説明

ミシンの縫製記録装置

【課題】回転速度毎のミシンの駆動時間を把握することができ、これにより、容易に作業者の作業パターンを分析する。
【解決手段】ミシン主軸の回転速度を計測する回転速度計測手段29と、予め設定された複数の基準回転速度毎に、計測された回転速度が各基準回転速度を超えている時間をそれぞれ累計し、各基準回転速度毎の累計時間を算出する累計時間算出手段30と、複数の基準回転速度と算出された累計時間とを対応させた累計データを作成する累計データ作成手段31と、累計データを表示する累計データ表示手段41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミシンの縫製記録装置に係り、特に、ミシン主軸の回転速度および縫製時間に基づいて縫製状況を記録するミシンの縫製記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミシンの縫製作業を行う作業者の縫製状況を把握することにより、縫製作業の向上を図るという観点から、縫製作業中におけるミシン主軸の回転速度の推移を計測するミシンの縫製記録装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のミシンの縫製記録装置は、縫製作業中におけるミシン主軸のミシン主軸の回転速度をミシン主軸の回転速度を検出することにより計測し、検出された回転速度を所定時間経過毎に記録するようになっている。そして、このミシンの縫製記録装置は、記録された所定時間経過毎のミシン主軸の回転速度の推移を、図9に示すように、時間対回転速度のグラフとして操作パネル41において表示するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−167069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、作業者の縫製作業の向上を図るという観点からは、ミシン主軸の回転速度毎のミシンの駆動時間を把握することにより、各作業者固有の縫製作業の作業パターンを分析することが必要である。
【0006】
しかし、前述のミシンの縫製記録装置によれば、ミシン主軸の回転速度の時間的変化のグラフが操作パネル41に表示されるのみであり、このグラフのみでは、作業者固有の作業パターン(習慣や癖)を分析し、縫製作業の改善のための着眼点を見いだすためには時間および手間がかかり、困難であるという問題を有していた。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、回転速度毎のミシンの駆動時間の累計を把握することができ、これにより、容易に作業者固有の作業パターンを分析することができるミシンの縫製記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係るミシンの縫製記録装置の特徴は、ミシン主軸の回転速度を計測する回転速度計測手段と、予め設定された複数の基準回転速度毎に、前記計測された回転速度が各基準回転速度を超えている時間をそれぞれ累計し、前記各基準回転速度毎の累計時間を算出する累計時間算出手段と、前記複数の基準回転速度と前記算出された前記累計時間とを対応させた累計データを作成する累計データ作成手段と、前記累計データを表示する累計データ表示手段とを備えている点にある。
【0009】
この本発明に係るミシンの縫製記録装置によれば、回転速度計測手段によって、ミシン主軸の回転速度を計測し、累計時間算出手段によって複数の基準回転速度毎のミシンの駆動時間を累計し、累計データ作成手段によって複数の基準回転速度と累計時間とを対応させた累計データを作成し、作成された累計データを表示することができる。これにより、縫製作業の作業者は、自動的に累計時間対基準回転速度を取得し、この累計時間対回転速度を用いて作業パターンを把握することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のミシンの縫製記録装置によれば、累計時間対基準回転速度とを対応させた累計データを表やグラフ等の形式で表示することにより、例えば、ある作業者は、所定の低速以下でのミシンの駆動時間が他の人の2倍も長い等、容易に各作業者固有の作業パターンを定量的に把握することができ、これにより、作業者毎の作業パターンを分析し、縫製作業の改善のための着眼点を見いだすことができる。この結果、各作業者の縫製作業効率の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2記載のミシンの縫製記録装置によれば、自動的に作業者毎の累計データが取得できるので、請求項1記載と同様の効果を奏することができるとともに、作業者毎の作業パターンをより容易に取得することができる。
【0012】
請求項3記載のミシンの縫製記録装置によれば、累計データを外部に出力することができるので、請求項1記載と同様の効果を奏することができるとともに、累計データをパソコン等に出力することによりさらに詳細の作業パターンの分析ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るミシンの縫製記録装置の一実施形態を図1から図8を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るミシンの縫製記録装置が用いられたミシンを示す概略正面図であり、図2は、図1のミシンの縫製記録装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、ミシン1におけるミシン本体6には、針棒3に支持された針5が備えられており、針棒3には、図示しないミシン主軸が連結され、針棒3に支持された針5は、主軸モータ7の駆動によるミシン主軸の回転によって、上下動するようになっている。
【0016】
また、ミシン主軸のプーリには、エンコーダ9が取り付けられており、エンコーダ9は、ミシン主軸の回転によってミシン主軸の回転速度に比例した周波数のパルス信号を発生するようになっている。
【0017】
また、ミシン1には、ペダル10が設けられており、ミシン1は、縫製の作業者がペダル10の前踏み操作を行うことにより主軸モータ7を回転させて縫製を開始し、ペダル10の後踏み操作を行うことにより糸切りを行って縫製を終了するようになっている。
【0018】
ミシン1は、ミシン制御装置11を有しており、ミシン制御装置11は、ミシン1の縫製全体を制御するCPU12、演算したデータや検出、計測したデータを格納する記録手段としてのEEPROM、EPROM等からなるメモリ13、縫製プログラムなどを格納したROM15、および作業領域を提供するRAM16等から構成されている。このミシン制御装置11は、メモリ13やROM15等に記録された縫製パラメータ、縫製データ、その他の種々の命令にしたがい、ペダル10の踏み込み量に応じて縫製を制御するようになっている。
【0019】
そして、ミシン制御装置11は、ペダル10の前踏み操作が行われたことを検出すると、ミシン起動コマンドを格納してミシン1の主軸モータ7を駆動させることにより針5を上下動させるとともに、針5の上下動に応じ、布地を所定の布送りピッチによって送ることにより、この布地を縫製するようになっている。このとき、ミシン制御装置11は、各種センサ17からの信号、メモリ13に格納された縫製データや調整データ等にしたがって、主軸モータ7や、電磁弁およびモータ等の各種アクチュエータ18の駆動を制御して、縫製するようになっている。また、ミシン制御装置11は、ペダル10の後踏み操作が行われたことを検出すると、糸切りコマンドを格納して糸切りを行い縫製を終了するようになっている。
【0020】
また、ミシン制御装置11は、エンコーダ9から出力されるパルス信号に基づいてミシン主軸の回転速度を計測する回転速度計測手段29を備えており、ミシン制御装置11においてミシン起動コマンドを格納してミシン1の主軸モータ7が駆動されると、所定の時間経過毎にミシン主軸の回転速度を計測して、回転速度記録手段として機能するメモリ13にその回転速度データを記録するようになっている。
【0021】
また、ミシン1は、時間計測手段としてのタイマ19を備えており、ミシン制御装置11は、タイマ19によってミシン起動コマンドが発生してから糸切りコマンドが発生するまでの時間、および糸切りコマンドが発生してから次の糸切りコマンドが発生するまでの時間を計測し、これらの計測された時間のデータをメモリ13に記録するようになっている。
【0022】
さらにまた、ミシン1は、ミシンの縫製作業者を特定する作業者データを入力する作業者データ入力手段として機能するとともにミシン1の各種操作を設定する操作装置20を備えており、操作装置20には、液晶表示パネルからなる表示部21が配設されている。表示部21には、透明のタッチパネル式の操作ボタン22が重ね合わせて配設されており、表示部21の周辺部分には、多数の機能ボタン23が配設されている。
【0023】
操作装置20は、CPU25、計測したデータを格納する記録手段としてのEEPROM、EPROM等からなるメモリ26、ROM27、およびRAM28を有し、CPU25は、操作ボタン22や機能ボタン23を操作することによって入力された信号に応じて、各種演算あるいは設定を行うようになっている。
【0024】
また、操作装置20は、ミシン制御装置11のメモリ13に記録されたミシン主軸の回転速度データに基づいて、予め設定された複数の基準回転速度について、回転速度計測手段29により計測された回転速度が各基準回転速度を上回っている時間をそれぞれ累計して各基準回転速度毎の累計時間を算出する累計時間算出手段30と、上述の複数の基準回転速度と累計時間算出手段30によって累計された累計時間とを対応させた累計データを作成する累計データ作成手段31と、表示部21と共に機能して作成された累計データを累計時間対前記基準回転速度のグラフの形式で表示部21に表示する累計データ表示手段41とを備えている。さらに、操作装置20は、時間計測手段としてのタイマ32を備えている。
【0025】
そして、ミシン制御装置11と操作装置20とは、それぞれインターフェイス33、35を介して通信可能とされており、相互に各種データを交換することができるようになっており、ミシン制御装置11は、操作装置20から入力した操作装置20において設定されるデータにしたがって、主軸モータ7や各種アクチュエータ18を制御し縫製を行うようになっている。
【0026】
さらに、操作装置20は、他のインターフェイス36を介して、外部のコンピュータ37と相互に各種データを交換することができるようになっており、上述の累計データもこのインターフェイス36を介して外部のコンピュータ37に出力することができる。さらに他のインターフェイス38を介して外部の記憶媒体として機能する着脱式記録媒体39と相互に通信可能とされており、着脱式記録媒体39に記録されているデータを読み込むことができるとともに、操作装置20の上述の累計データを始めとする各種データを着脱式記録媒体39に記録して保存することができるようになっている。従って、操作装置20は、上述の累計データを外部に出力する出力手段としても機能する。
【0027】
次に、本実施形態に係るミシン1の縫製記録装置2によるミシン主軸の回転速度の計測について図3を用いて説明する。本実施形態においては、ミシン主軸の回転速度を時間経過対ミシン主軸の回転速度として説明する。
【0028】
図3に示すように、まず、作業者によってミシン1の電源スイッチ8がONにされると、ミシン制御装置11は、操作装置20の表示部21において初期画面の表示を行うとともに、各種データの初期化を実施する(ST1)。
【0029】
続いて、ミシン制御装置11は、作業者によってペダル10の前踏み操作が行われたか否かを監視し(ST2)、前踏み操作を検出した場合には(ST2においてYes)、ミシン起動コマンドを格納して(ST3)、主軸モータ7を駆動することによりミシン主軸を回転させる(ST4)。
【0030】
一方、前踏み操作を検出しない場合には、(ST2においてNo)、操作装置20の操作ボタン22や機能ボタン23が操作されたか否かを検出することにより、操作装置20の操作ボタン22や機能ボタン23の操作により作業者データが入力され作業者が変更されたか否かを判断する(ST5)。ここで、ミシン制御装置11は、作業者が変更されたと判断した場合には(ST5においてYes)、変更された作業者の作業者データをメモリ13に格納する(ST6)。そして、ミシン制御装置11は、作業者データをメモリ13に格納した後(ST6)、または作業者が変更されていないと判断した場合(ST5においてNo)、続いて、操作装置20の操作ボタン22や機能ボタン23の操作により作業工程が変更されたか否かを判断する(ST7)。
【0031】
ここで、作業工程が変更されたと判断した場合には(ST7においてYes)、変更された作業工程の作業工程データをメモリ13に格納する。(ST8)。そして、ミシン制御装置11は、作業工程データをメモリ13に格納した後(ST8)、または、作業工程が変更されていないと判断した場合(ST7においてNo)、前踏み操作が行われたか否かの監視を続ける(ST2)。
【0032】
また、ミシン制御装置11は、ミシン主軸を回転させた後(ST4)、ペダル10の前踏み操作が続いているか否かを監視し(ST9)、前踏み操作が続いている場合には(ST9においてYes)、ミシン主軸を継続して回転させながら(ST4)、前踏み操作が続いているか否かの監視を繰り返す(ST9)。一方、ミシン制御装置11は、前踏み操作が終了したことを検出した場合には(ST9においてNo)、起動停止コマンドを格納し(ST10)、ミシン主軸の回転を停止させる(ST11)。そして、ミシン制御装置11は、ミシン主軸の回転が停止している間、ペダル10の後踏み操作が行われたか否かを監視し(ST12)、後踏み操作が行われていない場合には(ST12においてNo)、ペダル10の前踏み操作が行われたかを監視する(ST2)。一方、後踏み操作が行われた場合には(ST12においてYes)、糸切りコマンドをメモリ13に格納し(ST13)、糸切りを行い(ST14)、縫製を終了し、作業者によってミシン1の電源スイッチ8がOFFにされるまで、作業者によってペダル10の前踏み操作が行われたか否かを監視する(ST2)。
【0033】
このとき、図4に示すように、操作装置20の回転速度計測手段29は、作業者によってミシン1の電源スイッチ8がONにされると、定期的な割り込み処理でミシン主軸が回転中か否かを監視する(ST20)。ここで、回転速度計測手段29は、ミシン主軸が回転中であると判断した場合には(ST20においてYes)、ミシン主軸の回転速度の計測を開始し(ST21)、回転速度を計測するための所定の計測時間に達したか否かを判断する(ST22)。この所定時間とは、縫製状況を記録する際の基準単位時間であり、本実施形態においては100msecとする。そして、回転速度計測手段29は、所定の計測時間に達していると判断した場合には(ST22においてYes)、CPU12によりエンコーダ9からのパルス信号を取り込むことによりミシン主軸の回転速度を算出し、計測した回転速度をメモリ26に記録する(ST23)。
【0034】
一方、回転速度計測手段29は、ミシン主軸が回転中ではないと判断した場合(ST20においてNo)、または回転速度を計測するための所定の計測時間に達していないと判断した場合(ST22においてNo)は、ミシン主軸の回転速度の計測を行わずに処理を終了する。回転速度計測手段29によって、ミシン主軸の回転を監視する処理や、ミシン主軸が回転している場合にはその回転速度を計測する処理は、作業者によりミシン1の電源スイッチ8がOFFにされるまで、継続して行われる。
【0035】
次に、記録した回転速度データを用いてミシン1の回転速度毎の駆動時間を累計した累計データを作成し、作成された累計データをグラフとして表示する工程について、図5から図8を用いて説明する。
【0036】
なお、本実施形態においては、図5に示す累計時間算出手段30による累計時間の算出は、図3のST14に示す糸切りが行われる毎に自動的に実行されるものとする。まず、図5に示すように、操作装置20の累計時間算出手段30は、前回の糸切り後に開始された縫製作業の作業者データおよび作業工程データをメモリ13から読み込み(ST30)、読み込んだ作業者データおよび作業工程データに基づき、その作業者におけるその作業工程の累計データ記録領域を作成する(ST31)。
【0037】
図6に示すように、累計データ記録領域とは、累計時間算出手段30が算出した累計時間に基づいて累計データ作成手段41が作成した累計データを記録するための領域である。本実施形態においては、各基準回転速度として、ミシン主軸の回転速度100rpmから、回転速度500rpm以降、回転速度5500rpmまで500rpm毎の単位で、基準回転速度がそれぞれ累計データ記録領域に予め設定され、それぞれの基準回転速度に対する累計時間を記録することができるようになっている。
【0038】
続いて、累計時間算出手段30は、ミシン制御装置11のメモリ13から回転速度データを格納された順序にしたがって読み込み(ST32)、まず、読み込んだ回転速度データの数値が累計データ記録領域の最小の基準回転速度よりも大きいか否かを判断する(ST33)。そして、累計時間算出手段30は、読み込んだ回転速度データが最小の基準回転速度よりも大きいと判断した場合には(ST33においてYes)、累計データ記録領域における最小の基準回転速度に対応する時間累計データに基準単位時間を加算する(ST34)。このように、累計データ記録領域における各基準回転速度に対応する時間累計データには、メモリ13から読み込んだ回転速度データが各基準回転速度よりも大きい場合に基準単位時間が加算される。
【0039】
さらに、累計時間算出手段30は、累計データ記録領域に次に大きい基準回転速度があるか否かを判断し(ST35)、次に大きい基準回転速度があると判断した場合には(ST35においてYes)、読み込んだ回転速度データが次に大きい基準回転速度よりも大きいか否かを判断する(ST36)。そして、累計時間算出手段30は、読み込んだ回転速度データが次に大きい基準回転速度よりも大きいと判断した場合には(ST36においてYes)、該当する基準回転速度に対応する時間累計データに基準単位時間を加算した後(ST34)、累計データ記録領域にさらに次に大きい基準回転速度があるか否かを判断する(ST35)。
【0040】
一方、累計時間算出手段30は、読み込んだ回転速度データが累計データ記録領域の最小の基準回転速度と同一または当該基準回転速度よりも小さいと判断した場合(ST33においてNo)、次に大きい基準回転速度がないと判断した場合(ST35においてNo)、または、読み込んだ回転速度データが次に大きい基準回転速度と同一または小さいと判断した場合には(ST36においてNo)、ST32で読み込んだ回転速度に対する累計時間算出手段30の処理を終了し、ST37〜ST41で実行される累計データ作成手段31の処理を移行する。
【0041】
ここで、累計データ作成手段31は、メモリ13にさらに格納された回転速度データが存在するか否かを判断する(ST37)。回転速度データが存在すると判断した場合には(ST37においてYes)、作業者(縫製作業者)または作業工程(縫製作業工程)が変更されたか否かを判断する(ST38)。そして、累計データ作成手段31は、メモリ13に作業者データおよび作業工程データが格納されており、作業者または作業工程が変更されたと判断した場合には(ST38においてYes)、読み込んだ作業者データおよび作業工程データに基づいて、その作業者におけるその作業工程の累計データ記録領域が存在するか否かを判断する(ST39)。そして、累計データ作成手段30は、各累計データ記録領域が存在すると判断した場合には(ST39においてYes)、累計データの記録領域を該当する作業者におけるその作業工程の累計データ記録領域に変更する(ST40)。一方、該当する作業者におけるその作業工程の累計データ記録領域が存在しないと判断した場合には(ST39においてNo)、その作業者におけるその作業工程の累計データ記録領域を新たに作成する(ST41)。
【0042】
また、累計データ作成手段31は、作業者または作業工程が変更されていないと判断した場合(ST38においてNo)、読み込んだ回転速度データを比較する対象を変更した場合(ST40)、または、所定の回転速度別に作業者および作業工程毎の累計データ記録領域を新たに作成した場合には(ST41)、再度、ST32から開始される累計時間算出手段30に処理を移行する。その後、操作装置20は、再度メモリ13から回転速度データを読み込み(ST32)、ST33〜ST36、ST37〜ST41の工程を再度繰り返す。
【0043】
一方、メモリ13にさらなる回転速度データが存在しないと判断した場合には(ST37においてNo)、累計データ作成手段31の処理を終了する。
【0044】
上述のように、累計データ作成手段31は、累計時間算出手段30を介して、累計データを作成し、結果的に累計データ記録領域には、縫製作業者毎、または作業工程毎に複数の基準回転速度と算出された累計時間とを対応させた累計データDs(図6)が作成される。
【0045】
例えば、図6に示すミシン制御装置11のメモリ13に格納された各データに基づき回転速度毎の駆動時間を累計する場合、累計時間算出手段は30は、矢印Sで示す糸切りコマンドが取り込まれた時点で、まず、前回の糸切り後に最初に入力された作業データおよび作業工程データを読み込み(ST30)、読み込んだ作業データおよび作業工程データに対する累計データ記録領域Dを作成した後(ST31)、図6に示すミシン制御装置11のメモリ13においてミシン起動コマンドの次に格納された回転速度112rpmを読み込み(ST32)、読み込んだ回転速度データが、最小の基準回転速度100rpmよりも大きいか否かを比較する(ST33)。そして、累計時間算出手段30は、回転速度100rpmよりも大きいと判断し(ST33においてYes)、基準回転速度100rpmに対応する時間累計データに、基準単位時間である100msecを加算する(ST34)。
【0046】
続いて、累計時間算出手段30は、最小の基準回転速度100rpmの次に大きい基準回転速度があると判断し(ST35においてYes)、最初に読み込んだ回転速度112rpmが、最小の基準回転速度100rpmの次に大きい基準回転速度500rpmより大きいか否かを比較した結果、500rpmより小さいと判断し(ST36においてNo)、500rpmに対応する時間累計データに基準単位時間を加算せず、次いで、累計データ作成手段31が、メモリ13にさらに格納された回転速度データが存在するか否かを判断する(ST37)。
【0047】
そして、累計データ作成手段31は、メモリ13において回転速度112rpmの回転速度データよりも後にさらなる回転速度データが存在することから、次の回転速度データが存在すると判断する(ST37においてYes)。さらに、累計データ作成手段31は、回転速度112rpmの回転速度データの次に作業データおよび作業工程データがないことから作業者または作業工程が変更されていないと判断し(ST38においてNo)、次いで、累計時間算出手段30が、次の回転速度データである回転速度1523rpmをメモリ13から読み込む(ST32)。
【0048】
続いて、累計時間算出手段30は、読み込んだ回転速度データが回転速度100rpmよりも大きいと判断し(ST33においてYes)、基準回転速度における回転速度100rpmに対応する時間累計データに基準単位時間100msecを加算する(ST34)。これにより、累計データ記録領域における基準回転速度100rpmに対応する時間累計データが、先に読み込んだ回転速度112rpmのときの基準単位時間と合算されて200msecとなる。このようにして、累計時間算出手段30は、各基準回転速度毎の駆動時間を累計する。
【0049】
また、累計時間算出手段30は、読み込んだ回転速度1523rpmが先の100rpmの次に大きい基準回転速度500rpmよりも大きいと判断すると(ST36においてYes)、基準回転速度における回転速度500rpmに対応する時間累計データに基準単位時間100msecを加算し(ST34)、さらに、次の基準回転速度があるか否かを判断する(ST35)。累計時間算出手段30は、このST35〜ST36の各工程を基準回転速度1500rpmまで繰り返した後、読み込んだ回転速度が回転速度2000rpmよりも大きいか否かを比較した結果、2000rpmよりも小さいと判断し、その後、累計データ作成手段31が、メモリ13にさらに格納された回転速度データが存在するか否かを判断する(ST37)。なお、図6のミシン制御装置のメモリを示す図には、矢印Sで示す糸切りコマンドの後にも回転速度データが記録されているが、矢印Sの後のデータは、矢印Sの糸切りコマンドの取り込み時に実行された累計時間算出手段30の処理後に取得された回転速度データであり、これらの回転速度データに対しても糸切りコマンドの取得毎に累計時間の算出と累計データの作成が行われている。
【0050】
次に、操作装置20の累計データ表示手段41について説明する。図7に示すように、操作装置20の累計データ表示手段41は、作業者により所定の機能ボタン23が操作され累計データ表示手段41による累計時間対基準回転速度(累計時間対回転速度とも記載する)のグラフ表示の指示が与えられると(ST51においてYes)、現在作業中である作業者及び作業工程の累計データに基づく累計時間対回転速度のグラフを生成して表示部21において表示する(ST52)。
【0051】
続いて、累計データ表示手段41は、所定の操作ボタン22の操作による作業者及び作業工程の変更指示の有無を判断し(ST53)、作業者及び作業工程の変更が指示されると(ST53においてYes)、対応する作業者及び作業工程の累計データ記憶領域から該当する累計データを読み込む(ST54)。
【0052】
また、累計データ表示手段41は、作業者及び作業工程の変更指示が無い場合、または、変更された作業者及び作業工程の累計データの読み込み後、所定の操作ボタン22の操作によるグラフ表示の終了指示の有無を判定し(ST55)、終了指示のない場合(ST55においてNo)、変更された作業者及び作業工程に対応する累計データに基づく累計時間対回転速度のグラフを生成し表示部21において表示する(ST52)。一方、終了指示があった場合(ST55においてYes)は、累計データ表示手段41の処理を終了する。
図8は、本実施形態において累計データ表示手段41により生成され表示された累計時間対回転速度のグラフを示している。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0054】
本実施形態によれば、操作装置20は、回転速度計測手段29によって、定期的な割り込み処理によりミシン主軸の回転速度を計測し、回転速度計測手段29において回転速度データを記録し、この回転速度データに基づいて累計時間算出手段30によって複数の基準回転速度毎に各基準回転速度を超えている時間をそれぞれ累計し、各基準回転速度毎の累計時間を算出し、累計データ作成手段31によって複数の基準回転速度と算出された累計時間とを対応させた累計データを作成し、累計データ表示手段41によって累計時間対回転速度のグラフを生成することができる。これにより、縫製作業の作業者は、ミシン1の操作装置20における所定の機能ボタン23を操作することにより、自動的に累計時間対回転速度のグラフを取得し、この累計時間対回転速度のグラフを用いて作業パターンを把握することができる。
【0055】
したがって、容易に各作業者固有の作業パターンを把握することができ、これにより、各作業者の作業パターンを分析し、縫製作業の改善のための着眼点を見いだすことができる。この結果、作業者の縫製作業の効率の向上を図ることができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0057】
例えば、上記実施の形態では、計測された回転速度が累計時間算出手段が各基準回転速度を超えている時間を累計しているが、計測された回転速度が各基準回転速度以上の時間を累計しても良い。
【0058】
また、上記実施の形態では、累計データ表示手段41は、累計時間対回転速度のグラフを作成、表示しているが、図6のDsに示す基準回転速度に対する累計時間の表をそのまま表示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るミシンの縫製記録装置が用いられたミシンを示す概略正面図
【図2】図1のミシンの縫製記録装置の構成を示すブロック図
【図3】図1のミシンの縫製記録装置によるミシンの駆動の各工程を示すフローチャート
【図4】図1のミシンの縫製記録装置によるミシン主軸の回転を監視するための定期的な割り込み処理の各工程を示すフローチャート
【図5】図1のミシンの縫製記録装置の累計時間算出手段及び累計データ作成手段の各工程を示すフローチャート
【図6】図5の累計時間算出手段が累計時間を算出し、累計データ作成手段が累計データを作成する際の説明図
【図7】図1のミシンの縫製記録装置の累計データ表示手段が図6に示す累計データに基づいて累計時間対回転速度のグラフを表示する工程を示すフローチャート
【図8】図1のミシンの縫製記録装置の累計データ表示手段により表示された累計時間対回転速度のグラフ
【図9】従来のミシンの縫製記録装置における操作パネルに表示されるミシン主軸の回転速度の推移をあらわすグラフの一例を示す概略図
【符号の説明】
【0060】
1 ミシン
2 縫製記録装置
3 針棒
5 針
6 ミシン主軸
7 主軸モータ
11 ミシン制御装置
12 CPU
13 メモリ
19 タイマ
20 操作装置
21 表示部
22 操作ボタン
23 機能ボタン
25 CPU
26 メモリ
29 回転速度計測手段
30 累計時間算出手段
31 累計データ作成手段
41 累計データ表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン主軸の回転速度を計測する回転速度計測手段と、
予め設定された複数の基準回転速度毎に、前記計測された回転速度が各基準回転速度を超えている時間をそれぞれ累計し、前記各基準回転速度毎の累計時間を算出する累計時間算出手段と、
前記複数の基準回転速度と前記算出された前記累計時間とを対応させた累計データを作成する累計データ作成手段と、
前記累計データを表示する累計データ表示手段を備えていることを特徴とするミシンの縫製記録装置。
【請求項2】
ミシンの縫製作業者を特定する作業者データを入力する作業者データ入力手段を備え、
前記累計データ作成手段は、前記入力された作業者データに基づいて、前記累計データを縫製作業者毎に作成することを特徴とする請求項1記載のミシンの縫製記録装置。
【請求項3】
前記作成された累計データを外部に出力する出力手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のミシンの縫製記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−160391(P2009−160391A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318139(P2008−318139)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】