説明

ミキサ装置

【課題】各チャンネル毎に設けられた信号調整用のフェーダとは別に、任意のチャンネルに割り当て可能な共用のDCAフェーダを複数具備する場合、各DCAフェーダによる信号調整状態を同時にモニタできるようにする。
【解決手段】各DCAフェーダに対応して専用のバス(DCAバスDCA−1,2,...m)をそれぞれ設ける。該DCAフェーダに対するチャンネル割り当てに従って該DCAフェーダによって制御された1又は複数のチャンネルの信号を、対応するDCAバスで混合する。各DCAバスで混合された信号を可視的又は可聴的にモニタするモニタ手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共用のフェーダ(信号調整用操作子)に対して所望の1又は複数のチャンネルのフェーダを割り当て、該共用のフェーダの操作に応じて該割り当てた1又は複数のチャンネルのフェーダにおける信号調整量を制御することのできる機能を備えたミキサ装置に関し、特に、共用のフェーダの操作に応じて制御される1又は複数のチャンネルのフェーダにおける信号調整状態を適切にモニタし得るようにしたミキサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンサート等で用いられるミキサ装置においては、複数の入力チャンネルのオーディオ信号がミキシングされることによって最終的に必要なオーディオ信号が得られる。これら入力チャンネルの各オーディオ信号のゲインは、ミキシングされる前に、複数段階にわたって調節される。例えば、ミキサ装置に入力された直後の音声信号は、ヘッダアンプによってゲイン調節が行われる。このゲイン調節のためには、ボリューム操作子が多用されている。次に、必要に応じて周波数特性のイコライジングが行われた後、フェーダアンプによるゲイン調節が行われる。このフェーダアンプのゲインは各入力チャンネル毎に設けられたフェーダによって設定される。また、ミキシングバスから出力された信号を処理するための出力チャンネルにおいてもフェーダが設けられており、出力信号のゲインを調整する。
【0003】
大型のミキシングコンソールにおいては、パネル上に並ぶフェーダの数も膨大になり、必然的にコンソールの端から端までの距離も長くなるため、できるだけコンソールの中央に配置されている操作子のみで全チャンネルの音量操作などを行いたいという要求があった。これを解決するために設けられたのがDCA(Digital Controlled Amplifier 又はDigital Controlled Attenuator)フェーダである。DCAフェーダは、いずれかの入力(又は出力)チャンネルのフェーダを一時的に割り当てて該DCAフェーダの操作によって該いずれかの入力(又は出力)チャンネルのフェーダを通るオーディオ信号の音量を制御したり、グループ化した複数の入力(又は出力)チャンネルの音量を該DCAフェーダの操作によって一括して操作する、などの用途に用いられるフェーダである。例えば、複数のDCAフェーダをミキシングコンソールの中央付近に配置し、各DCAフェーダに対して該DCAフェーダによって一時的に操作したい任意の入力(又は出力)チャンネルを割り当てることで、あるいは、1つのDCAフェーダに対してグループ化した複数の入力(又は出力)チャンネルを任意に割り当てることで、上記の問題を解決している。特開2004−40347号公報(特許文献1)においては、そのようなDCAフェーダを備えたデジタルミキサの一例が示されている。
【特許文献1】特開2004−40347号公報
【0004】
このように、DCAフェーダに対していずれか1又は複数のチャンネルのフェーダが割り当てられるようになっており、その割り当てられたチャンネルを流れるオーディオ信号のレベルをDCAフェーダの操作によって制御するようになっているため、DCAフェーダそのものにはオーディオ信号が流れる構成とはなっていない。そのため、従来は、DCAフェーダで制御されたオーディオ信号の調整状態をモニタするという概念が存在していなかった。しかし、DCAフェーダが種々のミキサ装置に組み込まれて利用されることが多くなることに伴い、特定のDCAフェーダに割り当てられたいずれか1又は複数のチャンネルでのオーディオ信号の調整状態を視覚的に又は聴感的にモニタしたいという要求がユーザに高まってきた。
【0005】
このような要求に対して、従来のミキサ装置にあっては、モニタ用のCUEバスを使用することでしか対応できなかった。すなわち、モニタしたい特定のDCAフェーダに割り当てられたいずれか1又は複数のチャンネルでCUEバスを選択することで、これらの1又は複数のチャンネルのオーディオ信号がCUEバスに与えられ、これにより、該CUEバスを介して当該特定のDCAフェーダに割り当てられたいずれか1又は複数のチャンネルでのオーディオ信号の調整状態を視覚的に(信号レベルのメータ表示)又は聴感的に(ヘッドフォン聴取)モニタできる。しかし、CUEバスは1つしか設けられていないため、複数のDCAフェーダにおける信号レベル調整状態を同時にモニタすることができず、不便であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、任意のチャンネルに割り当て可能な共用の操作子(DCAフェーダ)を複数具備するミキサ装置において、複数の共用の操作子(DCAフェーダ)による信号調整状態をそれぞれ同時にモニタすることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るミキサ装置は、処理対象である信号を処理するための複数の入力チャンネルと、前記入力チャンネルで処理された信号を混合するミキシングバスと、ミキシングバスから出力された信号を処理するための出力チャンネルと、前記入力チャンネルと出力チャンネルの少なくとも一方において各チャンネル毎に設けられた信号調整用の第1の操作子であって、該第1の操作子の操作に応じて対応するチャンネルの信号を調整するものと、任意のチャンネルに対して割り当て可能な、信号調整用の複数の第2の操作子と、個々の前記第2の操作子に対して、前記入力チャンネルと出力チャンネルの少なくとも一方における任意の1又は複数のチャンネルの前記第1の操作子を割り当て、個々の前記第2の操作子の操作に応じて、当該第2の操作子に対して割り当てられた前記1又は複数のチャンネルの前記第1の操作子における信号調整量をそれぞれ制御する制御手段と、複数のサブミキシングバスであって、各サブミキシングバスが前記各第2の操作子に対応してそれぞれ設けられており、該各サブミキシングバスは、前記制御手段による割り当てに従って当該サブミキシングバスに対応する第2の操作子の制御対象となった前記1又は複数のチャンネルの信号を混合するものと、前記サブミキシングバスに対応して設けられた、該サブミキシングバスで混合された信号をモニタするモニタ手段と備える。
【0008】
本発明によれば、複数の第2の操作子(実施例における「DCAフェーダ」)の各々に対応して個別にサブミキシングバス(実施例における「DCAバス」)がそれぞれ設けられ、各サブミキシングバスでは、前記制御手段による割り当てに従って当該サブミキシングバスに対応する第2の操作子の制御対象となった前記1又は複数のチャンネルの信号を混合し、該サブミキシングバスに対応して設けられたモニタ手段により該サブミキシングバスで混合された信号をモニタすることができるので、複数の第2の操作子(DCAフェーダ)における信号調整状態を同時にモニタすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施例を詳細に説明しよう。
図1は、本発明の一実施例に係るデジタルミキサ10のハードウェア構成を示すブロック図である。デジタルミキサ10は、CPU11,RAM12,ROM13,操作子14の操作を検出するための検出回路15,表示器16の表示を制御するための表示回路17,外部機器22との間で各種データの授受を行うための通信インタフェース(I/F)18,マイクロフォン及びスピーカなどの外部機器23との間でオーディオ信号を入出力するためのオーディオ信号インタフェース(I/F)19,デジタル信号処理部(DSP)20を備え、これらがシステムバス21を介して接続されている。
【0010】
CPU11は、このデジタルミキサ10の動作を統括制御する制御手段であり、RAM12又はROM13に記憶された所要のプログラムを実行することにより、通信I/F18及びオーディオ信号I/F19における通信や表示器16における表示を制御したり、操作子14の操作を検出してその操作に従ってパラメータの値の設定/変更や各部の動作を制御したりといった処理を行う。
【0011】
操作子14と表示器16は、デジタルミキサ10のコンソール部に配列されている。操作子14は、操作者によるデジタルミキサ10に対する操作を受け付けるためのものであり、複数のチャンネルに対応して設けられた種々のキースイッチ、ボタンスイッチ、ダイヤル式操作子、フェーダ式操作子等によって構成される。表示器16は、CPU11による制御に従って種々の情報を表示する表示手段であり、例えば液晶パネル(LCD)や発光ダイオード(LED)によって構成することができる。
【0012】
通信I/F18は、種々の外部機器22を接続し入出力を行うためのインタフェースであり、例えば外部のディスプレイ、マウス、文字入力用のキーボード、操作パネル等を接続するためのインタフェースなどからなる。オーディオ信号I/F19は、DSP20で処理すべきオーディオ信号の入力をマイクロフォン等の外部機器23から入力し、また、ミキシング処理後のオーディオ信号をスピーカあるいはヘッドフォン等の外部機器23に出力するためのインタフェースであり、オーディオ信号のアナログ/デジタル変換器及びデジタル/アナログ変換器を含む。
【0013】
DSP20は、デジタルミキサ10における主要なミキシング処理を行うようマイクロプログラムが組まれており、このマイクロプログラムに従ってミキシング処理を実行する。DSP20が実行するミキシング処理とは、例えば、オーディオ信号I/F19を介して入力した複数チャンネルのデジタルオーディオ信号に対して、ミキシングに関連する各種の演算処理(例えばフェーダ設定値に応じたレベル係数演算やミキシングチャンネルへの分配と加算等及びイコライジング処理等の各種信号処理)を行うことからなる。
【0014】
操作子14において設けられている本発明に関連する信号レベル調整用のフェーダ式操作子の一例を示すと、図2のようであり、n個のチャンネルの各々に対応して設けられたチャンネルフェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnと、m個の共用のDCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmを有する。1つのDCAフェーダDCAF1〜DCAFmに対して、任意の1又は複数チャンネルを割り当て、該DCAフェーダの操作によってそれに割り当てられた1又は複数チャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnにおける信号レベル調整量を制御することができる。DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmに対して任意の1又は複数のチャンネルを割り当てる処理は、公知であり、例えば、操作子14における所定のスイッチ等を用いた操作者による割り当て指示操作と、該割り当て指示操作に応じたCPU11の処理とによって実行される。また、この割り当てに従って、個々のDCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmの操作に応じて当該DCAフェーダに対して割り当てられた1又は複数のチャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnにおける信号レベル調整量をそれぞれ制御する処理は、CPU11によって実行される。このように制御されたチャンネルフェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnの信号レベル調整量に従って当該チャンネルのオーディオ信号のレベルを設定・制御することはDSP20において実行される。なお、チャンネルフェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnは、手動及び電動のいずれでも動作可能であり、DCAフェーダ(第2の操作子)の操作に連動してチャンネルフェーダ(第1の操作子)を動かす場合は、CPU11からの指示に従って、電動式で動かされる。
【0015】
一例として、DCAフェーダ(第2の操作子)の操作に応じたチャンネルフェーダ(第1の操作子)の動作モードには、次に述べる第1及び第2モードがある。この2つのモードは、各DCAフェーダDCAF1〜DCAFm毎に独立に設定可能である。
【0016】
第1モードでは、DCAフェーダ(第2の操作子)の操作に応じて、該DCAフェーダが割り当てられたチャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)の摘みが、該DCAフェーダの摘みと同じ位置に実際に電動式で動かされる。例えは、1つのDCAフェーダ(第2の操作子)に対して1つのチャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)が1対1で割り当てられた場合に、この第1モードでチャンネルフェーダ(第1の操作子)の摘みがDCAフェーダの摘みと同じ位置になるように実際に連動して動かされる。
【0017】
第2モードでは、DCAフェーダ(第2の操作子)の操作に応じて、該DCAフェーダが割り当てられたチャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)の摘みは実際には動かされず、このチャンネルフェーダ(第1の操作子)における信号レベル調整量がDCAフェーダ(第2の操作子)の操作量に応じて増減するよう制御される。例えは、1つのDCAフェーダ(第2の操作子)に対して2以上のチャンネルのチャンネルフェーダ(第1の操作子)が割り当てられた場合に、この第2モードで各チャンネルフェーダにおける信号レベル調整量がDCAフェーダの操作量に応じてそれぞれ増減するよう制御される。これにより、1つのDCAフェーダに対して割り当てられた2以上のチャンネルのチャンネルフェーダの各信号レベル調整量は、各チャンネルフェーダ間の相対関係を維持したまま、DCAフェーダの操作量に応じてそれぞれ増減するよう制御される。
【0018】
図3は、DSP20によって実現されるミキシング処理部の構成を機能的に示す略図である。このミキシング処理部は、複数nの入力チャンネルCH1〜CHnと、複数NのミキシングバスMIX−1,2,...Nと、左右1対のステレオバスSTと、左右1対のCueバスCUEと、各バスMIX−1,2,...N,ST,CUEで混合されたオーディオ信号を出力する際に音量制御等を行うための出力チャンネル部OUTとを備えている。更に、本発明に従い、複数mのDCAバス(サブミキシングバス)DCA−1,2,...mが設けられている。各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1,2,...mは、各DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmに対応して設けられている。なお、公知のように、ミキサにおける「バス」若しくは「ミキシングバス」とは、同じバスに送られたオーディオ信号同士を混合(加算)し、1つの混合されたオーディオ信号を出力する機能を持つものである。
【0019】
図3においては、図示の便宜上、1つの入力チャンネルCH1のみ詳細を示しているが、他の入力チャンネルCH2〜CHnも同様に構成される。入力チャンネルCH1について説明すると、入力されたデジタルオーディオ信号は、当該入力チャンネルCH1のフェーダ(第1の操作子)ChF1に対応するフェーダアンプ(又は減衰器)FDAchに入力される。フェーダアンプ(又は減衰器)FDAchは、フェーダ(第1の操作子)ChF1の操作量に応じてゲインが可変設定されるアンプ(又は減衰器)である。フェーダアンプFDAchと対で直列的に設けられているDCAアンプ(又は減衰器)DCAchは、当該チャンネルCH1に割り当てられたいずれかのDCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmの操作に応じてゲインが可変設定されるアンプ(又は減衰器)である。
【0020】
DCAアンプ(又は減衰器)DCAchのゲイン設定値は、当該チャンネルに割り当てられた上述の2つのモードのいずれでDCAフェーダが動作しているかによって異なる。まず、上記第1モードでは、DCAアンプ(又は減衰器)DCAchは増幅率1(又は減衰量0)つまり入力信号のレベルを変化させることなくそのまま出力する。この第1モードの場合は、DCAフェーダの操作に連動してチャンネルフェーダChF1の摘みが動くので、フェーダアンプ(又は減衰器)FDAchにおいて設定されているゲインはDCAフェーダの操作位置に対応するものとなるので、DCAアンプ(又は減衰器)DCAchを機能させる必要がないからである。なお、当該チャンネルにDCAフェーダが割り当てられていないときも同様にDCAアンプ(又は減衰器)DCAchは増幅率1(又は減衰量0)である。
【0021】
次に、上記第2モードでは、当該チャンネルに割り当てられたDCAフェーダの操作に応じてDCAアンプ(又は減衰器)DCAchのゲイン設定値が増加又は減少される。第2モードでは、チャンネルフェーダChF1の摘みはDCAフェーダの操作に連動して動かず、それに対応するフェーダアンプFDAchのゲイン設定値は変化されないので、DCAフェーダの操作に応じてDCAアンプ(又は減衰器)DCAchのゲイン設定値を増加又は減少することにより、等価的に当該チャンネルフェーダChF1における信号レベル調整量をDCAフェーダの操作に応じて増減制御する。つまり、フェーダアンプ(又は減衰器)FDAchとDCAアンプ(又は減衰器)DCAchとの両方のゲインを合わせたものが、実質的なDCAフェーダの操作に応じて制御された当該チャンネルフェーダChF1における信号レベル調整量となる。
【0022】
ミキシングバスセレクタMIXSELは、この入力チャンネルCH1のオーディオ信号を送るべきミキシングバスMIX−1,2,...Nを選択するもので、各ミキシングバス毎にプリフェーダ信号PRE_Fとポストフェーダ信号POST_Fのどちらを送るかを選択できるようになっている。プリフェーダ信号PRE_Fとは、チャンネルフェーダChF1に入力する前のオーディオ信号であり、ポストフェーダ信号POST_FでチャンネルフェーダChF1でレベル調整(ゲイン調整)処理を行った後のオーディオ信号である。すなわち、ミキシングバスMIX−1,2,...Nを使用して、フェーダ処理を行った後の信号POST_Fのミキシングを行うことができるのみならず、フェーダ処理を行う前の信号PRE_Fのミキシングを行うこともできる。
【0023】
各ミキシングバスMIX−1,2,...Nでは、各入力チャンネルCH1〜CHnから送られてきたオーディオ信号を混合する。出力チャンネル部OUTには、各ミキシングバスMIX−1,2,...Nに対応する出力チャンネルが設けられており、各ミキシングバスMIX−1,2,...Nに対応する出力チャンネルにはそれぞれミキシング出力フェーダMIX−Fが設けられている。操作者が所望のミキシング出力フェーダMIX−Fを操作することで、所望のミキシングバスMIX−1,2,...Nの出力ゲインを調整することができる。ミキシング出力フェーダMIX−Fの出力側にはメーターMTR1が設けられており、各ミキシングバスMIX−1,2,...N毎のミキシング出力フェーダMIX−Fの出力信号レベルをそれぞれメーター表示(可視的にモニター)できるようになっている。このメーター表示は、メーター針の振れあるいは棒グラフ表示などによってアナログ的に可視表示するようになっていてもよいし、信号レベルを数値によってデジタル的に可視表示するようになっていてもよい。他のメーターMTR2〜MTR4,MTRd1〜MTRdmも同様である。
【0024】
入力チャンネルCH1に設けられたメーターMTR2には、操作者の操作に応じてセレクタSEL1で選択された当該入力チャンネルCH1におけるプリフェーダ信号PRE_F又はポストフェーダ信号POST_Fのいずれかが入力されるようになっており、プリフェーダ信号PRE_F又はポストフェーダ信号POST_Fの信号レベルをメーター表示(可視的にモニター)できるようになっている。
【0025】
入力チャンネルCH1において、ポストフェーダ信号POST_Fは、ステレオパンにおける音像定位を設定するためのバランスボリュームPAN_Vにも入力される。ステレオバスセレクタSTSELは、プリフェーダ信号PRE_FとバランスボリュームPAN_Vの出力信号(ステレオパン制御されたオーディオ信号)のいずれかを、操作者の操作に応じて選択してステレオバスSTに送るためのものである。プリフェーダ信号PRE_FをステレオバスSTに送ることが選択されたときは、同じプリフェーダ信号PRE_FがステレオバスSTの左右バスに送られるので、当該入力チャンネルCH1のオーディオ信号は音像定位に固定される(モノラルである)。
【0026】
ステレオバスSTでは、各入力チャンネルCH1〜CHnから送られてきたオーディオ信号を左右バスにおいてそれぞれ混合する。出力チャンネル部OUTには、ステレオバスSTの左右バスに対応する出力チャンネルが設けられており、このステレオ左右バスの出力チャンネルにはステレオ出力フェーダST−Fが設けられており、操作者が該ステレオ出力フェーダST−Fを操作することで、ステレオ左右バスの出力オーディオ信号の出力ゲインを共通に調整することができる。また、セレクタSEL2でステレオ出力フェーダST−Fの入力側の左右ステレオ信号と出力側の左右ステレオ信号のどちらかを選択し、メーターMTR3に入力することができるようになっている。メーターMTR3では選択入力された左右ステレオ信号のそれぞれの信号レベルをそれぞれメーター表示(可視的にモニター)する。セレクタSEL2での選択切り換えにより、入力と出力とを比較することで、ステレオ出力フェーダST−Fのかかり具合を確かめることができる。
【0027】
キューセレクタCUESELは、当該入力チャンネルCH1のバランスボリュームPAN_Vの出力信号(ステレオパン制御されたオーディオ信号)をCueバスCUEに送ることを選択するためのものであり、操作者によって操作される。
【0028】
CueバスCUEでは、各入力チャンネルCH1〜CHnから送られてきたステレオパン制御されたオーディオ信号を左右バスにおいてそれぞれ混合する。出力チャンネル部OUTには、CueバスCUEの左右バスに対応する出力チャンネルが設けられており、このステレオ左右バスの出力チャンネルにはCue出力フェーダCUE−Fが設けられており、操作者が該Cue出力フェーダCUE−Fを操作することで、Cueバスにおけるステレオ左右バスの出力オーディオ信号の出力ゲインを共通に調整することができる。また、Cue出力フェーダCUE−Fに入力される前のCueバス出力の左右ステレオ信号がメーターMTR4に入力され、メーターMTR4では入力されたCueバス出力の左右ステレオ信号のそれぞれの信号レベルをそれぞれメーター表示(可視的にモニター)する。
【0029】
出力チャンネル部OUTから出力された各ミキシングバスの出力オーディオ信号、ステレオバスの出力オーディオ信号、Cueバスの出力オーディオ信号は、DSP20からオーディオ信号I/F19に送られ、そして、外部機器23として接続されている所定のスピーカシステム及びヘッドフォン等に供給される。
【0030】
各メーターMTR1〜MTR4は、デジタルミキサ10のコンソール部における各チャンネル毎のチャンネルストリップに配列される。更に、デジタルミキサ10のコンソール部には、本発明に従ってモニタした各DCAフェーダDCAF1〜DCAFm毎の信号調整状態を表示するためのメーターMTRd1〜MTRdmが設けられる。これらのメーターMTRd1〜MTRdmは、例えば、図2に示すように、コンソール部における各DCAフェーダDCAF1〜DCAFmの配置に対応付けて配置されると視認し易い。
【0031】
入力チャンネルCH1において、各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1,2,...mに対応して、DCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmがそれぞれ設けられている。DCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmは、各DCAフェーダDCAF1〜DCAFmに1対1で対応しており、いずれかの1つのDCAフェーダDCAF1〜DCAFmに対する当該チャンネルCH1の割り当てに対応してオンとされるスイッチである。なお、1つのDCAフェーダに複数チャンネルを割り当てることはできるが、1つのチャンネルCH1を複数のDCAフェーダに割り当てることは事実上できない。よって、当該チャンネルCH1におけるDCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmの状態は、すべてオフであるか、いずれか1つのみがオンである。
【0032】
DCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmには、フェーダアンプFDAchの出力信号がラインDCA_Lを介して入力される。各DCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmの出力信号はそれぞれに対応するDCAバスDCA−1,2,...mに送られる。
【0033】
各DCAバスDCA−1,2,...mでは、各入力チャンネルCH1〜CHnからそれぞれのDCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmを介して送られてきたオーディオ信号を混合する。各DCAバスDCA−1,2,...mの出力側には、DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmがそれぞれ設けられている。各DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmは、それぞれDCAフェーダDCAF1〜DCAFmに対応しており、対応するDCAフェーダによる信号レベル調整量の制御状態をシミュレートするものである。要するに、各DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmは入力チャンネルCH1に設けられる前述のDCAアンプ(又は減衰器)DCAchと同様の機能を果たすもので、対応するDCAフェーダが上記第1モードで動作するときは、それに対応するDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmは増幅率1(又は減衰量0)つまり入力信号のレベルを変化させることなくそのまま出力する。この場合は、入力チャンネル側のフェーダアンプFDAchで当該DCAフェーダの操作に連動した信号レベル調整がなされている。従って、ラインDCA_L及びスイッチASSW1〜ASSWmを介してDCAバスDCA−1,2,...mに入力されるフェーダアンプFDAchの出力信号は、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整されたものとなっている。よって、DCAバスDCA−1,2,...mの出力信号をレベルを変化させることなく、DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmからそのまま出力させることで、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整されたオーディオ信号がDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmから出力されることになる。
【0034】
一方、対応するDCAフェーダが上記第2モードで動作するときは、該対応するDCAフェーダの操作に応じてそれに対応するDCAアンプDCA1〜DCAmのゲイン設定値が増加又は減少される。この場合は、入力チャンネル側のフェーダアンプFDAchで当該DCAフェーダの操作に連動した信号レベル調整はなされず、それ以前の信号レベル調整状態を保持している。そして、オーディオ信号に対するDCAフェーダの操作に応じたレベル調整は各チャンネルのDCAアンプDCAchでなされることは前述した通りである。そこで、同じようなレベル調整をシミュレートすべく、各DCAバスDCA−1,2,...mに対応してDCAアンプDCA1〜DCAmが設けられている。すなわち、ラインDCA_L及びスイッチASSW1〜ASSWmを介してDCAバスDCA−1,2,...mに入力されるフェーダアンプFDAchの出力信号は、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整されたものとなっていないので、DCAバスDCA−1,2,...mの出力信号レベルをDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmでDCAフェーダの操作に応じて制御することで、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整されたオーディオ信号がDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmから出力されることになる。
【0035】
こうして、いずれのモードで動作する場合でも、対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmの操作に応じてレベル調整されたオーディオ信号がDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmから出力されることになる。
【0036】
各DCAバスDCA−1,2,...mに対応してそれぞれ設けられたセレクタSEL3は、DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmの出力信号とDCAバスDCA−1,2,...mの出力信号(DCA1〜DCAmを経由していない出力信号)の一方を、操作者の操作に応じて各DCAバス毎に独立に選択するためのものである。DCAバスDCA−1,2,...mに対応する各セレクタSEL3の出力は、メーターMTRd1〜MTRdmにそれぞれ入力される。これにより、各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1,2,...mで混合されたオーディオ信号のレベルをそれぞれメーター表示(可視的にモニター)できる。また、各セレクタSEL3の出力信号は、CueバスCUEの左右バスにモノラル信号として入力されるようになっており、これにより、CueバスCUEの出力を介してヘッドフォン等により各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1,2,...mから出力されるオーディオ信号を聴感的にモニターすることもできる。
【0037】
セレクタSEL3でDCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmからの出力信号を選択した場合は、DCAアンプ(又は減衰器)DCA1〜DCAmは、対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmの操作に応じてレベル調整されたオーディオ信号を出力しているので、対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmの操作に応じた信号を可視的に及び可聴的にモニターできることになる。
【0038】
一方、セレクタSEL3でDCAバスDCA−1,2,...mの出力信号(DCA1〜DCAmを経由していない出力信号)を選択した場合は、上記第1モードと第2モードとで異なる態様のモニタが行える。第1モードの場合は、前述のように、DCAバスDCA−1,2,...mの出力信号(DCA1〜DCAmを経由していない出力信号)は、対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmの操作に応じてレベル調整されたオーディオ信号を出力しているので、対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmの操作に応じた信号を可視的に及び可聴的にモニターできることになる。第2モードの場合は、ラインDCA_L及びスイッチASSW1〜ASSWmを介してDCAバスDCA−1,2,...mに入力されるフェーダアンプFDAchの出力信号は、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整されたものとなっておらず、それ以前の各チャンネル独自の信号レベル調整状態を保持している。従って、この場合は、第2モードでDCAフェーダを操作する直前の各チャンネル独自の信号レベル調整状態をメーターMTRd1〜MTRdmで可視的にモニターすることができ、また、Cueバスを介してヘッドフォン等により聴感的にモニターすることができる。
【0039】
これによって、第2モードにおいて、セレクタSEL3の選択を切り換えることにより、DCAフェーダの操作に応じてレベル調整された信号状態(DCAアンプの出力)と、それ以前に各チャンネル毎のフェーダで独自に調整された信号レベル調整状態(DCAバスの出力)とを比較してモニターすることができる。
【0040】
また、第2モードにおいて、ミキシングバスセレクタMIXSELでは、ポストフェーダ信号POST_Fを選択して、DCAフェーダの操作の影響を受けたオーディオ信号をミキシングバスを介して発音する一方で、セレクタSEL3ではDCAアンプDCA1〜DCAmを経由しないDCAバスの出力を選択して、DCAフェーダの操作の影響を受けていない、それ以前の、各チャンネル毎のフェーダで独自に調整された信号レベル調整状態をモニターする、といった使い方も可能である。そうすると、DCAフェーダの操作前と後の信号レベル調整状態を容易に比較できるので、DCAフェーダの操作具合が適切かどうかの判断を素早く行い易い。なお、この場合は、DCAフェーダの操作後の信号レベル調整状態からなるオーディオ信号をミキシングバスを介して発音すると同時に、DCAフェーダの操作前の信号レベル調整状態がDCAバスでモニタできるものであるが、後述する変更例では、その逆の形態とすることもできる。
【0041】
図4は、DSP20によって実現されるミキシング処理部の別の構成例を機能的に示す略図である。図4において、図3と同一の構成要素は同一符号にて示し、説明を省略する。図4の例においては、各DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmに対応して設けたDCAバス(サブミキシングバス)DCA−1R,1L,...mR,mLは、それぞれ左右一対のステレオバスからなっていて、ステレオバスSTに送られるオーディオ信号の各DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmで制御された信号調整状態をステレオでモニターできるようにしている。
【0042】
例えば、図示された一対のDCAバスDCA−1R,1Lは、DCAフェーダDCAF1に対応する左右一対のステレオバスである。また、一対のDCAバスDCA−mR,mLは、DCAフェーダDCAFmに対応する左右一対のステレオバスである。
【0043】
各DCAフェーダDCAF1〜DCAFmに対応して設けられたDCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmには、図3と同様にフェーダアンプFDAchの出力信号がラインDCA_Lを介して入力される。各DCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmの出力信号はそれぞれに対応するステレオパン制御用のバランスボリュームPAN_D1〜PAN_Dmを経由してそれぞれに対応するDCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLに送られる。例えば、DCAフェーダDCAF1に対応するスイッチASSW1の出力は、それに対応するバランスボリュームPAN_D1を介してステレオパンの右チャンネルと左チャンネルに分離され、右チャンネルの信号はフェーダDCAF1のための右チャンネル用DCAバスDCA−1Rに送られ、左チャンネルの信号はフェーダDCAF1のための左チャンネル用DCAバスDCA−1Lに送られる。同様に、DCAフェーダDCAFmに対応するスイッチASSWmの出力は、それに対応するバランスボリュームPAN_Dmを介してフェーダDCAFmのための右チャンネル用DCAバスDCA−mRと左チャンネル用DCAバスDCA−mLに送られる。
【0044】
各DCAフェーダDCAF1〜DCAFmに対応して設けられたステレオパン制御用のバランスボリュームPAN_D1〜PAN_Dmは、ステレオパン制御用のバランスボリュームPAN_Vの操作に連動して調整される。これにより、DCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLに送られる信号のステレオパン制御状態が、ステレオバスSTに送られる当該チャンネルのCH1オーディオ信号のステレオパン制御状態と同じ状態に設定される。
【0045】
各DCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLでは、各入力チャンネルCH1〜CHnから送られてきたオーディオ信号をそれぞれ混合する。各DCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLの出力側には、DCAアンプ(又は減衰器)DCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLがそれぞれ設けられている。各DCAアンプDCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLは、図3のDCAアンプDCA1〜DCAmと同様に、それぞれに対応するDCAフェーダDCAF1〜DCAFmによる信号レベル調整量の制御状態をシミュレートするものであるが、制御対象信号が左右ステレオ信号に分離されているため、左右ステレオ信号に対応して個別のDCAアンプが対を成して設けられている。対を成すDCAアンプは連動して同じゲインとなるようにゲイン設定される。例えば、フェーダDCAF1に対応する1対のDCAアンプDCA1R,DCA1Lは連動して同じゲインとなるようにゲイン設定され、そのゲイン設定値は、図3のDCAアンプDCA1と同じように設定される。また、フェーダDCAFmに対応する1対のDCAアンプDCAmR,DCAmLは連動して同じゲインとなるようにゲイン設定され、そのゲイン設定値は、図3のDCAアンプDCAmと同じように設定される。すなわち、図3の場合と同様に、図4の各DCAアンプDCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLにおいても、第1モードと第2モードのいずれかに応じて異なるゲイン設定がなされる。
【0046】
各DCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLに対応してそれぞれ設けられたセレクタSEL31〜SEL3mは、図3のセレクタSEL3と同様に、DCAアンプDCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLの出力信号とDCAバスDCA−1R,1L,...mR,mLの出力信号(DCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLを経由していない出力信号)の一方を、操作者の操作に応じて各DCAバス対毎に独立に選択するためのものである。例えば、フェーダDCAF1に対応する1対のDCAバスDCA−1R,1Lに対応するセレクタSEL31は連動して切り換えられ、DCAアンプDCA1R,DCA1Lを経由した左右ステレオ信号と、経由していない左右ステレオ信号、のいずれか一方の対を選択する。また、フェーダDCAFmに対応する1対のDCAバスDCA−mR,mLに対応するセレクタSEL3mは連動して切り換えられ、DCAアンプDCAmR,DCAmLを経由した左右ステレオ信号と、経由していない左右ステレオ信号、のいずれか一方の対を選択する。
【0047】
各セレクタSEL31〜SEL3mの出力は、メーターMTRd1R,MTRd1L,...MTRdmR,MTRdmLにそれぞれ入力される。これにより、各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1R,1L,...mR,mLで混合された左右ステレオのオーディオ信号のレベルをそれぞれ個別にメーター表示(可視的にモニター)できる。また、各セレクタSEL31〜SEL3mの出力信号は、CueバスCUEの左右バスにステレオ信号として入力されるようになっており(左ステレオのオーディオ信号はCueバスCUEの左バスに、右ステレオのオーディオ信号はCueバスCUEの右バスに、入力される)、これにより、CueバスCUEの出力を介してヘッドフォン等により各DCAバス(サブミキシングバス)DCA−1R,1L,...mR,mLから出力されるステレオオーディオ信号をステレオのままで聴感的にモニターすることができる。
【0048】
次に、上記各実施例に対する種々の変更例について説明する。
(1) 図3及び図4において、ミキシングバスセレクタMIXSELでフェーダアンプFDAchの出力信号(ラインDCA_Lの信号)を選択できるようにしてもよい。例えば、各ミキシングバスセレクタMIXSELを3位置切り換えタイプに変更し、上記プリフェーダ信号PRE_Fとポストフェーダ信号POST_Fの他に、フェーダアンプFDAchの出力信号(ラインDCA_Lの信号)を選択できるようにする。あるいは、各ミキシングバスセレクタMIXSELが2位置切り換えタイプであれば、上記とポストフェーダ信号POST_Fと、フェーダアンプFDAchの出力信号(ラインDCA_Lの信号)のいずれかを選択できるように変更する。
【0049】
そうすると、前記第2モードにおいて、このミキシングバスセレクタMIXSELでフェーダアンプFDAchの出力信号(ラインDCA_Lの信号)を選択して、DCAフェーダの操作の影響を受けていない、それ以前の、当該チャンネルのフェーダで独自に調整された信号調整状態を保ったオーディオ信号をミキシングバスを介して発音する一方で、セレクタSEL3(図3)又はSEL31〜SEL3m(図4)ではDCAアンプDCA1〜DCAm(図3)又はDCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmL(図4)の出力を選択して、DCAフェーダの操作の影響を受けた信号レベル調整状態をモニターする、といった使い方が可能となる。この使い方の場合も、前述と同様に、DCAフェーダの操作前と後の信号レベル調整状態を容易に比較できるので、DCAフェーダの操作具合が適切かどうかの判断を素早く行い易い。なお、この場合は、前述の例とは逆に、DCAフェーダの操作前の信号レベル調整状態からなるオーディオ信号をミキシングバスを介して発音すると同時に、DCAフェーダの操作後の信号レベル調整状態がDCAバスでモニタできる。
【0050】
(2) 図3,図4の例では、DCAバスの出力信号を可聴的にモニタするために、CueバスCUE及びそのオーディオ出力部を利用しているが、これに限らず、DCAバスの専用のオーディオ出力部(可聴的出力モニタ手段)を設けてもよい。
【0051】
(3) 図3,図4において、セレクタSEL3、SEL31〜SEL3mを省略し、DCAアンプDCA1〜DCAm、DCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLの出力のみをDCAバスを介してモニタするようにしてもよい。
【0052】
(4) 図3,図4において、DCAバスに設けたDCAアンプDCA1〜DCAm、DCA1R,DCA1L,...DCAmR,DCAmLを省略し、入力チャンネルのDCAアンプDCAchの出力信号をDCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmを介して各DCAバスに送るようにしてもよい。その場合、セレクタSEL3、SEL31〜SEL3mは省略してもよいし、省略せずに各DCAバスの入力側に設けるようにしてもよい。
【0053】
(5) 図3,図4の例では、DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmに対して入力チャンネルCH1〜CHn側の信号調整用フェーダ(第1の操作子)ChF1〜ChFnを割り当てる例を示したが、これに限らず、DCAフェーダ(第2の操作子)DCAF1〜DCAFmに対して出力チャンネル(出力チャンネル部OUTの各チャンネル)側の信号調整用フェーダ(第1の操作子)MIX−F,ST−F,CUE−Fを割り当てる場合においても本発明を適用することができる。その場合、各DCAバスの入力側に設けられたDCA割り当てスイッチASSW1〜ASSWmに対して、当該DCAフェーダが割り当てられている出力チャンネルの信号(該当するフェーダMIX−F,ST−F,CUE−Fの出力)を入力するようにDSP20における論理的配線を設定すればよい。その場合においても、前述した第1モードと第2モードの使い分けができるように、各フェーダMIX−F,ST−F,CUE−Fの実体的構成を図3,図4に示されたフェーダアンプFDAchとDCAアンプDCAchの組み合わせからなるもので構成するようにしてよい。
【0054】
(6) DCAフェーダを前述の第1モードと第2モードのいずれかで選択的に動作させることは発明の必須事項ではなく、いずれか一方のモードでのみ動作させるようにしてもよいし、その他のモードで動作させるようにしてもよい。
【0055】
(7) 図3,図4の例では、DCAバス(サブミキシングバス)をDSP20において構成しているが、CPU11においてソフトウェアプログラムによって構築するようにしてもよい。あるいは、DCAバス(サブミキシングバス)及びそれに関連する部分を専用の電子回路ハードウェアで構成してもよい。
【0056】
(8) 図3,図4に示すミキシング処理部は、その一部又は全部をCPU11においてソフトウェアプログラムによって構築するようにしてもよい。あるいは、DCAバス(サブミキシングバス)を含む図3,図4に示すミキシング処理部は、その一部又は全部を専用の電子回路ハードウェアで構成してもよい。
【0057】
(9) 信号調整用のフェーダとして機能する操作子の形式は、摘みを直線的に動かすスライダタイプに限らず、回転式ノブあるいはダイヤルタイプであってもよいし、その他のタイプであってもよい。
(10) 本発明は、オーディオミキサに限らず、ビデオミキサにおいても応用可能である。その場合、モニタする対象となる信号調整状態若しくは信号状態は、信号レベルに限らず、当該DCAフェーダで調整しようとする信号要素に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例に係るデジタルミキサのハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】図1の実施例において設けられている本発明に関連する信号レベル調整用のフェーダ式操作子の配置例を示す図。
【図3】図1のDSPによって実現されるミキシング処理部の構成を機能的に示す略図。
【図4】図1のDSPによって実現されるミキシング処理部の別の構成例を機能的に示す略図。
【符号の説明】
【0059】
10 デジタルミキサ
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 操作子
20 DSP
ChF1〜ChFn チャンネルフェーダ(第1の操作子)
DCAF1〜DCAFm DCAフェーダ(第2の操作子)
MIX−1,2,...N ミキシングバス
DCA−1,2,...m DCAバス(サブミキシングバス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象である信号を処理するための複数の入力チャンネルと、
前記入力チャンネルで処理された信号を混合するミキシングバスと、
ミキシングバスから出力された信号を処理するための出力チャンネルと、
前記入力チャンネルと出力チャンネルの少なくとも一方において各チャンネル毎に設けられた信号調整用の第1の操作子であって、該第1の操作子の操作に応じて対応するチャンネルの信号を調整するものと、
任意のチャンネルに対して割り当て可能な、信号調整用の複数の第2の操作子と、
個々の前記第2の操作子に対して、前記入力チャンネルと出力チャンネルの少なくとも一方における任意の1又は複数のチャンネルの前記第1の操作子を割り当て、個々の前記第2の操作子の操作に応じて、当該第2の操作子に対して割り当てられた前記1又は複数のチャンネルの前記第1の操作子における信号調整量をそれぞれ制御する制御手段と、
複数のサブミキシングバスであって、各サブミキシングバスが前記各第2の操作子に対応してそれぞれ設けられており、該各サブミキシングバスは、前記制御手段による割り当てに従って当該サブミキシングバスに対応する第2の操作子の制御対象となった前記1又は複数のチャンネルの信号を混合するものと、
前記サブミキシングバスに対応して設けられた、該サブミキシングバスで混合された信号をモニタするモニタ手段と
を備えたミキサ装置。
【請求項2】
前記制御手段による割り当てに従って前記第2の操作子に対して割り当てられた前記1又は複数のチャンネルの該第2の操作子で調整される前の信号又は調整された後の信号の一方を選択する選択手段を更に備え、
前記サブミキシングバスでは前記選択手段で選択された信号を混合出力し、前記モニタ手段では前記選択手段で選択された信号の混合出力をモニタすることにより、前記第2の操作子で調整される前の信号の混合出力又は調整された後の信号の混合出力のいずれかを選択的にモニタできることを特徴とする請求項1に記載のミキサ装置。
【請求項3】
前記各サブミキシングバスは、ステレオバスで構成され、前記制御手段による割り当てに従って当該サブミキシングバスに対応する第2の操作子の制御対象となった前記1又は複数のチャンネルの信号をステレオバスの左右バスに分配し、各左右バス毎に混合するものである請求項1又は2に記載のミキサ装置。
【請求項4】
前記モニタ手段は、前記各サブミキシングバスで混合された信号の状態をそれぞれ可視表示する複数の表示器を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のミキサ装置。
【請求項5】
前記モニタ手段は、前記各サブミキシングバスで混合された信号を聴き取り可能にする手段を含む請求項1乃至4のいずれかに記載のミキサ装置。
【請求項6】
処理対象である前記信号はオーディオ信号であり、前記第1及び第2の操作子はオーディオ信号のレベルを調整するものである請求項1乃至5のいずれかに記載のミキサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−239761(P2009−239761A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85060(P2008−85060)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】