説明

メールサーバ、携帯情報端末及び通信システム

【課題】通信相手側とのつながり感を増大させ、且つ、送信側のプライバシを保護可能な電子メールを配信する通信システムを提供する。
【解決手段】メールサーバ500は、携帯情報端末100から電子メールを受信した基地局300と、電子メールのあて先の携帯情報端末200に電子メールを送信する基地局400との間の方位を演算する方位演算部510と、方位演算部510で演算された方位を示す方位情報を、電子メールに添付する方位情報添付部520とを備える。携帯情報端末200は、方位を取得する方位コンパスと、方位情報が添付された電子メールを受信すると、方位情報を読み出す方位情報読出し部と、方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メールサーバ、携帯情報端末及び通信システムに関し、更に詳しくは、電子メールを伝送する通信システムのためのメールサーバ、そのようなメールサーバと共に使用して好適な携帯情報端末、及び、これらを含む通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話サービスを提供する通信システムでは、従来の音声通話に加え、電子メールを伝送するサービス形態の利用が増加している。携帯電話機では、メール受信時や音声着信時におけるユーザへの通知は、相手側が存在する場所に依存することなく、同一の画面で、且つ、ユーザが設定した同じ着信音で通知される。
【0003】
ところで、最近の携帯電話機には、GPS装置など位置検出機能を搭載している機種も増加しており、位置情報の提供を行えば、相手側に自身の居場所を通知することも可能である。この場合、相手側に親近感を抱かせることが出来る。しかし、送信者の居場所は、極めてプライベートな情報であるため、親しい友人など特定の相手にしか使用されないなど、電子メールの送信に際しては、位置検出機能の使用範囲が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-364222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、自身の位置情報ではなく、方位の情報へと情報のランクを落とすこととし、個人の特定はできないようにしながらも、どの方位に自身がいるかどうかはできるようにすれば、通信相手側に人間同士のつながり感を持たせることが可能になる。
【0006】
特許文献1には、待ち合わせなどに際して、通信相手側の方位及び距離を表示装置上に表示する携帯情報端末が記載されている。この技術のうち相手側の方位のみを表示すれば、プライバシをさほど損なうことなく、上記人間同士のつながり感を持たせることが可能になる。しかし、同特許文献の技術では、GPS装置などの位置検出機能を用いて取得した自装置の位置情報と、通信相手側から取得した相手側の位置情報とから、双方の装置間の距離及び方位を計算している。このため、方位の計算に大きな処理時間が必要となり、また、携帯情報端末のCPU負荷を増大させる。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、携帯情報端末で受信した電子メールの受信表示に際して、メール送信側の方位を表示装置上に表示させることにより、相手側とのつながり感を増大させることができ、且つ、その際に、携帯情報端末における処理時間やCPU負荷をさほど増大させないで電子メールを配信可能なメールサーバ、そのようなメールサーバと共に使用して好適な携帯情報端末、及び、それらを含む通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部と、を備えるメールサーバを提供する。
【0009】
また、本発明は、筐体の方位を取得する方位コンパスと、方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部と、を備える携帯情報端末を提供する。
【0010】
更に、本発明は、送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部とを有するメールサーバ、及び、筐体の方位を取得する方位コンパスと、前記方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部とを有する携帯情報端末を備える通信システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメールサーバ、携帯情報端末及び通信システムでは、携帯情報端末の処理時間やCPU負荷をさほど増大させないで、通信相手との間で良好なつながり感が得られる電子メールの受信表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る、メールサーバ及び携帯情報端末を含む通信システムのブロック図。
【図2】図1の携帯情報端末のブロック図。
【図3】図1の通信システムの処理を示すフローチャート。
【図4】図1の携帯情報端末における第1の態様の処理を示すブロック図。
【図5】図1の携帯情報端末における第2の態様の処理を示すブロック図。
【図6】図1の携帯情報端末における第3の態様の処理を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概要を説明する。本発明のメールサーバは、その最小構成において、送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部とを備える。
【0014】
また、本発明の携帯情報端末は、その最小構成において、筐体の方位を取得する方位コンパスと、方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部とを備える。
【0015】
更に、本発明の通信システムは、その最小構成において、送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部とを有するメールサーバ、及び、筐体の方位を取得する方位コンパスと、前記方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部とを有する携帯情報端末を備える。
【0016】
本発明のメールサーバ、携帯情報端末及び通信システムでは、携帯情報端末の処理時間やCPU負荷をさほど増大させないで、電子メールの送信側の携帯情報端末の方位を受信側の携帯情報端末の表示装置上に表示するので、受信側の携帯情報端末のユーザには、通信相手との間で良好なつながり感が得られる。
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る、メールサーバ及び携帯情報端末(携帯電話機)を含む通信システムのブロック図である。通信システムは、メールサーバ500と、メールサーバ500にインターネット網を介して接続された複数の基地局300、400と、各基地局300、400に無線通信回線を介して接続された複数の携帯情報端末(以下、端末装置と呼ぶ)100、200、とを有する。メールサーバ500は、方位演算部510と、方位情報添付部520と、メール配信部530とを有する。
【0018】
メールサーバ500の方位演算部510は、予め基地局300、400からその位置情報(GPS情報)を受信しており、関連する基地局全体の位置情報のリストを保存している。方位演算部510は、電子メールを受信すると、まず、電子メールの送信元の基地局300を認識し、次いで、電子メールの送信先の端末装置200を探索し、端末装置200が接続する基地局400を選び出す。方位演算部510は、次いで、双方の基地局のGPS情報に基づいて、基地局300から基地局400に向かう方位を演算する。方位情報添付部520は、方位演算部510が算出した方位の情報を、受信した電子メールのヘッダに対して方位タグとして添付する。メール配信部530は、インターネットを介して、その電子メールを基地局400を経由し端末装置200に向けて配信する。ここでは、方位の情報は、例えば、北、北東、東、東南、南など、45度刻みとする。
【0019】
図2は、端末装置200のブロック図である。なお、同図では、本発明に直接に関係しない要素を除いて示している。端末装置200は、方位コンパス(電子コンパス)210と、メール送受信部220と、メーラー230と、制御部240と、表示装置250とを有する。方位コンパス210は、例えば3軸の磁気センサであり、端末装置200の筐体が向いている方位をリアルタイムで検出する。メール送受信部220は、基地局400から無線通信回線を経由して電子メールを受信し、また、基地局400に向けて無線通信回線を経由して電子メールを送信する。メーラー230は、受信した電子メールから方位情報を読み出す方位情報読出し部231と、電子メールに関するその他の処理を行う電子メール操作部232とを有する。制御部240は、メーラー230から電子メールを受け取った旨の信号を受信すると、そのメール受信の旨を表示装置250に表示すると共に、電子メールに添付された方位を筐体の方位に関連付けて表示する。また、制御部240は、メーラー230が受信した電子メールや、作成した電子メールなどを表示装置250上で表示する制御を行う。端末装置100は、端末装置200と同じ構成を有する。
【0020】
図3は、上記通信システムにおける処理を示すフローチャートである。まず、ユーザが、端末装置100を用いて、電子メールを送信する(ステップA1)。基地局300は、電子メールをそのまま転送し処理を終了する。メールサーバ500は、まず、転送した基地局300を認識し、また、送信先の端末装置200の接続する基地局400を認識し、基地局300から基地局400に向かう方位を計算する(ステップA2)。メールサーバ500は、計算した方位を電子メールのヘッダに添付し(ステップA3)、インターネットを経由してその電子メールを配信し(ステップA4)、処理を終了する。基地局400は、メールサーバ500から配信された電子メールを端末装置に転送し、処理を終了する。
【0021】
端末装置200は、電子メールを受信すると(ステップA5)、方位タグの有無を判定し(ステップA6)、方位タグが検出されなければ通常の受信表示を行う(ステップA10)。ステップA6で、方位タグが検出されると、方位コンパス210を用いて端末装置の現在の方位を測定する(ステップA7)。次いで、端末装置200は、メールに添付された方位情報の方位と、自装置の筐体の方位との差を演算し(ステップA8)、その差に基づいて、方位情報を付加したメール受信情報を表示装置250上に表示し、端末装置200のユーザにメール受信の旨を通知する(ステップA9)。端末装置200は、受信した電子メールと共に、添付された方位情報も保存する。この方位情報は、電子メールの履歴表示などの際に、電子メールを特定する表示と同時に表示される。また、電話帳の電話番号や、アドレス表示などにも表示される。
【0022】
図4〜図6はそれぞれ、上記実施形態の端末装置200の表示装置250が、電子メールのアイコンを方位情報と共に表示する態様を示している。図4に示す態様は、方位北(基準方位)を示すアイコン201を表示装置250の筐体の上方向に向けて表示し、且つ、電子メールの送信者の方位を示す矢印を受信電子メールのアイコン202に向けて表示する。図5に示す態様では、受信した電子メールのアイコン202に付加した矢印を表示装置250の縦方向に向けて表示し、方位北のアイコン201をそれに従って表示する。この例では、電子メールが来た方向に端末装置200の筐体を向けると、方位北のアイコン201が筐体の斜め方向に向けられる。図6は、図4に示す態様の表示をする端末装置200のユーザが、電子メールに返信する際の、携帯端末装置200の表示態様を示している。返信メールが送信されると、返信メールを示すアイコン203に対し、返信メールが送信される方向を向いた矢印が添付され表示される。
【0023】
携帯電話機では、メール受信の旨をユーザに通知する一般的な通知方法では、送信者に依存して表示態様や着信音を変えることが可能であったものの、送信者が存在する場所に依存して変えることはなく、ほぼ画一的な通知態様が採られていた。上記実施形態では、同じ相手とのメール遣り取りでも、相手が存在する位置の方位に依存して、表示態様の変更が可能になる。
【0024】
上記のような、通信相手の正確な居場所ではなく、通信相手の方位を通知することによっても、感覚的に通信相手の存在を実感することができ、相手側とのつながり感が増大する。また、位置情報ではなく方位を表示することにより、ユーザの居場所を特定することは困難である。従って、情報セキュリティ保護の観点からも、方位利用に対する抵抗感が少ないため、その利用が容易となる。
【0025】
位置情報を用いる場合には、現在地の測位をする処理時間が長くなり、端末装置の処理が遅延し、或いは、CPU負荷が増大する。また、測位環境によっても測位処理が影響を受ける。しかし、方位を検出する方位センサによる処理時間は短く済み、方位検出の際に環境から受ける影響も軽微で済む場合が多い。
【0026】
なお、上記実施形態では、携帯電話機を例に挙げて本発明を説明したが、本発明の情報端末装置は、携帯電話機に限定されるものではなく、通信機能を有する情報端末に適用可能である。
【0027】
本発明を特別に示し且つ例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明は、その実施形態及びその変形に限定されるものではない。当業者に明らかなように、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
100、200:携帯情報端末(端末装置)
201:方位北のアイコン
202:電子メールのアイコン
203:返信メールのアイコン
210:方位コンパス
220:メール送受信部
230:メーラー
231:方位情報読出し部
232:電子メール操作部
240:制御部
250:表示装置(表示部)
300、400:基地局
500:メールサーバ
510:方位演算部
520:方位情報添付部
530:メール配信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、
前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部と、を備えるメールサーバ。
【請求項2】
前記方位演算部は、基地局の位置情報をリストとして保存する、請求項1に記載のメールサーバ。
【請求項3】
筐体の方位を取得する方位コンパスと、
方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、
前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部と、を備える携帯情報端末。
【請求項4】
前記表示部は、前記方位コンパスで取得された方位に依存して画面表示の向きを変化させる、請求項3に記載の携帯情報端末。
【請求項5】
前記表示部は、基準方位を上にして、前記方位コンパスで取得された方位を画面上に表示する、請求項3に記載の携帯情報端末。
【請求項6】
前記表示部は、前記方位情報の方位に基づいて、返信メールのあて先の携帯情報端末の方位を表示する、請求項3〜5の何れか1項に記載の携帯情報端末。
【請求項7】
前記電子メールに添付された方位情報を、対応する電話帳の電話番号、アドレス表示、及び、通信履歴の少なくとも1つに保存する、請求項3〜6の何れか1項に記載の携帯情報端末。
【請求項8】
前記表示装置は、新たに作成する電子メールの表示に際して、前記保存された方位情報を表示する、請求項3〜7の何れか1項に記載の携帯情報端末。
【請求項9】
送信元の携帯情報端末から電子メールを受信した基地局と、前記電子メールのあて先の携帯情報端末に前記電子メールを送信する基地局との間の方位を演算する方位演算部と、前記方位演算部で演算された方位を示す方位情報を、前記電子メールに添付する方位情報添付部とを有するメールサーバ、及び、筐体の方位を取得する方位コンパスと、前記方位情報が添付された電子メールを受信すると、該方位情報を読み出す方位情報読出し部と、前記方位コンパスで取得された方位に関連付けて、前記電子メールに添付された方位情報の方位を表示する表示部とを有する携帯情報端末を備える通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−130045(P2011−130045A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284750(P2009−284750)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】