説明

マスクデータ作成方法、リソグラフィ用マスクの製造方法、半導体装置の製造方法およびフレア補正プログラム

【課題】基板上に所望寸法のパターンを正確に転写できるマスクデータを短時間で作成するマスクデータ作成方法を提供すること。
【解決手段】露光装置およびフォトマスクを用いてウエハ上にフォトマスクのマスクパターンを転写してウエハ上にウエハ上パターンを形成させた場合に露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じるフレアのショット内分布を導出し、フレアのショット内分布に基づいて、ショット内の領域をフレアの大きさに応じた複数領域に分割し、分割された領域毎にマスクパターンをフレアの大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクデータ作成方法、リソグラフィ用マスクの製造方法、半導体装置の製造方法およびフレア補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
EUV(Extreme UltraViolet)リソグラフィは、13.5nm付近の非常に短い波長の光(X線)を用いて従来の光露光(波長193nmや243nm)よりも、さらに微細なパターンをウエハ上に形成する方法として期待されている。EUV露光装置では、EUV光が短波長であるという性質から、EUVマスクへの照明光学系およびウエハへの投影光学系の全ての光学要素が反射ミラーを用いて構成された反射光学系を採用している。そのため、反射ミラーの表面の平坦度に応じたEUV光の散乱光がウエハ上で観測される。そして、この散乱光は、ウエハ上に露光すべきパターンとは異なる形状の迷光(フレア)として投影される。従来、フレアの影響を低減するために、露光装置内の反射ミラーの平坦度を向上させていた。また、フレアが存在する状態で所望のパターン寸法が得られるようマスクパターンの寸法および形状を変更することによってフレア補正を行なっていた。
【0003】
例えば、フレア補正方法として、露光を行なうパターンのパターン面積率が一定となるように、本来ウエハ上に形成すべきパターンに加え、面積率調整用のダミーパターンを挿入する方法がある。この方法では、フレア補正の範囲が広いのでフレア補正に長時間を要していた。
【0004】
また、特許文献1に記載のシミュレーション方法では、半導体装置を製造する際の露光時に生じるローカルフレアの発生量をシミュレートする際に、フォトマスクのレイアウトを複数の矩形領域に分割し、各矩形領域内の光強度の平均値を算出し、各平均値に基づいて各矩形領域におけるローカルフレアの発生量を見積もっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−77827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板上に所望寸法のパターンを正確に転写できるマスクデータを短時間で作成するマスクデータ作成方法、リソグラフィ用マスクの製造方法、半導体装置の製造方法およびフレア補正プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、露光装置およびフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、前記物理量のショット内分布に基づいて、前記ショット内の領域を前記物理量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、を含むことを特徴とするマスクデータ作成方法が提供される。
【0008】
また、本願発明の一態様によれば、露光装置とフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、前記物理量のショット内分布と前記ショット内でのマスクパターンとに基づいて、前記基板上パターンのショット内での寸法変動量の分布を寸法変動量分布情報として算出する寸法分布変動量算出ステップと、前記寸法変動量分布情報に基づいて、前記ショット内の領域を前記寸法変動量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、を含むことを特徴とするマスクデータ作成方法が提供される。
【0009】
また、本願発明の一態様によれば、露光装置およびフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、前記物理量のショット内分布に基づいて、前記ショット内の領域を前記物理量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とするフレア補正プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上に所望寸法のパターンを正確に転写できるマスクデータを短時間で作成するマスクデータ作成方法、リソグラフィ用マスクの製造方法、半導体装置の製造方法およびフレア補正プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態に係るフレア補正装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態に係るマスクデータ作成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、フレア量のショット内分布の一例を示す図である。
【図4】図4は、CD敏感度のショット内分布の一例を示す図である。
【図5】図5は、CD変動量のショット内分布の一例を示す図である。
【図6】図6は、CD変動量毎に分割されたショット内の領域の一例を示す図である。
【図7】図7は、CD敏感度のショット内分布の算出方法を説明するための図である。
【図8】図8は、フレア補正の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、フレア補正装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者の検討によって、上記従来の技術では、ローカルフレアの発生量を見積もる各矩形領域内において、ローカルフレアの発生量を1つだけ見積もっており、このため、各矩形領域内でのパターン寸法を正確に補正することができないという問題と、また、補正の不要な箇所もパターン寸法の補正対象となるので、パターン寸法の補正に長時間を要するという問題があることを見出した。
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係るマスクデータ作成方法、リソグラフィ用マスクの製造方法、半導体装置の製造方法およびフレア補正プログラムを詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るフレア補正装置の構成を示すブロック図である。マスクデータを作成した後、このマスクデータをフレア補正するフレア補正システムは、フレア補正装置1と、ショット内フレア情報導出装置71と、CD敏感度算出装置72と、マスク情報作成装置73と、を含んで構成されている。
【0015】
フレア補正装置1は、マスクデータ(マスクパターン)をフレア補正することによって作成するコンピュータなどであり、例えばOPC(Optical Proximity Correction)後のマスクデータをフレア補正することによってマスクデータを作成する。フレア補正装置1は、EUV露光などで発生するフレアがウエハ上に転写されるウエハ上パターンの寸法に与える寸法変動を抑制するようマスクデータを補正する。フレア補正は、基板(ウエハなど)へ照射する露光光の散乱光によって生じるウエハ上パターン(レジストパターンやエッチング後パターンなど)の形状ずれを補正する方法である。フレア補正としてフレア量に応じた寸法だけマスクデータを補正することによって、所望のレジストパターンが形成されることとなる。
【0016】
本実施の形態では、フレア補正装置1は、フレアによって生じるショット内(露光ショット内)でのレジストパターンの所望寸法(形状および大きさ)からの寸法ずれ量(CD変動量)に基づいて、フォトマスクのショット内の領域を分割し、分割した領域毎にフレア補正を行う。
【0017】
ショット内フレア情報導出装置71は、実験やシミュレーションによってショット内でのフレア量の分布を導出する。フレア量の分布は、フレアがウエハ上パターンの寸法に与える影響のショット内分布である。ショット内でのフレア量の分布は、露光装置(レンズの平坦度などの光学系)やフレア補正の対象となるフォトマスクのマスクデータによって決まるものである。ショット内フレア情報導出装置71は、導出したフレア量の分布をショット内フレア情報としてフレア補正装置1に送る。
【0018】
CD敏感度算出装置72は、フレア量に対してレジストパターンが受ける形状のずれ量の敏感度をCD敏感度(影響度情報)として算出する。CD敏感度は、例えばフレアが単位量(1%)変動した場合の、レジストパターンの寸法ずれ量である。換言すると、CD敏感度は、マスクパターンがフレア量の変動量に対して受けるウエハ上パターンの寸法変動の大きさである。CD敏感度は、マスクパターンの寸法に依存するものであり、フレア量とは無関係に算出される。CD敏感度算出装置72は、露光装置の光学系に関する情報と、フレア補正の対象となるマスクデータと、を用いて、ショット内でのCD敏感度の分布を算出する。CD敏感度算出装置72は、算出したCD敏感度のショット内分布を、フレア補正装置1に送る。
【0019】
マスク情報作成装置73は、フレア補正の対象となるOPC後のマスクデータを作成する。マスク情報作成装置73は、フォトマスクの設計レイアウトデータを用いてリソグラフィターゲットを作成し、リソグラフィターゲットを用いてマスクデータを作成する。マスク情報作成装置73は、作成したマスクデータをフレア補正装置1に送る。
【0020】
フレア補正装置1は、入力部10、ショット内フレア情報記憶部11、CD敏感度記憶部12、マスク情報記憶部13、CD分布算出部14、領域分割部15、フレア補正部16、出力部17を有している。
【0021】
入力部10は、ショット内フレア情報導出装置71が導出したショット内フレア情報をフレア補正装置1内に入力する。また、入力部10は、CD敏感度算出装置72が作成したCD敏感度のショット内分布をフレア補正装置1内に入力し、マスク情報作成装置73が作成したマスクデータをフレア補正装置1内に入力する。入力部10は、入力したショット内フレア情報をショット内フレア情報記憶部11に送る。また、入力部10は、入力したCD敏感度のショット内分布をCD敏感度記憶部12に送り、入力したマスクデータをマスク情報記憶部13に送る。
【0022】
ショット内フレア情報記憶部11は、ショット内フレア情報を記憶するメモリなどである。CD敏感度記憶部12は、CD敏感度のショット内分布を記憶するメモリなどであり、マスク情報記憶部13は、フレア補正の対象となるマスクデータなどを記憶するメモリなどである。
【0023】
CD分布算出部14は、ショット内フレア情報記憶部11内のショット内フレア情報(フレア量のショット内分布)と、CD敏感度記憶部12内のCD敏感度のショット内分布と、マスク情報記憶部13内のマスクデータと、に基づいて、フォトマスクを用いて露光した場合の、ショット内の各レジストパターン形状のCD変動量(寸法変動量)を算出する。CD分布算出部14は、算出したCD変動量のショット内分布を、領域分割部15に送る。
【0024】
領域分割部15は、CD変動量のショット内分布に基づいて、ショット内をCD変動量毎(CD変動範囲毎)の領域に分割する。領域分割部15は、分割した各領域の位置と、CD変動量とを対応付けて、フレア補正部16に送る。
【0025】
フレア補正部16は、分割された各領域のうちCD変動量の許容値に入っていない領域に対し、領域毎にCD変動量に応じたマスクデータのフレア補正を行う。フレア補正部16は、領域毎のCD変動量に応じた補正モデルを用いてマスクデータのフレア補正を行う。フレア補正部16は、例えばショット内フレア情報、CD敏感度のショット内分布、CD変動量のショット内分布などの何れかまたは組合せに応じた量だけマスクデータ(マスクパターン)のフレア補正を行う。フレア補正部16は、フレア補正したマスクデータを出力部17に送る。
【0026】
出力部17は、フレア補正されたマスクデータをマスク情報作成装置73などの外部装置に出力する。マスク情報作成装置73などの外部装置は、フレア補正されたマスクデータにマスクPPE(Process Proximity Effect)補正を行う。マスクPPE補正は、PPC(Process Proximity Correction)である。
【0027】
つぎに、実施の形態に係るマスクデータ作成方法の処理手順について説明する。図2は、実施の形態に係るマスクデータ作成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0028】
実験用のフォトマスクなどを用いてマスクデータ上でのパターン形状とリソグラフィ後のレジストパターン形状との差がOPE(Optical Proximity Effect)データとして取得される(ステップS10)。そして、OPEデータに基づいて、OPCモデルが作成される(ステップS20)。
【0029】
この後、マスク情報作成装置73は、ターゲットMDP(Mask Data Preparation)を作成し(ステップS30)、タンデム補正を行うことによってリソグラフィターゲットを作成する(ステップS40)。さらに、マスク情報作成装置73は、リソグラフィターゲットにOPCを行なうことによってOPC後のマスクデータを作成する(ステップS50)。マスク情報作成装置73が作成したマスクデータが、フレア補正の対象となるマスクデータである。マスク情報作成装置73は、作成したマスクデータをフレア補正装置1に送る。
【0030】
また、フレア量がウエハ上パターンの寸法に与える影響を確認しておく。具体的には、ショット内フレア情報導出装置71が、ショット内でのフレア量の影響(フレア量のショット内分布)を、実験データやシミュレーションを用いて導出する。
【0031】
ショット内フレア情報導出装置71は、シミュレーションによってフレア量の分布を導出する場合、例えば、フレア量の広がり関数(Point Spread Function:PSF)とパターン密度分布との畳み込み積分を高速に行なう方法などによってパターンの1点あるいはショット内の小領域毎にフレア量のショット内分布を算出する(ステップS60)。また、実験データによってフレア量の分布を導出する場合、実際に露光評価(ウエハ上パターンの寸法測定など)を行なうことによってフレア量を測定する。
【0032】
図3は、フレア量のショット内分布の一例を示す図である。図3では、フレア量のショット内分布の一例として、ショット内のフレア量をシミュレーションによって算出した場合の結果(フレア分布情報2)を示している。フレア分布情報2は、補正対象マスクが4チップで構成されたフォトマスクである場合の、フォトマスクを上面から見た場合のフレア量のショット内分布である。
【0033】
フレア分布情報2で示されるショット内では、フレア量が最も大きな第1のフレア量を示す領域21、フレア量が2番目に大きな第2のフレア量を示す領域22、フレア量が3番目に大きな第3のフレア量を示す領域23、フレア量が最も小さな第4のフレア量を示す領域24などが分布している。ショット内フレア情報導出装置71は、導出したフレア量のショット内分布をショット内フレア情報としてフレア補正装置1に送る。
【0034】
また、CD敏感度算出装置72は、フレア量に対してレジストパターンが受ける形状のずれ量(敏感度)をCD敏感度として算出する。具体的には、CD敏感度算出装置72は、マスク情報作成装置73が作成したフレア補正の対象となるマスクデータを用いて、ショット内でのCD敏感度の分布を算出する(ステップS70)。
【0035】
図4は、CD敏感度のショット内分布の一例を示す図である。図4では、CD敏感度算出装置72が算出したCD敏感度のショット内分布(CD敏感度情報3)を示している。CD敏感度情報3は、補正対象マスクのショット内を上面から見た場合のCD敏感度のショット内分布である。
【0036】
CD敏感度情報3で示されるショット内では、CD敏感度が最も大きな第1のCD敏感度を示す領域31、CD敏感度が2番目に大きな第2のCD敏感度を示す領域32、CD敏感度が3番目に大きな第3のCD敏感度を示す領域33、CD敏感度が最も小さな第4のCD敏感度を示す領域34などが分布している。CD敏感度算出装置72は、算出したCD敏感度のショット内分布を、フレア補正装置1に送る。
【0037】
フレア補正装置1では、ショット内フレア情報導出装置71が導出したショット内フレア情報を入力部10から入力し、ショット内フレア情報記憶部11に記憶させる。また、入力部10は、CD敏感度算出装置72が作成したCD敏感度のショット内分布を入力し、CD敏感度記憶部12に記憶させる。また、入力部10は、マスク情報作成装置73が作成したマスクデータを入力し、マスク情報記憶部13に記憶させる。
【0038】
CD分布算出部14は、ショット内フレア情報と、CD敏感度記憶部12内のCD敏感度のショット内分布と、マスク情報と、に基づいて、ショット内の各レジストパターン形状の特徴量の1つであるCD変動量をシミュレーションによって算出する。換言すると、CD分布算出部14は、フレア量およびCD敏感度に基づいて、フレア量のウエハ上パターン寸法への影響として、CD変動量(所望寸法からの寸法差)を算出する(ステップS80)。
【0039】
図5は、CD変動量のショット内分布の一例を示す図である。図5では、CD分布算出部14が、図3および図4で示したフレア量とCD敏感度のショット内分布に基づいて算出したCD変動量のショット内分布(CD変動量情報4)を示している。CD変動量情報4(寸法変動量分布情報)は、補正対象マスクのショット内を上面から見た場合のCD変動量のショット内分布である。
【0040】
CD変動量情報4で示されるショット内では、CD変動量が最も大きな第1のCD変動量を示す領域41、CD変動量が2番目に大きな第2のCD変動量を示す領域42、CD変動量が3番目に大きな第3のCD変動量を示す領域43、CD変動量が最も小さな第4のCD変動量を示す領域44などが分布している。CD分布算出部14は、算出したCD変動量のショット内分布を、領域分割部15に送る。
【0041】
領域分割部15は、CD変動量のショット内分布に基づいて、ショット内をCD変動量毎の領域に分割する。換言すると、領域分割部15は、ウエハ上パターン寸法に与える影響毎にマスクパターンをグルーピングし、ショットをCD変動量毎の領域(グループ)に分割する(ステップS90)。
【0042】
具体的には、領域分割部15は、ウエハ上パターンの所望寸法からの寸法差(CD変動量)がフレアの影響によって許容値から外れているウエハ上パターンと、このウエハ上パターンに対応するマスクパターンを抽出する。
【0043】
そして、領域分割部15は、抽出したマスクパターンに対し、CD変動量が同じ範囲にあるマスクパターンを同じ領域に設定する。なお、領域分割部15は、抽出したマスクパターンに対し、フレア量が同じ範囲にあるマスクパターンを同じ領域に設定してもよい。この場合、CD分布算出部14または領域分割部15は、抽出したマスクパターン毎のフレア分布を、フレア分布情報2を用いて算出しておく。
【0044】
領域分割部15は、フレア量またはCD変動量が同じ範囲にある領域のうち、互いに隣接していて統合可能な領域は統合しておくことによって、マスクパターンをグルーピングする。これにより、ショット内をフレア量またはCD変動量毎の領域に分割する。
【0045】
ここで、フレア量またはCD変動量毎に分割されたショット内の領域について説明する。ここでは分割後のショット内領域の一例としてCD変動量毎に分割されたショット内の領域について説明する。
【0046】
図6は、CD変動量毎に分割されたショット内の領域の一例を示す図である。図6では、領域分割部15が、図5で示したCD変動量のショット内分布に基づいて複数の領域に分割したショット(ショット内領域情報5)(補正対象マスクのマスクデータ上でのショット)の上面図を示している。
【0047】
ショット内領域情報5で示されるショットには、CD変動量が最も大きくフレア補正が最も大きな第1の領域51、CD変動量が2番目に大きくフレア補正量が2番目に大きな第2の領域52、CD変動量が3番目に大きくフレア補正量が3番目に大きな第3の領域53、CD変動量が最も小さくフレア補正が小さな第4の領域54などが設定されている。ここでの領域51〜54は、それぞれ領域41〜44に対応している。領域分割部15は、分割した各領域51〜54の位置(範囲)と、CD変動量とを対応付けて、フレア補正部16に送る。
【0048】
フレア補正部16は、分割された各領域のうちCD変動量の許容値に入っていない領域に対し、領域毎にマスクデータのフレア補正を行う。フレア補正部16は、マスク情報記憶部13内のマスクデータに対し、例えばショット内フレア情報、CD敏感度のショット内分布、CD変動量のショット内分布などの何れかまたは組合せに応じた量だけマスクデータのフレア補正を行う。このとき、フレア補正部16は、分割された領域毎にレジストに与えるフレアの影響と酸の拡散を考慮して、所望のウエハ上パターンが形成されるようマスクデータのフレア補正を行う(ステップS100)。フレア補正部16は、フレア補正したマスクデータを出力部17に送る。
【0049】
出力部17は、フレア補正されたマスクデータをマスク情報作成装置73などの外部装置に出力する。マスク情報作成装置73などの外部装置は、フレア補正されたマスクデータにマスクPPE補正を行う(ステップS110)。これにより、フォトマスクの作製に用いるマスクデータが完成する。完成したマスクデータは、マスク情報作成装置73などからEB描画装置などに出力されて(ステップS120)、フォトマスクが作製される。
【0050】
つぎに、CD敏感度のショット内分布の算出方法について説明する。図7は、CD敏感度のショット内分布の算出方法を説明するための図である。図7では、フレア量とウエハ上パターン寸法との関係を示しており、横軸がフレア量(%)、縦軸がウエハ上パターン寸法である。ここでのウエハ上パターンは、レジストパターンであってもよいし、レジストパターン上からエッチングした後のエッチング後パターンであってもよい。また、ウエハ上パターンの寸法は、実験(ウエハ上パターンの測長)により求めてもよいし、シミュレーションによって求めてもよい。また、横軸に示すフレア量の大きさは、露光光を出射する光源の光強度に対する割合を示している。
【0051】
フレア量とウエハ上パターンとの対応関係61は、ウエハ上パターンの所望寸法が第1の寸法である場合の対応関係である。同様に、フレア量とウエハ上パターンとの対応関係62は、ウエハ上パターンの所望寸法が第2の寸法である場合の対応関係であり、フレア量とウエハ上パターンとの対応関係63は、ウエハ上パターンの所望寸法が第3の寸法である場合の対応関係である。
【0052】
対応関係61〜63に示すように、フレア量が1%大きくなるごとに、ウエハ上パターン寸法が大きくなり、フレア量に応じてウエハ上パターン寸法が変動している。また、対応関係61〜63に示すように、フレア量の変化量に対するウエハ上パターン寸法の変動量は、対応関係61〜63毎に異なっている。換言すると、フレア量の変化量に対するウエハ上パターン寸法の変動量は、ウエハ上パターンの所望寸法(第1〜第3の寸法)に応じて異なる値を示している。これは、ウエハ上パターンの所望寸法に応じてCD敏感度が異なることを示している。
【0053】
そこで、本実施の形態では、例えば図7に示すようなフレア量とウエハ上パターン寸法との関係を求めておく。具体的には、フレア量の変動量に対するウエハ上パターン寸法の変動量の関係をマスクパターン寸法毎に導出しておく。さらに、フレア量とウエハ上パターン寸法との関係に基づいて、マスクパターン寸法毎のCD敏感度(例えば対応関係61〜63を示す式など)を算出しておく。
【0054】
そして、CD敏感度算出装置72が、フレア補正の対象となるマスクデータと、マスクパターン寸法毎のCD敏感度と、に基づいて、CD敏感度のショット内分布を算出する。換言すると、CD敏感度算出装置72は、ウエハ上パターンの所望寸法に対応するマスクパターン寸法毎に、フレア量の変化量に対するウエハ上パターン寸法の変動量に基づいて、CD敏感度を算出する。これにより、ショット内でのCD敏感度がマスクパターン寸法毎に算出されることとなる。
【0055】
なお、本実施の形態では、OPCをした後であってマスクPPE補正(PPC)をする前に、フレア補正を行う場合について説明したが、フレア補正を行うタイミングは、このタイミングに限らない。
【0056】
図8は、フレア補正のタイミングを説明するための図である。図8では、フレア補正の処理手順を示すフローチャートを示している。なお、ここでのPPCは、図2で説明したマスクPPE補正である。
【0057】
図8の(a)は、OPC前にフレア補正を行う場合のフローチャートである。この場合、フレア補正が行われた後(ステップS210)、OPCが行なわれ(ステップS211)、その後PPCが行なわれる(ステップS212)。
【0058】
また、図8の(b)は、PPC後にフレア補正を行う場合のフローチャートである。この場合、OPCが行なわれた後(ステップS220)、PPCが行なわれ(ステップS221)、その後、フレア補正が行われる(ステップS222)。
【0059】
また、図8の(c)は、OPCとフレア補正を同時に行う場合のフローチャートである。この場合、OPCとフレア補正とが同時に行なわれた後(ステップS230)、PPCが行なわれる(ステップS231)。
【0060】
OPCとフレア補正を同時に行う場合、マスク情報作成装置73は、リソグラフィターゲットを作成しておき、フレア補正装置1のフレア補正部16がリソグラフィターゲットに対してOPCとフレア補正を同時に行う。このとき、フレア補正部16は、領域分割部15によって分割された領域毎にレジストに与えるフレア量の影響と酸の拡散、2次電子の散乱などの影響による近接効果を同時に補正する。
【0061】
また、図8の(d)は、PPCとフレア補正を同時に行う場合のフローチャートである。この場合、OPCが行なわれた後(ステップS240)、PPCとフレア補正とが同時に行なわれる(ステップS241)。
【0062】
フレア補正システムによるマスクデータのフレア補正は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。そして、必要に応じてマスクデータがフレア補正されたマスクデータを用いて半導体装置(半導体集積回路)が製造される。具体的には、フレア補正後のマスクデータを用いて製品マスクを作製する。換言すると、リソグラフィ用マスクの製造処理として、フレア補正システムによって作成されたマスクデータに対応するマスクパターンがマスク基板上に形成され、これにより製品マスクが作製される。
【0063】
そして、レジストの塗布されたウエハに製品マスクを用いて露光を行ない、その後ウエハを現像してウエハ上にレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとして下層側をエッチングする。これにより、マスクデータに対応する実パターンがウエハ上に形成される。換言すると、半導体装置の製造処理として、フレア補正システムによって作成されたマスクデータに対応するマスクパターンが被処理基板(例えばウエハ)上のマスク材(レジスト層など)に転写される。半導体装置を製造する際には、上述したマスクデータのフレア補正、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0064】
つぎに、フレア補正装置1のハードウェア構成について説明する。図9は、フレア補正装置のハードウェア構成を示す図である。フレア補正装置1は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。フレア補正装置1では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0065】
CPU91は、コンピュータプログラムであるフレア補正プログラム97を用いてマスクデータのフレア補正を行う。表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、マスクデータ(マスクパターン)、フレア量のショット内分布、CD敏感度のショット内分布、CD変動量のショット内分布、フレア補正後のマスクデータなどを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(フレア補正に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0066】
フレア補正プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図9では、フレア補正プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0067】
CPU91はRAM93内にロードされたフレア補正プログラム97を実行する。具体的には、フレア補正装置1では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内からフレア補正プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0068】
フレア補正装置1で実行されるフレア補正プログラム97は、それぞれCD分布算出部14、領域分割部15、フレア補正部16を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0069】
なお、本実施の形態では、フレア量のショット内分布とCD敏感度のショット内分布を用いてCD変動量のショット内分布を算出したが、CD敏感度のショット内分布を用いることなく、フレア量のショット内分布を用いてCD変動量のショット内分布を算出してもよい。この場合、例えば、ショット内でのマスクパターンの寸法に関係なく、全てのマスクパターンをフレア量に応じた寸法だけ寸法補正することによって、CD変動量のショット内分布を算出する。また、フレア量のショット内分布とマスクパターンの寸法とを用いてCD変動量のショット内分布を算出してもよい。この場合、例えばマスクパターンをフレア量およびマスクパターン寸法に応じた寸法だけ寸法補正することによって、CD変動量のショット内分布を算出する。
【0070】
また、フレア量のショット内分布に基づいて、ショット内をフレア量毎の領域に分割してもよい。この場合、フレア補正部16は、分割された各領域のうちフレア量の許容値に入っていない領域に対し、領域毎にフレア量に応じたマスクデータのフレア補正を行う。
【0071】
また、本実施の形態では、フレア補正部16が、領域毎のCD変動量に応じた補正モデルを用いてマスクデータのフレア補正を行う場合について説明したが、フレア補正部16が領域毎のCD変動量に応じたシミュレーションモデルを用いてマスクデータの作成や検証を行なってもよい。この場合、シミュレーションモデルを用いてマスクデータが作成される場合、フレア補正された状態のマスクデータが作成されることとなる。
【0072】
また、本実施の形態では、マスク情報作成装置73がフレア補正の対象となるマスクデータを作成する場合について説明したが、フレア補正の対象となるマスクデータは、上述した方法に限らず何れの方法で作成してもよい。
【0073】
また、図2で説明したステップS60〜S90の処理は、フレア補正の前であれば、何れのタイミングで行ってもよい。また、本実施の形態では、フレア補正装置1、ショット内フレア情報導出装置71、CD敏感度算出装置72、マスク情報作成装置73がそれぞれ別構成である場合について説明したが、これらの何れかを組み合わせた装置構成としてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、露光装置の光学系に起因してショット内で分布を示す物理量としてフレア量を採用したが、ショット内で分布を示す物理量としてフレア量以外の他の物理量を採用してもよい。例えば、ショット内で分布を示す物理量としてフォトマスクの系統的な面内での寸法ばらつきを採用し、この寸法ばらつきに基づいてマスクデータの補正を行なってもよい。フォトマスクの系統的な面内での寸法ばらつきは、露光装置によるフォーカスのショット内分布に起因する寸法ばらつき、露光装置による露光量のショット内分布に起因する寸法ばらつき、フォトマスクのマスクパターンに起因する寸法ばらつき、又は、これらのうちの何れかの組合せに起因する寸法ばらつきなどである。
【0075】
このように実施の形態によれば、フレア量のショット内分布を用いてウエハ上パターンのCD変動量をショット内で求め、このCD変動量のショット内分布に基づいて、ショット内の領域を分割しているので、分割された領域毎にフレア補正を行うことが可能となる。このため、分割された領域に応じたフレア補正を行うことができ、不要な領域までフレア補正を行う必要がなくなる。また、分割された各領域は、同様のCD変動量を有した領域であるので、フレア補正を正確に行うことが可能となる。したがって、ウエハ上に所望寸法のパターンを正確に転写できるマスクデータを短時間で作成することが可能になる。
【0076】
また、CD敏感度のショット内分布を用いてCD変動量のショット内分布を導出するので、CD変動量の正確なショット内分布を算出することが可能となる。したがって、フレア補正を正確に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 フレア補正装置、2 フレア分布情報、3 CD敏感度情報、4 CD変動量情報、5 ショット内領域情報、11 ショット内フレア情報記憶部、12 CD敏感度記憶部、13 マスク情報記憶部、14 CD分布算出部、15 領域分割部、16 フレア補正部、71 ショット内フレア情報導出装置、72 CD敏感度算出装置、73 マスク情報作成装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置およびフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、
前記物理量のショット内分布に基づいて、前記ショット内の領域を前記物理量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、
分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、
を含むことを特徴とするマスクデータ作成方法。
【請求項2】
露光装置とフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、
前記物理量のショット内分布と前記ショット内でのマスクパターンとに基づいて、前記基板上パターンのショット内での寸法変動量の分布を寸法変動量分布情報として算出する寸法分布変動量算出ステップと、
前記寸法変動量分布情報に基づいて、前記ショット内の領域を前記寸法変動量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、
分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、
を含むことを特徴とするマスクデータ作成方法。
【請求項3】
前記マスクパターンが前記マスクパターンの寸法毎に前記物理量の変動量に対して受ける前記基板上パターンの寸法変動の大きさのショット内分布を、影響度情報として算出する影響度算出ステップをさらに含み、
前記寸法分布変動量算出ステップは、前記影響度情報を用いて、前記寸法変動量分布情報を算出することを特徴とする請求項2に記載のマスクデータ作成方法。
【請求項4】
前記物理量は、前記露光の際のフレア量、前記露光の際のフォーカスおよび前記露光の際の露光量の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のマスクデータ作成方法。
【請求項5】
前記物理量は、前記フォトマスクの面内での系統的な寸法誤差に起因したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のマスクデータ作成方法。
【請求項6】
請求項1に記載のマスクデータ作成方法に基づくマスクパターンをマスク基板上に形成することを特徴とするリソグラフィ用マスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のマスクデータ作成方法に基づくマスクパターンを被処理基板上のマスク材に転写することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
露光装置およびフォトマスクを用いて基板上にフォトマスクのマスクパターンを転写して前記基板上に基板上パターンを形成させた場合に、前記露光装置の光学系に起因して露光のショット内で生じる物理量のショット内分布を導出する物理量導出ステップと、
前記物理量のショット内分布に基づいて、前記ショット内の領域を前記物理量の大きさに応じた複数領域に分割する領域分割ステップと、
分割された領域毎に前記マスクパターンを前記物理量の大きさに応じた寸法に補正したマスクデータを作成する補正ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするフレア補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197304(P2011−197304A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63133(P2010−63133)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】