説明

メソポーラス相を含む導電性有機−無機ハイブリッド材料、膜、電極および燃料電池

【課題】優れた性能を示しながら、導電性官能基を備えている場合、燃料電池のような電気化学的装置において使用することができる、メソポーラス材料を提供すること。
【解決手段】 無機相(その中の壁面が開放細孔性の構造化メソポーラスネットワークを形成している細孔を規定する)を含む導電性有機−無機ハイブリッド材料;
前記壁面に組み入れられ、無機相と共有結合的に結合した有機のオリゴマーまたはポリマー、および任意に、少なくとも1種の界面活性剤から成る、細孔の内部にある他の相を更に含む、前記材料;
無機相、導電性および/または親水性官能基を持つオリゴマーおよび有機ポリマーの少なくとも1種。
この材料を含む膜および電極。
少なくともそのような膜および/または少なくともそのような電極を含む燃料電池。
前記材料を調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラス無機相を含む導電性有機−無機ハイブリッド材料に関する。
【0002】
本発明は、さらに、前記材料を含む膜および電極に関する。
【0003】
本発明は、その上に、少なくともそのような1種の膜および/または少なくともそのような1種の電極を含む燃料電池に関係する。
【0004】
最後に、本発明は、該有機−無機ハイブリッド材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
一般的に言って、本発明の技術分野は、多孔質材料、より具体的にはメソポーラスと称される材料、の分野であると定義することができる。
【0006】
より具体的には、本発明は、PEMFC(高分子電解質膜燃料電池)タイプの材料のような、電気化学における(特に燃料電池における)使用を意図されたメソポーラス材料の分野の中に位置する。
【0007】
燃料電池の必須要素(たとえば、自動車分野および携帯電話分野で使われるそれら)の1つは、イオン交換膜であることが知られている。
【0008】
これらの膜は、燃料電池の中心を構成し、従って、良好なプロトン導電性能および反応ガス(H/O)に対する低い透過性を示すことが求められる。これらの膜を作る固体高分子電解質を構成し、電池の数千時間もの動作に耐えることを要求される材料の性質は、加水分解と酸化に対する本質的に化学的な安定性と抵抗性、高熱水に対する抵抗性、ならびにある種の機械的柔軟性である。
【0009】
過フッ化アイオノマー、特にNafion(登録商標)から調製される膜は、90℃以下の操作温度に対するこれらの必要条件を満足する。
【0010】
しかしながら、この温度は、そのような膜を含む燃料電池の自動車への組込みを可能にするには不十分である。これは、そのような組込みが電流/エネルギー変換収率、したがって燃料電池の効率を上げ、またラジエーターの体積を減らすことによって熱管理の制御を改善するという目的で、操作温度を100〜150℃の方へ上げることを前提とするからである。
【0011】
さらにまた、プロトン膜の導電効率は、媒体中の水の存在に強く関連している。100℃を超える温度で、水は膜から速やかに蒸発し、導電性は低下し、燃料透過性が上昇する。この温度では、この性能低下は、膜の劣化を伴う可能性がある。高温での、すなわち少なくとも100℃での、燃料電池における膜のドライアウトの問題を解決するために、最大限のメンテナンス、80〜100%相対湿度が必要であるが、それを外部の供給源によって実現することは困難である。
【0012】
他方、「その場での」吸湿性フィラーの挿入または成長がポリマー内での水の保持を促進し、このプロトン媒体(proton medium)の脱水過程を遅らせ、こうしてプロトンの導電性を確実にすることが知られている。この機能性フィラーは、その親水性のほかに、本来導電性を備えていて、こうして膜の性能を向上させる可能性がある。
【0013】
高温で燃料電池の膜の中の水の保持率を上げるために、多数の複合膜が、特に親水性無機ナノ粒子の発展によって、開発されてきた。これらの無機性ナノフィラーは、過フッ化スルホン化有機マトリックスの中で、あるいはまた、多芳香環化合物またはポリエーテルから成るマトリックスの中で、ゾル−ゲル法によって合成することができる。これらの膜は、現在、有機−無機ハイブリッド膜と呼ばれている。
【0014】
該無機性粒子は、
−導電性である。その場合、それらは、たとえば、タングストリン酸またはタングストケイ酸またはアンチモン酸のような、酸性タイプであるか、あるいは、リン酸ジルコニウムのような金属のリン酸塩またはホスホン酸塩タイプである(文献1〜7);
−金属およびメタロイド酸化物TiO、SiOなどのように非導電性であって、単純に親水性である(文献8〜19)。
【0015】
高温での水分管理を改善することの他に、燃料に関する膜の透過性の減少が、たとえばNafion(登録商標)タイプの従来の膜と比較して、これらの有機−無機ハイブリッド膜において示される。しかしながら、その熱的および化学的安定性は、それらが使用されたスルホン化有機高分子マトリックス中に内在しているので、限定されたままである。
【0016】
ロジエールらによって最近提出された研究(文献19)は、アミン基によるケイ酸塩ネットワークの機能化に関係しており、そのアミン基はイオン共有結合によって無機相と有機ポリマーの間の相互作用を向上させている。
【0017】
ポリ(イソシアノプロピル)シルセスキオキサン−有機ポリマー(PEG、PPO、PTMO)のコポリマー中への、またはグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)とテトラエトキシシランの共縮合物中への、それぞれ、ヘテロポリ酸の分散による連続的有機−無機ハイブリッドマトリックスの成長についての、ホンマら(文献20〜21)およびパークら(文献22)によって行なわれた研究は、熱的に安定な高分子鎖の使用についての新しい展望を開きつつある。
【0018】
無機ヘテロポリ酸は、その本質的導電性のために非常に魅力的であるけれども、低導電性または無導電性のポリマーへの高いフィラー濃度レベル(重量で30%〜70%)でのそれらの導入は、一般的に、それらの水への溶解度のせいで、電池の作動の間の随伴的、累進的浸出の問題を引き起こす。
【0019】
上述の複合材料または有機−無機ハイブリッド材料と平行して、メソポーラス材料、それは、最初は触媒作用があると想定され、言い換えれば、実際上は二酸化ケイ素およびアルミノケイ酸塩がある電気化学者たちの注目をひき始めた。
【0020】
メソポーラスと称される材料は、その構造内に、通常、2〜80nmのサイズ(ミクロポアのそれとマクロポアのそれの中間)の細孔を持つ固体であることが思い出されるであろう。
【0021】
通常、メソポーラス材料は、該細孔が一般的に細孔のサイズにおいて非常に幅広い分布でランダムに分散している、非晶性または結晶性金属酸化物である。
【0022】
構造化したメソポーラス材料(「メソ構造化(mesostructured)」材料と称される)は、それ自体は、メソ細孔の組織化された空間レイアウトを示す構造化細孔ネットワークに相当する。この細孔の空間周期性は、X線散乱図における少なくとも1本の低角度ピークの出現によって特徴づけられる。このピークは、一般的に2ないし50nmの間にある反復距離と関係している。メソ構造は、透過型電子顕微鏡によって確認される。
【0023】
この文脈において、ゾルーゲル法は、これらの組織化されたメソポーラス構成物の生成において、特に界面活性剤の組織化された分子システム(OMS)の内部での、または、ブロックコポリマーの組織化された高分子システム(OPS)の内部での、無機重合反応によって、革新的方法を提供する。OMSタイプのテンプレート化剤の存在下で、この穏やかな化学はまた、無機および有機金属の前駆体から始まって、有機−無機ハイブリッド材料と称される、一種の有機−無機タイプのメソ構造化ネットワークを合成することを可能にする。これらのメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料の性質は、有機および無機成分の化学的性質だけでなく、これらの2種の化学の間に出現しうる相乗効果にも依存する。
【0024】
これが、これらの材料がしばしば「多機能」材料と呼ばれる理由である。
【0025】
組織化の程度は、これらの2種の有機および無機化合物の性質によって、またこの配置の多重スケール割付によっても制御される。こうして、特異性を誘導することを可能にする化学官能基の、整ったメソポーラス構造への、「壁面」および細孔の両者への、組込みは、多様な用途(触媒反応、濾過、電気化学など)において大きな関心を呼ぶ(文献37)。
【0026】
コロマーら(文献23〜24)は、異なるサイズのシリカナノ粒子を共凝縮させることによって、または、コロイダルシリカの(pHで)制御された成長によって、非組織化メソポーラスシリカを調製した。彼らは、PEMFCのための酸性媒体中で、これらのシリカのプロトン導電性に対する、そのような細孔の影響を研究した。しかしながら、多孔性およびメソポーラスシリカの固化を生み出すのに必要である約500〜700℃での高熱処理がこの技術を純粋に無機のネットワークに限定する。
【0027】
対照的に、界面活性剤を用いることによって合成されるメソポーラスシリカの構造化は、高い熱処理を必要とせず、したがって、ネットワークの成長の間の有機機能化を可能にする(文献25)。さらに、これらの材料の構造は、しばしば明確に定められている。この組織化は、高い比表面積と関連して、親水ネットワークを通してのプロトンの導電を改善することにおいて重要な役割を果たす。
【0028】
ミナミら(文献26〜28)は、導電率および細孔率への細孔寸法および比表面積の影響を研究して、このタイプのシリカに硫黄またはリン酸を含浸させた。導電率に関して得られた性質は、非常に大きな関心を呼んでおり、2〜3×l0−1S/cmのオーダーである。
【0029】
さらに、細孔内にSOH(文献29〜31)またはP0(文献32)官能基をもつ、異なるメソ構造化有機−無機ハイブリッドシリカは、基本的に触媒用途のために開発されたにもかかわらず、燃料電池に対して興味ある可能性を提供する。カリアギンら(文献33)は、電気化学的分野で研究しているが、このタイプの化合物における導電率および水吸着量の測定を行なった。これらのシリカは、全体的に見て、際だった親水性を示し、導電率の測定値は、非最適化システムに関して興味あるものであり、80℃および100%相対湿度で10S/cmのオーダーである。
【0030】
OMSおよびOPSによって構築されたメソ構造化メソポーラスシリカのような、電気化学装置中のメソポーラス材料の可能な使用に関する、上記の最近の文献参照は、燃料電池における直接の応用を導き出すことができない。なぜなら、それらの文献に記載され、言及されている材料を膜の形に変えることが不可能であるからである。
【0031】
多くの論文は、酸化物に共有結合的に結合され、メソポーラスネットワークの壁面に取り込まれた高分子の有機鎖の組込みに関係する。特に、ウエイら(文献34)は、界面活性剤(ジベンゾイル酒石酸)の存在下で、シリル化したポリマーとTEOSからポリスチレン−SiOタイプのメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料を合成した。ロイら(文献35)またはスタインら(文献36)のような、他の著者は、その壁面が1〜4単位の組込まれたエチレン鎖を含むメソ構造化ケイ酸塩ネットワークの構築を記載した。やはり、これらの材料も、膜として形成されえないし、導電性をまったく有していない。
(文献1) G.アルベルティ(Alberti)およびM.カショーラ(Casciola)「固体プロトンコンダクター、現在の主な用途および将来の展望」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State lonics)2001年、145巻、3〜16頁。
(文献2) B.ボネット(Bonnet)、D.J.ジョーンズ(Jones)、J.ロジエール(Roziere)、L.チカヤ(Tchicaya)、G.アルベルチ(Alberti)、M.カショーラ(Casciola)、L.マッシネッリ(Massinelli)、B.バウア(Bauer)、A.ペライオ(Peraio)およびE.ラムンニ(Ramunni)「中温燃料電池のためのハイブリッド有機−無機膜」、ジャーナル・オブ・ニュー・マテリアルズ・フォア・エレクトロケミカル・システムズ(Journal of New Materials for Electrochemical Systems)、2000年、3巻、87〜92頁。
(文献3) P.ジェノヴァ−ジミトロヴァ(Genova−Dimitrova)、B.バラディ(Baradie)、D.フォスカッロ(Foscallo)、C.ポアンシニョン(Poinsignon)およびJ. Y.サンチェス(Sanchez)「プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)のためのアイオノマー膜:ホスファトアンチオン酸と会合したスルホン化ポリスルホン」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、2001年、185巻、59〜71頁。
(文献4) N.ミヤケ(Miyake)、J.S.ウエインライト(Wainright)およびR.F.サヴィネル(Savinell)、「プロトン電解質膜燃料電池用途のための、ゾル−ゲル誘導Nafion/シリカハイブリッド膜の評価−I.プロトン導電性と含水量」、ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサイアティ(Journal of the Electrochemical Society)2001年、148巻、A898〜A904頁。
(文献5) C.ヤング(Yang)、S.スリンヴァサン(Srinivasan)、A.S.アリコ(Arico)、P.クレティ(Creti)、V.バグリオ(Baglio)およびV.アントヌッチ(Antonucci)、「高温での直接メタノール燃料電池作動のための組成物Nafion/リン酸ジルコニウム膜」、エレクトロケミカル・アンド・ソリッド−ステート・レターズ(Electrochemical & Solid−State Letters)2001年、4巻、A31〜A34頁。
(文献6) J.M.フェントン(Fenton),H.R.クンズ(Kunz)およびJ.−C.リン(Lin)、「燃料電池のためのイオン複合膜を使用する、改良膜電極集合体」、2002年、国際特許第0223646号明細書。
(文献7) O.J.マーフィ(Murphy)およびA.J.シザー(Cisar)、「電気化学装置のための使用に適した複合膜」、2000年、国際特許第00063995号明細書。
(文献8) K.T.アジェミアン(Adjemian)、S.J.リー(Lee)、S.スリニヴァサン(Srinivasan),J.ベンジガー( Benziger)およびA.B.ボカースリ(Bocarsly)「80〜140℃でのプロトン交換燃料電池作動のための酸化ケイ素Nafion複合膜」、ジャ−ナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサイアティ(Journal of the Electrochemical Society)2002年、149巻、A256〜A261頁。
(文献9) B.バラディ(Baradie)、J.P.ドデレ(Dodelet)およびD.グエイ(Guay)、「高分子燃料電池に対する潜在的用途をもつハイブリッド・Nafion(R)−無機膜」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリ(Journal of Electroanalytical Chemistry)2000年、489巻、101〜105頁。
(文献10) M.A.ハーマー(Harmer)、Q.スン(Sun)、A.J.ヴェガ(Vega)、W.E.ファーネス(Farneth)、A.ハイデカム(Heidekum)およびW.F.ヘルダーリッヒ(Hoelderich)「Nafion樹脂−シリカナノコンポジット固体酸触媒。ミクロ構造−処理工程−性状相互関係」、グリーン・ケミストリ(Green Chemistry)2000年、2巻、7〜14頁)。
(文献11) D.J.ジョーンズ(Jones)およびJ.ロジエーレ(Roziere)、「燃料電池用途のためのポリベンズイミダゾールおよびポリエーテルケトンの機能化における最近の進歩」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)2001年、185巻、41〜58頁。
(文献12) K.A.マウリツ(Mauritz)およびJ.T.ペイン(Payne)「オルトケイ酸テトラエチルに対する、塩基触媒による現場ゾルーゲル法による[ペルフルオロスルホン酸塩イオノマー]/ケイ酸塩ハイブリッド膜」、ジャーナル・オブ・メンブレン・サイエンス(Journal of Membrane Science)2000年、168巻、39〜51頁。
(文献13) S.P.ヌーニシュ(Nunes)およびR.A.ゾウピ(Zoppi)「溶液からのゾル−ゲル反応によるペルフルオロスルホン酸アイオノマーと酸化ケイ素のハイブリッドの電気化学的インピーダンス研究」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリ(Journal of Electroanalytical Chemistry)1998年、445巻、39〜45頁。
(文献14) E.ペレド(Peled)、T.ダヴデヴァニ(Duvdevani)、A.メルマン(Melman)およびA.アハロン(Aharon)「プロトン導電性膜をもつ燃料電池」、2001年、国際特許第0154216号明細書。
(文献15) P.スタイティ(Staiti)「シリカ−ポリベンズイミダゾールマトリックスに固定されたシリコタングステン酸から成るプロトン導電性膜」、ジャーナル・オブ・ニュー・マテリアルズ・フォア・エレクトロケミカル・システムズ(Journal of New Materials for Electrochemical Systems)、2001年4巻、181〜186頁。
(文献16) H.T.ワン(Wang)、B.A.ホルムバーグ(Holmberg)、L.M.ファン(Huang)、Z.B.ワン(Wang)、A.ミトラ(Mitra)、J.M.ノーベック(Norbeck)およびY.S.ヤン(Yan)「Nafion−二機能性シリカ複合性プロトン導電性膜」、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリ(Journal of Materials Chemistry)2002年、12巻、834〜837頁)。
(文献17) M.ワタナベ(Watanabe)およびP.ストンハート(Stonehart)「高分子固体−電解質組成物および該組成物を用いる電気化学電池」、1996年、米国特許第5523181号明細書。
(文献18) J.カーレス(Kerres)、G.シェーファー(Schafer)およびN.ニコロソ(Nicoloso)「300℃Cまでの範囲のためのプロトン導電性セラミック/高分子膜」、2002年、米国特許第02093008号明細書。
(文献19) J.ロジエール(Roziere)、D.ジョーンズ(Jones)、L.チカヤ ブカリ(Tchicaya Boukary)およびB.バウア(Bauer)「ハイブリッド材料、前記ハイブリッド材料の使用およびそれを作る方法」、2000年、国際特許第0205370号明細書。
(文献20) I.ホンマ(Honma)「高温プロトン導電性有機−無機複合膜およびその製造」、2000年、日本特許出願第090946号明細書。
(文献21) U.L.スタンガー(Stangar)、N.オロセリ(Groselj)、B.オレル(Orel)、A.シュミッツ(Schmitz)、P.コロンバン(Colomban)「ヘテロポリ酸を含むプロトン導電性ゾルゲルハイブリッド」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、109〜118頁。
(文献22) Y.パーク(Park)およびN.ナガイ(Nagai)「3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、シリコタングステン酸およびα−リン酸ジルコニウム水和物をベースとしたプロトン交換ナノコンポジット膜」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、149〜160頁。
(文献23) F.N.ヴィキ(Vichi)、M.T.コロマー(Colomer)およびM.A.アンダーソン(Anderson)「プロトン交換膜のための新規な電解質としてのナノポアセラミック膜」、エレクトロケミカル・アンド・ソリッド−ステート・レターズ(Electrochemjcal & Solid−State Letters)1999年、2巻、313〜316頁。
(文献24) M.T.コロマー(Colomer)およびM.A.アンダーソン(Anderson)「微粒子ゾル−ゲル法によって調製された高細孔度シリカキセロゲル:細孔構造およびプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ノンクリスタリン・ソリッズ(Journal of Non−Crystalline Solids)2001年、290巻、93〜104頁。
(文献25) A.サヤリ(Sayari)およびS.ハムーディ(Hamoudi)「周期的な、メソポーラスシリカをベースとした有機−無機ナノコンポジット材料」、ケミストリ・オブ・マテリアルズ、Chemistry of Materials 2001年、13巻、3151〜3168頁。
(文献26) A.マツダ(Natsuda)、Y.ノノ(Nono)、T.カンザキ(Kanzaki)、K.タダナガ(Tadanaga)、M.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「テンプレートとして界面活性剤を使用して調製された酸含浸メソポーラスシリカゲルのプロトン導電性」、ソリッド・ステート・アイオニクス(Solid State Ionics)2001年、145巻、135〜140頁。
(文献27) S.ニシワキ(Nishiwaki)、K.タダナガ(Tadanaga)、N.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「プロトン酸を含浸した、界面活性剤テンプレート化メソポーラスシリカゲルの調製およびプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・セラミック・ソサエティ(Journal of the American Ceramic Society)2000年, 83巻、3004〜3008頁。
(文献28) A.マツダ(Matsuda)、T.カンザキ(Kanzaki)、K.タダナガ(Tadanaga)、T.コグレ(Kogure)、M.タツミサゴ(Tatsumisago)およびT.ミナミ(Minami)「硫酸を含浸させた、ゾル−ゲル導出多孔質シリカゲル−多孔構造および中温でのプロトン導電性」、ジャーナル・オブ・ジ・エレクトロケミカル・ソサエティ(Journal of the Electrochemical Society)2002年、149巻、E292〜E297頁。
(文献29) I.ディアス(Diaz)、C.マルケス−アルヴァレス(Marquez−Alvarez)、F.モヒノ(Mohino)、J.ペレス−パリエンテ(Perez−Pariente)およびE.サストレ(Sastre)「中性と陽イオン性界面活性剤の混合物を含む、よく整った、硫黄含有MCM−41触媒の新規合成法」、ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・材料(Microporous & Mesoporous Materials)2001年、44巻、295〜302頁。
(文献30) D.マーゴリーズ(Margolese)、J.A.メレロ(Melero)、S.C.クリスチャンセン(Christiansen)、B.F.ケルカ(Chmelka)およびG.D.スタッキ(Stucky)「スルホン酸基を含む整ったSBA−15メソポーラスシリカの直接合成法」、ケミストリ・オブ・マテリアルズ(Chemistry of Materials)2000年、12巻、2448〜2459頁。
(文献31) N.H.リム(Lim)、C.F.ブランフォード(Blanford)およびA.スタイン(Stein)「有機硫黄の表面グループをもつ整った微孔性ケイ酸塩の合成およびその固体酸触媒としての応用」、ケミストリ・アンド・マテリアルズ(Chemistry of Materials)1998年、10巻、467−+。
(文献32) R.J.P.コッリユ(Corriu)、L.ダータス(Datas)、Y.グアリ(Guari)、A.メーディ(Mehdi)、C.ライ(Reye)およびC.チウリュ(Thieuleux)「直接的合成アプローチによって調製されるホスホン酸基を含む、整ったSBA−l5メソポーラスシリカ」、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)2001年、763〜764頁。
(文献33) S.ミハイレンコ(Mikhailenko)、D.デスプランチエ−ジスカール(Desplantier−Giscard)、C.ダヌマー(Danumah)およびS.カリアギン(Kaliaguine)「スルホン酸機能化メソ構造化多孔性シリカの固体電解質性質」、ミクロポーラス・アンド・マテリアルズ(Microporous & Mesoporous Materials)2002年、52巻、29〜37頁。
(文献34) Q.W.フェン(Feng)、J.G.スー(Xu)、H.ドン(Dong)、S.X.リ(Li)およびY.ウエイ(Wei)「非界面活性剤−テンプレート化ゾル−ゲル法によるポリスチレン−シリカハイブリッドメソポーラス材料」、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリ(Journal of Materials Chemistry)、2000年、10巻、2490〜2494頁。
(文献35) M.R.ミンク(Minke)、D.A.ロイ(Roy)およびK.J.シー(Shea)「アルキレン架橋メトキシシランの表面積とポロシティ・エンジニアリング」、アメリカン・ケミカル・ソサイアティ、ワシントンDC、シカゴ、米国、2001年。
(文献36) B.J.メルデ(Melde)、B.T.オランド(Holland)、C.F.ブランフォード(Blanford)およびA.スタイン(Stein)「一体化ハイブリッド無機/有機フレームワークをもつメソポーラス篩」、ケミストリ・オブ・マテリアルズ(Chemistry of Materials)、1999年、11巻、3302〜3308頁。
(文献37) GJD.ソラー−イリア(Soler−illia)、C.サンチェス(Sanchez)、B.レボ(Lebeau)、J.パターリン(Patarin)「織られた材料を設計する化学的手法:ミクロポーラスおよびメソポーラス酸化物からナノネットワークおよび段層構造まで」、ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews)、102(11)巻、4093〜4138頁、2002年11月。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
膜の形、特に均質で柔軟な膜の形に変えられうるメソポーラス材料に対するニーズが存在する。
【0033】
熱的および化学的に安定であり、加水分解および酸化に抵抗するメソポーラス材料に対するニーズもまた存在する。
【0034】
それに続いて、さらに、高い導電率、特に高いイオン−望ましくはプロトン−導電率を備えており、たとえば100〜150℃の範囲で、高い操作温度を持つ、燃料電池のような、電気化学的装置において膜の形で使用することのできるこの種のメソポーラス材料に対するニーズが存在する。
【0035】
この材料は、そのような使用の状況において、たとえば過フッ化イオノマーに基づいた先行技術の膜と違って、膜ドライアウトを避けるために、高温においてでさえ、高レベルの保水性を可能にしなければならないし、膜の劣化のないことに関連して、高温で高い導電率および低い燃料透過性を所有しなければならない。
【0036】
本発明の目的は、上述したニーズの全てを満足するメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料を提供することである。
【0037】
本発明の目的は、さらに、優れた性能を示しながら、先行技術材料の不都合、欠陥および弱点を示さず、そして、導電性官能基を備えている場合、燃料電池のような電気化学的装置において使用することができる、メソポーラス材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この目的および他のさらなる目的は、無機相(その中で壁面が開放細孔性(open porosity)の構造化メソポーラスネットワークを形成する細孔を規定している)を含む導電性有機−無機ハイブリッド材料によって、本発明に従って達成される。前記材料は、さらに、前記壁面に組込まれ、無機相と共有結合的に結合した有機のオリゴマーまたはポリマー、および任意に、少なくとも1種の界面活性剤からなる細孔内部の他の相、少なくとも1種の無機相、ならびに導電性および/または親水性官能基を持つ有機のオリゴマーまたはポリマーを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明による導電性ハイブリッド材料(それは、少なくとも1種の(任意に界面活性剤入りの)メソポーラス無機相を含み、その機械強度は、メソポーラスネットワークの壁面に組込まれている有機高分子鎖によって保証されている)の特殊構造は、先行技術において全く記載されなかった。
【0040】
これは、先行技術が、連続的であり、組込まれたポリマーを含むメソポーラス有機−無機ハイブリッド材料−たとえば膜の形で−の形成を全く文書化しなかったためである。ここで、前記材料はさらに、たとえば細孔中に、導電性および/または親水性官能基を持っている。
【0041】
特に、その高い比表面積およびその特別の構造によって、メソポーラス相をプロトン導電性膜に含む、そのような導電性有機−無機ハイブリッド材料の使用は、開放細孔性の存在に支配されている導電経路の連続性を促進する多数の可能性を提供する。
【0042】
「開放細孔性」によって、外に開き、導電性種に接近可能なままである細孔から形成される細孔性が意味される。
【0043】
本発明によると、無機相および有機のオリゴマーまたはポリマーのうちの少なくとも1つは、導電性および/または親水性官能基を持つ。
【0044】
こうして、該無機相がその細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を持つことができる。
【0045】
同様に、該有機のオリゴマーまたはポリマーが導電性および/または親水性官能基を持つことができる。
【0046】
1つの態様では、細孔内の(少なくとも1種の界面活性剤を有する)他の、任意の相もまた、任意に導電性および/または親水性官能基を持つことができ、その無機相および/または有機のオリゴマーまたはポリマーが、否応なしに導電性および/または親水性官能基を持っていることが理解される。
【0047】
「導電性官能基」によって、一般的に、これらの官能基がイオン導電性、好ましくプロトン導電性を示すことが意味されている。
【0048】
該材料が無機相および有機のオリゴマーまたはポリマーだけを含む場合、それらの一つまたは他方、あるいは両方ともが導電性および/または親水性官能基を持つことができる。
【0049】
該材料がさらに界面活性剤を含む場合、無機相および有機のオリゴマーまたはポリマーのうちの少なくとも1つは、導電性および/または親水性官能基を持つ。そうでなければ、無機相、有機のオリゴマーまたはポリマーおよび界面活性剤のいずれか2つが、導電性および/または親水性官能基を持ち、そうでなければ、界面活性剤および無機相および有機のオリゴマーまたはポリマー、3つ全てが導電性および/または親水性官能基を持っている。
【0050】
一般的に言って、本発明による材料は、プロトン電導の連続ネットワークとして役立つ開放細孔性を持つ。メソポーラス骨格は、好ましく吸湿性であり、そしてその細孔内に導電性機能をもち(問題の化合物は、たとえば、機能化された金属酸化物である)、こうしてプロトン輸送および水和を確実にする。有機のポリマーまたはオリゴマーは、無機相の壁を強化し、それに構造を与え、それによって、先行技術とは対照的に、導電材料を膜の形にすることを可能にする。
【0051】
真の相乗効果が、無機相および有機のオリゴマーまたはポリマーの間で生み出され、それは、本発明による材料に、先行技術で決して達成されていない、物理的、電気的および機械的性質のユニークな組合せを付与する。
【0052】
導電性官能基は、陽イオン交換基および/または陰イオン交換基から選択することができる。
【0053】
陽イオン交換基は、たとえば、以下の基:−SOM、−PO、−COOMおよび−B(OM)−−ここで、Mは、水素、一価の金属カチオンまたはNRを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す−−から選択される。
【0054】
陰イオン交換基は、たとえば以下の基:ピリジル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、化学式NRの基−−式中、Xは、たとえばF、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基である)のようなアニオンを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す−−、および、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、カルバゾール、インドール、イソインドール、ジヒドロオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、4,5−ジヒドロピラゾール、1,2,3−オキサジアゾール、フラザン、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、ピロール、アニリン、ピロリジンおよびピラゾールラジカルから選択される少なくとも1種のラジカルを含む塩基性芳香族または非芳香族ラジカル、から選択される。
【0055】
無機相は、一般的に、金属酸化物、メタロイド酸化物およびそれらの混合酸化物から選ばれる、少なくとも1種の酸化物から成る。
【0056】
前記酸化物は、一般的に、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、希土類元素、またはユウロピウム、セリウム、ランタンまたはガドリニウムのようなランタノイドの酸化物、ならびにそれらの混合酸化物から選択される。
【0057】
本発明による材料の無機相は、メソ構造化相であり、それは、より具体的には、メソポーラスネットワークが反復単位をもつ組織化された構造を示すことを意味する。
【0058】
たとえば、メソポーラスネットワークは、立方、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形状(vermicular)、小泡状、または共連続(bicontinuous)構造を示す可能性がある。
【0059】
メソポーラスネットワークの細孔のサイズは、一般的に1〜100nmであり、好ましくは1〜50nmである。
【0060】
無機相の壁面に組込まれたオリゴマーまたは有機ポリマーは、一般的に、ある個数の条件を満足しなければならない。
【0061】
とりわけ、前記オリゴマーまたは前記ポリマーは、一般的に熱的に安定でなければならない。「熱的に安定な」によって、それが熱の作用下でその性質を保持することを意味する。
【0062】
ポリマーまたはオリゴマーは一般的に、さらに、特に高い温度で、とりわけ、燃料電池の操作温度で、加水分解および酸化に敏感であってはならず、数千時間の間この非感受性を保持しなければならない。
【0063】
さらに、一般的に、選択されるポリマーまたはオリゴマーは:
−水中で混和するかまたは部分的に混和する、アルコール性または水−アルコール性媒体又は他の媒体に溶解しなければならない、なぜなら、液状媒体、メソポーラス相のテンプレート化剤、の中での任意の界面活性剤の組織化が水のような極性の非常に高い媒体の中で起こるからである、
−メソポーラス無機相に十分な強度を与え、自立性膜を形成させるために、可塑的でなければならない、すなわち、該ポリマーは、(機械的に)構造化するポリマーと呼ばれうる。
【0064】
該オリゴマーまたは該有機ポリマーは、一般的に、ポリエーテルケトン(PEK、PEEK、PEEKK)、ポリスルホン(PSU)、たとえばUdel(登録商標);ポリエーテルスルホン、たとえばVitrex(登録商標);ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU)(たとえばRadel(登録商標));スチレン/エチレン(SES)、スチレン/ブタジエン(SBS)およびスチレン/イソプレン(SIS)コポリマー、たとえばKraton(登録商標);ポリ(フェニレンスルフィド)およびポリ(フェニレンオキシド)のような、ポリフェニレン;ポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリイミダゾール;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリアニリン;ポリピロール;ポリスルホンアミド;ポリベンゾピラゾールのようなポリイミダゾール;ポリベンズオキサゾールのようなポリオキサゾール;ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ヘキサメチレンオキシド)のような、ポリエーテル;ポリメタクリル酸;ポリアクリルアミド;ポリビニル、たとえば(ポリ(ビニルエステル)ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルラウレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルトリメチルアセテート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルトリクロロアセテート、ポリビニルトリフルオロアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルピバレートおよびポリビニルアルコール);ポリビニルブチラールのような、アセタール樹脂;ポリビニルピリジン;ポリビニルピロリドン;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブチレンのような、ポリオレフィン;ポリ(スチレンオキシド);ポリテトラフッ化エチレン(PTFE)のような、フッ素樹脂およびポリパーフルオロカーボン、たとえばTeflon(登録商標);ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリヘキサフルオロプロペン(HFP);パーフルオロアルコキシド(PFA);ポリホスファゼン;シリコーン弾性体;および、上記のポリマーから選ばれるポリマーからなる少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマー、から選択される。
【0065】
該材料が、細孔の中に、界面活性剤から成る第三相を含むとき、後者は、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩およびアルキルスルホン酸塩のような界面活性剤;ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸;尿素または長鎖アミンのような塩基;リン脂質;両親媒性が基質との相互作用によってその場で作られる二重親水性コポリマー;および、少なくとも1種の親水性ブロックと組み合わせた少なくとも1種の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、から選択される。これらのポリマーの中では、たとえば、PEO(ポリ(エチレンオキシド))およびPPO(ポリ(プロピレンオキシド))に基づくPluronics(登録商標)、(EO)−(PO)−(EO)タイプ、((EO)−(PO)−NCHCHN−((EO)−(PO)タイプ(Tetronic(登録商標))のコポリマー、化学種(class)C(EO)M(OH)(C=アリールおよび/またはアルキル鎖、EO=エチレンオキシド鎖)、たとえば、Brij(登録商標)、Triton(登録商標)またはIgepal(登録商標)、ならびに化学種(EO)−ソルビタン−C(Tween(登録商標))の名が挙げられる。
【0066】
有機ポリマーまたはオリゴマーがオプションの界面活性高分子と決して混同されてはならないことを注意することは重要である。両方とも「ポリマー」と呼ばれるけれども、これらの化合物は、その構造とその効果の両者に関して異なる。壁面に組込まれた有機のオリゴマーまたはポリマーは、(機械的に)「構造化する」と称されるポリマーであり、他方、任意の界面活性ポリマーは、「テンプレート化する(templating)」、「テクスチャー化する(texturizing)」と称される。
【0067】
本発明は、さらに、先に述べたような材料を含む膜(任意に支持体の上に堆積された)に関する。
【0068】
「膜」によって、該材料が、たとえば、50nm〜数ミリメートル、好ましくは10〜500μmの厚さをもつ薄膜またはシートの形で存在することが意味されている。
【0069】
本発明はまた、先に述べたように、該材料を含む電極に関係する。
【0070】
本発明による、膜および/または電極の形をした材料の優れた性質が、それを、特に電気化学的装置、たとえば燃料電池における使用に特に適したものにする。
【0071】
したがって、本発明は、また、先に述べたように、少なくとも1種の膜および/または電極を含む燃料電池に関する。
【0072】
本発明は、同じく、先に述べた、有機−無機ハイブリッド材料を調製する方法に関係する。そこにおいて、以下のステップ:
a)前駆体化合物Aが合成されて、メソポーラス無機相の前駆体官能基を持つ有機オリゴマーまたはポリマーから構成され、有機−無機ハイブリッド溶液が前記前駆体化合物Aの溶媒の中で調製される、
b)ステップa)で得られた有機−無機ハイブリッドが、加水分解され、熟成するに任される、
c)ステップb)で得られた、前駆体化合物Aの、加水分解されて熟成した有機無機のハイブリッド溶液が、メソポーラス無機相を構成することを意図された無機前駆体Bの溶液の中で、溶媒中で希釈され、それによって、新しい有機−無機ハイブリッド溶液が得られる、
d)ステップc)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が、加水分解されて熟成するにまかされる、
e)界面活性剤D(メソポーラス無機相のためのテンプレート化・テクスチャー化試剤)の溶液が、溶媒中で調製される、
f)ステップc)で得られた溶液が、ステップe)で得られる溶液と混合されて、溶液Sを生成する、
g)任意に、ステップf)で得られた溶液Sが、加水分解されて熟成するに任される、
h)加水分解されて熟成したハイブリッド溶液Sが支持体の上に堆積させられるか、または、支持体の上に含浸させられる、
i)溶媒が、制御された圧力、温度および湿度条件の下で蒸発させられる、
j)堆積した、または含浸した材料を固化させるために、熱処理が行なわれる、
k)界面活性剤Dが、任意に、完全または部分的に除去される、
l)該支持体が、任意に、分離されるかまたは除去される、
が実行される。
【0073】
調製された材料が、特に、薄膜または層の形であるとき、そして、それが堆積するかまたは基質、たとえば平面的基質の上に含浸されるとき、該プロセスは膜を調製する方法であると定義されることは、注意されるべきである。
【0074】
本発明によるプロセスは、細孔の中で任意に機能化され、有機ポリマーまたはオリゴマーは、壁面に集積して、含むメソポーラス無機相の、「ゾル−ゲル」法による適当な成長を可能にする、特定の工程のユニークな系列を示す。
【0075】
該プロセスの条件は、1つの材料が得られること、ついでメソ細孔性の構築と結合して、均質で柔軟な膜が得られることを保証する。
【0076】
本発明によるプロセスによって、細孔の中での任意に機能化され、有機ポリマーまたはオリゴマーを、壁面に集積して、含むメソポーラス相の成長は、特に界面活性の、テンプレート化・テクスチャー化剤の存在下で、完全に制御される。
【0077】
都合よくは、ステップf)で得られた溶液Sにキレート化剤Eがさらに添加される。
【0078】
都合よくは、ステップc)の間に、一方、導電性および/または親水性官能基および/または導電性および/または親水官能基の前駆体である官能基、ならびに、他方、メソポーラスネットワークの細孔の表面との結合をすることができる官能基、を持つ化合物Cが、さらに、無機前駆体Aの溶液に添加される。都合よくは、該プロセスは、さらに、材料の細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を解放するか、または、生成する、処理の最終ステップを含む。
【0079】
都合よくは、ステップa)(ステップb))で得られた有機−無機ハイブリッド溶液は、0℃〜300℃の、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×10Pa、好ましくは1000Pa〜2×10Paの圧力で、数分〜数時間、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される。
【0080】
都合よくは、ステップc)d)(ステップd)で得られた溶液は、0℃〜300℃の、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×1OPa、好ましくは1000Pa〜2×10Paの圧力で、数分〜数時間、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される。
【0081】
都合よくは、ステップf)で得られる溶液Sは、0℃〜300℃の、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100Pa〜5×1OPa、好ましくは1000Pa〜2×10Paの圧力で、数分〜数時間、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される。
【0082】
都合よくは、溶媒は、0℃〜300℃の、好ましくは10℃〜16O℃の温度で、0〜100%の、好ましく20%〜95%の相対湿度(RH)で、蒸発させられる。これらの蒸発状況は、特に、必要なメソ細孔性を持つ均質かつ柔軟な膜を得ることを可能にする。
【0083】
ステップh)において、有機−無機ハイブリッド溶液は、スピンコーティングとして知られている遠心コーティングによる堆積の方法、ディップコーティングとして知られている含浸と引抜きによる堆積の方法、および、メニスカスコーティングとして知られているラミナーコーティングによる堆積の方法、「スプレーコーティング」として知られている吹付けによる堆積の方法、または鋳造による堆積の方法、および蒸発による堆積の方法、から選択される方法によって、支持体の上に堆積されるか、または含浸される。
【0084】
本発明は、付された図面を参照しながら、このあとに続く、限定でなく、例証として与えられている説明を読むことで、よく理解されるであろう。
【0085】
下記のテキストは、壁面に、無機ネットワークに結合した、ポリマーのまたはオリゴマーの有機鎖を備えたメソポーラス無機相を持つ膜の形での導電性有機−無機ハイブリッド材料を、本発明にしたがって調製するプロセスを記述する。導電性官能基は、たとえば細孔の中に存在し、界面活性剤もまた、これらの同じ細孔の中に存在する可能性がある。
【0086】
このプロセスは、以下のステップを含む。
【0087】
ステップ1:合成は有機金属前駆体Aの調製から始まり、それは、柔軟性と機械的強度をもつメソポーラスネットワークを提供する。通常、分岐した、または、分岐していないポリマー鎖は、少なくとも2種の金属アルコキシド基(RO)M´−ポリマーM´(OR)(ここで、M´は、メタロイド、あるいはp金属または遷移金属さもなければランタノイドのような金属である)で機能化されている。M´の実例は、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Ce、Eu、LaおよびGdであり、Rは、アルキルまたはアリールタイプの有機原子団である。
【0088】
ポリマーは、その機械的性質(構造化と柔軟性)、その耐熱性、および燃料電池の媒体の加水分解および酸化反応への抵抗の性質に関して、選択される。通常、このポリマーは、上述のポリマーから選択される。これらの種々のポリマーは、陽イオン交換基:−SOM、−PO、−COOMまたは−B(OM)(M=H、一価の金属陽イオン、またはN(R=H、アルキルまたはアリール));あるいは、前駆体:SOX、COXまたはPO(X=F、Cl、Br、IまたはOR(R=アルキルまたはアリール))、を含む。他のモデルでは、種々のポリマーは陰イオン交換基:NR(Xは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基)、そして、各Rは、個別に、H、アルキル、アリール、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウムまたはスルホニウムである)を含む。上で示されているリストを参照することもまた、可能である。
【0089】
ステップ2:この前駆体Aは、液状媒体中で金属アルコキシドまたは金属塩Bの存在下で希釈され、溶媒の、または、溶媒混合物の選択は、続いて使われる界面活性剤の混和の溶媒、通常アルコール、エーテルまたはケトン(これらは、水と混和するか、部分的には水と混和する)に依存してなされる。
【0090】
この金属的な前駆体に、ヒドロキシル基、またはアルコキシドタイプの加水分解性官能基、および、加水分解されないまたはグラフトされた官能基を含む有機金属化合物のモル量Cが、混合物(AおよびB)と同時に添加される。この化合物Cは、たとえば、化学式ZRM″OR(n−(x+y))(式中、M″は、第IV族の元素、たとえばSiを示す)に、あるいは化学式ZRM’’’OR(n−(x+y)(式中、M’’’は、p金属、遷移金属、またはランタノイド、たとえばTi、Zr、Ta、Al、Sn、Eu、Ce、LaまたはGdであり、nは金属の価数、Zは、アセテート、ホスホン酸エステルまたはリン酸塩のような一座配位子タイプの錯体形成基、あるいは、β−ジケトンおよびその誘導体、ならびにα−またはβ−ヒドロキシ酸のような二座タイプの錯体生成官能基であり、R、RおよびRは、H、アルキルまたはアリールタイプの有機置換基である))に相当する。特にRに関しては、これらの置換基は、陽イオン交換基−SOM、−PO、−COOM、または、−B(OM)(ここでM=H、一価の金属カチオンまたはN(式中、各Rは、個別に、H、アルキルまたはアリールを示す));あるいは、陽イオン交換基の前駆体:SOX、COXまたはPO(X=F、Cl、Br、I、またはOR´(R´=アルキルまたはアリール));あるいは、NR(Xは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOHまたはORのような陰イオンを指し、Rは、アルキル基またはアリール基であり、各Rは、個別に、H、アルキル、アリール、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウムまたはスルホニウムを示す)のような陰イオン交換基、を含むことができる。先に上で挙げたリストを参照することも可能であろう。
【0091】
ステップ3:この溶液は、テンプレート化・テクスチャー化剤の働きをする界面活性剤溶液と混合される。テンプレート化剤の選択は、望ましいメソ構造(立方形、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形状、小泡状、または、共連続的)に、細孔およびこのメソ構造の壁面のサイズに、そして、本発明の他の化合物(すなわち無機前駆体)による可溶化に、依存する。細孔のサイズが数ナノメートル(1.6〜10nm)および壁面のサイズが約1nmに限られているメソポーラス組織を構築するために、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩類およびアルキルスルホン酸塩のようなテンプレート化剤を含む界面活性剤、あるいは、ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸、あるいは、尿素および長鎖アミンのような塩基の使用がなされるであろう。
【0092】
より大きな細孔サイズ(最高50nm)をもつメソポーラス相を作成するために、リン脂質、両親媒性が基質との相互作用によりその場で生み出される二重親水性コポリマー、あるいは、少なくとも1つの親水性ブロックと結合している少なくとも1つの疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマーの使用がなされるであろう。これらのポリマーのなかでは、たとえば、PEO(ポリ(エチレンオキシド))およびPPO(ポリ(プロピレンオキシド))に基づくPluronics(登録商標)、(EO)−(PO)−(EO)タイプ(((EO)−(PO))x−NCHCHN−((EO)−(PO)タイプのコポリマー(Tetronic(登録商標)))、化学種C(EO)(OH)(C=アリールおよび/またはアルキル鎖、EO=エチレンオキシド鎖)、たとえば、Brij(登録商標)、Triton(登録商標)、TergitolまたはIgepal(登録商標)、ならびに化学種(EO)−ソルビタン−C(Tween(登録商標))が挙げられる。これらの種々のブロックは、また、アクリル性種、PMAc(ポリメタクリル酸)またはPAAc(ポリアクリル酸)、芳香族PS(ポリスチレン)、ビニル性PQVP(ポリビニルピリジン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVEE(ポリビニルエーテル)、あるいは他のPDMS(ポリシーロキサン)種からなるものであることができた。これらの種々のブロックは、カチオン交換タイプの導電性基、または、陽イオン交換基の前駆体、または、たとえばPSS(ポリ(スチレンスルホン)酸)のような陰イオン交換基、または既に定義した陰イオン交換基の前駆体、によって機能化される。選択された構造指令剤Dは、水−アルコール性媒体、または金属的前駆体A、BおよびCを希釈するのに用いられる媒体と相溶する水性ベースの溶媒混合液中に溶解されるか、または希釈される。
【0093】
ステップ4:この界面活性剤を含む有機−無機ハイブリッド溶液は、続いて、金属前駆体の選択に依存して、数時間から数日に及ぶ一定時間、酸性または塩基性媒体の中で、周辺ないし還流に至る制御された温度で加水分解される。特にTiOまたはZrO前駆体の場合、通常アセチルアセトンまたは酢酸またはホスホン酸エステルのようなキレート化剤Eが、無機のネットワークの加水分解/凝縮を制御するために導入される。
【0094】
ステップ5:該膜は、有機−無機ハイブリッド溶液の堆積、および制御された圧力、温度および湿気(15℃<T<80℃)の下での蒸発によって生産される。蒸発状況は、液状媒体における界面活性剤の組織化、およびメソポーラスネットワークの最終的な形成にとって非常に重要である。得られた膜は、続いて、固化を達成するために、50℃〜300℃の間で熱処理される。膜のメソ細孔の中に存在する界面活性剤は、たとえば、酸性の水性−アルコール性媒体中での洗浄のような穏やかな手法によって除去することができる。無機ネットワークに結合した導電性官能基を解放するかまたは生み出すポスト反応が遂行される。通常、この種の後期反応は:
−スルホン酸SOH中での過酸化水素によるメルカプタン基(−SH)の酸化反応、または、
−直接的、または、中間体(MeSiO)(O)P−の形成を経由して、塩酸でジアルキルホスホン酸塩基(RO)(O)P−を加水分解し、続いて、メタノールで加水分解して、ホスホン酸−POを生成させる反応
である。
【0095】
このタイプの後期反応は、また、金属有機アルコキシドによる、膜の無機ネットワークの表面ヒドロキシルM−OHのグラフト反応に相当する。これらの場合の全てにおいて、該膜は、液状媒体中に置かれ、それが膨潤して、反応性の分子実体が膜の細孔の内部で広がることを可能にする。
【0096】
電池の作動の間に膜の中でのあらゆる副反応を避けるために、プロトン導電性膜は、種々の酸化性、酸性(または塩基性)かつ水性の洗浄液によって洗浄され、これが、動きうる、有機、有機金属、または無機の実体の全てが除去されることを可能にする。
【0097】
本発明によるプロセスにおいて、オリゴマーまたは有機ポリマーを、壁面に集積されて、含むメソポーラス相の成長が、テンプレート化・テクスチャー化界面活性剤の存在において顕著に制御される。この制御は、特に、アルコール、エーテルおよびケトンのような溶媒(これらは、水と混和するか、または部分的に混和する)、前駆体、および、先に上で詳しく記載した操作条件、の選択に関係がある。
【0098】
該膜は、また、液体堆積技術、すなわち、遠心コーティング(スピンコーティング)、含浸/抜取り(ディップコーティング)またはラミナーコーティング(メニスカスコーティング)、を用いて、自己支持形フィルムの形で調製される。この形成された膜は、続いて、水のような溶媒中での膨潤によって、その支持体から分離される。
【0099】
スプレーコーティングとして知られている吹付け技術は、また、有機無機のハイブリッド溶液からエアゾールを作り、そして、特に、電池を形成するために装置上での電極−膜適合性を強化するために、電極の含浸を遂行するのに用いられる。
【0100】
本発明は、今、以下の実施例(それは例証として挙げられ、限定のために挙げられるのではない)への参照によって説明される。
【実施例】
【0101】
本実施例では、連続的シリカ−ポリ(プロピレンオキシド)ネットワークに基づくハイブリッド膜を調製する。
【0102】
テトラエトキシシラン(TEOS)および−SH基をもつ3−メルカプト−プロピルトリメトキシシラン(酸性基SOHの前駆体)を、アルコール系溶媒で3重量%に希釈する。続いて、界面活性剤(Brij(登録商標)30)を混合物に添加し、該溶液を0.2M塩酸で加水分解する。同じ溶媒の3%の希釈剤の有機ケイ素を含有するポリ(プロピレンオキシド)高分子の溶液が添加される。
【0103】
12時間のハイブリッド溶液の均質化と熟成の後、溶液をペトリ皿で蒸発させ、150nmの均質で柔軟な膜を形成させる。
【0104】
この処方においては、3個のパラメータが変化されている:
−{SiO2−ormosil/ポリマー−SiO2}重量比
−アルコール系溶媒(エタノール、プロパノール、メタノールおよびTHF)の種類
−過酸化水素の添加または非添加による、シリカ、SiO−SHまたはSiO−SOHの機能化のタイプ。
【0105】
表1は、調製された種々の配合物を示す:
【0106】
【表1】

【0107】
これらの種々の配合物は、全ての場合、透明な膜を与える。
1)膜中のシリカ/高分子重量比の研究:
【0108】
膜C〜Fは、自己支持形の薄膜を形成し、柔軟である。該膜の柔軟性は、30%〜40%の間の高シリカ含有量を保証する。
【0109】
【表2】

【0110】
これらの膜の小角X線散乱図は、11nm(図1参照。図中、曲線は、上から下へ、それぞれ、膜F、C、DおよびEに対する線図を示す)に中心をおいた回折ピークをもつメソポーラス組織体の証拠である。
2)溶媒の性質の研究:
【0111】
膜AおよびBは、膜CおよびDよりも柔軟な、自己支持形の薄膜を形成する。40%の高シリカ含有量のために、溶媒の性質に依存して異なる柔軟性が観測され、それによって異なる巨視的膜構造を示す。
【0112】
【表3】

【0113】
3)過酸化水素の添加または無添加による、シリカ、SiO−SHまたはSiO−SOHの機能化の研究:
【0114】
SHまたはSOH基を酸化するための過酸化水素の添加は、膜の柔軟性を下げない。
【0115】
【表4】

【0116】
表4は、イオン交換容量およびこれらの膜の導電率値を示す。
【0117】
【表5】

【0118】
0.4の過酸化水素モル分率の場合、イオン交換はほとんど観測されず、低い導電率が観測される。この結果は、SHおよびSOH結合の酸化収率が低いことを証明する。過酸化水素の量を3倍増加させると、導電率は10倍増加することになる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例で調製された膜C、D、EおよびFに対する小角X線散乱を示す線図である。(カウント数での)強度が縦軸にプロットされ、2θが横軸にプロットされている。曲線は、上から下へ、それぞれ、膜F、C、DおよびEに対する線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機相(その中で、壁面が開放細孔性(open porosity)の構造化メソポーラスネットワークを形成する細孔を規定する)を含む導電性有機−無機ハイブリッド材料;前記壁面に組込まれ、無機相に共有結合的に結合した有機のオリゴマーまたはポリマー、ならびに任意に、細孔の内部に少なくとも1種類の界面活性剤からなる他の相を更に含む、前記材料;無機相、ならびに導電性および/または親水性官能基を持つ有機のオリゴマーまたはポリマーのうちの少なくとも1種。
【請求項2】
該無機相がその細孔の表面上に導電性および/または親水性官能基を持つ、先行の請求項の材料。
【請求項3】
有機のオリゴマーまたはポリマーが導電性および/または親水性官能基を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項4】
少なくとも1種の界面活性剤を有する任意の相が導電性および/または親水性官能基を持つ、請求項1〜3のいずれか1項の材料。
【請求項5】
前記導電性官能基が陽イオン交換基から選択される、請求項1〜4のいずれか1項の材料。
【請求項6】
前記陽イオン交換基が以下の基:SOM、−PO、−COOM、およびB(OM)(ここで、Mは、水素、一価の金属陽イオンまたはNR、ここで、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す)から選択される請求項5の材料。
【請求項7】
前記導電性官能基が陰イオン交換基から選択される、請求項1〜4のいずれか1項の材料。
【請求項8】
前記陰イオン交換基が以下の基:ピリジル、イミダゾリル、ピラゾリル;トリアゾリル;化学式NRの基(式中、Xは、たとえば、F、Cl、Br、I、NO、SOHまたはOR(Rはアルキル基またはアリール基)のような陰イオンを示し、各Rは、個別に、水素、アルキル基またはアリール基を示す);ならびに、イミダゾール、ビニルイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、カルバゾール、インドール、イソインドール、ジヒドロオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、4,5−ジヒドロピラゾール、1,2,3−オキサジアゾール、フラザン、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、ピロール、アニリン、ピロリジンおよびピラゾール基から選択される少なくとも1個の基を含む塩基性の芳香族または非芳香族の基、から選択される請求項7の材料。
【請求項9】
該無機相が金属酸化物、メタロイド酸化物およびそれらの混合酸化物から選択される少なくとも1種の酸化物を有する、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項10】
前記酸化物がケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、タンタル、スズ、希土類元素(例:ユウロピウム、セリウム、ランタンおよびガドリニウム)の酸化物およびそれらの混合酸化物から選択される、請求項9の材料。
【請求項11】
メソポーラスネットワークが反復単位のある組織化された構造体を持つ、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項12】
メソポーラスネットワークが、立方体、六角形、ラメラ状、曲がりくねった形(vermicular)、小泡状、共連続の構造をもつ、請求項11の材料。
【請求項13】
細孔のサイズが1〜100nm、好ましく1〜50nmである、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項14】
有機ポリマーが熱的に安定な高分子である、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項15】
有機ポリマーが、ポリエーテルケトン(PEK、PEEK、PEEKK);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリフェニルエーテルスルホン(PPSU);スチレン/エチレン(SES)、スチレン/ブタジエン(SBS)およびスチレン/イソプレン(SIS)コポリマー;ポリ(フェニレンスルフィド)およびポリ(フェニレンオキシド)のようなポリフェニレン;ポリベンズイミダゾール(PBI)のようなポリイミダゾール;ポリイミド(PI); ポリアミドイミド(PAI);ポリアニリン;ポリピロール;ポリスルホンアミド;ポリベンゾピラゾールのようなポリピラゾール;ポリベンズオキサゾールのようなポリオキサゾール;ポリ(テトラメチレンオキシド)およびポリ(ヘキサメチレンオキシド)のようなポリエーテル;ポリメタクリル酸;ポリアクリルアミド;ポリ(ビニルエステル)のようなポリビニル、たとえばポリビニルアセテート、ポリビニルホルメート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルラウレート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリビニルトリメチルアセテート、ポリビニルクロロアセテート、ポリビニルトリクロロアセテート、ポリビニルトリフルオロアセテート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルピバレート、およびポリビニルアルコール;ポリビニルブチラールのようなアセタール樹脂;ポリビニルピリジン;ポリビニルピロリドン;ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブチレンのようなポリオレフィン;ポリ(スチレンオキシド);フッ素樹脂およびポリ四フッ化エチレン(PTFE)のようなポリパーフルオロカーボン;ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリヘキサフルオロプロペン(HFP);パーフルオロアルコキシド(PFA);ポリホスファゼン;シリコーン弾性体;ならびに、上記のポリマーから選択される1種のポリマーから成る少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマー、から選択される、請求項14の材料。
【請求項16】
界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルホスフェート塩類およびアルキルスルホン酸塩のような界面活性剤;ジベンゾイル酒石酸、マレイン酸または長鎖脂肪酸のような酸;尿素または長鎖のアミンのような塩基;リン脂質;その両親媒性が基質との相互作用によってその場で作り出される二重親水性コポリマー;ならびに、少なくとも1個の親水性ブロックと結合して少なくとも1個の疎水性ブロックを含む両親媒性マルチブロックコポリマー、から選択される、先行請求項のいずれか1項の材料。
【請求項17】
任意に支持体の上に堆積させられた、先行する請求項のいずれか1項の材料を含む膜。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項の材料を含む電極。
【請求項19】
請求項17の少なくとも1種の膜および/または請求項18の少なくとも1種の電極を含む燃料電池。
【請求項20】
以下のステップが実行される、請求項1〜16のいずれか1項の材料を調製する方法
a)メソポーラス無機相の前駆体官能基を持っている有機のオリゴマーまたはポリマーを有する、前駆体化合物Aが合成され、有機−無機ハイブリッド溶液が前記前駆体化合物Aの溶媒中で調製される、
b)ステップa)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が加水分解され、熟成するままに任される、
c)ステップb)で得られた前駆体化合物Aの、加水分解され、熟成された有機−無機ハイブリッド溶液が、メソポーラス無機相を構成することを目的とした無機前駆体Bの溶媒で希釈され、それによって新しい有機−無機ハイブリッド溶液が得られる、
d)ステップc)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が加水分解され、熟成するに任される、
e)溶媒中で、界面活性剤D(メソポーラス無機相のためのテンプレート化・テクスチャー化剤)の溶液が調製される、
f)ステップc)で得られた溶液が、ステップe)で得られた溶液と混合されて、溶液Sを生成する、
g)任意に、ステップf)で得られた溶液Sが加水分解され、熟成するに任される、
h)加水分解され、熟成されたハイブリッド溶液Sが支持体の上に堆積させられるか、または含浸させられる、
i)溶媒が、制御された圧力、温度および湿度条件の下で蒸発させられる、
j)材料を固化するために、熱処理が行なわれる、
k)界面活性剤Dが、任意に、完全または部分的に除去される、
l)支持体が、任意に、分離されるか、または除去される。
【請求項21】
ステップf)で得られた溶液Sに、さらにキレート化剤Eが添加される、請求項23のプロセス。
【請求項22】
ステップc)の間に、有機金属前駆体Aに基づいた溶液に、一方で、導電性および/または親水性官能基、ならびに/あるいは、導電性および/または親水性官能基の前駆体官能基、および他方、メソポーラスネットワークの細孔の表面に結合することができる官能基を持つ化合物Cがさらに添加される、請求項20および21のいずれか1項のプロセス。
【請求項23】
該プロセスが材料の細孔の表面に導電性および/または親水性官能基を解放するか、または、生み出すために最終ステップの処理を更に含む請求項20〜22のいずれか1項のプロセス。
【請求項24】
ステップa)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が、0〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100〜5×10Pa、好ましくは1000〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される、請求項20〜23のいずれか1項のプロセス。
【請求項25】
ステップc)で得られた有機−無機ハイブリッド溶液が、0〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100〜5×10Pa、好ましくは1000〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される、請求項20〜24のいずれか1項のプロセス。
【請求項26】
ステップf)で得られた溶液Sが、0〜300℃、好ましくは20℃〜200℃の温度で、100〜5×10Pa、好ましくは1000〜2×l0Paの圧力で、数分〜数日、好ましくは1時間〜1週間の間、熟成するままに放置される、請求項20〜25のいずれか1項のプロセス。
【請求項27】
溶媒が、0〜300℃、好ましくは10℃〜160℃、の温度で、0〜100%、好ましくは20%〜95%、の相対湿度(RH)で蒸発させられる、請求項20〜26のいずれか1項のプロセス。
【請求項28】
ステップh)において、有機−無機ハイブリッド溶液が、スピンコーティングとして知られている遠心コーティングによる堆積の方法、ディップコーティングとして知られている含浸と引抜きによる堆積の方法、メニスカスコーティングとして知られているラミナーコーティングによる堆積の方法、「スプレーコーティング」として知られている吹付けによる堆積の方法、鋳造による堆積の方法、および蒸発による堆積の方法、から選択された方法によって、支持体の上に、堆積させられるか、または含浸させられる、請求項20〜27のいずれか1項のプロセス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−518405(P2006−518405A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502168(P2006−502168)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050026
【国際公開番号】WO2004/067640
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】