説明

ミシン

【課題】 無給油釜を備えたミシンにおいて、給油量を極微量範囲で調整し、適切な給油量の潤滑油を自動的かつ定期的にミシン釜に供給することが可能な給油装置を備えたミシンを提供する。
【解決手段】 ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝26が形成された外釜13と、前記外釜13に収納されると共に、前記外釜13の軌溝26に嵌合する合成樹脂製の軌条16が形成された内釜14とを有するミシンにおいて、前記内釜14の軌条16が露出するように、前記外釜13の所定位置に形成された開口部31と、前記ミシンの停止時に前記開口部31に対向するように配置された吐出口46を有するノズル37と、潤滑油を貯留する油タンク33と、一端側が前記ノズル37に連通し、前記油タンク37からの潤滑油を前記吐出口46から吐出させるポンプ34と、ミシンの電源の通電に連動させて前記ポンプ34を作動させる制御手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無給油釜に対して定期的に、かつ自動的に給油を行う給油装置を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンに備えられているミシン釜は、内釜の外周部に固定された凸状の軌条が、外釜の軌溝に嵌合するようにして、外釜に内釜が組み込まれており、ミシン上軸と連動して外釜が高速回転することにより縫い目を形成するようになっている。一般に、内釜および外釜はステンレス綱、鋼鉄等から形成されているため、内釜と外釜とが摩擦接触して摩耗しやすく、さらに摩耗が生じると縫い性能の低下や騒音発生の原因となっていた。従来、このような内釜と外釜との摩擦を低減するために、内釜の軌条を合成樹脂、無機材料等によって形成したもの(例えば、特許文献1参照)や、内釜全体の表面に合成樹脂を含む材料からなる表皮が形成されたもの(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
従来のステンレス綱、鋼鉄等によって形成されたミシン釜を備えたミシンは、ミシン釜の耐久性を向上させるため、給油装置を備えているが、上記のような内釜の一部または全体が合成樹脂等で形成されたミシン釜を備えたミシンは、ミシン釜への給油が不要とされ(いわゆる無給油釜)、給油装置を備えていないのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開平6−238084号公報
【特許文献2】特開平7−000664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような無給油釜を備えたミシンであっても、一日に一滴(約0.05〜0.1cc)の給油を行って使用すると、給油を行わずに使用する場合と比べてミシン釜の耐久寿命が2〜3倍近く延びることが報告されている。したがって、無給油釜を備えるミシンであっても、自動的にミシン釜に給油を行う給油装置を備えたミシンが望まれている。このような要望を満たすために提案されている従来の給油装置は、給油量を極微量範囲で調整することが難しく、必要以上に給油して軌条の摩耗粉によって縫製物が汚れてしまったり、反対に、給油量が不足してミシン釜の耐久性が低下してしまうなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような点に鑑み、無給油釜を備えたミシンにおいて、給油量を極微量範囲で調整し、適切な給油量の潤滑油を自動的かつ定期的にミシン釜に供給することが可能な給油装置を備えたミシンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、請求項1に記載のミシンは、ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜の軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、潤滑油を貯留する油タンクと、一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、ミシンの電源の通電に連動させて前記ポンプを作動させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成されたミシンによれば、前記制御手段は、前記ミシンの電源が通電状態になる度に前記ポンプを作動させて、前記油タンクからの潤滑油を前記ノズルを介して前記内釜の軌条が露出した前記外釜の開口部へ給油するようになっているため、前記外釜の軌溝と前記内釜の軌条との摺接面に一定量の給油量を自動的かつ定期的に供給することが可能となる。
【0009】
また、請求項2に記載のミシンは、ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜の軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、潤滑油を貯留する油タンクと、一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、糸切り信号の発生回数をカウントするカウンタと、任意の糸切り信号の発生回数を設定入力するための入力装置と、前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されている糸切り信号の発生回数に達すると、前記ポンプを作動させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成されたミシンによれば、前記制御手段は、前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されている糸切り信号の発生回数に達する度に前記ポンプを作動させて、前記油タンクからの潤滑油を前記ノズルを介して前記内釜の軌条が露出した前記外釜の開口部へ給油するようになっているため、前記外釜の軌溝と前記内釜の軌条との摺接面に一定量の給油量を自動的かつ定期的に給油することが可能である。また、予め前記入力装置により設定入力する糸切り信号の発生回数を変更することにより、潤滑油をミシン釜に給油する頻度を調整し、適切な給油量の潤滑油を給油することができる。
【0011】
また、請求項3に記載のミシンは、ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、潤滑油を貯留する油タンクと、一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、ミシン上軸の回転数を検出するための上軸エンコーダと、上軸エンコーダの回転数をカウントするカウンタと、任意の上軸エンコーダの回転数を設定入力するための入力装置と、前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されている回転数に達すると、前記ポンプを作動させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成されたミシンによれば、前記制御手段は、前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されているミシン上軸の回転数(針数)に達する度に前記ポンプを作動させて、前記油タンクからの潤滑油を前記外釜の開口部へ給油するようになっているため、前記外釜の軌溝と前記内釜の軌条との摺接面に一定量の給油量を自動的かつ定期的に給油することが可能である。また、予め前記入力装置により設定入力するミシン上軸の回転数(針数)を変更することにより、潤滑油をミシン釜に給油する頻度を調整し、適切な給油量の潤滑油を給油することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のミシンによれば、無給油釜として使用されているミシン釜の寿命を大幅に伸ばすことが可能である。また、必要最低限の給油量を給油することが可能であるため、無駄な潤滑油の消費量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のミシンの実施形態を図面により説明する。
【0015】
まず、第1実施形態のミシンについて図1から図5により説明する。なお、図1は第1実施形態に係るミシンのミシン釜8および給油装置32の正面図、図2はミシン釜8の斜視図(A)および断面図(B)である。図3はミシン釜8の内釜14の斜視図である。また、図4はミシンの給油装置の噴出位置とミシン釜の位置関係を示す正面図、図5はミシンの要部と給油装置32の関係を表すブロック図である。また、第2実施形態のミシンは、給油装置32の制御手段4の構成を除いては、第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0016】
第1実施形態に係るミシンは、図1に示すように、ベッド部1と、ベッド部1の上方にベッド部1と平行に延在するアーム部(不図示)と、アーム部とベッド部1とを接続する脚柱部(不図示)とを有する。
【0017】
前記アーム部の内部には、ミシンモータ(不図示)により回転駆動されるミシン上軸(不図示)が水平に配設されている。アーム部の自由端側には、ミシン上軸の回転に連動する針棒駆動機構(不図示)によって上下動可能とされた針棒(不図示)が配設されており、針棒の下端部には針2が取り付けられている。
【0018】
また、前記ミシン上軸には、ミシン上軸の回転量を検出するための上軸エンコーダ3(図5参照)が配設されており、上軸エンコーダ3の出力信号は、後述する制御手段4に送られるようになっている。
【0019】
ベッド部1の内部には、ミシン下軸5(図2参照)が水平に配設されており、ミシン下軸5の端部に取り付けられているプーリ(不図示)と、ミシン上軸の端部のプーリ(不図示)とをタイミングベルト(不図示)で連結することにより、ミシン上軸とミシン下軸5とが同期して回転するように連結されている。
【0020】
また、ベッド部1の上面には、針板6が取り付けられており、針板6には針2が貫通する針穴7が形成され、針板6の下方にはミシン釜8がミシン下軸5に取り付けて配設されている。
【0021】
そして、針2およびミシン釜8が、前記ミシンモータの駆動による前記ミシン上軸の回転に同期して駆動され、針2に通した上糸とボビン9に巻かれた下糸とを用いて、針板6上の縫製物に縫い目を形成するようになっている。
【0022】
前記脚柱部には、ミシンの電源の接続および切断を行うための電源スイッチ10(図5参照)が配設されており、制御手段4にその電気信号が入力されるようになっている。
【0023】
また、ミシンには、縫製時に縫製動作をコントロールするためのペダル(不図示)と、前記ペダルの踏み込み操作を検出するペダルセンサ12(図5参照)とが配設されており、作業者によりペダルの踏み込み操作が行われると、ペダルセンサ12により電気信号に変換されて制御手段4に送られるとともに、その踏み込み操作に応じた制御が行われるようになっている。
【0024】
前記ミシン釜8は、ミシン下軸5により回転される外釜13と、外釜13の内側に相対的に回転可能に収容された内釜14とを備え、内釜14にはボビン9を収容したボビンケース15が装着されるように形成されている。
【0025】
前記内釜14は、図3に示すように、底部19を備えた筒部11と、筒部11の外周に形成されたフランジ状の軌条16と、筒部11の開放側の端部に形成された内釜回り止め凹所17を有するフランジ部18とを有する。筒部11の内釜回り止め凹所17の近傍の外周部には、針2を内釜14の内部に導入するための針落ち穴45が形成されている。軌条16は合成樹脂で形成されており、内釜回り止め凹所17に関して外釜13の回転方向の下流側に糸掛け部21が形成され、上流側に糸抜け部(不図示)が形成されている。内釜14の底部19の中心には軸状のスタッド20が立設されている。このスタッド20にはボビン9が中央孔22を挿通することにより装着されている。スタッド20の先端部には切欠き23が形成されており、この切欠き23にボビンケース15の係止片24を係止させることによりボビン9の抜け止めが可能となっている。
【0026】
図2に示すように、外釜13はミシン下軸5の先端に底部をねじ止めして固着されており、当該底部から略筒状の外周部が形成されている。その外釜13の外周部には、針2の針先に形成される上糸のループを捕捉するための剣先25が形成されている。また、外釜13の外周部の内面には、軌溝26が形成されており、この軌溝26に内釜14の軌条16が嵌合されるように形成されている。なお、外釜13の軌溝26と内釜14の軌条16は、外釜13の回転に伴って摩擦しながら回転する摺動面を構成する。
【0027】
また、図1および図2に示すように、内釜14の前方位置には、回り止め部材27がベッド部1に固着して配設されており、この回り止め部材27の先端部には、内釜回り止め凹所17に嵌合する回り止め突起28が形成されている。そして、回り止め突起28と内釜回り止め凹所17との嵌合により、内釜14が外釜13に追従回転しないように回り止めされている。
【0028】
なお、軌条16は、合成樹脂の代わりに無機材料によって形成されていてもよい。また、上記のような内釜14の代わりに、ステンレス綱、鋼鉄等で形成された内釜14に、軌条16部分のみまたは内釜14全体に、合成樹脂や無機材料等によってコーティングを形成してもよい。
【0029】
また、ベッド部1の内部には、上糸および下糸を切断する糸切り装置(不図示)が配設されている。この糸切り装置は、固定刃および可動刃(共に図示せず)を備え、糸切りソレノイド30(図5参照)により前記可動刃と連動する糸切り機構を駆動させて、針板6の針穴7の下方に延出した上糸および下糸を切断するものである。
【0030】
前記糸切りソレノイド30は制御手段4の出力側に接続されている。縫製時に、ペダルセンサ12が前記ペダルの後ろ踏み操作を検知し、さらに、上軸エンコーダ3が前記ミシン上軸の所定量の回転を検出すると糸切り信号が発生するようになっている。そして、制御手段4は、この糸切り信号に基づいて糸切りソレノイド30を通電状態にし、前記糸切り装置を作動させて上糸および下糸を切断するようになっている。
【0031】
上記のように糸切り信号が発生した後、前記針棒は所定の停止位置に停止し、ミシン釜8は、図1に示すような停止位置に一時的に停止する。この停止状態にあるミシン釜8の外釜13の下方部には、後述する給油装置32のノズル37の噴出口38から噴出された潤滑油を外釜13の内部に導入するための開口部としての窓部31が形成されている。そして、図1に示す停止位置において、開口部としての窓部31に内釜14の軌条16が露出する。
【0032】
ベッド部1のミシン釜8の下方には、給油装置32が配設されている。給油装置32は、潤滑油を貯留するための油タンク33、油タンク33から潤滑油を汲み上げるための電動ポンプ34、汲み上げパイプ35、放出パイプ36を備えている。また、放出パイプ36の先端部は吐出口46を有しており、この吐出口46にはノズル37が接続されている。ノズル37は、その先端部の噴出口38を外釜13の窓部31に向けるようにして支持されている。なお、このような給油装置32により、一回の電動ポンプ34の作動で噴出される潤滑油の量は極微量(約0.05〜0.1cc)となっている。電動ポンプ34は制御手段4(図5参照)に接続されており、所定のタイミングで作動し、給油するようになっている。
【0033】
ミシン釜8は、糸切り信号が発生した後、図4に示すような停止位置に停止するようになっている。そして、給油装置32のノズル37は、その噴出口38を停止位置にあるミシン釜8の外釜13の窓部31に向けるようにして配設されており、誤差を考慮して、その噴出口38が、窓部31の位置を中心にして60度の範囲(剣先25を基準にして120〜180度の範囲)に位置するように配設されている。
【0034】
図5に示すように、ミシンの制御手段4は、CPU40、ROM41およびRAM42を備えている。
【0035】
制御手段4の入力側には、上軸エンコーダ3、ペダルセンサ12、ミシンの電源スイッチ10が接続されている。また、制御手段4の入力側には、給油装置32の電動ポンプ34が発生するまでの糸切り信号の発生回数(前記糸切り装置の作動回数)を予め設定入力するための入力装置39が接続されている。
【0036】
前記ROM41には、糸切り信号が発生するまでに要する前記ミシン上軸の回転数が記憶されている。前記RAM42には、入力装置39により設定入力された糸切り信号の発生回数が記憶される。前記CPU40には、糸切り信号の発生回数をカウントする糸切りカウンタ43が接続されている。この糸切りカウンタ43は、糸切り信号が発生する度に新たなカウント数をRAM42に記憶させるようになっており、カウント数が予め設定入力されている回数に達するとカウント数を0にリセットするようになっている。
【0037】
また、制御手段4の出力側には、給油装置32の電動ポンプ34、前記糸切り装置の糸切りソレノイド30が接続されている。
【0038】
以下に、第1実施形態のミシンの動作について説明する。
【0039】
まず、縫製前に予め、作業者が、ミシン釜8に給油すべき適正な給油量を考慮して、入力装置39により一回の給油を行うまでに要する糸切り信号の発生回数(前記糸切り装置の作動回数)を設定入力すると、RAM42にその発生回数が記憶される。
【0040】
縫製時に、ペダルセンサ12が前記ペダルの後ろ踏み操作を検知し、さらに、上軸エンコーダ3が、ROM41に記憶されている所定の回転数の前記ミシン上軸の回転を検出すると、糸切り信号が発生する。この糸切り信号がCPU40に送られると、糸切りカウンタ43がその糸切り信号の発生回数をカウントし、逐次、新しいカウント数をRAM42に記憶させる。
【0041】
そして、糸切りカウンタ43のカウント数が、予め設定入力された糸切り信号の発生回数に達すると、糸切りカウンタ43がカウント数を0にリセットするとともに、給油装置32の電動ポンプ34を作動させて、ノズル37の噴出口38からミシン釜8の窓部31に向けて潤滑油が噴出され、外釜13の内部すなわち外釜13の軌溝26と内釜14の軌条16の摺動面に潤滑油が給油される。
【0042】
その後、上記と同様に、糸切りカウンタ43は、前記糸切り信号の発生回数をカウントし、設定入力された発生回数に達する度に電動ポンプ34を作動させてミシン釜8に給油する。
【0043】
以上のような第1実施形態のミシンによれば、糸切りカウンタ43の糸切り信号のカウント数が、予め入力装置38により設定入力されている発生回数に達すると、電動ポンプ34を作動させて潤滑油をミシン釜8に給油するように構成されているため、一定量の給油量を自動的に、かつ定期的にミシン釜8に給油することが可能である。また、糸切り信号の発生回数を入力装置39により適宜設定することによって、例えばミシン釜8の大きさや素材等に応じて給油量を調整し、極微量範囲で適切な給油量の潤滑油を給油することが可能である。
【0044】
次に、第2実施形態のミシンについて説明する。なお、図6は、第2実施形態のミシンの要部と給油装置32の関係を表すブロック図である。
【0045】
第2実施形態のミシンは、第1実施形態のCPU40に接続されている糸切りカウンタ43に代えて、針数カウンタ44が接続されている。また、入力装置39により、一回の給油に要する前記ミシン上軸の回転数(針数)を設定入力することが可能となっている。
【0046】
以下に、第2実施形態のミシンの動作について説明する。
【0047】
まず、縫製前に予め、作業者が、ミシン釜8に給油すべき適正な給油量を考慮して、入力装置39により一回の給油を行うまでに要するミシン上軸の回転数(針数)を設定入力すると、RAM42にその発生回数が記憶される。
【0048】
縫製時に、針数カウンタ44は、上軸エンコーダ3により検出されるミシン上軸の回転数(針数)をカウントし、逐次、新しいカウント数をRAM42に記憶させる。
【0049】
そして、針数カウンタ44のカウント数が、予め設定入力されたミシン上軸の回転数(針数)に達すると、針数カウンタ44がカウント数を0にリセットするとともに、給油装置32の電動ポンプ34を作動させて、ノズル37の噴出口38からミシン釜8の窓部31に向けて潤滑油が噴出され、外釜13の内部に潤滑油が給油される。
【0050】
その後、上記と同様に、針数カウンタはミシン上軸の回転数(針数)をカウントし、設定入力された回転数に達する度に電動ポンプ34を作動させてミシン釜8に給油する。
【0051】
以上のような第2実施形態のミシンによれば、針数カウンタ44のカウント数が入力装置39により予め設定入力されているミシン上軸の回転数(針数)に達すると、電動ポンプ34を作動させて潤滑油をミシン釜8に給油するように構成されているため、一定量の給油量を自動的に、かつ定期的に給油することが可能である。また、予め入力装置39により設定入力するミシン上軸の回転数(針数)を適宜変更することにより、例えばミシン釜8の大きさや素材等に応じて、極微量範囲で適正な給油量に調整して、給油することが可能である。
【0052】
なお、第1,第2実施形態では、入力装置39により糸切り信号の発生回数(前記糸切り装置の作動回数)や前記ミシン上軸の回転数(針数)をカウントして、所定のカウント数に達すると電動ポンプ34を作動させて給油する構成となっているが、ミシンの電源スイッチ10の通電に連動させて電動ポンプ34を作動させるように構成してもよい。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係るミシンのミシン釜および給油装置の正面図
【図2】(A)は本発明の第1実施形態に係るミシンのミシン釜の斜視図、(B)は同断面図
【図3】本発明の第1実施形態に係るミシンの内釜の斜視図
【図4】本発明の第1実施形態に係るミシンの給油装置の噴出位置とミシン釜の位置関係を示す正面図
【図5】本発明の第1実施形態のミシンの要部と給油装置との関係を示すブロック図
【図6】本発明の第2実施形態のミシンの要部と給油装置との関係を示すブロック図
【符号の説明】
【0055】
2 針
3 上軸エンコーダ
4 制御手段
10 電源スイッチ
12 ペダルセンサ
13 外釜
14 内釜
16 軌条
26 軌溝
30 糸切りソレノイド
32 給油装置
33 油タンク
34 電動ポンプ
35 汲み上げパイプ
36 放出パイプ
37 ノズル
43 糸切りカウンタ
44 針数カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜の軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、
前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、 前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、
潤滑油を貯留する油タンクと、
一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、
ミシンの電源の通電に連動させて前記ポンプを作動させる制御手段と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜の軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、
前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、 前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、
潤滑油を貯留する油タンクと、
一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、
糸切り信号の発生回数をカウントするカウンタと、
任意の糸切り信号の発生回数を設定入力するための入力装置と、
前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されている糸切り信号の発生回数に達すると、前記ポンプを作動させる制御手段と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項3】
ミシン上軸に連動して回転すると共に、該内周側に軌溝が形成された外釜と、前記外釜に収納されると共に、前記外釜軌溝に嵌合する合成樹脂製の軌条が形成された内釜とを有するミシンにおいて、
前記内釜の軌条が露出するように、前記外釜の所定位置に形成された開口部と、 前記ミシンの停止時に前記開口部に対向するように配置された吐出口を有するノズルと、
潤滑油を貯留する油タンクと、
一端側が前記ノズルに連通し、前記油タンクからの潤滑油を前記吐出口から吐出させるポンプと、
ミシン上軸の回転数を検出するための上軸エンコーダと、
上軸エンコーダの回転数をカウントするカウンタと、
任意の上軸エンコーダの回転数を設定入力するための入力装置と、
前記カウンタのカウント数が前記入力装置により予め設定入力されている回転数に達すると、前記ポンプを作動させる制御手段と
を備えることを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−68850(P2010−68850A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236475(P2008−236475)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】