説明

ミシン用操作装置及びミシン

【課題】ユーザの足の操作に応じてミシンを動作させるミシン用操作装置において、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図る。
【解決手段】ミシン本体に接続されて、ユーザの足元に置かれるミシン用操作装置40は、基台41上に、コントロールボックス42、ペダル装置43、スイッチ操作部44を備える。スイッチ操作部44は、右壁、後壁、左壁からなる手前側が開放した立上り壁48の内壁面に、返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51を設けて構成する。立上り壁48の左壁を可動壁部48aとし、可動壁部48aの左右方向位置を変更する間隔調整機構56を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン本体に接続して、ユーザの足の操作に応じてミシンを動作させるミシン用操作装置及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンにおいて、ユーザは、足踏みペダルをミシンに接続し、足踏みペダルを足で操作することで、ミシンの動作を指示する構成のものが周知である。これによれば、ユーザが、足踏みペダルを足で操作する(踏込む)ことにより、縫製動作の開始や停止の指示、及び縫製速度(ミシンモータの回転速度)の調整を、手を使わずに行うことができる。
【0003】
また、近年では、押え足を上げる動作を指示したり、糸切り動作を指示したりするために、足踏みペダルに加えて、ユーザが足で操作するスイッチを備えた操作装置が考えられている(例えば特許文献1、2参照)。この場合、前記スイッチは、足踏みペダルの横側に配置され、押しボタンやレバー等の操作部材を備えている。ユーザは、足の側面で操作部材を操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−11182号公報
【特許文献2】特開平10−118380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2の構成では、スイッチの操作部材を操作するためには、ユーザは、足の爪先を足踏みペダルの上から少し浮かせながら、左右方向に回動(揺動)させる必要があり、ユーザにとって必ずしも行い易い操作ではなかった。また、ユーザによって足の大きさ(幅)は異なるが、上記特許文献1,2の構成では、足の大きさの大小については考慮されておらず、足の大きさによっては、操作性が悪くなるケースもあった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ユーザの足の操作に応じてミシンを動作させる装置であって、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図ることができるミシン用操作装置、及びこの操作装置を備えたミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のミシン用操作装置は、ミシン本体に接続可能な接続手段と、ユーザが足により操作する操作部材とを有し、当該操作部材の操作に応じた操作信号を出力するミシン用操作装置において、前記操作部材は基台に複数設けられ、前記基台に設けられた少なくとも1つの前記操作部材の位置を変更するための位置調整手段を備えるところに特徴を有する。
【0008】
上記構成によれば、位置調整手段により、少なくとも1つの操作部材の基台上の位置を変更することができるので、ユーザが足で操作する複数の操作部材の位置を、ユーザの足の大きさに合わせて変更することが可能となる。例えばユーザの足が大きい場合には操作部材の間隔を広げ、足が小さい場合には操作部材の間隔を狭めるようにする。つまり、ユーザの足の大きさに合わせて、ユーザが操作し易いように操作部材の位置を調整することが可能になる。
【0009】
請求項2のミシン用操作装置は、請求項1の発明において、前記操作部材は、足の操作を接触又は非接触で検出する検出器を有し、少なくとも2つの前記検出器が、前記基台に置かれた足を側方から挟んで向い合うように設けられ、前記位置調整手段は、少なくとも2つの前記検出器の間隔を拡大又は縮小する方向に調整する間隔調整機構を備えるところに特徴を有している。
【0010】
請求項3のミシン用操作装置は、請求項2の発明において、前記間隔調整機構は、前記基台側に、前記2つの検出器のうち片側の検出器を、前記間隔の拡大又は縮小方向にスライド移動可能に支持する支持手段と、前記スライド移動方向に並んで設けられた複数個の係合凹部とを備えると共に、前記片側の検出器側に、前記複数個の係合凹部のいずれかに選択的に係合して該検出器を固定する係合爪と、前記係合爪を前記係合凹部に対する係合方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記係合爪の前記係合凹部に対する係合を外して該検出器を移動可能にするための手動操作部とを備えるところに特徴を有している。
【0011】
請求項4のミシン用操作装置は、請求項2の発明において、前記2つの検出器のうち片側の検出器を支持する支持台を備え、前記間隔調整機構は、前記基台又は前記支持台のいずれか一方に設けられた長孔であって、前記間隔を拡大又は縮小する方向に延びるように設けられたねじ挿通用の長孔と、前記基台に対して前記支持台を前記長孔内の任意の位置で位置変更可能に固定するねじ部材とを備えるところに特徴を有している。
【0012】
本発明の請求項5のミシンは、請求項1から4のいずれかに記載のミシン用操作装置を備えたところに特徴を有している。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のミシン用操作装置によれば、ユーザが足により操作する操作部材を基台に複数設けると共に、前記基台に設けられた少なくとも1つの操作部材の位置を変更するための位置調整手段を設けたので、ユーザの足の大きさに合わせて、操作部材を操作し易い位置に調整することができる。従って、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0014】
請求項2のミシン用操作装置によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記操作部材は、足の操作を接触又は非接触で検出する検出器を有し、少なくとも2つの前記検出器が、前記基台に置かれた足を側方から挟んで向い合うように設けられ、前記位置調整手段は、少なくとも2つの前記検出器の間隔を拡大又は縮小する方向に調整する間隔調整機構を備えるので、位置調整手段を比較的簡単な構成で実現することができる。
【0015】
請求項3のミシン用操作装置によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、前記間隔調整機構は、前記基台側に、前記2つの検出器のうち片側の検出器を、前記間隔の拡大又は縮小方向にスライド移動可能に支持する支持手段と、前記スライド移動方向に並んで設けられた複数個の係合凹部とを備えると共に、前記片側の検出器側に、前記複数個の係合凹部のいずれかに選択的に係合して該検出器を固定する係合爪と、前記係合爪を前記係合凹部に対する係合方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記係合爪の前記係合凹部に対する係合を外して該検出器を移動可能にするための手動操作部とを備えるので、ユーザは、手動操作部を操作して係合爪の係合凹部に対する係合を外すことにより、片側の検出器を、間隔の拡大又は縮小方向にスライド移動させることができる。その後、係合凹部のいずれかに選択的に係合爪を係合させることにより、当該検出器が固定される。このように、ユーザは簡単な操作で間隔を調整することができる。
【0016】
請求項4のミシン用操作装置によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、前記2つの検出器のうち片側の検出器を支持する支持台を備え、前記間隔調整機構は、前記基台又は前記支持台のいずれか一方に設けられた長孔であって、前記間隔を拡大又は縮小する方向に延びるように設けられたねじ挿通用の長孔と、前記基台に対して前記支持台を前記長孔内の任意の位置で位置変更可能に固定するねじ部材とを備えるので、長孔内におけるねじ部材の固定位置を調整することにより、間隔を簡単に調整することができる。また、間隔調整機構を簡単な構成で安価に実現することができる。
【0017】
請求項5のミシンによれば、請求項1から4のいずれかに記載のミシン用操作装置を備えるので、請求項1から4のいずれかに記載の発明の効果と同様の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、ミシンの全体の外観構成を示す図
【図2】ミシンの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】ミシン用操作装置の平面図(a)、正面図(b)、及び右側面図(c)
【図4】載置台の平面図(a)、正面図(b)、及び右側面図(c)
【図5】スイッチ操作部の平面図(a)、そのB−B線に沿う縦断側面図(b)、C−C線に沿う縦断側面図(c)、D−D線に沿う縦断正面図(d)、E−E線に沿う縦断正面図(e)
【図6】ミシン用操作装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図7】ミシン本体の制御装置が実行するミシン用操作装置の操作に係る処理手順を示すフローチャート
【図8】図7のステップS13の詳細な処理手順を示すフローチャート
【図9】本発明の第2の実施形態を示すもので、左右のスイッチの間隔を狭めた状態(a)及び拡げた状態(b)を示すスイッチ操作部の平面図
【図10】スイッチ操作部の斜視図
【図11】本発明の第3の実施形態を示す図3相当図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)第1の実施形態
以下、本発明を例えば家庭用の電子ミシンに用いられるミシン用操作装置に適用した第1の実施形態について、図1から図8を参照しながら説明する。まず、図1は、家庭用ミシンのミシン本体1の外観構成を示しており、このミシン本体1の全体構成について簡単に述べる。
【0020】
このミシン本体1は、左右方向(X方向)に延びるミシンベッド2と、ミシンベッド2の右端部から上方に延びる脚柱部3と、脚柱部3の上端から図で左方に延びるアーム部4とを一体的に有して構成されている。アーム部4の先端部が、頭部5とされている。頭部5には、針棒6が上下動及び左右方向(X方向)に揺動可能に設けられている。針棒6の下端部には、縫針7が装着されている。また、頭部5には、針棒6(縫針7)の後ろ側に位置して押え棒8が設けられている。押え棒8の下端に押え足9が着脱(交換)可能に設けられている。また、頭部5内には、押え足9(押え棒8)を、上昇位置と下降位置とに亙って移動させる周知の押え駆動機構が設けられている。押え駆動機構は、押え駆動モータ10(図2参照)の駆動により駆動される。
【0021】
また、詳しく図示はしないが、前記アーム部4内には、ミシンモータ11(図2参照)により回転駆動される主軸と、主軸の回転角度を検出する主軸角度検出器13(図2参照)が設けられている。また、頭部5内には、いずれも図示しないが、前記針棒6を上下動させる針棒駆動機構、針棒6の上下動に同期して天秤を上下動させる天秤駆動機構、針振りパルスモータ12(図2参照)を駆動源として針棒6を布送り方向と直交する方向(X方向)に揺動させる針棒揺動機構、上糸の張力を調整する糸調子装置等が設けられている。針棒駆動機構及び天秤駆動機構は、主軸の回転により駆動される。主軸角度検出器13により、主軸の角度が検出されることで、針棒6の上下位置が特定される。
【0022】
前記ミシンベッド2の上面には、針板(図示せず)が設けられている。また、いずれも図示はしないが、ミシンベッド2内には、針板の下側に位置して、前記針棒6の上下動と同期して送り歯を駆動させる送り歯駆動機構、下糸ボビンを収容し縫針7と協働して縫目を形成する回転釜、自動糸切り機構等が設けられている。自動糸切り機構は、周知の機構であって、糸切りモータ14(図2参照)を駆動源として、縫製動作が終了した後に、前記針板の下面側で上糸及び下糸を自動で切断する機構である。
【0023】
前記ミシンベッド2の左側部分には、刺繍機23が着脱可能に装着されている。刺繍機23は、加工布(図示せず)を保持した刺繍枠(図示せず)を装着して、ミシンベッド2上において、X方向(左右方向)及びそれとは直交するY方向(前後方向)に自在に移動させるものである。刺繍機23がミシンベッド2に装着された状態では、ミシンベッド2に設けられたコネクタ24(図2参照)を介して、後述するミシンの制御装置25(コントロールユニット)に電気的に接続される。但し、本実施形態においては、後述するミシン用操作装置40を使用するのは、刺繍機23を使用しない通常の縫製を行う場合であるとする。
【0024】
さらに、図1に示すように、アーム部4の前面側には、ミシンモータ11の起動又は停止を指示する起動・停止キー15、返し縫い動作を指示する返し縫いキー16、針棒6の停止位置を針上又は針下に切替える動作を指示する針上下キー17、糸切り動作を指示する糸切りキー18、押え足9を上昇又は下降させる動作を指示する押え上下キー19、縫製速度(ミシンモータ11の回転速度)を調整する速度調整つまみ20などの各種の操作キーが設けられている。ここで、後述するミシン用操作装置40をミシン本体1に接続しない状態では、ユーザは、上記の操作キーを適宜手指で操作する。前記脚柱部3の前面には、大型で縦長形状をなしフルカラー表示が可能な液晶ディスプレイ21が設けられている。この液晶ディスプレイ21の表面にはタッチパネル22が設けられている。ユーザは、タッチパネル22を押圧操作することによって、所望の実用模様や刺繍模様等を選択したり、縫製に関する各種の機能を実行させたりすることができる。
【0025】
図2は、ミシン本体1の電気的構成を概略的に示している。ここで、ミシン本体1の全体を制御する制御装置25は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU26、ROM27、RAM28、EEPROM29、入力インターフェイス30、出力インターフェイス31、USBインターフェイス32をバス33により相互に接続して構成されている。前記ROM26には、縫製動作を制御するための制御プログラムや、縫製動作に必要な縫目データ等の各種のデータが記憶されている。
【0026】
前記入力インターフェイス30には、前記主軸角度検出器13、タッチパネル22、起動・停止キー15、返し縫いキー16、針上下キー17、糸切りキー18、押え上下キー19、速度調整つまみ20が接続されており、それらの操作信号が制御装置25に入力される。前記出力インターフェイス31には、駆動回路34を介して前記液晶ディスプレイ21が接続されていると共に、駆動回路35、36、37、38を夫々介してミシンモータ11、針振りパルスモータ12、押え駆動モータ10、糸切りモータ14が接続されている。制御装置25は、それらを制御して縫製動作を実行する。出力インターフェイス31には、前記コネクタ24も接続されている。
【0027】
そして、本実施形態では、前記制御装置25(CPU26)はUSBホスト機能を有し、前記USBインターフェイス32に接続されたUSBコネクタ(ポート)39を備えている。USBコネクタ(ポート)39は、図1に示すように、前記ミシン本体1の脚柱部3の右側壁部に設けられている。USBコネクタ(ポート)39には、本実施形態に係るミシン用操作装置40が着脱可能に接続される。ミシン用操作装置40は、ユーザの足の操作に応じた操作信号を出力するものであり、詳しくは後述する。
【0028】
また、以下についても詳しくは後述するが、制御装置25は、ミシン用操作装置40がミシン本体1に接続された状態で、ミシン用操作装置40の出力した操作信号を読込み、その操作信号に応じた処理を行う。具体的には、ミシンモータ11(縫製動作)の起動又は停止、縫製速度(ミシンモータ11の回転速度)の調整、針棒6の停止位置を針上又は針下に切替える動作、返し縫い動作、自動糸切り機構による糸切り動作、押え駆動機構による押え足9の上昇又は下降の動作の制御を行う。
【0029】
さて、本実施形態に係るミシン用操作装置40について、図3から図6も参照して述べる。図3は、ミシン用操作装置40の全体の外観を示している。ミシン用操作装置40は、基台41、コントロールボックス42、ペダル装置43、及びスイッチ操作部44を備えている。基台41は、横長な矩形板状をなす平板状の部材である。基台41の上面には、右方から順に、コントロールボックス42、ペダル装置43、及びスイッチ操作部44が設けられる。ここで、図示はしないが、ミシン本体1は作業用テーブル又は作業用机の上に置かれ、ミシン用操作装置40は床上、即ち、ユーザの足元に置かれる。ユーザは、図示しない椅子に座って、ミシン用操作装置40を足で操作する。
【0030】
詳しい説明は省略するが、前記ペダル装置43は、周知のように、ユーザの足(この場合右足)により踏込み操作される操作部43aと、操作部43aの踏込み量に応じて抵抗値が変動する可変抵抗器(図示せず)等を備えている。そして、当該操作部43aの踏込み量に応じた電圧信号(AD値)を出力する。前記コントロールボックス42は、薄型の矩形形状の箱部材であり、通信用のマイコン45やUSBインターフェイス46(図6にのみ図示)等を備えた回路基板を内部に収容する。また、前記コントロールボックス42の上面には、押しボタンスイッチからなる操作部材としての針上下スイッチ47が設けられている。針上下スイッチ47は、前記針棒6の停止位置を針上又は針下に切替える動作を指示するスイッチで、ユーザの右足の裏で押下げ操作される。
【0031】
前記スイッチ操作部44は、ユーザの左足で操作されるもので、以下の構成を備えている。即ち、基台41上には、右壁、後壁、左壁からなる手前側が開放した立上り壁48が設けられている。立上り壁48の内側の空間部は、ユーザの左足が十分に入る大きさになっている。本実施形態では、立上り壁48は、右壁及び後壁を構成する平面視L字状の固定壁部48aと、左壁を構成する可動壁部48bとからなる。固定壁部48aは、基台41上に固定されている。また、後述するように、可動壁部48aは、左右(X方向)方向の位置変更(移動)が可能に設けられており、位置調整手段としての間隔調整機構56により左右方向の位置が調整される。
【0032】
立上り壁48の固定壁部48aを構成する右壁及び後壁、並びに、可動壁部48bからなる左壁の各内壁面には、操作部材としての、返し縫い動作を指示する返し縫いスイッチ49、押え足9を上昇又は下降させる動作を指示する押え上下スイッチ50、糸切り動作を指示する糸切りスイッチ51が夫々設けられている。これら3個のスイッチ49〜51は、ユーザが、足の爪先、足の左側面、又は右側面で押圧操作する押しボタンスイッチからなり、操作部材として機能する。返し縫いスイッチ49と糸切りスイッチ51とは、足又は後述する載置台52を側方から挟んで向かい合うように配置されている。
【0033】
また、前記基台41上の前記立上り壁48の内側の空間部には、図4にも示すように、ユーザの足、この場合左足が載置される載置台52が配置されている。載置台52は、前後方向にやや長い矩形形状の平板部材である。その大きさは、立上り壁48の内側の空間部よりも小さく、且つユーザの足の大きさよりも少し小さく設定されて居る。載置台52の底部(下面部)には、4つのコーナー部近傍に位置して、4個のキャスター53が設けられている。これらキャスター53は、いわゆるボールキャスターであり、図4(b)、(c)に示すように、回転体としての球状のボール53aを、キャスター本体部の下方に一部が突出するように全方向に回転自在に保持して構成されている。
【0034】
キャスター53のボール53aが基台41の上面を自在に転動することにより、載置台52は、ユーザが足を載せたまま、立上り壁48の内側部において任意の方向に移動自在に支持される。また、図3(b)に示すように、前記各スイッチ49〜51は、ユーザが載置台52上に足を載せたまま、足の爪先や、足の左右の側面部分で押圧操作できる高さ位置に設けられている。これら各スイッチ49〜51は、載置台52上のユーザの足の位置が、異なる複数の所定位置、即ち、各スイッチ49〜51のいずれかを押圧する位置にあることを接触で検出する検出器として機能する。
【0035】
前述したように、糸切りスイッチ51が取付けられた可動壁部48bは左右方向に位置調整(移動)可能に設けられている。つまり、返し縫いスイッチ49と糸切りスイッチ51との間隔L(立上り壁48の右壁と左壁との間隔)が拡大又は縮小する方向に調整することができる。ここで、図5にも示すように、スイッチ操作部44(可動壁部48b)の左側に設けられた間隔調整機構56を説明する。間隔調整機構56は、前記可動壁部48bを左右方向の位置を変更することにより、糸切りスイッチ51の左右方向位置(返し縫いスイッチ49との間隔L)を調整するための機構である。
【0036】
即ち、図5に示すように、前記可動壁部48bは、前記基台41の上面に前後方向に延びるように設けられる。そして、図5(b)〜(e)に示すように、底面の中央部には、下方に突出するように形成されたガイド部57が一体的に設けられている。ガイド部57の下端には鍔部(径大な頭部)が形成されている。また、基台41には、左右方向に延びてガイド部57に係合するガイド溝孔58が設けられている。ガイド部57の下端の鍔部は、ガイド部57つまり可動壁部48bが、ガイド溝孔58から上方に抜けないように作用する。このように、前記ガイド部57が前記ガイド溝孔58に抜止め状態で挿通されていることにより、前記可動壁部48bは、該ガイド溝孔58にガイドされるようにして、基台41に対し左右方向に移動可能に支持される。このように支持手段が構成される。
【0037】
このとき、前記可動壁部48bは、図5(a)に示す後端部が固定壁部48aに接する右端位置から、基台41の左辺部近くの左端位置までの間で、左右方向(X方向)に移動可能に支持されている。尚、基台41のうちガイド溝孔58とその周囲部分は、下面側に開放する凹部が形成されており、薄肉部(後述するスライドブロック)になっている。
【0038】
さらに、図5(a)、(c)〜(e)に示すように、前記可動壁部48bの外壁部(図で左を向く面)の下辺部中央部には、外面側(図で左方)に水平状に突出する矩形薄板状のスライドプレート59が一体に設けられている。更に、スライドプレート59の前後に位置する辺部の夫々中央部には、上方に延びる矩形板状の手動操作部60,60が一体に設けられている。これと共に、図5(c),(d)に示すように、スライドプレート59の前後に位置する辺部の夫々中央部から下方に延びて、係合爪61,61が一体に設けられている。
【0039】
この場合、前辺側の手動操作部60及び係合爪61が上下に延びる1枚の板のように設けられると共に、後辺側の手動操作部60及び係合爪61も上下に延びる1枚の板のように設けられ、スライドプレート59と併せて、側面H形状(図5(c)参照)をなしている。そして、図5(c)に示すように、ユーザが、前後2つの手動操作部60,60をつまんで内側(矢印F方向)に相互の間隔を狭めるように弾性変形させると、前後2つの係合爪61,61が相互に外側(矢印G方向)に拡がるように弾性変形する。これにより、後述するように、係合爪61,61の係合凹部との係合を外すことができる。このとき、スライドプレート59自身がもつ弾性力が付勢手段として機能する。
【0040】
これに対し、前記基台41側には、図5(a)、(c)、(d)に示すように、右端位置に位置する可動壁部48bの前後方向中央部から左方に延びるように、凹部62が設けられている。これと共に、凹部62内に位置して、横長な矩形状のスライドブロック63が左右方向に延びて設けられている。スライドブロック63は、上面が基台41の上面と面一状をなし、その上面を前記スライドプレート59が載置状態でスライド移動するように設けられている。また、前記ガイド溝孔58は、前記スライドブロック63の前後方向中間部を左右に延びて、上下に貫通するように設けられている。
【0041】
そして、前記スライドブロック63の前後の辺部(外壁部)には、夫々、前記スライドプレート59の前後の係合爪61が係合される係合凹部64aを、左右方向に並んで連続的に複数個有する係合保持部64が設けられている。図5(a)に示すように、係合保持部64は、複数個の係合凹部64aが、上面から見て鋸刃状をなすようにして前後方向に対称的に設けられている。
【0042】
これにて、スライドプレート59に設けられた係合爪61が、係合保持部64のいずれかの係合凹部64aに選択的に係合することによって、可動壁部48bひいては糸切りスイッチ51の左右方向の位置が固定される。このときには、係合爪61、61は、自らの有する弾性力により、係合凹部64a,64aに係合する方向に付勢されている。上記のように、ユーザが手動操作部60,60を弾性力(付勢力)に抗して操作することにより、係合爪61,61の係合凹部64a,64aに対する係合を外すことができる。ユーザは、その状態でスライドプレート39を左右方向にスライド移動させ、可動壁部48bひいては糸切りスイッチ51の左右方向の位置を所望の位置に移動させる。その後、再び係合爪61をいずれかの係合凹部64aに選択的に係合させて固定することができる。
【0043】
図6は、ミシン用操作装置40の電気的構成を概略的に示している。前記ペダル装置43の出力信号や針上下スイッチ47の信号、更に、スイッチ操作部44の返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51の信号は、前記通信用のマイコン45に入力される。そして、通信用マイコン45には、USBインターフェイス46が接続される。更にこのUSBインターフェイス46に接続されたケーブル54の先端には、USBコネクタ55が接続される。
【0044】
これにて、ミシン用操作装置40は、図1に示すように、前記USBコネクタ55が前記ミシン本体1のUSBコネクタ(ポート)39に接続されることにより、ミシン本体1の制御装置25に着脱可能に接続され、もって、USB規格に準拠した通信(データ転送)を行う接続手段が構成されている。このとき、通信用マイコン45は、ペダル装置43、針上下スイッチ47、返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51の操作に応じた操作信号をミシン本体1側に出力する。尚、ミシン用操作装置40の駆動電源は、USBコネクタ55を介してミシン本体1側から供給される。
【0045】
次に、上記構成の作用について、図7及び図8も参照して述べる。ミシン本体1により縫製作業を行うユーザは、まず、ミシン用操作装置40を足元に置く。そして、USBコネクタ55を、ミシン本体1のUSBコネクタ(ポート)39に接続することにより、ミシン用操作装置40を使用することができる。この場合、ユーザは、ミシン用操作装置40を足で操作することにより、被縫製物(加工布)を両手で保持しながら、縫製動作の種々の操作を行うことができる。
【0046】
即ち、ユーザは、例えば右足をペダル装置43の操作部43aの上に載せて、操作部43aを下方に踏込むことで、ミシンモータ11を起動させることができる。また、右足を操作部43aの上から離すことで、ミシンモータ11を停止させることができる。また、操作部43aの踏込み量の調整により、縫製速度(ミシンモータ11の回転速度)の調整を行うことができる。
【0047】
また、ユーザが右足で、針上下スイッチ47を押下げ操作することにより、前記針棒6の停止位置を針上又は針下位置へ切替えることができる。つまり、針棒6が針下位置で停止している状態で、針上下スイッチ47を押下げ操作すると、針棒6は針下位置から針上位置に移動する。逆に、針棒6が針上位置で停止している状態で、針上下スイッチ47を押下げ操作すると、針棒6は針上位置から針下位置に移動する。
【0048】
そして、ユーザは、左足を載置台52の上に載置し、その載置台52に左足を載せたままの状態で左足の位置を移動させ、スイッチ操作部44の各スイッチ49〜51を押圧操作することができる。このとき、載置台52の底部には、基台41の上面を自在に転動するボール53aを有した4個のキャスター53が設けられているので、軽い力でスムーズに載置台52を移動させることができる。よって、ユーザは、載置台52に載せた左足を、任意の方向(位置)に容易に移動させることができる。
【0049】
この場合、左足の位置を右方に移動させることにより、左足の右側面で返し縫いスイッチ49を押圧操作して返し縫い動作を指示することができる。また、左足の位置を後方に移動させることにより、左足の爪先で押え上下スイッチ50を押圧操作して、押え足9を上昇又は下降させる動作を指示することができる。つまり、押え足9が下降位置にある状態で、押え上下スイッチ50を押圧操作すると、押え足9は下降位置から上昇位置に移動する。逆に、押え足9が上昇位置にある状態で、押え上下スイッチ50を押圧操作すると、押え足9は上昇位置から下降位置に移動する。また、左足の位置を左方に移動させることにより、左足の左側面で糸切りスイッチ51を押圧操作して、糸切りの動作を指示することができる。
【0050】
上記のように、スイッチ操作部44のうち、左側の可動壁部48b(糸切りスイッチ51)の左右位置を調整する間隔調整機構56を設けたことにより、ユーザの要望に合わせて可動壁部48b(糸切りスイッチ51)の位置を左右に変更することが可能となる。例えばユーザの足が大きい場合には、2つのスイッチ49,51(左右の壁部)の間隔を広げ、足が小さい場合には、2つのスイッチ49,51(左右の壁部)の間隔を狭めるようにする。このように、ユーザの足の大きさに合わせて、ユーザが操作しやすい位置にスイッチ49,51を配置することが可能になる。
【0051】
ミシン本体1の制御装置25は、ミシン用操作装置40が接続されている状態では、ミシン用操作装置40から出力される操作信号を監視し、それら信号に応じた処理を実行する。図7に示すフローチャートは、ミシン本体1の制御装置25(CPU26)が実行する、ミシン用操作装置40の操作信号の読込み等の周期タイマ処理の処理手順を示している。また、図8に示すフローチャートは、図7に示すフローチャートにおけるステップS13のマトリクス処理の詳細な手順を示している。
【0052】
図7において、周期タイマ処理がスタートされると、まずステップS1では、スイッチ読込みタイミングかどうかが判断され、スイッチ読込みタイミングでない場合には(ステップS1にてNo)、そのままステップS10に進む。スイッチ読込みタイミングである場合には(ステップS1にてYes)、次のステップS2にて、返し縫いスイッチ49がオンかどうかが判断される。返し縫いスイッチ49がオンでない場合には(ステップS2にてNo)、そのままステップS4に進む。返し縫いスイッチ49がオンされた場合には(ステップS2にてYes)、ステップS3にて、返し縫いフラグがオンされた上で、ステップS4に進む。
【0053】
ステップS4では、針上下スイッチ47がオンされたかどうかが判断される。針上下スイッチ47がオンでない場合には(ステップS4にてNo)、そのままステップS6に進む。針上下スイッチ47がオンされた場合には(ステップS4にてYes)、ステップS5にて、針上下フラグがオンされた上で、ステップS6に進む。ステップS6では、糸切りスイッチ51がオンされたかどうかが判断される。糸切りスイッチ51がオンでない場合には(ステップS6にてNo)、そのままステップS8に進む。糸切りスイッチ51がオンされた場合には(ステップS6にてYes)、ステップS7にて、糸切りフラグがオンされた上で、ステップS8に進む。
【0054】
ステップS8では、押え上下スイッチ50がオンされたかどうかが判断される。押え上下スイッチ50がオンでない場合には(ステップS8にてNo)、そのままステップS10に進む。押え上下スイッチ50がオンされた場合には(ステップS8にてYes)、ステップS9にて、押え上下フラグがオンされた上で、ステップS10に進む。ステップS10では、ペダル装置43の出力信号(AD値)の読込みタイミングかどうかが判断される。AD値読込みタイミングでない場合には(ステップS10にてNo)、そのままステップS12に進む。AD値読込みタイミングである場合には(ステップS10にてYes)、次のステップS11にて、AD値が読込まれて変数JoyADにセットされた上で、ステップS12に進む。
【0055】
ステップS12では、マトリクス処理の実施タイミングかどうかが判断される。マトリクス処理実施タイミングでない場合には(ステップS12にてNo)、そのままステップS14に進む。マトリクス処理実施タイミングである場合には(ステップS12にてYes)、次のステップS13にて、後述のマトリクス処理が実行された上で、ステップS14に進む。ステップS14では、モータ速度変更タイミングかどうかが判断される。モータ速度変更タイミングでない場合には(ステップS14にてNo)、そのまま終了する。モータ速度変更タイミングである場合には(ステップS14にてYes)、ステップS15にて、変数JoyADの値に基づいてモータ速度指示が行われ、処理を終了する。
【0056】
次に、図8のフローチャートを参照して、前記ステップS13のマトリクス処理の詳細について述べる。ステップS21では、返し縫いフラグがオンであるかどうかが判断される。オンである場合には(ステップS21にてYes)、ステップS22にて、返し縫い動作が実行された後、終了(リターン)する。返し縫いフラグがオンでない場合には(ステップS21にてNo)、ステップS23に進み、針上下フラグがオンであるかどうかが判断される。針上下フラグがオンである場合には(ステップS23にてYes)、ステップS24にて、針棒6の停止位置を針上又は針下位置に切替える動作が実行された後、終了する。
【0057】
針上下フラグがオンでない場合には(ステップS23にてNo)、ステップS25に進み、糸切りフラグがオンであるかどうかが判断される。糸切りフラグがオンである場合には(ステップS25にてYes)、ステップS26にて、自動糸切り機構による糸切り動作が実行された後、終了する。糸切りフラグがオンでない場合には(ステップS25にてNo)、ステップS27に進み、押え上下フラグがオンであるかどうかが判断される。押え上下フラグがオンである場合には(ステップS27にてYes)、ステップS28にて、押え駆動機構による押え足9を上昇又は下降させる動作が実行された後、終了する。押え上下フラグがオンでない場合には(ステップS27にてNo)、そのまま終了する。
【0058】
尚、この図8の処理により、例えばスイッチ操作部44の複数のスイッチ49〜51が同時にオン操作されたような場合でも、優先順位のより高い(フローチャートのステップ番号が若い)もののみが有効となり、同時に2つの動作が行われることが未然に防止されている。
【0059】
このような本実施形態のミシン用操作装置40によれば、ユーザが足によって操作する返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51を有したスイッチ操作部44を備え、糸切りスイッチ51が設けられた可動壁部48bの左右位置を調整する間隔調整機構56を設けたので、ユーザの足の大きさに合わせて、返し縫いスイッチ49と糸切りスイッチ51との間隔を調整することができる。従って、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、位置調整手段としての間隔調整機構56は、可動壁部48b(糸切りスイッチ51)の位置を変更して、返し縫いスイッチ49と糸切りスイッチ51の間隔を拡大又は縮小する方向に調整するので、調整作業が簡単になる。また、間隔調整機構56は、手動操作部60を操作して係合爪61の係合凹部64aに対する係合を外すことにより、可動壁部48bを左右方向にスライド移動させる。その後、係合凹部64aのいずれかに選択的に係合爪61を係合させることにより、可動壁部48bを固定するように構成されている。従って、簡単な操作で間隔を調整することができる。
【0061】
しかも、本実施形態では、ユーザの足が載置される載置台52を、キャスター53によって任意の方向に移動自在に配置し、ユーザが載置台52に足を載せたまま位置を移動させるように構成したので、簡単な構成で、載置台52を軽い力でスムーズに移動させることができる。よって、ユーザの足によるスイッチ操作部44の操作性の一層の向上を図ることができる。
【0062】
更に、本実施形態では、ミシン用操作装置40とミシン本体1とを接続する手段として、USB規格に準拠した通信を用いる接続手段を採用したので、ミシン用操作装置40を、USBコネクタ(ポート)39を備えているミシン全般に接続することが可能となり、汎用性が高いものとなる。ミシン用操作装置40をパソコンに接続し、該パソコンを用いて各種の設定(設定データの書替え)を行うといった使い方も可能となる。データ転送速度が速いなどのUSB規格自体のメリットが得られることは勿論である。
【0063】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
図9及び図10は、本発明の第2の実施形態を示すものである。尚、以下に述べる各実施形態は、第1の実施形態と同様に、ミシン本体1に接続されるミシン用操作装置に関するものであり、上記第1の実施形態の一部を変更した変形例である。従って、上記第1の実施形態と同一部分については、同一符号を付して、詳しい説明や新たな図示を省略する。以下、上記第1の実施形態と相違する点について説明する。
【0064】
図9及び図10に示すように、第2の実施形態では、ミシン用操作装置の基台41に設けられるスイッチ操作部65の構成が、上記第1の実施形態と異なっている。スイッチ操作部65は、手前側が開放した立上り壁66を有する。立上り壁66の右壁、後壁、左壁の各内壁面に、押しボタンスイッチからなる検出器(操作部材)としての返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51を夫々備えている。
【0065】
前記立上り壁66は、基台41上に固定され右壁及び後壁を構成する平面L字状の固定壁部66aと、左壁を構成する可動壁部67とから構成される。可動壁部67が支持台に相当する。可動壁部67は、その下辺部から左側に水平に延びる取付板部67aを一体的に有した断面L字状に形成されている。そして、取付板部67aが基台41上に載置されるように取り付けられる。このとき、可動壁部67は、図で左右(X方向)方向の位置変更(移動)が可能に設けられており、位置調整手段としての間隔調整機構68により左右方向の位置が調整される。
【0066】
具体的には、間隔調整機構68は次のよう構成されている。前記取付板部67aには、前後2箇所に、ねじ挿通用の長孔67bが左右方向に延びて形成されている。そして、図示はしないが、基台41には、前後に2個のねじ穴が形成されている。ねじ部材69を、取付板部67aの各長孔67bを通して各ねじ穴に締め付けることにより、可動壁部67が基台41に固定される。これにより、ねじ部材69を緩めることによって、長孔67b内の範囲内でねじ部材69の相対的な移動が許容される。つまり、可動壁部67は左右方向にスライド移動が可能になる。このように、ユーザは、ねじ部材69を緩めて、可動壁部67を左右方向にスライドさせて所望の位置に移動させる。その後、ねじ部材69を締付けて可動壁部67を固定する。
【0067】
従って、第2の実施形態によっても、上記第1の実施形態と同様に、ユーザが足で操作する返し縫いスイッチ49、押え上下スイッチ50、糸切りスイッチ51を有したスイッチ操作部65を備え、糸切りスイッチ51が設けられた可動壁部67の左右位置を調整する間隔調整機構68を設けたので、ユーザの足の大きさに合わせて、返し縫いスイッチ49と糸切りスイッチ51の間隔を調整することができる。従って、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。また、本実施形態では、間隔調整機構68を、長孔67b、ねじ部材69等から構成したので、簡単な構成で安価に実現することができる。
【0068】
尚、上記第2の実施形態では、間隔調整機構68を、可動壁部67側に長孔67bを設けて構成したが、次のような構成にしても良い。図示はしないが、可動壁部67の取付板部67aにねじ挿通孔を設けると共に、基台41に左右方向に長い長孔を設ける。そして、ねじ部材69を、それらねじ挿通孔及び長孔を順に通し、長孔の下面側に配置されたナット部材に締付けることにより、可動壁部67を位置変更可能に取付ける構成としても良い。
【0069】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るミシン用操作装置71を示している。このミシン用操作装置71が、上記第1の実施形態のミシン用操作装置40と異なる点は、スイッチ操作部72の構成にある。スイッチ操作部72は、立上り壁48の右壁、後壁、左壁の各内壁面に、ユーザの足の操作を非接触で検出する検出器としての、光学センサからなる返し縫いセンサ73、押え上下センサ74、糸切りセンサ75を夫々備えている。
【0070】
これら各センサ73〜75は、詳しく図示はしないが、発光部と受光部とが並設された反射型光センサからなる。反射型光センサは、発光部から発した光が物体表面で反射し、その反射光を受光部で受光することにより、物体の近接を検出する周知の構成のセンサである。この場合、載置台52の側面部が、発光部から発した光を反射する反射面として機能する。また、検出精度を上げる為、専用の反射板を載置台52の側面部に設けてもよい。また、上記第1の実施形態と同様に、スイッチ操作部72のうち、左側の可動壁部48b(糸切りセンサ75)の左右位置を調整する間隔調整機構56が設けられ、ユーザの要望に合わせて可動壁部48b(糸切りセンサ75)の位置を左右に変更することが可能となる。
【0071】
これにより、ユーザが、左足を載せた載置台52を右方に移動させて、載置台52の右側面を返し縫いセンサ73に近付けると、返し縫いセンサ73が載置台52の近接を検出して、返し縫い動作が指示される。同様に、載置台52を後方に移動させて、載置台52の後側面を押え上下センサ74に近付けると、押え上下センサ74が載置台52の近接を検出して、押え足9を上昇又は下降させる動作が指示される。また、載置台52を左方に移動させて、載置台52の左側面を糸切りセンサ75に近付けると、糸切りセンサ75が載置台52の近接を検出して、糸切り動作が指示される。
【0072】
このような第3の実施形態のミシン用操作装置71によっても、ユーザの足による操作を非接触で検出する光学センサからなる返し縫いセンサ73、押え上下センサ74、糸切りセンサ75を有したスイッチ操作部72を備え、糸切りセンサ75が設けられた可動壁部48bの左右位置を調整する間隔調整機構56を設けたので、ユーザの足の大きさに合わせて、返し縫いセンサ73と糸切りセンサ75の間隔を調整することができる。従って、ユーザの足の大きさの大小にかかわらず、操作性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0073】
尚、本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態に限定されるものではなく、様々な拡張、変更が可能である。
例えば、上記第3の実施形態では、ユーザの足の操作を非接触で検出する検出器として、反射型光センサを採用するようにしたが、人体から発する赤外線を検出する赤外線センサを採用し、赤外線センサによってユーザの足が所定距離内に近接したことを検出する構成としても良い。また、上記各実施形態では、ミシン用操作装置を、ペダル装置と、4個のスイッチ又はセンサを備える装置として構成したが、スイッチ又はセンサの数は、5個以上であったり、3個以下であったりしても良い。
【0074】
また、位置調整手段としても、スイッチ又はセンサの位置を前後方向に調整できる構成としても良く、さらには、スイッチ操作部とペダル装置との相対的な位置を調整できる構成としても良いなど、様々な変形が可能である。基台上の各スイッチなどのレイアウトも、様々な変更が可能であり、例えば載置台を使用せずに足のかかとを基台41上に載せて操作を行う構成としても良い。その他、ミシン本体の構成や、ミシン用操作装置とミシン本体とを接続する接続手段の構成、載置台のキャスターの構成についても様々な変更が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ミシン本体
40、71 ミシン用操作装置
41 基台
44、65、72 スイッチ操作部
46 USBインターフェイス
48、66 立上り壁
48b 可動壁部
49、50、51 スイッチ(検出器)
52 載置台
55 USBコネクタ
56、68 間隔調整機構(位置調整手段)
60 手動操作部
61 係合爪
64a 係合凹部
67 可動壁部(支持台)
67b 長孔
69 ねじ部材
73、74、75 光センサ(検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン本体に接続可能な接続手段と、ユーザが足により操作する操作部材とを有し、当該操作部材の操作に応じた操作信号を出力するミシン用操作装置において、
前記操作部材は基台に複数設けられ、
前記基台に設けられた少なくとも1つの前記操作部材の位置を変更するための位置調整手段を備えることを特徴とするミシン用操作装置。
【請求項2】
前記操作部材は、足の操作を接触又は非接触で検出する検出器を有し、
少なくとも2つの前記検出器が、前記基台に置かれた足を側方から挟んで向い合うように設けられ、
前記位置調整手段は、少なくとも2つの前記検出器の間隔を拡大又は縮小する方向に調整する間隔調整機構を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン用操作装置。
【請求項3】
前記間隔調整機構は、
前記基台側に、前記2つの検出器のうち片側の検出器を、前記間隔の拡大又は縮小方向にスライド移動可能に支持する支持手段と、前記スライド移動方向に並んで設けられた複数個の係合凹部とを備えると共に、
前記片側の検出器側に、前記複数個の係合凹部のいずれかに選択的に係合して該検出器を固定する係合爪と、前記係合爪を前記係合凹部に対する係合方向に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記係合爪の前記係合凹部に対する係合を外して該検出器を移動可能にするための手動操作部とを備えることを特徴とする請求項2記載のミシン用操作装置。
【請求項4】
前記2つの検出器のうち片側の検出器を支持する支持台を備え、
前記間隔調整機構は、前記基台又は前記支持台のいずれか一方に設けられた長孔であって、前記間隔を拡大又は縮小する方向に延びるように設けられたねじ挿通用の長孔と、前記基台に対して前記支持台を前記長孔内の任意の位置で位置変更可能に固定するねじ部材とを備えることを特徴とする請求項2記載のミシン用操作装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のミシン用操作装置を備えることを特徴とするミシン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−61043(P2012−61043A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205552(P2010−205552)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】