説明

ミシン

【課題】ユーザが、回転可能な刺繍枠の角度を容易に合わせることができるミシンを提供する。
【解決手段】刺繍枠9は、内枠91、中枠92、及び外枠94が組み合わされて構成されている。刺繍枠9は、内枠91と中枠92との間で加工布100を狭持し、外枠94に対して中枠92が回転可能である。ミシンに設けられたイメージセンサによってミシンに装着された刺繍枠9を含む領域が撮像される。撮像された画像151が液晶ディスプレイ15に表示される。撮像された画像151から、内枠91に付された標識110が識別され、識別された標識110に基づいて、外枠94に対する中枠92の回転角度が検出される。検出された回転角度である検出角度に基づいて、中枠の回転角度を所定の角度に合わせるための情報である回転情報が液晶ディスプレイ15に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍枠を装着可能なミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の角度に加工布を回転可能な円形の刺繍枠を用いて刺繍縫製を行うミシンが知られている。例えば、特許文献1に記載のミシンには、刺繍枠組と刺繍外枠を備えた刺繍枠が装着可能である。刺繍枠組は、円形の刺繍枠小と、その外形よりも大きい内径を持つ円形の刺繍枠大により構成されている。加工布は、刺繍枠小と刺繍枠大とに挟み込まれて固定される。刺繍外枠は、加工布が固定された刺繍枠組を回転可能に支持する。刺繍外枠の側面には、刺繍枠固定ネジが設けられている。また、刺繍枠大の上面には、三角形の印が設けられ、刺繍外枠には、角度を示す目盛りが設けられている。作業者は、三角形の印と、角度を示す目盛りを見ながら刺繍枠組を所望の角度に回転させ、刺繍枠固定ネジを締め込んで刺繍枠組を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−4094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ミシンでは、刺繍外枠に付された目盛りと、刺繍枠大に付された印とを目視して角度を調整する必要があるが、目盛りや印が加工布に覆われて見難かった。また、目盛りや印を目視することによって角度を調整する必要があるため、角度調整の精度を上げるのが困難だった。
【0005】
本発明の目的は、ユーザが、回転可能な刺繍枠の角度を容易に合わせることができるミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るミシンは、円形の枠形状の内枠と、前記内枠の径方向外側に着脱可能な円形の枠形状の中枠と、前記中枠の径方向外側に着脱可能に構成され、前記中枠を回転可能に保持する円形の枠形状の外枠とを備えた刺繍枠を装着可能な装着部と、前記装着部に装着された前記刺繍枠を含む領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像から前記刺繍枠又は前記刺繍枠に取り付けられた加工布上に付された標識を識別し、識別した前記標識を用いて前記外枠に対する前記中枠の回転角度を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記回転角度である検出角度に基づいて、前記中枠の回転角度を所定の角度に合わせるための情報である回転情報を報知する報知手段とを備えている。この場合、ユーザは、報知された回転情報を参照して、外枠に対する中枠の回転角度を調整することができる。よって、外枠に対する中枠の回転角度を容易に合わせることができる。
【0007】
前記ミシンは、予め設定された前記外枠に対する前記中枠の回転角度のデータである枠回転データを記憶する記憶手段を備え、前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データとに基づいて、前記回転情報を報知してもよい。この場合、例えば、検出角度に基づく現在の中枠の回転角度と枠回転データに基づく目標となる回転角度とを報知することや、検出角度と枠回転データに基づく回転角度とが一致したか否か等を報知することができる。このため、ユーザは、検出角度と枠回転データとに基づいて報知された回転情報を参照して、外枠に対する中枠の回転角度を調整することができる。よって、外枠に対する中枠の回転角度をさらに容易に合わせることができる。
【0008】
前記ミシンにおいて、前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とを比較し、前記検出角度と前記枠回転データに基づく回転角度とが一致した場合に、一致したことを示す情報を前記回転情報として報知してもよい。この場合、ユーザは、外枠に対する中枠の回転角度が、枠回転データに基づく回転角度と一致したこと、つまり、それ以上中枠を回転させる必要がないことを容易に知ることができる。よって、外枠に対する中枠の回転角度を容易に合わせることができる。
【0009】
前記ミシンにおいて、前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とを比較し、前記検出角度と前記枠回転データに基づく回転角度とが一致していない場合に、一致していないことを示す情報を前記回転情報として報知してもよい。この場合、ユーザは、外枠に対する中枠の回転角度が枠回転データに基づく回転角度と一致していないことを容易に知ることができ、外枠に対する中枠の回転角度をさらに調整して、回転角度を枠回転データに基づく回転角度に合わせることができる。よって、外枠に対する中枠の回転角度を容易に合わせることができる。
【0010】
前記ミシンにおいて、前記報知手段は、前記枠回転データに基づく回転角度を前記回転情報として報知してもよい。この場合、ユーザは、枠回転データに基づく角度を容易に知ることができる。このため、目標とする角度が明確になり、効率的に、外枠に対する中枠の回転角度を合わせることができる。
【0011】
前記ミシンは、針を装着可能な針棒を駆動させる駆動手段と、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とが一致した場合に、前記駆動手段による前記針棒の駆動を開始させる駆動制御手段とを備えてもよい。この場合、検出角度と枠回転データに基づく回転角度とが一致した場合に、駆動制御手段が駆動手段による針棒の駆動を開始させる。このため、検出角度と枠回転データに基づく回転角度とが一致していない場合に、誤って加工布を縫製又は切断することを防止できる。
【0012】
前記ミシンにおいて、前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度を、前記回転情報として報知してもよい。この場合、ユーザは、外枠に対する中枠の現在の回転角度を容易に知ることができる。よって、ユーザは、報知手段によって報知された検出角度を参照しながら、外枠に対する中枠の回転角度を調整することができる。
【0013】
前記ミシンは、画像を表示する画像表示手段を備え、前記報知手段は、前記回転情報を前記画像表示手段に表示させることで報知してもよい。この場合、ユーザは、画像表示手段を確認することで、回転情報を容易に知ることができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】刺繍枠9が装着されたミシン1の斜視図である。
【図2】縫針7が装着された針棒6の近傍をミシン1の左側から見た図である。
【図3】カットワーク針8が装着された針棒6の近傍をミシン1の左側から見た図である。
【図4】刺繍枠9の斜視図である。
【図5】図4に示す刺繍枠9の内部構成を示す斜視図である。
【図6】刺繍枠9の分解斜視図である。
【図7】刺繍枠9の平面図である。
【図8】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】カットワークデータテーブル59のデータ構成の説明図である。
【図10】カットワーク処理のフローチャートである。
【図11】枠回転処理のフローチャートである。
【図12】液晶ディスプレイ15に表示される画像の一例を示す図である。
【図13】液晶ディスプレイ15に表示される画像の別の一例を示す図である。
【図14】液晶ディスプレイ15に表示される画像のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。ミシン1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1において、ユーザが位置する側をミシン1の前方、その反対側を後方とする。ミシン1のユーザから見た左右方向をミシン1の左右方向とする。
【0016】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、及び頭部14を備える。ベッド部11は、ミシン1の土台であって左右方向に延びるように設けられる。脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方へ立設されている。アーム部13は、脚柱部12の上端から左方へ延びる。頭部14は、アーム部13の左先端部に設けられている。ベッド部11の上面には、針板(図示せず)が配設されている。針板の下のベッド部11内には、送り歯(図示せず)、布送り機構(図示せず)、送り量調整用パルスモータ78(図8参照)、及び釜機構(図示せず)が設けられている。送り歯は、縫製される加工布を所定の送り量で移動させる。布送り機構は、送り歯を駆動する。送り量調整用パルスモータ78は、送り量を調整する。
【0017】
ミシン1で刺繍縫製が行われる場合、ベッド部11の上側には、加工布100を保持する刺繍枠9が配置される。刺繍枠9の内側の領域は、刺繍模様の縫目が形成可能な刺繍領域である。刺繍枠9を移動させる刺繍枠移動装置19は、ベッド部11に着脱可能である。刺繍枠移動装置19の上部には、前後方向に延びるキャリッジカバー35が設けられる。キャリッジカバー35の内部には、Y軸移動機構(図示せず)が設けられている。Y軸移動機構は、キャリッジ(図示せず)をY方向(ミシン1の前後方向)に移動させる。刺繍枠9は、キャリッジに着脱可能である。キャリッジの右方には、刺繍枠9を装着する装着部351が設けられている。装着部351は、キャリッジカバー35の右側面よりも右方に突出している。装着部351には、刺繍枠9に設けられた取付部942(図4参照)が装着される。キャリッジ、Y軸移動機構、及びキャリッジカバー35は、X軸移動機構(図示せず)によって、X方向(ミシン1の左右方向)に移動する。X軸移動機構は、刺繍枠移動装置19の本体内に設けられている。
【0018】
X軸移動機構とY軸移動機構は、夫々、X軸モータ83(図8参照)及びY軸モータ84(図8参照)によって駆動される。刺繍枠9がX方向及びY方向に移動されながら、針棒6(図2参照)や釜機構(図示せず)が駆動される。このようにして、刺繍枠9に保持された加工布100に対して所定の刺繍模様等の模様を縫製する模様縫製動作や、所定の形状に加工布100を切断するカットワークが実行される。刺繍模様ではない通常模様が縫製される場合には、刺繍枠移動装置19はベッド部11から取り外される。そして、送り歯により加工布100が移動されながら、通常縫製が行われる。
【0019】
脚柱部12の前面には、縦長長方形状の液晶ディスプレイ15が設けられている。液晶ディスプレイ15には、複数種類の模様、各種の機能を実行させるコマンド名、各種のメッセージ、イメージセンサ48(図2参照)で撮像された画像等、様々な項目の画像が表示される。液晶ディスプレイ15の前面には、透明のタッチパネル26が設けられている。液晶ディスプレイ15に表示された項目に対応するタッチパネル26の部位を、ユーザが指や専用のタッチペンを用いて触れることにより、縫製したい模様や実行すべきコマンドを選択することができる。以下の説明では、ユーザによるタッチパネル26を用いた操作を「パネル操作」という。
【0020】
アーム部13の構成について説明する。アーム部13の上部には開閉カバー16が設けられている。開閉カバー16は、アーム部13の上後端部に左右方向の軸回りに開閉可能に軸支されている。開閉カバー16の下方、つまりアーム部13の内部には、上糸を供給する糸駒(図示せず)を収納する糸収容部(図示せず)が設けられている。糸駒から延びる上糸は、図示しない糸調子器及び糸取バネ、天秤等を含む糸掛部を経由して、縫針7(図2参照)に供給される。糸調子器は、頭部14に設けられ、糸張力を調整する。天秤は、上下に往復駆動して上糸を引き上げる。縫針7は、針棒6(図2参照)に装着される。針棒6は、頭部14内に設けられた針棒上下動機構(図示せず)により、上下動するように駆動される。針棒上下動機構は、ミシンモータ79(図8参照)により回転駆動される主軸(図示せず)により駆動される。つまり、針棒6はミシンモータ79によって駆動される。
【0021】
アーム部13の前面下部には、縫製開始・停止スイッチ21等を含むスイッチ群25が設けられている。縫製開始・停止スイッチ21は、ミシン1の運転を開始又は停止させる、即ち、縫製開始又は停止を指示するのに使用される。
【0022】
図2に示すように、頭部14の下部には、針棒6が設けられている。針棒6の下端部には縫針7(図2参照)又はカットワーク針8(図3参照)が装着可能である。針棒6の後側には、押え棒45が設けられている。押え棒45の下端部には、押えホルダ46が取り付けられている。押えホルダ46には、加工布100を押える押え足47が固定されている。頭部14の内部には、イメージセンサ48が、装着部351に装着された刺繍枠9を含む領域を撮像可能に固定されている。
【0023】
カットワーク針8について説明する。図3に示すように、カットワーク針8の先端部には、正面視にて先鋭形状(図示せず)、且つ側面視にて前後方向(図3の左右方向)に所定の幅を有する刃部89が形成されている。刃部89の前端部は、後端部よりやや下方に位置しており、刃部89の後端部と前端部との間は、やや上方に湾曲している。カットワーク針8でカットワークが実行されると、前後方向に延びる切れ目が加工布100に形成される。その切れ目の長さは、カットワーク針8の刃部89の幅と同じである。針棒6の下端部にカットワーク針8が固定されている場合、カットワークを実行可能であり、図2に示すように、針棒6の下端部に縫針7が固定されている場合、刺繍縫製が実行可能である。
【0024】
次に、図4〜図7を参照して、刺繍枠9について説明する。以下の説明では、図4及び図5の紙面上下方向を外枠94の上下方向と定義して説明する。図4〜図6に示すように、刺繍枠9は、それぞれ円形の枠形状の内枠91、中枠92、及び外枠94が組み合わされて形成されている。図4に示すように、刺繍枠9において、内枠91の径方向外側に中枠92が配置され、中枠92の径方向外側に外枠94が配置されている。刺繍枠9は、内枠91と中枠92との間で加工布100を狭持し、外枠94に対して中枠92が回転可能な構成を有する。
【0025】
図4〜図6に示すように、内枠91は、円形の枠部911を備えている。枠部911は、軸方向及び径方向に厚みを有する。内枠91は、その直径を調整可能な調整部915が設けられている。内枠91の直径は、内枠91と中枠92との間で挟持する加工布100の布厚に応じて調整される。調整部915は、分断部916、一対のネジ装着部917、及び調整ネジ918を備えている。分断部916は、内枠91の枠部911の周方向の一部が、軸方向に亘って分断された部位である。一対のネジ装着部917は、枠部911において分断部916の両側の上部に設けられ、径方向外側に突出して相対向している。一対のネジ装着部917には、ネジ装着部917が対向する面に直交する方向に貫通する孔部9171,9172が設けられている(図6参照)。2つの孔部9171,9172のうち、一方の孔部9172(図6の紙面右下側の孔部)には、ネジ穴が形成されたナット(図示せず)が埋設されている。
【0026】
調整ネジ918は、ユーザが指で摘んで回転させる径大な頭部9181と、頭部9181から一体的に延びる径小の軸部9183とを有するネジ部材である。軸部9183の軸方向略中央から先端に亙っては、雄ネジ部9182が形成されている。また、軸部9183の頭部9181側寄りの部位には、止め輪9185が嵌入される細溝9184が形成されている。調整ネジ918は、軸部9183が孔部9171を貫通し、孔部9172に埋設されたナットのネジ穴と雄ネジ部9182が螺合するように装着される。調整ネジ918は、この状態で、軸部9183の細溝9184に止め輪9185が嵌入されることで、孔部9171がある側のネジ装着部917に回転可能且つ軸方向には移動不能に保持される。ここで、ユーザが、調整ネジ918の頭部9181を指で摘んで回転操作すると、ナットを介して孔部9172がある側のネジ装着部917が軸部9183の軸方向に移動する。また、その移動方向は、調整ネジ918の回転方向によって決定される。このように、調整ネジ918は、一対のネジ装着部917を連結すると共に、一対のネジ装着部917の間隔を拡大又は縮小するように調整する。そして、一対のネジ装着部917の間隔が調整されることで、加工布100の布厚に応じて内枠91の直径が調整される。例えば、一対のネジ装着部917の間隔が狭くなるほど、内枠91の直径がより小さくなるので、布厚がより厚い加工布100を中枠92と内枠91との間で挟持することができる。なお、止め輪9185は、説明の都合上、図6以外は図示を省略している。
【0027】
内枠91の上側の端面には、標識110が設けられている。図7に示すように、標識110は、内枠91の上側の端面に第一円101、第二円102、第一中心点111、及び第二中心点112とが描かれることで構成されている。第二円102と第一円101とは、内枠91の周方向に接触している。第二円102の直径は、第一円101の直径よりも小さい。第一中心点111は、第一円101の中心である。第二中心点112は、第二円102の中心である。
【0028】
図4〜図6に示すように、中枠92は、内枠91の枠部911の外径よりも大きい内径を有する円形の枠部921を備えている。中枠92の枠部921が内枠91の枠部911の径方向外側に着脱されることで、中枠92が内枠91に着脱される。図5〜図7に示すように、中枠92の枠部921の下端部における外周側面には、複数の第一係合部930が設けられている。第一係合部930は、略V字形状に形成された凹部931からなり、所定の角度毎、例えば4度毎に、中枠92の枠部921の下端部における外周側面の全周に複数形成され、全体として略歯車形状をなしている。以下、この部位を歯車部934と称す。そして、複数の凹部931のうちの1つに、後述する第二係合部947が係合することで、外枠94に対して中枠92を予め設定された複数の回転角度(4度毎の回転角度)のいずれかで係止することができる。
【0029】
枠部921の外周側面における軸方向の中央部、且つ歯車部934の上側には、枠部921の全周に亘って径方向外側に向けて突出するフランジ部929が設けられている。枠部921の下端の内周側面には、枠部921の全周に亘って径方向内側に向けて突出する支持部936が設けられている。支持部936は、内枠91の下端面を支持する部位である。
【0030】
図4〜図6に示すように、外枠94は円形の枠部941を備えている。枠部941の下端の内周側面には、枠部941の全周に亘って径方向内側に向けて突出する支持部946が設けられている。支持部946は、中枠92の下端面を支持する部位である。枠部941の径方向外側には、取付部942が設けられている。取付部942が、キャリッジの装着部351(図1参照)に装着されることで、刺繍枠9がミシン1に固定される(図1参照)。
【0031】
枠部941と取付部942との間には、枠部941と取付部942とを連結する箱状の連結部943が設けられている。図5及び図7に示すように、連結部943の内部は、空洞になっており、その枠部941側(中枠92に向かう方向側)の端部には、第二係合部947が設けられている。第二係合部947は、板バネ948から構成される。
【0032】
図5に示すように、連結部943の内部には、底面から上方に向けて突出するネジ取付部956が設けられている。ネジ取付部956には、ネジ穴(図示せず)が形成されている。板バネ948の基端部957は、ネジ取付部956の上側に配置されている。基端部957の中央には、孔(図示せず)が設けられており、当該孔を貫通してネジ958がネジ取付部956に取り付けられることで、板バネ948の基端部957がネジ取付部956に固定される。
【0033】
板バネ948の基端部957から延びる自由端部955は、図7に示すように、基端部957の右端(紙面右方)で下方(紙面奥方)に折れ曲がり、前方(紙面下方)に延びるように形成されている。自由端部955の先端には、中枠92に向かって突出するように略V字形状に形成された突出部952が設けられている。突出部952の先端は、凹部931に係合可能である。このとき、板バネ948の弾性力は、突出部952の先端が凹部931を押圧する方向に付勢する。
【0034】
突出部952の先端が、複数の凹部931のいずれか1つに係合し、板バネ948の弾性力によって凹部931を押圧することで、外枠94に対する中枠92を回転不能に係止する。ここで、ユーザが外枠94に対して中枠92を回転させた場合、凹部931の一方の斜面(V字形状の一方の斜面)が、板バネ948の弾性力に抗して突出部952を中枠92から離れる方向に押す。このとき、板バネ948の自由端部955が撓み、突出部952と凹部931との係合が外れる。そして、突出部952は、今まで係合していた凹部931の隣にある凹部931に係合する。
【0035】
更に中枠92の回転が継続されると、突出部952の凹部931への係合及び非係合が繰り返される。複数の凹部931は、4度毎に設けられているので、ユーザは、外枠94に対する中枠92の回転角度を4度毎に設定することができる。
【0036】
内枠91、中枠92、及び外枠94を組み合わせる態様について説明する。まず、第一係合部930を含む歯車部934が下側になるように中枠92を机の上などに載置する。そして、中枠92の上側から内枠91が中枠92の内側に挿入され、内枠91と中枠92との間で加工布100が狭持される。このとき、調整部915を調整して、加工布100の布厚に応じて内枠91の直径を調整する。以下の説明では、内枠91と中枠92とが組み合わされた状態の枠を、組付体95という。
【0037】
次いで、外枠94の上側から組付体95を外枠94に設置する。このとき、ユーザは、突出部952と、複数の凹部931のいずれか1つを係合させるように、組付体95を枠部941に載置する。組付体95が外枠94に載置されると、突出部952と複数の凹部931のいずれか1つとが係合された状態となる。このように、第二係合部947と第一係合部930とが係合され、外枠94に対する中枠92(組付体95)の回転が係止される。以上のようにして、内枠91、中枠92、及び外枠94が組み合わせられ、刺繍枠9の完成体が得られる。そして、ユーザは、刺繍枠9の完成体をミシン1に装着された刺繍枠移動装置19のキャリッジに取り付け(図1参照)、外枠94に対して中枠92(組付体95)を回転させたり、係止させたりすることができる。
【0038】
図8を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図8に示すように、ミシン1の制御部60は、CPU61,ROM62,RAM63,EEPROM64、入出力インターフェイス65を備え、これらはバス67により相互に接続されている。ROM62には、CPU61が処理を実行するためのプログラム、データ等が記憶されている。EEPROM64は、カットワークデータ記憶領域641を少なくとも備えている。カットワークデータ記憶領域641には、カットワークデータテーブル59(図9参照)等、複数のカットワークデータテーブルが記憶されている。また、EEPROM64には、ミシン1が刺繍縫製を実行するための複数の刺繍データが記憶されている。
【0039】
入出力インターフェイス65には、縫製開始・停止スイッチ21、タッチパネル26、駆動回路71,72,75,85,86、及び87が電気的に接続されている。駆動回路71は、送り量調整用パルスモータ78を駆動させる。駆動回路72は、ミシンモータ79を駆動させる。駆動回路75は、液晶ディスプレイ15を駆動させる。駆動回路85及び86は、刺繍枠9を移動させるX軸モータ83及びY軸モータ84を夫々駆動する。駆動回路87は、イメージセンサ48を駆動する。CPU61(図8参照)は、イメージセンサ48を制御して、装着部351に装着された刺繍枠9を含む領域を撮像することができる。
【0040】
図9を参照して、カットワークデータテーブル59について説明する。図9に示すカットワークデータテーブル59は、加工布100に刺繍された花の模様105(図12参照)における花びら模様106の内側の領域107を切り抜くためのデータである。カットワークデータテーブル59は、カットワークデータ記憶領域641(図8参照)に記憶されている。
【0041】
図9に示すように、カットワークデータテーブル59には、変数N、枠回転データ、X座標、及びY座標の欄が設けられ、それぞれの項目に対応付けられてデータが記憶されている。変数Nは、加工布100を切断する順序を示す変数である。枠回転データは、予め設定された外枠94に対する中枠92の回転角度のデータである。X座標及びY座標は、予め設定された針落ち点の座標である。なお、本実施形態では、後述する画像151(図12参照)において刺繍枠9の中心の位置の座標を原点(X座標「0」、Y座標「0」)とし、左右方向の座標がX座標、上下方向の座標がY座標であるとする(図12参照)。変数N「1」から「221」の順番で、枠回転データに基づく回転角度に中枠92が外枠94に対して合わせられ、X座標及びY座標の針落ち点でカットワーク針8(図3参照)によって加工布100が切断されることで、花びら模様106の内側の領域107(図12参照)が切り抜かれる。
【0042】
図10〜図14を参照し、ミシン1のCPU61において実行されるカットワーク処理について説明する。以下の説明では、図12に示す4つの花びら模様106の内側の領域107を切り抜いて、花の模様105を作成する場合を具体例として説明する。
【0043】
具体例において、4つの花びら模様106の内側の領域107を切り抜く場合、ユーザは、針棒6にカットワーク針8(図3参照)に装着する。このとき、カットワーク針8の刃部89の向きは、図3に示すように、前後方向に延びる向きに固定されているので、加工布100上の4つの領域107全てを切り抜くためには、外枠94に対する中枠92(組付体95)の回転角度を変更しながら、花びら模様106の内側の輪郭に沿って切断する必要がある。よって、ユーザは、パネル操作を行ってミシン1にカットワーク処理を実行させ、外枠94に対する中枠92(組付体95)の回転角度を変更しながら領域107を切り抜く。カットワーク処理では、ユーザが外枠94に対する中枠92の回転角度を所定の角度に合わせるための種々の情報が、ユーザに対して報知される。この外枠94に対する中枠92の回転角度を所定の角度に合わせるための情報を「回転情報」という。
【0044】
図10に示すように、カットワーク処理では、まず、刺繍枠9の中心が針落ち点になるように刺繍枠9が初期位置に移動された後、イメージセンサ48が制御され、装着部351に装着された刺繍枠9を含む領域が撮像される(S11)。次いで、S31で撮像された画像151が液晶ディスプレイ15に表示される(S12)。表示された画像151の一例を図12に示す。なお、図12では説明のため、加工布100については、内枠91の内側に存在する加工布100の部位のみを示している(図13及び図14も同様)。
【0045】
次いで、撮像された画像151から刺繍枠9に付された標識110が識別され、識別された標識に基づいて外枠94に対する中枠92の回転角度が検出され、検出された回転角度が「0度(0°)」に設定される(S13)。例えば、図12に示す画像151が撮像された場合、刺繍枠9上に付された標識110が識別される。そして、原点(刺繍枠9の中心位置)と第一円101の第一中心点111の座標位置とを結んだ仮想線が0度のラインとしてRAM63に記憶されることで、検出された回転角度が「0度」に設定される(S13)。以下の説明では、S13又はS34(後述)で検出された、外枠94に対する中枠92の回転角度を「検出角度」という。S13では、検出角度が「0度」である。以下の説明では、検出角度「0度」から見て、図12の紙面時計周り方向を「+」、反時計回り方向を「−」と表わす。
【0046】
次いで、ユーザによって、1つのカットワークデータテーブルが選択されたか否かが判断される(S14)。S14では、液晶ディスプレイ15に複数のカットワークの模様が表示され、ユーザがパネル操作によって1つのカットワークの模様を選択する。ユーザによって1つのカットワークの模様が選択されると、対応する1つのカットワークデータテーブルが選択されたと判断される。カットワークデータテーブルが選択されていない場合(S14:NO)、処理はS14に戻る。具体例では、花びら模様106の内側の領域107を切り抜くためのカットワークデータテーブル59(図9参照)が選択されたとする。
【0047】
カットワークデータテーブル59が選択された場合(S14:YES)、変数Nが「1」に設定され、RAM63に記憶される(S15)。次いで、カットワークデータテーブル59中の変数Nに対応する枠回転データに基づく回転角度(以下、「目標回転角度」という。)と、S13で検出された検出角度とが比較される(S16)。次に、S16における比較の結果、目標回転角度と、検出角度とが一致するか否かが判断される(S17)。目標回転角度と検出角度とが一致する場合(S17:YES)、処理は、S22(後述)に進む。
【0048】
具体例では、変数N「1」における目標回転角度「+44度」(図9参照)と検出角度「0度」とが一致しないと判断される(S17:NO)。目標回転角度と検出角度とが一致しない場合(S17:NO)、目標回転角度と検出角度とが一致していないことを示す情報が回転情報として報知される(S18)。S18では、例えば、「刺繍枠を回転させてください。」のメッセージが液晶ディスプレイ15に表示される(図12参照)。これによって、ユーザは、刺繍枠9を回転させる必要があることを知ることができる。言い換えると、目標回転角度と検出角度とが一致していないことを知ることができる。
【0049】
次いで、枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)が、回転情報として報知される(S19)。S19では、例えば、「目標回転角度:+44度(+44°)」のメッセージが液晶ディスプレイ15に表示される(図12参照)。これによって、ユーザは、刺繍枠9を「+44度」まで回せばよいことを認識できる。次いで、枠回転処理が実行される(S20)。
【0050】
図11を参照して、枠回転処理について説明する。枠回転処理は、ユーザが中枠92(組付体95)を回転させて、外枠94に対する中枠92の回転角度を、目標回転角度に合わせることを補助するための処理である。図11に示すように、枠回転処理では、S11(図10参照)と同様に、イメージセンサ48が制御され、装着部351に装着された刺繍枠9を含む領域が撮像される(S31)。次いで、S31で撮像された画像151が液晶ディスプレイ15に表示される(S32)。次いで、撮像された画像から、刺繍枠9に付された標識110が識別され、識別された標識に基づいて外枠94に対する中枠92の回転角度が検出される(S33)。
【0051】
次いで、S33で検出された検出角度が回転情報として報知される(S34)。S34では、検出角度が液晶ディスプレイ15に表示される。これによって、ユーザは、現在の回転角度を明確に認識することができる。具体例では、最初の検出角度が0度なので、液晶ディスプレイ15に「現在の回転角度:0°(0度)」のメッセージが表示される(図12参照)。
【0052】
次いで、S16(図10参照)と同様に、目標回転角度と検出角度とが比較される(S35)。次いで、S17(図10参照)と同様に、S35における比較の結果、目標回転角度と検出角度とが一致するか否かが判断される(S36)。目標回転角度と検出角度とが一致しない場合(S36:NO)、処理はS31に戻る。つまり、ユーザが外枠94に対して中枠92を回転させて、目標回転角度と検出角度とが一致するまで、S31〜S36の処理が繰り返される。S31〜S36が繰り返されることで、ユーザが中枠92の回転角度を調整している間、リアルタイムに、刺繍枠9の画像151が撮像されて液晶ディスプレイ15に表示される(S31及びS32)。また、リアルタイムに、現在の外枠94に対する中枠92の回転角度(検出角度)が液晶ディスプレイ表示される(S34)。
【0053】
例えば、ユーザが、「+20度」の位置まで中枠92を反時計回りに回転させた場合、図13に示すように、液晶ディスプレイ15に、中枠92が「+20度」まで回転した画像151と、「現在の回転角度:+20度」のメッセージが表示される。このように、現在の回転角度(検出角度)が表示されるので、ユーザは、外枠94に対する中枠92の現在の回転角度を確認しながら、容易に外枠94に対する中枠92の回転角度を目標回転角度に合わせることができる。そして、図14の画像151に示すように、「+44度」の位置まで中枠92が回転されると、目標回転角度と検出角度とが一致したと判断され(S36:YES)、枠回転処理が終了され、処理は、S21(図10参照)に進む。
【0054】
図10に示すように、S21では、検出角度と目標回転角度とが一致したことを示す情報が回転情報として報知される(S21)。S21では、液晶ディスプレイ15に「回転角度が目標回転角度と一致しました。」のメッセージが表示される。これによって、ユーザは、外枠94に対する中枠92の回転角度が、枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)に一致したことを容易に知ることができる。
【0055】
次いで、変数Nの値に対応する1針分のカットワークが実行される(S22)。カットワークデータテーブル59において、例えば、変数Nが「1」場合、X座標は「27」であり、Y座標は「9」である。このため、X軸モータ83及びY軸モータ84が駆動され、X座標「27」及びY座標「9」が針落ち点になるように、刺繍枠9が移動される。そして、針棒6が駆動され、加工布100上のX座標「27」及びY座標「9」の位置(図14参照)がカットワーク針8によって切断される。なお、図14では、枠回転データに基づく回転角度が「+44度」の場合に(変数Nが「1」〜「38」の場合に)、加工布100が切断される場合のカットワーク針8の針落ち点108の一例を「白丸(○)」で表している。本実施形態では、白丸をつなぐようにミシン1の前後方向(カットワーク針8の刃部89の向き)に加工布100が切断される。
【0056】
次いで、変数Nがインクリメントされる(S23)。次いで、カットワークが終了したか否かが判断される(S24)。S24では、カットワークデータテーブル59において、現在の変数Nの値に対応する枠回転データ等のデータが存在するか否かが判断されることで、カットワークが終了したか否かが判断される。例えば、現在の変数Nが「222」であれば、カットワークデータテーブル59には、データが存在しないので、カットワークが終了したと判断される。
【0057】
カットワークが終了していない場合(S24:NO)、カットワークデータテーブル59において、枠回転データに基づく回転角度が変化したか否かが判断されることで、外枠94に対する中枠92の回転角度の変更が必要か否かが判断される(S25)。例えば、カットワークデータテーブル59(図9参照)に示すように、変数Nが「1」から「38」の間は、枠回転データに基づく回転角度が「0度」で変化していないため、外枠94に対する中枠92の回転角度の変更が必要ないと判断され(S25:NO)、処理はS22に戻る。このため、カットワークが継続される。
【0058】
また、例えば、変数Nが「38」から「39」に変化した場合には、枠回転データに基づく回転角度が「+44度」から「0度」に変化しているため(図9参照)、外枠94に対する中枠92の回転角度の変更が必要であると判断され(S25:YES)、処理はS18に戻る。すなわち、目標回転角度(0度)と検出角度とが一致していないことを示す情報が回転情報として報知され(S18)、目標回転角度が報知される(S19)。そして、前述の「0度」から「+44度」に回転させる場合と同様に、ユーザは、S32で表示される刺繍枠9の画像151と、S34で表示される検出角度とを参照しながら、外枠94に対して中枠92を回転させる。目標回転角度「0度」に調整する。そして、検出角度が目標回転角度「0度」とが一致すると(S36:YES)、目標回転角度「0度」におけるカットワークが実行される(S22〜S23)。
【0059】
以降においても、中枠92の回転と、加工布100の切断とを繰り返すことによって、カットワークが継続される。そして、カットワークが終了したと判断されると(S24:YES)、カットワーク処理が終了される。これによって、4つの花びら模様106の内側の領域107が全て切り抜かれた花の模様105の完成体が得られる。
【0060】
以上のように、本実施形態におけるカットワーク処理が実行される。本実施形態では、検出角度に基づいて、中枠92の回転角度を所定の角度に合わせるための情報である回転情報が報知される(図10のS18、S19、S21、図11のS34)。このため、ユーザは、報知された回転情報を参照して、外枠94に対する中枠92の回転角度を調整することができる。よって、従来の刺繍枠のように目盛りや印を目視する必要がなく、外枠94に対する中枠92の回転角度を容易に合わせることができる。
【0061】
また、ミシン1は、検出角度と枠回転データに基づいて回転情報を報知する(図10のS18、S19)。よって、ユーザは、検出角度と枠回転データとに基づいて報知された回転情報を参照して、外枠94と中枠92の回転角度を容易に調整することができる。よって、外枠94に対する中枠92の回転角度をさらに容易に合わせることができる。
【0062】
また、ミシン1は、検出角度と枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)とが一致した場合に、報知することができる(S21)。よって、ユーザは、外枠94に対する中枠92の回転角度が、枠回転データに基づく回転角度に一致したことを容易に知ることができる。よって、外枠94に対する中枠92の回転角度を容易に合わせることができる。
【0063】
また、ミシン1は、検出角度と枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)とが一致していない場合に、報知することができる(S18)。よって、ユーザは、外枠94に対する中枠92の回転角度を調整して、回転角度を枠回転データに基づく回転角度に容易に合わせることができる。
【0064】
また、ミシン1は、枠回転データに基づく回転角度を回転情報として報知することができる(S19)。このため、ユーザは、枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)を容易に知ることができる。よって、目標とする角度が明確になり、効率的に、外枠94に対する中枠92の回転角度を合わせることができる。
【0065】
また、ミシン1は、S33で検出された検出角度を、回転情報として報知することができる(S34)。よって、ユーザは、外枠94に対する中枠92の現在の回転角度を容易に知ることができる。よって、ユーザは、報知された検出角度を参照しながら、外枠94に対する中枠92の回転角度を調整することができる。
【0066】
また、ミシン1は、目標回転角度を表示すると共に(S19)、検出角度を表示することができる(S34)。このため、ユーザは、外枠94に対する中枠92の現在の回転角度と、目標回転角度とが一致していないことを容易に知ることができる。また、ユーザは、外枠94に対する中枠92の現在の回転角度と、目標回転角度とを同時に参照することで、さらに容易に、外枠94に対する中枠92の回転角度を調整することができる。
【0067】
また、枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)と検出角度とが一致した場合に(S17:YES、又は、S36:YES)、針棒6が駆動され、切断が実行される(S22)。また、枠回転データに基づく回転角度(目標回転角度)と検出角度とが一致していない場合には(S17:NO、又はS36:NO)、S22が実行されず、加工布100の切断が行われない。このため、枠回転データに基づく回転角度と検出角度とが一致していない場合に、誤って、加工布100を切断することを防止できる。
【0068】
また、回転情報が液晶ディスプレイ15に表示されるので(図10のS18、S19,S21、図11のS34)、ユーザは、液晶ディスプレイ15を確認することで、容易に回転情報を知ることができる。よって、ユーザの利便性が向上する。
【0069】
上記実施形態において、イメージセンサ48が本発明の「撮像手段」に相当し、図10のS13及び図11のS34の処理を行うCPU61が本発明の「検出手段」に相当する。図10のS18、S19、S21、及び図11のS34の処理を行うCPU61が本発明の「報知手段」に相当し、EEPROM64が本発明の「記憶手段」に相当する。縫針7及びカットワーク針8が本発明の「針」に相当し、ミシンモータ79が本発明の「駆動手段」に相当する。S17、S36、及びS22の処理を行うCPU61が本発明の「駆動制御手段」に相当し、液晶ディスプレイ15が本発明の「画像表示手段」に相当する。
【0070】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、回転情報は、液晶ディスプレイ15に表示されることでユーザに報知されていたが(図10のS18、S19、S21、図11のS34)、これに限定されない。例えば、LED(Light Emitting Diode)又はランプを設けて、検出角度と目標回転角度とが一致した場合や、検出角度と目標回転角度とが一致していない場合等に、LED又はランプが点灯又は点滅して、ユーザに報知してもよい。また、LED又はランプの発光色を変えることで、ユーザに報知してもよい。この場合でも、ユーザは、LED又はランプを確認しながら外枠94に対する中枠92の回転角度を調整して、回転角度を枠回転データに基づく回転角度に容易に合わせることができる。また、ミシン1にスピーカ又はブザーを設けて、ユーザに音で報知するようにしてもよい。
【0071】
また、標識110は、刺繍枠9の内枠91に設けられていたが、これに限定されない。例えば、所定の大きさのシート表面に標識110を描画し、当該シート裏面に粘着剤が塗布された構成のものであってもよい。そしてこのシートを、内枠91と中枠92との間で狭持された加工布100上に貼付すればよい。この場合、加工布100上に貼付された標識110に基づいて、外枠94に対する中枠92の回転角度が検出される(S13及びS33)。
【0072】
また、刺繍枠9は、本実施形態の場合に限定されず、回転可能な刺繍枠であれば、他の刺繍枠でもよい。
【0073】
また、回転情報は、実施形態に例示した全てを報知する必要はなく、一部の回転情報を報知してもよい。また、回転情報が報知される際に枠回転データが使用されていが、これに限定されない。例えば、枠回転データを使用せず、検出角度のみに基づいて、現在の中枠92の回転角度を表示するだけでもよい。
【0074】
また、カットワークを行う場合に、外枠94に対して中枠92を回転させる態様を具体例として説明したが、これに限定されない。例えば、縫針7(図2参照)で刺繍縫製を行う場合において、外枠94に対して中枠92を回転させる場合に、上述の回転情報の報知等を行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ミシン
6 針棒
7 縫針
8 カットワーク針
9 刺繍枠
15 液晶ディスプレイ
48 イメージセンサ
59 カットワークデータテーブル
61 CPU
64 EEPROM
79 ミシンモータ
91 内枠
92 中枠
94 外枠
100 加工布
110 標識
351 装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の枠形状の内枠と、前記内枠の径方向外側に着脱可能な円形の枠形状の中枠と、前記中枠の径方向外側に着脱可能に構成され、前記中枠を回転可能に保持する円形の枠形状の外枠とを備えた刺繍枠を装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された前記刺繍枠を含む領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像から前記刺繍枠又は前記刺繍枠に取り付けられた加工布上に付された標識を識別し、識別した前記標識を用いて前記外枠に対する前記中枠の回転角度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記回転角度である検出角度に基づいて、前記中枠の回転角度を所定の角度に合わせるための情報である回転情報を報知する報知手段と
を備えたことを特徴とするミシン。
【請求項2】
予め設定された前記外枠に対する前記中枠の回転角度のデータである枠回転データを記憶する記憶手段を備え、
前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データとに基づいて、前記回転情報を報知することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とを比較し、前記検出角度と前記枠回転データに基づく回転角度とが一致した場合に、一致したことを示す情報を前記回転情報として報知することを特徴とする請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とを比較し、前記検出角度と前記枠回転データに基づく回転角度とが一致していない場合に、一致していないことを示す情報を前記回転情報として報知することを特徴とする請求項2又は3に記載のミシン。
【請求項5】
前記報知手段は、前記枠回転データに基づく回転角度を前記回転情報として報知することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のミシン。
【請求項6】
針を装着可能な針棒を駆動させる駆動手段と、
前記検出手段によって検出された前記検出角度と、前記記憶手段に記憶された前記枠回転データに基づく回転角度とが一致した場合に、前記駆動手段による前記針棒の駆動を開始させる駆動制御手段と
を備えことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のミシン。
【請求項7】
前記報知手段は、前記検出手段によって検出された前記検出角度を、前記回転情報として報知することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のミシン。
【請求項8】
画像を表示する画像表示手段を備え、
前記報知手段は、前記回転情報を前記画像表示手段に表示させることで報知することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−70876(P2013−70876A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213137(P2011−213137)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】