説明

マリンホース

【課題】油の漏洩検知を精度良く行うことのできるマリンホースを提供する。
【解決手段】第1耐圧補強層12の径方向外側にバッファー層13が設けられているので、内面ゴム層11及び第1耐圧補強層12が破損して原油が第1耐圧補強層12の外側に流出する場合、その原油がバッファー層13によって吸収される。また、4本の導線CL1,CL2,CL3,CL4がそれぞれバッファー層13に接触するように設けられ、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部には周知の交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、第1導線CL1及び第3導線CL3に交流電圧が印加され、検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差または抵抗値が検出されるようになっている。このため、バッファー層13に原油が吸収されるとバッファー層13の導電率が変化し、前記検出される電位差または抵抗値に変化があらわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原油等の油を海中のパイプライン施設から海上のタンカーに輸送したり、タンカーから陸上のタンクに輸送するための液体輸送用のマリンホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のマリンホースとして、耐油性を有する円筒状の内面ゴム層と、内面ゴム層の径方向外側に設けられた円筒状の主補強層と、主補強層の径方向外側に設けられ、スポンジ状部材から成るとともに円筒状に形成され、主補強層の外側に流出した油の漏洩を防止する油吸収層と、油吸収層の径方向外側に設けられた円筒状の補助補強層と、主補強層の外周面に貼付けられた導線とを備え、導線の破断に基づいて主補強層からの油の漏洩を検知するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記マリンホースでは、主補強層が大きく破損して油が漏洩する場合は、前記導線が破断して油の漏洩を検知することができるが、例えば主補強層の破損が微小で主補強層から油が少量ずつ長期に亘って流出する場合は、導線が破断せずに油の漏洩を検知できない場合があるという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油の漏洩検知を精度良く行うことのできるマリンホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、少なくとも1層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを備え、所定の油を輸送するマリンホースにおいて、前記ホース本体内における前記耐圧補強層よりも径方向外側に設けられ、前記所定の油を吸収可能な油吸収層と、それぞれ油吸収層に接触するように設けられるとともに互いに接触しないようにホース本体内に設けられた4本以上の導電性部材とを備え、前記4本以上の導電性部材のうち2本に一対の電極のそれぞれが接続された交流電源と、交流電源の電極が接続されていない導電性部材のうち2本の導電性部材の間の電位差または抵抗値を検出可能な検出装置とを備えている。
【0007】
これにより、耐圧補強層よりも径方向外側に油吸収層が設けられているので、耐圧補強層が破損して油が耐圧補強層の外側に流出する場合、その油が油吸収層によって吸収される。また、4本以上の導電性部材がそれぞれ油吸収層に接触するように設けられ、各導電性部材のうち2本に交流電圧が印加され、交流電源の電極が接続されていない導電性部材のうち2本の導電性部材間の電位差または抵抗値が検出されることから、油吸収層に油が吸収されると油吸収層の導電率が変化し、前記検出される電位差または抵抗値に変化があらわれる。
【0008】
また、本発明は、少なくとも1層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを備え、所定の油を輸送するマリンホースにおいて、前記ホース本体内における前記耐圧補強層よりも径方向外側に設けられた平面状または曲面状の第1導電性シートと、第1導電性シートに接触するとともに第1導電性シートよりも径方向外側に設けられ、前記所定の油を吸収可能な油吸収層と、油吸収層に接触するとともに第1導電性シートに接触しないように油吸収層よりも径方向外側に設けられた平面状または曲面状の第2導電性シートと、各導電性シートに一対の電極のそれぞれが接続された交流電源と、各導電性シートの間の静電容量または電位差を検出可能な検出装置とを備えている。
【0009】
これにより、耐圧補強層よりも径方向外側に油吸収層が設けられているので、耐圧補強層が破損して油が耐圧補強層の外側に流出する場合、その油が油吸収層によって吸収される。また、第1導電性シート及び第2導電性シートは油吸収層に接触し、各導電性シートに交流電圧が印加され、各導電性シート間の静電容量または電位差が検出されることから、油吸収層に油が吸収されると油吸収層の比誘電率が変化し、前記検出される静電容量または電位差に変化があらわれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐圧補強層が破損して油が耐圧補強層の外側に流出すると、前記検出される電位差または抵抗値に変化があらわれるか、前記検出される静電容量または電位差に変化があらわれるので、例えば耐圧補強層の破損が微小で耐圧補強層から油が少量ずつ長期に亘って流出する場合でも、その油の流出を検知することが可能であり、油の漏洩検知を精度良く行う上で極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態のマリンホースの構造を示す図
【図2】マリンホースの要部断面図
【図3】各導線、交流電源及び検出装置の接続を模式的にあらわす図
【図4】実験用模型の正面図
【図5】実験結果を示すグラフ
【図6】実験結果を示すグラフ
【図7】各導線、交流電源及び検出装置の接続を模式的にあらわす図
【図8】実験結果を示すグラフ
【図9】実験結果を示すグラフ
【図10】本発明の第2実施形態のマリンホースの構造を示す図
【図11】各導電性シート、交流電源及び検出装置の接続を模式的にあらわす図
【図12】実験用模型の正面図
【図13】実験結果を示すグラフ
【図14】実験結果を示すグラフ
【図15】第1実施形態の変形例を示すマリンホースの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態を図1乃至図9を参照しながら説明する。
【0013】
このマリンホースは、ホース本体10と、ホース本体10の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具20とを備えている。このマリンホースは例えば海上に停泊しているタンカーと陸上のタンクとを接続し、タンカーから陸上のタンクに原油を給送するために用いられる。
【0014】
ホース本体10は、原油に対する耐油性を有する円筒状の内面ゴム層11と、内面ゴム層11の径方向外側に配置された円筒状の第1耐圧補強層12と、第1耐圧補強層12の径方向外側に配置された油吸収層としての円筒状のバッファー層13と、バッファー層13の径方向外側に配置された円筒状の第2耐圧補強層14と、第2耐圧補強層14の径方向外側に配置された浮力材層15と、内面ゴム層11、第1耐圧補強層12、バッファー層13、第2耐圧補強層14及び浮力材層15を覆うように形成されたカバーゴム層16とを備えている(図2参照)。
【0015】
内面ゴム層11はアクリロニトリルブタジエンゴム等の周知の耐油性ゴムから成り、ホース本体10の最も径方向内側に設けられている。即ち、ホース本体10の内側ゴム層11の中を原油が流通するようになっている。
【0016】
第1耐圧補強層12は例えば第1カーカス12aと第2カーカス12bとを有する。各カーカス12a,12bはナイロンコード、ポリエステルコード、金属コード等によって補強されたゴム層であり、マリンホースに用いられる周知の構造を有するものである。
【0017】
バッファー層13は発泡ウレタンまたは発泡ゴム等のシート状の樹脂またはゴム製のスポンジを円筒状に形成してなり、第1耐圧補強層12がバーストした際の衝撃で第2耐圧補強層14が破損しないように緩衝材として設けられている。また、バッファー層13はその気泡部分等によって原油を吸収可能に構成されている。尚、スポンジにはカーボン粉末が塗布または練り込まれているので、このスポンジは導電性を備えている。
【0018】
第2耐圧補強層14はナイロンコード、ポリエステルコード、金属コード等によって補強されたゴム層(カーカス)から成り、マリンホースに用いられる周知の構造を有するものである。
【0019】
浮力材層15は天然ゴム等から成る発泡ゴムまたはポリエチレン等から成る発泡樹脂等、ゴムまたは樹脂製のスポンジから成り、マリンホースを海上に浮かせるために設けられている。
【0020】
カバーゴム層16はスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム等から成る。
【0021】
尚、内面ゴム層11、第1耐圧補強層12、バッファー層13、第2耐圧補強層14、浮力材層15及びカバーゴム層16を有するマリンホースは一般的であり、必要に応じて浮力材層15を省いた構成にすることも可能であり、その他の構成を追加することも可能である。
【0022】
各連結金具20は金属材料から成り、他のマリンホースの連結金具20と着脱自在に接続されるようになっている。
【0023】
ホース本体10のバッファー層13の外周面には4本の導電性部材としての第1導線CL1,第2導線CL2,第3導線CL3,第4導線CL4がそれぞれ螺旋状に巻付けられている。各導線CL1,CL2,CL3,CL4は互いに接触しないように巻付けられるとともに、ホース本体10の軸方向に第1導線CL1、第2導線CL2、第3導線CL3、第4導線CL4の順に略等間隔で並ぶように巻付けられている(図1参照)。各導線CL1,CL2,CL3,CL4は例えば錫メッキ線から成る。
【0024】
また、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部には周知の交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、交流電源30は第1導線CL1及び第3導線CL3に例えば実効値1Vで1kHzの正弦波の交流電圧を印加するようになっている。また、第2導線CL2及び第4導線CL4の端部は周知のロックインアンプを用いた検出装置40に接続されており、検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差または抵抗値が検出されるようになっている。
【0025】
このように、本実施形態によれば、第1耐圧補強層12の径方向外側にバッファー層13が設けられているので、内面ゴム層11及び第1耐圧補強層12が破損して原油が第1耐圧補強層12の外側に流出する場合、その原油がバッファー層13によって吸収される。
【0026】
また、4本の導線CL1,CL2,CL3,CL4がそれぞれバッファー層13に接触するように設けられ、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部には周知の交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、第1導線CL1及び第3導線CL3に交流電圧が印加され、検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差または抵抗値が検出されるようになっている。ここで、各導線CL1,CL2,CL3,CL4、交流電源30及び検出装置40の接続を模式的にあらわすと図3のようになる。図3における各抵抗Rは各導線CL1,CL2,CL3,CL4の間に配置されているバッファー層13である。即ち、バッファー層13に原油が吸収されるとバッファー層13の導電率が変化し、前記検出される電位差または抵抗値に変化があらわれる。従って、例えば第1耐圧補強層12の破損が微小で第1耐圧補強層から原油が少量ずつ長期に亘って流出する場合でも、その原油の流出を検知することが可能であり、原油の漏洩検知を精度良く行う上で極めて有利である。
【0027】
出願人は図4に示す模型を作製し、この模型を用いて原油流出の検知可否を実験した。図4の模型は、ポリ塩化ビニルから成る外径165mm長さ1mの円筒状の模型本体51と、模型本体51の径方向外側に巻付けられた円筒状のゴム層52と、ゴム層52の径方向外側に巻付けられた樹脂製スポンジ層53と、樹脂製スポンジ層53の外周面にそれぞれ螺旋状に巻付けられた4本の導線CL1,CL2,CL3,CL4と、各導線CL1,CL2,CL3,CL4が巻付けられた樹脂製スポンジ層53とゴム層52を覆うポリエチレン製の被覆層54とを備え、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部には前記交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、前記検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差及び抵抗値が検出されるようになっている。また、樹脂製スポンジ層53は前記バッファー層13と同一のスポンジ材から成る。
【0028】
実験では、この模型の樹脂製スポンジ層53に徐々に原油を含浸させていき、含浸させた原油の量と電位差の検出結果との関係を求めた(図5参照)。図5では、含浸させた原油の量が増加するにつれて電位差及び抵抗値が減少し、実験を行った範囲で電位差及び抵抗値の変化率は最大で40%程度となった(図6参照)。
【0029】
尚、本実施形態では、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部に交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差または抵抗値が検出されるようになっているものを示した。即ち、本実施形態では、交流電源30が接続された導線CL1,CL3が隣接しておらず、検出装置40によって電位差または抵抗値が検出される導線CL2,CL4も隣接していない。これに対し、第1導線CL1及び第4導線CL4の端部に交流電源30の一対の電極をそれぞれ接続し、検出装置40によって第2導線CL2と第3導線CL3との間の電位差または抵抗値を検出することも可能である。この場合、交流電源30が接続された導線CL1,CL4が隣接し、検出装置40によって電位差または抵抗値が検出される導線CL2,CL3も隣接している。この場合の交流電源30及び検出装置40の接続を模式的にあらわすと図7のようになる。
【0030】
この場合の原油流出の検知可否を図4の模型を用いて実験すると図8及び図9のようになる。即ち、含浸させた原油の量が増加するにつれて電位差及び抵抗値が増大し、実験を行った範囲で電位差及び抵抗値の変化率は最大で20%程度となった。
【0031】
即ち、第1導線CL1及び第4導線CL4の端部に交流電源30の一対の電極をそれぞれ接続し、検出装置40によって第2導線CL2と第3導線CL3との間の電位差または抵抗値を検出する場合でも、前述と同様の作用効果を達成することができる。但し、第1導線CL1及び第3導線CL3の端部に交流電源30の一対の電極をそれぞれ接続し、検出装置40によって第2導線CL2と第4導線CL4との間の電位差または抵抗値を検出する方が、図6に示すように電位差や抵抗値の変化率が大きいので、検知精度を向上する上で好ましい。
【0032】
尚、本実施形態では、4本の導線CL1,CL2,CL3,CL4をバッファー層13の外周面に螺旋状に巻付けるものを示した。これに対し、5本以上の導線をバッファー層13の外周面に互いに接触しないように螺旋状に巻付けるとともに、各導線のうち2本に交流電源30の一対の電極のそれぞれが接続され、検出装置40が交流電源30の電極が接続されていない導線のうち2本の導線の間の電位差または抵抗値を検出するように設けられていれば、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0033】
また、本実施形態では、錫メッキ線からなる導線CL1,CL2,CL3,CL4をバッファー層13の外周面に巻付けるものを示したが、他の金属材料からなる線材を導線CL1,CL2,CL3,CL4の代わりに設けることも可能であり、金属材料から成る帯状部材を導線CL1,CL2,CL3,CL4の代わりに設けることも可能であり、これらの場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0034】
尚、本実施形態では、各導線CL1,CL2,CL3,CL4をバッファー層13の外周面に螺旋状に巻付けるものを示したが、各導線CL1,CL2,CL3,CL4をバッファー層13の外周面にホース本体10の軸方向に延びるように取付けることも可能である。この場合でも各導線CL1,CL2,CL3,CL4が互いに接触しないように設けられていれば、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0035】
また、本実施形態では、各導線CL1,CL2,CL3,CL4がバッファー層の外周面に接しているものを示したが、各導線CL1,CL2,CL3,CL4の一部または全部をバッファー層13の内部や内周面に接するように設けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0036】
続いて、本発明の第2実施形態を図10乃至図14を参照しながら説明する。
【0037】
このマリンホースは、第1実施形態のバッファー層13の径方向内側に第1導電性シート17を設けるとともにバッファー層13の径方向外側に第2導電性シート18を設け、各導線CL1,CL2,CL3,CL4を省いた構成を有する。
【0038】
第1導電性シート17は例えばステンレス等の金属網を円筒状に形成したものであり、バッファー層13の内周面に接触している。また、第2導電性シート18は例えばステンレス等の金属網を円筒状に形成したものであり、バッファー層13の外周面に接触している。各導電性シート17,18には交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、検出装置40によって第1導電性シート17と第2導電性シート18との間の電位差または静電容量が検出されるようになっている。この場合の各導電性シート17,18、交流電源30及び検出装置40の接続を模式的にあらわすと図11のようになる。図11に示すように、例えば交流電源30の一方の電極と第1導電性シート17との間に所定の抵抗値を有する抵抗rが設けられている。また、各導電性シート17,18とバッファー層13によってコンデンサが形成される。即ち、バッファー層13に原油が吸収されるとバッファー層13の比誘電率が変化し、前記検出される電位差または静電容量に変化があらわれる。従って、例えば第1耐圧補強層12の破損が微小で第1耐圧補強層12から原油が少量ずつ長期に亘って流出する場合でも、その原油の流出を検知することが可能であり、原油の漏洩検知を精度良く行う上で極めて有利である。
【0039】
出願人は図12に示す模型を作製し、この模型を用いて原油流出の検出可否を実験した。図12の模型は図4の模型において4本の導線CL1,CL2,CL3,CL4の代わりに第1導電性シート55及び第2導電性シート56とを設けたものであり、第1導電性シート55は樹脂製スポンジ層53の径方向内側に設けられるとともに、ステンレス等の金属網を円筒状に形成して成り、第2導電性シート56は樹脂製スポンジ層53の径方向外側に設けられるとともに、ステンレス等の金属網を円筒状に形成して成る。また、各導電性シート55,56には前記交流電源30の一対の電極がそれぞれ接続され、前記検出装置40によって第1導電性シート55と第2導電性シート56との間の電位差または静電容量が検出されるようになっている。
【0040】
実験では、この模型の樹脂製スポンジ層53に徐々に原油を含浸させていき、含浸させた原油の量と電位差の検出結果との関係を求めた(図13参照)。図13では、含浸させた原油の量が増加するにつれて電位差が減少し、実験を行った
範囲で電位差の変化率は最大で7%程度となった(図14参照)。また、検出装置40は検出した電位差から静電容量の変化を求めるようになっている。
【0041】
尚、第2実施形態では、各導電性シート17,18を金属網から形成したものを示したが、複数の貫通孔が設けられた金属薄板から形成することも可能である。
【0042】
また、第2実施形態では、各導電性シート17,18及びバッファー層13を円筒状に形成したものを示したが、各導電性シート17,18及びバッファー層13を平面状に形成してホース本体10の周方向の一部に設けることも可能であり、軸方向の一部にだけ設けることも可能である。
【0043】
尚、第1及び第2実施形態では、導線や導電性シートをスポンジから成るバッファー層13に接触させるものを示した。これに対し、スポンジの代わりに原油を吸収可能な周知の布材や粒状部材を設けることも可能である。この場合でも、検出装置40が交流電源30の印加電圧に基づく電位差を検出可能であれば、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0044】
また、第1及び第2実施形態では、第1耐圧補強層12及び第2耐圧補強層14を有するダブルカーカス構造のマリンホースを示したが、図15に示すように第2耐圧補強層14を設けないシングルカーカス構造の場合でも、第1耐圧補強層12の径方向外側にバッファー層13を設けるとともに、例えばバッファー層13の外周面に各導線CL1,CL2,CL3,CL4を巻付けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。さらに、バッファー層13も設けずに、各導線CL1,CL2,CL3,CL4を浮力材層15に接触するように設けることも可能であり、この場合でも、検出装置40が交流電源30の印加電圧に基づく電位差を検出可能であれば、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0045】
尚、本実施形態では、ロックインアンプを用いた検出装置40を設けたものを示したが、電位差、抵抗値または静電容量を検出可能な周知の機器を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…ホース本体、11…内面ゴム層、12…第1耐圧補強層、13…バッファー層、14…第2耐圧補強層、15…浮力材層、16、カバーゴム層、17…第1導電性シート、18…第2導電性シート、20…連結金具、30…交流電源、40…検出装置、51…模型本体、52…ゴム層、53…樹脂製スポンジ層、54…被覆層、55…第1導電性シート、56…第2導電性シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを備え、所定の油を輸送するマリンホースにおいて、
前記ホース本体内における前記耐圧補強層よりも径方向外側に設けられ、前記所定の油を吸収可能な油吸収層と、
それぞれ油吸収層に接触するように設けられるとともに互いに接触しないようにホース本体内に設けられた4本以上の導電性部材とを備え、
前記4本以上の導電性部材のうち2本に一対の電極のそれぞれが接続された交流電源と、
交流電源の電極が接続されていない導電性部材のうち2本の導電性部材の間の電位差または抵抗値を検出可能な検出装置とを備えた
ことを特徴とするマリンホース。
【請求項2】
前記交流電源が接続された2本の導電性部材が互いに隣接せず、検出装置によって互いに隣接していない2本の導電性部材の間の電位差または抵抗値が検出されるように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のマリンホース。
【請求項3】
前記交流電源が接続された2本の導線性部材が互いに隣接し、検出装置によって互いに隣接している2本の導電性部材の間の電位差または抵抗値が検出されるように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のマリンホース。
【請求項4】
少なくとも1層の耐圧補強層が設けられたホース本体と、ホース本体の軸方向の両端にそれぞれ設けられた連結金具とを備え、所定の油を輸送するマリンホースにおいて、
前記ホース本体内における前記耐圧補強層よりも径方向外側に設けられた平面状または曲面状の第1導電性シートと、
第1導電性シートに接触するとともに第1導電性シートよりも径方向外側に設けられ、前記所定の油を吸収可能な油吸収層と、
油吸収層に接触するとともに第1導電性シートに接触しないように油吸収層よりも径方向外側に設けられた平面状または曲面状の第2導電性シートと、
各導電性シートに一対の電極のそれぞれが接続された交流電源と、
各導電性シートの間の静電容量または電位差を検出可能な検出装置とを備えた
ことを特徴とするマリンホース。
【請求項5】
前記油吸収層がカーボン粉末が塗布または練り込まれたスポンジから成る
ことを特徴とする請求項1、2、3または4の何れかに記載のマリンホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−27216(P2011−27216A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175327(P2009−175327)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】