説明

ミスト生成装置及びミスト生成方法

【課題】 本発明は1つのデバイスで酸化力・殺菌力のある活性種を含むミストを効率よく生成し、装置構成が簡単で性能低下が起こりにくいミスト生成装置を提供するミスト生成装置及びミスト生成方法を提供することにある。
【解決手段】 パルス電源と、前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、前記複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、前記一対の電極間にパルス電圧を印加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相と誘電体(固相)との間の気相で放電を発生させて、酸化種を含んだミストを生成可能としたミスト生成装置及び方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から高電圧を電極間に印加して、水中で発生させた放電を利用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のミスト生成装置は、水中での放電によりこの水を改質するようになっており、その具体的な構成として、放電容器内の水に非接触状態で対向配置された電極に正負反転の非対称な波形を有する交流パルス電圧を印加し、電位反転の際に誘起されて放電容器内に発生する電場により水中放電を行うようになっている。そして、この構成によって水の改質を行うようになっている。
【0004】
また、従来から酸化種を含んだミストを利用して、空間の殺菌を行なう技術が知られている(例えば、特許文献2乃至特許文献4参照。)。
かかる特許文献2に記載のミスト生成装置は、空気から酸化種を生成するための沿面放電素子と、ミストを混入するための噴霧ノズルとで構成されている。そして、この2つの素子によって、酸化種を含むミストを噴霧し、空間の殺菌を可能としている。
【0005】
また、特許文献3に記載のミスト生成装置は、電極を針状の多孔質吸水体として、毛細管現象を用いることにより、水を針電極の先端に輸送させ、放電させながら静電霧化させる。これにより、1つのデバイスで酸化種を含んだミストの生成を可能としている。
また、特許文献4に記載のミスト生成装置は、電極を針状の金属として、電極の冷却によって結露した水を用いて放電させる。これにより、1つのデバイスで酸化種を含んだミストを給水不要で生成可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−507274号公報
【特許文献2】特開2006−109924号公報
【特許文献3】特開2004−358358号公報
【特許文献4】特開2008−155145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、水中での放電を利用した水の改質を目的とした発明であり、酸化種を含んだミストの生成を積極的に行うものではない。
【0008】
特許文献2に記載の発明では、沿面放電素子と噴霧ノズルの2つのデバイスによって構成されており、部品点数が多いため機械的劣化が生じやすく、装置形状が複雑で大型化する。
【0009】
特許文献3に記載の発明では、電極は多孔質吸水体と複雑な形状の電極を作成する必要がある。また、電極が多孔質であるために防汚性及び清掃性が低い。
【0010】
特許文献4に記載の発明では、電極は金属塊であるため、放電による金属酸化が生じ、酸化種生成能及びミスト生成能の低下が生じる。
【0011】
本発明は装置の大型化、装置のメンテナンス性、性能劣化のしやすいといった問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、酸化力・殺菌力のある活性種を含むミストを生成し、装置構成が簡単で性能低下の起こりにくいミスト生成装置及びミスト生成方法を提供することにある。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明のミスト生成装置は、
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴としている。
【0013】
また、本発明のミスト生成方法は、
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つのデバイスで酸化力・殺菌力のある活性種を含むミストを効率よく生成し、装置構成が簡単で性能低下が起こりにくいミスト生成装置を提供するミスト生成装置及びミスト生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るミスト生成装置の概略的な構成を示す概念図に対応する平面図(a)及び断面図(b)である。
【図2】図1に示したミスト生成装置の作用を説明する概念図に対応する平面図(a)及び断面図(b)である。
【図3】図1に示したミスト生成装置の第1変形例を示す図1に対応する概念図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るミスト生成装置の概略的な構成を示す概念図に対応する平面図(a)及び断面図(b)である。
【図5】図4に示したミスト生成装置の第1変形例を示す概念図に対応する平面図(a)及び断面図(b)である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るミスト生成装置の概略図に対応する平面図である。
【図7】本発明の有用性を立証するための第1実施形態の評価試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態及びその実施例に係るミスト生成装置及びミスト生成方法について図面に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明の第1の実施形態に係るミスト生成装置の概略的な構成を示す概念図であり、図2は図1に示したミスト生成装置の作用を説明するための概念図である。なお、これらの図においては、構成の理解の容易化を図るために断面ハッチングを省略している(以下、他の図も同様とする)。
【0017】
本発明の第1の実施形態に係るミスト生成装置100は、パルス電源101と、パルス電源101の各端部に接続されたくし歯状の電極102(図1の(b)を参照)と電極103のうち、複数の離間した端部201、202、203を有するくし歯状の電極102の全表面が誘電体105で覆われ、この誘電体105と他方の電極103との間に一塊の液体として容器104に入った水Wが介在している。このとき、水Wはくし歯状の電極102のくし歯部分、すなわち電極102の端部201、202、203と同水位とする。そして、パルス電源101を介して電気的に一対な各電極102,103に印加される電圧によって、水Wが電極103と同電位になり、電極102との間に電位差が生じるため、誘電体105と水Wの水面とが接する部分、本実施形態においては複数の端部である端部201,202,203において、端部を覆う部分の誘電体105と水Wとの間をその周囲の空気Aを介して放電させるようになっている(図1の点線で示す放電AD(Atmospheric discharge)参照)。なお、パルス電源101には、高圧パルス電源が用いられている。
【0018】
水Wは純水に限らず、水道水、汚水等どのような水でも良い。また、水以外の液体でも良い。空気Aも同様に、純空気に限らず、臭気物質や汚染物質、水蒸気を含んだ空気でも良く、また、空気以外の気体でも良い。
【0019】
続いて、このような構成を有するミスト生成装置100を用いたミスト生成方法について説明する。このミスト生成方法を実施するに当って、最初にミスト生成装置100のパルス電源101を介して各電極間にパルス電圧を印加する。これによって、複数の端部を有するくし歯状の電極102を覆った誘電体105と水Wの水面とが接する部分において、図2に示すように、この接する部分の周囲の空気Aを介して放電が生じる(図2の点線で示す放電AD参照)。この放電により、例えば気体が空気や酸素の場合、酸素の一部がオゾン(O)や酸素原子(O)、スーパーオキサイドアニオン(O)等反応性に富んだ物質(活性種と呼ぶ)になる。また、液体が水の場合、それらの活性種が水と反応したり、或いは水分子が直接放電の作用を受け、ヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化水素(H)等の活性種も生成される。それらの活性種は気相に漂ったり、液相に溶け込んだりして、気相、液相の物質を酸化(分解)や殺菌をし、気相、液相の浄化、改質が可能となると考えられる。特に、誘電体(固相)が放電の作用を直接受けたり、気相や液相で生成した活性種により、付着している物質(例えば汚れ)が除去(浄化)されたり、表面が親水化等の改質をされると考えられる。また、気相や液相に含まれている臭気物質や汚染物質、黴菌が放電の作用を直接受け、他の物質に変化したり、殺菌をし、気相、液相の浄化、改質が行われることもあると考えられる。すなわち、本発明におけるミスト生成装置及びミスト生成方法は、気相や液相の改質や殺菌を行うことのできる放電装置及び放電方法であると言える。
【0020】
また、この放電により、ヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化水素(H)等の活性種を含むミストが生成される(図2の点線で示す放電AD部の周辺参照)。それらのミストが気相を漂うことにより、気相の黴菌が殺菌される。また、ミストが活性種を含むため、気相の臭気物質も変質されると考えられる。
【0021】
また、気体が空気の場合、放電により窒素酸化物(NOx)が生成し、それらが液(水)に溶け込むことで硝酸(HNO)になり、水が酸性水になる(水のpHが下がる)効果も期待できる。
【0022】
気相が空気、液相が水以外の場合でも、それらを形成する分子が放電により解離され、反応性に富んだ物質(例えばラジカル)となり、気相、液相の浄化、改質が可能となる。
【0023】
また、水に浸した電極103から放電することはないので、電極表面の腐食や消耗、それに伴う液体への溶解(液体の汚染)を避けることができる。
【0024】
本発明のように、電極がそれぞれ離間した複数の端部を有し、複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、それぞれの誘電体と他方の電極との間に、誘電体に液面が接するように液体を介在させることにより、例えば一枚の板状の電極の全面に誘電体を備えたものと比較した場合、放電を生じる箇所が増えることとなり、ミスト生成効率が向上する。
【0025】
このように、電極の表面を誘電体で被覆することにより、放電による電極の劣化を防ぐことができる。また、電極をくし歯状にする、すなわち放電部を複数に離間させることで、板状の電極にするよりも放電によって生成された活性の高いミストの濃度分布が低下し、活性の高いミスト同士の反応を抑制することができる。そのため、ミストは高活性状態を保ったまま空間に散布することができる。
【0026】
また、このように、1つのデバイスで活性種を生成し、ミストとして飛散させることができるため、装置の小型化が可能になり、部品点数が少なくて済むため、メンテナンス性も向上する。
さらに、電極や誘電体の形状が単純で良いため、防汚性及び清掃性が高い。
また、電極の表面を誘電体で被覆するため、放電による電極の劣化が生じず、殺菌ミスト生成能力の劣化が生じない。
【0027】
続いて、上述した第1の実施形態に係るミスト生成装置100の第1変形例について説明する。図3は、図1に示したミスト生成装置100の第1変形例に係るミスト生成装置110を概略的に示す概念図である。なお、上述の第1の実施形態に係るミスト生成装置100と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。また、この変形例に係るミスト生成装置110の各構成要素の材質等については、上述の第1の実施形態に係るミスト生成装置100と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0028】
この第1変形例に係るミスト生成装置110は、第1の実施形態に係るミスト生成装置100とは異なり、誘電体からなる容器115の側壁外側に複数の離間した端部である端部201、202、203を有するくし歯状の電極112を設置し、誘電体からなる容器115内に電極113を入れる。そして、この一方のくし歯状の電極112の誘電体115と他方の電極113との間に一塊の水Wが介在している。
【0029】
このような誘電体からなる容器115の側壁外側に複数の離間した端部である端部201、202、203を有するくくし歯状の電極112を設置する簡単な構成によっても第1の実施形態に係るミスト生成装置100と同等の作用効果を生じる。
【0030】
具体的には、高圧パルス電源からなるパルス電源111を介してミスト生成装置110の各電極112,113にパルス電圧を印加することで、一方のくし歯状の電極112の端部201、202,203の一部を覆う誘電体115と水Wの水面とが接する部分において誘電体115との水Wとの間に空気Aを介して放電を生じさせ(図3における点線で示す放電AD参照)、第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
続いて、本発明の第2の実施形態に係るミスト生成装置について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係るミスト生成装置120の概略的な構成を示す概念図である。なお、上述の実施形態及びその各変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。この第2の実施形態に係るミスト生成装置120は、図1に示した第1の実施形態に係るミスト生成装置100と基本的構成が共通するが、高圧パルス電源からなるパルス電源121の両端に接続されたくし歯状の電極122,電極123の双方が誘電体205,206で完全に覆われている点で構成が異なっている。
【0032】
なお、放電装置120の電極122,123は双方とも複数の端部を有する、例えばくし歯状の電極もしくは、複数の一方の極性を持つ電極を有するものとした場合、空気を介して放電を生じる箇所が更に増えることとなり、短時間の放電によってより多くの活性種を発生させ、それらにより、或いは放電により直接、液相、気相、固相の浄化、改質を行うことができ、より効率良く浄化、改質を進めることができる。また、図4は放電装置110のように両電極を誘電体からなる容器の側壁外側に設置してもよい。
【0033】
このように電極122,123をそれぞれ誘電体125,126で覆うことで、パルス電源121の両端に接続された各電極122,123にパルス電圧を印加すると、水Wの電位が電極122と123の間の電位となり、電極122と水Wとの間、及び電極123と水Wとの間に電位差が生じるため、各誘電体125,126と水Wの水面とが接する部分において誘電体125,126と水Wとの間で空気Aを介して放電を生じさせる(図4の点線で示す放電AD参照)。
【0034】
続いて、本発明に係る第2の実施形態の第1の変形例のミスト生成装置130について説明する。円筒状の容器134は誘電体でできており、容器134の外周に高電圧パルスからなるパルス電源131の両端に接続された、複数の離間した端部201,202及び端部301,302を有するくし歯状(上面図)且つ円弧状(断面図)の電極132,133を、くし歯、すなわちそれぞれの端部が円筒状誘電体134の外周で容器134の底部に向かって噛み合うように設置する。
【0035】
水Wが円筒状誘電体134内で留まっている、または流水しているときに、高電圧パルスを印加すると、くし歯状電極132,133上の円筒状誘電体134と水Wの間の空気Aで放電する(図5の点線で示すAD)。
【0036】
これにより、極端に水量が少なく、残水で水滴ができる状態でも、底面に沿ってくし歯状、すなわち離間した複数の端部を有する電極が配置されているため、水滴が電気的に一対の電極上の誘電体に存在すれば放電させることができる。
【0037】
続いて、本発明に係る第3実施形態のミスト生成装置140について説明する。ミスト生成装置140はパルス電源141と、パルス電源141の各端部に接続された電気的に一対の電極142,143を有しており、電極142は導線で分岐され、一方の極性を持つ電極401,402を有する。すなわち、一方の電極である電極142は一方の極性を有する、複数の電極を有する。それら電極401,402はそれぞれ全体的に誘電体145,146で覆われている。この誘電体145,146と他方の電極143との間に液体として水Wが介在している。そして、パルス電源141を介して電気的に一対の電極142,143にパルス電圧を印加することにより、誘電体145,146と水Wが接する部分において、誘電体145,146と水Wとの間をその周囲の空気Aを介して放電させるようになっている。(図6の点線で示す放電AD参照)
【0038】
これにより、実施形態1と同様の効果を得られる。また、電極401,402のような一方の極性を持つ複数の電極が大きく離間している場合に、電極に複数の離間した端部を設置するよりも、導線で延長することができるため低コストで製造できる。
【0039】
なお、上述した各実施形態及びその変形例で使用する電極の材料は、導体であれば何れでも良く、例えば金属であれば銅、銀、アルミニウム、チタンやそれらの合金等の何れも使用でき、非金属であっても、使用する液体よりも電気伝導度が低いものであれば、例えば導電性のセラミックスや樹脂等でも使用可能である。
【0040】
また、上述した各実施形態及びその変形例で使用する誘電体としての材料として、アルミナ等の非導電性のセラミックス、又はガラス、樹脂等の材料を使用しても良い。
【0041】
誘電体の厚さは、用いる材料やパルス電源の電圧にもよるが、0.1μmから10mmが良い。
【0042】
液体の容器又は流路は全体を誘電体で構成されても良く、或いは容器又は流路の少なくとも一部、即ち液面近傍を誘電体で構成されても良い。
【0043】
また、上述した各実施形態及びその変形例で使用する、安全面や電極間での放電を防止するために用いる絶縁体の材料としては、樹脂や絶縁性のセラミックス、ガラス等絶縁性を有していればどのような材料でも使用可能である。
【0044】
また、本発明における液体の種類としては、上述した実施形態では液体として水を用いたが、純水や水道水や汚水等の水の他、有機溶媒や油等、どのような液体を用いても良い。
【0045】
上述した各実施形態及びその変形例では気体として通常の空気を用いたが、臭気物質等不純物を含んだ空気や、空気に限らず、酸素、窒素、水蒸気、ヘリウム等如何なる気体であっても良い。
【0046】
本発明で使用するパルス電圧に関する語句の説明を行う。
(パルス電圧)
ある一定パルス周期をもって変化する電圧であり、その波形は、正弦波、ノコギリ波、矩形波も含む。電圧が正極性もしくは負極性に偏った直流電圧でも良く、電圧が正極性と負極性を行き来する交流電圧であっても良い。また、一定電圧を保持する時間が存在しても良く、パルス上昇時間T1とパルス下降時間T2が同じでも、異なっていても良い。
パルス周波数は、電圧や誘電体の材質、厚さにもよるが、50Hzから1MHzが良く、好ましくは100Hzから500kHz、より好ましくは1kHzから100kHzが良い。
【0047】
(パルス電源)
パルス電圧を発生することができる電源。
(パルス電圧値Vp−p)
パルス電圧における最大電位と最小電位との電位差である。
電極に印加するパルス電圧値Vp−pは、誘電体の材質、厚さにもよるが、300Vp−pから300kVp−pが良く、好ましくは1kVp−pから100kVp−p、より好ましくは3kVp−pから30kVp−pが良い。
【0048】
(パルス上昇時間T1)
パルス電圧が連続して増加している時間のことを指し、電圧が増加に転ずる変曲点から、極大点までの時間である。
パルス上昇時間T1は、電圧や誘電体の材質、厚さにもよるが、
3マイクロ秒から10ミリ秒が良く、
好ましくは、4マイクロ秒から5ミリ秒、
より好ましくは、5マイクロ秒から0.5ミリ秒が良い。
【0049】
(パルス下降時間T2)
パルス電圧が連続して減少している時間のことを指し、電圧が減少に転ずる変曲点から次の極小点までの時間である。
パルス下降時間T2は、電圧や誘電体の材質、厚さにもよるが、
3マイクロ秒から10ミリ秒が良く、
好ましくは、4マイクロ秒から5ミリ秒、
より好ましくは、5マイクロ秒から0.5ミリ秒が良い。
【0050】
(パルス周期T3)
パルス電圧の最大値から次の最大値までの時間である。
(パルス周波数)
パルス周期T3の逆数である。
【実施例】
【0051】
続いて、上述した実施形態及びその各種変形例に関連して本発明の有用性を立証する評価試験を行ったので、その評価試験結果を説明する。
【0052】
図7に評価試験結果を示す第1実施例について説明する。この第1実施例では、本発明を実施するにあたって、上述した第1実施形態に係る複数の離間した端部を有する電極を用いたミスト生成装置100(図1、図7(b)参照)と第1実施形態に係るミスト生成装置100の電極102を板状の電極としたミスト生成装置(図7(a)参照)を用いて測定データを取り、ヨウ化カリウム(KI)の酸化反応を行なった。
【0053】
この評価試験の条件としては、図1に相当するミスト生成装置の容器104に水道水を100ml入れ、0.1mol/LのKI水溶液を2ml含ませた直径10cmの濾紙をミスト生成装置の直上、且つ水面からの高さが10cmの位置に設置し、反応後のI濃度を可視紫外分光光度計で測定した。ミスト生成装置の概略スペックは電極材料として銀を使用し、誘電体として、厚さ0.6mmのアルミナを用い、放電部をなす電極の長さをそれぞれ全長12mmとし、印加したパルス電圧は、パルス周波数を1kHzの正弦波で、パルス上昇時間及び下降速度は0.5ミリ秒とし、パルス電圧値Vp−pを21kVp−pとした。
【0054】
図7に示す評価結果から分かるように、電極にパルス電圧を印加することで、ヨウ化カリウムの反応が進み、さらに放電部の電極全長が同等でも、複数の放電箇所を有するくし歯状の電極の方が、より多く酸化できることが立証できた。
【0055】
以上説明したように、本発明によると、簡易の構成で液相と誘電体(固相)との間の気相で放電を発生させて、気相、液相、固相の浄化、改質を可能とした放電装置及び放電方法を提供することができる。
【0056】
また、簡易の構成で液相と誘電体(固相)との間の気相で放電を発生させて、ミストを発生させ、そのミストによって気相を漂う黴菌を殺菌することができる。また、ミストは活性種を含むため、気相の臭気物質の改質もできると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、汚れなどが付着しやすい配管や排水口の内面と液面とが接する部分の浄化や改質、水処理プラントや水処理装置等における浄水処理や排水処理、液体の工業的な製造、脱臭や気体清浄機、気体の工業的な製造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100、140 ミスト生成装置
101、104 パルス電源
102、103、142、143 電極
105 誘電体
401、402 一方の極性を持つ電極
A 空気
W 水
AD 空中放電
T1 パルス上昇時間
T2 パルス下降時間
T3 パルス周期
Vp−p パルス電圧値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成装置。
【請求項2】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極は、複数の、一方の極性を持つ電極を有し、
前記一方の極性を持つ電極のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成装置。
【請求項3】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部と他方の電極とのそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体同士の間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間に、
パルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成装置。
【請求項4】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、複数の、一方の極性を持つ電極を有し、
前記一方の極性を持つ電極のそれぞれと他方の電極とが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体同士の間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間に、
パルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成装置。
【請求項5】
前記他方の電極が、複数の端部を有した
ことを特徴とする請求項3または4に記載のミスト生成装置。
【請求項6】
前記他方の電極が、複数の、一方の極性を持つ電極をした
ことを特徴とする請求項3または4に記載のミスト生成装置。
【請求項7】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成方法。
【請求項8】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極は、複数の、一方の極性を持つ電極を有し、
前記一方の極性を持つ電極のそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体と前記他方の電極との間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間にパルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成方法。
【請求項9】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、それぞれ離間した複数の端部を有し、
前記複数の端部と他方の電極とのそれぞれが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体同士の間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間に、
パルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成方法。
【請求項10】
パルス電源と、
前記パルス電源の端部に接続された電気的に一対の電極とを有し、
前記電極のうち一方の電極が、複数の、一方の極性を持つ電極を有し、
前記一方の極性を持つ電極のそれぞれと他方の電極とが、少なくとも一部の領域を誘電体で覆われており、
それぞれの前記誘電体同士の間に、
前記誘電体に液面が接するように液体を介在させ、
前記一対の電極間に、
パルス電圧を印加する
ことを特徴とするミスト生成方法。
【請求項11】
前記他方の電極が、複数の端部を有した
ことを特徴とする請求項9または10に記載のミスト生成方法。
【請求項12】
前記他方の電極が、複数の、一方の極性を持つ電極をした
ことを特徴とする請求項9または10に記載のミスト生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167352(P2010−167352A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11168(P2009−11168)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】