説明

ミシンの針折れ検出装置

【課題】 複数針用のミシンに適用させると共に右針以外の針が近接センサに接触しないような針折れ検出装置を提供する。
【解決手段】 針の有無を検出するよう針板の下方に配置された近接センサを具備し、該近接センサによる針有無の検出に基づいて針折れを判定するミシンの針折れ検出装置において、左右に並設される針の本数に応じて近接センサが複数個配置されると共に、各近接センサに干渉防止機能付のアンプが接続され、針の所定本数と各近接センサによって検出された針の合計本数と比較することにより針折れを判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの縫製中に発生する針折れを検出するミシンの針折れ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンの針折れ検出装置としては、針の有無を検出するよう針板の下方に配置された近接センサを具備し、該近接センサによる針有無の検出に基づいて針折れを判定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−221392号公報(第2−3頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが従来のミシンの針折れ検出装置においては、単一の近接センサが針板の下方に配置されているに過ぎず、1本針用のミシンしか適用させることができなかった。また近接センサを複数本針用のミシンに適用させるために針板の下方に複数個並設させると、各近接センサが高周波磁界の影響で相互干渉してしまって針折れ判定が困難となっていた。さらに右針以外は針下死点時に針板から針先端までの距離が長いこともあって撓り度合いが酷く、針降下時に針が近接センサに接触することがあった。
従って、本発明の課題は、複数針用のミシンに適用させると共に右針以外の針が近接センサに接触しないような針折れ検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、針の有無を検出するよう針板の下方に配置された近接センサを具備し、該近接センサによる針有無の検出に基づいて針折れを判定するミシンの針折れ検出装置において、左右に並設される針の本数に応じて近接センサを複数個配置すると共に、各近接センサに干渉防止機能付のアンプを接続し、針の所定本数と各近接センサによって検出された針の合計本数と比較することにより針折れを判定するようにしたことを特徴とする。
【0006】
なお近接センサをミシン機枠に固定のブラケットに取付けると共にブラケットに近接センサ保護用のガード片を設けるのが望ましく、ガード片を近接センサの上方で最右針以外の針の後方に位置付けるとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各近接センサに干渉防止機能付のアンプを接続させているので、高周波磁界の影響により相互干渉することがなくなり、複数本針用のミシンでも針折れ判定を行うことができる。なお該針折れ判定を、針の所定本数と近接センサによって検出された針の合計本数とを比較することにより行うようにしたので、作業者が装置概要を把握しやすく且つ構造もシンプルなものにできる。またガード片を近接センサの上方で最右針以外の針の後方に位置付けるようにしたので、いずれの針も降下時に近接センサに接触するのが軽減されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。左右に並設される3本の針(左針1、中針2、右針3)は主軸の回転に連動して上下に往復運動し、その先端部は降下時に針板4を貫通する。針板4の下方ではルーパ5が主軸の回転に連動して左右に揺動し、図1に示されるように、針下死点時にルーパ5の先端は各針の右方に位置している。また下死点に到達した各針の後方には針受け6が配置されている。この針受け6は公知の前後動機構に連結されるもので、針上昇開始時に前進して針後部に接近するよう構成されている。
【0009】
針板4の下方には、針の有無を検出する近接センサ7が備えられている。今回、3本針用のミシンに適用させる為に3個の近接センサが左右に並設され、各近接センサはミシン機枠にネジ8で取付けられたブラケット9に固定されている。なお近接センサの固定高さは各針下端の高さに応じて設定されているため、左側の近接センサが順次下にずれている。本実施の形態では、ブラケット9に穿設されたネジ8用孔を詳述していないが、該孔を縦長にしておくとネジ8の弛緩時にブラケット9の上下位置を調節することができる。左右位置を調節可能にしたい場合は予め該孔を横長に形成しておくとよい。
【0010】
またブラケット9は近接センサ保護用のガード片10を有している。このガード片10はブラケット9前面より突出しており、その先端は近接センサ7の上方で右針3以外の針(左針1,中針2)の後方に位置付けられている。つまり針降下時に左針1及び中針2の先端が撓っても該針1,2の目孔1a,2a近傍がガード片10の作用部10aで支持されることとなり、針1,2の先端部を近接センサ7に接触させないようにすることができる。因みに針受け6が前後動する際にも邪魔とならないようガード片10は針受け6の下方に位置付けられ、各近接センサの配線コードはチューブ7aで束ねられている。
【0011】
各近接センサ7には干渉防止機能付のアンプ11が配線コード(図示省略)を介して接続されている。このアンプ11は増幅回路の一種で干渉防止スイッチを備えており、該スイッチは3位置に切換え可能となっている。本実施の形態では、各近接センサ7に接続されたアンプ11の干渉防止スイッチは夫々異なる位置に設定され、各近接センサ7が高周波磁界の影響で相互干渉しないように構成されている。また近接センサ7に関してはキーエンス社製EH−302が採用され、アンプ11に関しては同社製ES−M1およびES−M2が採用されている。なお近接センサ7の感度調節はアンプ11に付設のボリュームで行う。
【0012】
本発明に係る制御はコンピュータで行われ、コンピュータは図2に示されるように、CPU12、ROM13、RAM14およびEEPROM15を備える。ROM13には針折れ判定の基本動作プログラムが記憶され、RAM14には近接センサ7から出力される関連データが記憶されている。EEPROM15には作業者編集用の針折れ判断基準値が記憶されている。
【0013】
また回転検出器16、針本数設定スイッチ17、ミシン停止回路18、ミシン停止ランプ19およびリセットスイッチ20がCPU12に接続されている。回転検出器16はミシンの1回転毎に回転パルス信号を出力するもので、その出力時期は針下死点以外の所定位置となっている。針本数設定スイッチ17は3位置(1〜3本針用)に切換え可能となっており、ミシン停止回路18はミシンモータの停止信号を出力するためのものである。ミシン停止ランプ19はミシン停止回路18に基づくミシン停止時に点灯し、リセットスイッチ20はミシン停止回路18およびミシン停止ランプ19の動作を初期化するためのものである。
【0014】
次に本実施の形態における制御動作につき図3に従って説明を行う。本装置に電源を投入すると、針折れ検出回数cが初期化されゼロに設定される(#1)。それから針本数設定スイッチ16を通じて針の所定本数hの設定を行い(#2)、ミシン駆動前の準備を施しておく。本実施の形態では針が3本取付けられているので、所定針数hが「3」となるよう設定を行う。ミシンを駆動させると3本の針は針板4を間欠的に貫通するので、対応する近接センサ7で該針の有無を検出し、検出された針の合計本数nを算出する(#3)。つまり各近接センサ7が針を検出した場合は合計針数nが「3」となる。ここで針無しと検出される条件としては、針先端部の分断だけでなく許容外の屈曲も含まれる。
【0015】
そして、回転検出器16より出力される回転パルス信号を確認し(#4)、回転パルス信号が確認されるまで合計針数nの算出(#3)処理を維持する。回転パルス信号が確認された場合は所定針数hと合計針数nとを比較する(#5)。所定針数hと合計針数nとが一致している場合は針折れ検出回数cを初期化してゼロに戻し(#6)、合計針数nの算出(#3)以降の処理を続行させる。所定針数hと合計針数nとが一致しなかった場合は「針折れ」と判定し、針折れ検出回数cに1を加算する(#7)。また針折れ検出回数cが2より上となるか否か、つまり針折れが3回連続で判定されたか否かを確認する(#8)。針折れ検出回数cが2以下の場合は合計針数nの算出(#3)以降の処理を続行させる。
【0016】
針折れ検出回数cが2より上の場合はミシン停止回路18を通じてミシン停止信号を出力し(#9)、ミシン停止ランプ19として採用された停止LEDを点灯させる(#10)。その後、リセットスイッチ20が押されたか否かを確認し(#11)、このリセットスイッチ20が押されるまでミシンモータの停止を維持する。リセットスイッチ20が押されたのを確認したらミシン停止信号をオフにすると共に針折れ検出回数cを初期化し(#12)、合計針数nの算出(#3)以降の処理を続行させる。なお縫製仕様の変更により針の所定本数hを増減させた場合でも、図3に関する動作制御(#3〜#12)をそのまま利用することができ、新たな構成を追加する必要はない。
【0017】
本実施の形態においては、合計針数nの算出(#3)を割り込み処理としており、近接センサによる針折れ検出のタイミングを厳密に限定していない。これにより、速度変化等に伴う針のオーバースローやCPUの演算処理速度を気にする必要がなくなり、高速駆動用のミシンに適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るミシンの針折れ検出装置の設置概要を示した説明図である。
【図2】同検出装置の制御系を示す概略構成ブロック図である。
【図3】同検出装置の針折れ判定に関する動作を説明したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0019】
1,2,3 針
4 針板
7 近接センサ
9 ブラケット
10 ガード片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針の有無を検出するよう針板の下方に配置された近接センサを具備し、該近接センサによる針有無の検出に基づいて針折れを判定するミシンの針折れ検出装置において、
左右に並設される針の本数に応じて近接センサを複数個配置すると共に、各近接センサに干渉防止機能付のアンプを接続し、
針の所定本数と各近接センサによって検出された針の合計本数と比較することにより針折れを判定するようにしたことを特徴とするミシンの針折れ検出装置。
【請求項2】
近接センサがミシン機枠に固定のブラケットに取付けられ、ブラケットに近接センサ保護用のガード片が設けられている請求項1記載のミシンの針折れ検出装置。
【請求項3】
ガード片が近接センサの上方で最右針以外の針の後方に位置付けられる請求項2記載のミシンの針折れ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−22970(P2008−22970A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196938(P2006−196938)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000113229)ペガサスミシン製造株式会社 (52)
【Fターム(参考)】