説明

マーク認識装置

【課題】アライメントマークを複数のマークの集合体から構成した場合にも、アライメントマークの正確な基準点を算出することができる、マーク認識装置を提供する。
【解決手段】アライメントマークが形成された基板を撮像し、撮像画像を取得する。次に、テンプレートマッチングにより撮像画像から個々のマークを検出する。次に、投票空間を利用して投票により仮重心の位置を決定する。次に、仮重心の決定に寄与した検出マークMを抽出する。次に、検出マーク群の各マークに対応するモデルのマークを抽出する。次に、検出マーク群の重心と抽出したモデルマーク群の重心とを一致させる。次に、最小二乗法によりモデルマーク群の回転角度t及び拡縮係数kの最適値を算出する。次に、姿勢を調整した後のモデルマーク群の重心Gの位置座標を「真の重心」の位置座標として算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーク認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板に所定の配線パターンを描画する装置として、フォトリソグラフィー技術を利用した露光装置が種々提案されている。上記のような露光装置としては、例えば、フォトレジストが塗布された基板上に光ビームを主走査および副走査方向に走査させると共に、その光ビームを、配線パターンを表す画像データに基づいて変調することにより配線パターンを描画するデジタル露光装置が提案されている。
【0003】
デジタル露光装置により描画されるプリント配線板の配線パターンは、益々高精細化が進む傾向にある。配線パターンは基板に対して予め設定された位置に描画される。しかしながら、多層プリント配線板を形成するような場合には、予め設定された位置に各層の配線パターンを描画したのでは、各層の配線パターンの描画位置ずれが生じる虞がある。このため、各層の配線パターンの位置合わせ(アライメント)を高精度に行う必要がある。
【0004】
デジタル露光装置に限らずアナログ露光装置にいても、高精度なアライメントは必要である。アライメントを高精度に行うために、設計値に基づいて各層の基板にアライメントマークを設け、描画露光の際にこのアライメントマークの位置を検出し、検出された位置情報(読取値)と設計値とに基づいて補正量を求め、得られた補正量に応じて配線パターンの描画位置を補正する露光装置が種々提案されている。
【0005】
アライメントマークとしては、スルーホール等の「貫通孔」とレーザビア等の「非貫通孔(描画面に開口した有底孔)」とがある。スルーホールは、ドリルによる穴開け等、基板が機械的に穿孔されて形成される。一方、レーザビアは、レーザ加工による穴開け等により形成されるので、その直径を100μm〜200μm程度まで小さくすることができる。しかしながら、アライメントマークが小さくなるほど、ノイズの影響を受け易くなり、検出精度が低下する。即ち、安定に検出することが困難となる。
【0006】
特許文献1には、アライメントマークを複数のマークの集合体として構成するものが提案されている。このようにアライメントマークを複数のマークの集合体から構成することで、アライメントマークの一部が欠損していても全体に与える影響は少なくなるため、精度の高いアライメントが行える効果を有する構成としている。
【0007】
また、特許文献2には、基板に形成するアライメントマークを、貫通孔と貫通孔より小さい複数の非貫通孔とで構成するものが提案されている。このように2種類のアライメントマークを用いることで、欠損や形成位置ずれ等の貫通孔及び非貫通孔の構成による影響が、アライメントに直接的に反映されない構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−22098号公報
【特許文献2】特開2003−57853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、アライメントマークを複数のマークの集合体から構成することで、一部に欠損があっても全体に与える影響は少なくなるとしている。しかしながら、一部のマークが欠落することで、或いはノイズがマークとして誤認識されることで、アライメントマークの検出された基準点(中心点や重心)が、真の基準点からずれるという問題は依然として解決されていない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、アライメントマークを複数のマークの集合体から構成した場合にも、アライメントマークの正確な基準点を算出することができる、マーク認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のマーク認識装置に係る発明は、設計情報に基づいて対象物に付された複数のマークから所定数以上のマークの位置を各々検出する検出手段と、前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークの位置に基づいて、前記所定数以上のマークからなる集合体の仮重心位置を推定する推定手段と、前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークから前記仮重心位置の推定に寄与したマークを検出マーク群として抽出する第1の抽出手段と、前記設計情報に基づいた複数のマークから前記第1の抽出手段で抽出された検出マーク群のマークの各々に対応するマークをアライメントマーク群として抽出する第2の抽出手段と、前記アライメントマーク群のマークの各々を前記検出マーク群のマークの各々に最も一致するように前記アライメントマーク群のマークの位置の各々を変更させたマーク群から、前記検出マーク群のマークの各々によって定まる基準点を算出する基準位置算出手段と、を含んで構成されてことを特徴とする。
【0012】
上記のマーク認識装置において、前記基準位置算出手段を、前記アライメントマーク群のマークの各々を前記検出マーク群のマークの各々に最も一致させるための回転角度及び拡縮倍率を最小二乗法により算出する第1の算出手段と、前記アライメントマーク群のマークの位置を前記第1の算出手段で算出された回転角度及び拡縮倍率で変更させたマーク群から前記検出マーク群のマークの各々によって定まる基準点を算出する第2の算出手段と、を含んで構成してもよい。
【0013】
上記のマーク認識装置において、前記推定手段は、予め定められた領域を複数に分割して形成された複数の投票空間を用い、前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークの位置に基づいて、前記所定数以上のマークからなる集合体の重心が存在すると仮定される投票領域に投票し、投票数が最も多い投票空間の位置を、前記所定数以上のマークからなる集合体の仮重心位置が存在する位置として推定してもよい。
【0014】
上記のマーク認識装置において、前記推定手段は、前記投票数が最も多い投票空間が複数ある場合には、前記マークの位置と重ならない投票空間の位置を、前記仮重心位置が存在する位置として推定してもよい。
【0015】
上記のマーク認識装置において、前記推定手段は、前記投票数が最も多い投票空間が複数ある場合には、前記仮重心位置が存在する位置は推定不能としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るマーク認識装置によれば、アライメントマークを複数のマークの集合体から構成した場合にも、アライメントマークの正確な基準点を算出することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】露光装置のスキャナの構成を示す斜視図である。
【図3】(A)は基板の露光面上に形成される露光済み領域を示す平面図であり、(B)は各露光ヘッドによる露光エリアの配列を示す平面図である。
【図4】露光装置の電気制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】(A)は基板に設けられるアライメントマークを説明するための平面図であり、(B)は(A)の点線に沿った断面図であり、(C)及び(D)はアライメントマークの変形例の一例を示す図である。
【図6】描画領域の描画位置が補正されて画像データが補正される様子を示す図である。
【図7】複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークの変形例である。
【図8】複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークの変形例である。
【図9】正規化相関テンプレートマッチングの様子を示す図である。
【図10】(A)〜(C)は投票空間を利用した仮重心決定の方法を説明する模式図である。
【図11】(A)及び(B)はマークが存在する投票空間の周囲の投票空間の得票数を示す図である。
【図12】(A)及び(B)は集合マークのモデルを示す模式図である。
【図13】集合マークの一部のマークが検出されない場合の表示画面を示す図である。
【図14】(A)〜(D)は「真の重心」を求める工程を説明する模式図である。
【図15】マーク認識処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図16】(A)及び(B)は一部のマークが欠落した格子状集合マークを示す図である。
【図17】(A)及び(B)は大幅なマークの欠落が生じた場合の撮像画像及び投票結果を示す図である。
【図18】(A)及び(B)は大幅なマークの欠落が生じた場合の撮像画像及び条件付での投票結果を示す図である。
【図19】(A)〜(C)は大幅なマークの欠落が生じた場合の撮像画像、条件付での投票結果、及び無条件での投票結果を示す図である。
【図20】円周状集合マークに適用する最小二乗法に用いるパラメータを説明するための図である。
【図21】検出マーク群の重心を原点とする座標系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の一例を説明する。この実施の形態では、本発明に係るマーク認識装置を備えた露光装置の例を説明する。
【0019】
<露光装置の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る露光装置の概略構成を示す斜視図である。この露光装置は、複数の配線パターン等の画像を1枚の基板上に描画露光する装置であって、多層プリント配線板等の多層基板の各層の配線パターンを描画露光する装置である。なお、本実施の形態では、単層の基板を対象とすることもできる。また、基板は、表示装置用のフィルタや半導体等の各種構造体であってもよい。
【0020】
露光装置10は、図1に示すように、基板12を表面に吸着して保持する平板状の移動ステージ14を備えている。そして、4本の脚部16に支持された厚い板状の設置台18の上面には、ステージ移動方向に沿って延びた2本のガイド20が設置されている。移動ステージ14は、その長手方向がステージ移動方向を向くように配置されると共に、ガイド20によって往復移動可能に支持されている。
【0021】
設置台18の中央部には、移動ステージ14の移動経路を跨ぐようにコの字状のゲート22が設けられている。コの字状のゲート22の端部の各々は、設置台18の両側面に固定されている。このゲート22を挟んで一方の側にはスキャナ24が設けられ、他方の側には複数のカメラ26が設けられている。これら複数のカメラ26は、基板12の先端および後端と、基板12に設けられた複数のアライメントマーク(図1では図示せず)とを検出する。この例では、3台のカメラ26が設けられている。なお、アライメントマークについては後述する。
【0022】
スキャナ24およびカメラ26はゲート22に各々取り付けられて、移動ステージ14の移動経路の上方に固定配置されている。なお、スキャナ24およびカメラ26は、これらを制御する後述するコントローラに接続されている。図2は露光装置のスキャナの構成を示す斜視図である。また、図3(A)は基板の露光面上に形成される露光済み領域を示す平面図であり、図3(B)は各露光ヘッドによる露光エリアの配列を示す平面図である。スキャナ24は、図2及び図3(B)に示すように、2行5列の略マトリックス状に配列された10個の露光ヘッド30(30A〜30J)を備えている。
【0023】
各露光ヘッド30の内部には、入射された光ビームを空間変調する空間光変調素子(SLM)であるミラーデバイス(図示せず)が設けられている。本実施の形態では、ミラーデバイスとして、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD:登録商標)に代表される反射型の空間光変調素子を用いている。なお、DMD(登録商標)以外の他のSLMを採用することも可能である。
【0024】
ミラーデバイスは、その画素列方向が走査方向と所定の傾斜角度θをなすように取り付けられている。したがって、各露光ヘッド30による露光エリア32は、図3(A)及び(B)に示すように、走査方向に対して傾斜角θで傾斜した矩形状のエリアとなる。移動ステージ14の移動に伴い、基板12には露光ヘッド30ごとに帯状の露光済み領域34が形成される。
【0025】
露光ヘッド30の各々に設けられたミラーデバイスは、マイクロミラー単位でオン/オフ制御され、基板12には、ミラーデバイスのマイクロミラーに対応したドットパターン(黒/白)が露光される。露光エリア32は、2次元配列されたドットによって形成される。二次元配列のドットパターンは、走査方向に対して傾斜されていることで、走査方向に並ぶドットが、走査方向と交差する方向に並ぶドット間を通過するようになっており、高解像度化を図ることができる。
【0026】
<露光装置の電気的構成>
次に、本実施の形態に係る露光装置の電気的構成について説明する。
図4は露光装置の電気制御系の構成を示すブロック図である。
露光装置10は、図4に示すように、CAM(Computer Aided Manufacturing)ステーションを有するデータ作成装置40から出力された、露光対象の配線パターンを表わすベクトルデータを受け付け、このベクトルデータをラスターデータ(ビットマップデータ)に変換するラスター変換処理部50、基板12上に設けられたアライメントマークの「設定位置情報」等が記憶される基準位置記憶手段52、カメラ26により検出されたアライメントマークの位置を示す「検出位置情報」等に基づいて描画位置を補正する描画位置補正手段54、描画位置補正手段54により補正された描画位置に基づいて配線パターン(描画領域)のラスターデータを補正して補正済画像データを生成する画像データ補正手段56、画像データ補正手段56により変換された補正済画像データに基づいて露光ヘッド30を駆動制御する描画制御部58、移動ステージ14を駆動制御するステージ制御部60、及び本露光装置全体を制御するコントローラ70を備えている。
【0027】
本実施の形態では、主に、複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークの正確な基準点を算出するマーク認識手法について説明する。描画位置補正手段54は、集合体から構成されたアライメントマークの位置を検出するマーク認識装置55を含んで構成されている。マーク認識装置55は、カメラ26により撮像された撮像画像から各マークを検出して、アライメントマークの基準点の位置を示す「検出位置情報」を取得する。また、後述する通り、本実施の形態では、2種類のアライメントマークを使用する(図5参照)。従って、基準位置記憶手段52には、2種類のアライメントマークに関する設定位置情報が記憶されている。
【0028】
基準位置記憶手段52には、標準的な基板12におけるアライメントマークの位置を表す「マーク位置情報」が予め記憶されている。マーク位置情報は設計値であり、基板12にアライメントマークを設ける際に予め定められた値である。マーク位置情報としては、アライメントマークの重心位置の座標値、アライメントマークと周辺との境界を表す特徴点の座標値(例えば、アライメントマークが三角形の場合は各頂点の座標値)、アライメントマークを代表する代表点の座標値(例えば、アライメントマークが十字の場合は交点の座標値)など、種々の値を用いることができる。本実施の形態では、一例として、マーク位置情報が、アライメントマークの重心位置の座標値を表す場合について説明する。
【0029】
また、基準位置記憶手段52には、テンプレートマッチング等のパターン認識手法によりマークを検出するために、アライメントマークの形状を表わす「マーク形状情報」が予め記憶されている。アライメントマークが複数のマークの集合体から構成される場合には、各マークの形状を表わす「マーク形状情報」が予め記憶されている。マーク形状情報は、例えば、テンプレートマッチングに使用するマークの画像情報等である。
【0030】
その他、基準位置記憶手段52には、配線パターンが形成される描画領域を設定するための「描画位置情報」、ずれ量の上限値を定めるしきい値情報として「許容誤差閾値情報」等が、予め記憶されている。ここで「ずれ量」とは、アライメントマークの設定位置を補正して得られる補正後位置の検出位置からのずれ量(誤差)である。各マークの補正後の位置が検出位置に完全に重なる確率は低く、各マークの補正後の位置は検出位置から各々ずれる。アライメントマークの設定位置を補正するための「補正量」は、上記の「設定位置情報」及び「検出位置情報」に基づいて算出される。
【0031】
ここで「補正量」とは、例えば、X方向シフト補正量「ΔX」、Y方向シフト補正量「ΔY」、回転補正量「θ」、X方向のスケール比補正量「Δk」、 及びY方向のスケール比補正量「Δk」等の各種の補正パラメータである。これらの補正パラメータは、従来公知の方法により求めることができる。なお、補正パラメータは、補正方法に応じて適宜選択される。
【0032】
なお、マーク位置情報、マーク形状情報、描画位置情報及び許容誤差閾値情報の各々は、ユーザにより設定可能である。例えば、マーク位置情報、マーク形状情報及び描画位置情報は、標準的な基板12をカメラ26により撮影した撮像画像から取得して設定するようにしてもよい。許容誤差閾値情報は、所定の補正量を用いて補正した場合の歩留り率など、実際に蓄積されたデータから取得して設定するようにしてもよい。
【0033】
<アライメントマーク>
ここで、アライメントマークについて説明する。図5(A)は基板に設けられるアライメントマークを説明するための平面図である。図5(B)は図5(A)の点線に沿った断面図である。図5(C)はアライメントマークの一例を示す図である。
【0034】
図5(A)に示すように、本実施の形態では、平面視が矩形状の基板12を用いている。矩形状の基板12の4つの頂点をB1〜B4とする。基板12の表面の一点鎖線で囲まれた平面視が矩形状の描画領域24Aに、配線パターンが形成される。描画領域の描画位置を特定するために、予め設定されたアライメントマークのマーク位置情報及びマーク形状情報に基づいて、基板12には複数のアライメントマークが設けられている。
【0035】
矩形状の基板12の4隅の各々には、平面視が円形の孔である第1アライメントマークDM1〜DM4が設けられている。基板12には合計4個の第1アライメントマークDM1〜DM4が設けられている。なお、第1アライメントマークDM1〜DM4の各々を区別する必要がない場合には、第1アライメントマークDMと総称する。第1アライメントマークDMの中央に図示された点は、第1アライメントマークDMの重心点である。この重心点の座標値が、第1アライメントマークDMの位置を表す位置情報となる。
【0036】
また、矩形状の描画領域24Aの4隅の各々には、平面視が円形の4個のマークを正方形の各頂点に配置した、第2アライメントマークLM1〜LM4が設けられている。基板12には合計4個の第2アライメントマークLM1〜LM4が設けられている。なお、第2アライメントマークLM1〜LM4の各々を区別する必要がない場合には、第2アライメントマークLMと総称する。
【0037】
図5(C)に示すように、第2アライメントマークLMの中央に図示された点は、第2アライメントマークLMを構成する4個のマークM1〜M4の重心点Gである。マークM1〜M4の各々を区別する必要がない場合には、マークMと総称する。この重心点Gの座標値が、第2アライメントマークLMの位置を表す位置情報となる。マークMの各々は、直径が100μm〜200μm程度と非常に小さい。このため、撮像画像上のノイズがマークとして誤検出され易い。
【0038】
図5(B)に示すように、基板12が、第1の層12A上に、第2の層12Bが積層された多層基板であるとする。第1アライメントマークDMは、基板12を貫通する貫通孔であり、ドリルによる穴開け等で基板12が機械的に穿孔されて形成されている。第1アライメントマークDMは、いわゆるスルーホールである。第2アライメントマークLMは、基板12の描画面に開口した有底孔(凹部)であり、レーザ加工による穴開け等で、基板12の第1の層12Aが露出するように、第2の層12Bが穿孔されて形成されている。第2アライメントマークLMは、いわゆるレーザビアである。
【0039】
上記では、第1アライメントマークDMをドリルによる穴開け等で形成されたスルーホールとし、第2アライメントマークLMをレーザ加工による穴開け等で形成されたレーザビアとする例について説明したが、アライメントマークは上記の形態に限定される訳ではない。例えば、第1アライメントマークDM及び第2アライメントマークLMとしては、ランド、ビア、エッチングマークなどを、適宜、用いることができる。また、多層基板の場合には、パターン画像が形成される層に既に形成されている回路パターンの一部を、アライメントマークとして利用するようにしてもよい。
【0040】
また、上記では、平面視が円形の第1アライメントマークDMが設けられ、平面視が円形の4個のマークを正方形の各頂点に配置した第2アライメントマークLMが設けられる例について説明したが、一方のアライメントマークが複数のマークの集合体から構成されていればよく、アライメントマークは上記の形態に限定される訳ではない。
【0041】
図7及び図8は複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークの変形例である。以下、複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークを「集合マーク」と称する。図7(A)は格子状集合マークの例であり、図7(B)は十字状集合マークの例である。図8(A)及び(B)は円周状集合マークの例である。
【0042】
図7(A)に示す「格子状集合マーク」は、複数のマークが四角形を形成するように格子状に配置された集合マークである。この例では、25個のマークが5行5列で格子状に配置されている。この「格子状集合マーク」の場合、基準位置記憶手段52には、下記表1に示すように、「マーク形状情報」として以下の情報が設定されている。本実施の形態では、これらの「マーク形状情報」は、後述する「仮重心決定」で用いられる。
【0043】
【表1】

【0044】
図7(B)に示す「十字状集合マーク」は、複数のマークが十字形状を形成するように格子状に配置された集合マークである。この例では、20個のマークが5個のブロックに分けて配置されている。1個のブロックは4個のマークを含む2行2列の集合体であり、5個のブロックが中央とその4近傍に配置されて十字を構成するように配置されている。この「十字状集合マーク」の場合、基準位置記憶手段52には、下記表2に示すように、「マーク形状情報」として以下の情報が設定されている。
【0045】
【表2】

【0046】
図8(A)に示す「円周状集合マーク」は、複数のマークが円を形成するように円周状に配置された集合マークである。この例では、12個のマークが等間隔で同じ円周上に配置されている。この「円周状集合マーク」の場合、基準位置記憶手段52には、下記表3に示すように、「マーク形状情報」として以下の情報が設定されている。
【0047】
【表3】

【0048】
図8(B)に示す「円周状集合マーク」は、複数のマークが複数の同心円を形成するように円周状に配置された集合マークである。この例では、12個のマークが等間隔で内側の円の円周上に配置されると共に、12個のマークが等間隔で外側の円の円周上に配置されている。この「円周状集合マーク」の場合、基準位置記憶手段52には、下記表4に示すように、「マーク形状情報」として以下の情報が設定されている。
【0049】
【表4】

【0050】
<露光装置の動作>
次に、図5を参照して本実施の形態に係る露光装置の動作について説明する。
まず、データ作成装置40において、基板12に露光すべき複数の配線パターンを含む画像パターン全体を表すベクトルデータが作成される。作成されたベクトルデータはラスター変換処理部50に入力され、ラスター変換処理部50において、そのベクトルデータがラスターデータに変換されて画像データ補正手段56に入力され、画像データ補正手段56は入力されたラスターデータを一時記憶する。
【0051】
また、上記のようにしてベクトルデータがラスター変換処理部50に入力されると、露光装置10全体の動作を制御するコントローラ70がステージ制御部60に指示信号を出力し、その指示信号に応じてステージ制御部60がステージ駆動装置(図示せず)に制御信号を出力する。ステージ駆動装置(図示せず)はその制御信号に応じて移動ステージ14を図1に示す位置からガイド20に沿って一旦上流側の所定の初期位置まで移動させた後、ステージ移動方向へ所望の速度で移動させる。
【0052】
上記のように移動する移動ステージ14上の基板12が複数のカメラ26の下を通過する際、これらのカメラ26により基板12が撮影され、その撮像画像を表す画像データが描画位置補正手段54に入力される。
【0053】
描画位置補正手段54は、移動ステージ14上に載置された基板12の第1アライメントマークDM1〜DM4、第2アライメントマークLM1〜LM4等を検出して、その重心位置を表す検出位置情報を取得する。アライメントマークの検出方法としては、特徴抽出によるパターン認識法等、従来公知の検出方法を用いることができる。本実施の形態は、複数のマークの集合体から構成されたアライメントマークの正確な基準点を算出するマーク認識手法に特徴がある。即ち、カメラ26で撮像された撮像画像から、第2アライメントマークLMを構成する4個のマークM1〜M4の重心点Gに関する正確な「検出位置情報」を取得するマーク認識処理の方法に特徴がある。マーク認識処理については、後で詳細に説明する。
【0054】
アライメントマークの設定値である、マーク位置情報、マーク形状情報、描画位置情報、及び許容誤差閾値情報等の「設定位置情報」は、基準位置記憶手段52から描画位置補正手段54に出力される。描画位置補正手段54は、第1アライメントマークDM1〜DM4、第2アライメントマークLM1〜LM4について、基板12の撮像画像から取得したアライメントマークの「検出位置情報」と「設定位置情報」とに基づいて、描画領域24Aの描画位置を補正するための「補正量」を演算する。
【0055】
ここで、描画領域の描画位置の補正について説明する。図6は描画領域24Aの描画位置が補正されて画像データが補正される様子を示す図である。なお、アライメントマークの「設定位置情報」は、描画領域24Aの描画位置を特定するために、カメラ26の撮像領域26Aを基準として、基板12が正位置に配置されたときのアライメントマークの座標値として設定されている。撮像領域26Aは、平面視が矩形状の領域である。矩形状の領域の4つの頂点をA1〜A4とし、4つの頂点の内の1つ(ここでは点A1)を原点とする。カメラ26の撮像領域26Aを基準に原点を定めているため、設定位置情報(座標値)の原点と、撮像画像から取得した検出位置情報(座標値)の原点とは、必ず一致する。
【0056】
図6に示すように、この例では基板12及び描画領域24Aは、図面上で右上に移動すると共に、左回りに回転している。また、基板12の形状は、設計上は略正方形であるが、撮像画像上ではスケール比の変動により長方形に変形している。従って、撮像画像から取得した「検出位置情報」は、予め設定された「設定位置情報」とは異なっている。
【0057】
以下では、適宜、検出位置情報を表す座標値を「読取値」と称し、設定位置情報を表す座標値を「設定値」と称する。補正量は、その補正量で設定値を補正したときに、補正値が読取値に近付くように算出される補正パラメータである。この「補正パラメータ」としては、例えば、上述した補正パラメータ(ΔX,ΔY,θ,ΔkX,ΔkY)を求める。
【0058】
撮像領域26Aの頂点A1〜A4の位置座標、基板12の頂点B1〜B4の位置座標、第1アライメントマークDM1〜DM4(スルーホール)の各々の重心の位置座標、第2アライメントマークLM1〜LM4(レーザビア)の各々の重心の位置座標、及び描画領域24Aの4つの頂点の位置座標の各々は、予め設定されている。描画位置を補正するためには、描画領域24Aの各頂点の位置座標の補正値を求める必要がある。
【0059】
なお、基板12が撮像領域26Aから外れる等、頂点B1〜B4の検出位置座標(読取値)と設定位置座標(設定値)との誤差が、許容範囲を超えた場合には描画不能となるが、本実施の形態では、基板12が撮像領域16Aからはみ出して描画不能となることはなく、頂点B1〜B4の読取値と設定値との誤差は、許容範囲に納まっているものとして説明する。
【0060】
描画位置補正手段54は、補正パラメータ(ΔX,ΔY,θ,ΔkX,ΔkY)を演算し、これらの補正パラメータに基づいて描画領域24Aの4つの頂点の設定値を補正して、各頂点の補正後の座標値を求める。これにより、描画領域24Aの描画位置が補正されて、補正前の描画位置(設定値)から補正後の描画位置に移動する。即ち、検出された描画領域24A(読取値)に近づく。同時に、描画領域のラスターデータが補正されて、補正前の描画位置に対応するラスターデータが、補正後の描画位置に対応するラスターデータ34A(文字「F」の画像データ)に変換される。即ち、変換後のラスターデータ34Aは、検出された描画領域24Aに納まるように、図面上で右上に移動(シフト)すると共に、左回りに回転し、且つX方向及びY方向のスケール比が変更(変倍)される。
【0061】
補正された描画位置情報は、画像データ補正手段56に出力される。画像データ補正手段56は、入力された補正後の描画位置情報に基づいて、予め一時記憶されたラスターデータに回転、シフト、変倍などの処理を施して描画領域のラスターデータを補正する。補正済ラスターデータが算出されると、移動ステージ14が、図1に示す下流側の位置から上流側へ所望の速度で移動させられる。
【0062】
基板12の先端がカメラ26により検出されると露光が開始される。具体的には、上記のようにして算出された補正済ラスターデータが描画制御部58に出力され、描画制御部58は入力された補正済ラスターデータに基づいてスキャナ24の各露光ヘッド30に制御信号を出力し、露光ヘッド30はその制御信号に基づいてミラーデバイスのマイクロミラーをオン・オフさせて補正済ラスターデータに応じた配線パターンを基板12上に露光する。そして、移動ステージ14の移動にともなって順次各露光ヘッド30に制御信号が出力されて露光が行われ、基板12の後端がカメラ12により検出されると露光が終了する。
【0063】
<マーク認識処理>
次に、本実施の形態で実行されるマーク認識処理について詳しく説明する。図15はマーク認識装置(図4の符号55)の機能として実行されるマーク認識処理のルーチンを示すフローチャートである。マーク認識装置55では、カメラ26で撮像された撮像画像から、複数のマークの集合体から構成されたアライメントマーク(4個のマークMから構成される第2アライメントマークLM)の重心Gの位置を検出する(図5(C)及び図6参照)。即ち、各「集合マーク」の重心位置を検出する。この処理ルーチンは、プログラムとして、露光装置のハードディスク装置等の図示しない記憶手段に記憶されており、該記憶手段から読み出されてコントローラ70により実行される。
【0064】
まず、ステップ100で、カメラ26によりアライメントマークが形成された基板12を撮像し、カメラ26から撮像画像を取得する。続くステップ102で、集合マークを構成する個々のマークの画像を有するテンプレートを用い、撮像画像に対して正規化相関テンプレートマッチングを行って、撮像画像から個々のマークを検出する。
【0065】
図9は正規化相関テンプレートマッチングの様子を示す図である。表示装置(図示せず)の画面には、カメラ26の撮像領域26A全体が表示されている。マークの画像を有するテンプレート80を、点線の矢印で図示したように、画面の左右方向に移動させてマッチングを行い、テンプレート80と同じ画像のマークを検出する。このマッチングを画面の上下方向に繰り返すことにより、テンプレート80を画面全体にわたって移動させる。
【0066】
画面上のマークをすべて検出し、検出されたマーク各々の画像上の位置座標(x、y)を求める。図9に示したように、例えば図6に対応する撮像画像からは、第2アライメントマークLM1〜LM4の各々を構成するマークMが検出される。上述した通り、個々のマークMは小さいため、撮像画像上のノイズもマークとして誤検出される場合があるし、集合マークの一部のマークが検出されない場合もある。
【0067】
次に、ステップ104で、投票空間を利用して投票により仮重心の位置を決定する。図10(A)〜(C)は投票空間を利用した仮重心決定の方法を説明する模式図である。図10(A)は、撮像画像の表示画面の一部を示す図である。図10(B)は、表示画面の一部に対応する投票空間を示す図である。図10(C)は、投票空間に投票して仮重心を決定する様子を示す図である。
【0068】
図10(A)に示すように、撮像画像の表示画面の一部は、検出されたマークが格子点上に配置されるように格子状に分割されている。分割された複数のブロックは、9行11列のマトリクス状に配列されている。この例では、集合マークを構成する4個のマークM1〜M4と、ノイズであるM、Mとが検出されている。
【0069】
図示しない記憶手段(メモリ)には、画面と同じ大きさの領域Rを格子状に複数に分割して形成された複数の投票空間を備えた領域が記憶されている。図10(B)に示すように、複数の投票空間V11、V12、V13、・・・Vmnの各々は、表示画面を格子状に分割して形成される格子点を含むように形成されている。なお、投票空間「Vmn」は、m行n列目の投票空間を表す。
【0070】
また、図10(B)には、図10(A)に示す表示画面の一部に対応する複数の投票空間を備えた領域が図示されている。例えば、表示画面に画面と同じ大きさの領域Rを重ね合わせたと考えればよい。図10(C)に示すように、検出されたマークMは、何れかの投票空間に存在することになる。この例では、マークM1は投票空間V22に、マークMは投票空間V24に、マークMは投票空間V42に、マークMは投票空間V44に、マークMは投票空間V69に、マークMは投票空間V78に、各々存在している。
【0071】
検出されたマークMの各々について、重心が存在すると予測される投票空間に対して所定数の票(1票以上の票)を投票することにより仮重心の位置が決定される。具体的に説明すると、図11(A)及び(B)に示すように、マークMが存在する投票空間の周囲(ここでは8近傍)の投票空間に対して1票ずつ投票すると、4個のマークM1〜M4の中央に在る投票空間V33の得票が4票と最も多くなる。この最も得票数の多い投票空間V33に、集合マークの仮重心が存在すると決定する。
【0072】
投票空間V33を除く3列目の投票空間Vm3、投票空間V33を除く3行目の投票空間V3n、投票空間V68、及び投票空間V79も、各々2票ずつ得票する。また、それ以外のマークMの8近傍の投票空間も、各々1票ずつ得票する。図10(C)においては、これを明度で表示している。明度が高いほど得票数が多いことを表す。最も得票数の多い投票空間V33が最も明るい領域となり、集合マークの仮重心が投票空間V33に存在すると決定されたことが分かる。
【0073】
次に、ステップ106で、仮重心の決定に寄与した検出マークMを抽出する。図10(C)に示すように、投票空間V33に集合マークの仮重心が存在すると決定されると、仮重心の周囲に存在する4個のマークM1〜M4は仮重心の決定に寄与しているが、仮重心から離れた位置にある2個のマークM、Mは仮重心の決定に寄与していない。従って、4個のマークM1〜M4からなる検出マーク群が、仮重心の決定に寄与した検出マークMとして抽出される。これにより、集合マークを構成しない検出マーク(誤検出によるノイズ)が除外されて、重心位置の検出精度が向上する。
【0074】
次に、ステップ108で、検出マーク群の各マークに対応するモデルのマークを抽出する。ここでモデルとは、予め設定された集合マークのモデル(設計図)である。上述した通り、集合マークのモデルは、基準位置記憶手段52に「マーク形状情報」として記憶されている。図12(A)及び(B)は集合マークのモデルを示す模式図である。図12(A)に示す集合マークのモデルは、図5(C)に示す第2アライメントマークLMと同じ構成であり、正方形の頂点に配置された4個のマークM1〜M4から構成されている。4個のマークM1〜M4から等距離に在る中心位置が重心Gである。
【0075】
図10(C)に示す例では、集合マークの4個のマークM1〜M4の全部が検出されているが、集合マークの一部のマークが検出されない場合もある。図13は集合マークの一部のマークが検出されない場合の表示画面を示す図である。このXY座標系が「認識座標系」である。また、表示画面内に直交する矢印で図示した座標系が「モデル座標系」である。
【0076】
図13に示すように、撮像画像の表示画面を見ると、4個のマークM1〜M4の内、マークMが検出されておらず、表示画面にはマークM1、M、及びMの各々に対応する3個のマークRM1、RM、及びRMが表示されている。表示画面にはマークMに対応するマークRMは表示されていない。なお、マークRM1〜RMの各々を区別する必要がない場合には、マークRMと総称する。ここでは、モデルのマークMと区別するために検出マークをマークRMと標記している。
【0077】
検出されたマークが3個のマークRM1、RM、及びRMの場合には、これらマークRMの重心gの位置は十字(+)を付した位置となる。重心gの位置座標は、(mg、mg)である。マークRMの重心gの位置座標は、4個のマークRM1、RM、RM、及びRMが検出された場合の重心gの位置座標(g、g)からは、相当ずれることになる。以下で説明するステップ108〜ステップ114の工程は、マークモデルを用いて上記のずれ量を補正し、「真の重心」を求める工程である。
【0078】
ステップ108では、図12(B)に示すように、検出マーク群のマークRM1、RM、及びRMに対応するモデルのマークM1、M、及びMを抽出する。モデルの重心位置は、抽出したマークMの個数によらず一定であり、4個のマークM1〜M4の重心Gの位置と同じである。
【0079】
次に、ステップ110で、検出マーク群の重心と抽出したモデルマーク群の重心とを一致させる。図14(A)〜(D)は「真の重心」を求める工程を説明する模式図である。即ち、ステップ110では、図14(A)に示すように、検出マーク群(マークRM1、RM、及びRM)の重心gと、抽出したモデルマーク群(マークM1、M、及びM)の重心Gとが一致するように、両者を重ね合わせる。
【0080】
次に、ステップ112で、検出マークの重心位置とモデルマークの重心位置との誤差の二乗和を最小にするように、モデルマーク群の姿勢(回転角度t及び拡縮係数kの値)を調整する。即ち、最小二乗法により、モデルマーク群の回転角度t及び拡縮係数kの最適値を算出する。
【0081】
例えば、図14(B)に示すように、検出マーク群の傾きと抽出したモデルマーク群の傾きとが略一致するように、重心gと重心Gとを一致させた状態で、モデルマーク群を回転角度tだけ回転させる。その後、図14(C)に示すように、検出マーク群の大きさと抽出したモデルマーク群の大きさとが略一致するように、モデルマーク群を拡縮係数kで拡大又は縮小する。
【0082】
図14(D)は検出マークRMの重心gRM1と対応するモデルマークMの重心gM1との距離dを示す図である。重心gRM1と重心gM1との距離dが、マークの重心位置のずれ量(誤差)である。距離(誤差)dの二乗値dをeとする。検出マーク群の全部のマークRMについて、距離(誤差)dの二乗値eを算出し、n個のマークRMについての二乗値eの総和Σe(i=1〜n)が最小になるように、回転角度t及び拡縮係数kの値を最適化する。図14(C)の例では、3個のマークRM1、RM、及びRMについて、二乗値eの総和Σe=e+e+eの値が最小になるようにする。
【0083】
次に、ステップ114で、姿勢を調整した後の(即ち、回転角度tで回転し且つ拡縮係数kで拡縮した後の)モデルマーク群の重心Gの位置座標を「真の重心」の位置座標として算出し、マーク認識処理の処理ルーチンを終了する。図14(C)に示すように、姿勢を調整した後のモデルマーク群の重心G(真の重心)の位置座標は、4個のマークRM1、RM、RM、及びRMが検出された場合の重心gの位置座標(g、g)と略重なる。即ち、集合マークの一部のマークが検出されない場合でも、アライメントマークの重心の正確な位置座標を算出することができる。
【0084】
図21に示すように、検出マーク群の重心gを原点とした場合には、抽出したモデルマーク群の重心Gの設定位置座標は(−lg、−lg)で表される。なお、検出マーク群の重心を原点とする座標系は、「モデル座標系」又は「設計座標系」とも称される。
回転角度tで回転し且つ拡縮係数kで拡縮した場合のモデルマーク群の重心Gの位置座標(「真の重心」の位置座標)は、「認識座標系」で全部のマーク検出された場合の重心gの位置座標(g、g)と略同じである。従って、回転角度t、拡縮係数k及び検出された一部のマークから求めた重心gの位置座標(mg、mg)を用いて、下記式(A)及び(B)で表される座標変換により「認識座標系」での「真の重心」の位置座標(g、g)が算出される。
【0085】
【数1】

【0086】
【数2】

【0087】
<仮重心決定方法の変形例>
上記では、4個のマークMで構成された集合マークを用いて、検出されたマークMの周囲にある投票空間に対し投票を行い、最も得票数の多い投票空間に集合マークの仮重心が存在すると決定する例について説明した。しかしながら、図7及び図8に示したように、10個以上のマークMを含む集合マークの場合には、一部のマークの欠落により仮重心の位置を決定できる場合と決定できない場合とがある。最大の得票数の投票空間が複数存在する等して、仮重心の位置を決定できない場合には、仮重心の決定方法を変更してもよい。
【0088】
図16(A)及び(B)は一部のマークが欠落した格子状集合マークを示す図である。図16(A)は5行5列で格子状に配置された25個のマークの内、ランダムな位置にある10個のマークが欠落した様子を示す図である。図17(A)は大幅にマークを欠落させた場合の撮像画像を示す図であり、図17(B)はその場合の投票結果を示す図である。図17(B)に示すように、大幅なマークの欠落を生じていても、中央の投票空間の明度が最も高くなり、この投票空間に集合マークの仮重心が存在すると決定することができる。
【0089】
図18(A)は大幅にマークを欠落させた場合の撮像画像を示す図であり、図18(B)はその場合の条件付の投票結果を示す図である。この場合は、検出されたマークMが存在する投票空間には投票しないという条件を付加する。この条件下では、投票可能な投票空間の数が減少するので、最大の得票数の投票空間が複数存在する確率が低下する。図18(B)に示すように、この場合にも、中央の投票空間の明度が最も高くなり、この投票空間に集合マークの仮重心が存在すると決定することができる。
【0090】
図16(B)は3行3列目(中央)のマークを除き5行5列で格子状に配置された24個のマークの内、5列目にある5個のマークが欠落した様子を示す図である。図19(A)は5列目のマークを欠落させた場合の撮像画像を示す図である。図19(B)はその場合の条件付の投票結果を示す図であり、図19(C)はその場合の無条件での投票結果を示す図である。
【0091】
図19(A)に示す撮像画像では、重心が存在すると予測される投票空間は2つ在ることが分かる。図19(C)に示すように無条件で投票を行うと、最大の得票数の投票空間が複数存在することになり、仮重心の位置を決定できない。これに対し、検出されたマークMが存在する投票空間には投票しないという条件を付加すると、図19(B)に示すように、最大の得票数の投票空間は1つになり、この投票空間に集合マークの仮重心が存在すると決定することができる。
【0092】
<最小二乗法による姿勢調整>
ここで、最小二乗法による姿勢調整方法、即ち、回転角度t及び拡縮係数kの算出方法について具体的に説明する。
【0093】
姿勢tと拡大縮小係数kを算出するために、図21に示すように、検出されたマーク重心を原点とする座標系で、以下の設計座標点p1と計測座標点をpmとを考える。
設計マーク座標:pl(lx1,ly1), pl(lx2,ly2),…,pl(lxn,lyn)
計測マーク座標:pm(mx1,my1), pm(mx2,my2),…,pm(mxn,myn)
但し、Σlxi=0、Σlyi=0、Σmxi=0、Σmyi=0とするように、重心は重なりあっているものとする。
【0094】
設計座標点群と計測座標点群の距離の総和を最も小さくする回転角度t及び拡縮係数kを最小二乗法により算出する。
【0095】
姿勢とスケール調整後の設計座標pl'(lx',ly')は、下記式で表される。
lx'= k * (lx * cos(t) -ly * sin(t))
ly'= k * (lx * sin(t) +ly * cos(t))
【0096】
設計座標点群と計測座標点群の距離の二乗値の総和Σeiは、下記式で与えられる。
Σei=e+e+…+e
【0097】
ここでeiは、下記式で与えられる。
i= (mxi-k(cos(t)*lxi-sin(t)*lyi))2+(myi-k(sin(t)*lxi+cos(t)*lyi))2
【0098】
cot(t)=c、sin(t)=sとして、Σeiを最小にするc,s,kを算出する。Σeiをc,sでそれぞれ偏微分すると、下記式が導出される。
【0099】
【数3】

【0100】
Σδe/δc=0、Σδe/δs=0なるcとsは、下記式(1A),(2A)で与えられる。
【0101】
【数4】

【0102】
同様にΣeiを拡縮係数kで偏微分すると、下記式(3A)に展開できる。
【0103】
【数5】

【0104】
上記式(3A)に、上記式(1A)及び式(2A)の結果を代入し、Σδe/δk=0なる拡縮係数kを求めると、下記式が得られる。
【0105】
【数6】

【0106】
また、回転角度tは下記式により算出される。
【0107】
【数7】

【0108】
<円周状集合マークに適用する最小二乗法>
図8(A)及び(B)に示した「円周状集合マーク」の場合には、同じ直径の円毎に円周状集合マークに特有の最小二乗法を適用することができる。図8(B)に示した複数のマークが複数の同心円を形成するように円周状に配置された集合マークであっても、同じ円周上にあるマークを選択して特有の最小二乗法を適用し、最後に平均を求めればよい。図20は円周状集合マークに適用する最小二乗法に用いるパラメータを説明するための図である。
【0109】
最小二乗法の目的関数は、円の中心点の位置座標を(X,Y)、円周上にあるマークの重心の位置座標を(x,y)として、下記式(1)及び(2)で与えられる。
【0110】
【数8】

【0111】
上記式(2)を最小化するX,Y,Rを求めるのであるが、X,Y,Rで偏微分することは困難であるため、下記式(3)を導入する。
【0112】
【数9】

【0113】
上記式(3)は下記式(4)に変形できる。
【0114】
【数10】

【0115】
従って、X,Y,Rは下記式で置換できる。
【0116】
【数11】

【0117】
上記式(3)を上記式(1)に代入したものを、下記式(5)の目的関数とし、これを最小化するa,b,cを求める。
【0118】
【数12】

【0119】
上記式(5)を各変数について偏微分し、0とおいた等式(6),(7),(8)をa,b,cについて解く。
【0120】
【数13】

【0121】
上記式(6)〜(8)を整理すると、下記式(9),(10),(11)となる。
【0122】
【数14】

【0123】
nを総数とすると、Σc=n*cなので、(11)式から下記式(12)が得られる。
【0124】
【数15】

【0125】
上記式(12)を上記式(9),(10)に代入すると、下記式(13),(14)となる。
【0126】
【数16】

【0127】
更に、a=2X,b=2Y を代入して、行列表現にすると、上記式(13),(14)は、下記式(15),(16),(17)となり、行列Aとベクトルbとが導かれる。
【0128】
【数17】

【0129】
従って、目的とする円の中心点の位置座標を(X,Y)は、下記式(18)に示すように、Aの逆行列を求めることで算出することができる。
【0130】
【数18】

【0131】
なお、上記の実施の形態では、本発明のマーク認識装置をプリント配線板等の基板を露光する露光装置に適用した例について説明したが、本発明のマーク認識装置は、集合マークをアライメントマークとして用いる場合に有効であり、種々の用途でのアライメントに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0132】
10 露光装置
12 基板
14 移動ステージ
16 脚部
18 設置台
20 ガイド
22 ゲート
24 スキャナ
24A 描画領域
26 カメラ
26A 撮像領域
30 露光ヘッド
32 露光エリア
34A ラスターデータ
34B ラスターデータ
40 データ作成装置
50 ラスター変換処理部
52 基準位置記憶手段
54 描画位置補正手段
55 マーク認識装置
56 画像データ補正手段
58 描画制御部
60 ステージ制御部
70 コントローラ
80 テンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計情報に基づいて対象物に付された複数のマークから所定数以上のマークの位置を各々検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークの位置に基づいて、前記所定数以上のマークからなる集合体の仮重心位置を推定する推定手段と、
前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークから前記仮重心位置の推定に寄与したマークを検出マーク群として抽出する第1の抽出手段と、
前記設計情報に基づいた複数のマークから前記第1の抽出手段で抽出された検出マーク群のマークの各々に対応するマークをアライメントマーク群として抽出する第2の抽出手段と、
前記アライメントマーク群のマークの各々を前記検出マーク群のマークの各々に最も一致するように前記アライメントマーク群のマークの位置の各々を変更させたマーク群から、前記検出マーク群のマークの各々によって定まる基準点を算出する基準位置算出手段と、
を含むマーク認識装置。
【請求項2】
前記基準位置算出手段を、
前記アライメントマーク群のマークの各々を前記検出マーク群のマークの各々に最も一致させるための回転角度及び拡縮倍率を最小二乗法により算出する第1の算出手段と、
前記アライメントマーク群のマークの位置を前記第1の算出手段で算出された回転角度及び拡縮倍率で変更させたマーク群から前記検出マーク群のマークの各々によって定まる基準点を算出する第2の算出手段と、
を含んで構成した請求項1記載のマーク認識装置。
【請求項3】
前記推定手段は、予め定められた領域を複数に分割して形成された複数の投票空間を用い、前記検出手段で検出された前記所定数以上のマークの位置に基づいて、前記所定数以上のマークからなる集合体の重心が存在すると仮定される投票領域に投票し、投票数が最も多い投票空間の位置を、前記所定数以上のマークからなる集合体の仮重心位置が存在する位置として推定する請求項1または請求項2記載のマーク認識装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記投票数が最も多い投票空間が複数ある場合には、前記マークの位置と重ならない投票空間の位置を、前記仮重心位置が存在する位置として推定する請求項3記載のマーク認識装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記投票数が最も多い投票空間が複数ある場合には、前記仮重心位置が存在する位置は推定不能とする請求項3記載のマーク認識装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【図21】
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【図10】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−107348(P2011−107348A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261358(P2009−261358)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】