説明

マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析法(MS)を包含する化学分析のための被検体の濃縮および精製のための方法および装置

最初に高分子量種を除去するための篩過マトリックスを通して被検体を電気泳動的に駆動することによる、少量の被検体を分離するための分析方法および装置が開示される。その後、残存する少量の被検体を捕捉膜上に電気泳動的に集束させ、そこで被検体は小さな捕捉部位内に結合されたようになる。この段階の後に、捕捉膜を乾燥させることができ、そしてその後、伝導性MALDIサンプルプレートに取付けうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析法、およびより具体的には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI MS)により分析されるべきヒト血清のような生物学的サンプルからの被検体の前濃縮および精製に関する。
【背景技術】
【0002】
MALDI標的プレート上に付着させたサンプルのマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MS)分析は、タンパク質、ペプチドおよび他の生物学的分子の分析に選択すべき方法に急速になりつつある。MALDI−MS手順は、非常に感度の高い分析方法であり、また、おそらく、MS手順は生物学的緩衝液と最も適合性が高い。さらに、ピコモル以下の量の生物学的巨大分子から高効率で高質量イオンを生成させるその能力は、この技術を巨大分子分析に極めて有用にする。血液、血漿若しくは血清のような粗生物学的サンプル中のペプチド被検体の分析は、しかしながら、下述されるところの質量分析法分析にとって特別の問題を提供する。
【0003】
克服されるべき第一の問題は、生物学的サンプルが高濃度の塩(例えばナトリウム、カリウム、塩化物(chloride)、リン酸および炭酸)を含有することである。陰イオンは、通常のMALDI分析手順によるペプチドサンプルのイオン化の抑制においてとりわけ効果的である。陽イオンもまた、それらが主質量ピークを陽イオン付加物の付加的な質量を有する多数のより小さいピークに分割する付加物スペクトルを生成するために問題がある。また、MALDI−MS分析の成功は、質量分析計への注入前に被検体と一緒に混合されるMALDIマトリックス物質を効果的に結晶化する能力に大きな程度依存する。MALDIマトリックス物質は、分析されるべきサンプル内の吸着された被検体物質と一緒になったマトリックスの微粒化およびイオン化を提供するレーザー光を吸収するために必要とされる。イオン化された被検体分子はその後、質量分析計内の陽極および陰極上に高電圧により提供される高電場により質量分析計のイオン検出器へ加速される。比較的少量の塩若しくはグリセロールのような汚染物質が存在する場合でさえ、タンパク質およびペプチドのような被検体を効率的に脱離かつイオン化するMALDIマトリックスの能力は劇的に低下される。さらに、高塩濃度は、MALDI−MSに必要とされる閾値レーザー強度および(遊離ペプチドシグナルを犠牲にして)塩が付加したペプチドの強度の双方を増大させる。
【0004】
第二に、ヒト血清のようなサンプル中で、被検体ペプチドは、頻繁に、妨害タンパク質(例えばアルブミン、免疫グロブリンおよびトランスフェリン)に比較して非常に低いコピー数で存在する。目的のペプチドは、しばしば、1リットルあたりたった1マイクロモルないし1リットルあたり1ピコモル(例えば1mlあたり1マイクログラムないし1ピコグラム)で存在する。対照的に、アルブミンおよびIgG、IgMのようなγグロブリンの総量は、1mlあたり0.01から0.1グラムまで、すなわち質量で1×1011倍までより大きい範囲にわたるレベルで存在する。従って、主要な豊富なタンパク質は混合物のMALDIスペクトルを大きく支配する。少ない成分は、低強度ピークが主要ピークにより隠されるためにめったに観察されない。この問題は、何桁もより高モル濃度の妨害タンパク質(例えばアルブミン、免疫グロブリンおよびトランスフェリン)ならびに塩(例えばナトリウム、カリウム、塩化物、リン酸および炭酸)の存在下でこうした低コピー数の分子が検出されるべきであるヒト血清のような生物学的サンプル中で、はるかにより困難にされる。
【0005】
第三に、被検体ペプチドの多くは疎水性であり、そして疎水性分子を非特異的に結合する傾向がある血液、血漿若しくは血清中で見出される主要なタンパク質、とりわけアルブミンに結合される。従って、不要なタンパク質の除去はまた被検体ペプチドの喪失ももたらす。塩および洗剤のような化学的破壊剤はアルブミンからの被検体ペプチドの解離において補助することが知られているが;しかしながらこれらの剤はMALDI過程を積極的に抑制する。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびTritionはMALDIによりより効率的に脱離し、そしてペプチドおよびタンパク質が有するよりも大きなMALDIシグナルを有する。結果として、これらの種はしばしばタンパク質およびペプチドからのMSシグナルを抑制する。従って、アルブミンから被検体ペプチドを解離させるための化学的破壊剤の添加後に、被検体ペプチドを破壊剤のアルブミンおよび他の汚染するタンパク質双方から分離しなければならない。加えて、該分離は、少量成分のペプチド被検体が該分離過程の間に喪失されないような方法で実施しなければならない。この分離は、被検体が疎水性でありかつ疎水性表面に付着する傾向がある場合にとりわけ困難にされる。不幸なことに、LC法による生体高分子の精製は、頻繁に、30%のサンプル喪失をもたらし、また、サンプルにさらなる汚染物質を付加し得る。大部分のMALDI−MS使用者にとって、この量のサンプル喪失は許容できない。
【0006】
最後に、被検体ペプチドはこうした低レベルで存在するため、それらはMALDI−MS分析前に濃縮されなければならない。最初にペプチドの解離、成分の分離、およびその後濃縮を従来技術の方法により実施することは退屈(tedious)であり、また、時間がかかりかつ労働集約的の双方である複数の段階を必要とする。本発明の一目的は、これらの段階を1つの便宜的かつ効率的様式で実施してそれによりサンプル処理量を増大させならびに分析の費用を低下させることが可能である方法および装置を提供することである。
【0007】
MALDI−MS分析前の汚染物質の分離のための多くのしばしばやっかいかつ労働集約的な技術が文献に報告されている。伝統的に、液体クロマトグラフィー(LC)若しくは親和性に基づく方法が最大の程度使用されてきた。LC法を介する精製は、LCカラム中の固定相にリンカー分子を化学的に結合すること(官能性を持たせた固定相を生じる)を必要とする。サンプルがカラムに一旦負荷されれば、固定相を通して移動相を流す。各被検体が移動相中よりもむしろ固定相に結合されて過ごす時間の画分が、LCカラムを通る多様な被検体(ならびに汚染物質および妨害種)の相対移動速度を決定して、被検体の精製を提供する。例えば、ペプチドおよびタンパク質のような目的の被検体分子を、官能性を持たせた固定相に吸着させ得る一方、汚染物質はカラムから溶出される。次に、官能性を持たせた固定相から目的の分子を遊離させるように移動相を調節する。しばしば、アセトニトリル/水混合物のようなMALDI−MSと適合性である揮発性の緩衝液をこの段階の移動相として使用する。この様式で、目的の精製された分子をLCカラムから溶出し、そしてMALDI−MS分析のため収集する。サンプルは今や、そうでなければ分析を妨害若しくはそうでなければ分析の感度を制限すると思われる塩および他の汚染物質を相対的に含まない。
【0008】
従って、MALDI−MS分析前にサンプルを濃縮するための新たな装置、方法および手順に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0009】
[発明の目的]
本発明の一目的は、MALDI質量分析法による感度の高い分析のための血清、血漿、全血、脳脊髄液、尿などのような粗生物学的サンプルの前処理方法を提供することである。本発明の別の目的は、効率的な様式で実施するのに便宜的であるこうした方法を提供して、それによりサンプル処理量を増大させならびに分析の費用を低下させることである。
本発明のなお別の目的は、これらの方法を実施するための装置を提供することであり、ここで該装置は同様に使用するのに便宜的であり、高品質のデータを提供しかつ製造するのが比較的安価である。最適には、該装置は、使用者による最低数の調製段階を必要としかつ最少の若しくは調製時間を必要とするように予め浄化かつ予め調整されて提供することができる。本発明の付加的な一目的は、経済的な単回使用を可能にしてそれによりこうした装置が臨床研究ならびにヒトおよび家畜の臨床診断応用において過剰な費用を顧みずに自由に使用されることを可能にするのに十分に低い製造費用を有するように、こうした装置を設計することである。こうした予め浄化された装置は、以前の使用条件、浄化手順若しくは分析装置の摩耗状態などに結果が依存しないと思われるため、改良された均一性および信頼性を使用者に提供するとみられる。また、使用者は、使用前に装置で退屈な人的浄化操作をもはや実施する必要がないという便宜性を提供されると思われる。
【0010】
加えて、われわれはMALDI質量分析法的(spectrographic)(MALDI−MS)分析前の改良されたサンプル調製のための電気泳動的装置および方法を提示する。該装置およびそれらの使用方法は、被検体の解離、電気泳動分離、濃縮、およびMALDI適合性の捕捉層上での捕捉を提供する。有利には、捕捉層は、質量分析計に適合可能なMALDIマトリックスサンプルプレートに捕捉を直接取り外し可能に取付けるための取付手段を組み込む、取付けられたスライド(slide)枠を有するスライドの形態にある。スライドは、質量分析計へのサンプルの迅速な導入を提供しかつこうした分析が自動化様式で実施されることを可能にする。それにより、スライド装置はより大きな処理量およびサンプル分析あたりの低下された費用を提供する。これらの装置および方法は、化学分析のためのサンプルの迅速かつ効率的な調製、分離、濃縮および形式設定(formatting)のための改良された系を提供する。本発明の本局面は、質量分析法的分析の前の生物学的サンプルの調製にとりわけ適する。一緒にすれば、該装置および方法は一般的であり、かつ、一価の陰イオン若しくは陽イオンまたはペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド若しくはタンパク質のような多価の多価陰イオン若しくは多価陽イオンのいずれを濃縮するのにも使用し得る態様を提供する。さらに、該方法は、荷電した炭水化物、糖タンパク質、DNA、RNA若しくはいずれかの他の荷電した代謝中間体にもまた使用しうる。
【0011】
電気的に中性の分子(すなわち固有の電荷をもたない分子)もまた、a.)電流が通過される多孔質固相が正味の電荷を運搬しかつ可動性の対イオンが周囲の溶媒の流動を誘導する場合に生じる電気泳動的に誘導される電気浸透流(EOF)を提供すること、またはb)中性の被検体がその中(若しくは上)に分配する荷電したミセル(若しくは荷電粒子)を提供することのいずれかにより、本明細書に開示される電気泳動的装置および方法を使用することにより分析しうる。後者の型の分離(通常はキャピラリー中で実施される)の一般的な機構は、ミセル界面動電キャピラリークロマトグラフィー(MECC)として公知である。これらの方法は、正味の電荷を伴わない多様な型の分子の分析について現在開示される装置および方法とともに使用しうる。こうした中性分子は、イオン化可能な基をもたないもの、それらの等電点付近のpHで維持されているポリペプチド若しくはタンパク質のような分子、両性(zitter)イオン種、または他の型の電気的に中性の分子を包含しうる。
【0012】
本発明は、疎水性若しくは親水性いずれの分子を濃縮するのにも使用しうる。該濃縮は、集束電場により1個以上の予め決められた別個の位置に被検体を捕捉させた多孔質膜をもたらし、かつ、ここで、該多孔質捕捉膜は被検体の分析のためMALDI質量分析計のサンプルプレートに嵌合するように適合される。捕捉されたサンプルのイオン化において補助するために、多孔質膜のMALDI質量分析計への導入前にMALDIマトリックス物質を上記別個の位置に適用する。組み込まれた多孔質捕捉膜をもつ濃縮および捕捉装置は、MALDI質量分析法的(MALDI−MS)分析前の改良されたサンプル調製のために広範な生物学的分子に広範に応用可能であるように、下述される方法に従って使用する。
[発明の詳細な記述]
本発明の一局面は、電場中で集束させることによる荷電した被検体の複数のサンプルの分離濃縮および捕捉のための装置および方法である。該装置および方法は、下述される要素および/若しくは段階の1種以上を包含する。
A.複数のサンプルを保持するためのウェル:
図1、2および3は濃縮器装置のそれぞれ透視図、上面図および側面図を示す。該装置は、質量分析法的分析のための1種以上のサンプルを同時に調製するのに有用であるマルチウェルサンプル保持装置である。該図は該装置の基礎的な機能的構成部品を示す。装置2は該装置の上面層4に配置されたサンプルウェル6を有する。該装置は多様な形状を有し得るとは言え、一般的にはそれは上面層4から見られるとおり長方形であることができ、そして一側で0.5cmと50cmとの間の寸法を有することができる。より通常は、該装置は一側で2cmと15cmとの間の寸法を有することができる。該装置は1と1000個との間のサンプルウェル若しくはそれ以上を有し得るが、しかし、より通常は、サンプルのサンプルウェルへの自動化分注のため、機器のサンプル処理量および利用可能性に依存して10から100ウェルを有することができる。該ウェルはまた、いかなる断面形状、例えば正方形、六角形、五角形などを有する筒状、立方体、長斜方形のような多様な形状のものでもあり得る。ウェルの直径若しくは幅は一般に1mmと1cmとの間であることができる。同様に、ウェルの深さは1mmと2cmとの間であることができる。より通常は、ウェルは深さ2mmと10mmとの間であることができる。
【0013】
図4aおよび4bはサンプルウェルの拡大側面図および上面図を示す。各ウェルは側壁12、上面層開口部14および底面層16を有する。側壁は水性液体サンプルを保持する非多孔質素材から作成され、そして内表面20および外表面22を有する。ウェルにより保持される場合、水性サンプルは側壁12の内表面20の少なくとも一部分を接触する。水性サンプルは、典型的には、生物学的供給源、例えば血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液、細胞抽出物などからである。ウェルは、液体サンプルを含有しかつ分析処置の間にそれらがウェルに入れられることを可能にするようはたらく。各ウェルは、サンプル中に存在しうる非被検体(nonanalyte)物質からのその後の精製および分離(ならびに濃縮)のため液体サンプルからの被検体を保持するようはたらく。一般に、側壁12は高さ1mmと1cmとの間であることができる。従って、該壁は、一般に1μl(マイクロリットル)と3ml(ミリリットル)との間の容量の液体サンプルを保持することができる。該装置は、より多い若しくは少ないサンプルを取り扱うために必要とされる場合は0.1mmと10cmとの間の側および底寸法を有してそれぞれより大きく若しくはより小さくのいずれかに比例して縮小拡大し得る。装置の側壁12および上面層4は、通常、非多孔質素材から成形することができる。非多孔質素材はセラミック、またはステンレス鋼、陽極酸化アルミニウム、真鍮などのような金属でありうる。通常、非多孔質素材は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、レーヨン、フルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリオキシ−メチレン;ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、PBT−ポリエステル、ポリベンズイミダゾン(polybenzimidazone)、アセタールコポリマー、ポリイミド、エチレン−クロロトリフルオルエチレン、PETポリエステル、エチレン−テトラフルオルエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエチレン、ポリウラタン(polyurathanes)、ポリケトン、ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレンスチレン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド−イミド、ポリアリーレート(polyarylates)、ポリメチルペンテン、ポリケトン、ポリスルホン、PBTポリエステルおよび/若しくはポリマーアロイのようなポリマー素材であることができる。濃縮器装置を二次加工するのに使用しうる付加的な素材は、アクリル樹脂、例えばLUCITE(R)若しくはPlexiglas;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS);ポリオキシ−メチレン(Acetal);ポリアリーレート(ARDEL(R));ポリ塩化ビニル(PVC);PBT−ポリエステル(CELANEX(R));ポリベンズイミダゾン(Celazole(R));アセタールコポリマーCelcon若しくはDelrin(R);ポリイミド、例えばDuratron(R)若しくはKapton(R);エチレン−クロロトリフルオルエチレン、例えばHalar(R);PETポリエステル、例えばErtalyte(R);エチレン−テトラフルオルエチレン、例えばTefzel(R);フッ素化エチレンプロピレン(FEP);ポリエチレン;ポリウラタン、例えばIsoplast(R);ポリケトン、例えばKadel(R);ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン(Kel−F(R));ポリビニリデンフルオリド(PVDF);ポリエチレンテレフタレートポリエステル、例えばMylar(R);ポリプロピレンオキシドおよびスチレン、例えばNoryl(R);ポリエーテル−エーテルケトン、例えばPEEKTM;ポリテトラフルオルエチレン(Teflon(R));ポリアリールエーテルスルホン、例えばRadel(R);ポリアミド−イミド、例えばTorlon(R);ポリフェニレンスルフィド、例えばTechtron(R)もしくはRyton(R);ポリアリーレート、例えばArdel(R);ポリメチルペンテン(TPX(R));ポリケトン、例えばKadel(R);ポリスルホン、例えばUdel(R);PBTポリエステル、例えばValox(R)を包含する。
B.妨害種からの被検体の分離のための層
サンプルウェル内若しくは下に、例えば質量分析法による感度の高い分析のための被検体の分離、濃縮、保持および結合のための2個以上の多孔質層8が配置される。図5は2個若しくはそれ以上の多孔質層8の一例の構成の断面の拡大図を示す。ウェルの底面層は、多孔質層8への部分的若しくは競争する(compete)曝露により完全に若しくは部分的に多孔質でありうる。ウェル底の一部分のみが多孔質である場合、一般に、ウェル底は多孔質領域24および非多孔質領域26を有することができる。非多孔質領域は、層8で使用される素材の強度を増大させるため、若しくは、あるいは側壁12と多孔質層8との間での封止の形成において補助するためのような構成を容易にするために選択されるために有利に使用しうる。
【0014】
第一の多孔質吸収層30は、通例は、ウェル6に添加される液体サンプルを吸収するための液体吸収層であることができる。例えば、液体サンプルはピペット若しくは他のサンプル分注手段によりウェル中に入れかつ層30に吸収させうる。その後、そのpHで緩衝された伝導性の液体電解液を、サンプルを実質的に希釈することなく吸収させたサンプルの上に置くことができる。それによりサンプルは多孔質層8の緊密な近傍に実質的に希釈されずに保持される。吸収層30は、通常、綿若しくはガラス繊維、紙または合成布帛若しくは粒子のような水性溶媒中で不溶性の吸収性のポリマー性繊維若しくは微粒子素材であることができる。該布帛若しくは粒子は、多数の多様なセルロース、ニトロセルロース、セルロースエステル、ガラス繊維、ナイロン、レーヨン、フルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリオキシ−メチレン;ポリアリーレート、ポリ塩化ビニル、PBT−ポリエステル、ポリベンズイミダゾンアセタールコポリマー、ポリイミド、エチレン−クロロトリフルオルエチレン、PETポリエステル、エチレン−テトラフルオルエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエチレン、ポリウラタン、ポリケトン、ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン、ポリエチレンテレフタレートなどから作成し得る。層30の主要な要件はa)それが水性サンプルに対し吸収性でありかつ目的の被検体に対し多孔質性でなければならない、である。好ましい吸収層30はSephadex粒子(Pharmacia−Amersham)から作成される。例えば、こうしたSephadex粒子は、直径20と100ミクロンとの間(すなわちSephadex粒子の100〜300ミクロンの直径より小さい)のメッシュ開口部を有する微細なナイロンメッシュにより層32の上面層に保持されるG−50 Courseでありうる。使用されるSephadexの容量は、いかなる所望のサンプル容量に対しても調節しうる。通常は、しかしながら、該容量は5と100マイクロリットルとの間であることができる。
【0015】
クロマトグラフィー分離層40は第二の多孔質層を含んでなる。層40は、該装置の作動の間にウェル6に入れられる目的の被検体に対し差別的に多孔質である。こうした被検体は、異なる分子の大きさ、異なる電荷、異なる疎水性若しくは分離層40に対する異なる親和性を有するおかげで異なる速度で層40を通って移動するタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドでありうる。従って、こうした被検体はサンプルウェル6から分離層40を通りかつ下にある捕捉層60へ異なる速度で進む。通例、層40は、分子量がより小さいものからの高質量(すなわち分子量)のサンプル構成要素の分離を助長する1種、若しくはそれ以上、の分離媒体から構成される。この場合、層40を通る高質量のサンプル構成要素の移動の速度は、より低分子量のサンプル構成要素に関して遅らせられる。例えば、層40は透析膜のような分子篩を含みうる。こうした透析膜は当該技術の臨床的透析若しくはタンパク質の取扱いおよび精製の当業者に公知である。通例、こうした透析膜はセルロース、セルロースアセテート、ポリエステルなどのような素材を含む。こうした膜の使用での一問題は、それらが大きな分子量を過負荷される(分子を保持される)場合に詰まったようになることである。過負荷によるひどい詰まりは、保持されている分子を膜表面から除去するための対流(流動)の手段を提供することにより予防し得る。こうした流動は、重力、静水圧、磁性攪拌子などにより駆動しうる。好ましくは、しかしながら、層40の第一の分離媒体は、アガロースのような多孔質ゲル状物質、若しくはより最適にはポリアクリルアミドから形成することができる。こうしたゲルは、(DNA、RNA若しくはタンパク質のような)荷電した巨大分子を電場に置く場合に、詰まらせることなくより小さい大きさの分子に関して大きい大きさの分子の速度を遅らせることが、巨大分子の分離の当業者に公知である。従って、こうしたゲルは、非常に広範囲の大きさの生物学的巨大分子の電気泳動分離を提供することが公知である。こうしたゲルの別の利点は、それらが過負荷することなく電気泳動分離の間にはるかにより大量のサンプル被検体を取扱い得ることである。すなわち、こうしたゲル状物質は、詰まった(fouled)若しくは詰まった(clogged)ようになることなく電場により駆動される高分子タンパク質、DNA、RNA若しくは他の生物学的ポリマーを電気泳動により篩過する能力を有することが公知である。タンパク質若しくはポリヌクレオチド分離の当業者に公知のこうしたゲルの例は、ポリアクリルアミド若しくはアガロースである。こうした媒体の篩過特性は、孔径を調節することにより変えることができる。例えば、ポリアクリルアミドの孔径は、アクリルアミド単量体の濃度(若しくはビスアクリルアミド架橋剤の濃度)のいずれかを変えることにより変えることができる。
【0016】
分離層40は、生物学的巨大分子の分離において補助するために複数の下位層52を含みうる。第二、第三、第四若しくはそれ以上の分離媒体を、連続して、若しくは第一の分離媒体内に一緒に混合してのいずれかで組合せで使用しうる。例えば、分離媒体の複数の下位層は、多孔質分離層40の詰まり(clogging)をさらに予防するために異なる孔径若しくは孔径の勾配(各場合で上から下までで孔径を増大させること)を含みうる。例えば、最上面層は2.5%アクリルアミドを含むことができ、中間層は5%アクリルアミドを含むことができ、そしてより下層は7.5%アクリルアミドを含みうる。あるいは、下位層52は、血液、血漿若しくは血清中のアルブミン若しくはIgGのような特定の物質を結合かつ除去する素材から形成しうる。こうした物質の特異的除去はアフィニティークロマトグラフィーの原理による選択的吸着でありうる。例えば、タンパク質、炭水化物若しくはポリヌクレオチドは、セルロース、デキストリン、アクリルアミド、ポリマー樹脂などのようなマトリックスに結合した抗体、レクチン若しくはオリゴヌクレオチドにより選択的に除去しうる。被検体を選択的に取り出すための他の手段は、アフィニティーマトリックスの構築の技術分野で公知であるところの(亜鉛若しくはニッケルのような)金属へのタンパク質のキレート化、ビオチン−アビジン相互作用、疎水性色素−アルブミン結合などを包含する。
C.化学分析のための被検体の濃縮および捕捉のための層
第三の多孔質集束層50は、場合によっては集束層として層40の下に配置しうる。層50は、捕捉層60の下にある捕捉領域68に集束されつつある被検体に高い移動性を提供する素材を含む。集束層50の例の素材は高度に浸透性のアガロース、セルロース(例えばWhatman#1若しくはWhatman#2濾紙など)である。こうした素材の固体部分は大きな孔を有するが、しかしなお集束層50内の対流を有利に予防する。使用される場合、集束層50は、被検体の分離層40から下にある捕捉60への拡散および対流双方の輸送を予防するのに十分厚いことができる。通常、該厚さは200ミクロンからおよび3000ミクロンであることができる。集束層50は多孔質層8に平行な面への被検体の集束(すなわち濃縮)において補助する。目的の被検体が一旦高度に抵抗性の分離層40を通過したがしかし捕捉層60へのそれらの進入前に濃縮が起こる。集束層40は任意であるが、しかし、存在する場合は、捕捉層60の捕捉領域68への被検体の所望の集束の達成において補助する。
【0017】
分離層40および任意の集束層50の下に被検体捕捉層60が配置される。捕捉層60もまた、イオン電流を通過させるために多孔質である。捕捉層60として使用される膜の孔径は、通常、捕捉の効率を最適化するのに十分小さいことができ、そして従って捕捉の機構に依存することができる。捕捉の機構は単純に濾過篩過であることができ、その場合、孔径は目的の被検体より小さいことができる。篩過による小型タンパク質およびオリゴペプチドの捕捉のためには、孔径は極めて小さく、10〜100オングストロームの次数になくてはならない。孔径は、目的の被検体より小さくても若しくは大きくてもいずれでもよい。捕捉層60の孔が目的の被検体より大きい場合、捕捉層60は下述されるとおり目的の被検体に対する親和性を有しなければならない。
【0018】
捕捉層60は通常、厚さ1ミクロンと1000ミクロンとの間の膜であることができる。より通常は、厚さは10ミクロンと200ミクロンとの間であることができる。薄層中での目的の被検体の捕捉は、MALDI−MS分析のための被検体のその後の抽出を容易にする。また、ウェル深さ18に関して薄い捕捉層60は、その比に比例した被検体の濃縮をもたらす。捕捉層60の厚さは、しかしながら、膜の十分な機械的強度および十分な結合能力を与えるのに十分でなくてはならない。
【0019】
典型的な分離および捕捉処置のため、適用される電場は5〜100ボルト/cmからの範囲にわたることができる。典型的には、電圧は約5ボルト(一般に約3ボルトから約10ボルトまでの範囲にわたる)であることができ、また、陽極と陰極との間の分離距離は約0.4cm(一般に.005cmから約5cmまでの範囲にわたる)である。電気泳動速度vは
v=μE (等式1)
式中、μは被検体分子の電気泳動的移動度でありかつEは電場強度である、
として示される。μの値は、アインシュタインの関係
D=(kT/q)μ (等式2)
から、その拡散係数Dから直接計算される。アミノ酸および類似の大きさにされた分子の拡散係数は、ほぼ室温で約10−5cm/秒である。一価の分子について室温で(kT/q)≒0.0259ボルトという値から、われわれは、これらの分子のμの値が約4×10−4cm/(V・秒)であることを見出す。従って、等式1から、約20ボルト/cmの電場中で膜を横断するこうした分子の速度は:(20ボルト/cm)・4×10−4cm/(V・秒)=8×10−3cm/秒(すなわち約80ミクロン/秒)であることができる。
【0020】
われわれは、膜が約80ミクロン厚である場合に通過時間が約1秒であることができることを即座に理解する。より高電場、より高い電気泳動的移動度、若しくはより薄い膜について、通過時間は比例してより短く(そして逆に、より低電場、より低い電気泳動的移動度、若しくはより厚い膜については比例してより長く)なることができる。本発明について、(被検体と膜との間の結合親和性の非存在下での)膜を横断する通過時間は、通常、0.1と100秒との間であることができる。
【0021】
好ましくは、層60による捕捉の機構は、篩過単独によるよりはむしろ層60への被検体の結合に基づくことができる。十分な結合が起こる場合、篩過による捕捉はもはや必要とされない。捕捉膜60への結合に際して、層60を横断する被検体の通過時間は劇的に増大する(すなわち、逆に、時間の画分に比例して、横切る分子は遊離の状態で過ごす)。例えば、平均して分子が99.99%の時間を結合されて(すなわち0.01%の時間遊離で)過ごす場合、通過時間は10という係数だけ増大することができる。すなわち、結合の非存在下での通過時間が1秒であった場合、被検体が99.99%の時間結合されている場合、通過時間は約10,000秒になる。一般に、(捕捉層60への結合の結合の存在下で)膜を横断する通過時間は、10と10秒との間であることができる。
【0022】
結合による捕捉は篩過による捕捉を上回る最低2つの利点を提供する。すなわち、a)孔径は篩過のためによりはるかにより大きいことができる、およびb)捕捉層60は被検体分子の捕捉後に汚染物質を含まなく洗浄しうる膜であり得る。アフィニティー捕捉を使用することにより、膜の孔は生物学的サンプル中に存在する水和イオン(例えばナトリウム、カリウム、カルシウムおよび塩化物)の直径よりはるかにより大きいことができる。結合による効率的な捕捉のため、孔は通過時間tで膜を通過する被検体分子の拡散距離xより小さいことのみが必要である。上で論考されたとおり、典型的には、tは0.1から1000ミリ秒までであり、そしてdは10−5と10−7cm/秒との間であることができる。三次元の拡散についての式
=6Dt (等式3)
を使用して、上で明記された最速の通過時間(すなわち0.1ミリ秒)さえでの(約10−6cm/秒の拡散係数を有する)小型のタンパク質分子の効率的な捕捉について、われわれは、孔径xが8000オングストロームまで(すなわちほぼ1ミクロン)でありうることを見出す。対照的に、篩過過程による捕捉のために、孔径は、1000〜60,000の分子量をもつ小さい被検体を除去するために何倍もより小さくなければならない(すなわち約15〜40オングストローム)とみられる。従って、アフィニティー捕捉は、多様な孔径が非常に高い電気泳動速度について(若しくは薄い膜を用いて)大まかには10オングストロームから約1ミクロンまでの範囲にわたり利用されることを可能にする。対応して、より遅い電気泳動速度若しくはより厚い膜は、孔径が対応してなおより大きい(例えば10オングストロームから10ミクロンまで若しくはより大きい範囲にわたる)ことを可能にするとみられる。
【0023】
こうした捕捉はいかなる結合機構にもよりうる。例えばペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は疎水性側鎖をもつアミノ酸を有する。従って、疎水性表面および多孔質の疎水性膜はこうした分子を適度に高親和性で結合する傾向がある。従って、エチレン−テトラフルオルエチレン、例えばTefzel(R);フッ素化エチレンプロピレン(FEP);ポリエチレン;ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン(Kel−F(R));ポリビニリデンフルオリド(PVDF);スチレン、例えばNoryl(R);ポリテトラフルオルエチレン(Teflon(R))多孔質Teflonなどのような多孔質膜素材が、ペプチドおよびタンパク質被検体を結合するのに十分にはたらく。好ましくは、約250,000の分子量カットオフを伴う薄いPVDF透析膜(Spectrum Laboratories;カリフォルニア州ランチョドミンゲスから得られる)を、こうしたペプチドを捕捉するのに使用する。あるいは、それぞれタンパク質およびペプチドに対する固有の親和性を有するニトロセルロース、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどから作成される多孔質捕捉膜をこうした分子中で捕捉膜として使用しうる。あるいは、捕捉層60は、ニトロセルロース、セルロース、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、多孔質PVDFなどのもののような薄い膜素材から作成しうる。
【0024】
捕捉層60は、ポリペプチドを結合するこうした素材から作成されるか若しくはポリペプチド結合になるように誘導体化されたかのいずれかのポリペプチド結合層でありうる。便宜的には、層60全体を同一素材から作成し得る。あるいは、層60は孤立したポリペプチド結合領域すなわち島を有しうる。こうした方法で、被検体が濃縮されかつ層60に結合されることができ、そしてその後、蒸留若しくは精製水で、または炭酸アンモニウム緩衝液のような予め決められたpHおよびイオン強度の水性緩衝液のいずれかで洗浄されうる。被検体を結合した表面を洗浄することにより、サンプル中にありうる塩若しくは洗剤のような不純物が除去される。それにより、被検体からのMALDIシグナルの妨害若しくは抑制を、被検体分子の検出の感度を実質的に増大させるように実質的に低下させることができる。
【0025】
ポリペプチドの捕捉のため、捕捉層60は一般に、ポリビノリジンジフルオリド(PVDF)のようなタンパク質結合素材から作成される透析膜のような薄い微細に多孔質の素材を含むことができる。層60の多孔質素材は、水性緩衝液および電解液、メタノール、エタノールならびにアセトニトリルのような水性若しくは有機溶媒(それらの全部はMALDI−MSサンプルおよびMALDIマトリックスとともに頻繁に使用される)を耐えなければならない。ポリペプチドおよびタンパク質を結合するために、結合層60は一般に疎水性であることができる。疎水性は、従来技術で公知であるとおり、ポリマー上に天然に存在するか若しくはあるいは表面に化学的に結合されたかのいずれかのアルキル若しくはアリールいずれかの有機基により提供されうる。あるいは、疎水性の特徴は、エチレン−クロロトリフルオルエチレンのようなクロロ若しくはフルオルカーボン、ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン、エチレン−テトラフルオルエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン(Kel−F(R))のようなパーフルオロカーボン;ポリビニリデンフルオリド(PVDF);ポリテトラフルオルエチレン(Teflon(R))、エチレン−テトラフルオルエチレン、例えばTefzel(R);フッ素化エチレンプロピレン(FEP);などにより提供されうる。透析膜の多孔性は、疎水性単独によるよりむしろ分子の大きさによる選択的捕捉もまた可能にするように選択しうる。例えば、5,000の分子量の疎水性透析膜は、5,000の分子量より大きい全部の分子種を選択的に保持するのに使用し得る。オクチルグルコシド、Triton X−100、NP−40などのような洗剤、若しくは、あるいはエタノール、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチルなどのような有機溶媒のいずれかを含有する溶出溶液で膜を洗浄することをその後使用して、より低分子量の被検体を膜から溶出させ得る。溶出溶液をその後除去し、そして、タンパク質を疎水性相互作用を介して捕捉膜に結合させる。
【0026】
捕捉層60を含んでなる素材は、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリオキシ−メチレン;ポリアリーレート、ポリ塩化ビニル、PBT−ポリエステル、ポリベンズイミダゾン、PETポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレンスチレン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリアリールエーテルポリアリーレート、ポリメチルペンテン、PBTポリエステルおよび若しくはポリマーアロイのような別のポリマー性タンパク質結合素材でありうる。濃縮器装置を二次加工するのに使用しうる付加的な素材は、アクリル樹脂、例えばLUCITE(R)若しくはPlexiglas;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS);ポリオキシ−メチレン(Acetal);ポリアリーレート(ARDEL(R));ポリ塩化ビニル(PVC);PBT−ポリエステル(CELANEX(R));ポリベンズイミダ
ゾン(Celazole(R));アセタールコポリマーCelcon若しくはDelrin(R);ポリイミド、例えばDuratron(R)若しくはKapton(R);例えばHalar(R);PETポリエステル、例えばErtalyte(R);ポリエチレン;ポリウラタン、例えばIsoplast(R);ポリケトン、例えばKadel(R);ポリエチレンテレフタレートポリエステル、例えばMylar(R);ポリプロピレンオキシドおよびスチレン、例えばNoryl(R);ポリエーテル−エーテルケトン、例えばPEEKTM;ポリアリールエーテルスルホン、例えばRadel(R);ポリアミド−イミド、例えばTorlon(R);ポリフェニレンスルフィド、例えばTechtron(R);ポリアリーレート、例えばArdel(R);ポリメチルペンテン(TPX(R));ポリケトン、例えばKadel(R);ポリスルホン、例えばUdel(R);ポリフェニレンスルフィド、例えばRyton(R);PBTポリエステル、例えばValox(R);ポリマーアロイから成形される膜、例えばXenoy(R);または2種若しくはそれ以上のポリマー膜のラミネートを包含する。
【0027】
多孔質捕捉膜は、質量分析計により読み取り可能でありかつ最低1個の予め決められた位置がマーカー位置から既知の距離にあるマーカー位置を有する。該予め決められた位置は、捕捉領域すなわち所望の分子が濃縮されていた捕捉層の領域に対応する。マーカー位置は黒色不透明領域でありうる。装置2は、電気泳動電流を領域62に優先して捕捉膜60の捕捉領域68を通り集束させるようはたらく。これは捕捉に際して領域68内での選択された被検体の濃縮をもたらす。達成される濃縮の量は、捕捉膜60の上のサンプルウェル6全体の断面積に関して領域68の面積(その断面を線66により示す)に反比例する。断面若しくはウェルは線64により示される。従って、達成される濃縮は、線66の長さの二乗により除算された線64の長さの二乗に比例する。捕捉膜60による濃縮された被検体の捕捉は、濃縮された形態でのそれからの抽出を可能にするMALDI標的プレート上への濃縮された形態でのそれらのその後の配置を容易にする。サンプル濃縮領域の大きさは、一般に直径1ないし1000ミクロンの間であることができる。より通常は、濃縮領域の直径は直径50と200ミクロンとの間であることができる。
【0028】
場合によっては、層捕捉層60の下に、目的の被検体が捕捉層60を通過する場合に該被検体が逃れることを予防するように機能する遮断層70が配置される。層30、40、50および60と同様、層70は多孔質である。層70の孔径は、しかしながら目的の全部の選択された被検体が層70を通過することを予防するのに十分に小さい。遮断層70は、適して低いカットオフ分子量を伴ういかなる適する透析膜でもありうる。例えば、約500のカットオフ分子量を有するSpectrum Laboratories,Inc.から入手可能なCEA透析膜は、ヒト血漿若しくは血清中に存在しうる目的のペプチドを保持するためのPVDF捕捉膜40とともに十分に機能する。いかなる適する透析膜、若しくは適して小さい孔をもつ他の膜も、遮断層の目的上使用しうる。遮断層70は、しかしながら、被検体が篩過により層60の上側61で捕捉される場合には必要とされない。
【0029】
同様に、捕捉層60および遮断層70の下に、場合によっては緩衝層80が配置される。緩衝層は固体でも液体でもそれらの組合せのいずれでもよい。例えば、緩衝層は250mM水性ヒスチジンのような濃縮された緩衝媒体の液体溶液でありうる。最適には、この緩衝液は緩衝種の等電点付近のpH、ヒスチジンについておよそ7.5〜8.0であることができる。それにより緩衝能力は最小限のイオン伝導性を伴い非常に高くなり得る。また、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸の飽和溶液、または他の両性イオン緩衝液を、2.5〜3.0のpH領域で等電的に同様に緩衝するのに使用し得る。あるいは、こうした緩衝液は、アガロース若しくはポリアクリルアミドのような素材を含む水性ゲル若しくはゾル−ゲルに組み込みうる。
【0030】
多孔質層8は層30、40、50、60、70および80の全部若しくはいくつかのみを包含しうる。分離層40および捕捉層60は装置の作動に必要とされる一方、層30、50、70および80は任意である。これらの任意の多孔質層は、しかしながら、より堅実な作動、より迅速な分離、より完全な捕捉、若しくは改良されたpH安定性、またはそれらの組合せのいずれかを包含する装置の改良された性能を提供する。
D.集束電場の適用のための電極:
多孔質層8の底面層に、多孔質層8内でイオン電流を生じさせる電流を供給するための底部電極100がある。層30、40、50、60、70および80を包含する層の全部8は、電解液サンプル中のイオンに対し多孔質であることができ、それにより目的の被検体を電極100に向かって電気泳動的に誘引しつつイオン電流が捕捉膜60の領域68を通って実質的に集束されることを可能にする。
【0031】
図6は、伝導性のイオン液体電解液90中にサンプル被検体を含有する単一サンプルウェル6の図解を示す。サンプル電解液90中に、リード線150に接続されている対極としてはたらく上部電極140が浸漬される。リード線150は順に電源160に接続され、電源160もまたリード線120に接続され、リード線120は底部電極100に接続されている。電源は底部電極100に対する電位で上部電極140にバイアスをかける。それにより構成部品6、8、12、90、100、120、140、150および160は協同的に相互作用して、電気泳動分離を実施することが可能な電解槽を形成する。電圧バイアスは、定電位電解装置でのように、値が固定されて若しくは時間とともに変動するようにプログラムされてのいずれかで予め決められうる。あるいは、電源は電解槽を通る電流が予め決められているすなわち固定されているガルバノスタットでありうる。好ましい一作動様式において、電源はガルバノスタットであり、かつ、電解槽は、電流が100マイクロアンペアないし10ミリアンペアの範囲にあるように選択されたガルバノスタット様式で作動される。より通常は、電流は約400マイクロアンペアないし1ミリアンペアであることができる。予め決められた電流の値で、電圧は約1ボルトから100ボルトまでの範囲にわたることができる。より通常は、電圧は2.0ボルトと20ボルトとの間であることができる。
【0032】
好ましくは、底部電極は、電極内の電流路が電極100の光導電領域200内に囲まれることを可能にする光導電電極であることができる。光導電素材はドープシリコン若しくはゲルマニウム、ガリウムヒ素、二酸化チタン、酸化タングステンなどのような半導体でありうる。これらの光応答性素材は単結晶の形態にありうるか、若しくは多結晶、すなわち複数の小型の晶子として存在しうる。あるいは、光応答性電極100は無定形物質の薄膜として存在しうる。こうした薄膜は例えば蒸着若しくはスパッタリングのいずれかにより薄膜として付着させうる。好ましくは、半導体素材は、安価なスクリーン印刷技術により付着させたTiOから作成される厚い薄膜若しくは類似の半導体素材であることができる。薄いおよび厚い双方の薄膜の光応答性素材の製造方法は従来技術で公知である。
【0033】
集束若しくは平行光線190での光源180からの光応答性電極の照射は光導電領域200の創製をもたらす。領域200は、電極100の照射領域、および各照射領域を取り巻く少数キャリアの拡散距離dを包含する。距離dは、1mmの次数、若しくは純粋な単結晶ゲルマニウムのような素材についてはそれ以上の実質的なこうしたものであり得る。距離dは、純粋な単結晶ケイ素において100〜500ミクロンの次数にあり得るか、若しくは、少数キャリアの寿命を低下させる素材で単結晶半導体を適してドーピングすることにより100ミクロン未満、なお1ミクロン未満にさえなるように作成し得る。こうした物質すなわち「寿命キラー(lifetime killer)」は、従来技術で公知であるとおり、金、鉄、銅などのような金属でありうる。従って、かなりの制御が光導電領域200の寸法について用いられ得る。光線は通常、直径0.001と1mmとの間であることができる。レーザーのような小さな集束光源、または開口部若しくは集束レンズにより向けられた他の光源の使用により。光の幅は1〜100ミクロン若しくはそれ未満であり得、直径1〜500ミクロン若しくはそれ未満からの非常に小さい伝導性領域200をもたらす。
【0034】
単一の連続的半導体電極を光応答性電極として使用して、2個若しくはそれ以上の光導電領域200を有する非常に多数の電解槽のアレイを創製しうる(例えば図1、2および3を参照されたい)。光応答性電極100は、(上部)対極140に関して光応答性電極100に電圧バイアスを適用するために、電源160に接続した1個若しくはそれ以上のリード線120を有しうる。2個、若しくはそれ以上の電解槽が単一の光応答性電極と接触している場合、2個、若しくはそれ以上の電解槽のそれぞれ1個を通る光電流は、光応答性電極100上の各光導電領域200に向けられる光の強度を制御することにより、別個に制御される。それにより、2個、若しくはそれ以上の電解槽のそれぞれを通る電流は、光線190内の光の強度を制御することにより独立に制御し得る。例えば、電解槽は、電極140と100との間で単一の予め決められたバイアス電圧を適用するがしかし各電解槽を通る電流を個別にモニターしかつ各電解槽を通る電流を予め決められた値に維持するために各電解槽に光線を提供する光源にフィードバックシグナルを個別に供給することにより、ガルバノスタット様式で個々に作動させうる。従って、照射光強度の制御を使用して、各電解槽のガルバノスタット様式での作動を提供し得る。好ましい一作動様式において、電源はガルバノスタットであり、そして電流を100マイクロアンペアないし10ミリアンペアの範囲になるように選択する。より通常は、電流は約400マイクロアンペアないし1ミリアンペアであることができる。予め決められた電流の値で、電圧は約1ボルトから100ボルトまでの範囲にわたることができる。より通常は、電圧は2.0ボルトと20ボルトとの間であることができる。
【0035】
上部電極140は対極としてはたらき、そして光応答性である必要はない。上部電極140は、好ましくは、白金、金、パラジウムなどのようなインサート材から作成することができる。上部電極はまた、ステンレス鋼、チタン、クロムなどのようなより少なく高価な素材からも作成し得る。事実上いかなる電子的に伝導性の素材も上部電極に使用しうるが、但し、電極の素材は水性サンプル中で腐蝕を受けないか若しくは溶解しないことを条件とする。腐蝕抵抗性を最大にしつつ費用を最小限にするために、上部電極140は鉄、銅、チタン、タングステン、真鍮などのようなより少なく高価な素材上にインサート材をめっきさせうる。また、対極は炭素、グラファイトなどのような伝導性炭素質素材から作成し得る。炭素質素材は、有利には、上部電極を伝導性パターンに安価に二次加工し得るように、非伝導性ポリマー上にスクリーン印刷し得る。
【0036】
本発明は、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチド分子のような所望の被検体を、血漿、血清、脳脊髄液などのような複雑な生物学的サンプル中に存在する妨害する塩、脂質、糖などから調製かつ分離するための迅速な系としてはたらく。分離された被検体をその後、薄膜60上での捕捉により「Z」次元で濃縮する。被検体はまた、「X」および「Y」次元で、すなわち捕捉膜60の面内で、個々のサンプル電解槽内で捕捉領域68を通り電場を集束させることによって小さな捕捉領域68中にも濃縮される。
E.MALDI質量分析法による分析のためのMALDI標的プレートへの取り外し可能な付属品を提供する捕捉部位のアレイを有する捕捉スライド
サンプル被検体の分離および捕捉膜60の領域68への濃縮後のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を提供するために、結合層60を他の多孔質層から分離し、そして、結合層60を、図7に示されるとおり質量分析計への導入のため適するMALDI質量分析サンプルプレート300に固定する。適するマトリックス溶媒に溶解した適するMALDIマトリックスを、その後、結合膜の被検体捕捉領域68に小液滴350として添加する。存在する被検体を溶媒に溶解させ、そして、溶媒が蒸発する際に、被検体は、捕捉膜60の上面層61上で生じるMALDIマトリックス結晶内に取り込まれた
ようになる。MALDI質量分析法の当業者に公知であるとおり、マトリックス物質は一般に、UVレーザー(例えばパルス窒素レーザー)により提供される電磁スペクトルの領域(例えば337ナノメートル)でエネルギーを強く吸収する有機酸である。一般に、MALDIマトリックスは、被検体を再溶解するように液体の形態で、しかし、サンプル被検体を実質的に希釈またはそれを被検体捕捉膜60の捕捉領域68の上面層61より大きい面積にわたり広げないように0.5ないし5.0マイクロリットルのような小容量で添加することができる。自動化分注機器の使用で、適用されるマトリックスの容量は実質的により少なく、例えば1ピコリットルないし1ナノリットルでありうる。より通常は、マトリックスの容量は1マイクロリットルと1ナノリットルとの間であることができる。溶媒液体の蒸発およびMALDIマトリックス結晶の形成のための時間を許容した後に、サンプルプレートは、MALDI質量分析計への導入のための準備ができている。質量分析計へのMALDIサンプルプレート300の挿入に際して、MALDIマトリックス結晶を強いUVレーザー光パルスで照射して、従来技術で公知であるとおり被検体分子の画分のイオン化をもたらす。別個の分子量のイオンの存在若しくは非存在を、その後、また従来技術で公知であるとおり決定し得る。
【0037】
装置2は、標準的MALDI−MSサンプルプレート上でのMALDI−MSによるサンプルの分析に利用することができる。MALDI−MSサンプルプレートは、一般に、レーザー支援イオン化過程の間のサンプル表面の帯電を予防するように、電気的に伝導性の素材から作成される。装置2内の捕捉膜60は、通常、断面が薄い、例えば厚さ10ミクロンと200ミクロンとの間であることができ、その結果帯電は伝導性のMALDIサンプルプレートに容量結合される。容量結合はサンプル表面の高電圧への実質的荷電を予防して、それによりMALDI質量分析計中のイオン化された被検体種を加速するのに使用される電場に対するいかなる有害な効果(affect)も予防する。薄い非伝導性装置に対する代替の、該装置は、該装置がいずれかの合理的な厚さを有しうるように導電性素材から作成しうる。この場合、捕捉層60の厚さは1mm、若しくはそれ以上であり得る。伝導性素材は、ポリマーに伝導性素材を添加することにより前述のポリマー素材のいずれでもあり得る。例えば、無定形の炭素若しくはグラファイトのいずれかとしての伝導性の炭素の添加は、従来技術で公知であるとおり捕捉膜の伝導性を劇的に増大させ得る。あるいは、該装置は、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀、パラジウム、銅、クロムなどのような伝導性金属から作成し得る。なお別の代替として、ドープ若しくは真性半導体素材を使用して該装置に伝導性を提供しうる。半導体が真性である場合、捕捉膜上で形成されるいかなる電荷も消散させるために十分な伝導性を半導体装置に提供するように、半導体のバンドギャップより上の電磁放射が提供されうる。
【0038】
こうしたMALDI質量分析計の操作者に公知であるとおり、小型のサンプルウェル22を配置し得かつ励起レーザーを使用してウェル22の表面領域を励起し得る。下の実施例に示されるとおり、ウェルの底面層領域26を包含する濃縮された被検体の領域30の励起は、被検体の検出の高められた感度を提供する。マトリックスは、通例、マトリックスの溶解性を高めるため、しかし有機溶媒が蒸発する際にマトリックスの結晶化を可能にするために、有機溶媒と一緒に混合された酸溶液に添加される。本発明で使用しうる典型的なMALDIマトリックスの例は、限定されるものでないがシナピン酸(sinapinic acid)(C1112)、CHCAとして公知のα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(C10NO)、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸、ゲンチジン酸(C)、トリヒドロキシアセトフェノン(C)、ジトラノール(dithranol)(C1410)、2,−(4−ヒドロキシフェノリアゾ)安息香酸(2−(4−hydroxyphenolyazo)−benzoic acid)(C1310)、2−アミノ安息香酸、trans−3−インドールアクリル酸(C11NO)、フェルラ酸(ferulic acid)(C1010)、ニコチン酸−N−オキシド(CNO)、2’−6’−ジヒドロキシアセトフェノン(C)、ピコリン酸(CNO)、3−ヒドロキシピコリン酸および6−アザ−2−チオチミン(COS)を挙げることができる。通例、これらのMALDIマトリックス分子は、アセトニトリル、アセトン若しくはメタノールのような水と混合可能な有機溶媒に溶解する。通常、溶媒およびマトリックスを、ギ酸、酢酸若しくはトリフルオロ酢酸のような分子の水性酸溶液と一緒に混合する。該酸は、MALDIマトリックス溶液のpHを、乾燥に際して塩の結晶よりはむしろ酸の結晶が形成されることを保証するのに十分に酸性に保つ。該酸溶液はまた、従来技術で公知であるとおり、MALDI励起がより効率的であるそれらのプロトン化した状態でペプチドおよびタンパク質被検体が存在することも確実にする。典型的なMALDIマトリックス溶液は、50%(容量)のアセトニトリル溶液(20mg/mlのCHCA若しくはシナピン酸いずれかを含有する)および50%の水性0.1%TFA溶液を含むことができる。
【0039】
装置の作動を容易にするために、2個若しくはそれ以上のサンプルウェルのアレイを提供し、そして、多孔質層8の封止保持、ならびに保持されたサンプルおよびMALDIマトリックスを含む捕捉層40を質量分析計に直接かつ便宜的に挿入し得るように装置の迅速な分解の双方を提供するように、副集成部品を構築する。図8は、上部構成部品枠部材410および下部構成部品枠部材440を有するスライド集成体440の上面図を示す。上部および下部構成部品枠部材は、サンプル分離の完了および捕捉膜40への被検体の捕捉後に他方から一方を分解し得る。上部および底部構成部品枠部材440は捕捉層の分解および据付を容易にする。上部枠部材410は分離および濃縮装置2の上面層4を形成する。上面層4に成型若しくは孔開けのいずれかをされたくぼみがサンプルウェル6を形成する。分離層40は、アクリルアミド単量体および架橋剤のような重合可能な液体を所望の厚さまでウェル中に注ぐことにより便宜的にウェル6に挿入する。液体をその後、例えば過硫酸アンモニウムのようなフリーラジカル連鎖開始剤の取り込み、またはリボフラビンのような光線感作物質の添加、および該光線感作物質により吸収される波長の光、例えばリボフラビンについてUV光若しくは400〜450ナノメートルの光のいずれかでの照射のいずれかにより重合させる。重合によるゲルのこうした形成方法は従来技術で公知である。
【0040】
図9は、上面層4から下方に突出する突起412を有するその底面層414を示す上部構成部品枠部材410の底面図を示す。分離層40は、その底面層416と同一平面上の各突起の底部分を満たす。こうした方法で、分離層は捕捉層60若しくは場合によっては集束層50のようなその後の多孔質層と直接接触に置くことができる。枠部材410は通常0.5から10mmまで、より通常は0.7から2mmまでの厚さを有することができる。突起は同様に0.5から10mmまで、より通常は0.7から2mmまでの長さを有することができる。ウェル6の総深さは、枠部材410の合わせた厚さプラス突起412の長さマイナス突起中に置かれる分離層40の厚さ(かつ−任意の保護層30の深さ)により決定される。
【0041】
図10はスライド集成体400の下部構成部品枠部材450の上面図を示す。配置される枠部材450の上面層452は、下部枠部材450をずっと通って伸長する孔454である。枠部材450の底面層456には捕捉層60(若しくは場合によっては集束層50およびその後捕捉層60)が配置される。(上部構成部品枠部材410の突起412内に配置される)分離層40が捕捉層60若しくは集束層50のいずれかを直接接触するように、上部構成部品枠部材410中の突起412の長さは下部構成部品枠部材450の厚さにほぼ等しいことができる。
【0042】
厚さおよそ1mmの鋼円板のような強磁性素材458が、下部枠部材450の上側452のくぼみ458に押される。該強磁性素材は、膜60上に配置されたサンプル被検体の質量分析法的分析の間、下部構成部品枠部材(およびMALDIサンプルプレート300に取付けられた捕捉膜60)をしっかりと保持するように機能する。この目的上、MALDIサンプルプレートは、サンプルプレート上の対応する位置に構築された固定された磁石を有することができる。
F.高められた電場集束および捕捉スライドからの被検体の化学的抽出のための装置:
本発明の代替の一態様を図11に示す。絞り層510が分離層40と捕捉層60との間に追加されることを除き図10に示されるものに類似の本態様。図12に示されるとおり、絞り層510は不浸透性領域512、および分離層40から不浸透性領域512を通り捕捉層60へのイオン伝導を可能にする小開口部518を有する。開口部518は、捕捉膜60のより小さい断面積の捕捉領域68のみを通過するようにイオン電流を制約するよう機能し、ここで開口部518の中心は捕捉膜60内の捕捉領域68の中心と物理的に整列されている。開口部は通常、直径10ミクロンと2mmとの間であることができる。より通常は、直径は直径50と500ミクロンとの間であることができる。絞り層510はいかなる厚さのものでもありうるが、しかし、通常は耐久性および小型性のために50ミクロンと1000ミクロン厚との間であることができる。とりわけ、絞り膜が200ミクロンより厚い場合は、開口部で気泡を形成する傾向を伴わずに水性緩衝液を保持するように、開口部中に多孔質の吸収性の親水性素材を付着させることが有用である。吸収性の疎水性素材は多様な素材、例えばアガロース、Sephadex、ラテックス、シリカ粒子、ガラス粒子などから選びうる。親水性粒子は絞り層510の厚さより直径がより小さいことのみを必要とする。慎重な注意が、しかしながら、粒子上の表面電荷に対し払われるべきである。例えば、正に荷電した巨大分子被検体を開口部518を通り電気泳動的に集束している場合は、中性若しくは正味の正のいずれかの表面電荷を有するように吸収性の疎水性素材を選ぶべきである。正味の負の表面電荷は、表面電荷間の距離が巨大分子上の正に荷電した部分間の距離より実質的により大きい場合にのみ使用しうる。同様に、負に荷電した巨大分子被検体を開口部518を通り電気泳動的に集束している場合は、逆が真である。すなわち、中性若しくは正味の負のいずれかの表面電荷を有するように吸収性の疎水性素材を選ぶべきである。正味の正の表面電荷は、表面電荷間の距離が巨大分子上の負に荷電した部分間の距離より実質的により大きい場合にのみ使用しうる。
【0043】
絞り層510を作成するのに使用しうる素材は、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、タンタル、タングステンのような金属、若しくは他の元素と一緒のそれらの合金を包含する。好ましくは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース、セルロースエステル、ナイロン、レーヨン、フルオロカーボン、パーフルオロカーボン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリオキシ−メチレン;ポリアリーレート、ポリ塩化ビニル、PBT−ポリエステル、ポリベンズイミダゾン、アセタールコポリマー、ポリイミド、エチレン−クロロトリフルオルエチレン、PETポリエステル、エチレン−テトラフルオルエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエチレン、ポリウラタン、ポリケトン、ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレンスチレン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド−イミド、ポリアリーレート、ポリメチルペンテン、ポリケトン、ポリスルホン、PBTポリエステルおよび/若しくはポリマーアロイのようなポリマー素材を使用することができる。濃縮器装置を二次加工するのに使用しうる付加的な素材は、アクリル樹脂、例えばLUCITE(R)若しくはPlexiglas;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS);ポリオキシ−メチレン(Acetal);ポリアリーレート(ARDEL(R));ポリ塩化ビニル(PVC);PBT−ポリエステル(CELANEX(R));ポリベンズイミダゾン(Celazole(R));アセタールコポリマーCelcon若しくはDelrin(R);ポリイミド、例えばDuratron(R)若しくはKapton(R);エチレン−クロロトリフルオルエチレン、例えばHalar(R);PETポリエステル、例えばErtalyte(R);エチレン−テトラフルオルエチレン、例えばTefzel(R);フッ素化エチレンプロピレン(FEP);ポリエチレン;ポリウラタン、例えばIsoplast(R);ポリケトン、例えばKadel(R);ポリクロロ−トリフルオロ−エチレン(Kel−F(R));ポリエチレンテレフタレートポリエステル、例えばMylar(R);ポリプロピレンオキシドおよびスチレン、例えばNoryl(R);ポリエーテル−エーテルケトン、例えばPEEKTM;ポリテトラフルオルエチレン(Teflon(R));ポリアリールエーテルスルホン、例えばRadel(R);ポリアミド−イミド、例えばTorlon(R);ポリフェニレンスルフィド、例えばTechtron(R)もしくはRyton(R);ポリアリーレート、例えばArdel(R);ポリメチルペンテン(TPX(R));ポリケトン、例えばKadel(R);ポリスルホン、例えばUdel(R);PBTポリエステル、例えばValox(R)を包含する。他の非多孔質素材もまた使用しうるが、しかしながら、とりわけ好ましい素材はポリイミド(Kapton(R))である。
【0044】
場合によっては、捕捉層60が図13に示されるとおり第一および第二の絞り層の間に「挟まれる」ように、第二の絞り層520を捕捉層60の下に置くことができる。有利には、第一の絞り層510の不浸透性領域512を、捕捉層60の捕捉領域68内に捕捉された被検体が捕捉膜60の領域62に(拡散、対流、若しくは電場内の漂流のいずれかにより)動くことを予防するように、捕捉膜60の保持された部分および第二の絞り層の不浸透性領域522と一緒に溶接することができる。こうした方法で、捕捉された被検体は領域68内に保持されることができ、そして従って、例えばMALDIマトリックスが添加される、後のサンプル調製段階の間、より濃縮されたまま留まることができる。膜の溶接は、例えばポリマーおよび金属素材の二次加工および溶接の技術分野で公知であるとおり、溶媒若しくは熱の適用によって実施しうる。
G.検出のさらに高められた感度を提供するための分離段階
本発明の装置および方法は、さらに高められた分離および濃縮を達成してそれによりさらに高められた感度をもたらすために、伝統的な分離および濃縮段階と組合せうる。付加的な段階は付加的な時間をとるであろうが、しかし、付加的な段階は、該段階を実質的に自動化した様式で実施し得るような方法で本発明と組合せ得る。それにより、該段階は、付加的な操作者の介入若しくは操作者が付いている稼働時間をほとんど若しくは全く必要とせず、実施するのが容易かつ簡便である。
i)等電点電気泳動法:
例えば、等電点電気泳動段階を、以前に記述された精製および濃縮段階と一緒に組合せうる。サンプルの等電点電気泳動は図14に示されるところのその改変により該装置で実施しうる。該改変は、集束層50として1個、若しくはそれ以上の等電点電気泳動ストリップ610を使用することを包含する。該等電点電気泳動ストリップは装置の第一の次元620に沿って連続的である。2個、若しくはそれ以上の別個の等電点電気泳動ストリップを、第一の次元に直行する第二の次元630に沿って置くことができる。2個、若しくはそれ以上のストリップが存在する場合、ストリップは実質的に平行であることができる。各等電点電気泳動ストリップ610を、各集束スリットの下に中心があるスリット660を有する絞り層510上に配置する。図14中の点線640は各電気泳動ストリップ610の中心軸を示す。各スリット660は、第一の次元620に沿った開口部518の伸長として単純に見ることができる。各電気泳動ストリップの中心軸640は、それ以外は不浸透性の絞り層600中の下にあるスリット660の上に直接存する。2個、若しくはそれ以上の等電点電気泳動ストリップ610が存在する場合、2個、若しくはそれ以上のスリット660が存在することができ、ここで各スリットは各電気泳動ストリップ610の中心軸640に沿って整列され、そして相互のスリットに実質的に平行である。
【0045】
等電点電気泳動法(IEF)は、セルロース(若しくはガラス)、または炭水化物繊維膜、Sephadex(R)粒子、アガロース若しくはポリアクリルアミドゲルの床のようないずれかの適する固定マトリックスで実施しうる。固定相は、等電点電気泳動法の従
来技術で公知であるとおり、安定なpH勾配を提供するように液体の対流を予防する。例えば、P.GlukhovskiyとG.Vigh、Analytical and Preparative Scale Isoelectric Focusing Separation of Enantiomers、Analytical Chemistry 71、(17)、1999、3814−3820(引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0046】
簡潔には、IEFは、水性電解液中にて一方は陽極および他方は陰極としてなんらかの距離を離れて置かれた2個の電極間で形成されるpH勾配中で実施する。pH勾配は、最初に陽極に酸性媒体(すなわち高pH)および陰極により塩基性の媒体(すなわち低pH)を置くことにより確立しうる。あるいは、pH勾配は、電流を当初は均一なpHの電解液に一方の電極から他方へ通過させる自然の結果として確立されうる。これは、水が陽極で酸化される場合に、pHが等式(4):
2HO−2e→2H+O (4)
に従って自然に下落することができるためである。逆に、水が陰極で還元される場合、pHは等式(5):
2HO+2e→2OH+H (5)
に従って自然に上昇することができる。形成されるpH勾配は、いずれの場合も、電解液へのキャリア両性電解質の添加により直線化かつ安定化し得る。両性電解質は両性分子である。すなわち、それらは置換基の酸性および塩基性基を有する。IEFの間に安定なpH勾配を創製するために、多様なキャリア両性電解質の混合物を使用する。各両性電解質は異なる等電点(pI)、すなわち両性電解質上の正味の電荷がゼロであるpHを有する。両性電解質は、それらがpH勾配中のそれらのpI値に達するまで、外的に適用された電場中を移動する。それらの速度はその後ゼロになり、そして、それらは、例えばそれらが勾配に進入する場合のサンプル被検体によるpHのいかなる外的混乱に対しても緩衝する。正の電位が陰極に関して陽極に適用される場合、多様な電解質は、最低のpIをもつものが陽極に最も近くかつ最高のpIをもつものが陰極に最も近いような直線的な連続した様式で陽極と陰極との間の電場中にそれら自身を配置する。便宜的なpH3.0〜10.0の両性電解質混合物は、例えば製品番号P1647としてSigma Chemical Companyから入手可能である。
【0047】
あるいは、両性電解質は、ストリップ若しくはプレート上に固定化pH勾配(IPG)を形成する固定マトリックスに共有結合し得る。例えば、こうしたIPGストリップ若しくはプレートは、Amersham Biosciencesから商業的に購入しうる。Amersham製品番号17−6003−73は、例えば7cmの距離にわたりpH3〜11の勾配を形成するのに便宜的に使用される。IPG技術は、IPG技術がより小さい電流でより高い安定性を伴うpH勾配を確立し、また、両性電解質が被検体とともに共溶出せずかつ従ってそれらのその後の分析を妨害することがより少なくありそうであることを除き、移動性の両性電解質を使用する場合に形成されるpH勾配に類似している。
【0048】
荷電した被検体の等電点電気泳動を実施するため、被検体を次に、両性電解質を添加したと同一の様式で、等電点電気泳動ストリップ610上でpH勾配に適用する。また両性電解質に同様に、被検体は等電pH点のそれらの点に移動しかつ濃縮される。定常状態で、荷電した被検体は、従って等電点電気泳動ストリップ中の濃縮されたバンド460に見出される。この点で等電点電気泳動を中断する。
【0049】
次に、多孔質層60、70および80を絞り層600の下で集成し、上部電極(140)および底部電極500を取付け、そして多孔質層を通して電極とイオン接触させるのに十分な量の水性緩衝液を添加する。以前に記述されたところの適するバイアス電位の適用が、等電点電気泳動バンドから絞り層中のスリット660を通りかつ捕捉層60上の幅の狭いストリップへ被検体をさらに集束させる。捕捉膜上での被検体の捕捉後に、装置2を分解し、そしてスライド集成体としての捕捉膜60を、以前に記述されたとおり、適するMALDIマトリックス溶液の適用および被検体と一緒になってMALDI結晶を形成させるための乾燥後に、MALDIサンプルプレートに取付ける。こうした方法で、被検体を第一の次元620での等電点電気泳動により電場中で濃縮し、次いで捕捉膜上の被検体分子の予め決められた別個の線に実質的に直交する方向650に電場中で集束し、ここで該分子の線は絞り層600中の対応するスリット660により規定される。それにより、被検体をそれらの質量特性について便宜的に、しかしはるかに改良された検出感度でモニターし得る。
実施例
【実施例1】
【0050】
ポリペプチドの移動性を高めるためにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用することによるPVDF薄膜上でのMALDI−TOF分析のための血清アルブミンからのユビキチンポリペプチドの分離
標識タンパク質標準品:
テキサスレッドで標識したユビキチン(TR−ユビキチン)およびマリーナブルーBSA(MB−BSA)は、それぞれテキサスレッド(カタログ番号T−6134、Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)およびマリーナブルー(製品番号M−10165;Molecular Probes;オレゴン州ユージーン)のNHS−エステルを利用することにより調製した。Molecular Probesにより推奨される標識手順を使用した。簡潔には、NHS−蛍光標識種を約1□g/mLの濃度でジメチルホルムアミド(DMF)に入れ、そして、タンパク質に対する標識試薬のモル結合比が約10/1となるように、ボルテックス攪拌しながら中性のpHの標準的リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)緩衝液中の1mg/mL若しくはそれ以上のタンパク質のサンプルに添加した。タンパク質サンプルとの標識反応を1時間進行させた。反応混合物はその後、250mM L−ヒスチジン(Sigma)緩衝液で事前に平衡化したP6スピンカラム(Bio−Rad)を通過させた。標識タンパク質サンプルを25マイクロリットルのアリコートに分注しかつ凍結保存した。
電解槽、ポリアクリルアミド、アガロースおよび多孔質膜:
光電気ブロッティングによる被検体の分離および濃縮のための基礎的な装置を図6に図解で示す。開放端サンプルウェルは、約2cm長および直径約2cmのポリスチレン管材料の短いシリンダーから形成した。分離層を管の一端に固定してサンプルウェルの底を形成した。分離層はプレキャスト10%ポリアクリルアミド(BioRad、カリフォルニア州から得た)から作成したゲルの2〜3mm厚スラブから形成した。ポリアクリルアミドは、より小さいタンパク質およびペプチド以上の大型タンパク質の電気泳動速度を遅らせる分子量篩としてはたらく。ポリアクリルアミドは、ゲルマトリックス中でのタンパク質の電気泳動分離の当業者に公知であるとおり、より大きなタンパク質のより迅速な移動性を可能にするようにより少なく高度に架橋してもよいか、若しくは、タンパク質およびペプチドの移動性をより良好に遅らせるようにより高度に架橋してもよい。
【0051】
場合によっては、ポリアクリルアミドゲルの縁は、(液体の漏出を予防するために)サンプル添加前に1%アガロースでサンプルウェルの側壁に封止する。アガロースおよびポリアクリルアミドの双方は、使用前に250mMヒスチジン緩衝液、pH7.8で平衡化する。あるいは、アクリルアミドゲルを正しい位置で重合することができ、そして封止物質を必要としない。アガロース(タイプ1−B:低EEO)はSigma Chemical Companyから購入した。典型的には、100mgのアガロースを秤量しそしてねじ蓋ガラスバイアルに入れる。使用する場合に、タンパク質およびペプチドの電気的移動性を加速するため、ならびにそれらの移動性を周囲のpHにより少なく依存性にするために、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加する。SDSを使用する場合、10m
Lの250mM L−ヒスチジン中の10□Lの10%水性ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(Sigma Chemical Company)を100mgのアガロースに添加する。(SDSは、それが使用されない場合については単純に省略する。)使用直前に、アガロースを電子レンジで液体状態を形成するのに十分に加熱する。アガロースの薄膜をその後、いかなる液体の漏出も封止するためにポリスチレンシリンダーの側壁12に沿ってプレキャストポリアクリルアミドの上面層に注ぐ。アガロースはその後固化するまで放置して冷却する。次に、サンプルを、1〜10μL容量の10%グリセロールを含有する250mM L−ヒスチジン中で適用する。泳動緩衝液(アガロースを含まないことを除いては上のアガロース溶液に同一)をその後、サンプルの上に慎重に積層する。
【0052】
被検体分子の分離および捕捉を実施するために、プレキャストポリアクリルアミドを一連の多孔質膜8の上に置く。膜は購入しかつ下に示されるとおり乾燥若しくは前水和のいずれかで保存する。いずれの場合も膜を正方形(およそ1.5cm×1.5cm)に切断し、そしてメタノールですすぐ(双方とも疎水性ポリマーを湿らせかつ浄化するため)。緩衝水性溶液(例えば250mMヒスチジン)に移した後、それらを使用するまで冷蔵保存する。PVDF透析膜(250,000のカットオフ分子量)、再生セルロース透析膜(1000のカットオフ分子量)およびCEA透析膜(セルロースエステル非対称);500のカットオフ分子量)は、Spectrum Laboratories、カリフォルニア州ランチョドミンゲスから得た。PDVF−P(0.45ミクロン孔径)およびPDVF−PSQ(0.2ミクロン孔径)はMillipore、マサチューセッツ州ビルリカから得た。Zetaメンブレン(0.45ミクロン孔径)はBioRad、カリフォルニア州ハーキュリーズから得た。
半導体および光学機器:
nタイプゲルマニウムウエハー(14ミル厚および直径5cm)はPolishing
Corporation of Americaから購入した。ウエハーのバルク抵抗率は0.4Ω−cm未満であった。抵抗接点を、ガリウム/インジウム共晶および銅線を使用することにより、ウエハーの上面層に作成した。抵抗接点は5分硬化エポキシ接着剤(5−minute epoxy)の上張層で機械的に強化した。該強化ゲルマニウムウエハーを、レーザーおよび集束光学装置と一緒に光学台上に据付けることにより光アノードとして使用した。据付けたゲルマニウムウエハーをクランプにより実験室用支持スタンドに取付けた。1ミリワット出力のヘリウム/ネオンの633nm線を光電気ブロッティングに使用した。レーザーは、直径100ミクロンと1mmとの間の集束ビームでガラスの底面層に衝突させた。
【0053】
本実施例で、強化ゲルマニウムウエハーを図100に示される光応答性電極100として使用した。緩衝層80は250mMヒスチジン緩衝溶液で飽和させたPVDF−P膜から構成された。PVDF−P膜上に、CEA透析膜から形成される遮断層70を置いた。捕捉層60は上で挙げられたPVDF透析膜から構成された。上で挙げられたサンプルウェルを形成するための付加的な素材と一緒になったポリアクリルアミド分離層40を、捕捉層、緩衝層および光応答性電極上で直接集成した。
電気泳動分離およびブロッティング:
0.2μLのTR−ユビキチン、MB−BSA(1〜2μg/μL)若しくは双方のいずれかを、25%(v/v)グリセロールを含む250mM水性ヒスチジン緩衝液を含有する2μLのサンプルに取り込んだ。サンプルを混合し、そして約1000×gで2分間遠沈させた。約0.5μLの上清を各分離および電気ブロッティング操作(run)に使用した。タンパク質の混合物からの質量分析法の結果を、精製標準タンパク質若しくはペプチドサンプル(例えばユビキチンおよび1%TFAのみを含有する)の使用と比較した。ユビキチンの純粋な(標準)サンプルを、MALDI質量分析法による分析の前の溶媒の蒸発後に妨害種が存在しないことができるように、0.1%TFAで(800fmol/μL若しくは10fmol/μLのいずれかまで)直接希釈した。
【0054】
電気泳動過程を開始するために、光応答性電極上の抵抗接点を定電位電解装置(Princeton Applied Research)に接続する。利用される膜の組合せが「湿らせた/緩衝した」状態にある間に、該膜をサンプルと光応答性電極の上部との間に置いた。膜層の最上部にプラスチックシリンダー(2cm直径および高さ2cm)を置く。熱アガロース溶液をその後、液体が3〜5mmの高さに達するように添加する。アガロースが一旦固化したら、別の3〜5mmの水性緩衝液(0.1%SDSを含む250mMヒスチジン)を添加する。電解槽の上部の対極(例えばPt、Pd若しくは炭素)を、今や、それがアガロースに接近して保持されるように浸漬する。25%グリセロールおよび75%ヒスチジン緩衝液中のサンプル(TR−Ub若しくはMB−BSA)を、それが電解槽の上部で円形対極と電気的接触を作成するように添加する。分離および濃縮手順の残りの部分は暗室中で実施する。光応答性電極と対極との間にバイアス電圧を適用し、そして照明源(例えば600〜700nmの波長で照射する4ミリワットダイオードレーザー)を、それが電解槽の上部の対極の中心に関して垂直に中心がくるように、ウエハーの裏(下)側で約50ミクロン直径のスポットに集束させる。典型的には、(白金対極に対し)ゲルマニウム電極に適用されるバイアス電圧は約+4ボルトであり、約500μAの総電流をもたらす(その約40%は光電流である。すなわち暗電流は約300μAである)。典型的には、電気泳動分離および捕捉操作を約9〜20分間進行させる。
【0055】
分離および濃縮後に、対極およびサンプルウェル中の上部緩衝液を除去する。その後、アクリルアミド分離層を取り出し、そして捕捉膜を脱イオン水(若しくは好ましくは0.1%TFA)のいずれかに2〜5分間沈めて塩を除去する。捕捉膜(例えばPVDF薄膜)をその後、3M二重被覆接着テープでステンレス鋼製MALDIサンプルプレートに接着する。マトリックス溶液をその後膜に添加し、乾燥させる。サンプルプレートを分析のため質量分析計に入れる。
【0056】
ステンレス鋼の直接上でのMALDI−MS分析のため、目的の被検体を含有する0.5から2.0μLまでのマトリックス溶液を、ステンレス鋼製MALDIサンプルプレート上に直接スポットし、乾燥させた。次に、サンプルプレートを分析のため質量分析計に入れた。
MALDI−MS分析のプロトコル:
分析は、提供されたQGEN_PR2法を使用することにより、ABI/Perceptive Biosystems Voyager DE(MALDI−TOF)機器を用いて実施した。CHCAマトリックス溶液を用いる使用のため、設定は:25kVの加速電圧、89%格子電圧、0.25%ガイドワイヤ電圧、200nsの遅延時間、2800のレーザー設定、64回の走査を平均、3.45e−7torr、100の低質量ゲート、陰イオンオフであった。
結果:
(PVDF膜を伴わない)CEA透析膜の直接上でのTR−ユビキチンの光電気濃縮を上述されたとおり実施した。図16に示されるMALDI質量スペクトルは、オリゴペプチドを膜からCHCAを含有するMALDIマトリックス溶液に抽出し、そしてステンレス鋼製標的プレート上に直接該溶液をスポットし、かつ、溶液を乾固まで蒸発させた後に得た。複数のピークが、各ユビキチンポリペプチドに共有結合した0、1、2、3若しくは4分子のテキサスレッドを表す。
【0057】
比較のため、図17に、同一のユビキチンサンプルを250,000の分子量カットオフのPVDF透析膜(CEAの500の分子量カットオフ透析膜により裏打ちした)上で光濃縮した後の該サンプルからのMALDI質量スペクトルを示す。光電気ブロッティングの完了後に、PVDF透析膜を水で洗浄し、乾燥し、そしてCHCA MALDIマトリックス溶液をサンプル濃縮部位に直接添加する。マトリックス溶液をその後乾固まで蒸
発させ、そしてPVDF透析膜を、二重被覆接着テープ(3M)によりでステンレス鋼製MALDIサンプルプレートに直接固定し、そしてその後MALDI−TOFを使用して分析する。図16および17の比較は2つの主要な差違を示す。第一に、最大強度ピークのイオン電流強度はPVDF膜を使用する場合に最大である。従って、PVDF膜を用いる手順を使用する場合に捕捉の効率が最大であるかのように思われる。第二に、2種の異なる膜による捕捉に際して、0、1、2、3若しくは4分子のテキサスレッドで標識されたユビキチンの明瞭に異なる比が観察される。CEA膜による捕捉は、ユビキチンの1分子あたり0若しくは1個のテキサスレッド標識を伴うより少ない分子をもたらしたようであった。従って、CEA透析膜は、テキサスレッド標識され(かつ従ってより負に荷電した)を伴うより高度に標識されているユビキチン分子を優先的に結合するかのように思われる。対照的に、PVDF膜は、ステンレス鋼製MALDI標的上に標識ユビキチンサンプルを直接分注することにより実施した分析の比較により示されるとおり、標識ユビキチン分子の全部をより均一に捕捉するようである(データは示されない)。
【実施例2】
【0058】
MALDI適合性膜上でのヒト全血清からの負に荷電した血清ペプチドの分離
血液、血漿若しくは血清中の少量のペプチドの分析での主要な一問題は、多量のタンパク質が少量のペプチドの出現を遮蔽することである。血液、血漿若しくは血清サンプルからの高度に豊富なアルブミンの除去は、かなり多数の少量のペプチドもまた除去することが報告されている。従って、少量のペプチドをアルブミンから解離させる方法を見出すことは重要な責務である。本研究において、われわれは、解離を促進するために血清サンプルを洗剤で処理した。
ヒト血清サンプル:
洗剤処理した血清サンプルは、エッペンドルフマイクロチューブ(500μL容量)中の10μLのヒト血清(Sigma Chemical Co.から得た)に5mg/mLのオクチル−β−D−グルコピラノシド(OG)を添加することにより作成した。洗剤処理した血清をその後4℃で一夜保存し、そして14時間後に室温にした。サンプルをその後、洗剤処理した血清の3μLのアリコート、1μLの250mMヒスチジン緩衝液、1μLのテキサスレッド標識したLeuエンケファリン(250mMヒスチジン緩衝液中のトレーサーとして)および0.5μLのグリセロールから作成した。生じるサンプル混合物を、一緒に1および3μLの液滴をもたらすために約1000gで約1分間遠心分離した。
サンプルウェルおよび分離層:
サンプルをその後、質量分析法分析のためのMALDI適合性の膜上での分離および濃縮のため、Serum Profiler分析セルのサンプルリザーバに入れた。該濃縮器のリザーバは、サンプルリザーバの側壁を形成するポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチラメタクリレート、ポリメチルペンテン、TeflonTMなどのような電気的に非伝導性の素材から作成されるサンプルリングから作成される。
【0059】
サンプルリザーバの底面層は、分離媒体の1個若しくはそれ以上の層により形成される分子構造とのイオン電気的接触にサンプルをもたらすようはたらく。本実施例において、分離媒体はプレキャスト10%ポリアクリルアミドゲル(BioRad、カリフォルニア州から得た)から作成したゲルの2〜3mm厚のスラブから形成した単一層により形成した。ポリアクリルアミドは、大型タンパク質の電気泳動的移動性を遅らせるがしかしより小さいタンパク質およびペプチドのより迅速な電気泳動的移動性を可能にするための分子量篩としてはたらく。ポリアクリルアミドは、ゲルマトリックス中でのタンパク質の電気泳動分離の当業者に公知であるとおり、より大きいタンパク質のより迅速な移動性を可能にするようにより少なく高度に架橋してもよいか、若しくはタンパク質およびペプチドの移動性をより良好に遅らせるようにより高度に架橋してもよい。場合によっては、ゲルの
縁を1%アガロースゲルで所定の位置に封止する。アガロースおよびポリアクリルアミド双方を使用前に250mMヒスチジン緩衝液、pH7.8で平衡化した。(あるいは、アクリルアミドゲルを正しい位置で重合することができ、そして封止物質を必要としない。)
捕捉、障壁および緩衝層:
ポリアクリルアミド分離層の下、およびそれとイオン電気的接触に、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質を包含するポリペプチド被検体を捕捉するようはたらく捕捉層がある。捕捉はポリペプチドのポリマー性捕捉膜との疎水性相互作用により進行する。多孔質Teflon若しくはPVDFのような素材から作成される膜が、疎水性相互作用によるポリペプチドの捕捉にとりわけ有用である。本実施例において、捕捉膜は、受領されかつ使用前に4℃で水性緩衝液(250mM L−ヒスチジン)中で保存されるPVDF透析膜(250,000の分子量カットオフ)から構成される。
【0060】
比較的非疎水性のタンパク質およびペプチドの逃散を予防する任意の障壁膜層がイオン電気的接触でかつ捕捉層の下に置かれる。CEA透析膜(セルロースエステル非対称、500の分子量カットオフ)を遮断層として使用し、そして使用前は乾燥保存する。捕捉および障壁双方の膜を正方形(およそ1.5cm×1.5cm)に切断し、そしてその後清浄性を保証するために使用直前にメタノールですすぐ。双方の膜はSpectrum Laboratories、カリフォルニア州ランチョドミンゲスから得られる。被検体が捕捉層に捕捉された後、小容量、例えば0.3〜2マイクロリットルのMALDIマトリックス溶液の添加まで、溶媒溶出段階を実施しなかった。従って、疎水性のタンパク質およびペプチドは、捕捉膜の分子の大きさのカットオフに関係なくPVDF透析膜により捕捉される。
緩衝領域:
捕捉および障壁膜の組合せの下かつそれとイオン電気的接触に、捕捉膜中で被検体分子の電気泳動的動き、分離および濃縮を引き起こす電場を生じさせるのに使用される電極の表面で形成される生成物を緩衝(若しくは捕捉するための緩衝領域が配置される。本場合において、緩衝領域はImmobilon−P膜(Millipore,Inc.から得られる)の単一層から構成され、かつ、250mM L−ヒスチジン緩衝液、pH7.8で飽和されている。
光応答性電極:
緩衝層のすぐ下かつそれとイオン電気的接触に、nタイプゲルマニウムウエハーから作成した光応答性陽極がある。ゲルマニウムウエハー(14ミル厚および直径5cm)はPolishing Corporation of Americaから購入した。抵抗率は0.4Ω−cm未満であった。5分硬化エポキシ接着剤でガラスプレートに据付けたゲルマニウムウエハーを、作用電極および光アノード双方として使用した。銅リード線への抵抗接点を、ガリウム/インジウム共晶および銅線を使用することによりウエハーの上面層で作成した。抵抗接点は5分硬化エポキシ接着剤の上張層で機械的に強化した。
ヒト血清サンプルの分析方法:
サンプル成分の分離および結合を実施するために、洗剤処理したサンプル混合物のアリコート(0.5〜8μL)をアクリルアミド/アガロース層の上部のサンプルリザーバに添加した。次に、白金から作成されかつリザーバの内壁とゆるく接触する円形対極(陰極)をサンプル中に直接置いた。白金陰極および光応答性陽極を定電位電解装置(Princeton Applied Research、型式273)に接続し、室を暗くし、そして+4Vのバイアス電圧を白金陰極に関して光応答性陽極に適用した。1ミリワット出力のヘリウム/ネオンの633nm線を光応答性陽極の裏面の光励起に使用した(すなわち、電解液と正対する側のウエハーに光を照らした)。レーザー集束装置は、レーザーが直径100ミクロンと1mmとの間の集束ビームでガラス強化の底に衝突するように構築した。4.0ボルトの電気的バイアスおよび同時の照射は約700mAの総電流(約30%の光電流)をもたらした。分離はバイアス電圧をゼロに設定する前に約20分間進行させ、そして、上部および底部電極へのリード線を切断した。
【0061】
次に、蓄積室を解体し、そしてゲルおよび膜を蛍光について確認した。捕捉過程が完了した場合は、全部の蛍光が捕捉膜上に含有されるはずである。蛍光スポットを切り離し、そして脱イオン水に数分間浸漬した。PVDF膜を乾燥させ、そして実施例1に記述されたとおりMALDI分析のため調製した。捕捉されたタンパク質をその後、上の実施例1に記述された手順を使用することにより、PVDF膜からVoyager DEワークステーションで直接分析した。
【0062】
図18、18aおよび19に、MALDIマトリックス溶液に包含されるCHCA若しくはシナピン酸いずれかとともに分析した場合の負に荷電したタンパク質およびペプチドの典型的な結果を示す。MALDIマトリックス溶液中のCHCAを用いる質量分析は、低分子量のペプチドおよびポリペプチド1000ないし15,000ダルトンについて最良の結果を与えた。対照的に、マトリックス溶液中のシナピン酸はより高分子量(すなわち15,000ダルトン超)で改良されたシグナルを与えた。従って、これらのマトリックス物質のそれぞれを用いた2回の別個のMALDI分析は、より低いおよびより高いの双方の分子量範囲について最適の結果を与える。
【実施例3】
【0063】
PVDF薄膜上でのMALDI−TOF分析のためのヒト全血清からの正に荷電した血清ペプチドの電気泳動分離
上の実施例1および実施例2と同様、本実施例において、ヒト血清サンプルからのペプチドおよび小型血清タンパク質を、目的のより小さいタンパク質およびポリペプチドからより大きいタンパク質を分離するためにゲルを通過させた後に捕捉膜上で電気泳動的に濃縮する。前の実施例でのとおり、荷電したペプチドおよびタンパク質分子は、外的陽極および陰極により適用される電場中を漂流する。本実施例において、正に荷電した被検体分子は、負に荷電した陰極に向かって漂流しかつ濃縮され、そして捕捉膜60の捕捉領域68内に結合されたようになる。捕捉された正に荷電したタンパク質をその後、前の実施例に記述されたとおり捕捉膜から直接分析し、MALDI分析を実施例2に記述されたとおりVoyager DE質量分析計で実施する。
【0064】
前の実施例1および2と本実施例3との間の主要な差違は、実施例3で光応答性電極が必須でないことである。代わりに、上部電極140の二次加工について以前に記述されたものに類似の非光応答性電極素材を、陰極若しくは陽極のいずれにもなり得るいずれの底部電極500にも使用しうる。光応答性電極は本代替の態様において必要とされないとは言え、代わりに、最低1個の開口部518をもつ最低1個の絞り層510が、捕捉膜60の捕捉領域68への被検体の集束を提供するのに必要とされる。図13aに示されるとおり、第二の集束層520を有利に使用しうる。集束層は、捕捉膜60の捕捉領域68に目的の被検体を集束させるようはたらく開口部518を通してのほかは、イオン電流に不浸透性である。従って、光応答性電極の電流を指図する作用は必要とされない。
材料:
・底部電極(500):パラジウム(Pd)箔を、所望されうるとおり底部電極上の伝導性領域を選択的にパターン化するように、Kapton(ポリイミド)接着テープで被覆しうる。例えば、Kaptonテープ中の2mm直径の孔は、底部電極表面として使用されるPdのこの領域を露出させるようはたらく。
・上部電極(140):上部電極は約3mm直径ループに造形した白金(Pt)ワイヤから作成した。3電極定電位電解装置若しくはガルバノスタットでの作動のため、上部電極を、定電位電解装置若しくはガルバノスタットからの制御電極および参照電極双方のリード線に接続する。
・底部電極(599)は、Kaptonテープの1”×3”片に2.4mmの穴を中ぐり
することにより調製する。接着テープをパラジウム(Pd)箔の小片の上に置き、そして双方をガラス製顕微鏡スライドガラスに固定する。定電位電解装置からの作用電極リード線を箔にクリップで直接接続する。
・緩衝層(80):緩衝層はMillipore,Inc.から得られるImmobilon−P膜から構成する。Immobilon−P膜は250mM水性L−ヒスチジン溶液、pH7.8で飽和させる。
・遮断層(70):500の分子量カットオフ、CEA透析膜、Spectrum Laboratories,Inc.から得られる。
・捕捉層(60):500の分子量カットオフ、ポリビニリデンジフルオリド透析膜(PVDF−DM)、Spectrum Laboratories,Inc.から得られる。
・分離層(40):10%ポリアクリルアミド、Bio−Rad Laboratories,Inc.から得られる。
・飽和水性DL−グルタミン酸およびDL−アスパラギン酸中の1%低EEOアガロース(Sigma Chem.Co.から得られる)から構成されるゲルを使用して、サンプルウェル(6)の側壁(12)に分離層(40)を封止する。
・サンプル緩衝液:水性緩衝液を使用して、サンプルを希釈しかつ上部および底部電極間の電気的接触を作成する。水性緩衝液は飽和DL−グルタミン酸およびDL−アスパラギン酸(Sigma Chem.Co.から得られる)である。該緩衝液のpHは約3.0である。
・サンプルウェル(6):開放の上および底部をもつ単一のポリカーボネートシリンダーを使用して、単一ウェルを有する分離および濃縮装置を構築する。該単一ウェルは19.15mm外径×16.95mm内径×17.32mm高である。
・サンプル:1μLグリセロール+1μLのユビキチン(Sigma Chem.Co.から得られる)かつ製造元推奨に従ってテキサスレッド(Molecular Probes,Inc.)で標識される+8μLヒト血清(Sigma Chem.Co.から得られる)+約1μgのオクチル−β−D−グルコピラノシド(Sigma Chem.Co.から得られる)+3μLのサンプル緩衝液。サンプルの全成分を一旦一緒に添加したら、それらを遠心分離かつ(混合するため)ボルテックス攪拌する。サンプルの5μLのアリコートをその後、サンプルウェルにピペットで移す。
・MALDIマトリックス溶液:第一のMALDIマトリックス溶液は、50%アセトニトリルおよび0.1%トリフルオロ酢酸に飽和させたα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸(CHCA)である。第二のMALDIマトリックス溶液は、50%アセトニトリル、50% 0.1%トリフルオロ酢酸に10mg/mLで溶解したシナピン酸(SA)である。MALDIマトリックス溶液の全物質はSigma Chem.Co.から得た。
器具類:
・電極バイアス電圧若しくは電流制御装置:EG&G Princeton Applied Researchからの型式273定電位電解装置/ガルバノスタットを、定電位電解装置若しくはガルバノスタットいずれかのモードで使用した。
・データ収集:Powerlab/4SP、AD Instruments、およびDellからのデスクトップPC。
・MALDI質量分析法:Voyager DE生体分光法ワークステーション、(Applied Boosters,Inc.)。
膜の調製:
サンプルの分離、濃縮およびPVDF捕捉膜(60)への結合前に、PVDF膜をメタノールに約1分間浸漬する。PVDF膜は疎水性であるため、メタノールは膜を初期「湿潤化」するようにはたらき、かつ、膜を浄化するようにもまたはたらく。湿らせたPVDF膜はその後、貯蔵のため脱イオン水中に入れる。分離層(60)はBio−Rad Laboratoriesから得たプレキャスト10%ポリアクリルアミドから調製する。ポリアクリルアミドをそのカセットから取り外し、サンプルウェルの側壁(12)に使用
するポリカーボネートシリンダーで円板に切断する。切断した円板を、遮断層(70)として使用するCEA膜と一緒に脱イオン水に一夜浸漬する。プレキャストポリアクリルアミドゲル中の高塩濃度は、許容できる範囲まで伝導性を低下させるために水中での一夜浸漬を必要とする。とは言え、該装置は、分離層およびサンプル緩衝液の広範囲の伝導性、例えば1マイクロジーメンスから100ミリジーメンスまでにわたり作動させうる。該装置の最適な作動は、10マイクロジーメンスから10ミリジーメンスまでのより狭い範囲にある。
装置の構築:
分離および濃縮器(2)は、底部電極の上に多孔質層を以下の順序、すなわち緩衝層、捕捉膜、絞り層、分離層、分離層に側壁を封止するための加熱したアガロースゲル、水性緩衝液および上部電極で置くことにより構築する。加熱したアガロースを、サンプルウェルの側壁中および周囲に1〜2mmの深さまでピペットで移す。アガロースが一旦ゲル化すれば、上部電極として使用するPtループを、それがアガロースを接触するまでセル中で慎重に下げる。十分な水性緩衝液をその後添加してPtループ上部電極を覆う。該装置の図解を図6に具体的に説明する。
装置の作動:
ヒト血清を含有するサンプルは、1μLグリセロール+1μLのテキサスレッド標識ユビキチン+8μLのヒト血清+<1μgのオクチル−β−D−グルコピラノシド+3μLの水性緩衝液を添加することにより調製する。該溶液を短時間遠心分離し、ボルテックス攪拌し、そして5μLのサンプルをその後、Ptループの中心を通しセルに分注する。底部電極を底部電極に関して−5Vでバイアスをかける。電流を連続してモニターする。初期過渡電流後に、電流は、45分の分離および濃縮段階の残りの間、約200μAに落ち着いた。テキサスレッド標識ユビキチンを、被検体の分離および捕捉の進行を視覚的に追跡するための指標被検体として使用する。分離に必要とされる時間および電流を、分離および捕捉を最適化するために過去に遡って調節する。
【0065】
分離および濃縮段階の終結時に、バイアス電圧をゼロに設定しかつ装置を分解する。Mieralight、Entela UVGL−58蛍光灯の366nmの発射設定を使用して、捕捉膜上のテキサスレッドユビキチンのような蛍光標識した追跡タンパク質を可視化する。PVDF−DM捕捉膜上の蛍光スポットを切り離し、脱イオン水中に2分間沈め、そして窒素流下で乾燥する。MALDIサンプルプレートへの取付のため、面積がそれぞれ約2平方mmの2個若しくはそれ以上の片に膜を分割する。片がステンレス鋼製MALDIサンプルプレート上にある際に、1μLのCHCAマトリックスを少なくとも1個の片に添加し、そして1μLのSAマトリックスを残存する片に添加する。マトリックス溶媒が一旦完全に乾燥すれば、ステンレス鋼製MALDI標的プレートの別の予め決められた領域に以前に接着した3Mの両面テープの2mm平方の片上に、清浄な鉗子を用いて膜を置く。
MALDI質量分析法分析:
Voyager DE質量分析計のパラメータは以下に続くとおりであった:20,000Vの加速電圧、94.1%の格子電圧、0.05%のガイドワイヤ電圧、110nsの遅延時間、2800に設定したレーザー、64回の走査を平均、そして陰イオンモードはオフであった。
結果:
図20、20aおよび21に、正に荷電したペプチドおよびタンパク質の典型的なMALDI質量分析結果を示す。該図から見ることができるとおり、(約8600、9330および10,100質量単位にみられるところの)標識ユビキチン追跡タンパク質からの質量シグナルを包含する多数の低分子量タンパク質の質量ピークが検出される。MALDIマトリックスとしてシナピン酸(20,000より上の分子量の中程度の大きさのタンパク質をより至適にイオン化する傾向がある)を用いた結果を描く図18は、中程度の量のアルブミンのみが(約68,00質量単位に)出現することを示す。また、約34,0
00質量単位に1個の小さな質量ピークが見られる。他のそのこれらの2個の質量ピーク、間違いなくポリアクリルアミドゲル分離層のより小さいポリペプチドからのより大きいタンパク質の実質的分離による、11,000ダルトンより上にほとんど質量ピークは見られない。
【実施例4】
【0066】
焦点電気泳動開口部アレイに取付けた多孔質捕捉媒体による被検体の捕捉
本発明の本態様において、固体物質中の開口部の二次元アレイを使用して、荷電した被検体を開口部中に電気泳動的に濃縮する。被検体の捕捉のための多孔質媒体を、濃縮される被検体を捕捉するための開口部に(すなわちそれら内またはそれらの入口若しくは出口に)取付ける。各開口部は、捕捉媒体の予め決められた領域を囲む連合した非多孔質の周囲を有する。該非多孔質の周囲は、予め決められた領域内に置かれる液体溶液をより大きな領域を占有することから保持するようにはたらく。1個若しくはそれ以上の開口部を有する装置を、以下の段階を有する手順で使用することができる:
1.)荷電した被検体を、開口部の一方の側の陽極および開口部の他方の側の陰極の双方と電気的接触にある電解液中に置かれているサンプル保持容量中の液体として付着させる付着段階;
2.)被検体を開口部に電気的に駆動しかつそれ内に集束させる集束および捕捉段階。また、この段階の間に、なお荷電している被検体が、開口部に(すなわち開口部内に、または開口部の入口若しくは出口に)予め付着された多孔質捕捉媒体の予め決められた領域上に捕捉されて、それにより荷電した被検体を予め決められた領域内で濃縮する;
3.)有利には先行する段階で予め決められた領域に濃縮された、捕捉された荷電した被検体を分析する分析段階。
【0067】
該分析段階は、付加的に:
a)液体溶媒および溶解されたマトリックス物質を含んでなる液体分析マトリックス溶液を多孔質捕捉媒体に添加して、被検体を液体溶媒中におよび多孔質媒体の上面層に遊離させる下位段階、
b)多孔質捕捉媒体の予め決められた領域内の非多孔質の周囲により液体溶媒を保持する下位段階、
c)溶媒を蒸発させて、溶解されたマトリックス物質および捕捉された被検体を多孔質媒体の上面層の予め決められた領域内に残す下位段階、ならびに
d)予め決められた領域の上面層に存在する被検体の特性を分析する下位段階
を含むことができる。
【0068】
通常、分析段階は、被検体の質量分析のため、開口部および取付けられた多孔質捕捉媒体を質量分析計に入れることをさらに含むことができる。さらに、質量分析計は、通常、被検体と一緒のマトリックス固体のレーザー支援共脱離を実施するためのレーザーを有するMALDI質量分析計であることができる。さらに、被検体は通常、タンパク質、ポリペプチド若しくはおよびペプチドであることができる。
【0069】
なおさらに、開口部は通常、実質的に同一のこうした開口部のアレイとして存在することができる。
【0070】
本発明により実施される段階を実施するために開口部のアレイとともに使用しうる電気泳動的開口部を下述する。開口部のアレイの構築および使用を提供するために使用しうる材料および方法の例をさらに記述する。
【0071】
下に示される実施例A.)において、多孔質捕捉膜はImmobilon−PSQ膜のような多孔質ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)(Millopore Corp
oration.マサチューセッツ州ビルリシア(Billricia)から入手可能)であり、また、開口部のアレイは固体PVDFのシート(McMaster Carr Corporation、ジョージア州アトランタから入手可能)中に作成する。非多孔質の周囲は、記述されるとおり、開口部の周りの固体シートに多孔質膜を熱的に溶接することにより作成する。
ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)シートへのImmobilon−PSQ膜の溶接:
本実施例において、Immobilon−PSQのようなPVDFの固体薄膜に多孔質PVDF捕捉膜を永続的に固定するための多様な手段を記述する。該方法は、0.010”厚の固体PVDFから作成されるポリマーシートのような固体物質に多孔質膜を熱的に溶接することを包含する。該方法において、多孔質膜は固体ポリマーシート中の小開口部のアレイ上に置かれる。開口部は、開口部を通り多孔質捕捉膜の上面層への溶媒の流れによるペプチドおよびタンパク質のような吸着された種の溶出を可能にするように機能する。
【0072】
溶接は図27に示されるもののような加熱した型押装置を用いて単純に行いうる。該型押装置は、しかしながら、最適には、溶接されるべき膜の最低1個の融点より上しかし双方の自己発火温度より下である指定された温度範囲内にその温度が制御されることを可能にするための温度制御装置を有することができる。加えて、溶接スタンプは、膜表面の最低一方に対し均一な圧を適用するための全般として平坦な底部領域を有することができるが、しかし、該膜の溶接されない部分の周りに溶接された周囲を創製するための孔を一般にスタンプの中心に有することもまたできる。型押は、下述されるところの一般的なはんだごてを用いて行いうる。溶接型押を準備するために、円錐形のはんだごて先の端を取り外し;孔をその後先端にドリルで開け、そして5mm長の18G皮下注射針を該孔にプレス嵌めする。はんだごて先をその後、ボール盤中で掴み、そして皮下注射針の内部を62°の高速鋼皿穴ビットで研ぐ。
【0073】
溶接を行う場合の決定的に重要な考慮は、PVDFシート中の開口部との溶接ツールの整列である。ジグを構築して、25個の穴アレイにドリルビット、および図28に示されるところの正しい位置に膜を熱的に溶接するために同一の穴に溶接アイロン(iron)を整列しうる。ジグは3構成部品、すなわちポリカーボネート製底板、アルミニウム製ドリルガイド(25個の穴のアレイ、直径0.024”)およびアルミニウム製溶接アイロンガイド(iron guide)(25個の穴のアレイ、直径0.052”)よりなる。
PVDF固体膜にPVDF多孔質膜を溶接するための手順:
・PVDFの0.01”厚の固体シートの45mm×45mmの片を、3Mの両面テープの接着層によってポリカーボネート製底板の中央に取付ける。
・アルミニウム製ドリルガイドをPVDFシートの上の底板にねじ込む。
・25個の穴のアレイを、ボール盤で使用するように設計された0.024”インチ直径のドリルビットおよびピン万力を使用することにより、固体PVDFシートを通してドリルで開ける;
・ドリルガイドを取り外し;Immobilon−PSQ膜のストリップを孔の上に置き、そして溶接アイロンガイドを基部にねじ込んだ。溶接アイロンガイド中の孔を、PVDFシート中の孔と正確に整列した。
・はんだごてを約850°Fに設定し、そして数分間温まらせた。
・はんだごての先端を、それが膜を接触するまでアルミニウム製プレート中のガイド孔に押し込んだ。はんだごてを、許容できる溶接継目が創製されるまで、1〜10秒間、膜に対して保持した。
・全25個の穴の上で膜を溶接した後に、ガイドを取り外し、そして膜を顕微鏡下で検査した。
・鉗子を使用して、溶接継目を取り囲む膜を除去した。
・溶接したアレイをその後メタノールに浸漬しかつ10分間超音波処理した。
・溶接した膜を含有するシートを乾燥し、そして使用の準備ができるまでビニール袋に入れた。
【0074】
MALDIマトリックス物質を含有する溶液の膜溶接および適用の結果を図29および30に示す。
抽出したサンプルの質量スペクトル分析:PVDF−PSQ膜を、上述されたとおり固体PVDFシート中の開口部の上に溶接した。次に、多孔質膜を1マイクロリットルのメタノールで湿らせ、そして、ACTHのペプチドフラグメントを含んでなる被検体を、およそ0.5マイクロリットルの水性PBS緩衝溶液中で多孔質膜の前側(固体PVDFに正対する側)に適用した。被検体を、シナピン酸(SA)マトリックス(80%アセトニトリル、20% 0.1%トリフルオロ酢酸に10mg/mLで溶解した)を含有する80:20のACN/水混合物から構成されるMALDIマトリックス溶液2×0.3マイクロリットルで反対表面に溶出した。MALDIマトリックス溶液のための全物質はSigma Chem.Co.から得た。膜の裏側をMALDI−TOFにより分析した。結果を質量スペクトルとして図31に示す。
【実施例5】
【0075】
固体ポリマー薄膜中の開口部中への多孔質モノリスキャストへのタンパク質被検体の濃縮および捕捉、ならびにMALDI−TOF分析のためのその後の抽出
図32に、MALDI質量分析法による分析のためのタンパク質およびポリペプチド被検体の捕捉およびその後の抽出のための基本構造の図解を示す。該構築物は、1個若しくはそれ以上の微小開口部として開口部を含有するプラスチック製枠から構成される。開口部すなわち穿孔は、有利には小直径、通常直径1ミクロンと2ミリメートルとの間のものである。より通常は、穿孔は直径100ミクロンと1ミリメートルとの間である。室の下区分は、PVDF−PSQ(Millipore,Corp.、マサチューセッツ州ビレリシアから入手可能なImmobilon膜)のような多孔質タンパク質捕捉膜で覆われる。捕捉膜は、1個若しくはそれ以上の封止手段を使用することによりプラスチック製枠に封止される。最も単純な封止手段は、プラスチック製保持リングに嵌合するように作成されたナイロンワッシャーのような保持リングよりなる。ガラス製カバーガラスが、サンプルおよび溶媒が適用された後に室を覆う。
【0076】
手順:少量(約10ピコモル)のテキサスレッド−ユビキチン(水中)を、乾燥したPVDF−PSQ膜の上区分に載せた。サンプルを真空下で乾燥した。サンプルに40マイクロリットルのアセトニトリル/水溶液を添加し、そしてカバーガラスをプラスチック製枠の上に置いた。溶液を下から溶出させ、そして蒸発させた。この手順もう2回反復し、従って1サンプルにつき溶液の総量を使用した。われわれの検討のため、以下の溶液をTr−ユビキチンの最も効率的な抽出のため検討した。使用した水に対するアセトニトリルの比(ACN/水)は:100:0;95:5;90:10;80:20;70:30;50:50であった。
【0077】
結果:蛍光像を、膜の上部分(スポットしたサンプル)および膜の下部分(抽出したサンプル)から撮影した。結果のいくつかを下に図33Aおよび33Bならびに34Aおよび34Bに示す。溶媒若しくは最も効率的な抽出は80:20であることが見出された。
【実施例6】
【0078】
焦点電気泳動開口部のアレイに形成した一体化多孔質捕捉素材中での被検体の捕捉
本発明の本態様において、一体化多孔質捕捉素材を、固体物質の開口部の二次元アレイに形成する。本態様において、荷電した被検体を、焦点電気泳動開口部のアレイで形成し
た一体化多孔質捕捉素材中に電気泳動的に濃縮する。被検体の捕捉のための多孔質媒体を、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)支持層に以前にドリルで開けた一連の200μm直径の孔に注型した。その多孔質重合が一旦完了したら、ポリマー物質をより良好に保持するように孔の内壁を官能性化した。多孔質素材を、ポリマー素材としてメチルメタクリレートを使用してその場で二次加工した。一般に、支持層をUV透過性Tefonで被覆した石英製スライドガラスの上に置き、そしてポリマー素材を孔にピペットで移した。次に、孔の上部を、気泡が存在しないように、別のUV透過性Tefonで被覆した石英製スライドガラスにより覆った。最後に、素材を多孔質「填材」を形成するため適切な時間UV光に曝した。個々のスポットを検討しかつ多孔性が均一であることを見出し、そして上部および底部双方を、支持層の上面層および底面層とともに洗い流した。
【0079】
われわれの実験において、一体化多孔質捕捉部位のそれぞれを脱イオン水で徹底的に洗浄かつ超音波処理して、いかなる残余のポリマー若しくはいかなる他の潜在的汚染物質も除去した。水で洗浄した後、部位のそれぞれをメタノールで徹底的に洗浄し、その後0.1%TFAですすいだ。次に、500fmolのBSA中の500fmolのACTHフラグメント18−39を、0.5μLの液滴中でモノリスのそれぞれの上にピペットで移した。サンプルがモノリス上で一旦乾燥したら、各部位を水ですすぎ、そして、80:20 アセトニトリル/0.1%TFA中の飽和シナピン酸1μLをモノリスの裏側(すなわちサンプル導入に正対する側)に添加した。最後に、一体化多孔質捕捉部位のアレイを包含する支持層を十分に乾燥させ、そしてMALDI質量分析計に入れかつ分析した。図35は、その場での多孔質重合過程を介して正しい場所に注型された単一多孔質捕捉部位を示す。図36は、アレイ中の4個の異なる一体化多孔質捕捉部位由来の数個のMALDI質量スペクトルを示す。全部の場合で、目的のACTHフラグメントが検出された。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】濃縮器装置の透視図。
【図2】濃縮器装置の上面図。
【図3】濃縮器装置の側面図。
【図4a】筒状サンプルウェルの拡大側面図。
【図4b】筒状サンプルウェルの拡大上面図。
【図5】単一ウェルおよび光応答性電極と接触している多孔質層の拡大図。
【図6】被検体サンプルおよび多孔質膜を伴う単一ウェルの図。上面層および底面層電極が電源に接続されている。
【図7】MALDIマトリックスが被検体捕捉部位のそれぞれに溶媒中で適用されている、MALDIサンプルプレートに固定された捕捉膜(被検体捕捉部位のアレイを伴う)の側面図。
【図8】捕捉層その底面層(上面図から見られるところの)を有する中央構成部品枠部材内に囲まれた分離層を有するサンプルウェルを伴う上部構成部品枠部材を示すスライド集成体。
【図9】図8に示される集成体の上部構成部品枠部材の底面図。
【図10】図8に示されるスライド集成体の下部構成部品枠部材の上面図。
【図11】捕捉膜(60)の選択部分(68)上での被検体の捕捉および濃縮のための絞り層(510)を有する電極(500)と接触した多孔質層(8)の代替の態様。
【図12】捕捉膜の選択された部分上で濃縮開口部(518)を通る荷電した被検体を電気泳動的に集束させるのに使用される絞り層(510)の上面図。
【図13】捕捉層(60)の底部の付加的な絞り層(510)を伴う図11に示される態様の変形。
【図14】被検体の分離および濃縮のためのウェルの二次元アレイを有する装置。
【図15】図14に示されるウェルの側面図。
【図16】電極および底部電解液室を伴う図15に示される装置の図。
【図17】それ以外は固体のポリマー層中のアレイ開口部中に注型された多孔質ポリマーモノリス素材から構成される図16に示される多孔質捕捉膜900の側面図。
【図17A】それ以外は固体のポリマー層中のアレイ開口部中に注型された多孔質ポリマーモノリス素材から構成される図16に示される多孔質捕捉膜900の上面図。
【図18】ウェルのアレイの側面図。
【図18A】複数の多孔質層を使用する、図15に示される装置の1個のウェルの図。
【図19】質量分析による分析のための捕捉前の改良された分離を提供するのに使用される、覆っている等電点電気泳動法IPGストリップ(610)を伴う特別の絞り層(600)の上面図。
【図20】質量分析による分析のための捕捉前の改良された分離を提供するのに使用されるIPGストリップ(610)の下に集束スリット(660)を有する不浸透性層(600)の上面図。
【図21】500の分子量カットオフのCEA透析膜上の(0、1、2、3若しくは4分子の)テキサスレッドで標識されかつ光濃縮されたユビキチンオリゴペプチドサンプルの混合物からの質量スペクトル。このスペクトルは、オリゴペプチドを膜からCHCAを含有するMALDIマトリックス溶液中に抽出し、そして該溶液をステンレス鋼製標的プレート上に直接スポットしかつ溶液を乾固まで蒸発させた後に得た。
【図22】図21に示される同一のユビキチンサンプルからの質量スペクトル。該ユビキチンサンプルは、しかしながら、250,000の分子量カットオフのPVDF透析膜上で光濃縮し、そしてCHCA MALDIマトリックス溶液をPVDF膜に直接添加し、乾固まで蒸発させ、そして二重被覆接着テープ(3M)によりステンレス鋼製MALDIサンプルレートに固定した。
【図23−23A】PVDF捕捉膜上で電気濃縮した負に荷電した血清タンパク質の質量スペクトルである(MALDIマトリックスとしてシナピン酸を用いる)。
【図24】PVDF捕捉膜上で電気濃縮した負に荷電した血清タンパク質の質量スペクトル(MALDIマトリックスとしてCHCAを用いる)。
【図25−25A】PVDF膜上で電気濃縮した正に荷電した血清タンパク質の質量スペクトルである(MALDIマトリックスとしてシナピン酸を用いる)。
【図26】PVDF膜上で電気濃縮した正に荷電した血清タンパク質の質量スペクトル(MALDIマトリックスとしてCHCAを用いる)。
【図27】溶接ツール、多孔質膜およびPVDFシート
【図28】ドリルガイド、溶接ガイドおよび底板
【図29】溶接された捕捉膜の多孔質領域。溶接継目の周囲は直径が0.5と1mmとの間であった。
【図30】0.5μLのMALDIマトリックスで被覆した溶接した膜
【図31】固体のPVDF膜に溶接された多孔質捕捉膜上の5フェムトモルのACTH(フラグメント18−39)の質量スペクトル。
【図32】取付けられた多孔質膜を伴う開口部の基礎的態様の図解。
【図33A−33B】溶媒でのサンプルの抽出前の捕捉膜に結合された蛍光被検体(Tr−ユビキチン)の蛍光像である。左(33A)に膜の上面層(サンプル適用側)の像を示す。右(33B)に捕捉膜の底(サンプル適用に正対する側の)側の像を示す。
【図34A−34B】適する遊離溶媒アセトニトリル/水−−−50:50を遊離した後の多孔質PVDF捕捉膜に結合された蛍光被検体(Tr−ユビキチン)の蛍光像である。左(34A)に膜の上面層(サンプル適用側)の像を示す。左(34B)に捕捉膜の底(サンプル適用に正対する側の)側の像を示す。
【図35】ポリマー支持層に開けた貫通孔中に形成した200μm直径の一体化多孔質捕捉部位
【図36A−36D】支持層中の正しい位置に形成した4個の別個の一体化多孔質捕捉部位から直接測定したところのMALDI質量スペクトルを示す。ACTHフラグメントが4部位のそれぞれで検出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェルを形成する少なくとも1個の開口部を包含する上面層;
捕捉層;および
上面層と捕捉層との間に配置される分離層
を含んでなる濃縮器。
【請求項2】
捕捉層が多孔質である、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項3】
多孔質捕捉層が膜である、請求項2に記載の濃縮器。
【請求項4】
膜が疎水性膜である、請求項3に記載の濃縮器。
【請求項5】
捕捉層がタンパク質結合素材から作製される透析膜である、請求項2に記載の濃縮器。
【請求項6】
上面層が複数の開口部を包含し、各開口部が1個のウェルを形成する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項7】
10から100個までのウェルを包含する、請求項6に記載の濃縮器。
【請求項8】
上面層と分離層との間に配置される多孔質層を包含する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項9】
捕捉層と分離層との間に配置される多孔質層を包含する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項10】
捕捉層に隣接して配置される遮断層を包含する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項11】
緩衝層を包含する請求項10に記載の濃縮器であって、遮断層が捕捉層と緩衝層との間に配置される、上記濃縮器。
【請求項12】
上面層と分離層との間に配置される多孔質層を包含する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項13】
上面層と正対する底面層を有する請求項1に記載の濃縮器であって、底面層が電極である、上記濃縮器。
【請求項14】
底部電極が光導電電極である、請求項13に記載の濃縮器。
【請求項15】
光導電電極が単一の連続的半導体電極である、請求項14に記載の濃縮器。
【請求項16】
光導電電極が非連続的半導体電極である、請求項14に記載の濃縮器。
【請求項17】
分離層と捕捉層との間に配置される絞り層を包含する、請求項1に記載の濃縮器であって、絞り層が不浸透性領域および少なくとも1個の開口部を包含し、該少なくとも1個の開口部が多孔質素材を通じてウェル開口部と液体連絡状態にある、上記濃縮器。
【請求項18】
多孔質の吸収性の親水性素材が絞り層の少なくとも1個の開口部中に配置される、請求項17に記載の濃縮器。
【請求項19】
絞り層の不浸透性領域が捕捉層に接着されている、請求項17に記載の濃縮器。
【請求項20】
絞り層の不浸透性領域が、熱溶接により捕捉層に接着されて少なくとも1個の絞り層開
口部の周囲の周りに環状溶接継目を形成する、請求項19に記載の濃縮器。
【請求項21】
絞り層が捕捉層の下に配置され、該絞り層は不浸透性領域および少なくとも1個の開口部を包含し、該少なくとも1個の開口部が多孔質素材を通じてウェル開口部と液体連絡状態にある、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項22】
絞り層の不浸透性領域が捕捉層に接着されている、請求項21に記載の濃縮器。
【請求項23】
絞り層の不浸透性領域が、熱溶接により捕捉層に接着されて少なくとも1個の絞り層開口部の周囲の周りに環状溶接継目を形成する、請求項22に記載の濃縮器。
【請求項24】
第一の絞り層および第二の絞り層を包含する請求項1に記載の濃縮器であって、捕捉層が第一の絞り層と第二の絞り層との間に配置される、上記濃縮器。
【請求項25】
第一の絞り層および第二の絞り層の双方がそれぞれ、多孔質素材を通じて同一のウェル開口部と液体連絡状態にある少なくとも1個の開口部を有する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項26】
捕捉膜が、質量分析計により読み取り可能である少なくとも1個のマーカーを包含する、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項27】
捕捉層が、質量分析計により読み取り可能であるマーカー位置を有し、かつ、予め決められた位置がマーカー位置からある既知の距離にある、請求項1に記載の濃縮器。
【請求項28】
ウェルを形成する少なくとも1個の開口部を包含する上面層;
光導電電極である底面層;
多孔質捕捉層;
上面層と多孔質捕捉層との間に配置される分離層;
分離層と多孔質捕捉層との間に配置される絞り層であって、該絞り層は不浸透性領域および少なくとも1個の上面層開口部に対し同心の少なくとも1個の開口部を包含する;ならびに
絞り層中の環状溶接継目であって、該環状溶接継目は少なくとも1個の絞り層開口部の周囲を取り囲む
を含んでなる濃縮器。
【請求項29】
(a)ウェルを形成する少なくとも1個の開口部を包含する上面層、捕捉層、および上面層と捕捉層との間に配置される少なくとも1個の分離層を含んでなる濃縮器を提供すること;
(b)複数の被検体を包含するサンプルを濃縮器に入れること;
(c)捕捉層中に捕捉領域を形成すること;
(d)被検体の少なくとも1種を捕捉領域中で濃縮すること;
(e)分離層を濃縮器から取り除くこと;
(f)MALDIマトリックスを捕捉層に適用すること;
(g)濃縮器をMALDI質量分析計の分析プレートに取付けること;ならびに
(h)捕捉領域中の被検体を質量分析法により分析すること
を含んでなる、質量分析法による被検体の測定方法。
【請求項30】
捕捉層が質量分析計により読み取り可能であるマーカー位置を包含し、かつ、捕捉領域がマーカー位置からある既知の距離にある、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
濃縮器が、室と整列させた光還元(photoreduction)領域をもつ電極層を包含し、少なくとも1種の被検体が、対極を濃縮器内でサンプルと電気連絡に置くこと;電極層と対極との間に電流を適用すること;および光還元領域を通して光源を向ける(direct)ことにより集束光源で捕捉領域を照射することにより捕捉領域中で濃縮される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
濃縮器が磁性部分を包含し、かつ、MALDI質量分析計の分析プレートが磁性部分を包含し、また、濃縮器がプレートに磁気的に取付けられる、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
サンプルが、少なくとも1個のウェル中にサンプルを入れることにより濃縮器中に配置される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
捕捉層が、少なくとも1個の分離層を濃縮器から取り除いた後に乾燥される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
MALDIマトリックスが捕捉層にのみ適用される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
集束電場により1個以上の予め決められた別個の位置で捕捉される被検体を有する多孔質捕捉膜であって、かつ、多孔質捕捉膜がMALDI質量分析計のサンプルプレートに嵌合するように適合される、上記膜。
【請求項37】
MALDIマトリックス物質が各別個の位置に適用されて、被検体と一緒になって1種、若しくはそれ以上のMALDIマトリックス結晶を形成する、請求項36に記載の膜。
【請求項38】
(a)サンプルが少なくとも1個の分離層と接触するように電解液を含有するサンプルを保持するための1個以上の室;
(b)上記少なくとも1個の分離層の下の多孔質捕捉膜;
(c)室と整列させた光還元領域をもつ電極層;
(d)室内でサンプルと電気連絡にある電極;
(e)光還元領域を照射しかつサンプル中の被検体を捕捉膜上の予め決められた別個の位置に集束させる光源
を含んでなる、請求項36に記載の多孔質捕捉膜の製造のための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17a】
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【図18】
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【図18a】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図23a】
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【図24】
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【図25】
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【図25a】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【図36D】
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【公表番号】特表2007−508552(P2007−508552A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534450(P2006−534450)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033471
【国際公開番号】WO2005/036132
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506121456)プロテイン・デイスカバリー・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】