モノパルスドップラレーダ装置
【課題】方位を含むターゲット検知データを短い周期で算出できるモノパルスドップラレーダ装置を提供する。
【解決手段】モノパルスドップラレーダ装置100は、A/D変換部126からI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を入力してターゲットの距離、相対速度及び方位を算出するディジタル演算処理部として、主演算処理部130と高速演算が可能な補助演算処理部140の2つを備える構成としている。補助演算処理部140では、演算量が多いプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を行わせ、主演算処理部130では、方位算出処理を行わせている。また、主演算処理部130における方位算出処理は、ターゲット判定処理でターゲットが検出された距離ゲートおよび周波数ゲートに対してのみ行わせるようにすることで、方位算出処理で行う演算量を大幅に低減している。
【解決手段】モノパルスドップラレーダ装置100は、A/D変換部126からI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を入力してターゲットの距離、相対速度及び方位を算出するディジタル演算処理部として、主演算処理部130と高速演算が可能な補助演算処理部140の2つを備える構成としている。補助演算処理部140では、演算量が多いプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を行わせ、主演算処理部130では、方位算出処理を行わせている。また、主演算処理部130における方位算出処理は、ターゲット判定処理でターゲットが検出された距離ゲートおよび周波数ゲートに対してのみ行わせるようにすることで、方位算出処理で行う演算量を大幅に低減している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近傍のターゲットまでの距離とその相対速度、および方位を同時に検知するモノパルスドップラレーダ装置に関し、特に、超広帯域パルスを利用するモノパルスドップラレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、距離と相対速度を検知する車載用パルスレーダ装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の車載用パルスレーダ装置のブロック図を図11に示す。特許文献1では、送受切り替えスイッチ901を送信アンプ902側に切り替えてパルスを放射し、これがターゲットで反射された反射波を受信するように構成されている。
【0003】
受信された反射波は、AD変換器903で距離ゲート(又はレンジビン)毎にサンプリングされ、サンプリングされたデータを信号処理装置904に出力している。信号処理装置904では、AD変換器903から入力したデータをプリサム処理し、その結果をFFT処理している。このFFT処理の結果であるスペクトルの周波数及び振幅情報から、自車両とターゲットとの距離及び相対速度を求めている。さらに、S/N比を向上させるために、受信回路で複数の距離ゲートにまたがるプリサム処理を行うことが提案されている。特許文献1では、AD変換器903でディジタルデータに変換されたのちの処理を、信号処理装置904ですべて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車載用のレーダ装置では、ターゲットの距離及び相対速度だけでなく、その方位の検出も要求されることが多い。ターゲットの方位を検出する方法として、超広帯域レーダではモノパルス処理により角度計測を行う方法が知られている。モノパルス処理では、モノパルスアンテナに付随するハイブリッド回路の出力である和信号、差信号毎に、検出されたターゲットからの反射波の位相と振幅情報が必要となる。
【0006】
すなわち、ターゲットの方位を計測するためには、FFT処理結果である距離ゲートと周波数ゲートをパラメータとする2次元の振幅データを、和信号と差信号のそれぞれに対して作成する必要がある。そして、各距離ゲート及び各周波数ゲートに対して和信号と差信号の振幅比を算出し、これを事前に作成された振幅比と方位との関係を示すテーブルと比較することで方位を求める必要がある。
【0007】
このように、ターゲットの方位の検出といったより高機能な車載レーダを実現しようとすると、ターゲットの有無の判定処理に伴う演算が膨大で複雑となってしまい、安全システムとして重要なターゲット情報の報知周期が長くなってしまうといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、方位を含むターゲット検知データを短い周期で算出できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のモノパルスドップラレーダ装置の第1の態様は、搬送波を発振させる高周波発振部と、所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部と、前記広帯域インパルス生成部から入力した前記インパルスを前記高周波発振部から入力した前記搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段と、前記送信信号生成手段から前記高周波送信パルスを入力して送信パルスとして空間に放射する送信アンテナと、前記送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れて受信し、2つの受信信号として出力するモノパルス受信アンテナと、前記モノパルス受信アンテナから前記2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路と、前記送信パルス毎に所定の選択信号に従って前記和信号と前記差信号のいずれか一方を選択して通過させる受信スイッチと、前記受信スイッチから前記和信号または前記差信号のいずれか一方を入力して前記搬送波で直交位相検波し、位相が直交するI信号及びQ信号を出力する直交位相検波部と、前記パルストリガ信号及び距離ゲート設定信号を入力し、前記パルストリガ信号の入力時点を基準として前記距離ゲート設定信号で指定された距離ゲートの遅延時間から決定されるタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部と、前記直交位相検波部から前記I信号及びQ信号を入力し、前記距離ゲート設定部から前記距離ゲート信号を入力したタイミングで前記I信号及びQ信号をA/D変換してI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を出力するA/D変換部と、前記A/D変換部から前記I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、それぞれを所定の回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を出力するプリサムユニットと、前記プリサムユニットから前記和信号及び差信号のそれぞれの前記積算I信号、積算Q信号を入力し、前記和信号及び差信号毎に周波数解析を行って前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値を算出するFFT処理ユニットと、前記和信号及び差信号に対して、前記FFT処理ユニットから入力した前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の論理和をとり、該論理和の結果が”1”のときをターゲット有りと判定し、”0”のときをターゲット無しと判定するターゲット判定ユニットとを有する補助演算処理部と、前記ターゲット判定ユニットから前記符号ビットの否定の論理和の結果を入力し、これが”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートの前記積算I信号、積算Q信号から前記ターゲットの方位を算出する方位算出処理ユニットを有する主演算処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を補助演算処理部で行わせ、前記距離ゲート及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の結果が“1”となっている距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ方位を算出することで、主演算処理部と補助演算処理部との通信量を削減し、方位を含むターゲット検知データを短い周期で報知できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。また、本発明の第1の態様によれば、和信号及び差信号のそれぞれに対する符号ビットの否定の論理和を取ることで、和信号と差信号の両方の検知範囲でターゲットを検知できる。
【0011】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記主演算処理部は、前記所定の時間間隔で前記広帯域インパルス生成部及び前記距離ゲート設定部に前記パルストリガ信号を出力し、前記受信スイッチに前記選択信号を出力する制御ユニットをさらに備えるとともに、前記距離ゲート設定部及び前記プリサムユニットに前記距離ゲート設定信号を出力することを特徴とする。これにより、主演算処理部で、モノパルスドップラレーダ装置の動作を管理することができる。
【0012】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記方位算出処理ユニットは、前記符号ビットの否定の論理和の結果が”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートのうち、接近するターゲットに対応する距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ前記ターゲットの方位を算出することを特徴とする。周波数ゲートのうち相対速度が接近する方向のものを優先的に読み出すことで、接近中のターゲットを優先的に検知するとともに、データ転送量を半減して処理時間をさらに短縮することが可能となる。
【0013】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記FFT処理ユニットは、1つ置き、あるいはそれ以上の間隔毎に前記距離ゲートを選択して前記周波数ゲート毎の振幅値を算出することを特徴とする。これにより、ターゲット検出をさらに高速に処理することが可能となる。
【0014】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記補助演算処理部は、前記主演算処理部よりも高いタイミング制御精度を有していることを特徴とする。プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を高いタイミング制御精度による演算が可能な補助演算処理部で行わせることで、時間分解能の高いモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を別の演算部で行わせることで、方位の算出量を減らして方位を含むターゲット検知データを短い周期で報知できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のモノパルスドップラレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】1つの距離ゲートに対するプリサム処理の一例を示す模式図である。
【図4】本実施形態のプリサムユニットのブロック図である。
【図5】本実施形態のFFT処理ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図6】本実施形態のターゲット判定ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】本実施形態のターゲット判定ユニットにおけるターゲット判定処理を説明するための模式図である。
【図8】和信号による検知範囲と差信号による検知範囲を模式的に示す説明図である。
【図9】距離ゲートと周波数ゲートの2次元からなるビットマップを説明するための説明図である。
【図10】本実施形態の方位算出処理ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来の車載用パルスレーダ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態におけるモノパルスドップラレーダ装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。以下では、本発明のモノパルスドップラレーダ装置を車両に搭載して用いる場合を例に説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係るモノパルスドップラレーダ装置の構成を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100の構成を示すブロック図である。モノパルスドップラレーダ装置100は、送信系として、所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部111と、広帯域インパルス生成部111からインパルスを入力するととともに高周波発振部101から搬送波を入力し、インパルスを搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段112と、送信信号生成手段112から高周波送信パルスを入力して空間に放射する送信アンテナ113と、を備えている。
【0019】
また、受信系として、送信アンテナ113から放射された送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れた位置で受信し、2つの受信信号を出力するモノパルス受信アンテナ121と、モノパルス受信アンテナ121から2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路122と、送信パルスが放射される毎にハイブリッド回路122から和信号と差信号を交互に選択して通過させる受信スイッチ123と、受信スイッチ123を通過して入力した和信号または前記差信号を、送信パルスの搬送波で直交位相検波してI信号、Q信号を出力する直交位相検波部124と、I信号、Q信号をサンプリングするタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部125と、直交位相検波部124からI信号、Q信号を入力し、これを距離ゲート設定部125から距離ゲート信号を入力したタイミングでA/D変換するA/D変換部126と、を備えている。
【0020】
モノパルス受信アンテナ121は、所定の間隔だけ離れて受信した2つの受信信号を出力する。すなわち、所定の間隔で配置された2つのアンテナで受信した2つの信号を、上記の2つの受信信号として出力する。あるいは、例えば2以上の受信アンテナを垂直方向に1列に配置し、これを所定の間隔で2列配置することもでき、各列の受信信号をそれぞれで合計したものを上記の2つの受信信号としてもよい。
【0021】
ハイブリッド回路122は、モノパルス受信アンテナ121から2つの受信信号を入力し、これを加算した和信号(Σ)と、一方の受信信号から他方の受信信号を減算した差信号(Δ)を出力する。直交位相検波部124は、受信スイッチ123から入力した和信号または差信号を、高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートし、これを位相が同相のI信号と、位相が90°ずれたQ信号とに変換して出力する。
【0022】
距離ゲート設定部125は、A/D変換部126でI信号、Q信号をサンプリングするタイミングを決定し、そのタイミングでA/D変換部126に距離ゲート信号を出力する。距離ゲート信号が出力されるタイミングは、広帯域インパルス生成部111が受け取るパルストリガ信号を基準に、サンプリングの対象とする距離ゲートに相当する遅延時間から決定される。A/D変換部126は、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号を入力すると、そのタイミングで直交位相検波部124から入力したI信号、Q信号をA/D変換し、これをI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値として出力する。
【0023】
本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100では、A/D変換部126からI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を入力してターゲットの距離、相対速度及び方位を算出するディジタル演算処理部として、主演算処理部130と補助演算処理部140の2つを備える構成としている。主演算処理部130は、通常のタイミング制御精度(例えば、1us程度)を有するディジタル演算処理部であり、補助演算処理部140は、主演算処理部130より高いタイミング制御精度(例えば、0.5ns程度)を有するディジタル演算処理部である。
【0024】
I信号ディジタル値、Q信号ディジタル値の演算処理として、I信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を所定回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を算出するプリサム処理と、所定個数の積算I信号、積算Q信号を用いて周波数解析を行い、これから距離ゲート毎及び周波数ゲート毎に振幅値を算出するFFT処理と、距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値からターゲットの有無を判定し、ターゲットが検出されるとターゲットまでの距離及びその相対速度を算出するターゲット判定処理と、積算I信号、積算Q信号からターゲットの方位を算出する方位算出処理とがある。上記のプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理は、和信号および差信号のそれぞれについて行われる。また、方位算出処理では、和信号と差信号の両方の積算I信号、積算Q信号を用いて方位の算出が行われる。
【0025】
上記演算処理のうち、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理は、演算量が膨大であり、ターゲット情報を適正な周期で報知するためにはこれらを高速に行う必要がある。特にこれらの処理は、送信側へのパルストリガ信号の発出に高精度に同期させて、高い時間分解能で処理する必要がある。また、方位算出処理も、距離ゲートと周波数ゲートの組み合わせ毎に和信号と差信号の振幅比を算出し、その結果を事前に作成されたテーブルに参照させて方位を求めるといった時間のかかる処理となる。そこで、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100では、ターゲット判定処理でターゲットが検出された距離ゲートおよび周波数ゲートに対してのみ方位算出処理を行うようにすることで、方位算出処理で行う演算量を大幅に低減している。
【0026】
上記のように、方位算出処理の演算処理量を大幅に低減することで、この処理を主演算処理部130で行えるようにし、高速演算処理が必要なプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を補助演算処理部140で行わせる構成とすることができる。このような構成とすることで、ターゲット情報を適正な周期で報知することが可能となっている。モノパルスドップラレーダ装置100では、補助演算処理部140にプリサム処理を行うプリサムユニット141、FFT処理を行うFFT処理ユニット142、及びターゲット判定処理を行うターゲット判定ユニット143を設けている。また、主演算処理部130には、方位算出処理を行う方位算出処理ユニット131を設けている。
【0027】
主演算処理部130は、距離ゲート毎の遅延時間を決定して距離ゲート設定部125及び補助演算処理部140のプリサムユニット141に距離ゲート設定信号を出力している。主演算処理部130は、さらに制御ユニット132を備えている。制御ユニット132は、広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125にパルストリガ信号を出力する。また、制御ユニット132は、受信スイッチ123に対し、和信号と差信号のいずれかを選択する選択信号を出力している。
【0028】
次に、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100における動作を、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、モノパルスドップラレーダ装置100の動作の流れを示すフローチャートである。モノパルスドップラレーダ装置100によるターゲットの計測を開始すると、まずステップS1において、主演算処理部130の制御ユニット132で計測処理に必要なパラメータの初期化を行う。パラメータの初期化として、距離ゲートカウンタn、パルス送信カウンタiをそれぞれ1に設定する。次のステップS2では、主演算処理部130から距離ゲート設定部125及び補助演算処理部140のプリサムユニット141に距離ゲート設定信号を転送して距離ゲートnを設定する。ステップS3では、制御ユニット132が受信スイッチ123を和信号側に切り替える。
【0029】
続いて送信アンテナ113から送信パルスを放射させるために、ステップS4では、送信系の送信処理を行う。すなわち、制御ユニット132が所定のタイミングでパルストリガ信号を広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125に発出する。これにより、広帯域インパルス生成部111は直ちに広帯域インパルス信号を送信信号生成手段112に出力し、送信信号生成手段112は入力した広帯域インパルス信号を高周波発振部101から入力した搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する。生成された高周波送信パルスは、送信信号生成手段112から送信アンテナ113に出力され、送信アンテナ113から空間に放射される。
【0030】
送信アンテナ113から放射された電波は、ターゲットなどで反射されてモノパルス受信アンテナ121に受信され、ステップS5で受信処理を行う。すなわち、モノパルス受信アンテナ121は、2以上のアンテナで構成されており、モノパルス受信アンテナ121からハイブリッド回路122に2つの受信信号を出力する。ハイブリッド回路122は、2つの受信信号から和信号及び差信号を算出して受信スイッチ123に出力する。受信スイッチ123では、制御ユニット132からの制御により和信号側に切り替えられていることから、和信号のみが直交位相検波部124に出力される。直交位相検波部124では、和信号を高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートし、広帯域複素ベースバンド信号に変換してI信号及びQ信号をA/D変換部126に出力する。A/D変換部126では、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号が出力されるタイミングでI信号及びQ信号をA/D変換し、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を補助演算処理部140に出力する。
【0031】
ステップS5の受信処理の結果、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値が補助演算処理部140に出力されると、補助演算処理部140において、ステップS6でプリサムユニット141がA/D変換部126から入力したI信号及びQ信号をそれぞれプリサム処理する。
【0032】
上記のステップS3からステップS6では和信号の処理を行ったが、続くステップS7からステップS10では、上記と同様にして差信号の処理を行う。まず、ステップS7で制御ユニット132が受信スイッチ123を差信号側に切り替え、続くステップS8で送信系の送信処理を行う。すなわち、ステップS8ではステップS4と同様に、制御ユニット132が所定のタイミングでパルストリガ信号を広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125に発出し、これにより広帯域インパルス生成部111が直ちに広帯域インパルス信号を送信信号生成手段112に出力し、送信信号生成手段112がこれを高周波発振部101から入力した搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成し、これを送信アンテナ113から空間に放射する。
【0033】
送信アンテナ113から放射された電波が、ターゲットなどで反射されてモノパルス受信アンテナ121に受信されると、ステップS9でステップS5と同様の受信処理を行う。すなわち、モノパルス受信アンテナ121からハイブリッド回路122に2つの受信信号が出力されると、ハイブリッド回路122は、2つの受信信号から和信号及び差信号を算出して受信スイッチ123に出力する。受信スイッチ123では、制御ユニット132からの制御により、ここでは差信号側に切り替えられていることから、差信号のみが直交位相検波部124に出力される。直交位相検波部124では、差信号を高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートして広帯域複素ベースバンド信号に変換し、I信号及びQ信号をA/D変換部126に出力する。A/D変換部126では、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号が出力されるタイミング(ステップS5と同じ遅延時間のタイミング)でI信号及びQ信号をA/D変換し、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を補助演算処理部140に出力する。
【0034】
ステップS9の受信処理の結果、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値が補助演算処理部140に出力されると、ステップS10では、補助演算処理部140において、プリサムユニット141がA/D変換部126から入力したI信号及びQ信号をそれぞれプリサム処理する。
【0035】
ステップS2からステップS10までの処理で、和信号及び差信号の両方について、距離ゲートnに対するサンプリングが実施される。これが終了すると、ステップS11において、パルス送信カウンタiが所定の回数(図2では2048回としている)に達したか否かを制御ユニット132で判定する。その結果、目標回数に達していないと判定した場合には、ステップS12において制御ユニット132がパルス送信カウンタiに1を加算し、再びステップS3に戻る。以下、ステップS11でパルス送信カウンタiが所定の回数に達したと判定されるまで、ステップS3からステップS10までの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS11でパルス送信カウンタiが所定の回数に達したと判定されると、次にステップS13に進む。
【0036】
ステップS13では、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数(図2では320としている)に達したか否かを制御ユニット132で判定する。その結果、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達していないと判定された場合には、制御ユニット132がステップS14で距離ゲートカウンタnに1を加算し、ステップS15でパルス送信カウンタiを1に初期化する。その後、再びステップS2に戻る。以下、ステップS13で距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されるまで、ステップS2からステップS12までの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS13で距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、次にステップS16に進む。
【0037】
ステップS16では、補助演算処理部140において、ステップS6及びステップS10で行ったプリサム処理の結果を用いてFFT処理ユニット142がFFT処理を行う。続くステップS17でも、補助演算処理部140においてターゲット判定ユニット143がFFT処理結果を用いてターゲットの有無を判定するターゲット判定処理を行う。ターゲット判定ユニット143の処理が終了したことが主演算処理部130に通知されると、ステップS18において、主演算処理部130の方位算出処理ユニット131が、補助演算処理部140からデータを入力してターゲットが検出された距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ方位演算を実施する。
【0038】
以上の処理により、ターゲットまでの距離、ターゲットの相対速度及び方位が得られ、これらのターゲット情報が上位に伝達されて適宜所定の表示部等から報知される。以下、同様にして観測周期毎にターゲットの検出処理を繰り返し行うことができる。なお、次の検出処理は主演算処理部130における方位算出処理ユニット131の終了を待つ必要はなく、補助演算処理部140からのデータ転送処理が終了すると直ちに開始することができる。
【0039】
次に、プリサムユニット141におけるプリサム処理の概要を、図3、4を用いて説明する。図3は、一例として1つの距離ゲートの和信号に対するプリサム処理を示す模式図であり、図4は、プリサムユニット141の動作を説明するためのブロック図である。プリサムユニット141では、加算手段141aがA/D変換部126からA/D変換されたI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、これをプリサム処理する。和信号及び差信号のそれぞれに対してA/D変換部126からI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力するが、この複素ディジタル値のそれぞれ(以下では、単にサンプル値と称する)をsiとすると、図3に示すように、サンプル値siが所定個数ずつ加算されて圧縮され、これをプリサム値Pjとする。
【0040】
図2のフローチャートでは、パルス送信繰り返し回数iの目標回数を2048として説明したが、この場合、例えばパルス送信繰り返し回数32回分のサンプル値をプリサム処理すると、64点のプリサム値Pjが得られる。図3は、このようなプリサム処理を行ったときのサンプル値siとプリサム値Pjとの関係を模式的に示している。プリサムユニット141は、図4に示すように、内部にメモリ141bを備えており、ここにプリサム値Pjを保存している。加算手段141aがA/D変換部126からI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値(サンプル値si)を入力すると、データ読出手段141cを用いてメモリ141bに保存されているそれまでの加算結果(それぞれの加算結果をSI、SQとする)を読み出し、これにサンプル値siを加算して再びメモリ141bに保存する。そして、加算回数が32回に達すると、次のサンプル値からはプリサム値Pj+1に対する加算を行う。
【0041】
上記のようにして、1つの距離ゲートの和信号及び差信号のそれぞれに対して、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を用いてそれぞれ64点のプリサム値Pjがメモリ141bに保存される。これにより、メモリ141bには、64点×2(I信号、Q信号)×2(和信号、差信号)×320(距離ゲート数)のデータが保存される。
【0042】
次に、補助演算処理部140のFFT処理ユニット142におけるFFT処理の概要を、図5を用いて説明する。図5は、FFT処理の概要を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS16−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS16−2では、距離ゲートnに対応する和信号のプリサム値Pjをメモリ141bから読み込む。和信号のプリサム値Pjとして、I信号に対するプリサム値64点とQ信号に対するプリサム値64点の128点がメモリ141bから読み込まれる。ステップS16−3では、I信号及びQ信号に対するそれぞれ64点のプリサム値を用いて複素FFT演算が行われる。FFT演算結果として、和信号のI信号に対する周波数ゲート毎の振幅AIとQ信号に対する周波数ゲート毎の振幅AQがそれぞれ64点ずつ算出され、所定のメモリに保存される。
【0043】
ステップS16−2、3で距離ゲートnの和信号に対するFFT演算が行われると、続くステップS16−4、5で差信号に対するFFT処理を行う。すなわち、ステップS16−4で距離ゲートnに対応する差信号のプリサム値Pjをメモリ141bから読み込み、ステップS16−5で読み込んだプリサム値を用いて複素FFT演算を行う。FFT演算結果として、差信号のI信号に対する周波数ゲート毎の振幅AIとQ信号に対する周波数ゲート毎の振幅AQがそれぞれ64点ずつ算出され、所定のメモリに保存される。
【0044】
その後、ステップS16−6において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS16−7に進む。ステップS16−7で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS16−2〜5の処理を行う。一方、ステップS16−6において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、FFT処理ユニット142の処理を終了する。
【0045】
なお、図5のフローチャートでは、ステップS16−7で距離ゲートカウンタnに1を加算するとしたが、ターゲットの形状や配置状況等によっては、例えば距離ゲートカウンタnに2、3等の1より大きい数を加算する、あるいは距離ゲートカウンタnが偶数または奇数のものだけを選択するように、ステップS16−7の処置を観測の途中で変更可能としてもよい。距離ゲートカウンタnの更新をこのように変更する一例として、例えばターゲットの形状に拡がりがあるため隣接する距離ゲートが同じターゲットからの反射波をサンプリングしている場合がある。この場合、距離ゲートカウンタnに1より大きい数を加算してFFT処理する距離ゲートを間引くことで、高速に処理することが可能となる。
【0046】
次に、補助演算処理部140のターゲット判定ユニット143におけるターゲット判定処理の概要を、図6、7を用いて説明する。図6は、ターゲット判定処理の概要を説明するためのフローチャートであり、図7は、ターゲット判定処理を説明するための模式図である。ターゲット判定ユニット143は、FFT処理ユニット142で処理されたFFT演算結果を用いてターゲットの有無を判定する。まずステップS17−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS17−2では、距離ゲートnに対応する和信号のFFT結果である周波数ゲート64点の振幅AI、AQを所定のメモリから読み出し、ステップS17−3で周波数ゲート毎の振幅の絶対値の2乗(以下では単に振幅の絶対値という)AI2+AQ2を算出する。次のステップS17−4では、周波数ゲート毎のAI2+AQ2からターゲット有無判定のための所定の閾値Thを減算する。
【0047】
さらに、ステップS17−5では、周波数ゲート毎に算出した(AI2+AQ2−Th)の最上位ビットを抽出し、その否定を記録する。(AI2+AQ2−Th)が正、すなわちAI2+AQ2が閾値Thより大きいときは、(AI2+AQ2−Th)の減算結果の最上位ビットが”0”となる。そこで、その否定”1”を記録しておく。また、(AI2+AQ2−Th)が負、すなわちAI2+AQ2が閾値Thより小さいときは、(AI2+AQ2−Th)の減算結果の最上位ビットが”1”となる。そこで、その否定”0”を記録しておく。これにより、距離ゲートnに対応する和信号においてターゲットが検知された周波数ゲートに”1”のビットが記録され、ターゲットが検知されない周波数ゲートに”0”のビットが記録された64ビットのビット列からなる判定結果(STnとする)が記録される。
【0048】
ステップS17−2〜5で距離ゲートnの和信号に対するターゲット判定の処理が行われると、続くステップS17−6〜9で差信号に対するターゲット判定の処理を行う。すなわち、ステップS17−6で距離ゲートnに対応する差信号の周波数ゲート毎の振幅AI、AQを所定のメモリから読み出し、ステップS17−7で周波数ゲート毎の振幅の絶対値AI2+AQ2を算出する。次のステップS17−8では、周波数ゲート毎のAI2+AQ2から所定の閾値Thを減算する。さらに、ステップS17−9では、周波数ゲート毎に算出した(AI2+AQ2−Th)の最上位ビットを抽出し、その否定を記録する。これにより、距離ゲートnに対応する差信号による判定結果(DTnとする)が64ビットのビット列として記録される。
【0049】
図7(a)は、距離ゲートnに対応する和信号(上段)及び差信号(下段)のFFT結果であるAI、AQの一例を模式的に示している。ここでは、2つの周波数ゲートにスペクトルピークが存在していることを示している。この周波数ゲートにおけるAI、AQから周波数ゲート毎の振幅の絶対値AI2+AQ2を算出した結果を、図7(b)に模式的に示している。さらに、AI2+AQ2から閾値Thを減算した結果を図7(c)に模式的に示す。図7(c)に示す(AI2+AQ2−Th)の最上位のビット(符号ビット)だけを抽出したものを、図7(d)に示す。さらに、その否定を求めたものが図7(e)に示すビット列である。上記のSTn及びDTnは、図7(e)に示すような64ビットのビット列となっている。
【0050】
距離ゲートnの和信号及び差信号に対するターゲット判定の処理が終了すると、ステップS17−10において、和信号に対する判定結果であるSTnと差信号に対する判定結果であるDTnとの論理和(CTnとする)を求める。すなわち、
CTn=STn OR DTn
となる。CTnは、長さ64ビット長の”1”と”0”とからなる符号列となり、その要素が”1”の周波数ゲートには、距離ゲートnにおいて閾値Th以上の反射波が和信号、差信号のいずれか、あるいはその両方に存在することを示している。
【0051】
和信号によるターゲットの検知範囲と差信号による検知範囲を、模式的に図8に示す。一般にモノパルス処理においては、和信号による検知範囲と差信号によるターゲットの検知範囲に差があることから、両方の検知範囲でターゲットを検出する方が、検知範囲をより広くすることができる。図8では、所定の間隔で配置された2つの受信アンテナ(モノパルスアンテナ)の出力を加算した和信号で検知できる領域を和信号検知範囲、減算した差信号で検知できる領域を差信号検知範囲として示している。和信号検知範囲は2つの受信アンテナの両方で検知できる範囲、差信号検知範囲は、2つの受信アンテナのいずれか一方で検知できる範囲となる。
【0052】
ステップS17−10において、和信号に対する判定結果STnと差信号に対する判定結果DTnとの論理和を求めることにより、和信号検知範囲と差信号検知範囲を合わせた広い検知範囲でターゲットを検知していることになる。なお、ステップS17−10の論理和の処理を行わず、例えば和信号から求めたビット列STnのみを用いるようにすることも可能である。
【0053】
次に、ステップS17−11において、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS17−12に進む。ステップS17−12で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS17−2〜10の処理を行う。一方、ステップS17−11において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、ターゲット判定ユニット143の処理を終了する。
【0054】
ターゲット判定ユニット143における判定結果は、距離ゲートと周波数ゲートの2次元からなるビットマップで表すことができる。すなわち、距離ゲートnに対して算出した64ビットのビット列からなるCTnを1列とし、これをすべての距離ゲート(320点)について配列すると、図9に示すような64×320の2次元のビットマップとなる。同図において、”1”が設定されているところ以外は、”0”が設定されている。
【0055】
次に、主演算処理部130の方位算出処理ユニット131における方位算出処理を、図10を用いて以下に説明する。図10は、方位算出処理の概要を説明するためのフローチャートである。方位算出処理ユニット131は、補助演算処理部140における処理の終了を補助演算処理部140から通知されると、まず、ステップS18−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS18−2では、距離ゲートnに対するターゲット判定ユニット143の判定結果CTnを読み込む。次に、ステップS18−3において、CTnで”1”が立っている周波数ゲートに対してのみ、補助演算処理部140からFFT結果、すなわち、和信号及び差信号のそれぞれの振幅の絶対値AI2+AQ2を読み込む。
【0056】
ステップS18−4では、方位算出処理として和信号AI2+AQ2と差信号AI2+AQ2の比を求め、事前に作成したテーブルを参照して方位を求める。その後、ステップS18−5において、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS18−6に進む。ステップS18−6で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS18−2〜4の処理を行う。一方、ステップS18−5において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、方位算出処理ユニット131の処理を終了する。
【0057】
なお、上記ではCTnの64ビットすべてについて、”1”が立っている周波数ゲートのFFT結果を補助演算処理部140から読み込むようにしたが、周波数ゲートのうち接近するターゲットに対応するものを優先的に読み出すようにすると、接近中のターゲットを優先的に検知することになり、より好ましいモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。また、データ転送量を半減して処理時間をさらに短縮することが可能となる。
【0058】
演算処理部130において、方位算出処理ユニット131で算出した方位とともに、距離ゲートnに対応する距離及び周波数ゲートに対応する相対速度を1つの配列としてメモリに記録しておき、ターゲット検出データとして報知することができる。
【0059】
補助演算処理部140におけるプリサムユニット141、FFT処理ユニット142、及びターゲット判定ユニット143の処理は、処理データ量が膨大になることから、メモリバンクを切り替える方式を用いて並列に処理させることによりさらに高速化を図るように構成することも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るモノパルスドップラレーダ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるモノパルスドップラレーダ装置の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 モノパルスドップラレーダ装置
101 高周波発振部
111 広帯域インパルス生成部
112 送信信号生成手段
113 送信アンテナ
121 モノパルス受信アンテナ
122 ハイブリッド回路
123 受信スイッチ
124 直交位相検波部
125 距離ゲート設定部
126 A/D変換部
130 主演算処理部
131 方位算出処理ユニット
132 制御ユニット
140 補助演算処理部
141 プリサムユニット
142 FFT処理ユニット
143 ターゲット判定ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、近傍のターゲットまでの距離とその相対速度、および方位を同時に検知するモノパルスドップラレーダ装置に関し、特に、超広帯域パルスを利用するモノパルスドップラレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、距離と相対速度を検知する車載用パルスレーダ装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の車載用パルスレーダ装置のブロック図を図11に示す。特許文献1では、送受切り替えスイッチ901を送信アンプ902側に切り替えてパルスを放射し、これがターゲットで反射された反射波を受信するように構成されている。
【0003】
受信された反射波は、AD変換器903で距離ゲート(又はレンジビン)毎にサンプリングされ、サンプリングされたデータを信号処理装置904に出力している。信号処理装置904では、AD変換器903から入力したデータをプリサム処理し、その結果をFFT処理している。このFFT処理の結果であるスペクトルの周波数及び振幅情報から、自車両とターゲットとの距離及び相対速度を求めている。さらに、S/N比を向上させるために、受信回路で複数の距離ゲートにまたがるプリサム処理を行うことが提案されている。特許文献1では、AD変換器903でディジタルデータに変換されたのちの処理を、信号処理装置904ですべて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車載用のレーダ装置では、ターゲットの距離及び相対速度だけでなく、その方位の検出も要求されることが多い。ターゲットの方位を検出する方法として、超広帯域レーダではモノパルス処理により角度計測を行う方法が知られている。モノパルス処理では、モノパルスアンテナに付随するハイブリッド回路の出力である和信号、差信号毎に、検出されたターゲットからの反射波の位相と振幅情報が必要となる。
【0006】
すなわち、ターゲットの方位を計測するためには、FFT処理結果である距離ゲートと周波数ゲートをパラメータとする2次元の振幅データを、和信号と差信号のそれぞれに対して作成する必要がある。そして、各距離ゲート及び各周波数ゲートに対して和信号と差信号の振幅比を算出し、これを事前に作成された振幅比と方位との関係を示すテーブルと比較することで方位を求める必要がある。
【0007】
このように、ターゲットの方位の検出といったより高機能な車載レーダを実現しようとすると、ターゲットの有無の判定処理に伴う演算が膨大で複雑となってしまい、安全システムとして重要なターゲット情報の報知周期が長くなってしまうといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、方位を含むターゲット検知データを短い周期で算出できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のモノパルスドップラレーダ装置の第1の態様は、搬送波を発振させる高周波発振部と、所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部と、前記広帯域インパルス生成部から入力した前記インパルスを前記高周波発振部から入力した前記搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段と、前記送信信号生成手段から前記高周波送信パルスを入力して送信パルスとして空間に放射する送信アンテナと、前記送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れて受信し、2つの受信信号として出力するモノパルス受信アンテナと、前記モノパルス受信アンテナから前記2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路と、前記送信パルス毎に所定の選択信号に従って前記和信号と前記差信号のいずれか一方を選択して通過させる受信スイッチと、前記受信スイッチから前記和信号または前記差信号のいずれか一方を入力して前記搬送波で直交位相検波し、位相が直交するI信号及びQ信号を出力する直交位相検波部と、前記パルストリガ信号及び距離ゲート設定信号を入力し、前記パルストリガ信号の入力時点を基準として前記距離ゲート設定信号で指定された距離ゲートの遅延時間から決定されるタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部と、前記直交位相検波部から前記I信号及びQ信号を入力し、前記距離ゲート設定部から前記距離ゲート信号を入力したタイミングで前記I信号及びQ信号をA/D変換してI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を出力するA/D変換部と、前記A/D変換部から前記I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、それぞれを所定の回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を出力するプリサムユニットと、前記プリサムユニットから前記和信号及び差信号のそれぞれの前記積算I信号、積算Q信号を入力し、前記和信号及び差信号毎に周波数解析を行って前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値を算出するFFT処理ユニットと、前記和信号及び差信号に対して、前記FFT処理ユニットから入力した前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の論理和をとり、該論理和の結果が”1”のときをターゲット有りと判定し、”0”のときをターゲット無しと判定するターゲット判定ユニットとを有する補助演算処理部と、前記ターゲット判定ユニットから前記符号ビットの否定の論理和の結果を入力し、これが”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートの前記積算I信号、積算Q信号から前記ターゲットの方位を算出する方位算出処理ユニットを有する主演算処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を補助演算処理部で行わせ、前記距離ゲート及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の結果が“1”となっている距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ方位を算出することで、主演算処理部と補助演算処理部との通信量を削減し、方位を含むターゲット検知データを短い周期で報知できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。また、本発明の第1の態様によれば、和信号及び差信号のそれぞれに対する符号ビットの否定の論理和を取ることで、和信号と差信号の両方の検知範囲でターゲットを検知できる。
【0011】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記主演算処理部は、前記所定の時間間隔で前記広帯域インパルス生成部及び前記距離ゲート設定部に前記パルストリガ信号を出力し、前記受信スイッチに前記選択信号を出力する制御ユニットをさらに備えるとともに、前記距離ゲート設定部及び前記プリサムユニットに前記距離ゲート設定信号を出力することを特徴とする。これにより、主演算処理部で、モノパルスドップラレーダ装置の動作を管理することができる。
【0012】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記方位算出処理ユニットは、前記符号ビットの否定の論理和の結果が”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートのうち、接近するターゲットに対応する距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ前記ターゲットの方位を算出することを特徴とする。周波数ゲートのうち相対速度が接近する方向のものを優先的に読み出すことで、接近中のターゲットを優先的に検知するとともに、データ転送量を半減して処理時間をさらに短縮することが可能となる。
【0013】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記FFT処理ユニットは、1つ置き、あるいはそれ以上の間隔毎に前記距離ゲートを選択して前記周波数ゲート毎の振幅値を算出することを特徴とする。これにより、ターゲット検出をさらに高速に処理することが可能となる。
【0014】
本発明のモノパルスドップラレーダ装置の他の態様は、前記補助演算処理部は、前記主演算処理部よりも高いタイミング制御精度を有していることを特徴とする。プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を高いタイミング制御精度による演算が可能な補助演算処理部で行わせることで、時間分解能の高いモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を別の演算部で行わせることで、方位の算出量を減らして方位を含むターゲット検知データを短い周期で報知できるモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のモノパルスドップラレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】1つの距離ゲートに対するプリサム処理の一例を示す模式図である。
【図4】本実施形態のプリサムユニットのブロック図である。
【図5】本実施形態のFFT処理ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図6】本実施形態のターゲット判定ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】本実施形態のターゲット判定ユニットにおけるターゲット判定処理を説明するための模式図である。
【図8】和信号による検知範囲と差信号による検知範囲を模式的に示す説明図である。
【図9】距離ゲートと周波数ゲートの2次元からなるビットマップを説明するための説明図である。
【図10】本実施形態の方位算出処理ユニットの概要を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来の車載用パルスレーダ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態におけるモノパルスドップラレーダ装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。以下では、本発明のモノパルスドップラレーダ装置を車両に搭載して用いる場合を例に説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係るモノパルスドップラレーダ装置の構成を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100の構成を示すブロック図である。モノパルスドップラレーダ装置100は、送信系として、所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部111と、広帯域インパルス生成部111からインパルスを入力するととともに高周波発振部101から搬送波を入力し、インパルスを搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段112と、送信信号生成手段112から高周波送信パルスを入力して空間に放射する送信アンテナ113と、を備えている。
【0019】
また、受信系として、送信アンテナ113から放射された送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れた位置で受信し、2つの受信信号を出力するモノパルス受信アンテナ121と、モノパルス受信アンテナ121から2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路122と、送信パルスが放射される毎にハイブリッド回路122から和信号と差信号を交互に選択して通過させる受信スイッチ123と、受信スイッチ123を通過して入力した和信号または前記差信号を、送信パルスの搬送波で直交位相検波してI信号、Q信号を出力する直交位相検波部124と、I信号、Q信号をサンプリングするタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部125と、直交位相検波部124からI信号、Q信号を入力し、これを距離ゲート設定部125から距離ゲート信号を入力したタイミングでA/D変換するA/D変換部126と、を備えている。
【0020】
モノパルス受信アンテナ121は、所定の間隔だけ離れて受信した2つの受信信号を出力する。すなわち、所定の間隔で配置された2つのアンテナで受信した2つの信号を、上記の2つの受信信号として出力する。あるいは、例えば2以上の受信アンテナを垂直方向に1列に配置し、これを所定の間隔で2列配置することもでき、各列の受信信号をそれぞれで合計したものを上記の2つの受信信号としてもよい。
【0021】
ハイブリッド回路122は、モノパルス受信アンテナ121から2つの受信信号を入力し、これを加算した和信号(Σ)と、一方の受信信号から他方の受信信号を減算した差信号(Δ)を出力する。直交位相検波部124は、受信スイッチ123から入力した和信号または差信号を、高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートし、これを位相が同相のI信号と、位相が90°ずれたQ信号とに変換して出力する。
【0022】
距離ゲート設定部125は、A/D変換部126でI信号、Q信号をサンプリングするタイミングを決定し、そのタイミングでA/D変換部126に距離ゲート信号を出力する。距離ゲート信号が出力されるタイミングは、広帯域インパルス生成部111が受け取るパルストリガ信号を基準に、サンプリングの対象とする距離ゲートに相当する遅延時間から決定される。A/D変換部126は、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号を入力すると、そのタイミングで直交位相検波部124から入力したI信号、Q信号をA/D変換し、これをI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値として出力する。
【0023】
本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100では、A/D変換部126からI信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を入力してターゲットの距離、相対速度及び方位を算出するディジタル演算処理部として、主演算処理部130と補助演算処理部140の2つを備える構成としている。主演算処理部130は、通常のタイミング制御精度(例えば、1us程度)を有するディジタル演算処理部であり、補助演算処理部140は、主演算処理部130より高いタイミング制御精度(例えば、0.5ns程度)を有するディジタル演算処理部である。
【0024】
I信号ディジタル値、Q信号ディジタル値の演算処理として、I信号ディジタル値、Q信号ディジタル値を所定回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を算出するプリサム処理と、所定個数の積算I信号、積算Q信号を用いて周波数解析を行い、これから距離ゲート毎及び周波数ゲート毎に振幅値を算出するFFT処理と、距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値からターゲットの有無を判定し、ターゲットが検出されるとターゲットまでの距離及びその相対速度を算出するターゲット判定処理と、積算I信号、積算Q信号からターゲットの方位を算出する方位算出処理とがある。上記のプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理は、和信号および差信号のそれぞれについて行われる。また、方位算出処理では、和信号と差信号の両方の積算I信号、積算Q信号を用いて方位の算出が行われる。
【0025】
上記演算処理のうち、プリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理は、演算量が膨大であり、ターゲット情報を適正な周期で報知するためにはこれらを高速に行う必要がある。特にこれらの処理は、送信側へのパルストリガ信号の発出に高精度に同期させて、高い時間分解能で処理する必要がある。また、方位算出処理も、距離ゲートと周波数ゲートの組み合わせ毎に和信号と差信号の振幅比を算出し、その結果を事前に作成されたテーブルに参照させて方位を求めるといった時間のかかる処理となる。そこで、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100では、ターゲット判定処理でターゲットが検出された距離ゲートおよび周波数ゲートに対してのみ方位算出処理を行うようにすることで、方位算出処理で行う演算量を大幅に低減している。
【0026】
上記のように、方位算出処理の演算処理量を大幅に低減することで、この処理を主演算処理部130で行えるようにし、高速演算処理が必要なプリサム処理、FFT処理、及びターゲット判定処理を補助演算処理部140で行わせる構成とすることができる。このような構成とすることで、ターゲット情報を適正な周期で報知することが可能となっている。モノパルスドップラレーダ装置100では、補助演算処理部140にプリサム処理を行うプリサムユニット141、FFT処理を行うFFT処理ユニット142、及びターゲット判定処理を行うターゲット判定ユニット143を設けている。また、主演算処理部130には、方位算出処理を行う方位算出処理ユニット131を設けている。
【0027】
主演算処理部130は、距離ゲート毎の遅延時間を決定して距離ゲート設定部125及び補助演算処理部140のプリサムユニット141に距離ゲート設定信号を出力している。主演算処理部130は、さらに制御ユニット132を備えている。制御ユニット132は、広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125にパルストリガ信号を出力する。また、制御ユニット132は、受信スイッチ123に対し、和信号と差信号のいずれかを選択する選択信号を出力している。
【0028】
次に、本実施形態のモノパルスドップラレーダ装置100における動作を、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、モノパルスドップラレーダ装置100の動作の流れを示すフローチャートである。モノパルスドップラレーダ装置100によるターゲットの計測を開始すると、まずステップS1において、主演算処理部130の制御ユニット132で計測処理に必要なパラメータの初期化を行う。パラメータの初期化として、距離ゲートカウンタn、パルス送信カウンタiをそれぞれ1に設定する。次のステップS2では、主演算処理部130から距離ゲート設定部125及び補助演算処理部140のプリサムユニット141に距離ゲート設定信号を転送して距離ゲートnを設定する。ステップS3では、制御ユニット132が受信スイッチ123を和信号側に切り替える。
【0029】
続いて送信アンテナ113から送信パルスを放射させるために、ステップS4では、送信系の送信処理を行う。すなわち、制御ユニット132が所定のタイミングでパルストリガ信号を広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125に発出する。これにより、広帯域インパルス生成部111は直ちに広帯域インパルス信号を送信信号生成手段112に出力し、送信信号生成手段112は入力した広帯域インパルス信号を高周波発振部101から入力した搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する。生成された高周波送信パルスは、送信信号生成手段112から送信アンテナ113に出力され、送信アンテナ113から空間に放射される。
【0030】
送信アンテナ113から放射された電波は、ターゲットなどで反射されてモノパルス受信アンテナ121に受信され、ステップS5で受信処理を行う。すなわち、モノパルス受信アンテナ121は、2以上のアンテナで構成されており、モノパルス受信アンテナ121からハイブリッド回路122に2つの受信信号を出力する。ハイブリッド回路122は、2つの受信信号から和信号及び差信号を算出して受信スイッチ123に出力する。受信スイッチ123では、制御ユニット132からの制御により和信号側に切り替えられていることから、和信号のみが直交位相検波部124に出力される。直交位相検波部124では、和信号を高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートし、広帯域複素ベースバンド信号に変換してI信号及びQ信号をA/D変換部126に出力する。A/D変換部126では、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号が出力されるタイミングでI信号及びQ信号をA/D変換し、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を補助演算処理部140に出力する。
【0031】
ステップS5の受信処理の結果、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値が補助演算処理部140に出力されると、補助演算処理部140において、ステップS6でプリサムユニット141がA/D変換部126から入力したI信号及びQ信号をそれぞれプリサム処理する。
【0032】
上記のステップS3からステップS6では和信号の処理を行ったが、続くステップS7からステップS10では、上記と同様にして差信号の処理を行う。まず、ステップS7で制御ユニット132が受信スイッチ123を差信号側に切り替え、続くステップS8で送信系の送信処理を行う。すなわち、ステップS8ではステップS4と同様に、制御ユニット132が所定のタイミングでパルストリガ信号を広帯域インパルス生成部111及び距離ゲート設定部125に発出し、これにより広帯域インパルス生成部111が直ちに広帯域インパルス信号を送信信号生成手段112に出力し、送信信号生成手段112がこれを高周波発振部101から入力した搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成し、これを送信アンテナ113から空間に放射する。
【0033】
送信アンテナ113から放射された電波が、ターゲットなどで反射されてモノパルス受信アンテナ121に受信されると、ステップS9でステップS5と同様の受信処理を行う。すなわち、モノパルス受信アンテナ121からハイブリッド回路122に2つの受信信号が出力されると、ハイブリッド回路122は、2つの受信信号から和信号及び差信号を算出して受信スイッチ123に出力する。受信スイッチ123では、制御ユニット132からの制御により、ここでは差信号側に切り替えられていることから、差信号のみが直交位相検波部124に出力される。直交位相検波部124では、差信号を高周波発振部101から入力した搬送波でダウンコンバートして広帯域複素ベースバンド信号に変換し、I信号及びQ信号をA/D変換部126に出力する。A/D変換部126では、距離ゲート設定部125から距離ゲート信号が出力されるタイミング(ステップS5と同じ遅延時間のタイミング)でI信号及びQ信号をA/D変換し、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を補助演算処理部140に出力する。
【0034】
ステップS9の受信処理の結果、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値が補助演算処理部140に出力されると、ステップS10では、補助演算処理部140において、プリサムユニット141がA/D変換部126から入力したI信号及びQ信号をそれぞれプリサム処理する。
【0035】
ステップS2からステップS10までの処理で、和信号及び差信号の両方について、距離ゲートnに対するサンプリングが実施される。これが終了すると、ステップS11において、パルス送信カウンタiが所定の回数(図2では2048回としている)に達したか否かを制御ユニット132で判定する。その結果、目標回数に達していないと判定した場合には、ステップS12において制御ユニット132がパルス送信カウンタiに1を加算し、再びステップS3に戻る。以下、ステップS11でパルス送信カウンタiが所定の回数に達したと判定されるまで、ステップS3からステップS10までの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS11でパルス送信カウンタiが所定の回数に達したと判定されると、次にステップS13に進む。
【0036】
ステップS13では、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数(図2では320としている)に達したか否かを制御ユニット132で判定する。その結果、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達していないと判定された場合には、制御ユニット132がステップS14で距離ゲートカウンタnに1を加算し、ステップS15でパルス送信カウンタiを1に初期化する。その後、再びステップS2に戻る。以下、ステップS13で距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されるまで、ステップS2からステップS12までの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS13で距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、次にステップS16に進む。
【0037】
ステップS16では、補助演算処理部140において、ステップS6及びステップS10で行ったプリサム処理の結果を用いてFFT処理ユニット142がFFT処理を行う。続くステップS17でも、補助演算処理部140においてターゲット判定ユニット143がFFT処理結果を用いてターゲットの有無を判定するターゲット判定処理を行う。ターゲット判定ユニット143の処理が終了したことが主演算処理部130に通知されると、ステップS18において、主演算処理部130の方位算出処理ユニット131が、補助演算処理部140からデータを入力してターゲットが検出された距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ方位演算を実施する。
【0038】
以上の処理により、ターゲットまでの距離、ターゲットの相対速度及び方位が得られ、これらのターゲット情報が上位に伝達されて適宜所定の表示部等から報知される。以下、同様にして観測周期毎にターゲットの検出処理を繰り返し行うことができる。なお、次の検出処理は主演算処理部130における方位算出処理ユニット131の終了を待つ必要はなく、補助演算処理部140からのデータ転送処理が終了すると直ちに開始することができる。
【0039】
次に、プリサムユニット141におけるプリサム処理の概要を、図3、4を用いて説明する。図3は、一例として1つの距離ゲートの和信号に対するプリサム処理を示す模式図であり、図4は、プリサムユニット141の動作を説明するためのブロック図である。プリサムユニット141では、加算手段141aがA/D変換部126からA/D変換されたI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、これをプリサム処理する。和信号及び差信号のそれぞれに対してA/D変換部126からI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力するが、この複素ディジタル値のそれぞれ(以下では、単にサンプル値と称する)をsiとすると、図3に示すように、サンプル値siが所定個数ずつ加算されて圧縮され、これをプリサム値Pjとする。
【0040】
図2のフローチャートでは、パルス送信繰り返し回数iの目標回数を2048として説明したが、この場合、例えばパルス送信繰り返し回数32回分のサンプル値をプリサム処理すると、64点のプリサム値Pjが得られる。図3は、このようなプリサム処理を行ったときのサンプル値siとプリサム値Pjとの関係を模式的に示している。プリサムユニット141は、図4に示すように、内部にメモリ141bを備えており、ここにプリサム値Pjを保存している。加算手段141aがA/D変換部126からI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値(サンプル値si)を入力すると、データ読出手段141cを用いてメモリ141bに保存されているそれまでの加算結果(それぞれの加算結果をSI、SQとする)を読み出し、これにサンプル値siを加算して再びメモリ141bに保存する。そして、加算回数が32回に達すると、次のサンプル値からはプリサム値Pj+1に対する加算を行う。
【0041】
上記のようにして、1つの距離ゲートの和信号及び差信号のそれぞれに対して、I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を用いてそれぞれ64点のプリサム値Pjがメモリ141bに保存される。これにより、メモリ141bには、64点×2(I信号、Q信号)×2(和信号、差信号)×320(距離ゲート数)のデータが保存される。
【0042】
次に、補助演算処理部140のFFT処理ユニット142におけるFFT処理の概要を、図5を用いて説明する。図5は、FFT処理の概要を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS16−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS16−2では、距離ゲートnに対応する和信号のプリサム値Pjをメモリ141bから読み込む。和信号のプリサム値Pjとして、I信号に対するプリサム値64点とQ信号に対するプリサム値64点の128点がメモリ141bから読み込まれる。ステップS16−3では、I信号及びQ信号に対するそれぞれ64点のプリサム値を用いて複素FFT演算が行われる。FFT演算結果として、和信号のI信号に対する周波数ゲート毎の振幅AIとQ信号に対する周波数ゲート毎の振幅AQがそれぞれ64点ずつ算出され、所定のメモリに保存される。
【0043】
ステップS16−2、3で距離ゲートnの和信号に対するFFT演算が行われると、続くステップS16−4、5で差信号に対するFFT処理を行う。すなわち、ステップS16−4で距離ゲートnに対応する差信号のプリサム値Pjをメモリ141bから読み込み、ステップS16−5で読み込んだプリサム値を用いて複素FFT演算を行う。FFT演算結果として、差信号のI信号に対する周波数ゲート毎の振幅AIとQ信号に対する周波数ゲート毎の振幅AQがそれぞれ64点ずつ算出され、所定のメモリに保存される。
【0044】
その後、ステップS16−6において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS16−7に進む。ステップS16−7で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS16−2〜5の処理を行う。一方、ステップS16−6において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、FFT処理ユニット142の処理を終了する。
【0045】
なお、図5のフローチャートでは、ステップS16−7で距離ゲートカウンタnに1を加算するとしたが、ターゲットの形状や配置状況等によっては、例えば距離ゲートカウンタnに2、3等の1より大きい数を加算する、あるいは距離ゲートカウンタnが偶数または奇数のものだけを選択するように、ステップS16−7の処置を観測の途中で変更可能としてもよい。距離ゲートカウンタnの更新をこのように変更する一例として、例えばターゲットの形状に拡がりがあるため隣接する距離ゲートが同じターゲットからの反射波をサンプリングしている場合がある。この場合、距離ゲートカウンタnに1より大きい数を加算してFFT処理する距離ゲートを間引くことで、高速に処理することが可能となる。
【0046】
次に、補助演算処理部140のターゲット判定ユニット143におけるターゲット判定処理の概要を、図6、7を用いて説明する。図6は、ターゲット判定処理の概要を説明するためのフローチャートであり、図7は、ターゲット判定処理を説明するための模式図である。ターゲット判定ユニット143は、FFT処理ユニット142で処理されたFFT演算結果を用いてターゲットの有無を判定する。まずステップS17−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS17−2では、距離ゲートnに対応する和信号のFFT結果である周波数ゲート64点の振幅AI、AQを所定のメモリから読み出し、ステップS17−3で周波数ゲート毎の振幅の絶対値の2乗(以下では単に振幅の絶対値という)AI2+AQ2を算出する。次のステップS17−4では、周波数ゲート毎のAI2+AQ2からターゲット有無判定のための所定の閾値Thを減算する。
【0047】
さらに、ステップS17−5では、周波数ゲート毎に算出した(AI2+AQ2−Th)の最上位ビットを抽出し、その否定を記録する。(AI2+AQ2−Th)が正、すなわちAI2+AQ2が閾値Thより大きいときは、(AI2+AQ2−Th)の減算結果の最上位ビットが”0”となる。そこで、その否定”1”を記録しておく。また、(AI2+AQ2−Th)が負、すなわちAI2+AQ2が閾値Thより小さいときは、(AI2+AQ2−Th)の減算結果の最上位ビットが”1”となる。そこで、その否定”0”を記録しておく。これにより、距離ゲートnに対応する和信号においてターゲットが検知された周波数ゲートに”1”のビットが記録され、ターゲットが検知されない周波数ゲートに”0”のビットが記録された64ビットのビット列からなる判定結果(STnとする)が記録される。
【0048】
ステップS17−2〜5で距離ゲートnの和信号に対するターゲット判定の処理が行われると、続くステップS17−6〜9で差信号に対するターゲット判定の処理を行う。すなわち、ステップS17−6で距離ゲートnに対応する差信号の周波数ゲート毎の振幅AI、AQを所定のメモリから読み出し、ステップS17−7で周波数ゲート毎の振幅の絶対値AI2+AQ2を算出する。次のステップS17−8では、周波数ゲート毎のAI2+AQ2から所定の閾値Thを減算する。さらに、ステップS17−9では、周波数ゲート毎に算出した(AI2+AQ2−Th)の最上位ビットを抽出し、その否定を記録する。これにより、距離ゲートnに対応する差信号による判定結果(DTnとする)が64ビットのビット列として記録される。
【0049】
図7(a)は、距離ゲートnに対応する和信号(上段)及び差信号(下段)のFFT結果であるAI、AQの一例を模式的に示している。ここでは、2つの周波数ゲートにスペクトルピークが存在していることを示している。この周波数ゲートにおけるAI、AQから周波数ゲート毎の振幅の絶対値AI2+AQ2を算出した結果を、図7(b)に模式的に示している。さらに、AI2+AQ2から閾値Thを減算した結果を図7(c)に模式的に示す。図7(c)に示す(AI2+AQ2−Th)の最上位のビット(符号ビット)だけを抽出したものを、図7(d)に示す。さらに、その否定を求めたものが図7(e)に示すビット列である。上記のSTn及びDTnは、図7(e)に示すような64ビットのビット列となっている。
【0050】
距離ゲートnの和信号及び差信号に対するターゲット判定の処理が終了すると、ステップS17−10において、和信号に対する判定結果であるSTnと差信号に対する判定結果であるDTnとの論理和(CTnとする)を求める。すなわち、
CTn=STn OR DTn
となる。CTnは、長さ64ビット長の”1”と”0”とからなる符号列となり、その要素が”1”の周波数ゲートには、距離ゲートnにおいて閾値Th以上の反射波が和信号、差信号のいずれか、あるいはその両方に存在することを示している。
【0051】
和信号によるターゲットの検知範囲と差信号による検知範囲を、模式的に図8に示す。一般にモノパルス処理においては、和信号による検知範囲と差信号によるターゲットの検知範囲に差があることから、両方の検知範囲でターゲットを検出する方が、検知範囲をより広くすることができる。図8では、所定の間隔で配置された2つの受信アンテナ(モノパルスアンテナ)の出力を加算した和信号で検知できる領域を和信号検知範囲、減算した差信号で検知できる領域を差信号検知範囲として示している。和信号検知範囲は2つの受信アンテナの両方で検知できる範囲、差信号検知範囲は、2つの受信アンテナのいずれか一方で検知できる範囲となる。
【0052】
ステップS17−10において、和信号に対する判定結果STnと差信号に対する判定結果DTnとの論理和を求めることにより、和信号検知範囲と差信号検知範囲を合わせた広い検知範囲でターゲットを検知していることになる。なお、ステップS17−10の論理和の処理を行わず、例えば和信号から求めたビット列STnのみを用いるようにすることも可能である。
【0053】
次に、ステップS17−11において、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS17−12に進む。ステップS17−12で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS17−2〜10の処理を行う。一方、ステップS17−11において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、ターゲット判定ユニット143の処理を終了する。
【0054】
ターゲット判定ユニット143における判定結果は、距離ゲートと周波数ゲートの2次元からなるビットマップで表すことができる。すなわち、距離ゲートnに対して算出した64ビットのビット列からなるCTnを1列とし、これをすべての距離ゲート(320点)について配列すると、図9に示すような64×320の2次元のビットマップとなる。同図において、”1”が設定されているところ以外は、”0”が設定されている。
【0055】
次に、主演算処理部130の方位算出処理ユニット131における方位算出処理を、図10を用いて以下に説明する。図10は、方位算出処理の概要を説明するためのフローチャートである。方位算出処理ユニット131は、補助演算処理部140における処理の終了を補助演算処理部140から通知されると、まず、ステップS18−1において、距離ゲートカウンタnを1に初期化する。ステップS18−2では、距離ゲートnに対するターゲット判定ユニット143の判定結果CTnを読み込む。次に、ステップS18−3において、CTnで”1”が立っている周波数ゲートに対してのみ、補助演算処理部140からFFT結果、すなわち、和信号及び差信号のそれぞれの振幅の絶対値AI2+AQ2を読み込む。
【0056】
ステップS18−4では、方位算出処理として和信号AI2+AQ2と差信号AI2+AQ2の比を求め、事前に作成したテーブルを参照して方位を求める。その後、ステップS18−5において、距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したか否かを判定し、最大ゲート数に達していないと判定されると、ステップS18−6に進む。ステップS18−6で距離ゲートカウンタnに1を加算し、その後再びステップS18−2〜4の処理を行う。一方、ステップS18−5において距離ゲートカウンタnが最大ゲート数に達したと判定されると、方位算出処理ユニット131の処理を終了する。
【0057】
なお、上記ではCTnの64ビットすべてについて、”1”が立っている周波数ゲートのFFT結果を補助演算処理部140から読み込むようにしたが、周波数ゲートのうち接近するターゲットに対応するものを優先的に読み出すようにすると、接近中のターゲットを優先的に検知することになり、より好ましいモノパルスドップラレーダ装置を提供することができる。また、データ転送量を半減して処理時間をさらに短縮することが可能となる。
【0058】
演算処理部130において、方位算出処理ユニット131で算出した方位とともに、距離ゲートnに対応する距離及び周波数ゲートに対応する相対速度を1つの配列としてメモリに記録しておき、ターゲット検出データとして報知することができる。
【0059】
補助演算処理部140におけるプリサムユニット141、FFT処理ユニット142、及びターゲット判定ユニット143の処理は、処理データ量が膨大になることから、メモリバンクを切り替える方式を用いて並列に処理させることによりさらに高速化を図るように構成することも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るモノパルスドップラレーダ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるモノパルスドップラレーダ装置の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 モノパルスドップラレーダ装置
101 高周波発振部
111 広帯域インパルス生成部
112 送信信号生成手段
113 送信アンテナ
121 モノパルス受信アンテナ
122 ハイブリッド回路
123 受信スイッチ
124 直交位相検波部
125 距離ゲート設定部
126 A/D変換部
130 主演算処理部
131 方位算出処理ユニット
132 制御ユニット
140 補助演算処理部
141 プリサムユニット
142 FFT処理ユニット
143 ターゲット判定ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波を発振させる高周波発振部と、
所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部と、
前記広帯域インパルス生成部から入力した前記インパルスを前記高周波発振部から入力した前記搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段と、
前記送信信号生成手段から前記高周波送信パルスを入力して送信パルスとして空間に放射する送信アンテナと、
前記送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れて受信し、2つの受信信号として出力するモノパルス受信アンテナと、
前記モノパルス受信アンテナから前記2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路と、
前記送信パルス毎に所定の選択信号に従って前記和信号と前記差信号のいずれか一方を選択して通過させる受信スイッチと、
前記受信スイッチから前記和信号または前記差信号のいずれか一方を入力して前記搬送波で直交位相検波し、位相が直交するI信号及びQ信号を出力する直交位相検波部と、
前記パルストリガ信号及び距離ゲート設定信号を入力し、前記パルストリガ信号の入力時点を基準として前記距離ゲート設定信号で指定された距離ゲートの遅延時間から決定されるタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部と、
前記直交位相検波部から前記I信号及びQ信号を入力し、前記距離ゲート設定部から前記距離ゲート信号を入力したタイミングで前記I信号及びQ信号をA/D変換してI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部から前記I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、それぞれを所定の回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を出力するプリサムユニットと、前記プリサムユニットから前記和信号及び差信号のそれぞれの前記積算I信号、積算Q信号を入力し、前記和信号及び差信号毎に周波数解析を行って前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値を算出するFFT処理ユニットと、前記和信号及び差信号に対して、前記FFT処理ユニットから入力した前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の論理和をとり、該論理和の結果が”1”のときをターゲット有りと判定し、”0”のときをターゲット無しと判定するターゲット判定ユニットとを有する補助演算処理部と、
前記ターゲット判定ユニットから前記符号ビットの否定の論理和の結果を入力し、これが”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートの前記積算I信号、積算Q信号から前記ターゲットの方位を算出する方位算出処理ユニットを有する主演算処理部と、を備える
ことを特徴とするモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項2】
前記主演算処理部は、前記所定の時間間隔で前記広帯域インパルス生成部及び前記距離ゲート設定部に前記パルストリガ信号を出力し、前記受信スイッチに前記選択信号を出力する制御ユニットをさらに備えるとともに、
前記距離ゲート設定部及び前記プリサムユニットに前記距離ゲート設定信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項3】
前記方位算出処理ユニットは、前記符号ビットの否定の論理和の結果が”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートのうち、接近するターゲットに対応する距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ前記ターゲットの方位を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項4】
前記FFT処理ユニットは、1つ置き、あるいはそれ以上の間隔毎に前記距離ゲートを選択して前記周波数ゲート毎の振幅値を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項5】
前記補助演算処理部は、前記主演算処理部よりも高いタイミング制御精度を有している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項1】
搬送波を発振させる高周波発振部と、
所定の時間間隔でパルストリガ信号を入力すると所定の帯域幅のインパルスを生成する広帯域インパルス生成部と、
前記広帯域インパルス生成部から入力した前記インパルスを前記高周波発振部から入力した前記搬送波でアップコンバートして高周波送信パルスを生成する送信信号生成手段と、
前記送信信号生成手段から前記高周波送信パルスを入力して送信パルスとして空間に放射する送信アンテナと、
前記送信パルスがターゲットで反射されて戻ってきた反射パルスを所定の間隔だけ離れて受信し、2つの受信信号として出力するモノパルス受信アンテナと、
前記モノパルス受信アンテナから前記2つの受信信号を入力して和信号、差信号を生成するハイブリッド回路と、
前記送信パルス毎に所定の選択信号に従って前記和信号と前記差信号のいずれか一方を選択して通過させる受信スイッチと、
前記受信スイッチから前記和信号または前記差信号のいずれか一方を入力して前記搬送波で直交位相検波し、位相が直交するI信号及びQ信号を出力する直交位相検波部と、
前記パルストリガ信号及び距離ゲート設定信号を入力し、前記パルストリガ信号の入力時点を基準として前記距離ゲート設定信号で指定された距離ゲートの遅延時間から決定されるタイミングで距離ゲート信号を出力する距離ゲート設定部と、
前記直交位相検波部から前記I信号及びQ信号を入力し、前記距離ゲート設定部から前記距離ゲート信号を入力したタイミングで前記I信号及びQ信号をA/D変換してI信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部から前記I信号ディジタル値及びQ信号ディジタル値を入力し、それぞれを所定の回数に達するまで積算して積算I信号、積算Q信号を出力するプリサムユニットと、前記プリサムユニットから前記和信号及び差信号のそれぞれの前記積算I信号、積算Q信号を入力し、前記和信号及び差信号毎に周波数解析を行って前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値を算出するFFT処理ユニットと、前記和信号及び差信号に対して、前記FFT処理ユニットから入力した前記距離ゲート毎及び周波数ゲート毎の振幅値から所定の閾値を減算した結果の符号ビットの否定の論理和をとり、該論理和の結果が”1”のときをターゲット有りと判定し、”0”のときをターゲット無しと判定するターゲット判定ユニットとを有する補助演算処理部と、
前記ターゲット判定ユニットから前記符号ビットの否定の論理和の結果を入力し、これが”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートの前記積算I信号、積算Q信号から前記ターゲットの方位を算出する方位算出処理ユニットを有する主演算処理部と、を備える
ことを特徴とするモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項2】
前記主演算処理部は、前記所定の時間間隔で前記広帯域インパルス生成部及び前記距離ゲート設定部に前記パルストリガ信号を出力し、前記受信スイッチに前記選択信号を出力する制御ユニットをさらに備えるとともに、
前記距離ゲート設定部及び前記プリサムユニットに前記距離ゲート設定信号を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項3】
前記方位算出処理ユニットは、前記符号ビットの否定の論理和の結果が”1”となっている前記距離ゲート及び周波数ゲートのうち、接近するターゲットに対応する距離ゲート及び周波数ゲートについてのみ前記ターゲットの方位を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項4】
前記FFT処理ユニットは、1つ置き、あるいはそれ以上の間隔毎に前記距離ゲートを選択して前記周波数ゲート毎の振幅値を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【請求項5】
前記補助演算処理部は、前記主演算処理部よりも高いタイミング制御精度を有している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモノパルスドップラレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−230473(P2010−230473A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78194(P2009−78194)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
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