説明

メモリカードコネクタ

【課題】メモリカードの挿抜を、メモリカード自体を汚すことなく好適に行うこと。
【解決手段】カード挿入口から挿入されるメモリカード200を収容するコネクタ本体に、メモリカード200の収容領域の側方でメモリカード200の挿抜方向に沿ってスライダ150が移動自在に配置される。スライダ150はメモリカード200によって押圧されて挿抜方向(A、B方向)に移動し、コイルバネ160によって、脱抜方向(B方向)に付勢されている。スライダ150は、メモリカード200によって押圧されてカード装着位置でロックされ、ロック状態において、メモリカード200が挿入方向に移動することによってロックが解除され、コイルバネ160により排出方向される。コイルバネ160には付勢力を減衰させる潤滑剤が付与され、スライダ200は、上面に、上方とコイルバネ160側とに開口する切欠部154を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入されたメモリカードを装着位置と抜き取り可能な位置とで保持するメモリカードコネクタに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタルカメラで撮像された画像データを記憶する記録媒体、携帯型音楽再生機で再生される音楽デジタルデータを記憶する記録媒体、或いは、作成した文章データを記憶する記憶媒体として、カード型のメモリカードが知られている。
【0003】
メモリカードは、一般的に、外観が薄板形状に形成された小型の樹脂製パッケージの内部にフラッシュメモリが収容されており、パッケージの端部に電気的に接続される複数の電極が並設されている。
【0004】
このように構成されるメモリカードは、デジタルカメラ、携帯型音楽再生機、ノート型パソコン、携帯電話機等の装着される電子機器には、メモリカードコネクタを介して装着される。
【0005】
メモリカードコネクタとしては、例えば、特許文献1に示すように、装着されたメモリカードを、脱落または引き抜かれることを防止するロック機構を有するものが知られている。
【0006】
特許文献1のメモリカードコネクタのロック機構は、コネクタ本体の挿入口からカード収容空間に挿入されるメモリカードによって押圧されて前進するスライダと、スライダに設けられたロック爪と、スライダを抜脱方向へ付勢するイジェクト用のコイルバネと、スライダに形成されたハートカム溝に係合してスライダを装着位置に保持するロックピンとを有する。
【0007】
この構成では、メモリカードを挿入口から挿入すると、スライダはメモリカードにより押し込まれ、ロック爪にメモリカードの凹部が係合した状態で、ロックピンを介してハートカム溝に案内されつつ挿入方向に移動する。スライダが、メモリカードの装着位置まで移動すると、メモリカードはコネクタに装着位置で保持される(プッシュイン)。次いで、コネクタに装着されたメモリカードを再び挿入方向に押圧すると、スライダはハートカム溝におけるカードの装着位置から離脱して、カードの装着状態を解除し、コイルバネの付勢によってハートカム溝に案内されて抜脱方向に移動する。これにより、スライダはメモリカードを抜脱方向に押し出して排出する(プッシュアウト)。なお、スライダは、挿入口側に位置する際にはメモリカードを抜き取り可能に保持(ハーフロック)する。このタイプのメモリカードコネクタは、プッシュインプッシュアウト式として知られている。
【0008】
プッシュインプッシュアウト式のメモリカードコネクタでは、メモリカードを排出するプッシュアウト時では、コイルバネの反発力(付勢力)によって、スライダを介してメモリカードをスライドさせる。このため、ロック爪を介してメモリカードを保持するスライダの移動速度が高くなり、メモリカードが飛び出す虞がある。
【0009】
このため、特許文献1のメモリカードコネクタは、カード収容空間の上面を形成するプレートに、カード収容空間内に突出して設けられ、スライダの移動に伴い移動するメモリカードを下面側に押しつける板バネを有する。この板バネによるメモリカードの押圧によって、メモリカードの排出される速度を低くし、プッシュアウト時のメモリカードの飛び出しを防いでいる。この構成では、板バネが、メモリカードを直接押圧しているため、押し付ける付勢力が強すぎると、メモリカードの挿抜に際し、メモリカード自体に押圧痕(傷)が残るという問題がある。
【0010】
これに対し、特許文献2に示すように、ハウジング内に配置されたスライダの下面と、スライダが摺動する部位に潤滑剤を付与して、コイルバネによるスライダの移動速度を低くして、プッシュアウト時のメモリカードの飛び出しを防ぐ構成が知られている。なお、このスライダの上面はフラット面であり、ハウジングを覆うシェルの天面と若干の隙間を介して対向しており、天面と協働して、スライダ自体の上方への浮き上がりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−86293号公報
【特許文献2】特開2007−115623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
プッシュインプッシュアウト式のメモリカードコネクタにおいて、プッシュアウト時のメモリカードの飛び出しを一層、確実に防止するために、潤滑剤をコイルバネに付与し、コイルバネが付勢するスライダの速度をより減衰させる構成が考えられる。
【0013】
特許文献1に示すようにプッシュインプッシュアウト式のメモリカードコネクタでは、コイルバネは、スライダとコネクタ本体の奥側壁部との間に配置してスライダを付勢する。このため、スライダの移動領域とコイルバネが配設されて伸縮する領域(以下「伸縮領域」という)とが重なる構成を採っている。
【0014】
このため、コイルバネに付与した潤滑剤は、スライダの摺動によってコイルバネの伸縮領域内に付着するとともに、伸縮領域を覆うシェルの天面に付着する。天面に付着した潤滑剤は、スライダの上面との間の若干の隙間、つまり、狭い隙間の中で、毛細管現象のように塗り広がり、スライダの上面からカード収容空間内に漏れて、メモリカードに付着する虞がある。
【0015】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、メモリカードの挿抜を、メモリカード自体を汚すことなく好適に行うことができるメモリカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のメモリカードコネクタは、挿入口から挿入されるメモリカードを収容する扁平板状のコネクタ本体と、前記コネクタ本体に設けられ、前記メモリカードの端子と接触する接触端子と、前記コネクタ本体内に、前記メモリカードの収容領域の側方で前記メモリカードの挿抜方向に沿って移動自在に配置され、前記メモリカードによって押圧されて移動するスライダ、及び、前記コネクタ本体内で前記スライダより挿入方向側に配置され、スライダ120を挿入方向とは反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記メモリカードによって押圧されて移動する前記スライダをカード装着位置でロックするとともに、前記メモリカードが挿入方向に移動することによって前記スライダのロックを解除し、前記付勢部材の付勢力によって前記スライダを前記反対の方向に移動して前記メモリカードを排出するロック手段と、を有し、前記付勢部材には、前記付勢力を減衰する潤滑剤が付与され、前記スライダには、前記スライダを挿抜方向に案内する前記コネクタ本体の内面と対向する対向面に、前記内面側と前記付勢部材側とに開口する切欠部が形成されている構成を採る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メモリカードの挿抜を、メモリカード自体を汚すことなく好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るメモリカードコネクタの構成を示す斜視外観図
【図2】本発明の一実施の形態に係るメモリカードコネクタにおいてシェルを外した状態のハウジングの平面図
【図3】図2に示すハウジングの左側面図
【図4】図2に示すハウジングにおいて、コイルバネを外した状態のハウジングの平面図
【図5】図4に示すハウジングの底面図
【図6】ハートカム溝部を説明するための図であり、ハートカム部を後方からみた部分拡大斜視図
【図7】図6に示すハートカム溝部における段階的な斜面及び段部間のメモリカードコネクタの垂直方向における高さ関係を示す図
【図8】本実施の形態に係るメモリカードコネクタのシェルの斜視図
【図9】本実施の形態に係るメモリカードコネクタにおいて、スライダの移動により天板部に付着した潤滑剤の塗り広がりを示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係るメモリカードコネクタの構成を示す斜視外観図である。なお、図1では、メモリカードコネクタ100は、便宜上、上面部分を構成するシェル120を透視した状態で示している。また、図1に示すメモリカードコネクタ100では、メモリカード200を排出する際にスライダ150を付勢するコイルバネ160(図2参照)が便宜上省略されている。
【0021】
図1に示すメモリカードコネクタ100は、カード挿入口102から抜脱自在に挿入されるメモリカード200をコネクタの奥側(挿入方向A)に押圧することによって、カード200自体を挿入又は排出するプッシュインプッシュアウト式のコネクタである。なお、以下では、メモリカードコネクタ200を「コネクタ」とも称し、メモリカード200をカード200とも称する。
【0022】
具体的には、本実施の形態のコネクタ100は、平面視略矩形状の薄板状をなしており、コネクタ本体の内部に、カード200を収容する収容部104を備える。
【0023】
なお、本実施の形態におけるメモリカードコネクタ100の形状は、挿入されるカード200の寸法、形状に対応しているものとする。カード200は、種類ごとに決められた寸法、形状に形成されている。ここでは、カード200は、外形寸法を横幅略11mm×前後方向の長さ(全長)略15mm×厚さ略1mmとした矩形板状をなし、先端側の横幅を後端側の横幅11mmよりも狭く(長さを短く)して下面に複数の電極が配置されている。
【0024】
また、本実施の形態のコネクタ100に装着されるカード200には、一方の側面(カード200からみて挿入方向を先端側とした右側面)に、一側方(右側)に開口する係合凹部220が形成されている。また、カード200の一方の側面には、係合凹部220の先端側の側壁部分を構成する突起部230が形成されている。この突起部230の先端側の外面は、カード200の先端側から基端側に向かって右側方に立ち上がる傾斜面231となっており、この構成によって、矩形板状のカードでは、先端側の横幅が後端側の横幅よりも短くなっている。
【0025】
コネクタ100のコネクタ本体は、絶縁性を有する材料(ここでは、絶縁性の合成樹脂材)で形成された矩形状のハウジング110に、両側部がL字状に折り曲げられた導電性を有する材料(ここでは、金属板)で形成されたシェル120を被せることで形成されている。
【0026】
図2は、本発明の一実施の形態に係るコネクタにおいてシェルを外した状態のハウジングの平面図、図3は図2に示すハウジングの左側面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、ハウジング110は、コンタクト130が配設された平面視略矩形状の底板部112と、案内側壁部113と、側壁部114と、後端壁部115とを有する。
【0028】
案内側壁部113及び側壁部114は、底板部112において、カード挿入口102の開口縁の一部を形成する前側辺部112aと直交する両側辺部から立設され、且つ互いに対向する。後端壁部115は、底板部112においてカード挿入口102と反対の後側端辺部から立設する。
【0029】
図2に示すように、ハウジング110の底板部112には、挿入方向に移動自在なスライダ150を介して、挿入されたカード200を保持又は排出するロック機構部(ロック手段)140が配設されている。ロック機構部140は、底板部112において、収容部104となる領域の側方で、且つ、側壁部114に沿って配設されている。また、このロック機構部140と案内側壁部113の奥側部分との間には、挿入されるメモリカード(以下、単に「カード」ともいう)200の一側面(右側面)に対向し、且つ、最深部分まで後方に移動したスライダ150の後端部が当接する案内小壁部116が設けられている。
【0030】
この案内小壁部116は、収容部104に挿入されるカード200(図1参照)がロック機構部140のハートカム溝部180へ挿入されることを規制する。
【0031】
これら案内側壁部113、底板部112、ロック機構部140及び案内小壁部116によって、ハウジング110の上面側に開放した凹状をなし、収容部104の両側面及び底面を構成している。
【0032】
後端壁部115の略中央部分には、収容部104と挿入方向に連通する開口115eが形成され、この開口115e両側に、ハウジング110の後端側角部をそれぞれ形成する壁部115a、115bが配置されている。
【0033】
これら壁部115a、115bのうちロック機構部140側の壁部115bには、底板部112上に立設され前方に突出する案内片115cが形成されている。
【0034】
案内片115cは、底板部112上において、挿入方向に沿って配置されたロック機構部140よりも案内側壁部113側に近い位置に配置され、カード200の先端側の一側縁部を収める。ここでは、挿入されるカード200の形状に対応して、案内側壁部113との間隔は、案内側壁部113とロック機構部140との間隔よりも狭くなるように配置されている。
【0035】
これら案内側壁部113と案内片115cによって、カード200の先端側の横幅は規制される。これにより、カード200の電極と、底板部112に配設されたハウジング110側のコンタクト130との位置合わせを正確に行うことができる。
【0036】
コンタクト(カンチレバーコンタクト等)130は、ハウジング110の底板部112から収容部104内に突出して設けられている。コンタクト130の先端部である接点部132は、カード挿入口102に対向させて複数配列されており、収容部104に収容されたカード200の電極に電気的に接触する。
【0037】
コンタクト130は、ここでは、板ばね接触子である。コンタクト130では、接点部132は、挿入されるカード200の挿入方向に沿って延在し、且つ、底板部112の上面から挿入方向に突出して配置されるアーム部134の先端に形成されている。アーム部134は、底板部112に、先端の接点部132をハウジング110の後端壁部115側で、且つ、カード200の挿入方向と直交する方向に整列させた状態で配設されている。
【0038】
ここでは、コンタクト130は、アーム部134を一辺とする平面視V字またはU字形に加工された長尺帯状の金属板を加工してなる。また、コンタクト130は、インサート成形によってハウジング110に一体的に形成されている。コンタクト130のアーム部134は、底板部112に固定された基端部側で、固定片136の一端部に接続されている。固定片136は、底板部112に、底面に沿って配置されており、固定片136の他端部138は、後端壁部115の後端面から外方(後方)に突出している。この突出した他端部138は、実装基板にはんだ等で接合されるリード部となる。
【0039】
ロック機構部140は、スライダ150と、スライダ150に形成され、且つ、挿入されるカード200の係合凹部220に係合するロック爪部155と、コイルバネ160と、ロックピン170と、ハートカム溝部180とを有する。
【0040】
スライダ150は、底板部112とシェル120の天板部121との間に、挿入口側の位置(挿入口付近)から奥側に移動自在で、且つ、挿入口側の位置では揺動自在となるようにハウジング110に取り付けられている。
【0041】
スライダ150は、最も前側に移動した際の位置である挿入口側の位置(コネクタ100におけるカード挿入口102付近の位置)で、ロック爪部155をカード200の係合凹部220に係合させることによって当該カード200を挿抜自在に保持(ハーフロック)する。この位置を以下では、ハーフロック位置ともいう。スライダ150は、付勢部材であるコイルバネ160によって、カード200の反挿入方向(抜脱方向)側に付勢されており、ロック爪部155がカード200の係合凹部220に係合した状態でハーフロック位置から奥側に挿入方向に移動する。
【0042】
図4は、図2に示すハウジングにおいて、コイルバネ160を外した状態のハウジングの平面図であり、スライダ150がカード200との係合位置から退避した状態の説明に供する図である。また、図5は、図4に示すハウジングの底面図である。これら図4及び図5に示すスライダ150は、傾倒し、ロック爪部155を、カード200の係合凹部220との係合位置から退避させた位置に配置されているものとする。
【0043】
図2、図4及び図5に示すように、スライダ150は、底板部112上に配置されるスライダ本体152と、スライダ本体152から前側に突出する頸部153と、頸部153から前側に突出し、且つ、収容部104側に張り出して形成されたロック爪部155とを有する。
【0044】
スライダ本体152の下面には、下方に突出する案内突起部151(図5参照)が形成されている。この案内突起部151は、底板部112に形成されたスリット117に移動自在に遊嵌されている。
【0045】
案内突起部151は、スライダ本体152の下面において挿入方向(前後方向)に延在する突条に形成されており、スライダ本体152における下面の幅方向の長さよりも前後方向に長い。案内突起部151は、ハウジング110において前後方向に延在するスリット117内をスリット117にガイドされつつ移動する。
【0046】
図5に示すように、案内突起部151が遊嵌されたスリット117は、底板部112に、ハウジング110の前後方向に延在すると共に、カード挿入口102側の端部では、収容部104側とは反対側に拡がるように形成されている。
【0047】
ここでは、スリット117では、カード挿入口102側の先端部117aは、側方に向かって拡がる扇状をなしており、この扇状の先端部117aに案内突起部151が位置する場合、案内突起部151は基端部側を中心に揺動自在となる。
【0048】
扇状の先端部117aに連続して長穴部分117bが形成され、この長穴部分117bに沿って案内突起部151は、スリット117の奥側に直線的に移動する。なお、案内突起部151は、長穴状部分117bの奥側の端部では、左右方向とともに基端側への移動が規制される。
【0049】
スリット117に沿う案内突起部151の移動に伴って、底板部112上を移動するスライダ本体152は、図2〜図4に示すように、上面に、天板部121側に開口するとともに、スライダ本体152の基端部側で開口する切欠部154を有する。
【0050】
切欠部154は、天板部121の裏面から離間する底面154aを備え、収容部104側は、スライド本体152の上面における収容部104側の側辺部から立ち上がる仕切り壁部157によって仕切られている。
【0051】
切欠部154は、スライド本体152の上面から頸部153及びロック爪部155の双方の上面に延在するように形成されており、ロック爪部155の先端側でも開口するように形成されている。つまり、切欠部154は、スライド本体152において、コネクタ本体の内面である天板部121の裏面に対向する対向面(スライド本体の上面)に、スライダ150の移動方向に沿って延在している。また、この切欠部154の底面は、天板部121と離間し、且つ平行な面である。
【0052】
スライダ150の上面側では、天板部121と、収容部104側を仕切る仕切り壁部157と、ガイド壁159と、基端部(スライダ本体152の基端部)側から先端部(ロック爪部155の先端部)まで延在する切欠部154の底面154aとによってスペース(切欠部154)が形成される。このスペースは、後述するが、ロック機構部140で使用される潤滑剤が天板部121に付着した後での潤滑剤流路、或いは潤滑剤貯留空間として機能する。
【0053】
ロック爪部155は、頸部153における収容部104側の側面153aよりも収容部104側に位置する側面155aを有する。この側面155aの後端と、頸部153における収容部104側の側面153aとは傾斜面155bによって連続している。
【0054】
傾斜面155bは、側面155a、153aの双方と交差しており、カード200が挿入されると、カード200の側面が、先端側から側面155a、傾斜面155b、側面153aの順に円滑に摺動する。そして、カード200の係合凹部220内に、側面155aが位置すると、ロック爪部155が係合凹部220に係合する状態となる。
【0055】
スライダ本体152の後端部には、コイルバネ160(図2参照)を受けるバネ受け突起部158と、ロックピン170を保持するピン保持部156とが設けられている。
【0056】
バネ受け突起部158は、スライダ本体152の後端部から後方に突出して設けられ、コイルバネ160(図2参照)の一端部が外嵌されている。
【0057】
図2に示すように、コイルバネ160は、圧縮コイルバネであり、他端部を後端壁部115bから前方に突出する突出部115gに外嵌させて、スライダ150と後端壁部115bとの間に挿入方向に沿って配置されている。
【0058】
これにより、スライダ150は、常に前方に付勢され、カード200が収容部104内に挿入されていない場合、最も前側の移動終了位置であるハーフロック位置で、ロック爪部155が収容部104内に突出した状態、つまり、挿入方向に沿った状態で配置される。
【0059】
また、図2、図4に示すピン保持部156には、スライダ本体152から収容部104側に突出した部位の上面に孔部が形成されている。この孔部に、ハートカム溝部180に一端部(基端部)172が連結されたロックピン170の他端部(先端部)174が回動自在に挿入されている。ロックピン170は、丸棒の両端部を直角に折り曲げることによってコ字状に形成されている。ここでは、ロックピン170は、一端部(基端部)172を形成する折り曲げ軸がハートカム溝部180内に移動自在に配置され、他端部(先端部)174を形成する折り曲げ軸がピン保持部156の孔部に回動自在に挿入されている。このロックピン170は、シェル120のピン圧接片124、126(図8参照)によってハートカム溝部180側に押圧される。
【0060】
また、ピン保持部156は、スライダ本体152の後端部における収容部104側の側面から収容部104側に突出して形成され、カード挿入口102側に、カード200の突起部230の傾斜面231が当接する傾斜部156aが形成されている。
【0061】
傾斜部156aは、挿入方向と交差する斜面であり、収容部104に挿入されるカード200によって挿入方向に押圧される。これにより、カード200を収容部104の奥側に挿入するだけで、スライダ150自体も追従して収容部104の奥側、つまり、カード200が収容部104に収容された位置であるカード装着位置に移動される。
【0062】
ロックピン170はハートカム溝部180の従動節となっており、スライダ150とロックピン170はハートカム溝部180の軌跡に従動して相対変位する。すなわち、スライダ150の挿抜方向への移動に伴ってロックピン170の基端部172はハートカム溝部180を移動する。
【0063】
図6は、ハートカム溝部180を説明するための図であり、ハートカム部を後方からみた部分拡大斜視図、図7は、図6に示すハートカム溝部180における段階的な斜面及び段部間のコネクタの垂直方向における高さ関係を示す図である。
【0064】
このハートカム溝部180の底面は、先端部174をスライダ150に回動自在に接続したロックピン170の基端部172が所定の方向へと案内されるように、段階的な複数のスロープおよび段部182a〜182hが形成されており、いわゆるハートロックカム機構を構成している。ロックピン170の基端部172がハーフロック位置から出発して、カード装着位置を経て、ハーフロック位置へ復帰するまでの各スロープ182a〜182h間の高さ関係は、図7に示すように形成されている。
【0065】
ここでは、スロープ及び段部182a〜182hは、当接するロックピン170の他端部が逆軌跡を描かないように形成されたものである。
【0066】
図6に示すように、ハートカム溝部180における軌跡の出発点となる底面182aは、スライダ150の底面と平行する平面となっている。そして、底面182aから立ち上がるようにして斜面となるスロープ182bが形成されている。
【0067】
斜面としての底面であるスロープ182bを過ぎると、底面182aより高い平面を有する底面182cとなっている。底面182cを過ぎると段差となって、底面182cより低い平面を有する屈曲した底面182dとなる。
【0068】
すなわち、ロックピン170の基端部172は、スライダ150がハーフロック位置からカード装着位置に移動する過程では、底面182a、スロープ182b、底面182c、底面182d、底面182eの順に摺動する。底面182dに到達した際には、底面182cに戻ることはできない。そして、底面182dを過ぎると段差となって、底面182dより低い平面を有する底面182eとなる。
【0069】
底面182eは、カード挿入口102側に突出する平面視V字状の内壁によりV字溝を形成している。ロックピン170の基端部172は、スライダ150がハーフロック位置(カード挿入口側位置)からカード装着位置に移動する過程においては、底面182eに到達した場合には底面182dに戻ることはできない。基端部172がV字溝34の底面182eに到達した状態は、カード200のロック状態又は装着状態となる。このように基端部172が底面182aから底面182eに到る軌跡は往路の軌跡となる。
【0070】
底面182eと底面182fとの間には段差が形成され、底面182fは底面182eよりも低い面である。この底面182fに連続して、底面182fから立ち上がるようにしてカード挿入方側に傾斜した斜面である底面(スロープ)182gが形成されている。このスロープ182gの挿入口側には、スロープ182gより高い平面を有する底面182hが形成されている。この底面182hのカード挿入口102側には、段差が形成され、底面182hより低い平面を有する底面182aが配置されている。
【0071】
よって、コイルバネ160の付勢力に抗して、カード200をコネクタ100の奥側、つまり後側に更に挿入すると、ロックピン170の基端部172は、V字溝34から解放されて、底面182e、底面182f、スロープ182g、底面182hの順に摺動して、底面182a上に戻る。
【0072】
このようにハートカム溝部180は、底面上を摺動するロックピン170の接触点がハート状の平面軌跡を描きつつ、高さ方向には部分的に不可逆な軌跡を描くように形成されている。
【0073】
また、ハートカム溝部180は、コネクタ100において、収容部104に収容されたカードの先端部と、コネクタ100の一方の側面(カード挿入口102を正面視して右側の側面)に沿って、挿入方向に延在するコイルバネ160との間に配置されている。
【0074】
つまり、コネクタ100において、ハウジング110上に、収容部104と、スライダ150を付勢するコイルバネ160及びハートカム溝部180を含むロック機構部140とが収まりよく合理的に配置されている。
【0075】
よって、コネクタ100では、当該コネクタ100の横幅を、カード200自体の横幅と、ロック機構部140の横幅とを合わせた長さの幅に近似した長さに形成されており、小型化が図られ、実装スペースの省スペース化が図られている。
【0076】
上記構成のハウジング110の底板部112上に配置されたスライダ150は、ハウジング110を上方から覆うシェル120の天板部121(図1及び図2参照)によって、上下方向への移動を規制され、前後方向及びスリット117の先端部117a上での水平方向にのみ移動自在となっている。
【0077】
図8は、本実施の形態に係るコネクタのシェルの斜視図である。
【0078】
シェル120の天板部121には、ハーフロック位置に位置するスライダ150におけるスライダ本体152に対向する部位に切欠122a(図1及び図8参照)が形成され、この切り欠き122a内には、天板部121と面一の舌片122が設けられている。
【0079】
また、シェル120の天板部121には、ハートカム溝部180に対して上方で対向する部位に、ピン圧接片124、126が形成されている。ピン圧接片124、126は、スライダ150に連動して移動するロックピン170(図2参照)に上方から圧力を加え、ロックピン170を、ハートカム溝部180に押し付けて、当該ハートカム溝部180の底面上を摺動させる。なお、爪押圧片128は、シェル120の側面部の一部を加工した長尺帯状の弾性部材(板バネ)であり、ハーフロック位置において、コイルバネ160が前方に押圧しているスライダ150を、収容部104側に押圧する。
【0080】
すなわち、ハーフロック位置に位置するスライダ150は、ロック爪部155を収容部104内に突出させた状態で、爪押圧片128の押圧力に抗して揺動自在に配置された状態となっている。よって、図1に示すように、スライダ150がハーフロック位置に位置する状態で、収容部104にカード200を挿入すれば、弾性変形するロック爪部155の突端が、カード200の係合凹部220に係脱自在に係合して、カード200を挿抜自在に保持(ハーフロック)できる。
【0081】
このように構成されたメモリカードコネクタ100では、カード200を装着或いはハーフロックさせるために可動させる部位、ここでは、コイルバネ160に、潤滑剤が付与される。
【0082】
潤滑剤は、半固体潤滑剤(グリース)であることが望ましく、コイルバネ160の摺動部分等を含む可動部分に付与される。これにより、コイルバネ160の付勢力を減衰させ、コイルバネ160の付勢力によって排出方向(図1に示すB方向)に移動されるスライダ150の移動速度を減少させる。具体的には、潤滑剤は、バネ伸縮領域において、伸びた状態のコイルバネ160に全面的に付与される。
【0083】
潤滑剤は、カード200のイジェクト時において、ロック状態のカードを指先で弾いて(挿入方向に押して)ロック解除した際に、コイルバネ160の付勢力によってカード抜脱方向(排出方向)に移動するスライダ150とカード200の勢いを、粘性によって減衰させるちょう度を有する。これにより、コネクタから排出されるカード200の表面に押圧痕を残すことなく当該カード200の飛び出しを防止することができる。なお、潤滑剤は、スライダ150の下面と、底板部112においてスライダ150の下面が摺動する部位に付与されても良い。これにより、スライダ150自体の移動速度を減少させることでき、カード200の飛び出しをより効果的に防止できる。
【0084】
メモリカード100にカード200が挿入されると、ハーフロック位置のスライダ150では、ロック爪部155がカード200の側面を摺動して、カード200の突起部230から係合凹部220に入り込むことで係合凹部220に係合する。これにより、カード200自体は、ロック爪部155に挿抜自在なハーフロック状態で保持される(図1参照)。
【0085】
図1に示すハーフロック状態のメモリカードコネクタ100に対し、カード200を図中矢印Aの方向に更に挿入する。すると、スライダ150は、ロック爪部155を係合凹部220に係合させた状態のまま、コイルバネ160の付勢力に抗してスリット117にガイドされて、挿入方向に移動する。スライダ150がカード装着位置に至ると、ロックピン170の基端部172がV字溝34に掛止され、カード20における先端側下面の電極が複数のコンタクト(カンチレバーコンタクト)130と接触し、カード200は装着される。なお、このとき、スライダ150の後端部は、コイルバネ160の伸縮領域に位置する。
【0086】
このようにカード200を装着した状態において、更に、カード200を挿入方向に更に挿入すると、カード200に押圧されるスライダ150は、コイルバネの付勢力に抗して、奥側に移動する。これにより、スライダ150に追従して移動するロックピン170の基端部172(折り曲げ軸)は、V字溝34から離脱し、コイルバネの付勢力によって、復路の軌跡を描き、スライダ150は、コイルバネ160の付勢力により抜脱方向に移動する。これにより、スライダ150は、当接面でカード200の突起部230を抜脱方向へ押圧するとともに、ロック爪部155で係合凹部220の側面を抜脱方向へ押圧することとなって、カード200自体は抜脱方向に移動する。
【0087】
このようにスライダ150は、コイルバネ160の付勢力によってカード装着位置からハーフロック位置まで移動するが、その際、潤滑剤によって、その移動の加速が抑制されつつ移動する。
【0088】
また、スライダ150には、爪押圧片128によってカード200側への押圧力、つまり、抜脱方向に抗する力が加わっているため、更に、抜脱方向の移動の加速が抑制される(図1参照)。このようにメモリカードコネクタ100では、爪押圧片128は、潤滑剤により減衰されたコイルバネ160の付勢力とともに、スライダ150がカード装着位置からハーフロック位置に戻る場合の移動力、つまり、カード排出動作時におけるスライダ150の移動力を減衰させている。
【0089】
このメモリカードコネクタ100では、カード200の装着動作とカード200の排出動作とを繰り返すことによって、スライダ150は、ハーフロック位置と、カード装着位置との間を移動し、この移動に伴ってコイルバネ160は伸縮する。コイルバネ160の伸縮に伴ってコイルバネ160に塗布した潤滑剤は、コイルバネ160の伸縮領域に塗り広がり、この伸縮領域内を出入りするスライダ150によって押圧される。これにより、潤滑剤は、伸縮領域を覆う天板部121に押し出されて付着する。
【0090】
ここで、ハウジング110の底板部112においてスライダ150が摺動する部位では、コイルバネ160が伸縮する部分(コイルバネ160の伸縮領域)と収容部104を構成する部分とが、スリット117(図4及び図5参照)によって分断されている。
【0091】
このため、コイルバネ160の伸縮領域から塗り広がって、スライダ150の下面に潤滑剤が付着し、毛細管現象によってスライダ150の摺動部分(下面)から収容部104側に塗り広がろうとするが、スリット117によって分断される。これにより、潤滑剤は収容部104には至らない。具体的には、図5に示すように、コイルバネ160が伸縮する部分(コイルバネ160の伸縮領域)側から収容部104側(矢印Cで示す方向)に、塗り広がらない。
【0092】
図9は、スライダの移動により天板部121に付着した潤滑剤Fの塗り広がりを示す図である。なお、矢印A、Bで示す方向は図1のものと同様に、矢印Aはカード挿入方向を示し、矢印Bはカード排出方向を示す。
【0093】
図9に示すように、スライダ150のスライダ本体152では、スライダ150がコイルバネ160の伸縮領域で天板部121に付着した潤滑剤は、スライダ150の移動に伴って、スライダ150に対して矢印F1で示すように付着する。そして、潤滑剤は切欠部154内に流れる(矢印F2参照)ことになり、仕切り壁部157で仕切られて切欠部154に案内されるともに切欠部154内に貯留される。
【0094】
したがって、天板部121に付着した潤滑剤は、その位置に、スライダ150が移動してスライダ150の上面に付着しても、天板部121と移動するスライダ150との間で毛細管現象は発生しないため、矢印F3の方向に広がらずに、切欠部154内を矢印F4の方向に広がる。
【0095】
よって、潤滑剤は、天板121とスライダ150の上面との間から収容部104側に塗り広がることがない。
【0096】
これにより、カード200を、メモリカードコネクタ100の収容部104内へ挿入したり、収容部104内に装着されたカード200を収容部104から排出したりする動作を繰り返して行っても、挿抜されるカード200に潤滑剤が付着することがない。
【0097】
また、天板部121は、平面視した際に、切欠122aによって、スライダ150の移動領域では、コイルバネ160の伸縮領域側と、収容部104側とが分断されている。よって、天板部121においてコイルバネ160側から潤滑剤が付着しても収容部104側に広がることを防ぐことができる。
【0098】
本発明に係るコネクタは上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係るコネクタは、メモリカードの挿抜を、メモリカード自体を汚すことなく好適に行うことができる効果を有し、フラッシュメモリチップ程度の極小なカードを装着するコネクタとして有用である。
【符号の説明】
【0100】
100 メモリカードコネクタ
102 カード挿入口
104 収容部
110 ハウジング
112 底板部
117 スリット
120 シェル
121 シェルの天板部
130 コンタクト
140 ロック機構部
150 スライダ
154 切欠部
155 ロック爪部
160 コイルバネ
170 ロックピン
180 ハートカム溝部
200 メモリカード
220 係合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口から挿入されるメモリカードを収容する扁平板状のコネクタ本体と、
前記コネクタ本体に設けられ、前記メモリカードの端子と接触する接触端子と、
前記コネクタ本体内に、前記メモリカードの収容領域の側方で前記メモリカードの挿抜方向に沿って移動自在に配置され、前記メモリカードによって押圧されて移動するスライダ、及び、前記コネクタ本体内で前記スライダより挿入方向側に配置され、スライダを挿入方向とは反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記メモリカードによって押圧されて移動する前記スライダをカード装着位置でロックするとともに、前記メモリカードが挿入方向に移動することによって前記スライダのロックを解除し、前記付勢部材の付勢力によって前記スライダを前記反対の方向に移動して前記メモリカードを排出するロック手段と、
を有し、
前記付勢部材には、前記付勢力を減衰する潤滑剤が付与され、
前記スライダには、前記スライダを挿抜方向に案内する前記コネクタ本体の内面と対向する対向面に、前記内面側と前記付勢部材側とに開口する切欠部が形成されている、
メモリカードコネクタ。
【請求項2】
前記切欠部は、前記スライダの対向面に、前記スライダの移動方向に沿って延在して設けられる、
請求項1記載のメモリカードコネクタ。
【請求項3】
前記切欠部の底面は、前記切欠部に対向する前記コネクタ本体の内面と離間し、且つ前記内面と平行な面である、
請求項1記載のメモリカードコネクタ。
【請求項4】
前記対向面は、前記スライダの上下面のうち少なくとも一方の面であり、
前記切欠部は、前記スライダの一方の面において、前記収容領域側の側辺部から立ち上がる仕切り壁部によって仕切られている、
請求項1記載のメモリカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108404(P2011−108404A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259943(P2009−259943)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】