説明

ミシン

【課題】縫製パラメータの誤入力を抑止する。
【解決手段】パラメータ設定手段が、一対の縫い目又は切れ目を示す図形を表示する表示部A2と、表示される図形上のいずれの設定部位を指定する部位指定手段B1〜B4と、各設定部位に縫製パラメータを入力するパラメータ入力手段B1〜B4とを備え、縫製パラメータの設定に従って縫い制御を行うミシンにおいて、図形上の各設定部位を、被縫製物を表面から見た部位に対応するか裏面から見た部位に対応するかを切り替え可能な対応部位切り替え手段61と、対応部位切り替え手段が現在、表面から見た部位に対応した状態か裏面から見た部位に対応した状態かを識別可能に表示する識別表示手段B5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製動作制御のパラメータの設定入力を要するミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
被縫製物の布送り方向に沿う直線を挟んで互いに対向配置される一対の対向縫い目や直線を挟んで対向配置される一対の対向切れ目を形成する場合の縫い目や切れ目の各部位(以下、「設定部位」とする)の配置について予め各種の寸法等のパラメータの設定を要するミシンにあっては、表示画面を備えた操作パネルを用いて被縫製物に施される縫い目や切れ目における設定部位を示す図形を画像表示すると共にその周囲に各種パラメータの入力ボタンを配置し、図形のどこの設定部位に関わるパラメータの入力を行うかを作業者にわかりやすく表示していた(例えば、特許文献1の第5図、第6図参照)。
【特許文献1】特開2007−195682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような操作パネルによる設定入力を行うミシンとしては玉縁縫いミシンや鳩目穴かがりミシン等が挙げられるが、これらの操作パネルに表示される図形は、いずれも、布地をミシンにセットした状態で作業者が上から見た状態での方向で表示が行われることが一般的である。
例えば、鳩目穴かがりミシンの場合には、衣服として着用された際に裏側となる被縫製物の裏側を上にして生地をセットして縫製するため、被縫製物を表面から目視して鳩目ボタン穴の両側に形成される一対のボタン穴かがり縫い目の出来上がり状態を確認後、操作パネルにてデータの修正を行おうとした場合に、被縫製物に形成されたボタン穴かがり縫い目の配置が、操作パネル上に表示された図形では、鳩目ボタン穴を挟んで左右方向が逆になってしまう。例えば、図14において図示されている面が布地の裏面とすると、A方向から見た図形が操作パネルに表示されるが、布地の表面はB方向から見た状態となる。このため、例えば、布地の表面を見て鳩目ボタン穴としてのメスの切れ目とその右側の縫い目との隙間間隔の修正を行おうとすると、操作パネルの表示では切れ目の左側の縫い目の隙間間隔の修正を入力しなければならなかった。
また、自動玉縁ミシンにおいては、身生地の表面を上にしてその上から玉布をセットして縫製を行うが、縫い上がった身生地の表面側には、ポケット穴を両側から覆うように玉布が立設しているため出来上がりの生地の表面からはポケット穴を見ることができず、例えば、ポケット穴のセンター切れ目(直線切れ目)の両側に形成される一対の玉縁縫い目の形成位置や、左右のコーナーメスの切断位置(コーナー切れ目の位置)を確認するためには、生地を裏返して確認する必要がある。その際も同様に目でみた被縫製物に施されたコーナー切れ目や玉縁縫い目の配置と操作パネルの図形とで左右が逆になってしまう。
これらのように、操作パネルによる設定入力を行うミシンでは、作業者が確認を行う方向から見た被縫製物に施される切れ目や縫い目の配置を示す図形の表示を行っているとは限らず、これらが不一致の場合には、設定入力の際に左右を誤るおそれがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、被縫製物に施される切れ目や縫い目のに関する各種パラメータについて誤入力を抑止することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、被縫製物の布送り方向に沿う直線を挟んで互いに対向配置される一対の対向縫い目を形成する縫い目形成手段又は前記直線を挟んで対向配置される一対の対向切れ目を形成する切れ目形成手段の少なくともいずれか一方を備えると共に、前記各対向縫い目又は各対向切れ目のそれぞれについて個別に縫製パラメータを設定するパラメータ設定手段とを有し、当該パラメータ設定手段が、前記対向配置される一対の対向縫い目又は一対の対向切れ目を示す図形を表示する表示部と、前記表示部に表示される前記一対の対向縫い目又は一対の対向切れ目の図形上のいずれの設定部位に対して前記縫製パラメータの設定を行うかを指定する部位指定手段と、前記設定部位に対応する前記縫製パラメータを入力するパラメータ入力手段とを備え、前記各対向縫い目又は各対向切れ目が、前記縫製パラメータの設定に従って形成されるように前記縫い目形成手段または前記切れ目形成手段を制御するミシンにおいて、前記部位指定手段により指定された前記図形上の設定部位が、前記被縫製物を表面から見た部位に対応するか裏面から見た部位に対応するかを指示入力により切り替える対応部位切り替え手段と、前記対応部位切り替え手段による現在の切り替え状態を識別可能に表示する識別表示手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、パラメータ設定手段は、前記表示部に表示される前記各対向縫い目又は各対向切れ目の図形を、前記対応部位切り替え手段による対応部位の切り替えに対応させて前記直線を挟んで反転させて表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明は、表示部で表示された図形に表された各設定部位を部位指定手段により選択し、選択された設定部位についてパラメータ入力手段によって縫製パラメータの設定値等を設定入力する。
このとき、パラメータ設定手段は、表示部で表示された図形に表された各設定部位を被縫製物を表面から見た部位に対応するか裏面から見た部位に対応するかを指示入力により切り替えることができる。また、指示入力により現在、表面対応状態か裏面対応状態かが識別表示手段により表示される。
従って、指示入力により表面から見た部位に対応するように入力され、図形上の右側の縫い目や切れ目が部位指定手段により選択された場合には、パラメータ設定手段は、被縫製物を表面から見た場合に右側となる縫い目或いは切れ目が選択されたものとして、当該縫い目或いは切れ目についてパラメータ入力手段による縫製パラメータの設定値等の設定入力を受け付ける。
また、指示入力により裏面から見た部位に対応するように入力され、図形上の右側の縫い目や切れ目が部位指定手段により選択された場合には、パラメータ設定手段は、被縫製物を表面から見た場合に左側となる縫い目或いは切れ目が選択されたものとして、当該縫い目或いは切れ目についてパラメータ入力手段による縫製パラメータの設定値等の設定入力を受け付ける。
また、これらの縫製パラメータの設定は、縫い目又は切れ目の形成制御の際に反映される。
これにより、作業者は、縫製物を表面又は裏面のいずれから確認したとしてもその確認した面と同じ設定部位の縫製パラメータを縫製パラメータ設定手段に入力することができ、被縫製物をいずれの面から確認したとしても、各部位のパラメータの設定を誤ることなく行うことが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、パラメータ設定手段が、表示部に表示される各対向縫い目又は各対向切れ目の図形を、対応部位切り替え手段による対応部位の反転に対応させて直線を挟んで反転させて表示する。つまり、表面対応状態の時には表面から見た状態が表示され、裏面対応状態の時には裏面から見た状態が表示されるので、表面視と裏面視とで状態が異なる場合(各対向縫い目又は各対向切れ目が左右非対称の場合)には、縫製パラメータ設定手段が表面から見た部位に対応しているのか裏面から見た部位に対応しているのかを表示図形から視覚的に表示することが容易となり、被縫製物を表面で確認しても裏面で確認しても誤入力をさらに抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(玉縁縫いミシンが行う玉縁縫いに関する説明)
以下、本発明の実施の形態であるミシンの縫製パラメータ入力装置を搭載した玉縁縫いミシン10について図1乃至図7に基づいて説明する。図1は玉縁縫いミシン10の全体の概略構成を示すブロック図である。図2は斜め形状のポケット開口部を形成する玉縁縫いにおけるセンターメスによる直線状の切れ目Sとコーナーメスによるコーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRと二本針による縫い目TL,TRの配置の関係を示す説明図である。
【0010】
図示のように、布送り方向の進行方向を布送り方向前側、その逆方向を布送り方向後側とし、Y軸方向に沿った一方の方向であって布送り方向を向いて左手となる方向を左側、Y軸方向に沿った他方の方向であって布送り方向を向いて右手となる方向を右側として以下の説明を行うこととする。
なお、玉縁縫いミシン10は、このような斜め形状のポケット開口部の縫いに限らず、直線縫い目TL,TRの両端部の布送り方向における端部位置がいずれも一致する長方形状のポケット開口部を形成する玉縁縫いを行うことが可能であることはいうまでもない。
【0011】
玉縁縫いミシン10は、二本針(不図示)により形成される二本の平行な縫い目TL,TRにより身生地Mに対して玉布Bを縫着すると共にこれらの布地の送り方向Fに沿ったポケット穴となる直線状の切れ目Sと当該切れ目Sの両端部に一対のコーナー切れ目からなる略V字状の切れ目とを形成するミシンである。
斜め形状のポケット開口部を形成する玉縁縫いでは、いずれか一方の直線縫い目(図2では右側の縫い目TR)が布送り方向後側まで形成される。ここで、直線縫い目TRの後側端部から直線縫い目TLの後側端部までの布送り方向のズレ量を後側の偏差CRといい、直線縫い目TRの前側端部から直線縫い目TLの前側端部までの布送り方向のズレ量を前側の偏差CFというものとする。
【0012】
そして、直線切れ目Sの前側端部から右側の直線縫い目TRの前側端部にかけてコーナー切れ目VFRが形成され、直線切れ目Sの前側端部よりも幾分後方の位置から左側の直線縫い目TLの前側端部にかけてコーナー切れ目VFLが形成される。さらに、直線切れ目Sの後側端部よりも幾分前方の位置から右側の直線縫い目TRの後側端部にかけてコーナー切れ目VRRが形成され、直線切れ目Sの後側端部から左側の直線縫い目TLの後側端部にかけてコーナー切れ目VRLが形成される。
即ち、かかる玉縁縫いミシン10は、被縫製物である身生地M及び玉布Tに対して、布送り方向に沿う直線に沿った直線切れ目Sを挟んで互いに対向配置される一対の対向縫い目としての直線縫い目TL,TRを形成すると共に、直線切れ目Sを挟んで対向配置される二対の対向切れ目としてのコーナー切れ目VFR,VFL及びVRR,VRLを形成する。
【0013】
(玉縁縫いミシンの全体構成)
かかる玉縁縫いミシン10は、身生地Mが載置される図示しないテーブルと、テーブル上の身生地Mを一対の大押さえで押さえて所定の布送り方向に沿って搬送する搬送手段としての大押さえ送り機構12と、身生地Mに縫着する玉布Tにバインダーを当てて当該玉布Tの両側部を折り返すバインダー機構20と、大押さえ送り機構12によりX軸方向に沿って送られる身生地Mに対してミシンモータ26により二本の縫い針を上下動させて縫い目を形成する針上下動機構24と、縫い針の布送り方向下流側でセンターメスを昇降させて身生地に上述した直線状の切れ目Sを形成するメス機構30と、縫い針から縫い糸を捕捉して下糸を絡ませる釜機構(図示略)と、テーブル上に設置されて針上下動機構24とメス機構30とを格納保持するミシンフレーム(図示略)と、直線状の切れ目Sの両端となる位置に上述したコーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRを形成するコーナーメス機構34と、上記各種作業を行う装置又は機構の動作制御を行う動作制御手段60と、縫製に関する各種のパラメータの設定入力を行うための表示入力手段91と、縫製に関する各種の作業の実行を入力する操作ペダル92とを備えている。
なお、上記大押さえ送り機構12,バインダー機構20,針上下動機構24,メス機構30による各種作業の駆動源となる作動装置は、いずれも図示しないインターフェイス及びドライバ回路を介して動作制御手段60により制御されるようになっている。
なお前述したミシンの縫製パラメータ入力装置は、動作制御手段60と表示入力手段91とにより実現される。
【0014】
(各種の作動装置)
大押さえ送り機構12は、テーブル上の身生地を押さえるために昇降可能に支持された左右一対の大押さえを備え、各大押さえはエアシリンダである右昇降シリンダ16と左昇降シリンダ18とにより個別に行われる。これらのシリンダ16,18は動作制御手段60に制御される図示しない電磁弁により作動の切り替えが行われる。
また、大押さえ送り機構12は、各大押さえを支持するガイド機構により所定の布送り方向に沿って移動させる押さえモータ14を備え、これにより身生地その他の被縫製物を布送り方向に沿って搬送するようになっている。
【0015】
バインダー機構20は、断面逆さT字状であって底板をくるむように玉布を沿わせると共にその状態で玉布を布送り方向に送り出すためのバインダーと、当該バインダーの昇降を行うエアシリンダとしてのバインダー昇降シリンダ22とを備えている。
バインダーは身生地のセット位置の上方で昇降可能に支持され、身生地の上面に玉布がセットされるとバインダー昇降シリンダ22によりバインダーを下降させて当該バインダーの上側に玉布の両端部を折り返させるようになっている。また、図示はしないが大押え送り機構12の各大押さえにはバインダーの上側に玉布の両端部を折り返させるために進退移動する折り込み板が設けられており、バインダーが下降すると連動して作動するようになっている。
当該バインダー昇降シリンダ22は動作制御手段60に制御される図示しない電磁弁により作動の切り替えが行われる。
【0016】
針上下動機構24は、それぞれ縫い針を下端部に保持する二本の針棒と、ミシンモータ26により回転駆動される上軸と、上軸の回転を上下動に変換して各針棒に伝達するクランク機構とを備えている。かかる針上下動機構24は大押さえ送り機構12との協働により二本の直線縫い目TL、TRを形成する縫い目形成手段として機能する。
【0017】
メス機構30は、直線切れ目Sを形成するセンターメスと、センターメスを下端部に備えるメス棒と、メス棒の上下動の駆動源となるメスモータ32と、メスモータ32からの回転駆動力を上下方向の往復の駆動力に替えてメス棒に伝達するクランク機構とを備えている。
即ち、メスモータ32は、身生地の送り動作と共に回転駆動を行い、伝達機構によりセンターメスを上下動させて、メス幅に応じた切れ目を繰り返し形成して直線状の切れ目を形成する。
【0018】
釜機構は、二本の縫い針に個別に対応する二つの水平釜と、各水平釜に回転駆動力を付与する下軸とを有し、下軸はミシンモータ26により回転駆動されるようになっており、釜機構単独で作動装置としての駆動源を備えてはいない。
【0019】
コーナーメス機構34は、メス機構30によって布送り方向に沿って形成された直線状の切れ目Sの両端部にそれぞれコーナー切れ目を形成するためのものであり、布送り方向前側と後側とでそれぞれ一対のコーナーメスを保持するコーナーメスユニットを備えている。そして、各コーナーメスユニットは各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRをそれぞれ個別のコーナーメスで形成すると共に、左右両側のそれぞれのコーナー切れ目について長短二種類のコーナーメスを保有している。また、各コーナーメスユニットは、各コーナーメスを布送り方向に直交する方向(以下、横方向とする)に移動可能に保持しており、横方向に各コーナーメスを移動させるメス移動モータ37(図1では一方のみ図示)と、切断時にコーナーメスを昇降させる一対のメス昇降シリンダ36(図1では一つのみ図示)とを有している。また、一方のコーナーメスユニットのみが布送り方向沿って移動するためのユニット移動モータ38を有している。
上記メス移動モータ37は、各コーナーメスを選択的にメス昇降シリンダ36に位置合わせする機能と、各コーナーメスの横方向の切断位置調節を行う機能とを有している。
また、ユニット移動モータ38は、一方のコーナー切れ目VFL,VFRと他方のコーナー切れ目VRL,VRRの離間距離を調節する機能を有すると共に、大押さえ送り機構12との協働により各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRの布送り方向における切断位置調節を行う機能を有している。
また、各メス昇降シリンダ36は動作制御手段60に制御される図示しない電磁弁により作動の切り替えが行われる。
このように、コーナーメス機構34は、二対の対向切れ目としてのコーナー切れ目VFL,VFR及びVRL,VRRを形成する切れ目形成手段として機能する。
【0020】
(表示入力手段)
表示入力手段91は液晶表示パネル93と、液晶表示パネルの表示画面の表面に貼着されるシート状のタッチパネル94とから構成される。この表示入力手段91は、各直線縫い目TL,TR又は各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRのそれぞれについて個別に後述する縫製パラメータを設定するパラメータ設定手段として機能する。
液晶表示パネル93は、被縫製物に施される各直線縫い目TL,TR又は各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRに関する各種の縫製パラメータの設定入力を行うための各種操作入力画面を表示する。
また、タッチパネル94は、液晶表示パネル93の表面のほぼ全体に貼付され、当該表面に対する作業者の指先の接触又は近接箇所を検知する機能を有する静電容量式、透明電極式、抵抗膜式、光学式等のシート状のマトリクススイッチである。
【0021】
(操作ペダル)
操作ペダル92は、踏み込み操作による操作位置に応じて玉縁縫いの各工程の実行の指示が可能であって、作業者の足による踏み込み操作により回動可能なペダル部材と、ペダル部材の回動操作によりその回動角度量に応じた指令信号を順次発生し、その指令信号を動作制御手段60に出力するボリュームとを備えている。
上記ボリュームは、ペダル部材の踏み込み操作量に応じて抵抗値が変化するように構成され、動作制御手段60はボリュームから入力される信号の電圧の変化により操作位置の変化を段階的に認識することが可能となっている。
【0022】
(動作制御手段)
動作制御手段60は、各種の制御を行うCPU61と、縫製パラメータ入力処理プログラム62aと縫製プログラム62bとが記憶されたROM62と、CPU71の処理に関する各種データを記憶するワークエリアとして機能するRAM63と、縫製パラメータデータが記憶されるEEPROM64とを備えている。
【0023】
(各種縫製パラメータデータ)
図3及び図4は、玉縁縫いを実行するために、予め表示入力手段91から動作制御手段60に対して入力が行われる各種の設定項目を示す図表である。これらの設定作業における表示入力手段91の表示制御並びに入力データの処理は全て後述する縫製パラメータ入力処理プログラム62aにより実行される。また、当該プログラム62aにより、下記の各項目(縫製パラメータ)の設定内容は、EEPROM64内に記録される。
以下に各種の設定項目について説明する。
【0024】
「L寸設定」とは、直線縫い目TL,TRの縫い長さの設定である。なお、直線縫い目TL,TRの長さが等しい場合はそれらの値がL寸となり、左右の直線縫い目TL,TRの長さが異なる場合には、長い方の縫い目の設定値となる。
「縫い始め偏差方向切り替え」とは、玉縁縫いの前端部側において左右の直線縫い目及びコーナー切れ目VFLとVFRのいずれを前方にずらすか或いは左右とも揃えるかの設定である。即ち、コーナーメスの切れ目形成にあっては、コーナー切れ目VFLとVFR(VRLとVRR)の位置を布送り方向についてずらすことを可能としている。
「縫い始め偏差量」とは、玉縁縫いの前端部側における左右の直線縫い目TL,TR及びコーナー切れ目VFLとVFRの布送り方向におけるズレ量の設定である。
「縫い終わり偏差方向切り替え」とは、玉縁縫いの後端部側において左右の直線縫い目TL,TR及びコーナー切れ目VRLとVRRのいずれを前方にずらすか或いは左右とも揃えるかの設定である。
「縫い終わり偏差量」とは、玉縁縫いの後端部側における左右の直線縫い目TL,TR及びコーナー切れ目VRLとVRRの布送り方向におけるズレ量の設定である。
「センターメス動作位置設定」とは、直線縫い目TL,TRの端部に対するセンターメスによる直線切れ目Sの切断開始位置と切断終了位置とを設定するための項目である。
「縫い始めコーナーメス右幅設定」とは、玉縁縫いの前端部側における右側の直線縫い目TRから右側のコーナー切れ目VFRの右端部までのY軸方向における距離の設定である。
「縫い始めコーナーメス左幅設定」とは、玉縁縫いの前端部側における左側の直線縫い目TLから左側のコーナー切れ目VFLの左端部までのY軸方向における距離の設定である。
「縫い終わりコーナーメス右幅設定」とは、玉縁縫いの後端部側における右側の直線縫い目TRから右側のコーナー切れ目VRRの右端部までのY軸方向における距離の設定である。
「縫い終わりコーナーメス左幅設定」とは、玉縁縫いの後端部側における左側の直線縫い目TLから左側のコーナー切れ目VRLの左端部までのY軸方向における距離の設定である。
「縫い始め左コーナーメス動作位置設定」とは、玉縁縫いの前端部側における左側のコーナー切れ目VFLの布送り方向における切断位置調整値の設定である。
「縫い始め右コーナーメス動作位置設定」とは、玉縁縫いの前端部側における右側のコーナー切れ目VFRの布送り方向における切断位置調整値の設定である。
「縫い終わり左コーナーメス動作位置設定」とは、玉縁縫いの後端部側における左側のコーナー切れ目VRLの布送り方向における切断位置調整値の設定である。
「縫い終わり右コーナーメス動作位置設定」とは、玉縁縫いの後端部側における右側のコーナー切れ目VRRの布送り方向における切断位置調整値の設定である。
【0025】
(縫製プログラム)
縫製プログラム62bは、補正パラメータ入力処理プログラム62aにより入力された上記各縫製パラメータを参照しつつ操作ペダルから入力される指令信号に応じて、押さえモータ14、右昇降シリンダ16、左昇降シリンダ18、ミシンモータ26、メスモータ32、メス昇降シリンダ36、メス移動モータ37、ユニット移動モータ38の駆動を制御し、縫い目TL,TR、直線切れ目S、コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRの形成を行う。かかる縫製プログラム62bを実行することによりCPU61は、各直線縫い目TL,TR又は各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRが、縫製パラメータの設定に従って形成されるように針上下動機構24,大押さえ送り機構12及びコーナーメス機構34を制御する動作制御手段として機能する。
【0026】
(縫製パラメータ入力処理プログラムに基づく入力処理)
図5は縫製パラメータ入力画面G1を示す表示例である。縫製パラメータ入力画面G1は、画面中央部に配置された被縫製物に施される各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRの配置を示す図形を表示する画像表示エリアA1と、当該画像表示エリアA1の周囲に配置された各種の設定入力作業を実行させる複数の操作ボタンBが表示されている。
この縫製パラメータ入力画面G1の表示制御を行うために、ROM62内には、背景画像データと、画像表示エリアA1の図形画像データと、各ボタンの表示のためのボタンアイコンデータと、縫製パラメータ入力画面G1内における画像表示エリアA1及び各操作ボタンBの配置を示す位置座標データとが用意されている(縫製パラメータ入力画面G1のこれらのデータについては図示略)。なお、表示入力手段91で表示が行われる他の画面についてもほぼ同様に上記構成からなる各種のデータが用意されている。
そして、縫製パラメータ入力処理プログラム62aにより、CPU61は、液晶表示パネル93を制御して、背景画像データに基づく縫製パラメータ入力画面G1の背景画像を表示させ、当該背景画像に重ねて、位置座標データに定められた配置で、図形画像データに基づく画像表示エリアA1(図形)とボタンアイコンデータに基づく各種操作ボタンBの表示を行わせる。
さらに、CPU61は、タッチパネル94により、表示入力手段91の表面への操作入力を検知すると、その検知位置を求めて、いずれかの操作ボタンBの配置に一致するかを判定し、一致する場合には、その操作ボタンBに割り当てられた処理に移行する。例えば、操作ボタンBがいずれかの縫製パラメータの入力を要求するボタンの場合には、当該縫製パラメータの入力画面への表示切り替えを実行する。
【0027】
次に、図6に示す縫製パラメータ入力画面G2における入力処理ついて説明する。この縫製パラメータ入力画面G2は、被縫製物M,Tに施される各コーナー切れ目VFL,VFR,VRL,VRRの配置を示す図形表示の表面視形態と裏面視形態とを切り替える操作ボタンとしての切り替えボタンB5が設けられている点が縫製パラメータ入力画面G1と異なっている。図6(A)は表面視形態を表示する縫製パラメータ入力画面G2であり、図6(B)は裏面視形態を表示する縫製パラメータ入力画面G2である。
かかる縫製パラメータ入力画面G2は縫製パラメータである「縫い始めコーナーメス左幅設定」、「縫い始めコーナーメス右幅設定」、「縫い始め左コーナーメス動作位置設定」、「縫い始め右コーナーメス動作位置設定」の設定値を入力するための画面である。
かかる縫製パラメータ入力画面G2の下部中央には、図形を表示する「表示部」としての画像表示エリアA2が配置され、当該図形の設定部位としての左右のコーナー切れ目の近傍であって当該各コーナー切れ目から引き出された引き出し線の延長上には上記各縫製パラメータの数値入力を行う操作ボタンB1〜B4が配置されている。このように図形の各コーナー切れ目の近傍であって当該各コーナー切れ目から引き出された引き出し線の延長上に各操作ボタンB1〜B4を配置することにより、各操作ボタンB1〜B4が図形のいずれのコーナー切れ目に対する入力を行うかが視覚的に認識可能となっている。即ち、かかる操作ボタンB1〜B4の表示を行う液晶表示パネル93と当該各操作ボタンB1〜B4への操作入力を検知するタッチパネル94とが協働して画像表示エリアA2に表示される図形上のいずれのコーナーメス切れ目に対して縫製パラメータの設定を行うかを指定する部位指定手段と、コーナー切れ目に対応する縫製パラメータの設定値を入力するパラメータ入力手段として機能する。
さらに、この縫製パラメータ入力画面G2には、前述したように表示の切り替えボタンB5が設けられており、画像表示エリアA2に表示される図形の画像を被縫製物の表側から見た表面視形態と裏側から見た裏面視形態とに切り替えると共に、各操作ボタンB1〜B4の配置を表面視形態、裏面視形態の各形態に応じたレイアウトに切り替えることを可能としている。
なお、表示の切り替えボタンB5は、その表示態様が現在表示している図形が表面視形態か裏面視形態かに応じて異なっており、表面視形態表示時には大押さえを斜め上方から見た図と大押さえに対して布をどの方向から見ているかを示す矢印(この場合、大押さえにセットされた布を上方から見下ろす方向)とが図示された状態となっており、裏面視形態表示時には大押さえを斜め下方から見た図と大押さえに対して布をどの方向から見ているかを示す矢印(この場合、大押さえにセットされた布を下方から見上げる方向)が図示された状態となっている。従って、この切り替えボタンB5を見れば現在画像表示エリアA2に表示される図形が表面視形態であるか裏面視形態であるかが速やかに認識できるようになっている。
【0028】
この縫製パラメータ入力画面G2の表示制御を行うために、ROM62内には、背景画像データD1と、画像表示エリアA2で表示する表面視形態と裏面視形態のそれぞれの図形画像データD2,D3と、各ボタンの表示のためのボタンアイコンデータD4と、表面視形態表示時と裏面視形態表示時のそれぞれにおける各操作ボタンB1〜5に関する配置及び機能割り当て設定等が記録されたボタンテーブルD5,D6とが用意されている。
そして、縫製パラメータ入力処理プログラム62aにより、CPU61は、液晶表示パネル93を制御して、背景画像データD1に基づく縫製パラメータ入力画面G2の背景画像を表示させ、当該背景画像に重ねて、図形画像データD2(又はD3)に基づく画像表示エリアA2を表示すると共に表面視形態(又は裏面視形態)のボタンテーブルD5(又はD6)に定められた配置でボタンアイコンデータD4に基づく各種操作ボタンB1〜B5の表示を行わせる。また、表示の切り替えボタンB5への操作入力を検知すると、背景画像に重ねて、図形画像データD3(又はD2)に基づく画像表示エリアA2を表示すると共に裏面視形態(又は表面視形態)のボタンテーブルD6(又はD5)に定められた配置でボタンアイコンデータD4に基づく各種操作ボタンB1〜B5の表示を行わせる。
【0029】
ここで、図7に基づいて表面視表示状態(図6(A))におけるボタンテーブルD5と裏面視表示状態(図6(B))におけるボタンテーブルD6について説明する。なお、図7における各ボタンテーブルD5,D6ではボタンB5〜B7についての設定事項の記載は省略している。
操作ボタンB1,B3は、それぞれ縫製パラメータ入力画面G2内において画像表示エリアA2の右上と右下とに配置されたボタンであり、操作ボタンB2,B4は、それぞれ縫製パラメータ入力画面G2内において画像表示エリアA2の左上と左下とに配置されたボタンであり、各ボタンB1〜B4は、何れも設定値を増加及び減少させる+一の設定ボタンにより構成されている。表面視表示状態におけるボタンテーブルD5では、操作ボタンB1〜B4について画面内におけるそれぞれの配置(座標Xn、Ynで示す、但しn=1〜4)と、各操作ボタンB1〜B4が左右いずれのコーナー切れ目VFR、VFLについてのいずれの縫製パラメータの設定値を入力するものであるかを示す機能の割り当てが記録されている。ここでは、画像表示エリアA2に表示されている図形内において直線切れ目の右側に配置されているコーナー切れ目(設定部位)に近接配置される操作ボタンB1,B3についてはそれぞれ縫い始めコーナーメス右幅設定と縫い始め右コーナーメス動作位置設定の設定値入力が割り当てられ、直線切れ目の左側に配置されているコーナー切れ目(設定部位)に近接配置される操作ボタンB2,B4についてはそれぞれ縫い始めコーナーメス左幅設定と縫い始め左コーナーメス動作位置設定の設定値入力が割り当てられている。
そして、裏面視表示状態におけるボタンテーブルD6では、D5と同様に、操作ボタンB1〜B4の配置と機能の割り当てが記録されている。ここでは、画像表示エリアA2に表示されている図形内において直線切れ目の右側に配置されているコーナー切れ目(設定部位)に近接配置される操作ボタンB1,B3についてはそれぞれ縫い始めコーナーメス左幅設定と縫い始め左コーナーメス動作位置設定の設定値入力が割り当てられ、直線切れ目の左側に配置されているコーナー切れ目(設定部位)に近接配置される操作ボタンB2,B4についてはそれぞれ縫い始めコーナーメス右幅設定と縫い始め右コーナーメス動作位置設定の設定値入力が割り当てられている。
そして、CPU61は、縫製パラメータ入力処理プログラム62aにより、切り替えボタンB5への操作入力を検知すると、表面視と裏面視の表示状態の切り替えに伴い、ボタン入力の際にいずれのボタンテーブルD5,D6を参照するかの設定を切り替える。これにより、表面視表示状態に切り替えられたときにはボタンテーブルD5を参照する設定となり、裏面視表示状態に切り替えられたときにはボタンテーブルD6を参照する設定となる。
これにより、CPU61は、切り替えボタンB5からの指示入力により、図形に表示された各設定部位である左右のコーナー切れ目を、被縫製物M,Tを表面から見たコーナー切れ目として認識する状態(表示上の左右それぞれのコーナー切れ目を被縫製物を表面から見たときの左右それぞれのコーナー切れ目VFL,VFRとみなす状態)と、裏面から見たコーナー切れ目として認識するか状態(表示上の左右それぞれのコーナー切れ目を被縫製物を裏面から見たときの左右それぞれのコーナー切れ目VFR,VFLとみなす状態)とを切り替える対応部位切り替え手段として機能することとなる。
また、前述したように、切り替えボタンB5は、対応部位切り替え手段としての処理において図形に表示された左右のコーナー切れ目を被縫製物の表面から見たコーナー切れ目として認識する状態(表面視表示状態)の時にはボタンアイコンにその視線方向が図示され、対応部位切り替え手段としての処理において図形に表示された左右のコーナー切れ目を被縫製物の裏面から見たコーナー切れ目として認識する状態(裏面視表示状態)の時にはボタンアイコンにその視線方向が図示されることから、現在、表面と裏面のいずれに対応した状態かを識別可能に表示する識別表示手段として機能することとなる。
【0030】
また、CPU61は、タッチパネル94により、表示入力手段91の表面への操作入力を検知すると、その検知位置を求めると共に現在の表示が表面視形態か裏面視形態かを識別し、当該識別に応じてボタンテーブルD5又はD6を参照しながら、検知位置がいずれかの操作ボタンB1〜B5の配置に一致するかを判定する。そして、一致する場合には、その操作ボタンB1〜B5に割り当てられて処理に移行する。
【0031】
このように、縫製パラメータ入力処理プログラム62aを実行することにより、CPU61は、切り替えボタンB5による指示入力により対応部位切り替え手段としての処理の実行に伴い、画像表示エリアA2における図形の表示形態を、表面視形態と裏面視形態とに切り替える(各コーナー切れ目を直線切れ目を挟んで反転させて表示する)制御を行う。
【0032】
図8は、縫製パラメータ入力処理プログラム62aに基づく入力処理の流れを示すフローチャートである。これにより処理を詳細に説明する。
まず、縫製パラメータ入力処理プログラム62aが実行されると、縫製パラメータ入力画面(ここでは前述した縫製パラメータ入力画面G2とする)が表示される(ステップS1)。当初の表示の際には予め定められたデフォルトの設定に従って表面視形態か裏面視形態のいずれかが表示される。ここでは、デフォルトが表面視形態を表示する設定であるものとして説明する。
【0033】
次いで、タッチパネル94により縫製パラメータ入力画面G2に対する入力操作が行われたか否かを判定し(ステップS2)、入力操作がない場合には当該判定を繰り返す。
また、入力操作があったときには、現在の縫製パラメータ入力画面G2の表示が表面視形態か否かを判定し(ステップS3)、表面視形態の場合には表面視形態のボタンテーブルD5の読み出しを行う(ステップS4)。また、現在の表示が表面視形態ではない場合には裏面視形態のボタンテーブルD6の読み出しを行う(ステップS5)。
そして、ステップS2においてタッチパネル94が検知した入力操作位置が操作ボタンB1〜B4の位置に該当するか否かを判定し(ステップS6)、該当する場合には現在の縫製パラメータ画面G2の表示形態に対応するボタンテーブル(D5またはD6)を参照して決定される操作ボタンB1〜B4に対応する設定項目の設定数値を増減してRAM63に記憶し(ステップS7)、ステップS2に処理を戻す。
【0034】
また、入力操作位置が操作ボタンB1〜B4のいずれの位置にも該当しない場合には、ステップS2においてタッチパネル94が検知した入力操作位置が切り替えボタンB5の位置に該当するか否かを判定し(ステップS8)、該当する場合には縫製パラメータ入力画面G2の表示切り替えを実行する。即ち、現在の縫製パラメータ入力画面G2の表示が図6(A)の表面視形態の場合には図6(B)の裏面視形態に切り替え、現在の縫製パラメータ入力画面G2の表示が図6(B)の裏面視形態の場合には図6(A)の表面視形態に切り替える(ステップS9)。そして、ステップS1に処理を戻す。
【0035】
また、入力操作位置が切り替えボタンB5の位置に該当しない場合には、ステップS2においてタッチパネル94が検知した入力操作位置が確定ボタンB6(図6参照)の位置に該当するか否かを判定し(ステップS10)、該当する場合にはステップS7で設定数値の変更が行われていた場合にはその数値を確定しEEPROM64に格納する(ステップS11)。そして、縫製パラメータ入力画面G2を閉じて処理を終了する(ステップS13)。
また、入力操作位置が確定ボタンB6の位置に該当しない場合には、ステップS2においてタッチパネル94が検知した入力操作位置が取り消しボタンB7(図6参照)の位置に該当するか否かを判定し(ステップS12)、当該取り消しボタンB7にも一致しない場合には、ボタンの存在しない領域への接触であるものとして、ステップS2に処理を戻す。また、入力操作位置が取り消しボタンB7の位置に該当する場合には、縫製パラメータ入力画面G2を閉じて処理を終了する(ステップS13)このとき、ステップS7で設定数値の変更が行われていた場合にはその数値は破棄される。
【0036】
(実施形態の効果)
以上のように、玉縁縫いミシン10の表示入力手段91は、動作制御手段60の制御により、縫製パラメータ入力画面G2において、画像表示エリアA2に図形を表面視形態と裏面視形態とに切り替え表示可能であり、表面視形態の表示の際には、表面視表示された図形の各切れ目と当該各切れ目に対応する操作ボタンB1〜B4との対応が識別できるような視覚的な表示が行われる。そして、裏面視形態の表示の際には、裏面視表示された図形の各切れ目と当該各切れ目に対応する操作ボタンB1〜B4との対応が識別できるように視覚的な表示が行われる。また、これと同時に、各操作ボタンB1〜B4と図形における各設定部位との対応関係を示すボタンテーブルD5とD6の切り替えを行うので、作業者は、縫製物を表面又は裏面のいずれから確認したとしても切り替えボタンB5により、その確認した面と同じ図形の表示を行わせると共に動作制御手段60に対して表面視に対応したボタン配置又は裏面視に対応したボタン配置でボタンの入力を行うことができ、且つ、表面と裏面のいずれを表示させたとしても、各面からみた図形の各設定部位と各設定入力手段としての操作ボタンB1〜B4の対応が視覚的に識別可能な表示が行われるため、被縫製物をいずれの面から確認したとしても、各切れ目の縫製パラメータの設定を誤ることなく行うことが可能となる。
また、表示入力手段91にタッチパネル94を採用しているので、操作ボタンB1〜B4の位置切り替えを容易に表面視形態と裏面視形態との切り替えに追従させることができ、常に、図形の各切れ目と各操作ボタンB1〜B4との配置を視覚的に容易に識別可能な状態とすることができ、表裏切り替えに際して誤入力のさらなる抑止を図ることが可能となる。
また、切り替えボタンB5のアイコン表示が、動作制御手段60が現在、表面視対応状態と裏面視対応状態のいずれの状態であるかを識別可能に示していること、及び、表面視対応状態と裏面視対応状態の各々で、表示画像エリアA2において表面視又は裏面視のコーナー切れ目が図示されるので、表裏切り替えに際して誤入力のさらなる抑止を図ることが可能となる。
【0037】
(その他)
なお、上記実施形態のように、ミシンの縫製パラメータ入力装置は、ミシンの一部として搭載される場合に限られるものではなく、縫製パラメータの設定入力のみを行うミシンから独立した装置であっても良い。
また、本発明の縫製パラメータ入力装置は、玉縁縫いミシンの縫製パラメータの入力を対象とするものに限られるものではなく、ボタン穴となる布送り方向と平行な切れ目の両側に平行な縫い目部分が形成される鳩目穴かがり縫いミシンなど、事前に切れ目配置に関する縫製パラメータの設定を要する各種のミシンを対象としても良い。
また、各縫製パラメータは実際の数値の入力を行っているか、これに限られず、現在の設定値に対する修正割合(%)を入力するようにしても良い。
また、鳩目穴かがりミシンの縫い目のように左右対称形状な縫い目の場合には、表示切り替えは行わず、表面視対応状態でのボタン入力と裏面視対応状態でのボタン入力の切り替えのみを行うようにしても良い。
また、表面視での対応状態状態と裏面視での対応状態状態の切り替えを行う例として、図3及び図4に挙げた各縫製パラメータの内の一部の縫製パラメータの入力画面についてのみ例示したが、残る他の縫製パラメータの入力の際にも表面視での対応状態と裏面視での対応状態の切り替えを行っても良い。
【0038】
また、上記玉縁縫いミシン10では、縫製パラメータの設定入力を行う縫製パラメータ入力画面G2中に表示及び対応切り替えを行う切り替えボタンB5を配置したが、このような例に限らず、例えば、他の上位画面(例えば縫製パラメータ入力画面G1)からボタン入力操作で表示させることが可能な表示及び対応切り替え設定を行う切り替え設定画面G3(図9参照)を用意すると共に当該画面G3に切り替えボタンB8(いわゆるメモリースイッチ)を設けて、縫製パラメータの設定を行う入力画面G2上では直接表示及び対応切り替えを行うことができないようにしても良い。これにより、縫製パラメータ入力画面G2の表示時において切り替えボタンB5に不注意などで触れてしまって不慮の表示及び対応切り替えが行われることによる縫製パラメータの誤入力を抑止することが可能となる。
その場合、縫製パラメータ入力画面G2上には切り替えボタンB5が表示されなくなるが、例えば、図10(A)と図10(B)に縫製パラメータ入力画面G2’示すように、現在表示されているのが表面視形態且つ表面視対応状態なのか裏面視形態且つ裏面視対応状態なのかを示す表示H1,H2(例えば切り替えボタンB5に施されていたものと同じ表示)を画面内に施しても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、表示入力手段91にタッチパネル94を採用しているが、これに限られるものではない。例えば、図11に示す表示入力手段91A(縫製パラメータ入力装置)のように、中央に被縫製物に施される切れ目又は縫い目を示す図形の液晶表示パネル93A(表示手段)を配置し、その周囲には通常の押下操作を行う操作ボタンBA1,BA2を配置しても良い。この場合、表示切り替えが行われても、タッチパネルのように操作ボタンの配置を自在に変えることはできないが、液晶表示パネル93Aの表示(図中の矢印等)により図形の各部位と操作ボタンBA1,BA2との関係が表示切り替えの前後で明確となるようにしても良い。
また、この例では、表面視形態において縫い目の前端部の設定が操作ボタンBA1、後端部の設定が操作ボタンBA2で行われ、裏面視形態において縫い目の前端部の設定が操作ボタンBA2、後端部の設定が操作ボタンBA1で行われるように変更されるが、かかる設定の変更を予めボタンテーブルとして用意しておくことが望ましい。
【0040】
また、図6,7の例では、各操作ボタンB1〜B4のいずれかに操作入力を行うことで設定の入力と共に設定部位の選択も同時に行われるため、各操作ボタンB1〜B4が、部位指定手段とパラメータ入力手段の機能を同時に果たしていたが、これらの機能は別々の方法で入力が行われても良い。
例えば、図12に示すように、図形(液晶パネルなどにより表面形態と裏面視形態とが切り替え可能でも良いし、平面上にプリントされた固定画像でも良い)の周囲に現在選択されている設定部位を表示する表示ランプL1〜L4を配し、現在縫製パラメータを入力しようとする設定部位を選択する選択ボタンBB1と、選択された設定部位の縫製パラメータの設定値の増減ボタンBB2と、図形の選択された設定部位が表面視に対応しているのか裏面視に対応しているのかを示す表示ランプL5,L6と、表面視対応状態と裏面視対応状態とを切り替える切り替えボタンBB3とを備える操作パネルを使用してもよい。この場合、選択ボタンBB1はいずれの設定部位に対して縫製パラメータの設定を行うかを指定する部位指定手段として機能し、増減ボタンBB2は設定部位に対応する縫製パラメータを入力するパラメータ入力手段として機能することとなり、切り替えボタンBB3は対応部位切り替え手段としての反転制御における切り替えを指示入力する手段として機能することとなり、表示ランプL5,L6は識別表示手段といて機能することとなる。
【0041】
また、縫製パラメータとしては図3,4に示すものに限らず、例えば、縫い糸の張力をソレノイドやモータなどにより制御可能であって、各設定位置(例えば、一対の直線縫い目のそれぞれ)について個別に糸張力設定を行うミシンにあっては、当該糸張力設定を縫製パラメータとして含ませても良い。
この場合も、図13に示すように、操作パネル91の表示画像エリアAC1に図形として表示される二本の直線縫い目とそれぞれを選択すると共に縫製パラメータを入力する操作ボタンBC1,BC2が表示入力手段91に表示されるが、切り替えボタンBC3を設けて、それら表示された各設定部位と操作ボタンBC1,BC2との対応関係が表面視に対応するのか裏面視に対応するのかを選択可能としても良い。また、表示切り替えも行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】発明の実施形態たる玉縁縫いミシンの全体の概略構成を示すブロック図である。
【図2】斜め形状のポケット開口部を形成する玉縁縫いにおけるセンターメスによる直線状の切れ目とコーナーメスによる切れ目と二本針による縫い目の配置の関係を示す説明図である。
【図3】縫製パラメータの内容の一覧を示す説明図ある。
【図4】縫製パラメータの内容の一覧を示す説明図ある。
【図5】縫製パラメータ入力画面G1を示す表示例である。
【図6】縫製パラメータ入力画面G2を示す表示例であって、図6(A)は表面視形態の表示状態を示し、図6(B)は裏面視形態の表示状態を示す。
【図7】図7(A)は表面視対応状態におけるボタンテーブルを示し、図7(B)は裏面視対応状態におけるボタンテーブルを示す説明図である。
【図8】縫製パラメータ入力処理プログラムに基づく入力処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】表示切り替え設定画面G3を示す表示例である。
【図10】縫製パラメータ入力画面G2’を示す表示例であって、図10(A)は表面視形態の表示状態を示し、図10(B)は裏面視形態の表示状態を示す。
【図11】パラメータ入力手段の他の例を示す正面図であって、図11(A)は表面視形態の表示状態を示し、図11(B)は裏面視形態の表示状態を示す。
【図12】パラメータ入力手段のさらに他の例を示す正面図である。
【図13】パラメータ入力手段の別の例を示す正面図である。
【図14】布地をいずれの方向から見ているかを示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
10 玉縁縫いミシン
60 動作制御手段
61 CPU(対応部位切り替え手段)
91 表示入力手段(パラメータ設定手段)
93 液晶表示パネル
94 タッチパネル
A2,AC1 画像表示エリア(表示部)
B1〜B4,BA1,BA2,BC1,BC2 操作ボタン(部位指定手段、パラメータ入力手段)
B5 切り替えボタン(識別表示手段)
B8,BB3 切り替えボタン
BB1 操作ボタン(部位指定手段)
BB2 操作ボタン(パラメータ入力手段)
H1,H2 表示(識別表示手段)
L5,L6 表示ランプ(識別表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物の布送り方向に沿う直線を挟んで互いに対向配置される一対の対向縫い目を形成する縫い目形成手段又は前記直線を挟んで対向配置される一対の対向切れ目を形成する切れ目形成手段の少なくともいずれか一方を備えると共に、
前記各対向縫い目又は各対向切れ目のそれぞれについて個別に縫製パラメータを設定するパラメータ設定手段とを有し、
当該パラメータ設定手段が、
前記対向配置される一対の対向縫い目又は一対の対向切れ目を示す図形を表示する表示部と、
前記表示部に表示される前記一対の対向縫い目又は一対の対向切れ目の図形上のいずれの設定部位に対して前記縫製パラメータの設定を行うかを指定する部位指定手段と、
前記設定部位に対応する前記縫製パラメータを入力するパラメータ入力手段とを備え、
前記各対向縫い目又は各対向切れ目が、前記縫製パラメータの設定に従って形成されるように前記縫い目形成手段または前記切れ目形成手段を制御するミシンにおいて、
前記部位指定手段により指定された前記図形上の設定部位が、前記被縫製物を表面から見た部位に対応するか裏面から見た部位に対応するかを指示入力により切り替える対応部位切り替え手段と、
前記対応部位切り替え手段による現在の切り替え状態を識別可能に表示する識別表示手段とを備えたミシン。
【請求項2】
前記パラメータ設定手段は、前記表示部に表示される前記各対向縫い目又は各対向切れ目の図形を、前記対応部位切り替え手段による対応部位の切り替えに対応させて前記直線を挟んで反転させて表示することを特徴とする請求項1記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−112706(P2009−112706A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292068(P2007−292068)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】