性化反応性ガス源の開口部21を通り過ぎる。図3A、Bのものと比べてこの構成ではターゲットの摩耗勾配は低いと予想されるが、それは、より高いプラズマ密度(高いArイオン濃度)およびターゲットの毒作用が同じ場所にあるからである。
【0031】
図5Aおよび5Bに示されている、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を組み込んだマグネトロン・スパッタリング・デバイスの別の構成では、カソード12は、中心軸Cから一定の半径方向距離だけ平行移動される。1つまたは複数の基板17が、カソード12が平行移動される半径方向距離に等しい半径を有する軌道で回転する。統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20も、カソード12に隣接する中心から同じ半径方向距離のところに配置され、これにより、1つまたは複数の基板17がカソード12ならびに統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20を立て続けに通り過ぎる。
【0032】
統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、図1および図6に示されているように、マグネトロン・スパッタリング・デバイス内のリング・カソードの中心にある開口部21とともに配置されうるが、それは、開口部21が強磁界から比較的遠く離れているからである。これにより、システムの対称性が改善され、これによりターゲットの一様な摩耗パターンが生じると予想され、ターゲットの利用が改善する。
【0033】
図6Aおよび6Bに示されている好ましい一実施形態では、カソード12の中心の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20として一緒に酸素源をアノード容器内に備えることによって、非常に対称的なシステムが構成され、ターゲットの摩耗は一様になると予想される。カソード12から一定距離のところ(例えば、図1に示されているように20)に配置されている補助活性化反応性源は、より高い堆積速度を達成できるように追加して備えることができる。ターゲットからのスパッタリングされた材料のプルームおよび活性化されイオン化された酸素のプルームが重なり合いコーティングされる基板に同時に到達するときに、吸収率の低い金属酸化物のより高い堆積速度が達成されうることが、実験によって示されている。したがって、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20をターゲットの中心に置くことは、ほとんど理想的な解決策である。源からの放出物は、イオン化されるか、または他の何らかの方法で活性化された酸素種(例えば、原子状酸素、オゾン)としてよい。統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20の開口部21は、ちょうどカソード12の中心のターゲットの表面の平面44のところに位置決めされる。基板17は、同心上のカソード12ならびに統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20の上で回転するように支持される。コーティングされる物体の表面の平面46から容器20の単一の開口部21を含む平面までの距離は、コーティングされる物体の表面の平面からターゲットの表面の平面までの距離以上である。
【0034】
統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を組み込んだマグネトロン・スパッタリング・デバイスのさらなる例示的な構成が、図7Aおよび7Bに示されており、そこでは、2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源容器20がカソード12の対向する側部に配置され、それぞれの容器20およびカソードは中心回転軸Cから同じ半径方向距離のところに配置されている。コーティングされる1つまたは複数の基板に対する支持材は、カソードならびに統合したアノードおよび活性化反応性ガス源より上に基板を通すために同じ半径方向距離のところで中心回転軸Cの周りの回転において基板を支持するように適合される。2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源20は、両方とも連続的に使用することができるか、またはそれら2つの間で1Hz以上のサイクルにより交互することができる。
【0035】
インラインにしたり、長方形または円筒形のカソードを使うなどの、異なるマグネトロン・プラットホームで使用する多数の他の構成も実現可能である。
【符号の説明】
【0036】
C 中心回転軸
1 ロード・ロック
2 コーティング・チャンバー
8 ポンプ
10 マグネトロン・スパッタ・コーティング・デバイス
12 カソード
14 ターゲット
14 遊星歯車駆動装置
16 キャリア
17 遊星歯車
17 基板
19 アノード容器
20 アノード容器、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源
21 開口部
22 銅またはステンレス鋼
23 物体
25 プラス電源リード
26 外面
28 水冷パイプ
29 入口
32 チャンバー壁
33 絶縁体
36 反応性ガス源
44 ターゲットの表面の平面
46 表面の平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング材で物体をコーティングするためのマグネトロン・スパッタリング・デバイスであって、
動作時に排気がなされるように適合されたコーティング・チャンバーと、
コーティングを形成するための材料を備えたターゲットを含むカソードと、
コーティング領域内でコーティングされる物体を支持するための支持材を有する1つまたは複数のコーティング領域と、
容器を備える統合したアノードおよび活性化反応性ガス源と
を備え、前記容器は、
電源のプラス出力に電気的に結合され、前記アノードが電子の好ましい帰路となるように電圧差を前記カソードに与えるための前記アノードを備える前記容器の内部導電性表面と、
チャンバー壁から電気的に絶縁された前記容器の絶縁外面と、
前記コーティング・チャンバーと連通する前記容器内部への単一の開口部と、
スパッタリング・ガスを前記単一の開口部を通して前記コーティング・チャンバー内に送り込むための前記容器に結合されているスパッタリング・ガスの供給源と、
反応性ガスを前記単一の開口部を通して前記コーティング・チャンバー内に送り込むための前記容器に結合されている反応性ガスの供給源と
を含む、マグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項2】
前記単一の開口部は、前記内部導電性表面をほとんどのスパッタリングされた材料から遮蔽して保護するために、前記容器の周より小さい請求項1に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項3】
前記単一の開口部は、前記容器内の局所的な圧力が前記コーティング・チャンバー内の圧力より高くなるようにスパッタ・ガスおよび反応性ガスの流れが選択されうるように寸法が決められる請求項2に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項4】
前記容器の前記内部導電性表面を含む前記アノードに印加される電圧は、15から80ボルトである請求項3に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項5】
前記スパッタリング・ガスは、アルゴンであり、前記反応性ガスは、酸素または窒素である請求項4に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項6】
前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を構成する前記容器の前記単一の開口部は、前記カソードと同じ、また隣接する壁において前記コーティング・チャンバーの壁に結合される請求項5に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項7】
前記容器の前記絶縁外面は、前記コーティング・チャンバーの外部に配置される請求項6に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項8】
コーティングされる前記物体の表面の平面から前記容器の前記単一の開口部を含む平面までの距離は、コーティングされる前記物体の前記表面の平面から前記ターゲットの表面の平面までの距離以上である請求項7に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項9】
統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を構成する2つまたはそれ以上の容器は、前記カソードに隣接する実質的に反対側の位置に配置される請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項10】
前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を補強するためにさらなる反応性ガス源を含む請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項11】
前記カソードは、リング形状のターゲットを有するリング形状であり、前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源を構成する前記容器は、前記リング形状のカソードの中心に配置される請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項12】
前記リング形状のカソードは、中心回転軸から一定の半径方向距離のところに配置され、前記1つまたは複数のコーティング領域は、動作時に前記コーティング領域が前記カソードの中心において前記リング・カソードならびに前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源の真上を通るように同じ半径方向距離のところで前記中心回転軸の周りを回転するように適合される請求項11に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項13】
前記1つまたは複数のコーティング領域は、前記カソードの中心点と一致する中心回転軸の周りを回転するように適合され、前記コーティング領域および前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、前記中心回転軸から同じ半径方向距離のところに配置され、これにより動作時に前記コーティング領域は前記容器の前記単一の開口部の真上を通る請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項14】
前記カソードならびに統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、中心回転軸から一定の半径方向距離のところに互いに隣接するように配置され、前記コーティング領域は、前記中心回転軸から同じ半径方向距離のところで回転するように適合され、これにより動作時に前記コーティング領域は前記カソードならびに前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源の真上を通る請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項15】
前記カソードは、中心回転軸から一定の半径方向距離のところに配置され、2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、前記カソードのいずれかの側の前記中心回転軸から同じ半径方向距離のところに配置され、前記コーティング領域は、前記カソードならびに統合したアノードおよび活性化反応性ガス源と同じ半径方向距離のところで前記中心回転軸の周りを回転するように適合され、これにより動作時に前記コーティング領域は前記カソードならびに前記統合したアノードおよび活性化反応性ガス源の真上を通る請求項8に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項16】
前記2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、動作時に連続運転する請求項15に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項17】
前記2つの統合したアノードおよび活性化反応性ガス源は、間欠的に動作し、1Hz以上のサイクルによりこれら2つの間で交互動作する請求項15に記載のマグネトロン・スパッタリング・デバイス。
【請求項18】
容器を備える統合したアノードおよび活性化反応性ガス源であって、
前記容器は、
電源のプラス出力に電気的に結合され、前記アノードが電子の好ましい帰路となるように電圧差をカソードに与えるための前記アノードを備える前記容器の内部導電性表面と、
チャンバー壁から電気的に絶縁された前記容器の絶縁外面と、
コーティング・チャンバーと連通する単一の開口部と、
スパッタリング・ガスを前記単一の開口部を通して前記コーティング・チャンバー内に送り込むための前記容器に結合されているスパッタリング・ガスの供給源と、
反応性ガスを前記単一の開口部を通して前記コーティング・チャンバー内に送り込むための前記容器に結合されている反応性ガスの供給源と
を含む、統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。
【請求項19】
前記単一の開口部は、前記内部導電性表面をほとんどのスパッタリングされた材料から遮蔽して保護するために、前記容器の周より小さい請求項18に記載の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。
【請求項20】
前記単一の開口部は、前記容器内の局所的な圧力が前記コーティング・チャンバー内の圧力より高くなるようにスパッタ・ガスおよび反応性ガスの流れが選択されうるように寸法が決められる請求項19に記載の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。
【請求項21】
前記容器の前記内部導電性表面を含む前記アノードに印加される電圧は、15から80ボルトである請求項20に記載の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。
【請求項22】
前記スパッタリング・ガスおよび反応性ガスは、単一の入口を通して前記容器内に供給される請求項21に記載の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。
【請求項23】
前記スパッタリング・ガスおよび反応性ガスは、別々の入口を通して前記容器内に供給される請求項21に記載の統合したアノードおよび活性化反応性ガス源。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−219374(P2012−219374A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−218940(P2011−218940)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】