説明

ミラー着脱装置

【課題】照明光学系のミラーに直接触れることなくミラーが交換可能なミラー着脱装置を提供する。
【解決手段】平面ミラー4に取り付けられた複数の支持部6を支持機構7を介して筐体9に固定し、支持機構7によりそのミラー曲率を調整するミラー曲率調整機構5の平面ミラー4を着脱するミラー着脱装置1であって、平面ミラー4の表面部を覆う表部材2と、平面ミラー4の裏面部を覆う裏部材3とで形成され、表面部材2及び裏部材3により平面ミラー4を覆った状態で支持機構7に対して着脱可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶露光装置用の照明光学系のミラーの着脱を行うミラー着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶露光装置用の照明光学系としては、鏡自体のひずみ曲収差の補正や、マスクの伸縮やワークのうねりに対応するため、コリメーションミラー(凹面鏡)や平面鏡のような反射鏡の曲率を手動(送りねじ等)又は自動(圧電素子等)で局部的に変化させる機構が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、コリメーションミラーのミラー裏面の中央部分を固定支持すると共に、各辺部分をブラケットにより移動自在に支持し、アライメント用カメラを用いてアライメントマークを観測し、該ブラケットをモータによって雄ねじを介して変位させることで、コリメーションミラーを変位させ、デクリネーション角を露光のたびに変化さるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−304940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように使用される照明光学系のミラーは、厚さ15〜25mmのガラス上面にアルミを蒸着し、さらにその上面に汚れ防止の為にSio皮膜をスパッタ処理により蒸着させたものである。このミラーの曲率を変えるために、過剰な曲げ応力が作用した場合にはミラー自体がひび割れてしまう場合があり、その場合にはミラー交換が必要となる。また、ミラー表面が汚れた場合に、多少の汚れであれば拭取ることも可能であるが、汚れが酷い場合にはミラー毎交換する必要がある。これらのように発生するミラー交換を、ミラーに直接触れながら行うと、汚れや傷の原因ともなりうるし、ひびや割れの原因ともなる。また、ミラーの取り付けられている筐体ごと取り外して交換することも考えられるが、かなり大掛かりな作業となる。
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、照明光学系のミラーに直接触れることなくミラーが交換可能なミラー着脱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 平面ミラーに取り付けられた複数の支持部を支持機構を介して筐体に固定し、前記支持機構によりそのミラー曲率を調整するミラー曲率調整機構の前記平面ミラーを着脱するミラー着脱装置であって、
前記平面ミラーの表面部を覆う表部材と、
前記平面ミラーの裏面部を覆う裏部材とで形成され、
前記表面部材及び裏部材により前記平面ミラーを覆った状態で前記支持機構に対して着脱可能に形成したことを特徴とするミラー着脱装置。
(2) 前記裏部材が2つ以上に分割され、前記支持機構の間隔より分割された前記裏部材の幅が小さいことを特徴とする請求項1記載のミラー着脱装置。
(3) 前記表部材及び前記裏部材の前記平面ミラーと対応する周面に、弾性を有する固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のミラー着脱装置。
(4) 前記表部材側の前記固定部材及び前記裏部材側の前記固定部材の何れか一方の断面が略L字状で、他方の断面が矩形状であることを特徴とする請求項3に記載のミラー着脱装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のミラー着脱装置によれば、ミラーを直接触れることなくミラー交換が可能な為、ミラー交換時のミラーの汚れやひび割れを無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の照明光学系を示す図である。
【図2】(A)は本発明の平面ミラーを示す図であり、(B)は(A)のC−C断面を示す図である。
【図3】本発明の平面ミラー支持構造の支持機構を示す図である。
【図4】(A)は本発明のミラー着脱装置を組み立てた状態での裏部材側から見た状態を示す図であり、(B)は(A)のD−D断面を示す図である。
【図5】(A)は本発明のミラー着脱装置の表部材を示す図であり、(B)は(A)のE−E断面を示す図である。
【図6】(A)は本発明のミラー着脱装置の裏部材を示す図であり、(B)は(A)のF−F断面を示す図である
【図7】本発明のミラー着脱装置毎筐体に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るミラー着脱装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
まず、図1に示すように、本実施形態に係るミラー着脱装置1が用いられる照明光学系40は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ41と、この高圧水銀ランプ41から照射された光を集光するリフレクタ42と、光路ELの向きを変えるための平面ミラー43と、光路ELを開閉制御する露光制御用シャッターユニット44と、この露光制御用シャッターユニット44の下流側に配置され、リフレクタ42で集光された光を照射領域においてできるだけ均一な照度分布となるようにして出射するオプティカルインテグレータ45と、高圧水銀ランプ41からの光を平行光として照射するコリメーションミラー46と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー4と、を備える。なお、オプティカルインテグレータ45と露光面との間には、DUVカットフィルタ、偏光フィルタ、バンドパスフィルタが配置されてもよい(図示省略)。また、光源31の高圧水銀ランプは、複数のランプを用いたマルチランプによって構成されてもよく、或いは、LEDによって構成されてもよい。
【0011】
そして、露光時にその露光制御用シャッターユニット44が開制御されると、高圧水銀ランプ41から照射された光が、オプティカルインテグレータ45、コリメーションミラー46、平面ミラー4を介して、マスク支持機構に保持されるマスクM、ひいては基板(図示省略)の表面にパターン露光用の光として照射され、マスクMの露光パターンが基板上に露光転写される。
【0012】
図2示すように、平面ミラー4は、正面視矩形状に形成されたガラス素材からなる。その厚さは従来より薄い、3〜15mmのものが使用される。
そして、平面ミラー4の裏面の中央付近1箇所、及び周縁部8箇所には、支持部6が設けられている。この中央付近の支持部6は平面ミラー4の裏面に接着剤で固定され、周縁部の支持部6は平面ミラー4の表裏面を挟むようにして接着剤で固定されている。
この支持部6は、図3に示すように、複数の支持機構7により支持機構保持枠8に支持され、支持機構保持枠8は筐体9に支持され、筐体9は照明光学系の収められた箱体内部の上部に天吊りされている。
【0013】
また、支持部6には、雌ねじ部が設けられており、支持機構7の先端に設けられた雄ねじ部と結合される。支持部6と支持機構7の結合長さを変えることにより、平面ミラー4の曲率を変化させるが、±0・5deg以上の屈曲を許容するように形成されている。このように、支持部6と支持機構7により、ミラー曲率調整機構5が構成される。
支持部6と支持機構7の結合長さの調整は、駆動手段であるモータ(図示省略)を取り付けて行うことも可能であるし、手動で行うことも可能である。
【0014】
さらに、平面ミラー4の裏面には、複数の接触式センサが取り付けられている(図示省略)。この接触式センサによって平面ミラー4の変位量をセンシングしながら、支持機構保持枠8に設けられた各支持機構7のモータを駆動することにより、各支持機構7がその長さを変えて支持部6を直線的に移動させる。この移動により平面ミラー4は、その曲率を局部的に補正し、平面ミラー4のデクリネーション角を補正することにより、平面ミラー4自体のひずみ曲収差の補正や、マスクMの伸縮やワークのうねり等に起因する焼付けパターンの歪に対応するができる。
【0015】
図4に示すように、ミラー曲率調整機構5の平面ミラー4を着脱するミラー着脱装置1は、平面ミラー4のミラー面(反射面)である表面部を覆う表部材2と、平面ミラー4の裏面部を覆う裏部材3とで形成されている。
表部材2は、図5に示すように、平面ミラー4より大きく、中心部が開口する略正方形状の枠体21とされている。各々の辺の略中間位置には補強部材26が設けられている。
また、表部材2の平面ミラー4との当接面周囲には、平面ミラー4の位置決めを行う断面略L字状の固定部材22、23が設けられている。この固定部材22,23は弾性材が使用され、例えば樹脂材料であるPEEKやシリコン等が使用される。この固定部材22、23は、平面ミラー4の支持部6を避けるように設けられている。
さらに、表面部材2の固定部材22、23より外側面には、裏部材3に固定するためのボルト穴25が設けられている。
【0016】
裏部材3は、図6に示すように、2つに分割された本体31で形成されている。この本体31は、長方形状部31aに2つの羽部31bを取り付けた形状とされている。そして、この本体31の幅aが支持機構7の間隔bより小さくなるように形成されている。こうすることで、支持機構7が取り付けられた状態でも、支持機構7の間から裏部材31を取り出すことが可能となる。これは、裏部材3の本体31を中心側にスライドさせ、ガラスに取り付けられた支持機構7を避けながら平面ミラー4と支持機構保持枠8間の上下左右から引き出すことにより行われる。
【0017】
また、裏面部材3の平面ミラー4との当接面周囲には、断面矩形状の固定部材32、33が設けられている。この固定部材32、33は、表部材2の固定部材22、23と対応する位置に設けられており、この表面部材2の固定部材22、23に当接することにより平面ミラー4の位置決めが行われる。
固定部材32、33の材質等は、表部材2と同様とされる。
さらに、裏面部材3の固定部材32、33より外側面には表面部材2に固定する為のボルト穴35が設けられている。
【0018】
ミラー着脱装置1による平面ミラー4の着脱について説明する。
まず、表部材2上に平面ミラー4を載置する。この時に固定部材22、23により位置決めが行われる。又、弾性部材により形成されているため、ミラー面に傷が付くことは無い。
【0019】
そして、裏部材3を表部材2に位置決めし、取り付けねじ10により表部材2のボルト穴25と裏部材3のボルト穴35を螺合することにより表部材2と裏部材3を固定する。これにより平面ミラー4は表部材2の固定部材22、33と裏部材3の固定部材32,33に挟まれた状態でガタ無く固定される。
【0020】
その後、図7に示すように、平面ミラー4の支持部6に設けられた雌ねじ部に、支持機構7の先端に設けられた雄ねじ部を螺着することにより、平面ミラー4が支持機構7に固定される。
【0021】
この後、ミラー着脱装置1を取り外すが、取り付けねじ10を外し、表部材2を外し、裏部材3をスライドさせて外すことにより取り外しが行われる。こうすることで、ミラー面に触れることなく、平面ミラー4の着脱が可能となる。
【0022】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0023】
本発明のミラー着脱装置1は、図1で示す所のコリメーションミラー46や平面ミラー43等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ミラー着脱装置
2 表部材(第1部材)
3 裏部材(第2部材)
4 平面ミラー
5 ミラー曲率調整機構
6 支持部
7 支持機構
8 支持機構保持枠
9 筐体
10 取り付けねじ
M マスク
EL 光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面ミラーに取り付けられた複数の支持部を支持機構を介して筐体に固定し、前記支持機構によりそのミラー曲率を調整するミラー曲率調整機構の前記平面ミラーを着脱するミラー着脱装置であって、
前記平面ミラーの表面部を覆う表部材と、
前記平面ミラーの裏面部を覆う裏部材とで形成され、
前記表面部材及び裏部材により前記平面ミラーを覆った状態で前記支持機構に対して着脱可能に形成したことを特徴とするミラー着脱装置。
【請求項2】
前記裏部材が2つ以上に分割され、前記支持機構の間隔より分割された前記裏部材の幅が小さいことを特徴とする請求項1記載のミラー着脱装置。
【請求項3】
前記表部材及び前記裏部材の前記平面ミラーと対応する周面に、弾性を有する固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のミラー着脱装置。
【請求項4】
前記表部材側の前記固定部材及び前記裏部材側の前記固定部材の何れか一方の断面が略L字状で、他方の断面が矩形状であることを特徴とする請求項3に記載のミラー着脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112997(P2011−112997A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271216(P2009−271216)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】