説明

メタリック塗料組成物、塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品

【課題】自動車車体外板等の各種工業製品に対して、低明度且つ高彩度で、深み感及び緻密感に優れるメタリック塗料組成物、塗膜構造、塗膜形成方法および塗装物品を提供することである。
【解決手段】本発明は、着色成分として、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料及び透明性着色顔料を含むことを特徴とするメタリック塗料組成物、塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低明度且つ高彩度の、深み感及び緻密感に優れた塗膜が得られるメタリック塗料組成物、塗膜構造、塗膜形成方法および塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の工業製品においては、近年、高い商品力が求められており、その一つに高い意匠性がある。意匠性が高い塗色として、メタリック塗色がある。メタリック塗色の中で、低明度のメタリック塗色を得るためには、アルミフレーク顔料等の鱗片状金属顔料及び/又は鱗片状の基材に金属酸化物を被覆したマイカ顔料等の光輝性顔料と黒顔料を組み合わせたメタリックベース塗料を設計することが一般的であった。しかし、この手法では、低明度のメタリック塗色が得られるが、彩度が低下する問題点があった。さらに使用する鱗片状光輝性顔料によっては、粒子感が生じて緻密感に優れた塗膜が得られない。
【0003】
特許文献1には、彩度の高い塗膜を得ることができる塗料組成物として、着色アルミニウム顔料及び該着色アルミニウム顔料と同系色の補助着色顔料を含む塗料組成物が開示されている。この手法で得られた塗膜は、高彩度であるが、低明度の塗色とすることは不可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−121488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、低明度且つ高彩度の、深み感及び緻密感に優れた塗色の塗膜を形成できるメタリック塗料組成物、塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
1.樹脂成分及び着色成分を含むメタリック塗料組成物であって、着色成分として、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料及び透明性着色顔料を含むことを特徴とするメタリック塗料組成物、
2.前記低明度光輝性顔料と透明性着色顔料のL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下である1項記載の塗料組成物、
3.透明性着色顔料としてカーボンブラック顔料を含み且つその含有量がメタリック塗料組成物中の樹脂成分100質量部に対して、3質量部以下であることを特徴とする1項又は2項記載のメタリック塗料組成物、
4.被塗物に1〜3項いずれか1項記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法、
5.被塗物に1〜3項いずれか1項記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにカラークリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法、
6.メタリック塗料組成物を塗装して得られる塗膜と、さらにカラークリヤー塗料を塗装して得られる複層塗膜とのL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下である5項記載の塗膜形成方法、
7.5項又は6項記載の塗膜形成方法で得られた塗膜状に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法、
8.4〜7項いずれか1項記載の塗膜形成方法にて得られた塗膜構造。
9.4〜7項いずれか1項記載の塗膜形成方法にて得られた塗装物品
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低明度且つ高彩度の、深み感及び緻密感に優れた塗色の塗膜を形成できるメタリック塗色の塗膜を形成できるメタリック塗料組成物、塗膜形成方法、塗膜構造及び塗装物品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明のメタリック塗料組成物について説明する。
【0009】
本発明のメタリック塗料組成物は、樹脂成分及び着色成分を含有する。樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂を、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤と併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散して使用される。
【0010】
本発明の塗料組成物は、着色成分として、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料を含有する。
【0011】
本発明の塗料組成物に配合せしめる低明度光輝性顔料は、透明な鱗片状基材を酸化チタンで被覆した所謂鱗片状光輝性顔料を還元処理することによって得られるものである。透明な鱗片状基材としては、具体的には、雲母、人工雲母、ガラスフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク等の小片を挙げることができる。
【0012】
上記の如き鱗片状基材の表面を二酸化チタンで被覆し、さらに低酸素雰囲気下において、被覆された二酸化チタンの一部を還元することによって、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料を得ることができる。二酸化チタンの被覆量を変えることや、還元工程において還元剤の種類や焼成温度等を変動させることによって、茶褐色から黒色、青色の色域の低明度光輝性顔料を得ることができる。本発明においては、上記の色域については特に制限されるものではない。
【0013】
本発明において、上記低明度光輝性顔料の塗料組成物中への含有量は、塗膜の仕上がり性の点から、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、合計で1〜50質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは2〜30質量部の範囲内、特に好ましくは5〜20質量部の範囲内である。
【0014】
本発明の塗料組成物は、さらに着色成分として、透明性着色顔料を含有することができる。透明性着色顔料とは、平均一次粒子径が小さく、塗膜中に分散された場合において透明な塗膜が得られる顔料を意味し、具体的には、平均一次粒子径が100nm以下である顔料を意味する。平均一次粒子径が大きい隠蔽性顔料を使用すると、シェード部で散乱が生じ、透明感が減じるため好ましくない。
【0015】
上記透明性着色顔料としては、具体的には、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。該透明性着色顔料の含有量は、塗膜の仕上がり性の点から、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し20質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部の範囲内である。
【0016】
本発明のメタリック塗料組成物は、さらに透明性着色顔料として明度を制御するカーボンブラック顔料を使用することができる。該カーボンブラック顔料としては、インク用、塗料用及びプラスチック着色用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができるが、塗膜の明度、深み感の点から、一次粒子径が、3〜20nmのものが特に好ましく、より好ましくは5〜15nmのものである。具体的には、Monarch1300(商品名、CABOT社製、一次粒子径:13nm)、Raven5000(商品名、コロンビア社製、一次粒子径:11nm)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0017】
上記カーボンブラック顔料の配合量は、得られる塗膜の深み感の点から前記メタリック塗料組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜2.5質量部の範囲内、特に好ましくは0.1〜2質量部の範囲内である。
【0018】
本発明においては、上記低明度光輝性顔料と透明性着色顔料のL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下であるとすることが好ましい。より好ましくは30以下、特に好ましくは15以下である。該色相差は具体的には、水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100固形分質量部あたり、低明度光輝性顔料を15質量部配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整して得られた塗料を、予め黒色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に硬化塗膜として18μmの膜厚となるようにエアスプレー塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にクリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、35μmとなるようにエアスプレー塗装し、さらに硬化乾燥せしめて得られた塗膜をX−Rite社製のMA−68II(商品名)を使用して測定した分光反射率から換算した受光角45°におけるL*C*h表色系における色相角度hと、本発明のメタリック塗料組成物に配合せしめる透明性着色顔料を、水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分に対して、本発明の実施態様と同じ量組成にて配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整して得られた塗料を、予め黒色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に硬化塗膜として18μmの膜厚となるようにエアスプレー塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にクリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、35μmとなるようにエアスプレー塗装し、さらに硬化乾燥せしめて得られた塗膜をX−Rite社製のMA−68II(商品名)を使用して測定した分光反射率から換算した受光角45°におけるL*C*h表色系における色相角度hとの差を意味する。
【0019】
ここでいうL*C*h表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されているL*a*b*表色系をベースに考案された表色系であって、hは色相角度を表わし、色度図において赤方向の軸を0°として、反時計方向に移動した角度である。
【0020】
さらに、本発明のメタリック塗料組成物には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0021】
本発明のメタリック塗料組成物は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜50質量%、好ましくは15〜30質量%に調整しておくことが好ましい。
【0022】
次に本発明の塗膜形成方法について説明する。
【0023】
本発明のメタリック塗料組成物は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜50μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。本発明のメタリック塗料組成物の塗膜それ自体は通常、約70〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0024】
本発明の塗膜形成方法においては、基材上に上記の如きメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に後に説明する次工程の塗料を塗装する。
【0025】
該基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して基材とすることができる。さらに、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて基材とすることもでき、これらのものが特に好ましい。
【0026】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0027】
また、上記中塗り塗膜とは、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0028】
また、基材として、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させる場合においては、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に前記メタリック塗料組成物を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、塗装することもできる。
【0029】
本発明の塗膜形成方法においては、上記の如きメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装することができる。
【0030】
本発明の塗膜形成方法におけるトップクリヤー塗料は、樹脂成分および溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる無色の透明塗膜を形成する液状塗料である。
【0031】
本発明方法におけるトップクリヤー塗料としては、従来公知のものが制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0032】
上記トップクリヤー塗料は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。トップクリヤー塗料の塗膜それ自体は約70〜150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0033】
本発明の塗膜形成方法において、上記トップクリヤー塗料は、メタリック塗料組成物を塗装後、乾燥硬化せしめた塗膜上に塗装することができるが、あるいはメタリック塗料組成物を塗装後、未硬化の状態で塗装してもよい。
【0034】
本発明の塗膜形成方法においては、メタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上にカラークリヤー塗料を塗装することができる。
【0035】
本発明の塗膜形成方法におけるカラークリヤー塗料は、樹脂成分、透明性を損なわない範囲内の着色顔料及び/又は染料、溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる有色の透明塗膜を形成する液状塗料である。
【0036】
本発明方法におけるカラークリヤー塗料としては、従来公知のクリヤー塗料に着色顔料及び/又は染料を配合せしめたものが使用できる。
【0037】
クリヤー塗料としては、例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノ−ル基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
上記カラークリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料及び/又は染料を配合する。着色顔料及び/又は染料としては、インク用、塗料用として従来公知の着色顔料や染料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、カラークリヤー塗膜中の樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以下、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.05〜1質量である。
【0039】
本発明においては、カラークリヤー塗料に着色顔料として、透明性着色顔料を配合することが特に好ましい。透明性顔料の配合方法としては、予め配合せしめる透明性着色顔料と分散剤、樹脂等をビーズミル等で分散して得られた顔料ペーストを配合することがカラークリヤー塗料の透明性の点から特に好ましい。透明性着色顔料としては具体的には、上記メタリック塗料組成物に配合せしめるものとして例示した顔料を好ましく用いることができる。
【0040】
本発明においては、メタリックベース塗料組成物を塗装して得られる塗膜と、さらにカラークリヤー塗料を塗装して得られる複層塗膜とのL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、特に好ましくは5以下である。
色相差Δhは、具体的には、予め黒色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に硬化塗膜として18μmの膜厚となるようにメタリック塗料組成物をエアスプレー塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にカラークリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、35μmとなるようにエアスプレー塗装し、さらに硬化乾燥せしめて得られた複層塗膜と、メタリック塗料組成物を塗装後、室温に放置後、カラークリヤー塗料を塗装せずにそのまま硬化乾燥せしめたメタリック塗料組成物による塗膜とを、それぞれX−Rite社製のMA−68II(商品名)を使用して測定した分光反射率から換算した受光角45°におけるL*C*h表色系における色相角度hの差分を意味する。
【0041】
上記カラークリヤー塗料は、静電塗装、エア−スプレ−、エアレススプレ−などの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜40μmの範囲内とするのが好ましい。カラークリヤー塗料の塗膜それ自体は約70〜150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0042】
また、カラークリヤー塗料は、前記メタリック塗料組成物による塗膜を加熱し、架橋硬化後に塗装することができる。あるいは、メタリック塗料組成物による塗膜が未硬化の状態で、塗装してもよい。
【0043】
本発明においては、上記カラークリヤー塗料による塗膜上にさらにトップクリヤー塗料を塗装して、トップクリヤー塗膜を形成せしめることができる。
【0044】
本発明の塗膜形成方法においては、カラークリヤー塗料を塗装後、加熱し、乾燥硬化後に、その塗膜上にトップクリヤー塗料を塗装することができるが、カラークリヤー塗料を塗装後にその未硬化の状態でトップクリヤー塗料を塗装して、その後に加熱し、これらを同時に硬化せしめることもできる。
【0045】
本発明の塗膜構造は、上記塗膜形成方法により得られる。
【0046】
本発明の塗装物品は、基材上に、上記塗膜形成方法で塗装して得られる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例及び比較例
基材の調整
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0048】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ル−ガベ−ク中塗りグレ−」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成した塗板を基材とした。
塗料の調整
メタリック塗料組成物として、水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100、数平均分子量20000)及びメラミン樹脂からなる樹脂成分100質量部(固形分)あたり、表1に示す比率で光輝性顔料及び着色顔料を配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調整した。
【0049】
また、カラークリヤー塗料として、クリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)の樹脂成分100質量部(固形分)あたり、表1に示す比率で着色顔料を配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約35%のカラークリヤー塗料を調整した。
【0050】
【表1】

【0051】
試験板の作成
実施例1〜3及び比較例1、2については、(1)で調整した基材に(2)で調整したメタリック塗料組成物をそれぞれREAガンを用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、25μmとなるように塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にトップクリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を作成した。
【0052】
実施例4〜6及び比較例3、4については、(1)で調整した基材に(2)で調整したメタリック塗料組成物をそれぞれREAガンを用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で、硬化塗膜として、25μmとなるように塗装し、室温にて15分間放置し、ついで、未硬化塗面にカラークリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。さらに未硬化塗面にトップクリヤー塗料(ル−ガベ−ククリヤ−、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をミニベル型回転式静電塗装機を用いて、ブ−ス温度25℃、湿度75%の条件で硬化塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を作成した。
評価試験
作成した試験板の測色及び目視による評価を行ない、結果を表2に示した。
【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のメタリック塗料組成物、塗膜形成方法及び塗装物品は、各種工業製品、特に自動車車体の外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分及び着色成分を含むメタリック塗料組成物であって、着色成分として、透明な鱗片状基材が酸化チタン及び/又は酸化チタンを還元した低次酸化チタンで被覆された低明度光輝性顔料及び透明性着色顔料を含むことを特徴とするメタリック塗料組成物。
【請求項2】
前記低明度光輝性顔料と透明性着色顔料のL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
透明性着色顔料としてカーボンブラック顔料を含み且つその含有量がメタリック塗料組成物中の樹脂成分100質量部に対して、3質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のメタリック塗料組成物。
【請求項4】
被塗物に請求項1〜3いずれか1項記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗物に請求項1〜3いずれか1項記載のメタリック塗料組成物を塗装して得られた塗膜上に、さらにカラークリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法。
【請求項6】
メタリック塗料組成物を塗装して得られる塗膜と、さらにカラークリヤー塗料を塗装して得られる複層塗膜とのL*C*h表色系による色相差Δhが、45以下である請求項5記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の塗膜形成方法で得られた塗膜上に、さらにトップクリヤー塗料を塗装する塗膜形成方法。
【請求項8】
請求項4〜7いずれか1項記載の塗膜形成方法にて得られた塗膜構造。
【請求項9】
請求項4〜7いずれか1項記載の塗膜形成方法にて得られた塗装物品。

【公開番号】特開2007−106925(P2007−106925A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300073(P2005−300073)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】