説明

マスククランプの移動機構および成膜装置

【課題】 マスククランプの移動量を複数に分割するマスククランプの移動機構およびこの機構を備えた成膜装置を提供する。
【解決手段】 マスククランプ20の移動機構は、有機EL素子を製造するための成膜装置におけるマスククランプ20の移動機構であって、有機材料12の蒸発源14に対向して配設され、基板とマスク34とが重ね合わされるチャック16と、先端部20aを鉤型に形成してなるとともに、チャック16に重ね合わされたマスク34を前記先端部20aで保持するマスククランプ20と、前記基板クランプ18を移動させる伸縮手段22とを備え、前記伸縮手段22は、第1伸縮手段24を装置本体11に配設するとともに、伸縮動作をなす第1ロッドを板部材23に接続し、第2伸縮手段26を前記板部材23に配設するとともに、伸縮動作をなす第2ロッドを前記基板クランプ18の基端部に接続または接触させてなる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスククランプの移動機構および成膜装置に係り、特に有機EL素子を製造する成膜装置に用いられるマスククランプの移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescent)素子を製造する成膜装置には、例えば真空蒸着装置が用いられる。図8は真空蒸着装置上部の説明図である。真空蒸着装置1には、底部に有機材料の蒸発源(不図示)が設けられており、この蒸発源に対面する装置の上部にチャック2が設けられている。チャック2は、ガラス基板3を平面に維持する平板であり、装置本体の外部に設けられた回転機構により回転可能となっている。そしてチャック2の周囲には、マスクを保持するマスククランプ4が昇降可能に設けられている。なおマスクには、ガラス基板3表面に有機EL素子のパターン(画素)を形成するための開口パターンが形成されている。
【0003】
マスククランプ4は、その上端部が装置本体の外部に突き出ており、その上端に接続部材5が配設されている。また接続部材5の下方には、シリンダ6が設けられており、一方が装置本体の上部に接続され、他方が板部材7に接続されている。この板部材7は、接続部材5と接触可能に設けられている。そしてシリンダ6の伸縮動作による板部材7の上下移動に伴って、接続部材5が上下移動し、マスククランプ4が上下に移動する。
【0004】
なおシリンダの伸縮動作により、マスククランプを上下に移動させることについて開示された文献は不知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスククランプの上下移動する範囲は、上限がガラス基板に接触する位置であり、下限が基板搬送機構と接触することのない位置になっている。この基板搬送機構は、ガラス基板を真空蒸着装置の外部から内部に挿入して基板クランプ上に載せるとともに、パターンが成膜されたガラス基板を装置の外部へ取り出すものである。したがってマスククランプと前記基板搬送機構とが接触しないために、マスククランプを上下に移動させるシリンダのストロークは、大きいものが必要であった。
【0006】
ところで、ガラス基板が装置内に挿入されてチャックに装着固定された後には、ガラス基板の所定位置に有機EL素子のパターンを形成するために、マスクとガラス基板との位置合わせが行われる。この位置合わせは、アライメントアームに載せられたマスクとガラス基板とが接触しない距離、すなわち距離が少しでも空いていればよいので、僅かな距離をおいて行われている。
【0007】
この位置合わせのときには、マスクを固定するマスククランプは、ストロークの調整できないエアシリンダを用いているから、2段動作ができないので移動範囲の最下限に位置することとなり、位置合わせ終了後に上昇を開始するとマスクをガラス基板上に固定するまで長い距離を移動することになる。したがって長い距離を移動するためには多くの時間が必要になるので、製造スピードが遅くなり、製造効率が低くなっていた。
【0008】
またガラス基板は、ガラス基板上に成膜される有機薄膜の厚さを基板面内で均一にするために、水平方向に回転される。したがってガラス基板を回転させるために、チャックやマスク、マスクホルダー等を回転させなければならないので、回転機構を真空蒸着装置の上部に配設しなければならない。しかし真空蒸着装置には、装置に設けられた各機構を駆動させるための配線等が複雑に接続されているので、回転機構の軸上においてマスククランプを複数段階に分割して昇降させる機構を設けることは困難とされていた。
【0009】
本発明は、マスククランプの移動量を複数に分割するマスククランプの移動機構を提供することを目的とする。
また本発明は、マスククランプの移動機構を備えた成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るマスククランプの移動機構は、有機EL素子を製造するための成膜装置におけるマスククランプの移動機構であって、有機材料の蒸発源に対向して配設され、基板とマスクとが重ね合わされるチャックと、前記チャックに重ね合わされた前記マスクを保持するマスククランプと、基板クランプを移動させる伸縮手段とを備え、前記伸縮手段は、第1伸縮手段を装置本体に配設するとともに、伸縮動作をなす第1ロッドを板部材に接続し、第2伸縮手段を前記板部材に配設するとともに、伸縮動作をなす第2ロッドを前記基板クランプの基端部に接続または接触させてなる、ことを特徴としている。
この場合、前記伸縮手段は、エアシリンダ、油圧シリンダまたはアクチュエータとすることができる。
【0011】
また本発明に係る成膜装置は、有機EL素子を製造するための成膜装置であって、有機材料の供給源に対向して基板を保持するチャックを配設し、前記有機EL素子のパターンが形成されたマスクの保持手段となるマスククランプを前記チャックの側縁に沿って上下移動可能に配設し、前記マスククランプの基端部の下部に伸縮手段を重ねて配設し、前記チャック、前記マスククランプおよび前記伸縮手段を水平方向に回転させる回転機構を前記装置本体に設けた、ことを特徴としている。
【0012】
また重ねて配設された前記伸縮手段は、一端を前記装置本体に接続し、第1ロッドを板部材に接続した第1伸縮手段と、前記板部材に配設され、第2ロッドを前記接続部材に接続または接触した第2伸縮手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
マスククランプの移動機構は、伸縮手段が伸縮すると、これに接続または接触されている接続部材が上下に移動する。すなわち第1伸縮手段および第2伸縮手段の少なくとも1つを伸縮動作させると、この動作に伴ってマスククランプも上下に移動する。したがって各伸縮手段の伸縮動作を独立に制御すると、マスククランプの移動量を2段階に分割することができる。
【0014】
また伸縮手段の伸縮動作は、エアシリンダ、油圧シリンダまたはアクチュエータに設けられたシリンダロッドを伸縮させることにより行うことができる。
そして有機EL素子の製造時において、マスクと基板との位置決め中に第2伸縮手段を縮めた状態で第1伸縮手段を伸ばし、前記位置決め終了後に第1伸縮手段および第2伸縮手段を伸ばすと、位置決め終了後のマスククランプの移動量が短くなるので、有機EL素子の製造時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係るマスククランプの移動機構および成膜装置の最良の実施形態について説明する。なお以下では、成膜装置として真空蒸着装置を用いた形態について説明する。図1は真空蒸着装置の説明図である。図2はマスククランプの概略平面図である。真空蒸着装置10は、装置本体11の底部に有機材料12の蒸発源14(昇華源)を備えるとともに、装置本体11の上部にチャック16、基板クランプ18、マスククランプ20、伸縮手段22およびマスククランプ28等を備えた構成である。
【0016】
具体的には、有機材料12の蒸発源14は、有機材料12が入れられるるつぼ14aを備えており、るつぼ14aの外面に有機材料12を加熱・蒸発(昇華)させるヒーター14bが設けられている。また装置本体11の内側上部に設けられたチャック16は、るつぼ14aに対面して配設されており、水平方向に沿って配置された平板である。そしてチャック16は、装置本体11の外側上部に設けられた回転機構30によって水平回転可能となっている。
【0017】
基板クランプ18は、装置本体11の上部から下方に向かって延び、下方の先端部18cがチャック16側(真空蒸着装置10の中央側)に向けて折り曲げられた鉤型であり、チャック16の側縁に沿って複数個が配設されている。この基板クランプ18は、その先端部18c(折曲げ部)でガラス基板32の縁部を支えるために、各先端部18cが同じ高さ(同一面内)になるように設定されている。また基板クランプ18は、装置本体11の外側上部に設けられた昇降機構(不図示)によって、各先端部18cが同一面内にある状態を維持しつつ昇降可能になっている。そして基板クランプ18が上昇することによって、ガラス基板32をチャック16に接触させて、平面状に装着保持させることが可能になっている。
【0018】
マスククランプ20は、装置本体11の上部から下方に向かって延び、下方の先端部20aがチャック16側(真空蒸着装置10の中央側)に向けて折り曲げられた鉤型であり、チャック16や基板クランプ18の側縁に沿って複数個が配設されている。このマスククランプ20は、下方の先端部20a(折曲げ部)でマスク34の縁部を支えるために、下方の各先端部20aが同じ高さ(同一面内)になるように設定されている。なおマスク34は、有機EL素子の各画素に対応する開口パターンが複数設けられたマスクフィルム34aと、マスクフィルム34aの周縁部を保持する枠型のマスクフレーム34bとを備えている。
【0019】
またマスククランプ20の上方の先端部20bは、装置本体11の外部に突設されており、上方の各先端部20bには接続部材20cが配設されている。そして上方の先端部20bと接続部材20cとが、マスククランプ20の基端部となる。この接続部材20cを上下移動させることによって、接続部材20cに接続されている各マスククランプ20が上下移動される。これによりマスククランプ20の下方に設けられた各先端部20aが同一面内にある状態を維持しつつ昇降可能になっている。
【0020】
さらに接続部材20cの下方には、接続部材20cを昇降させる伸縮手段22が設けられている。すなわち接続部材20cと伸縮手段22とは、対向して配置されている。この伸縮手段22は、第1伸縮手段24および第2伸縮手段26を備えており、第1伸縮手段24および第2伸縮手段26は、例えばエアシリンダや油圧シリンダ、アクチュエータ等であればよい。なおエアシリンダを用いると、メンテナンスが容易である。第1伸縮手段24は、一端が装置本体11の上部に接続されており、他端24aが板部材23に接続されている。より具体的には、複数の第1伸縮手段24(シリンダ本体)がチャック16の回転方向に沿って装置本体11の外側上部に配設されており、各他端24a(第1ロッド)を板部材23で接続した構成である。そして第1伸縮手段24の伸縮動作に伴って、板部材23が上下に移動される。
【0021】
この板部材23には、第2伸縮手段26が配設されており、他端26aが接続部材20cに接続または接触している。より具体的には、複数の第2伸縮手段26(シリンダ本体)は、板部材23の下側に配設されており、他端26a(第2ロッド)が板部材23に設けられた孔部(不図示)を介して上方に延びており、その先端部が接続部材20cに接続または接触している。そして第2伸縮手段26および第1伸縮手段24の少なくとも一方の伸縮動作に伴って、接続部材20cが上下に移動される。
【0022】
そして基板クランプ18、マスククランプ20および伸縮手段22は、装置本体11の外側上部に設けられた回転機構30によって、チャック16とともに回転することが可能になっている。
【0023】
マスククランプ28は、チャック16と蒸発源14との間において、チャック16に対面するよう配設されており、その構成はマスク34の縁部(マスクフレーム34b)に対応して前記マスク34の側方から延設された延設部28aと、この延設部28aの先端部に設けられた嵌合ピン28bとを有するものである。より具体的には、延設部28aは、マスク34の縁部を支えるものであり、チャック16の側縁に沿ってマスククランプ20を挟み込む位置に配設され、且つ鉤型に形成されたマスククランプ20の先端部に沿ってマスク34の外側からマスク34の縁部まで延ばされている。この延設部28aの先端部には、マスク34の嵌合穴34cと嵌め合わされる嵌合ピン28bが設けられている。なお実施形態によっては、延設部28aの先端部に嵌合穴が設けられ、マスク34に嵌合ピンが設けられた形態であってもよい。また一方のマスククランプ20を両側から挟み込むように配設された各延設部28aの基端部はそれぞれ接続されている。なお図2に示す形態では、延設部28aは、マスク34の各角部を支えるようにマスク34の外側から延設されている。そしてマスククランプ28は、真空蒸着装置10に対する基準位置にあるので、嵌合穴34cと嵌合ピン28bとが嵌め合うようにマスク34をマスククランプ28上に載せると、マスク34は真空蒸着装置10に対して位置決めされる。
【0024】
次に、マスククランプ20の移動機構の動作および真空蒸着装置10の動作について説明する。なお以下では、チャック16、基板クランプ18、マスククランプ20およびマスククランプ28を装置上部機構という場合がある。図3は装置上部機構が基準位置にあるときの説明図である。図4はガラス基板とマスクとを位置合わせしているときの、装置上部機構の説明図である。図5はガラス基板とマスクとを位置合わせした後の、装置上部機構の説明図である。
【0025】
マスククランプ28上には、予めマスク34が配設されている。このときマスククランプ28は真空蒸着装置10に対する基準位置にあるので、嵌合ピン28bと嵌合穴34cとが嵌め合うようにマスク34が載せられると、マスク34は真空蒸着装置10に対して位置決めされる。そしてガラス基板32は、前記基板搬送機構によって装置本体11の内部に入れられ、チャック16とマスク34との間に挿入される。そしてガラス基板32は、前記基板搬送機構の下降動作とともに下方へ移動されて、基板クランプ18上に載せられる(S100)。
【0026】
この後、マスククランプ28を上昇させることによりマスク34を上方に移動させ、マスク34上にガラス基板32を載せる(S110)。そしてマスククランプ28は、ガラス基板32がチャック16の底面(チャック面)に接触するまで上昇され続ける(S120)。なおガラス基板32は、マスク34上に載せられるとマスク34に沿って水平になり、この水平状態を維持しつつチャック16に当接される。
【0027】
この後、基板クランプ18をガラス基板32に接触するまで上昇させる(S130)。これによりガラス基板32は、基板クランプ18により水平状態を維持しつつチャック16に装着保持される。そしてマスククランプ28を下降させて、マスク34を下方に移動させる(S140,図3参照)。なおS100〜S140のステップの間は、第1伸縮手段24および第2伸縮手段26は縮められているので、マスククランプ20の下方の先端部20aがマスク34や前記基板搬送機構と接触することはない。
【0028】
この後、ガラス基板32に設けられたアライメントマークと、マスク34に設けられたアライメントマークとを用いて、ガラス基板32とマスク34との位置合わせが行われる(S150)。図6はガラス基板とマスクとの位置合わせの説明図である。そして図6(A)はカメラ、ガラス基板およびマスクの配置を説明する図である。また図6(B)はカメラで撮像された画像であって、位置ズレが生じている場合を示す図である。さらに図6(C)はカメラで撮像された画像であって、位置が合っている場合を示す図である。
【0029】
具体的には、ガラス基板32には、少なくとも2箇所にアライメントマーク42が設けられている。ガラス基板32に設けられたアライメントマーク42は、例えばガラス基板32の対角する角部に設けられ、ガラス基板32に有機EL素子の電極膜を形成するのと同時に、この電極と同じ材料で形成されればよい。そしてガラス基板32に設けられるアライメントマーク42の形状は、例えば丸や点若しくは十字形等であればよい。
【0030】
またマスク34に設けられたアライメントマーク44は、ガラス基板32に設けられたアライメントマーク42に対応した位置に設けられればよく、その形状は点や丸若しくは十字形等であればよい。なおガラス基板32のアライメントマーク42を丸とした場合は、マスク34のアライメントマーク44を点にすればよく、ガラス基板32のアライメントマーク42を点とした場合は、マスク34のアライメントマーク44を大きさの異なる丸若しくは異なる形状にすればよい。
【0031】
さらに真空蒸着装置10には、ガラス基板32に設けられたアライメントマーク42と、マスク34に設けられたアライメントマーク44とを撮像するカメラ40を設けておけばよい(図6(A)参照)。
【0032】
そしてカメラ40で撮像された画像を確認しつつ、アライメントマーク42(44)の円の中に、アライメントマーク44(42)の点が入るようにマスク34(マスククランプ28)のX(縦),Y(横),θ(回転)方向を調整すれば、ガラス基板32とマスク34との位置合わせが終了する(図6(B),(C)参照)。なおガラス基板32とマスク34との位置合わせ時は、マスク34が真空蒸着装置10に対して位置決めされているので、マスク34のアライメントマーク44が確実にカメラ40の視野内に入る。
【0033】
このようなマスク34とガラス基板32との位置決めが行われている間に第1伸縮手段24を伸ばして、マスククランプ20を上昇させる(S160,図4参照)。これによりマスククランプ20の下方の先端部が上昇する。そして第1伸縮手段24を伸ばしたときの下方の先端部は、位置決め動作が行われているマスク34よりも下方にある。
【0034】
そしてS150およびS160のステップが終了すると、第2伸縮手段26を伸ばしてマスククランプ20を上昇させる(S170,図5参照)。具体的には、マスククランプ20の下方の先端部20aを上昇させると、マスク34がマスククランプ28からマスククランプ20に載せ換えられ、さらに下方の先端部20aを上昇させ続けると、マスク34がガラス基板32に被せられる。そしてマスク34がガラス基板32に被せられると、下方の先端部20aの上昇、すなわち第2伸縮手段26の伸びが止まる。なお第2伸縮手段26を伸ばしたときの下方の先端部20aの動作上限位置は、マスク34をガラス基板32に被せたときのチャック16面からマスク34下面までの距離よりも少し(少なくとも数mm)上方に位置させればよい。
【0035】
この後、回転機構30の動作によってガラス基板32やマスク34を回転させるとともに、ヒーター14bによって有機材料12を加熱・蒸発させて、ガラス基板32上に有機EL素子のパターンを形成する(S180)。
【0036】
この後、第1伸縮手段24および第2伸縮手段26を縮めて、マスククランプ20を下降させる(S190)。このときマスク34は、マスククランプ20の下降とともに下方へ移動されるが、マスククランプ20からチャック16の下方にあるマスククランプ28へ移動の途中で載せかえられる。また基板クランプ18も下降して、ガラス基板32を下方へ移動させる(S200)。この後、装置本体11に前記基板搬送装置が入り、ガラス基板32を回収する(S210)。このような動作により有機EL素子が製造される。
【0037】
このようなマスククランプ20の移動機構および真空蒸着装置10によれば、マスククランプ20を上下に移動させる伸縮手段22として第1伸縮手段24および第2伸縮手段26を設けたので、それぞれを独立に伸縮させることにより、マスククランプ20は2段階の上下移動が可能になる。すなわちマスククランプ20の移動量を2段階に分割することができる。したがって、マスク34とガラス基板32との位置合わせ中にマスククランプ20を1段階上昇させて、マスク34とマスククランプ20の下方の先端部との距離を僅かにあけておき、位置合わせ終了後にマスククランプ20をもう1段上昇させてマスク34をガラス基板32に被せると、位置合わせ終了後のマスククランプ20の移動距離を短くすることができる。よってマスク34とガラス基板32との位置合わせと、マスククランプ20の上昇とが同時に行われるので、有機EL素子の製造時間を短縮することができ、製造スピードを向上させることができる。そして有機EL素子の製造効率を向上させることができる。
【0038】
また伸縮手段22は、第1伸縮手段24の他端24aに板部材23を接続し、この板部材23に第2伸縮手段26を配設した構成なので、装置本体11に設けられた各機構(前記装置上部機構)等を駆動させるための配線等と干渉することがない。したがって第1伸縮手段24および第2伸縮手段26によって、回転機構30の軸上においてマスククランプ20を2段階に分割して昇降させることができる。
【0039】
なおマスククランプ20は、ガラス基板32の挿入や回収、マスク34の交換のときには第1伸縮手段24および第2伸縮手段26を縮めておいて最下点まで下げられていればよく、これ以外のときには第1伸縮手段24を伸ばした状態で第2伸縮手段26を伸縮させて上下に移動されればよい。
【0040】
また本実施形態では、板部材23を介して第1伸縮手段24および第2伸縮手段26を上下に接続した構成であるが、他の実施形態として第2伸縮手段26の他端26aにさらに板部材を接続して、この板部材に第3伸縮手段を配設し、第3伸縮手段の他端を接続部材20cに接続または接触させた構成にしてもよい。すなわち板部材を介して第1伸縮手段、第2伸縮手段および第3伸縮手段を上下に接続し、マスククランプ20を3段階に分割して昇降させることもできる。さらに板部材を介して伸縮手段を複数上下に接続する構成を繰り返せば、マスククランプ20を複数段階に分割して昇降させることができる。
【0041】
また本実施形態では、ガラス基板とマスクとの位置合わせを行うカメラが2つ設けられた形態であるが、これに限定されることはない。すなわちカメラは、図7(A)に示すように3個設けることもでき、図7(B)に示すように4個設けることもできる。
【0042】
また本実施形態では、マスクの移動機構が真空蒸着装置10に用いられている形成を説明したが、マスクの移動機構は真空蒸着装置10に用いられるばかりでなく、スパッタ装置や気相成長装置等の他の成膜装置に用いられることもできる。また基板は、ガラス基板32に限定されることはなく、ガラス以外の材料からなる基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】真空蒸着装置の説明図である。
【図2】マスククランプの概略平面図である。
【図3】装置上部機構が基準位置にあるときの説明図である。
【図4】ガラス基板とマスクとを位置合わせしているときの、装置上部機構の説明図である。
【図5】ガラス基板とマスクとを位置合わせした後の、装置上部機構の説明図である。
【図6】ガラス基板とマスクとの位置合わせの説明図である。
【図7】カメラの配設位置を説明する図である。
【図8】真空蒸着装置上部の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
10………真空蒸着装置、11………装置本体、16………チャック、18………基板クランプ、20………マスククランプ、20c………接続部材、22………伸縮手段、23………板部材、24………第1伸縮手段、26………第2伸縮手段、28………マスククランプ、32………ガラス基板、34………マスク、40………カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を製造するための成膜装置におけるマスククランプの移動機構であって、
有機材料の蒸発源に対向して配設され、基板とマスクとが重ね合わされるチャックと、
前記チャックに重ね合わされた前記マスクを保持するマスククランプと、
基板クランプを移動させる伸縮手段とを備え、
前記伸縮手段は、第1伸縮手段を装置本体に配設するとともに、伸縮動作をなす第1ロッドを板部材に接続し、第2伸縮手段を前記板部材に配設するとともに、伸縮動作をなす第2ロッドを前記基板クランプの基端部に接続または接触させてなる、
ことを特徴とするマスククランプの移動機構。
【請求項2】
前記伸縮手段は、エアシリンダ、油圧シリンダまたはアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載のマスククランプの移動機構。
【請求項3】
有機EL素子を製造するための成膜装置であって、
有機材料の供給源に対向して基板を保持するチャックを配設し、
前記有機EL素子のパターンが形成されたマスクの保持手段となるマスククランプを前記チャックの側縁に沿って上下移動可能に配設し、
前記マスククランプの基端部の下部に伸縮手段を重ねて配設し、
前記チャック、前記マスククランプおよび前記伸縮手段を水平方向に回転させる回転機構を前記装置本体に設けた、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
重ねて配設された前記伸縮手段は、
一端を前記装置本体に接続し、第1ロッドを板部材に接続した第1伸縮手段と、
前記板部材に配設され、第2ロッドを前記接続部材に接続または接触した第2伸縮手段と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−233256(P2006−233256A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47812(P2005−47812)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(397010974)株式会社日本ビーテック (8)
【出願人】(591097632)長州産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】