説明

マスキング機能を有する撮像装置

【課題】撮像装置において、評価領域とマスク領域とが重なった場合でも適切なAFやAWBが行われるようにする。
【解決手段】撮像装置は、撮像により生成した画像中に評価領域106を設定し、該評価領域の画像信号から取得した評価情報に基づいて焦点調節処理または色調節処理を行う調節処理手段15,16,18と、該画像中にマスク領域302を設定し、該マスク領域にマスキング処理を行うマスキング処理手段17とを有する。調節処理手段は、評価領域の少なくとも一部にマスク領域が重なった場合に、該評価領域におけるマスク領域と重ならない範囲が増加するように評価領域の位置および大きさのうち少なくとも一方を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影画像中の特定領域に対してマスキング処理を行う機能を有する監視カメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視用途に用いられるカメラは、公共の場所や特定の建物の周辺を継続的に撮影するものが多く、該カメラによって撮影される画像には、プライバシーや情報管理の面から表示することが好ましくない特定被写体が含まれる場合が多い。
このため、特許文献1には、撮影画像における特定被写体が映った領域にマスキング処理を行うことができる監視カメラが開示されている。また、特許文献2には、マスキング処理を行うべきマスク領域をタッチパネル方式で指定できるテレビカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−069494号公報
【特許文献2】特開2004−040162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、監視カメラに自動焦点調節(AF)機能や自動色調節(AWB)機能が搭載されている場合に、撮影画像中においてAFやAWBに用いる評価値を取得するための評価領域とマスク領域とが重なってしまう場合がある。この場合、マスキングされた被写体に対してAFが行われたりマスキングされた領域を基準としたAWBが行われたりして、マスク領域以外の表示される領域のピントがぼけたり色が不自然であったりする出力画像が得られてしまう。
【0005】
本発明は、評価領域とマスク領域とが重なった場合でも適切なAFやAWBが行われるようにした撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての撮像装置は、撮像により生成した画像中に評価領域を設定し、該評価領域の画像信号から取得した評価情報に基づいて焦点調節処理または色調節処理を行う調節処理手段と、該画像中にマスク領域を設定し、該マスク領域にマスキング処理を行うマスキング処理手段とを有する。そして、調節処理手段は、評価領域の少なくとも一部にマスク領域が重なった場合に、該評価領域におけるマスク領域と重ならない範囲が増加するように評価領域の位置および大きさのうち少なくとも一方を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、評価領域とマスク領域とが重なった場合に、評価領域におけるマスク領域と重ならない範囲を増加させるように評価領域の位置や大きさを変更する。これにより、マスク領域以外の表示領域の被写体に対してピントが合った出力画像や、該表示領域の色が適切に調節された出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1であるカメラによって生成された撮影画像の例を示す図。
【図2】図1に示した撮影画像中の被写体の位置関係を示す図。
【図3】撮影画像において評価領域にマスク領域が重なった場合を示す図。
【図4】実施例1のカメラの構成を示すブロック図。
【図5】実施例1において評価領域がマスク領域に重ならない位置に移動した状態を示す図。
【図6】実施例1のカメラにおける評価領域の変更処理を示すフローチャート。
【図7】実施例1において評価領域とマスク領域とが重なっているが、重複率が許容量以下である場合を示す図。
【図8】実施例1における評価領域およびマスク領域の代表ポイントの設定例を示す図。
【図9】本発明の実施例2であって、複数のマスク領域が設定された場合を示す図。
【図10】実施例2のカメラにおける評価領域の変更処理を示すフローチャート。
【図11】実施例2における評価領域およびマスク領域の代表ポイントの設定例を示す図。
【図12】実施例2における評価領域の変更例を示す図。
【図13】本発明の実施例3における評価領域の変更例を示す図。
【図14】実施例3であるカメラにおける評価領域の変更処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1には、本発明の実施例1である撮像装置としての監視カメラ(以下、カメラという)による撮像によって生成された撮影画像を示す。
【0011】
撮影画像中には、車102、家103、木104および道105といった被写体が含まれている。106は自動焦点調節処理(AF)や自動色調節処理(AWB)を行うために用いられる評価情報であるAF評価値やホワイトバランス評価値を画像信号から取得する評価領域(以下、評価枠という)である。なお、評価枠106は、AF用とAWB用とで別々に設定されてもよいが、本実施例では同じに設定されている。
【0012】
図2には、カメラ201と図1に示した撮影画像中に含まれる被写体102〜105との位置関係(距離関係)を示している。道105を除いて、車102はカメラ201の最も近くに位置し、以下、木104および家103の順でカメラ201から離れている。道105は、車102よりもカメラ201の近くから家103まで続いている。
【0013】
図3には、撮影画像において、評価枠106にマスク領域302が重なった場合の例を示す。
【0014】
本実施例のカメラは、図4に示すように構成されている。カメラは、撮影範囲内の被写体からの光を撮影光学系11によって結像させ、これにより形成された被写体像をCCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子である撮像素子12により電気信号に変換する。撮像素子から出力された電気信号(アナログ撮像信号)は、A/D変換器13によってデジタル撮像信号に変換されて信号処理回路14に入力される。信号処理回路14は、入力されたデジタル撮像信号に対して各種信号処理を行い、画像信号(つまりは、画像)を生成する。
【0015】
18はCPU等により構成されるコントローラであり、撮像素子12や後述するAF処理回路15、AWB処理回路16およびマスキング処理回路17の動作を制御する。AF処理回路15、AWB処理回路16およびコントローラ18は調節処理手段を構成し、マスキング処理回路17およびコントローラ18はマスキング処理手段を構成する。
【0016】
AF処理回路15は、このようにして撮像により生成した画像(以下、撮影画像という)を構成する画像信号のうち評価枠106内の画像信号から高周波成分を抽出し、該高周波成分から撮影画像のコントラスト状態を示すAF評価値を生成(取得)する。そして、該AF評価値が最も高くなるように撮影光学系11内のフォーカスレンズ11aを光軸方向に移動させて、評価枠106内の被写体(特定被写体)にピントを合わせる。図3では、評価枠106が家103を含むように設定され、家103に対してAFが行われた場合を示している。
【0017】
AWB処理回路16は、撮影画像を構成する画像信号のうち評価枠106内の白色部分の画像信号からRGBの色信号値としてのホワイトバランス評価値を取得する。そして、ホワイトバランス評価値から、出力画像において所定の白色を表示するためのRGBのゲイン値を算出し、該ゲイン値を用いて撮影画像に対するホワイトバランス処理を行う。
【0018】
また、マスキング処理回路17は、ホワイトバランス処理がなされた撮影画像中のマスク領域302にマスキング処理(黒や灰色の画像を重畳させる処理)を行うことで、マスク領域302内の被写体がカメラからの出力画像中で表示されるのを防ぐ。図3では、マスク領域302が家103および木104の一部を覆うように設定された場合を示している。つまり、図3は、カメラの出力画像によって、道105および車102を監視したい場合を示している。
【0019】
ただし、図3には、マスク領域302が、評価枠106の全体に重なったり、図中に二点鎖線で示すように評価枠106の一部(大部分)に重なったりした場合を示している。この場合、AFがマスクキング処理によって表示されない家103に対して行われ、家103とは被写体距離が異なる監視被写体(車102)がぼけた出力画像が得られることになる。
【0020】
そこで、本実施例のカメラでは、図3に示すような状況になった場合は、図5に示すように、評価枠106の位置をマスク領域302と重ならない位置に変更する。言い換えれば、評価枠106の少なくとも一部にマスク領域302が重なった場合に、該評価枠106におけるマスク領域302と重ならない範囲が増加するように評価枠106の位置を変更する。また、この際、評価枠の位置の変更量ができるだけ小さくなるようにする。
【0021】
図6のフローチャートには、評価枠106の位置を変更する処理の流れを示している。この処理は、コントローラ18がコンピュータプログラムに従って実行する。
【0022】
コントローラ18は、まずステップ601において、評価枠にマスク領域が重なった場合に評価枠の位置を変更する処理(評価枠変更処理)を行うか否かを判定する。この評価枠変更処理を行うか否かは、カメラのユーザが予め設定する。評価枠変更処理を行う場合は、コントローラ18はステップ602に進む。また、評価枠変更処理を行わない場合は、コントローラ18はステップ610に進み、現在の評価枠の位置を維持する。
【0023】
ステップ602において、コントローラ18は、マスク領域が所定の許容量(所定量)を超えて評価枠に重なっているか否かを判定する。これは、評価枠とマスク領域とが大きく重なっておらず、マスクによって覆われていない領域の被写体に対してAFやAWBが行われる場合までを評価枠変更処理の対象から除外するための判定である。評価枠に対してマスク領域がどの程度重なっているかは、以下のように算出することができる。
【0024】
図8には、評価枠801とマスク領域802とがともに矩形である場合を示している。コントローラ18は、評価枠801のうちマスク領域802が重なっている重複範囲(図8では評価枠801の全体)の面積を求め、該重複範囲の面積が評価枠801の面積の何%に相当するかを示す重複率を計算する。そして、重複率が上記許容量に対応する許容値(例えば、50%)を超えているか否かをステップ602で判定する。
【0025】
図8に示すように、評価枠701に対して許容値を超えてマスク領域702が重なっている場合には、コントローラ18はステップ603に進む。また、図7に示すように、評価枠701に対して許容率を超えてマスク領域702が重なっていない場合(重複率が許容値以下の場合)には、コントローラ18は、ステップ610に進んで、現在の評価枠の位置を維持する。
【0026】
ステップ603では、コントローラ18は、図8に示すように、評価枠801とマスク領域802のそれぞれに代表ポイントを設定する。例えば、評価枠801とマスク領域802が矩形である場合には、それぞれの頂点を代表ポイント(Xポイント807,805、黒三角ポイント808,806、黒四角ポイント809,803および黒丸ポイント810,804で示す)に設定すればよい。Xや黒丸等の同じマークが付された代表ポイント同士を対応代表ポイントという。図8では、評価枠801とマスク領域802の対応代表ポイント同士が、水平方向および垂直方向において互いに反対側に位置するように設定されている。
【0027】
そして、コントローラ18は、評価枠801とマスク領域802における対応代表ポイント間、例えば黒丸ポイント810,804間の水平方向(所定方向)での長さ(以下、対応代表ポイント間隔という)を算出する。
【0028】
コントローラ18は、こうして算出した対応代表ポイント間隔のうち最も短い間隔を求める。図8では、黒三角ポイント808,806間の水平方向間隔と黒四角ポイント809,803間の水平方向間隔が最短である。
【0029】
そして、コントローラ18は、ステップ604において、最短の対応代表ポイント間隔をより短くする方向に評価枠を所定量だけ移動させる。これにより、評価枠の移動量を最小としつつ、評価枠におけるマスク領域との重複範囲(重複率)を小さくしたり無くしたりする、つまりは評価枠とマスク領域とが重ならない範囲を増加させることができる。
【0030】
次にコントローラ18は、ステップ605において、移動後の評価枠におけるマスク領域との重複率が許容値を超えているか否かを判定する。移動後の評価枠の重複率が許容値を超える場合としては、例えば撮影画像の端によって評価枠の移動量が十分に確保できない場合である。
【0031】
重複率が許容値を超えている場合には、コントローラ18は、ステップ606において、マスク領域との重複率を小さくするための移動量が次に小さい方向に評価枠を所定量だけ移動させる。コントローラ18は、ステップ605とステップ606の処理を、ステップ607において重複率が許容値以下となったと判定されるまで繰り返し行う。このとき、垂直方向や斜め方向において最短である対応代表ポイント間隔をより短くする方向に評価枠を移動させてもよい。
【0032】
そして、コントローラ18は、ステップ607において、移動後の評価枠におけるマスク領域との重複率が許容値以下であるか、ステップ605,606の処理を所定回数繰り返しても重複率を許容値以下にできない(これ以上の移動先が無い)かを判定する。
【0033】
コントローラ18は、ステップ608において、ステップ607での判定結果が「これ以上の移動先が無い」である場合は、ステップ609に進む。ステップ609では、コントローラ18は、ステップ605,606の処理を所定回数繰り返して重複率が最小となった位置に評価枠を設定する。
【0034】
一方、ステップ607での判定結果が「重複率が許容値以下になった」である場合は、コントローラ18は、ステップ610に進み、現在の評価枠の位置(重複率が許容値以下になった位置)を維持する。この結果、図3に示すように全体にマスク領域302が重なっていた評価枠106を、図5に示すようにマスク領域302が重ならない位置に移動させることができる。
【0035】
したがって、この後のAFやAWBは移動後の評価枠106内の車102に対して行われ、車102およびその近くの道105にピントが合い、かつこれらの色が良好に調節された出力画像を得ることができる。
【実施例2】
【0036】
図9を用いて、本発明の実施例2として、撮影画像中に複数のマスク領域が設定された場合について説明する。
【0037】
図9では、評価枠901内に含まれる家103に対してAFによりピントが合わせられたが、評価枠901の大部分にマスク領域902が重なっており、家103が表示されていない。図9では、撮影画像中に、それぞれ家103と車102を覆う2つのマスク領域902,903が設定されている。本実施例では、評価枠901の位置をマスク領域902,903以外の非マスク領域に変更する。
【0038】
図10には、本実施例における評価枠901の位置を変更する処理の流れを示している。この処理は、コントローラ18がコンピュータプログラムに従って実行する。
【0039】
コントローラ18は、まずステップ1001において、実施例1のステップ601と同様に、評価枠にマスク領域が重なった場合に評価枠の位置を変更する評価枠変更処理を行うか否かを判定する。この評価枠変更処理を行うか否かは、カメラのユーザが予め設定する。評価枠変更処理を行う場合は、コントローラ18はステップ1002に進む。また、評価枠変更処理を行わない場合は、コントローラ18はステップ1012に進み、現在の評価枠の位置を維持する。
【0040】
ステップ1002において、コントローラ18は、実施例1のステップ602と同様に、マスク領域が所定の許容量を超えて評価枠に重なっているか否かを判定する。評価枠に対して許容量を超えてマスク領域が重なっている(重複率が許容値を超えている)場合は、コントローラ18はステップ1003に進む。また、評価枠に対して許容量を超えてマスク領域が重なっていない(重複率が許容値以下である)場合には、コントローラ18は、ステップ1012に進んで、現在の評価枠の位置を維持する。
【0041】
ステップ1003では、コントローラ18は、評価枠とマスク領域のそれぞれに代表ポイントを設定する。図11には、評価枠901とマスク領域902,903が矩形である場合の代表ポイントの設定例を示している(ただし、図11中の評価枠901の位置は、図9中の評価枠901が後述するステップ1004で移動した後の位置である)。図11では、評価枠901とマスク領域902,903の対応代表ポイント同士が、水平方向および垂直方向において互いに反対側に位置するように設定されている。
【0042】
コントローラ18は、評価枠と該評価枠に対する重複率が大きい方のマスク領域(図9中のマスク領域902に相当し、以下、第1マスク領域という)との対応代表ポイント間の水平方向での間隔(対応代表ポイント間隔)を算出する。そして、算出した対応代表ポイント間隔のうち最も短い間隔を求める。
【0043】
次にコントローラ18は、ステップ1004において、最短の対応代表ポイント間隔をより短くする方向に評価枠を所定量だけ移動させる。これにより、評価枠の移動量を最小としつつ、評価枠における第1マスク領域との重複範囲(重複率)を小さくしたり無くしたりする、つまりは評価枠と第1マスク領域とが重ならない範囲を増加させることができる。
【0044】
次にコントローラ18は、ステップ1005において、移動後の評価枠における第1マスク領域との重複率が許容量を超えているか否かを判定する。移動後の評価枠の重複率が許容値を超える場合としては、例えば撮影画像の端によって評価枠の移動量が十分に確保できない場合である。
【0045】
重複率が許容値を超えている場合には、コントローラ18は、ステップ1006において、第1マスク領域との重複率を小さくするための移動量が次に小さい方向に評価枠を所定量だけ移動させる。
【0046】
また、コントローラ18は、ステップ1007において、移動後の評価枠における他のマスク領域(図11中のマスク領域903に相当し、以下、第2マスク領域という)との重複率を算出する。これは、評価枠における第1マスク領域との重複率が許容値以下となっても、第2マスク領域との重複率が許容値を超える場合があるためである。さらに、評価枠に対して第1および第2マスク領域の双方が重なり、それらの重複率の合計が許容値を超えてしまう場合もあるためである。
【0047】
コントローラ18は、ステップ1005〜1007の処理を、ステップ1008において評価枠の第1および第2マスク領域のそれぞれとの重複率と第1および第2マスク領域との重複率の合計とがいずれも許容値以下となったと判定されるまで繰り返し行う。このとき、垂直方向や斜め方向において最短である代表ポイント間隔をより短くする方向に評価枠を移動させてもよい。
【0048】
そしてコントローラ18は、ステップ1008において上記各重複率が許容値以下であるか、ステップ1005〜1007の処理を所定回数繰り返しても各重複率を許容値以下にできない(これ以上の移動先が無い)かを判定する。
【0049】
コントローラ18は、ステップ1009において、ステップ1008での判定結果が「これ以上の移動先が無い」である場合は、ステップ1010に進む。ステップ1010では、コントローラ18は、ステップ1005〜1007の処理を所定回数繰り返して、第1および第2マスク領域との重複率の合計が最小となった位置に評価枠を設定する。
【0050】
一方、ステップ1008での判定結果が「重複率が許容量以下になった」である場合は、コントローラ18は、ステップ1011に進み、現在の評価枠の位置(重複率の合計が許容量以下になった位置)を維持する。
【0051】
この結果、図9に示すように、大部分に第1マスク領域902が重なっていた評価枠901を、図12に示すようにマスク領域902が少しだけ重なる位置に移動させることができる。
【0052】
図12において、1201は上述したステップ1004における評価枠の最初の移動先候補としての位置であり、1202は2番目の移動先候補としての位置である。さらに、1203は3番目の移動先候補としての位置である。位置1201では、評価枠に対して2マスク領域902,903の双方が重なり、その重複率の合計が許容値を超える。位置1202では、評価枠の一部に対してマスク領域902のみが重なるが、撮影画像の上端から評価枠がはみ出して有効な評価枠の大きさが小さくなる。この結果、マスク領域902との重複率は許容値を超える。
【0053】
そして、位置1203では、評価枠の一部に対してマスク領域902のみが重なり、かつ評価枠が撮影画像の下端からはみ出すが、有効な評価枠の大きさがそれほど小さくならず、マスク領域902との重複率は許容値以下となる。したがって、最終的にはこの位置1203に評価枠を設定する。
【0054】
したがって、この後のAFやAWBは移動後の評価枠内の道105に対して行われ、道105にピントが合い、かつ道105周辺の色が良好に調節された出力画像を得ることができる。
【実施例3】
【0055】
上記実施例1,2では、評価枠の位置を変更することで、評価枠とマスク領域とが許容量を超えて重なることを回避する場合について説明した。本実施例では、図3に示した状態から図13に示すように評価枠の大きさを変更する(拡大する)ことで、評価枠とマスク領域とが許容量を超えて重なる(重複率が許容値を超える)ことを回避する。また、本実施例では、評価枠の大きさの変更量ができるだけ小さくなるようにする。
【0056】
図14には、本実施例における評価枠901の位置を変更する処理の流れを示している。この処理は、コントローラ18がコンピュータプログラムに従って実行する。
【0057】
コントローラ18は、まずステップ1401において、評価枠にマスク領域が重なった場合に評価枠の大きさを変更する評価枠変更処理を行うか否かを判定する。この評価枠変更処理を行うか否かは、カメラのユーザが予め設定する。評価枠変更処理を行う場合は、コントローラ18はステップ1402に進む。また、評価枠変更処理を行わない場合は、コントローラ18はステップ1406に進み、現在の評価枠の大きさ(および位置)を維持する。
【0058】
ステップ1402において、コントローラ18は、実施例1のステップ602と同様に、マスク領域が所定の許容量を超えて評価枠に重なっているか否かを判定する。評価枠に対して許容量を超えてマスク領域が重なっている(重複率が許容値を超えている)場合は、コントローラ18はステップ1403に進む。また、評価枠に対して許容量を超えてマスク領域が重なっていない(重複率が許容値以下である)場合には、コントローラ18は、ステップ1406に進んで、現在の評価枠の大きさ(および位置)を維持する。
【0059】
ステップ1403では、コントローラ18は、実施例1のステップ1003と同様に、評価枠とマスク領域のそれぞれに代表ポイントを設定する。そして、評価枠の代表ポイントとマスク領域の代表ポイントとを比較して、マスク領域との重複率を許容値以下にできる(つまりは、所定量以上の大きさの非マスク領域が得られる)評価枠の最小の大きさを算出する。
【0060】
そして、コントローラ18は、ステップ1404において、ステップ1403にて算出された大きさとなるように、評価枠の大きさを変更する。これにより、評価枠の拡大量を最小に抑えつつ、評価枠におけるマスク領域との重複範囲(重複率)を小さく、つまりは評価枠とマスク領域とが重ならない範囲を増加させることができ、所定量以上の非マスク領域を確保することができる。
【0061】
次にコントローラ18は、ステップ1405において、ステップ1404での評価枠の拡大の結果として、最終的に評価枠のマスク領域との重複率を許容値以下にできた(所定量以上の大きさの非マスク領域が得られた)か否かを判定する。重複率を許容値以下にできた場合は、ステップ1408に進み、変更した大きさの評価枠を設定する。一方、重複率を許容値以下にできなかった場合は、ステップ1407に進み、評価枠を撮影画像のほぼ全体にわたる大きさに設定する。
【0062】
したがって、この後のAFやAWBは大きさ変更後の評価枠内の車102や道105に対して行われ、車102や道105にピントが合い、かつこれらの色が良好に調節された出力画像を得ることができる。
【0063】
なお、評価枠の大きさを変更するに際して、評価枠の中心の位置も併せて変更してもよい。
【0064】
以上説明したように、上記各実施例では、評価枠の位置および大きさのうち少なくとも一方を変更することで、評価枠のマスク領域との重複率を許容値以下に下げる。これにより、マスク領域に含まれて表示されない被写体にピントが合って他の被写体がぼけたり、該表示されない被写体の色を基準とした不適切な色調節がなされたりした出力画像が得られることを防止できる。言い換えれば、マスク領域以外の非マスク領域に含まれて表示される被写体にピントが合い、該被写体の色が良好に調節された出力画像を得ることができる。
【0065】
また、上記各実施例では、評価枠の位置および大きさのうち少なくとも一方を、その変更量(移動量や拡大量)ができるだけ小さくなるように変更するので、変更前の評価枠にできるだけ近い範囲に新たな評価枠を設定することができる。ただし、これは評価枠の位置および大きさのうち少なくとも一方の変更の仕方の例にすぎず、評価枠におけるマスク領域と重ならない範囲が増加するのであれば、どのような変更の仕方であってもよい。例えば、変更後の評価枠の位置や大きさを予め設定しておいてもよい。
【0066】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
マスキング機能を有しつつも、適切なAFやAWBが行える撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0068】
106 評価枠
201 カメラ
302 マスク領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像により画像を生成する撮像装置であって、
前記画像中に評価領域を設定し、該評価領域の画像信号から取得した評価情報に基づいて焦点調節処理または色調節処理を行う調節処理手段と、
前記画像中にマスク領域を設定し、該マスク領域にマスキング処理を行うマスキング処理手段とを有し、
前記調節処理手段は、前記評価領域の少なくとも一部に前記マスク領域が重なった場合に、該評価領域における前記マスク領域と重ならない範囲が増加するように前記評価領域の位置および大きさのうち少なくとも一方を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記調節処理手段は、前記評価領域の位置および大きさのうち少なくとも一方を、その変更量ができるだけ小さくなるように変更することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−197204(P2011−197204A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62057(P2010−62057)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】