説明

ミラースキャナの構造及び製造方法

【課題】本発明は、ミラースキャナの構造及び製造方法に係り、共振周波数の精度良い調整を行うことにある。
【解決手段】ミラースキャナ10は、フレーム12と、光源からの光を反射するミラー部14と、フレーム12とミラー部14とを連結して該ミラー部14を該フレーム12に対して支持するトーションバー16a,16bと、トーションバー16a,16bに平行に設けられてフレーム12とミラー部14とを連結する複数本の溶断可能なバーからなる棒部材18a,18bと、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラースキャナの構造及び製造方法に係り、特に、光源からの光を偏向反射させて光走査を行うミラースキャナの共振周波数を調整するうえで好適なミラースキャナの構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光を偏向反射させて光走査を行うミラースキャナが知られている(例えば、特許文献1参照)。ミラースキャナは、レーザプリンタやバーコードリーダ等の光学機器に用いられる光走査装置に搭載されている。ミラースキャナは、フレームと、そのフレームに光偏向軸を中心に揺動可能に支持されたミラー部と、を備えている。フレームとミラー部とは、梁部材であるトーションバーを介して連結されている。かかるミラースキャナにおいて、ミラー部は、フレームに支持された状態でトーションバーを介して揺動しつつ光源からの光を反射する。
【0003】
また、上記特許文献1記載のミラースキャナにおいて、その共振周波数の調整は、トーションバーとフレームとの連結部位近傍又はミラー部本体の一部がレーザ照射装置から照射されるレーザにより除去されることで実現される。トーションバーとフレームとの連結部位近傍が除去されると、トーションバーの全長が長くなるので、共振周波数が下がる。一方、ミラー部本体が除去されると、慣性モーメントが小さくなるので、共振周波数が上がる。従って、レーザによる部材除去により共振周波数を調整することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−079256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ミラースキャナの共振周波数を調整すべくそのミラースキャナを構成する部材をレーザにより除去する手法では、部材を除去する量の適切な調整が難しく、共振周波数の精度良い調整が困難である。また、上記の手法では、レーザ照射装置やレーザ照射工程が必要であるので、共振周波数調整のための費用が増大すると共に、ミラースキャナの製造上のスループットが低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、共振周波数の精度良い調整を行うことが可能なミラースキャナの構造及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、フレームと、光源からの光を反射するミラー部と、前記フレームと前記ミラー部とを連結して該ミラー部を該フレームに対して支持するトーションバーと、前記トーションバーに平行に設けられて前記フレームと前記ミラー部とを連結する複数本の溶断可能なバーからなる調整部と、を備えるミラースキャナの構造により達成される。
【0008】
また、上記の目的は、フレームと、光源からの光を反射するミラー部と、前記フレームと前記ミラー部とを連結して該ミラー部を該フレームに対して支持するトーションバーと、を備えるミラースキャナを製造する方法であって、前記ミラースキャナの形成後のテスト工程において該ミラースキャナの特性が測定された後に該ミラースキャナの共振周波数を調整するミラースキャナの製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共振周波数の精度良い調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例であるミラースキャナの上面図である。
【図2】本実施例のミラースキャナの共振周波数を調整する調整装置の構成図である。
【図3】本実施例の調整装置においてコントローラが実行する制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図4】本発明の変形例であるミラースキャナの上面図である。
【図5】本発明の変形例であるミラースキャナの上面図である。
【図6】本発明の変形例であるミラースキャナの上面図である。
【図7】本発明の変形例であるミラースキャナの上面図である。
【図8】本発明の変形例であるミラースキャナの構成図である。
【図9】本発明の変形例であるミラースキャナの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係るミラースキャナの具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるミラースキャナ10の上面図を示す。本実施例のミラースキャナ10は、ミラーを用いて光(例えばレーザー光)を走査するミラー駆動装置であり、センサなどに用いられる。図1に示す如く、ミラースキャナ10は、フレーム12と、光源から照射される光を反射するミラー部14と、フレーム12とミラー部14とを連結するトーションバー16と、を備えている。ミラースキャナ10は、例えばシリコンなどの半導体からなり、マイクロマシニング技術を利用して形成される。
【0013】
フレーム12は、四角形状に空いた孔を有するように四辺で囲まれて枠状に形成されている。ミラー部14は、四角い平板状に形成されており、フレーム12に空いた孔の大きさ(面積)よりも小さな大きさ(面積)を有している。ミラー部14は、フレーム12に空いた孔内の略中央に配置されている。ミラー部14は、予め所定の質量を有するように形成されている。ミラー部14の表面には、光源からの光が入射される。
【0014】
トーションバー16は、フレーム12とミラー部14とを連結しており、フレーム12に対してミラー部14を支持している。トーションバー16は、ミラー部14を挟んで対称位置にそれぞれ設けられており、それぞれフレーム12とミラー部14との間で所定方向(図1(A)において左右方向)Xに延びている。尚、ミラー部14を挟んで配設された一対のトーションバー16を16a,16bと称す。一対のトーションバー16a,16bはそれぞれ、一端がフレーム12の側壁に接続されかつ他端がミラー部14の側壁に接続されている。トーションバー16a,16bはそれぞれ、X軸回りに捩れることが可能であり、ミラー部14をフレーム12に対してX軸回りに揺動可能に支持している。
【0015】
ミラー部14は、例えばミラー部14の裏面に配設された永久磁石に電磁石からの電磁力が作用することによりX軸回りに揺動する。このミラー部14のX軸回りの揺動は、コントローラによる電磁石への電流制御により実現されるものとすればよい。ミラー部14は、ミラー部14とトーションバー16とからなる構造体(すなわち、ミラースキャナ10)の共振周波数で往復揺動するように駆動される。ミラー部14がX軸回りに揺動すると、光源からの光がミラー部14で反射する方向が変化する。従って、本実施例のミラースキャナ10によれば、光走査を実現することができる。
【0016】
また、本実施例において、トーションバー16a,16bはそれぞれ、複数本(図1(A)においては4本)の棒部材18a,18bからなる。各棒部材18aは、フレーム12とミラー部14との間でX軸方向に延びている。また、各棒部材18bは、フレーム12とミラー部14との間でX軸方向に延びている。複数本の棒部材18aは、互いにY軸方向において並列に配置されており、また、複数本の棒部材18bは、互いにY軸方向において並列に配置されている。
【0017】
複数本の棒部材18a,18bからなるトーションバー16a,16bは、ウェハプロセスにより形成される。各棒部材18a,18bはすべて同じ形状を有している。各棒部材18aの、フレーム12の側壁とミラー部14の側壁との間のX軸方向長さは互いに同じであり、また、各棒部材18bの、フレーム12の側壁とミラー部14の側壁との間のX軸方向長さは互いに同じである。棒部材18aのX軸方向長さと棒部材18bのX軸方向長さとは同じである。
【0018】
トーションバー16aの棒部材18aは、隣接する棒部材18aに対してY軸方向において等間隔を空けて配置されている。また、トーションバー16bの棒部材18bは、隣接する棒部材18bに対してY軸方向において等間隔を空けて配置されている。棒部材18a側のY軸方向における間隔と棒部材18b側のY軸方向における間隔とは互いに同じである。トーションバー16aの棒部材18aとトーションバー16bの棒部材18bとはすべて、ミラー部14の中心を通る線L(具体的には、ミラー部14の面内において上記の所定方向Xに直交する方向に延びる線)を挟んで互いに線対称の位置に設けられている。
【0019】
尚、トーションバー16a及びトーションバー16bは、各棒部材18aが互いに平行に配置されかつ各棒部材18bが互いに平行に配置され、棒部材18aと棒部材18bとがすべて互いに線対称の位置に設けられると共に、互いに線対称の位置にある棒部材18aと棒部材18bとが互いに同じ形状を有するものであればよい。すなわち、各棒部材18a,18bがすべて同じ形状を有することは不要であり、棒部材18a側のY軸方向における間隔がすべて等間隔であることは不要であり、棒部材18b側のY軸方向における間隔がすべて等間隔であることは不要である。
【0020】
また、図2は、本実施例のミラースキャナ10の共振周波数を調整する調整装置20の構成図を示す。尚、図2においては、ミラースキャナ10の構成を図1(A)に示すA−A断面図で示す。
【0021】
本実施例において、トーションバー16a,16bの各棒部材18a,18bは、それぞれ溶断可能なバーであって、それぞれ通電加熱により独立して溶断される。フレーム12の、棒部材18a,18b近傍には、プローブ22が接触し得る。また、ミラー部14には、一つのプローブ24が接触し得る。プローブ22,24は、棒部材18a,18bの通電加熱を実施するための構成部品であって、上記の調整装置20を構成する。プローブ22,24は、昇降装置によりミラースキャナ10に対して上下動されることが可能であり、ミラースキャナ10の表面(具体的には、フレーム12又はミラー部14の表面)に接触することが可能である。プローブ22は、フレーム12の棒部材18a側に接触するプローブ22aと、フレーム12の棒部材18b側に接触するプローブ22bと、に分類される。
【0022】
尚、プローブ22は、棒部材18a,18bごとに一つずつ設けられていてもよいし、また、棒部材18a,18bに一対一で対応するのではなく、棒部材18a,18bの総数よりも少ない数(但し、トーションバー16aに対応した一つとトーションバー16bに対応した一つとの合計2つ以上の数)だけ設けられていてもよい。また、プローブ22が棒部材18a,18bの総数よりも少ない数だけ設けられているときは、少なくともトーションバー16a側の一つのプローブ22aとトーションバー16b側の一つのプローブ22bとは、可動装置によりミラースキャナ10の表面(図1での紙面)上でその表面に平行な方向にかつ複数の棒部材18a,18bが並ぶY軸方向に移動されることが可能である。
【0023】
調整装置20は、上記のプローブ22a,22b,24と、電源26a,26bと、スイッチ28a,28bと、マイクロコンピュータを主体に構成されたコントローラ30と、を有している。電源26a,26b及びスイッチ28a,28bは、プローブ22a,22bごとに設けられている。各電源26a,26bはそれぞれ、所定の定電圧を有している。電源26aと電源26bとは直列接続されている。スイッチ28aは、一端が電源26aの正側に接続されかつ他端がプローブ22aに接続されている。また、スイッチ28bは、一端が電源26bの負側に接続されかつ他端がプローブ22bに接続されている。プローブ24は、直列接続された電源26aと電源26bとの中間点に接続されている。
【0024】
各スイッチ28a,28bはそれぞれ、コントローラ30に接続されており、コントローラ30によりオン/オフ制御される。コントローラ30は、溶断すべきでない棒部材18a,18bに対応したスイッチ28a,28bのオフを維持させ、溶断すべき棒部材18a,18bに対応したスイッチ28a,28bをオンさせる。尚、互いに線対称の位置にある棒部材18aと棒部材18bとのスイッチ28a,28bは、互いに同期してオン/オフされる。また、コントローラ30は、プローブ22a,22bとフレーム12及びミラー部14との接触を制御する。コントローラ30は、昇降装置に対して指令を発することで、フレーム12及びミラー部14と接触させるべきプローブ22a,22b,24を下動させる。
【0025】
スイッチ28aがオンされかつそのスイッチ28aに対応する棒部材18aにプローブ22aが接触していると、電源26aからそのスイッチ28aを介してその棒部材18aの両端に電圧が印加される。また、スイッチ28bがオンされかつそのスイッチ28bに対応する棒部材18bにプローブ22bが接触していると、電源26bからそのスイッチ28bを介してその棒部材18bの両端に電圧が印加される。棒部材18a,18bの両端に電圧が印加されると、その棒部材18a,18bに電流が流れてその棒部材18a,18bが通電加熱される。この場合、その棒部材18a,18bが一部分で溶断し、ミラー部14側とフレーム12側とに分断される。
【0026】
トーションバー16a,16bを構成するすべての棒部材18a,18bのうちの一部の棒部材18a,18bが溶断すると、その溶断前に比べて、トーションバー16a,16b全体としては柔らかくなり、トーションバー16a,16bのバネ定数が変化する。トーションバー16a,16bのバネ定数が変化すると、ミラースキャナ10の共振周波数が変化する。従って、本実施例のミラースキャナ10の構造によれば、トーションバー16a,16bそれぞれをY軸方向に並列配置された複数本の棒部材18a,18bからなるものとしたうえで、それら複数本の棒部材18a,18bのうちの一部を溶断することで、ミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能である。
【0027】
図3は、本実施例の調整装置20においてコントローラ30が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。本実施例において、コントローラ30は、ミラースキャナ10が形成されてトーションバー16a,16bのすべての棒部材18a,18bがフレーム12とミラー部14とを繋いだ状態に形成された後、その形成したミラースキャナ10の特性(少なくとも共振周波数を含む特性)をテスト工程で測定する(ステップ100)。このテスト工程では、少なくとも上記したプローブ22a,22b,24を用いた測定が行われる。
【0028】
コントローラ30は、ミラースキャナ10の共振周波数の目標値を予め記憶していると共に、ミラースキャナ10の共振周波数が目標値から乖離しているときのその共振周波数と目標値との差に応じてトーションバー16a,16bの何れの棒部材18a,18bを溶断すれば共振周波数が目標値に略一致するか否かの情報を格納している。尚、ミラースキャナ10の形成・製造は、コントローラ30による上記のテスト工程での特性測定が行われる前において共振周波数が目標値以上となるように行われることが望ましい。
【0029】
コントローラ30は、上記の如くテスト工程で測定したミラースキャナ10の実際の共振周波数をその予め記憶している目標値と比較する(ステップ102)。そして、その比較結果に基づいて、共振周波数を目標値と略一致させるために、トーションバー16a,16bの何れの棒部材18a,18bを溶断すべきかを判定する(ステップ104)。尚、溶断すべきトーションバー16a側の棒部材18aとトーションバー16b側の棒部材18bとは、互いに線対称の位置にある関係に設定されることとすればよい。また、溶断すべき棒部材18a,18bは、実際の共振周波数と目標値との差に応じた本数又は箇所に設定されることとしてもよい。例えば、溶断すべき棒部材18a,18bの数が、上記の差が大きくなるに従って、Y軸方向に並列に並んだ棒部材18a,18bの両端から順に増えるように設定することとしてもよい。
【0030】
コントローラ30は、上記の如く溶断すべき棒部材18a,18bを判定すると、その棒部材18a,18bにプローブ22a,22bを接触させるべく昇降装置に対して指令を行うと共に、その棒部材18a,18bに対応するスイッチ28a,28bをオンさせる(ステップ106)。かかる処理が行われると、棒部材18a,18bが溶断されることで、トーションバー16a,16bのバネ定数が変化してミラースキャナ10の共振周波数が目標値に略一致する。
【0031】
このように、本実施例によれば、構造形成後のミラースキャナ10の特性をテスト工程にて測定した後に、トーションバー16a,16bのうちの適当な棒部材18a,18bにプローブ22a,22bを接触させてその棒部材18a,18bの両端に電圧を印加しその棒部材18a,18bを溶断することで、ミラースキャナ10の共振周波数を調整することができる。
【0032】
かかる本実施例のミラースキャナ10の共振周波数の調整手法によれば、その共振周波数の調整が、トーションバー16a,16bを構成する複数本の棒部材18a,18bのうちの一部を溶断することにより実現され、各棒部材18a,18bの溶断有無により実現される。このため、トーションバー16a,16b全体に対して溶断する棒部材18a,18bの本数又は箇所を適宜設定することで、ミラースキャナ10の共振周波数の調整を木目細かく実施することができ、その結果、レーザ除去による調整手法に比べて、ミラースキャナ10の共振周波数の調整を精度良いものとすることができる。
【0033】
また、本実施例のミラースキャナ10の共振周波数の調整手法によれば、レーザ除去による調整手法と異なり、レーザ照射装置やレーザ照射工程は不要である。このため、ミラースキャナ10の共振周波数を調整するために必要な費用の増大を抑制することができると共に、ミラースキャナ10を製造して共振周波数を調整するうえでのスループットを向上させることができる。
【0034】
尚、上記の実施例においては、トーションバー16a,16bの棒部材18a,18bが特許請求の範囲に記載した「調整部」に相当している。
【0035】
ところで、上記の実施例においては、ミラースキャナ10の共振周波数の調整のために、トーションバー16a,16bの棒部材18a,18bを溶断するが、その棒部材18a,18bの溶断箇所は、フレーム12に近い箇所ではなく、ミラー部14にできるだけ近い箇所であることが望ましい。これは、溶断により分断された棒部材18の一部がミラー部14の一部となってミラースキャナ10の共振時にそのミラー部14の揺動に影響を与えてミラースキャナ10の共振周波数が大きく変動するのを防止するためである。
【0036】
また、上記の実施例においては、トーションバー16a,16bの各棒部材18a,18bがすべて同じ形状を有し、そのフレーム12の側壁とミラー部14の側壁との間のX軸方向長さが互いに同じであるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図4及び図5に示す如く、トーションバー16a,16bの各棒部材18a,18bの、フレーム12の側壁とミラー部14の側壁との間のX軸方向長さが他のものと異なるものを含んでいてもよい。
【0037】
例えば、図4に示す如く、X軸方向に平行に延びかつY軸方向に並列に並んだ複数の棒部材18a,18bのうち、両端寄りのもののX軸方向長さを短くし、中央寄りのもののX軸方向長さを長くすることとしてもよいし、また、図5に示す如く、X軸方向に平行に延びかつY軸方向に並列に並んだ複数の棒部材18a,18bのうち、両端寄りのもののX軸方向長さを長くし、中央寄りのもののX軸方向長さを短くすることとしてもよい。
【0038】
かかる変形例の構造においては、トーションバー16a,16bを構成する並列接続された複数本の棒部材18a,18bの抵抗はX軸方向長さの短いものから長いものにかけて順に大きくなるので、プローブ22aがフレーム12の棒部材18a側の一点に接触しかつプローブ22bがフレーム12の棒部材18b側の一点に接触すると共に、プローブ24がミラー部14に接触しつつ、スイッチ28a,28bが共にオンされることで、棒部材18a,18bの両端に定電圧が印加された場合に、X軸方向長さの短い棒部材18a,18bからX軸方向長さの長い棒部材18a,18bにかけて順に溶断が生ずることとなる。従って、この変形例によれば、フレーム12又はミラー部14に接触し得る各プローブ22a,22b,24を、可動装置によりミラースキャナ10の表面上で複数本の棒部材18a,18bが並ぶY軸方向に移動させることが不要であると共に、棒部材18a,18bをX軸方向長さの短いものから優先的に溶断させることでミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能であり、ミラースキャナ10の共振周波数の調整を簡素な構成で実現することができる。
【0039】
尚、X軸方向に平行に延びかつY軸方向に並列に並んだ複数の棒部材18a,18bのうち、両端寄りのもののX軸方向長さを短くし、中央寄りのもののX軸方向長さを長くするうえでは、図4に示す如く、フレーム12の、ミラー部14に対向する側壁をテーパ状に形成することとしてもよいが、逆に、フレーム12の、ミラー部14に対向する側壁を全体として平面状に形成しつつ、ミラー部14の、フレーム12に対向する側壁をテーパ状に形成することとしてもよい。例えば、ミラー部14を上方から見てくびれが生ずるように形成することとすればよい。
【0040】
また同様に、X軸方向に平行に延びかつY軸方向に並列に並んだ複数の棒部材18a,18bのうち、両端寄りのもののX軸方向長さを長くし、中央寄りのもののX軸方向長さを短くするうえでは、図5に示す如く、フレーム12の、ミラー部14に対向する側壁をテーパ状に形成することとしてもよいが、逆に、フレーム12の、ミラー部14に対向する側壁を全体として平面状に形成しつつ、ミラー部14の、フレーム12に対向する側壁をテーパ状に形成することとしてもよい。例えば、ミラー部14を上方から見て六角形状や円形状,楕円形状に形成することとすればよい。
【0041】
また、上記の実施例においては、トーションバー16a,16bの棒部材18a,18bを、隣接する棒部材18a,18bに対して等間隔に配置することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、溶断される棒部材18a,18bの数が並列に並んだ棒部材18a,18bの両端から順に増える毎にミラースキャナ10の共振周波数がリニアに変化するように、棒部材18a,18bの間隔を設定することとしてもよい。
【0042】
また、上記の実施例においては、ミラースキャナ10の共振周波数の調整をそのミラースキャナ10の形成後のテスト工程においてその特性を測定した後に行うと共に、その共振周波数調整のために、ミラースキャナ10の構造を、トーションバー16a,16bそれぞれをY軸方向に並列配置された複数本の棒部材18a,18bからなるものとしたうえで、それら複数本の棒部材18a,18bのうちの一部を溶断して、トーションバー16a,16bを構成する棒部材18a,18bの本数を変更し得るものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
例えば、図6に示す如く、ミラースキャナ10の構造を、トーションバー16a,16bそれぞれを一本の棒部材100a,100bからなりかつその棒部材100a,100bをフレーム12に対して支持する支持部102a,102bを棒部材100a,100bの延びる方向に並んだ複数本の棒部材104a,104bからなるものとしたうえで、それら複数本の棒部材104a,104bのうちの一部をプローブ接触及びスイッチオンにより溶断することで、トーションバー16a,16bの長さを変更し得るものとしてもよい。
【0044】
かかる変形例の構造においては、支持部102a,102bの棒部材104a,104bが溶断すると、その溶断前に比べて、トーションバー16a,16bの長さが長くので、トーションバー16a,16bのバネ定数が変化する。従って、支持部102a,102bの棒部材104a,104bの溶断によりトーションバー16a,16bの長さを調整することで、ミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能である。また、ミラースキャナ10の共振周波数の調整が、支持部102a,102bの複数本の棒部材104a,104bのうちの一部を溶断することにより実現され、各棒部材104a,104bの溶断有無により実現されるので、支持部102a,102b全体に対して溶断する棒部材104a,104bの本数又は箇所を適宜設定することで、ミラースキャナ10の共振周波数の調整を木目細かく実施することができ、その結果、レーザ除去による調整手法に比べてミラースキャナ10の共振周波数の調整を精度良いものとすることができる。更に、かかる調整手法によれば、レーザ除去による調整手法と異なり、レーザ照射装置やレーザ照射工程は不要であるので、ミラースキャナ10の共振周波数を調整するために必要な費用の増大を抑制することが可能であると共に、ミラースキャナ10を製造して共振周波数を調整するうえでのスループットを向上させることが可能である。
【0045】
尚、上記の変形例においては、図6に示す如く、支持部102a,102bを構成する複数本の棒部材104a,104bがすべて同じ形状を有し、フレーム12の側壁とトーションバー16a,16bの側壁との間の長さが互いに同じであるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図7に示す如く、支持部102a,102bの棒部材104a,104bの、フレーム12の側壁とトーションバー16a,16bの側壁との間の長さが他のものと異なるものを含んでいてもよい。
【0046】
例えば、並列に並んだ複数の棒部材104a,104bのうち、ミラー部14寄りのものの長さを短くし、ミラー部14から遠ざかるものの長さを長くすることとしてもよい。かかる構造においては、プローブ110a,112aがフレーム12の棒部材104a側の点に接触しかつプローブ114aがトーションバー16aに接触しつつ、適宜スイッチオンが実行されることで、棒部材104aの両端に定電圧が印加された場合に、長さの短い棒部材104aから長さの長い棒部材104aにかけて順に溶断が生ずることとなる。同様に、プローブ110b,112bがフレーム12の棒部材104b側の点に接触しかつプローブ114bがトーションバー16bに接触しつつ、適宜スイッチオンが実行されることで、棒部材104bの両端に定電圧が印加された場合に、長さの短い棒部材104bから長さの長い棒部材104baにかけて順に溶断が生ずることとなる。従って、この変形例によれば、フレーム12又はトーションバー16a,16bに接触し得る各プローブ110a,110b,112a,112b,114a,114bを、可動装置によりミラースキャナ10の表面上で複数本の棒部材104a,104bが並ぶ方向に移動させることが不要であると共に、棒部材104a,104bを長さの短いものから優先的に溶断させることでミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能である。
【0047】
また、上記の実施例においては、ミラースキャナ10の共振周波数の調整をそのミラースキャナ10の形成後のテスト工程においてその特性を測定した後に行うと共に、その共振周波数調整のために、ミラースキャナ10の構造をトーションバー16a,16bのバネ定数を変更し得るものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、フレーム12に対してトーションバー16a,16bにより支持されるミラー部14に、質量調整を行うための溶断可能な質量調整部200を設けることとして、ミラースキャナ10の構造をミラー部14の質量を変更し得るものとしてもよい。
【0048】
例えば、図8(A)に示す如く、質量調整部200を、ミラー部14の側壁とフレーム12の側壁との間で両者の対向方向に延びる複数本(図8(A)では5本)の延在部202からなるものとし、各延在部202それぞれを、溶断可能な溶断部202aとその溶断部202aの径よりも大きな径を有する大径部202bとが延在方向に交互に繰り返されるようなものとし、かつ、その大径部202bとミラー部14との間に定電流を流通させるものとしてもよい。
【0049】
かかる変形例の構造においては、適宜、図8(B)に示す如く調整回路のプローブ204が大径部202bとミラー部14とに接触しつつ、スイッチ206がオンされることで、延在部202に定電流が流通された場合に、その溶断部202aが一部分で溶断する。溶断部202aが溶断すると、その溶断前に比べて、ミラー部14の質量が減少するので、ミラースキャナ10の共振周波数が変化する。従って、この変形例によれば、ミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能である。
【0050】
尚、上記の変形例においては、各延在部202の有する複数の溶断部202aのうち、ミラー部14に近いものほど断面積(幅)を大きくし、ミラー部14から遠いものほど断面積(幅)を小さくすることが好ましい。これは、ある一の溶断部202aが溶断されるべきときに、その一の溶断部202aよりもミラー部14に近い側に存在する溶断部202aが、溶断させるべき一の溶断部202aよりも溶断し易くなるのを防止するためである。
【0051】
また、図9(A)に示す如く、質量調整部200を、ミラー部14の側壁とフレーム12の側壁との間で該側壁に平行に延びる複数本(図9(A)では3本)の延在部210をその両端部で連結部212によりミラー部14に連結させるものとし、隣接する延在部210間で連結部212を溶断させるものとしてもよい。
【0052】
かかる変形例の構造においては、適宜、図9(B)に示す如く調整回路のプローブ214が延在部214とミラー部14とに接触しつつ、スイッチ216がオンされることで、連結部212に定電流が流通された場合に、その連結部212が一部分で溶断する。連結部212が溶断すると、その溶断前に比べて、ミラー部14の質量が減少するので、ミラースキャナ10の共振周波数が変化する。従って、この変形例によれば、ミラースキャナ10の共振周波数を調整することが可能である。
【0053】
尚、上記の変形例においては、隣接する延在部210間の各連結部212のうち、ミラー部14に近いものほど断面積(幅)を大きくし、ミラー部14から遠いものほど断面積(幅)を小さくすることが好ましい。これは、ある一の溶断部202aが溶断されるべきときに、その一の溶断部202aよりもミラー部14に近い側に存在する溶断部202aが、溶断させるべき一の溶断部202aよりも溶断し易くなるのを防止するためである。また、かかる構造においては、図8に示す構造と比べて、ミラースキャナ10の共振周波数の調整のために溶断が必要な箇所を少なくすることができるので、ミラースキャナ10の共振周波数の調整を簡素な構成で実現することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 ミラースキャナ
12 フレーム
14 ミラー部
16,16a,16b トーションバー
18a,18b 棒部材
20 調整装置
22,22a,22b,24 プローブ
30 コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
光源からの光を反射するミラー部と、
前記フレームと前記ミラー部とを連結して該ミラー部を該フレームに対して支持するトーションバーと、
前記トーションバーに平行に設けられて前記フレームと前記ミラー部とを連結する複数本の溶断可能なバーからなる調整部と、
を備えることを特徴とするミラースキャナの構造。
【請求項2】
前記複数本の溶断可能なバーは、前記トーションバーを構成することを特徴とする請求項1記載のミラースキャナの構造。
【請求項3】
前記複数本の溶断可能なバーは、ミラースキャナの共振周波数の実値と目標値との差に応じた本数又は箇所だけ、通電加熱により一部分で溶断されることを特徴とする請求項1又は2記載のミラースキャナの構造。
【請求項4】
フレームと、光源からの光を反射するミラー部と、前記フレームと前記ミラー部とを連結して該ミラー部を該フレームに対して支持するトーションバーと、を備えるミラースキャナを製造する方法であって、
前記ミラースキャナの形成後のテスト工程において該ミラースキャナの特性が測定された後に該ミラースキャナの共振周波数を調整することを特徴とするミラースキャナの製造方法。
【請求項5】
前記ミラースキャナは、前記トーションバーの寸法調整又は前記ミラー部の質量調整により前記共振周波数の調整を実現する溶断可能な調整部を有し、
前記共振周波数の調整は、前記テスト工程において前記共振周波数が測定された後、前記調整部の溶断箇所が決定されかつ該溶断箇所が通電加熱により溶断されることにより実現されることを特徴とする請求項4記載のミラースキャナの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−3187(P2013−3187A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131011(P2011−131011)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】