説明

ミセルアセンブリ

本発明は、ミセルアセンブリ、ミセルアセンブリを含む組成物、およびミセルアセンブリおよびその組成物を調製する方法を包含する。また、本発明は、式:A−X−Y−R1の化合物(ここで、Aはカルボキシ基であるかまたは存在せず;Xはポリオールであり;Yは−C(=O)−、−C(=S)−であるかまたは存在せず;ZはO、S、またはNHであり;そしてRはポリエーテルであり、ここで該ポリオールの1つ以上のヒドロキシ基が脂肪酸残基でアシル化されている)を包含し、この化合物がミセルアセンブリを形成する。本発明は、本発明の化合物を用いて分子をカプセル化する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府援助)
本明細書中に記載の本発明は、国立科学財団により与えられた無償援助番号(BES−9983272)の下で政府の支援で行われた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ポリマーミセルは、自己アセンブル両親媒性ブロックコポリマーである。これらのミセルは、有望なコロイド薬物送達系として注目を集めている(V.P.Torchilin J.Controlled.Release.2001,73,137;C.Allen,D.ら,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces 1999,16,3;およびH.Otsuka,ら,Current Opinion in Colloid & Interface Science 2001,6,3)。これらのコロイド系において、疎水性ブロックは、代表的に、コア、特に、親油性医薬のための「微小容器(microcontainer)」を形成する(K.Kataokaら,Adv.Drug Delivery Rev.2001,47,113)。親水性部分は、外殻を形成し、コアと外部水性環境との間の界面を安定化する。従来のミセル系と比較して、これらのポリマー界面活性剤ベースの薬物キャリアは、低い臨界ミセル濃度(CMC)、改善されたバイオアベイラビリティ、毒性の減少、生理学的バリアを横切る増大された透過性、および薬物生体分布における実質的な変化のような明らかな利点を示す。
【0003】
両親媒性星様高分子(amphiphilic star−like macromolecule、ASM)は、薬物送達適用について研究されている(例えば、米国特許出願09/298729(1999年4月23日出願);米国特許出願09/422,295(1999年10月21日出願)、および国際特許出願UW00/10050(2000年4月18日出願)を参照のこと)。ASMの両親媒性構造であるコア−殻は、共有結合され、これによりこのコア−殻は、従来のミセル系と比較して熱力学的に安定になる。従って、ASMは、従来のミセル系を超える多数の利点を与える。これらの利点にも関わらず、ASMの使用は、その調製に関連する困難性および費用に起因して幾分か制限される。従って、ASMの熱力学的安定性に関連する利点のいくつかを有するが、調製がより容易でかつそれほど高価ではないさらなるミセル系および逆ミセル系の必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本出願人は、式(I):
A−X−Y−Z−R (I)
の化合物(式中、Aはカルボキシ基であるかまたは存在せず;Xはポリオールであり;Yは−C(=O)−、−C(=S)−であるかまたは存在せず;ZはO、S、またはNHであり;そしてRはポリエーテルであり、ここでポリオールの1つ以上のヒドロキシ基が脂肪酸残基でアシル化されている)が、溶媒中で凝集してミセル構造体を形成する(図2を参照のこと)を発見した。
【0005】
さらに、不飽和結合(例えば、脂肪酸またはポリエーテル結合中に)を有する式(I)の化合物は、凝集形成後に架橋されて、共有結合構造体(すなわち、架橋ミセル)を形成し得る。これらの凝集体(架橋されたものも架橋されてないものも両方)は、薬物送達適用、ならびに従来のミセルおよびASMが適用され得る多くのほかの適用において有用である。式(I)の化合物から形成された凝集体(架橋されたものも架橋されてないものも両方)は、ASMの調製に付随する多くの困難および高い費用を伴わずに調製され得る。
【0006】
従って、本発明は、上記のような式(I)の化合物を提供する。このような式(I)の化合物は、薬物送達適用において使用され得、かつ架橋されて薬物送達適用において有用な架橋ミセルを提供し得る凝集体を調製するための有用な中間体である。
【0007】
本発明はまた、複数の式(I)の化合物を溶媒中に含む組成物を提供する。このような組成物は、式(I)の化合物を含む凝集体および架橋ミセルを調製するのに有用である。
【0008】
本発明はまた、複数の式(I)の化合物を溶媒中に含み、この式(I)の化合物が1つ以上の凝集体に会合している組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、複数の式(I)の化合物から形成された架橋ミセルを溶媒中に含む組成物を提供する。ここで、式(I)の化合物は、1つ以上の凝集構造体を形成し、かつ架橋されて架橋ミセルを提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明の凝集体または架橋ミセルにより囲まれた、または部分的に囲まれた分子を含むカプセル体を提供する。
【0011】
本発明はまた、架橋ミセルを提供するため、複数の式(I)の化合物を含む架橋凝集体を含む本発明の架橋ミセルを調製する方法を提供する。本発明はさらに、凝集体が複数の式(I)の化合物を溶媒中で合わせることにより形成される方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、本発明のカプセル体を調製する方法を提供する。この方法は、複数の式(I)の化合物および分子(例えば、治療剤)を溶媒中で合わせる工程、および式(I)の化合物を分子の周囲に凝集させてカプセル体(すなわち、複数の式(I)の化合物により囲まれたまたは部分的に囲まれた分子)を提供する工程、を包含する。
【0013】
本発明はまた、本発明のカプセル体を調製する方法を提供する。この方法は、複数の式(I)の化合物および分子(例えば、治療剤)を溶媒中で合わせる工程、式(I)の化合物を分子の周囲に凝集させる工程、および式(I)の化合物を架橋してカプセル体(すなわち、架橋ミセルに囲まれた分子)を提供する工程を包含する。
【0014】
本発明はまた、溶媒、および分子(例えば、治療剤)を囲む複数の式(I)の化合物の凝集体を含む、組成物を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のカプセル体(すなわち、複数の式(I)の化合物により囲まれたまたは部分的に囲まれた治療剤);および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、本発明のカプセル体(すなわち、架橋ミセル中にカプセル化された治療剤);および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、治療剤を必要とする動物に治療剤を送達する方法であって、動物に薬剤を含む本発明のカプセル体を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、上記のような式(I)の化合物を調製するのに有用な中間体およびプロセスを提供する。
【0019】
(詳細な説明)
Aは、カルボキシ基であるか、または存在しない。存在する場合、Aは、必要に応じて、生体活性分子または治療活性分子で置換されても、これらの分子に結合されてもよい。この生体活性分子または治療活性分子(例えば、以下に記載されるような分子)はいずれも、当業者に公知であり得る。最も好ましい実施形態において、この生体活性分子または治療活性分子としては、ビタミンE、スルホン酸、スルホネートまたはサリチル酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリオール」は、直鎖および分枝鎖の脂肪族基、ならびに単環式および多環式の脂肪族を含み、これらは2つ以上のヒドロキシ基で置換される。ポリオールは代表的に、約2〜約20個の炭素;好ましくは約3〜約12個の炭素;より好ましくは約4〜約10個の炭素を有する。ポリオールはまた、代表的に、約2〜約20子のヒドロキシ基;好ましくは約2〜約12個のヒドロキシ基;より好ましくは約2〜約10個のヒドロキシ基を含む。ポリオールはまた、必要に応じて、炭素原子上で、1つ以上(例えば、1、2または3個)のカルボキシ基(COOH)で置換され得る。これらのカルボキシ基は、ポリオールを式(I)の化合物中のポリエーテルに結合するために都合よく用いられ得る。
【0021】
1つの特定のポリオールは、1〜約10個の炭素原子を含み、1〜約10個のヒドロキシル基で置換されたモノカルボン酸またはジカルボン酸である。モノカルボン酸またはジカルボン酸は、直鎖または分枝鎖の脂肪族、あるいは単環式または多環式の脂肪族化合物であり得る。適切なジカルボン酸としては、粘液酸、リンゴ酸、シトロリンゴ酸(citromalic acid)、アルキルリンゴ酸、グルタル酸のヒドロキシ誘導体、およびアルキルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ルマド酸(rumadic acid)のヒドロキシ誘導体などが挙げられる。適切なモノカルボン酸としては、2,2−(ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、およびN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン(tricine))が挙げられる。
【0022】
別の特定のポリオールは、「サッカリド」であり、これには、モノサッカリド、ジッサカリド、トリサッカリド、ポリサッカリドおよび糖アルコールが挙げられる。この用語は、グルコース、スクリース、フルクトースおよびリボース、ならびにデオキシリボースなどのようなデオキシ糖を含む。サッカリド誘導体は、当該分野で公知の方法によって、簡便に調製され得る。適切なモノサッカリドの例は、キシロース、アラビノースおよびリボースである。ジサッカリドの例は、マルトース、ラクトースおよびスクロースである。適切な糖アルコールの例は、エリスリトールおよびソルビトールである。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語ポリエーテルは、約2〜150個の繰り返し単位を有するポリ(アルキレンオキシド)を含む。代表的には、ポリ(アルキレンオキシド)は、約50〜約110個の繰り返し単位を有する。アルキレンオキシド単位は、2〜10個の炭素原子を有し、直鎖でも分枝鎖でも良い。好ましくは、アルキレンオキシド単位は、2〜10個の炭素原子を含む。ポリ(エチレングリコール)(PEG)が好ましい。アルコキシ−、アミノ−、カルボキシ−、およびスルホ末端ポリ(アルキレンオキシド)が好ましく、メトキシ末端ポリ(アルキレンオキシド)がより好ましい。
【0024】
好ましいポリエーテルは、以下の構造を有する:
−(R−O−)−R−Q−
ここで、Rは、1〜20個の炭素の直鎖または分枝アルキル基、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NHR、−COH、−SOH(スルホ)、−CH−OH、−CH−OR、−CH−O−CH−R、−CH−NH、−CH−NHR、−CH−NR、−CHCOH、−CHSOH、または−O−C(C=O)−CH−CH−C(C=O)−O−であり;
は、1〜10個の炭素の直鎖または分枝二価アルキル基であり;
各RおよびRは、独立して1〜6個の炭素の直鎖または分枝アルキレン基であり;
Qは−O−、−S−、または−NRであり;そして
aは2〜150(両端を含む)の整数である。
【0025】
別の好ましいポリエーテルは、メトキシ末端ポリエチレングリコールである。
【0026】
式(I)の化合物において、ポリ(アルキレンオキシド)は、例えば、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、チオエステル、チオアミド、またはアミド結合を介して、ポリオールに結合され得る。好ましくは、ポリ(アルキレンオキシド)は、式(I)の化合物においてエステルまたはアミド結合によってポリオールに結合される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語脂肪酸は、従来から定義されるような脂肪酸および脂肪油(例えば、天然脂肪および油において見出される長鎖脂肪族酸)を含む。脂肪酸は代表的に約2〜24個の炭素原子を含む。好ましくは、脂肪酸は、約6〜約18個の炭素原子を含む。用語「脂肪酸」は、直鎖または分枝脂肪族鎖および酸基(例えば、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートなど)を有する化合物を包含する。「脂肪酸」化合物は、ポリオール上のヒドロキシ基と類似の化学結合をエステル化し得るか、または形成し得る。適切な脂肪酸の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルチミン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸などが挙げられる。脂肪酸は、適切な天然に存在するか、または合成の脂肪酸または脂肪油から誘導され得、飽和でも不飽和でもよく、必要に応じて、位置異性体または幾何異性体を含み得る。多くの脂肪酸または脂肪油が市販されているか、または当業者に公知の手順を使用して、容易に調製または単離され得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「凝集体」は、秩序だった構造、例えば、疎水性コアおよび取り囲む親水性層を有する構造、または親水性コアおよび取り囲む疎水性層を有する構造へと組織化した、溶媒中の複数の式(I)の化合物を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「複数の式(I)の化合物」は、1より多い式(I)の化合物を意味する。このように複数ある中で、式(I)の化合物の各々は、同じ構造を有し得るか、または複数は、異なる構造を有する式(I)の化合物を含み得る。好ましい実施形態において、用語「複数の式(I)の化合物」は、1より多い式(I)の化合物を意味し、ここで、式(I)の化合物の各々は、同じ構造を有する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「架橋したミセル」は、共有結合で架橋した構造を提供するように架橋した凝集体を意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「カプセル体」は、複数の式(I)の化合物によって取り囲まれるか、または部分的に取り囲まれる分子(例えば、治療剤)を有する凝集体を意味する。用語カプセル体は、式(I)の化合物が架橋している構造および式(I)の化合物が架橋していない構造を含む。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「安定化されたカプセル体」は、複数の式(I)の化合物によって取り囲まれるか、または部分的に取り囲まれる分子(例えば、治療剤)を有する凝集体を意味し、ここで、式(I)の化合物中の不飽和結合が共有結合で安定化された構造を提供するように架橋している。
【0033】
図5に示されるように、代表的な式(I)の化合物は、化学量論過剰量の塩化脂肪酸と反応することによりポリオール(4)をアシル化して、アシル化されたポリオール(5)を提供することによって調製され得る。このようなアシル化反応についての適切な条件は周知である。例えば、この反応は、触媒(例えば、ZnCl)の存在下で加熱して実施され得る。適切なアシル化条件は、以下の実施例において示される。適切なカップリング剤を使用する、例えば、エステル結合を介しての(5)とポリエーテルとのカップリングは、式(I)の化合物(6)を提供する。
【0034】
複数の式(I)の化合物が、親水性溶媒(例えば、水を含む水溶液)中に置かれる場合、本出願人は、式(I)の化合物は、親水性溶媒中へと延びる化合物のポリエーテル部分および疎水性コアを形成する化合物の脂肪酸部分と凝集体を形成することを発見した。このような凝集体は、凝集体の脂肪酸コア中に疎水性分子をカプセル化することによって、水溶液中の疎水性分子(例えば、疎水性治療剤)を可溶化し得る。この疎水性分子は、代表的に、凝集後に式(I)の化合物の溶液に加えられ得るか、または、この疎水性分子は、凝集前に式(I)の化合物の溶液に加えられ得、これにより、この分子の周りで凝集体が形成する。従って、式(I)の化合物から形成された凝集体は、従来のミセルと同じように機能し得る。
【0035】
複数の式(I)の化合物から形成される凝集体はまた、逆ミセルのように機能し得る。複数の式(I)の化合物が、疎水性溶媒(例えば、ヘキサンまたは塩化メチレンのような有機溶媒)中に置かれる場合、式(I)の化合物は、疎水性溶媒中へと延びる化合物の脂肪酸部分および親水性コアを形成する化合物のポリエーテル部分と、凝集体を形成する。このような凝集体は、凝集体のポリエーテルコア中に親水性分子をカプセル化することによって、有機溶媒中の親水性分子(例えば、親水性治療剤)を可溶化し得る。この親水性分子は、代表的に、凝集後に式(I)の化合物の溶液に加えられ得るか、または、この親水性分子は、凝集前に式(I)の化合物の溶液に加えられ得、これにより、この分子の周りで凝集体が形成する。
【0036】
集合形成に続いて、不飽和結合を含む式(I)の化合物が、架橋して架橋ミセルを形成し得、これは、共有結合した複数の式(I)の化合物の集合を含む。これらの架橋したミセルはまた、広範な適用についての可溶化剤として使用され得る。いくつかの場合において、可溶化されるべき分子がこのような架橋ミセルを含む溶液に加えられ得、そして分子は、架橋したミセルのコアに位置し得、そして従って、可溶化され得る。
【0037】
共有結合的に安定化した構造がまた、可溶化されるべき分子を含むカプセル体における交差不飽和結合により形成され得る。例えば、疎水性分子が、水性溶媒中の式(I)の複数の化合物と組み合わされ得、その結果、式(I)の化合物は、疎水性分子の周りに集合体を形成する(図8を参照のこと)。集合体の形成の後、式(I)の化合物が架橋されて、安定化したカプセル体を形成し得る。
【0038】
代表的には、本発明の集合体は、約10nmから約1000nmの直径を有する。この直径は、例えば、動的光散乱のような、任意の適切な分析技術を使用して測定され得る。
【0039】
代表的には、本発明の架橋したミセルは、約1,000ダルトンと約100,000ダルトンとの間の数平均分子量を有し、この数平均分子量は、例えば、ポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィーによる、任意の適切な分析技術を使用して測定され得る。
【0040】
式(I)の化合物は、従来の「ミセル」または「逆ミセル」と同様に機能する集合体および架橋したミセルを形成するために使用され得る。これらの集合体および架橋したミセルは、従来のミセルまたは逆ミセルが利用される実質的に任意の適用について使用され得る。例としては、薬物可溶化剤、芳香剤カプセル化、薬物送達のための受動的標的化、廃水処理、増大されたキャピラリー電気泳動活性化、およびタンパク質結晶化の誘導が挙げられる。
【0041】
従って、本明細書中で使用される場合、用語「分子」は、本明細書中に記載されるように集合体または架橋したミセル中に組み込まれ得る任意の化合物を含む。代表的に、「分子」は、所望されず、本発明の集合体または架橋したミセル中への組み込みにより改変され得る可溶化特性を有する。例えば、用語「分子」は、治療剤、殺虫剤、農薬、除草剤、防腐剤、食品添加物、芳香剤、色素、診断用薬等を含む。分子の他の特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
アビエチン酸、アセグラトン、アセナフテン、アセノクマロール、アセトヘキサミド、アセトメロクトール、アセトキソロン、アセチルジギトキシン、アセチレンジブロミド、アセチレンジクロライド、アセチルサリチル酸、アラントラクトン、アルドリン、アレキシトールナトリウム、アレトリン、アリルエストレノール、アリルスルフィド、アルプラゾラム、アルミニウムビス(アセチルサリチル酸塩)、アンブセタミド、アミノクロセノキサジン、アミノグルテチミド、アミルクロライド、アンドロステネジオール、アネトールトリトン、アニラジン、アントラリン、アンチマイシンA、アプラスモマイシン、アルセノ酢酸、アシアチコシド、アステミゾール、オウロドクス、オーロチオグリカニド、8−アザグアニン、アゾベンゼン;
バイカレイン、ペルーバルサム、トルーバルサム、バルバン、バキストロビン、ベンダザック、ベンダゾール、ベンドロフルメチアジド、ベノミル、ベンザチン、ベンズエステロール、ベンゾデパ、ベンズオキシキノン、ベンズフェタミン、ベンズチアジド、安息香酸ベンジル、桂皮酸ベンジル、ビブロカソール、ビフェノックス、ビナパクリル、ビオレスメトリン、ビサボロール、ビサコジル、ビス(クロロフェノキシ)メタン、ビスマスヨードサブガレート、ヨウ化次没食子酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、タンニン酸ビスマス、ビスフェノールA、ビチオノール、ボルニル、臭化イソ吉草酸ボルニル、塩化ボルニル、イソ吉草酸ボルニル、サリチル酸ボルニル、ブロジファカム、ブロメライン、ブロキシキノリン(broxyquinoline)、ブフェキサマク、ブタミレート、ブテタール、ブチオベート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT);
ヨウ化ステアリン酸カルシウム、サッカリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カポベン酸(capobenic acid)、カプタン(captan)、カルバマゼピン、カルボクロラール、カルボフェノチン、カルボコン、カロテン、カルバクロール、セファエリン、セファリン、カウルモウグル酸、ケノジオール、キチン、クロルデン、クロルフェナク(chlorfenac)、塩化フェネトール、塩化タロニル、塩化トリアニセン、塩化プロチキセン、塩化キナルドール、クロモナル(chromonar)、シロスタゾール、シンコニジン、シトラール、クリノフィブリン酸(clinofibrate)、クロファジミン、クロフィブリン酸(clofibrate)、クロフルカルバン、シノ硝酸塩(cinonitrate)、クロピドール、クロリンジオン(clorindione)、クロキサゾラム、コロキソン、コルチコステロン、クマクロル、クマホス、クーミトエート(coumithoate)、酢酸クレゾール、クリミジン、クリホメート、カプロバン、シアメマジン、シクランデレート、シクラバメートシマリン、シペントリル(cypennethril);
ダプソン、ジホスファミド、デルタメトリン、酢酸デオキシコルチココステロン、デソキシメタゾン、10デキストロモルアミド、ジアセタゾト(diacetazoto)、ジアリホル(dialifor)、ジアチモスルホン、デカプトン、ジクロフルアニ(dichlofluani)、ジクロロフェン、ジクロルフェナミド、ジコホル(dicofol)、ジクリル、ジクマロール、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ジフェナミゾール、酢酸ジヒドロコデイノン−エノール、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロモルフィリン、ジヒドロタキステロール、ジメストロール、ジメチステロン、ジオキサチオン、ジフェナン、N−(1,2−ジフェニルエチル)ニコフィナミド、ジピロセチル、ジサルファミド、ジチアロン、ドキセニトイン、ドラゾキソロン、ジュラパタイト(durapatite)、エジフェンホス、エモジン、エンフェナミン酸、エルボン、エルゴコルニニン、テトラ硝酸エリトリチル、ステアリン酸エリスロマイシン、エストリオール、エタベリン、エチステロン、ビスコム酢酸エチル(ethyl biscomacetate)、エチルヒドロクプレイン、エチルメンタンカルボキサミド(ethyl menthane carboxamide)、オイゲノール、ユープロシン、エキサルアミド、;
フェバルバメート、フェナルアミド、フェンベンダゾール、フェニペント−ル、フェニトロチオン、フェノフィブリン酸、フェンキゾン、フェンチオン、フェパラゾン、フリルピン、フィリキシン酸(filixic acid)、フロクタフェニン、フルアニゾン、フルメキン、フルオコルチンブチル、フルオキシメステロン、フルロチル、フルタゾラム、フマグリン、5−フルフリル−5−イソプロピルバルビフィン酸、フザファンギン(fusafungine)、グラフェニン、グルカゴン、グルテチミド、グリブチアゾール、グリセオフルビン、炭酸グアヤコール、リン酸グアヤコール、ハルシノニド、ヘマトプルピリン、ヘキサクロロフェン、へキセストロール、へキセチジン、へキソバルビタール、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコドン、イブプロキサム、イデベノン、インドメタシン、ニコチン酸イノシトール、ヨーベンザム酸、ヨーセタム酸、ヨージパミド、ヨーメグラム酸、イポデート、イソメテプテン、イソノキシン、2−イソバレリンダン−1,3−ジオン;
ジョサマイシン、11−ケトプロゲステロン、ラウロカプラム、二酢酸−3−O−ラウロイルピリドキソール、リドカイン、リンダン、リノレン酸、リオチロニン、ルセンソマイシン、マンコゼブ、マンデル酸、イソアミルエステル、マジンドール、メベンダゾール、メブヒドロリン、メビキン、メラルソプロール、メルファラン、メナジオン、吉相酸メチル、メフェノキサロン、メフェンテルミン、メフェニトイン、メプリルカイン、メスタノロン、メストラノール、メサルフェン、メテルゴリン、メタラタール、メタンドリオール、メタクアロン、3−メチルクロラントレン、メチルフェニデート、17−メチルテステロン、メチプラノロール、ミナプリン、ミヨラル、ナフィアロフォス、ナフィオピジル、ナフタレン、乳酸−2−ナフチル、2−(2−ナフチルオキシエタノール)、サリチル酸ナフチル、ナプロキセン、ニールバルビタール、ネマデクチン、ニクロサミド、ニコクロネート、ニコモルフィン、ニフロキン、ニフロキサジン、ニトラクリン、ニトロメルソール、ノガラマイシン、ノルダゼパム、ノレタンドロロン、ノルゲストリエノン;
オクタベフィン(octavefine)、オレアンドリン、オレイン酸、オキサゼパム、オキサゾラム、オキセラジン、オキサザイン(oxwthazaine)、オキシコドン、オキシメステロン、酢酸オキシフェニスタン、パラヘルクアミド(paraherquamide)、パラチオン、ペモリン、ペンタエリスリトール、テトラニトレート、ペンチルフェノール、ペルフェナジン、フェンカルバミド、フェニラミン、2−フェニル−6−クロロフェノール、フェントルメチルバルビツール酸、フェニトイン、ホサロン、フタリルサルファチアゾール、フィロキノン、ピカデックス、ピファルミン、ピケトフェン(piketopfen)、ピプロゾリン、ピロザジル、プラフィブリド、プラウノトール、ポラペレジン、ポリチアジド、プロベネシド、プロゲステロン、プロメゲストン、プロパニジド、プロパルジト、プロファン、プロカゾン、プロチアンアミド、ピリメタミン、ピリミテート、ピルビニウムバモエート;
ケルセチン、キンボロン、キザロホエチル、ラホキサミド、レシナミン、ロシベリン、ロネルサレン、スカーレットレッド、シクン(siccmn)、シマジン、シメトフィド、ソブゾキサン、ソラン、スピロノラクトン、スカーレン、スタノロン、スクラルフェート、サルファベンズ、サルファグアノ−ル、サルサホラジン、サルフォキシド、サルピリド、スキシブゾン、タルブタール、テルグリド、テストステロン、テトラブロモクレゾール、テトランドリン、チアセタゾン、チオコルキシン、チオクト酸、チオキノクス、チオリダジン、チラン、チミルN−イソアミルカルバメート、チオキシダゾール、チオキソロン、トコフェロール、トルシクレート、トルナフィエート(tolnafiate)、トリクロサン、トリフルサル、トリパラナール;
ウルソル酸、バリノマイシン、ベラパミル、ビンブラスチン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、キセンブシン、キシラジン、ザルトプロフェンおよびザラレノン。
【0042】
本発明の凝集体および架橋ミセルは、疎水性分子(特に、本来疎水性の治療剤)を可溶化するのに特に有用である。本発明のある実施形態によると、治療剤は、溶媒(例えば、水)中で、該治療剤と複数の式(I)の化合物との混合によりカプセル化される。凝集が形成された後(例えば、該形成は、動的光散乱、蛍光分光器、表面張力、またはそれらの組み合わせを使うことにより、決定され得る)、式(I)の化合物は、架橋され、本発明のカプセルを提供する。ここで、治療剤は、架橋したミセル内にカプセル化されている。
【0043】
本発明は、カプセル化された疎水性分子を、1M以上10Mまでの高い濃度で使用することを意図する。同時に、本発明の別の利点は、ポリマーの熱力学的安定性であり、これにより、低い濃度の安定なポリマーカプセル水溶液の形成を可能にし、これは、従来の界面活性剤であるCMCの濃度よりはるかに低い。10−8M以上の濃度を有する安定な水溶液は、商業上もっとも有用になると期待される。本発明によると、カプセルは、目下利用可能な検出の限界より下(つまり、10−10Mより下)の濃度で形成するとされる。
【0044】
治療剤を含む本発明のカプセルは、薬学的組成物として処方され得、選択された投与経路(つまり、経口、非経口、静脈内、筋肉内、局所的または皮下による経路)に適した多様な形態で、哺乳動物の宿主(例えば、ヒト患者)に投与され得る。
【0045】
このように、本発明のカプセルは、全身投与(例えば、不活性賦形薬のような薬学的に受容可能な賦形薬と組み合わせて経口的に)され得る。該カプセルは、患者の食事の食物
と共に、直接取り込まれる。経口的な治療投与のために、本発明のカプセルは、エリキシル、シロップなどの形態で使用され得る。
【0046】
前記組成物は、また、甘味剤(例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパラテーム)を含み得、あるいは香味剤(例えば、ペパーミント、ウィンタ−グリーン油またはさくらんぼのフレーバー)が添加され得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてスクロースまたはフラクトース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素ならびに、さくらんぼまたはオレンジのフレーバのようなフレーバ剤を含み得る。もちろん、全ての単位投薬形態を調製する際に使用される全ての材料は、薬学的に受容可能であり、使用量で実質的に無毒性である。さらに、本発明のカプセルは、徐放性製剤またはデバイスに組み込まれ得る。
【0047】
本発明のカプセルはまた、輸液または注射によって静脈内または非経口的に投与され得る。カプセルの溶液は、例えば水中で調製され得る。保存および使用の通常の条件下では、該調製は、微生物の増殖を防ぐために、保存剤を有し得る。
【0048】
注射または輸液に適した薬学的な投与形態は、製造および保存の条件下では、無菌で、流動的および安定である。種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなど)により、微生物による作用は阻止され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖、緩衝液または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。
【0049】
無菌の注射剤用溶液は、必要量の本発明のカプセルと上記に列挙した、種々の別の成分とを組み込み、無菌化することにより調製される。
【0050】
本発明による分子のカプセル化により、分子の経皮内分布が変わる。皮膚による吸収は、約1000個以内の因子によって、増加または減少し得る。このように、本発明の薬学的投薬形態は、水溶液に加えて、水溶性ゲルの含んだ、経皮内分布に適した投薬形態を含む。該投薬形態は、ローション、クリームまたは軟膏、あるいは、経皮内用パッチ(ここで、カプセル化分子は、該パッチの活性作用物質の貯蔵内に保持される)のような経皮内薬物分布デバイスのように、皮膚に直接適用され得る。
【0051】
投与用量および投与方法は、動物により変わり、扱う動物の種、性別、体重、食事、一致した薬物治療、全ての臨床条件、使用される特定の治療的作用物質、使用される該作用物質の特定の使用および、当業者が認める他の因子に依存する。
【0052】
治療的に有効な薬物量は、インビボまたはインビトロの方法によって決定され得る。本発明の各特定の投薬形態のために、個別に必要とされる最適薬物量が決定され得る。治療的に有効な薬物量の範囲は、本来、投与経路、治療目的および患者の状態により影響を受ける。有効な投薬レベル(つまり、所望の結果に達するのに必要な投薬レベル)の決定は、当業者の範囲内である。代表的に、作用物質の製剤は、より低い投薬レベルで始め、所望の効果が達成されるまで薬物レベルは増加される。
【0053】
代表的な投与量は、動物重量1kgあたり、約0.001mg〜約1,000mgの治療薬の範囲であり得る。好ましい投与量は、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、そしてより好ましくは約0.01mg/kg〜約20mg/kgの範囲である。有利には、本発明の投与量形態は、一日に数回投与され得、そしてその他の投与量養生法もまた有用であり得る。
【0054】
本発明によれば、凝集または架橋ミセル分解は、分子(例えば、治療薬剤)の放出のための必要条件ではない。
【0055】
本発明の式(I)の化合物、凝集、カプセル化および架橋ミセルはまた、肥厚剤、治療薬剤、滑沢剤、洗浄剤界面活性剤、可塑剤および汚れ止め剤として用いられ得る。本発明の式(I)の化合物、凝集、カプセル化および架橋ミセルはまた、色素、化粧品、顔料および薬学的製品のための乳化、分散または安定化剤として用いられ得る。本発明の式(I)の化合物、凝集、カプセル化および架橋ミセルはまた、化粧品のために、色素、香料、または両方を乳化するためのテキスタイルの浸染における乳化、分散または安定化剤として特に有用である。本発明の式(I)の化合物、凝集、カプセル化および架橋ミセルは、塗料の滑沢剤として、および肥厚剤として有用である。本発明の式(I)の化合物、凝集、カプセル化および架橋ミセルはまた、写真組成物および展開剤の成分のための乳化、分散または安定化剤として採用され得る。
【0056】
治療適用には、本発明の好ましい架橋ミセルおよび凝集物は、生体適合性であることが知られる成分、すなわち、糖、脂肪酸、アミノ酸およびポリ(エチレングリコール)に加水分解する。これはまた、このポリマーおよびその加水分解産物の低い毒性を生じる。このポリ(アルキレン酸化物)単位は、カプセル体の免疫原性を増大し、疎水性分子が身体の免疫系を回避することを可能にし、それによってこの疎水性分子の循環時間を増加する。これは、減少した量の疎水性分子で有効な処置を可能にし、これは、増加した免疫原性とともに、毒性副作用の出来事の重篤度を防ぐかまたは減少する。
【0057】
本明細書で以下に提示される以下の非制限的な実施例は、本発明の特定の局面を示す。すべての部およびパーセントは、そうでないことが注記されていなければ重量であり、そしてすべての温度は摂氏である。
【0058】
すべてのPEGは、Shearwater Polymers(Birmingham、AL)から得、そしてさらなる精製なくして用いた。すべてのその他の化学薬品は、Aldrich(Milwaukee、WI)から得、そしてさらなる精製なくして用いた。分析グレードの溶媒をすべての反応について用いた。塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチルアミン(TEA)およびジメチルスルホキシド(DMSO)は蒸留した。4−(ジメチルアミノ)ピリジニウムp−トルエンスルホネート(DPTS)は、J.S.Moore、S.I.Stupp Macromolecules 1990、23、65によって記載されるように調製した.H−NMRおよびスペクトルは、Varian200MHzまたは400MHz分光計上で記録した。サンプル(約5〜10mg/ml)をCDClまたはTHF−d中に溶解し、この溶媒を内部参照として用いた。IRスペクトルは、KBrペレット上にサンプルを溶媒キャスティングすることにより、Mattson Series分光計上で記録した。熱分析データは、Perkin−Elemer Pyris 1 DSCシステム上で決定し、サンプル(約10mg)は、乾燥窒素ガス下で加熱した。データは、5℃/分の加熱および冷却速度で集めた。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)は、Perkin−Elmer Series200LCシステム上で実施した。ダイナミックレーザースキャッタリング(DSL)測定は、NICOMP粒子サイジングシステム上で実施した。
【実施例】
【0059】
(実施例1.化合物(10)(図7、R=デシル))
mPEG5k(5.0g、1.0mmol)を、トルエン中(30ml)の共沸蒸留により脱水し、そしてトルエンを減圧下で除去した。塩化メチレン(30ml)中の化合物()(1.4g、3.0mmol)およびDPTS(0.32g、1.0mmol)を、室温で添加した。窒素による10分のフラッシングの後、塩化メチレン中(3.0ml)の1.0MのDCCを滴下により添加した。3日後、このDCCの副産物(ジシクロヘキシルウレア)を吸引濾過により取り除いた。濾液を30mlの部分のブライン(3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして乾燥までエバポレートした。粗生成物をメタノールからジエチルエーテル中への沈殿により精製した。表題の化合物を、白色ワックス状固形分(5.3g)として、収率:95%で得た。
【0060】
中間化合物(9)は以下のように調製された。
a.化合物(8).ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA、2.0g、15mmol)を、ピリジン(25ml)中に溶解した。氷/水欲上窒素で10分間のフラッシング後、10−ウンデセノイルクロライド(7.4ml、34mmol)を滴下により添加した。10時間後、この反応混合物を、0.1N HCl溶液(300ml)中に注ぎ、そして10分間撹拌した。エチルエーテル(100ml)を用いて産物を抽出した。抽出物を、ブライン(5)の50ml部分で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして乾燥するまでエバポレートした。粗生成物を、溶出液として石油エーテル:酢酸エチル(80:20)を用いるクロマトグラフィーにより精製した。化合物(9)を、無色のオイル(5.0g)、収率:72%として得た。
【0061】
実施例2〜4は、ポリエーテルとカップルし得、式(I)の化合物を提供するその他のアセチル化ポリオールの調製の詳細を記載する。
【0062】
(実施例2(図5)、化合物(5)、R=エチル)
粘液酸(4.2g、20mmole)と塩化プロピオニル(18ml、200mmol)との純粋の混合物にZnCl(0.28g、2.0mmol)を添加した。この反応混合物を、還流温度で3時間加熱した。冷却後、この反応混合物にジエチルエーテル(20ml)を添加し、そして溶液を、撹拌しながら氷チップ(約100g)上に注いだ。さらなるジエチルエーテル(80ml)をこの混合物に添加し、水で中性pHまで洗浄シ、無水NaSO上で乾燥し、そして乾燥するまでエバポレートした。粗生成物を、ジエチルエーテルと塩化メチレンとの共溶媒系からの再結晶化により精製し、減圧濾過により集め、氷冷塩化メチレンにより洗浄し、そして105℃(12時間)で15の一定重量まで乾燥した。表題化合物を、196℃のTを有する白色固形分として、56%収率で得た。
【0063】
(実施例3(図5、化合物(5)、R=プロピル))
粘液酸ヘキシルエステルを、塩化プロピオニルを塩化カプロイルに代えて実施例2におけるように調製した。表題化合物を、171℃のTを有する白色固形分として、68%収率で得た。
【0064】
(実施例4(図5、化合物(5)、R=ウンデシル))
粘液酸ラウリルエステルを、塩化プロピオニルを塩化ラウリルに代えて実施例2におけるように調製した。表題化合物を、145℃のTを有する白色固形分として、65%収率で得た。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、式(I)の例示的な化合物(1〜3)を示す。
【図2】図2は、架橋前の複数の式(I)の化合物の凝集体を示す。
【図3】図3は、分子(例えば、「薬物」)が複数の式(I)の化合物から構築された凝集体中にカプセル化された、架橋前の本発明のカプセル体を示す。
【図4】図4は、架橋ミセル中にカプセル化された分子(例えば、「薬物」)を提供する、架橋した後の図3のカプセル体を示す。
【図5】図5は、式(I)(6)の代表的な化合物の合成を示す。
【図6】図6は、式(I)(7)の代表的な化合物の合成を示す。
【図7】図7は、式(I)(10)の代表的な化合物の合成を示す。
【図8】図8は、本発明のカプセル体であり、ここで疎水生分子(例えば、「薬物」は、複数の式(I)の化合物から構築される凝集体中にカプセル化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
A−X−Y−Z−R (I)
の化合物であって、ここで、Aはカルボキシ基であるかまたは存在せず;Xはポリオールであり;Yは−C(=O)−、−C(=S)−であるかまたは存在せず;ZはO、S、またはNHであり;そしてRはポリエーテルであり、ここで該ポリオールの1つ以上のヒドロキシ基が脂肪酸残基でアシル化されている、化合物。
【請求項2】
前記ポリオールが約2〜約20個の炭素を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリオールが約3〜約12個の炭素を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリオールが約4〜約10個の炭素を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリオールが約2〜約20個のヒドロキシ基を含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリオールが約2〜約12個のヒドロキシ基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記ポリオールが約2〜約10個のヒドロキシ基を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記ポリオールが1つ以上のカルボキシ基で置換されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記ポリオールが2つのカルボキシ基で置換されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記ポリオールが1つのカルボキシ基で置換されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記ポリオールが1〜約10個の炭素原子を含むモノカルボン酸またはジカルボン酸であり、かつ1〜約10個のヒドロキシru基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリオールがムチン酸、リンゴ酸、シトロリンゴ酸、アルキルリンゴ酸、グルタル酸のヒドロキシ誘導体、アルキルグルタル酸、酒石酸、またはクエン酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリオールが、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸またはトリシンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記ポリオールが糖類である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
前記ポリエーテルが、約2〜約150個の反復単位を有するポリ(アルキレンオキシド)である、請求項1〜14に記載の化合物。
【請求項16】
前記アルキレンオキシド単位が、2〜4個の炭素原子を含み、かつ直鎖または分枝鎖であり得る、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記ポリエーテルがアルコキシル末端化されている、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
前記ポリエーテルが、エステル結合、チオエステル結合、またはアミド結合を通して前記ポリオールに連結されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記ポリエーテルが、エステル結合またはアミド結合を通じて前記ポリオールに連結されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記ポリエーテルが、以下の構造:
−(R−O−)−R−Q−
を有し、ここで、Rは、1〜20個の炭素の直鎖または分枝鎖のアルキル基、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NHR、−COH、−SOH(スルホ)、−CH−OH、−CH−OR、−CH−O−CH−R、−CH−NH、−CH−NHR、−CH−NR、−CHCOH、−CHSOH、または−O−C(=O)−CH−CH−C(=O)−O−であり;
は、1〜10個の炭素の直鎖または分枝鎖の二価アルキレン基であり;
およびRの各々は、独立して、1〜6個の炭素の直鎖または分枝鎖のアルキレン基であり;
Qは、−O−、−S−、または−NRであり;そして
aは、2〜110の整数(包括)である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記ポリエーテルが、メトキシ末端ポリエチレングリコールである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記脂肪酸が、約2〜約24個の炭素原子を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
前記脂肪酸が、約6〜約18個の炭素原子を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
前記脂肪酸が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリストイル酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、もしくはエルカ酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を溶媒中に含む組成物。
【請求項26】
前記溶媒が有機溶媒を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記溶媒が水を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記溶媒が水である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を溶媒中に含む組成物であって、該式(I)の化合物が1つ以上の凝集構造体を形成する、組成物。
【請求項30】
前記溶媒が有機溶媒を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記溶媒が水を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記溶媒が水である、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
溶媒、および請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を含む架橋ミセルを含む組成物であって、該式(I)の化合物が、該架橋ミセルを提供するよう架橋された1つ以上の凝集構造を形成する、組成物。
【請求項34】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を溶媒中で合わせる工程;および該化合物に凝集構造体を形成させる工程、により形成された凝集構造体。
【請求項35】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を溶媒中で合わせる工程;該化合物に凝集体を形成させる工程;および式(I)の化合物を架橋して架橋ミセルを提供する工程、により形成された架橋ミセル。
【請求項36】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物の凝集構造体を調製する方法であって、複数の式(I)の化合物を溶媒中で合わせる工程;および該化合物に該凝集構造体を形成させる工程、を包含する、方法。
【請求項37】
架橋ミセルを調製する方法であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を溶媒中で合わせる工程;該化合物に該凝集構造体を形成させる工程;および該式(I)の化合物を架橋して該架橋ミセルを提供する工程、を包含する、方法。
【請求項38】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物により囲まれた、または部分的に囲まれた分子を含むカプセル体。
【請求項39】
請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物により囲まれた、または部分的に囲まれた治療剤を含むカプセル体。
【請求項40】
架橋ミセル中に分子を含むカプセル体であって、該架橋ミセルは、架橋された、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を含む、カプセル体。
【請求項41】
架橋ミセル中に治療剤を含むカプセル体であって、該架橋ミセルは、架橋された、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物を含む、カプセル体。
【請求項42】
請求項38に記載されるカプセル体を調製する方法であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物および分子を溶媒中で合わせる工程;および式(I)の化合物を該分子の周囲に凝集させて該カプセル体を提供する工程、を包含する、方法。
【請求項43】
請求項39に記載されるカプセル体を調製する方法であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物および治療剤を溶媒中で合わせる工程;および式(I)の化合物を該治療剤の周囲に凝集させて該カプセル体を提供する工程、を包含する、方法。
【請求項44】
請求項40に記載されるカプセル体を調製する方法であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物および分子を溶媒中で合わせる工程;式(I)の化合物を該分子の周囲に凝集させる工程;および該式(I)の化合物を架橋して該カプセル体を提供する工程、を包含する、方法。
【請求項45】
請求項41に記載されるカプセル体を調製する方法であって、請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物および治療剤を溶媒中で合わせる工程;式(I)の化合物を該治療剤の周囲に凝集させる工程;および該式(I)の化合物を架橋して該カプセル体を提供する工程、を包含する、方法。
【請求項46】
溶媒、および分子を囲む請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物の凝集体を含む、組成物。
【請求項47】
溶媒、および治療剤を囲む請求項1〜24のいずれか1項に記載される複数の式(I)の化合物の凝集体を含む、組成物。
【請求項48】
請求項39に記載されるカプセル体;および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項49】
請求項41に記載されるカプセル体;および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項50】
治療剤を用いる処置を必要とする動物に該治療剤を送達する方法であって、該動物に請求項39に記載のカプセル体を投与する工程を包含する、方法。
【請求項51】
治療剤を用いる処置を必要とする動物に該治療剤を送達する方法であって、該動物に請求項41に記載のカプセル体を投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−509050(P2006−509050A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510715(P2004−510715)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/017902
【国際公開番号】WO2003/103594
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(504196986)ラトガーズ, ザ ステート ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】