説明

モノマー液滴の連続重合装置、重合体粒子の連続製造装置及びモノマー液滴の連続重合方法

【課題】少量多品種の重合体粒子の製造に有用なモノマー液滴の連続重合方法及びその連続重合装置、重合体粒子の連続製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】反応管内に、連続的に供給される1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有するモノマー液滴を含むエマルジョンと共に、前記エマルジョンの流量の1〜10容量%の流量で気体を連続的又は断続的に供給する工程と、前記エマルジョンが前記反応管を通過する間に、前記エマルジョンに活性エネルギー線を照射することにより、前記エマルジョン中のモノマー液滴を重合させる工程とを含むことにより重合体粒子を連続で得ることを特徴とするモノマー液滴の連続重合方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー液滴の連続重合装置、重合体粒子の連続製造装置及びモノマー液滴の連続重合方法に関する。更に詳しくは、本発明は、モノマー液滴を含むエマルジョンに活性エネルギー線を当てて、エマルジョン中のモノマー液滴を重合させて重合体粒子を得る連続重合装置、連続製造装置及び連続重合方法に関する。本発明の連続重合装置、連続製造装置及び連続重合方法は、少量多品種の重合体粒子の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
重合体粒子の製造方法としては、所望する粒径、用途等に応じて様々な方法が知られている。様々な方法の内、モノマー液滴を含むエマルジョンに活性エネルギー線を照射することで、モノマー液滴を重合させて、重合体粒子を得る方法が知られている。
そのような方法として、例えば、特開昭60−106836号公報(特許文献1)において、活性エネルギー線を発するランプの周りに、反応管としてのスパイラル管(螺旋状の反応管)を設置し、スパイラル管の中にモノマー液滴を含むエマルジョンを流すと共にモノマー液滴に活性エネルギー線を照射することで重合体粒子を得る方法が知られている。
【0003】
また、特開2000−53776号公報(特許文献2)には、複数の直線管と、隣接する直線管を接続する連結管とからなる蛇行状(ヒダ状)の反応管を、直線管の管長方向がほぼ重力に沿うように配置し、活性エネルギー線照射手段に接近させた重合体粒子の重合装置が記載されている。この重合装置では、蛇行状の反応管を移動するモノマー液滴に活性エネルギー線を照射することで、重合体粒子が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−106836号公報
【特許文献2】特開2000−53776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、重合体粒子の比重が、水性媒体のそれと比べ重くなる場合、重合体粒子がスパイラル管の出口に達する前に沈降することで、スパイラル管内に堆積してしまう。重合体粒子が堆積すると、装置出口から排出される重合体粒子には、堆積し徐々に移動してきた重合体粒子と、殆ど堆積せず流れてきた重合体粒子とが混在することとなる。そのため、堆積した重合体粒子と堆積しなかった重合体粒子間に活性エネルギー線の照射時間差が生じることとなる。堆積した重合体粒子は、活性エネルギー線の照射時間が長くなるため、重合体の劣化、重合体粒子の分子量の低下等の品質が悪化する恐れがある。更に、品質の異なる重合体粒子が混ざってしまう問題があった。
【0006】
また、スパイラル管内のエマルジョンの流速を上げることで、堆積を防止できる。しかし、この場合は、活性エネルギー線の照射時間が短くなり、重合不足が生じる等の問題があった。この問題を解決するために、スパイラル管を長くすることで、活性エネルギー線の照射時間を確保することが考えられる。しかし、スパイラル管を長くすると装置が大型化することにより、装置コストの上昇や、装置の取扱いが煩雑となるという問題があった。
【0007】
更に、特許文献2の装置では、重力に沿うように設置した直線管の中をモノマー液滴が移動するが、その際、モノマー液滴の流れは、上から下への下降流と、下から上への上昇流の繰返しとなる。これらの流れの内、下から上への上昇流となる部分では、モノマー液滴にはその質量に伴う下向きの力と、水性媒体の流れによる上向きの力が働く。従って、上昇流となる部分では、モノマー液滴が流れない場合がある。特許文献2では、モノマー液滴の静置状態での沈降速度を加味してエマルジョンの流速を決めることで、上昇流の部分でもモノマー液滴が沈降せず垂直管内を上昇させることができると記載されている。
【0008】
しかしながら、管内の流速は管の直径に対して中央部が最も早く、管壁が最も遅い砲弾型の速度分布をもつことが一般的に知られている。この速度分布を考慮すると静置状態でのモノマー液滴の沈降速度を加味しただけの流速では、特に管壁においてモノマー液滴の沈降は完全には防げないという問題が生じる。上昇流部分での重合体粒子の沈降を抑えるには、流速を上げる方法がある。しかし、この方法では、結局のところ、特許文献1と同様に、活性エネルギー線を照射する時間が短くなってしまうという問題が生じる。この問題を解決するために活性エネルギー線の照射時間を確保することが必要となるが、そのためには、反応管の長さを長くしなければならない。しかし、反応管を長くすると装置が大型化することにより、装置コストの上昇や、装置の取扱いが煩雑となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、エマルジョン供給部と、気体供給部と、反応管と、活性エネルギー線照射手段とを備え、
前記エマルジョン供給部が、前記反応管に1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有するモノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に供給しうる構成を有し、
前記気体供給部が、前記反応管に供給されるエマルジョンに気体を連続的又は断続的に供給しうる構成を有し、
前記活性エネルギー線照射手段が、前記モノマー液滴を重合させるための活性エネルギー線を、前記反応管中のモノマー液滴に連続的に照射しうる構成を有することを特徴とするモノマー液滴の連続重合装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記連続重合装置と、エマルジョン連続形成装置とを少なくとも備え、前記エマルジョン連続形成装置が、マイクロチャネルモジュールにより、モノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に形成し、かつ前記連続重合装置を構成するエマルジョン供給部に前記エマルジョンを連続的に供給しうる構成を有していることを特徴とする重合体粒子の連続製造装置が提供される。
【0011】
更に、本発明によれば、反応管内に、連続的に供給される1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有するモノマー液滴を含むエマルジョンと共に、前記エマルジョンの流量の1〜10容量%の流量で気体を連続的又は断続的に供給する工程と、前記エマルジョンが前記反応管を通過する間に、前記エマルジョンに活性エネルギー線を照射することにより、前記エマルジョン中のモノマー液滴を重合させる工程とを含むことにより重合体粒子を連続で得ることを特徴とする重合体粒子の連続重合方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連続重合方法、連続重合装置及び連続製造装置では、エマルジョンと気体を同時に流すことで、モノマー液滴及び重合体粒子が反応管内に沈降して堆積することを抑制できる。そのため、活性エネルギー線の照射時間ばらつきがなくなる。その結果、必要以上に活性エネルギー線が照射されて分子量が低下した重合体粒子の混入の抑制と、重合体粒子の品質低下も抑えられる。
加えて、本発明によれば、モノマー液滴及び重合体粒子が反応管内に沈降して堆積することを抑制できる。よって、これまでよりも反応管内の流速を落とすことができる。従って、従来の技術と反応管の長さを同じにした場合、活性エネルギー線の照射時間を延長できる。よって、重合設備を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明におけるモノマー液滴及び重合体粒子の滞留が防止されることを説明するための概略図である。
【図2】螺旋状の反応管を備えた本発明の連続重合装置の概略断面図である。
【図3】ヒダ状の反応管を備えた本発明の連続重合装置の概略断面図である。
【図4】本発明の重合体粒子の連続製造装置の概略図である
【図5】モノマー液滴の製造工程の概略説明図である。
【図6】マイクロチャネルを含むエマルジョン製造用モジュールの概略図である。
【図7a】エマルジョン製造用モジュールの概略図である。
【図7b】エマルジョン製造用モジュールの概略図である。
【図7c】エマルジョン製造用モジュールの概略図である。
【図8a】実施例及び比較例の経時時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【図8b】実施例及び比較例の経時時間と重量平均分子量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のモノマー液滴の連続重合方法では、反応管中にエマルジョンと共に気体を流している。気体は、その供給量に応じて、(1)反応管内にエマルジョンの存在しない空間を断続的に作り出し、流れと同速度で移動するか(図1(a))、(2)気泡となって管内上部に存在してエマルジョンと共に流れることとなる(図1(b−1)及び(b−2))、と発明者等は考えている。図1(a)及び(b−1)は、反応管の管長方向の概略断面図を、図1(b−2)は、図1(b−2)の管径方向の概略断面図を意味する。これら図中、白抜きの矢印は気体の流れ方向を、矢印はエマルジョンの流れ方向を、aは気体を、bは反応管を、cはエマルジョンを意味する。
【0015】
(1)の場合は、気体の空間の前部であるエマルジョンとの境界部分において、堆積しようとするモノマー液滴及び重合体粒子は巻き上げられ流されて行く。(2)の場合は、気泡が存在する部分は見かけ上の管直径が小さくなる。気泡の移動速度は、管壁部分のエマルジョン流速に依存するため、管中央部と比べ管壁部分で移動速度が遅くなっている。従って、気泡よりも移動速度の速い流れが、気泡下部にできた見かけ上の直径の減少した流路に集中する。集中した部分では、エマルジョンの流速が大きくなるので、モノマー液滴及び重合体粒子が巻き上げられ流されていくことになる。
【0016】
次に、本発明のモノマー液滴の連続重合装置及び重合方法を説明する。
本発明の連続重合装置及び重合方法では、反応管中に、エマルジョン供給部から供給されるエマルジョンと共に、気体供給部から供給される気体を流している。
エマルジョンの流量は、反応管内のエマルジョンの流速が0.5〜10m/minとなるように設定することが好ましい。0.5m/minより流速が遅くなると、気体によるモノマー液滴及び重合体粒子の管内堆積抑制効果が小さくなることがある。10m/minより早くなると活性エネルギー線の照射時間が足りなくなることがある。また、照射時間を長くしようとすると装置が大型化、複雑化することがある。より好ましいエマルジョンの流速は、1〜8m/minである。
エマルジョン供給部は、反応管にモノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に供給しうる構成を有している。エマルジョン供給部には、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ロータリーチューブポンプ等の公知のポンプを使用できる。これらポンプには、適宜逆止弁、流量調節弁、流量計等の定量供給設備を組み合わせてもよい。
【0017】
気体の流量は、反応管中のエマルジョンに含まれるモノマー液滴及び重合体粒子が滞留し難い流量である。具体的には、気体の流量は、エマルジョンの流量に対して1〜10容量%とできる。1容量%よりも少ないと、気体による滞留抑制効果が小さいため、得られる重合体粒子の品質低下を生じることがある。10容量%よりも多いと、見かけ上エマルジョン流量が増えたことにより活性エネルギー線の照射時間減少が大きくなる。そのため、重合が不足したり、活性エネルギー線の照射時間を延長するために反応管の延長やUVランプの大型化等の設備が必要となったりすることがある。より好ましい気体の流量は、エマルジョンの流量に対して1〜8容量%、更に好ましい気体の流量は、エマルジョンの流量に対して1〜5容量%である。
【0018】
気体は、反応管内に連続的又は断続的に供給しうる構成を有する気体供給部により供給される。連続的又は断続的に供給する際の供給条件は、モノマー液滴及び重合体粒子の滞留を抑制しうる条件である。
連続的に供給する場合、3.7〜7500ml/hrの供給速度で気体を連続的に供給できる。供給速度が3.7ml/hrより遅い場合、モノマー液滴及び重合体粒子の滞留が発生することがある。7500ml/hrより早い場合、モノマー液滴の重合が不十分となることがある。より好ましい供給速度は、3.7〜3700ml/hrである。
【0019】
断続的に供給する場合、供給時間と非供給時間との割合は、1:0.1〜1.0とできる。供給時間が1:1.0より短い場合、モノマー液滴及び重合体粒子の滞留が発生することがある。供給時間が1:0.1より長い場合、重合体粒子の生産効率が落ちることがある。より好ましい供給時間と非供給時間との割合は、1:0.1〜0.5である。また、供給時間内に供給される気体の供給速度は、3.7〜7500ml/hrとできる。供給速度が3.7ml/hrより遅い場合、モノマー液滴及び重合体粒子の滞留が発生することがある。7500ml/hrより早い場合、モノマー液滴の重合が不十分となることがある。より好ましい供給速度は、3.7〜3700ml/hrである。更に、供給と供給の間の非供給時間は、10分以下にすることが好ましい。10分以上にすると、滞留が発生しやすくなることがある。より好ましい非供給時間は、5分以下である。
【0020】
気体は、エマルジョンへの溶解が少なく、重合系に対する反応性の小さい気体であれば特に制限なく使用できる。例えば、空気、酸素、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、炭酸ガス等が挙げられる。これらの内、空気を使用するのがコストが安く特に好適である。
気体供給部には、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ロータリーチューブポンプ等の公知のポンプを使用できる。これらポンプには、適宜逆止弁、流量調節弁、流量計等の定量供給設備を組み合わせてもよい。
【0021】
反応管は、使用する活性エネルギー線を、少なくともモノマー液滴が重合しうる程度、透過する必要がある。反応管は、使用する活性エネルギー線を透過すればよく、これ以外のエネルギー線を透過してもしなくてもよい。
反応管は、エマルジョンを流すことができ、かつモノマー液滴を重合できさえすれば特に限定されないが、1〜10mmの内径の管を使用できる。10mmよりも太い場合は、透明管の中心部と管壁部との流速差が大きくなり、モノマー液滴及び重合体粒子の沈降堆積がより発生しやすくなる。更に気体を流した場合も気泡の下部にできた見かけ上の直径の減少した流路にエマルジョンの流れが集中することによる流速アップの効果が得られにくくなる。また、活性エネルギー線の透過距離が伸びるため、活性エネルギー線の発生源に近い部分と遠い部分とでは、活性エネルギー線の強度差が大きくなりすぎ、エマルジョン中のモノマー液滴の重合ばらつきが発生しやすくなる。1mm未満の場合は、活性エネルギー線の照射時間を確保した状態で流量を上げるためには、反応管の長さを長くする必要があり、設備が大型化、複雑化することがある。より好ましい反応管の内径は2〜8mmであり、更に好ましくは3〜6mmである。
また、反応管の長さは、1〜50mであることが好ましい。長さが1mより短い場合、重合が不十分となることがある。長さが50mより長い場合、設備が大型化、複雑化することがあると共に、重合体粒子の製造効率が低下することがある。より好ましい長さは、3〜30mである。
【0022】
活性エネルギー線は、モノマーの重合に使用されるエネルギー線であれば特に限定されず、熱、可視光線、紫外線、電子線、放射線等が挙げられる。この内、扱い易さと重合速度の点から紫外線が好ましい。紫外線の発生源としては、一般的な紫外線照射装置を使用できる。例えば、各種水銀ランプ、紫外光を発するLED等を用いた紫外線照射装置が挙げられる。
反応管は、活性エネルギー線を透過する公知のものを使用できる。その中で、特に紫外線の透過に優れるホウ珪酸ガラスや石英ガラスを用いた透明管が、耐溶剤性等の面から好ましい。
反応管は、必要とされる活性エネルギー線の照射時間とエマルジョンの流量、及び反応管の内径から、その長さを算出できる。反応管の形状は、直線状でもよいが、活性エネルギー線の照射効率を考慮すると、螺旋状、蛇行状(直線管と、隣接する直線管を接続する連結管(U字管)とからなるヒダ状)、螺旋状及び蛇行状の管を接続した形状等が挙げられる。このような形状を有することで、反応管の設置体積を小さくしつつ、重合に必要な反応管の長さを確保できる。
【0023】
重合体粒子の沈降堆積をより少なくするために、下から上へのエマルジョンの流れが少なくなるように、反応管を設置することが望ましい。例えば、螺旋状の反応管は、直立させることで上への流れを生じないようにできる。また、直線管とU字管とからなるヒダ状の反応管の場合は、直線管の流れに上下流が生じないように水平に設置し、エマルジョンが入口側と重合後のスラリーの出口側との高低さをなくす、もしくは入口側を高くするように設置することが好ましい。
【0024】
図2に螺旋状の反応管を備えた連続重合装置の概略断面図を、図3(a)及び(b)にヒダ状の反応管を備えた連続重合装置の概略断面図を、それぞれ示す。図3(a)はエマルジョンの流れ方向を含む平面に沿う概略断面図であり、図3(b)はエマルジョンの流れ方向に直交する平面に沿う概略断面図である。これら図中、Aは反応管を、Bは活性エネルギー線照射手段を、Cはエマルジョン供給部を、Dは重合体粒子を含むスラリー出口を、Eは冷却水入口を、Fは冷却水出口を、Gは冷却水タンクを、Hは活性エネルギー線照射手段保護管をそれぞれ意味する。
【0025】
図2では、反応管は、活性エネルギー線照射手段の周りを囲うように螺旋状に巻かれた構成を有し、エマルジョンの供給される端部が最も上に位置するように設置している。図3(a)及び(b)では、反応管は、複数の直線管と、隣接する直線管を接続する連結管とからなるヒダ状の構成を有し、複数の直線管中のエマルジョンの流れ方向が重力の方向に直交するよう設置され、かつエマルジョンの供給される端部が最も上に位置するように設置されている。
【0026】
図2では巻回回数が7回であるが、この回数に限定されない。例えば、3〜100回巻回できる。図2では巻回された反応管が接しているが、一定距離離れていてもよい。接して巻回すると設置体積を小さくでき、一定距離離せばエマルジョンの流速を上げることができる。また、1巻における内径は100〜500mmとできる。
図3(a)及び(b)では直線管数が50個であるが、この個数に限定されない。例えば、1〜100個とできる。直線管の間隔は5〜20mmとできる。
エマルジョンは、少なくともモノマー液滴を含む。
モノマー液滴は、1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有しており、エマルジョンを形成でき、重合させることにより重合体粒子となるモノマーからなる限り、特に限定されず、種々のモノマーを使用できる。
【0027】
モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等の単官能性単量体、ジビニルベンゼンのような多官能ベンゼン誘導体、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能性の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の多官能性単量体が挙げられる。これら単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
モノマーは、モノマー液滴の形成容易性を考慮して、22℃における粘度が1〜12mPa・sであることが好ましい。
これらモノマーの内、活性エネルギー線として紫外線を用いた場合、特に重合速度の点で、単官能性及び多官能性の(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好適に使用できる。
【0028】
モノマー液滴には、種々の公知の成分が含まれていてもよい。種々の成分としては、重合開始剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。製造効率の観点から、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、使用する活性エネルギー線に対応していさえすれば、特に制限はなく公知の熱分解型や光分解型の重合開始剤が使用できる。熱分解型の重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。光分解型の重合開始剤としては例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア907)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア819)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア369)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製ダロキュアTPO)等が挙げられる。特に光分解型の重合開始剤が活性エネルギー線に紫外線を用いた場合に好適に使用できる。
【0029】
重合開始剤の使用割合は、例えば、モノマー液滴を構成するモノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲であることが好ましい。使用割合が0.1重量部未満では、重合時間が長くなることがある。一方、使用割合が5重量部を越える場合、その使用割合に見合う効果が期待できないことがある。より好ましい使用割合は、0.5〜3重量部の範囲である
エマルジョンには、モノマー液滴を分散しうる分散媒が含まれている。分散媒としては、モノマー液滴を分散することができさえすれば特に限定されない。好ましい分散媒は、水、水性媒体(水と水溶性溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール)との混合物)等が挙げられる。
【0030】
エマルジョン中のモノマー液滴の濃度は、エマルジョン中の活性エネルギー線の透過量、重合体粒子の製造効率等を考慮して、適宜設定できる。例えば、分散媒として、水又は水性媒体を使用した場合、モノマー液滴と分散媒の重量割合は、1:200〜1:20の範囲であることが好ましい。この範囲であることで、エマルジョン中の活性エネルギー線の透過を確保でき、重合不足を防止でき、かつ重合体粒子を効率よく製造できる。より好ましい重量割合は、1:200〜1:30の範囲である。
【0031】
分散媒には、界面活性剤、懸濁安定剤等が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムのような高級脂肪酸、ラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、直鎖アルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテートのようなアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記界面活性剤の内、直鎖アルキルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、界面活性能力が高いので少量でも分散効果が高く好適に使用できる。
界面活性剤の使用割合は、分散媒100重量部に対して、0.05〜2.0重量部の範囲であることが好ましい。より好ましい使用割合は、0.1〜1重量部の範囲である。
【0033】
懸濁安定剤は、分散媒中に懸濁させた油滴を安定化する役割を有している。懸濁安定剤としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール等の高分子、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムのようなリン酸塩、酸化チタン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。懸濁安定剤は、モノマー液滴100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0034】
モノマー液滴は、1〜500μmのサイズを有していることが好ましい。サイズが1μmより小さくなると、エマルジョン中のモノマー濃度が低い場合でも活性エネルギー線の透過度が低下し、重合不足を起こすことがある。加えて、重合させるためには長時間活性エネルギー線の照射が必要となることがあり、その結果、重合設備が複雑になることがある。500μmよりも大きくなると、重合体粒子の沈降スピードが速くなり、反応管内で重合体粒子が堆積しやすくなったり、モノマー液滴全体の重合に時間がかかったりすることで、重合不足が生じることある。より好ましいモノマー液滴のサイズは5〜300μm、更に好ましいモノマー液滴のサイズは5〜200μmである。
得られた重合体粒子のサイズは、モノマー液滴のサイズと略同一であり、1〜500μmのサイズとできる。
【0035】
得られた重合体粒子は、分散媒と分離することによって、粉体として取出すことができる。分散媒と重合体粒子の分離方法は公知の方法を用いることができる。また、重合体粒子は、用途によっては、分散媒に分散したままでもよい。本発明の方法により得られた重合体粒子は、AB剤、液晶パネルスペーサー、クロマトグラフィー用充填剤、診断試薬担体等に有用である。
【0036】
モノマー液滴を含むエマルジョンは、公知の方法により製造できる。例えば、モノマーと分散媒とをホモミキサーや超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等のミキサーを用いて混合する方法、SPG膜のような膜乳化法、マイクロチャネル乳化法等のエマルジョン連続形成法が挙げられる。ミキサーを用いて混合する方法では、得られたエマルジョンを定量ポンプを用いて連続重合装置へ供給することで重合体粒子が得られる。また、エマルジョン連続形成法では、定量ポンプを用いてエマルジョンを連続的に連続重合装置へ供給できるので、エマルジョン形成から重合体粒子形成までを連続させることができる。定量ポンプは、特に限定されず、公知のポンプを使用できる。上記エマルジョン製造方法の内、液滴の単分散性を高める観点から、マイクロチャネル乳化法が好ましい。
【0037】
マイクロチャネル乳化法は、マイクロチャネルを介して、モノマーを分散媒中に分散させることで、単分散性の高いエマルジョンを高い生産性で連続的に得ることができる方法である。この方法で使用されるマイクロチャネルモジュールは、モノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に形成し、かつ連続重合装置を構成するエマルジョン供給部にエマルジョンを連続的に供給しうる構成を有している。
【0038】
図4に、重合体粒子の連続製造装置の一例を示す。図4中、21はモノマータンク、22は分散媒タンク、23及び24はポンプ、25は脈流防止装置、26はマイクロチャネルを含むエマルジョン製造用モジュール、27は反応管及び活性エネルギー照射手段、28はリザーバタンク、29は気体供給ポンプ(気体供給部)、30は逆止弁を意味する。
【0039】
ここで使用される分散媒は、上記連続重合方法に使用できる分散媒をいずれも使用できる。また、エマルジョンと連続重合で使用される分散媒は、分散媒の除去及び添加工程を省略する観点から、同じものを使用することが好ましい。分散媒は、界面活性剤を0.05〜2重量%含む界面活性剤含有水溶液を使用することが好ましい。0.05重量%よりも少ないと、モノマー液滴のサイズの均一性が低下することがある。2重量%よりも多いと、水溶液の界面活性能力が高くなりすぎるため、モノマー液滴の製造時にモノマー液滴の界面張力の低下を促進させ、結果として重合体粒子のサイズの均一性が低下することがある。界面活性剤のより好ましい使用量は、0.1〜2重量%であり、更に好ましい使用量は0.1〜1重量%である。界面活性剤としては、上記連続重合方法に使用できる界面活性剤をいずれも使用できる。特に直鎖アルキルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、界面活性能力が高いので好ましい。
【0040】
次に、マイクロチャネルは、モノマーと分散媒とを仕切り、厚み方向に貫通孔を備えた中間プレートを備え、貫通孔は2段状をなし、モノマーと接する側は細孔とされ、分散媒と接する側はスリット状孔になっているものを使用できる。貫通孔を2段状とし、モノマーと接する側は流路断面積の小さな細孔とすることで、モノマーの流動抵抗(圧力損失)が大きくなり低粘度のモノマーでも生成速度やサイズを制御しやすくなる。また、細孔につながると共に分散媒と接する側をスリット状孔とすることで、スリット状孔から分散媒中に押し出されるモノマーの界面に不均一な剪断力が作用する。その結果、モノマーが分離してモノマー液滴になるきっかけが容易に得られ、均一なサイズのモノマー液滴を製造できる。
【0041】
スリット状孔と細孔の個数の比は1:1にする必要はなく、1つのスリット状孔に複数の細孔を開口せしめるようにしてもよい。また、スリット状孔の間に仕切壁を設け、仕切壁で区切られた個々のスリット状孔と細孔を1:1にしてもよい。
また、細孔の開口形状は円形や矩形等、任意であり、この細孔の幅はスリットの幅と等しくても大きくても小さくてもよい。細孔の幅を小さくした方が混合組成物にかかる圧力と混合組成物の流量の制御が容易になる。また細孔の数は例えば6300個/cm2以上とすることで、効率よくエマルジョンを作製できる。
また、このようなマイクロチャネルを使用することで、モノマーに分散媒にかかる圧力よりも大きな圧力をかけることができる。そのため、細孔からモノマーを扁平な円盤状にしてスリット状孔内に押し出し、スリット状孔から分散媒中に押し出されるモノマーの界面に不均一な剪断力を作用せしめることができる。その結果、単分散性のモノマー液滴を製造できる。
【0042】
スリット状孔とすることで、分散媒中に押し出されるモノマーの界面に不均一な剪断力が作用し、モノマーが分離してモノマー液滴になるきっかけが容易に得られ、均一なサイズのモノマー液滴を製造できる。
スリット状孔とすることで、モノマーが貫通孔から押し出される際に、スリット状孔で扁平な円盤状に膨張しているラプラス圧(ΔP=γ(1/R1+1/R2)ΔP:ラプラス圧、γ:表面又は界面張力、R1、R2:表面又は界面の曲率半径)で規定されるモノマーの内圧は、スリット状孔出口を通過して分散媒中で膨張している球形のモノマーの内圧より大きくなる。そのため、図5(a)に示すように、モノマー1がスリット状孔2から分散媒中へ急激に押し出されてスリット状孔2出口付近にネック3と呼ばれるくびれが生じる。このネック3がスリット状孔2の幅と同じ大きさに収縮し円形の断面を有するようになる。このネック3部分での内圧と分散媒中で膨張している球形のモノマー4の内圧の差は次第に大きくなり、上記内圧の差が臨界値を超えた時にネック3が急激に切断されることにより細かく均質なモノマー液滴5が生成できる(図5(b))。図中、6は細孔を意味する。
【0043】
また、例えば5mPa・s以下の粘度のモノマーであっても、モノマー液滴作製時に分散媒がスリット状孔に入り込む空間が十分に存在するため、均一なサイズのモノマー液滴を得ることができる。
細孔とスリット状孔の径及び短幅は1〜50μmであることが好ましい。これにより約3〜150μmの均一サイズのモノマー液滴が得られる。細孔とスリット状孔の径及び短幅が1μmより小さくなると、生産性が悪くなりすぎるため好ましくない。50μmを超えると、サイズが大きくなり分散安定性が悪化してくるため好ましくない。より好ましい細孔とスリット状孔の径及び短幅は、1〜30μmである。また、細孔の深さは8〜400μmであることが好ましく、スリット状孔の深さは2〜200μm(例えば、細孔径の2〜4倍)であることが好ましく、2〜120μmであることがより好ましい。更に、スリット状孔の長幅は2μm以上(例えば、細孔径の2倍以上)であることが好ましい。
【0044】
マイクロチャネルを含むエマルジョン製造用モジュールの一例を図6(a)及び(b)に示す。図6(a)は直交流型のマイクロチャネルであり、図6(b)は平行流型のマイクロチャネルである。図中、12は分散媒注入口、13はモノマー注入口、14a及び14bはガラス盤、15はマイクロチャネル、16a及び16bはパッキン、17はエマルジョン取り出し口を意味する。また、図6(a)の概略部品相関図を図7(a)に、エマルジョン取り出し口側からの概略平面図を図7(b)に、概略断面図を図7(c)に示す。
【0045】
モノマーは、モノマー注入口13からモジュール内に入り、ガラス盤14bに矢印の方向に流れ、次いでマイクロチャネルを通過して、分散媒注入口12からパッキン16aで矢印の方向に流れる分散媒と合流することでエマルジョンとなる。得られたエマルジョンはエマルジョン取り出し口17から取り出される。
【0046】
モノマーと分散媒は1:200〜1:20の流量(重量)比率でマイクロチャネルへ供給することがモノマー液滴の単分散性と生産性の面で好ましい。モノマーと分散媒との流量比率が1:200よりも大きいと生産性が悪くなることがあるので好ましくない。モノマーと分散媒との流量比率が1:20よりも小さい場合、エマルジョン濃度が濃いために、紫外線照射時の光の透過性が悪くなり、重合時間が延びたり均一な重合ができなくなったりするため好ましくない。なおモノマーと分散媒のより好ましい流量比率は1:200〜1:30である。
【0047】
なお、生産性が高い状態とは、例えば細孔とスリット状孔の径及び短幅が10μmであって、細孔を6300個具備したマイクロチャネル基盤を用いてエマルジョンを作製する場合においては、概ねモノマー流量として3ml/hr以上である。3ml/hr以上とすることで、大量生産が可能となる。
【0048】
マイクロチャネルにモノマーと分散媒とを供給する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ポンプで供給する方法、重力を利用して水圧をもって供給する方法等が挙げられる。ポンプとしては、例えばプランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプ、チューブポンプ、ギヤーポンプ等が挙げられる。重力を利用して水圧をもって供給する方法としては、例えばマイクロスフィア製造装置と、モノマー、分散媒それぞれを供給するタンクとの高低差を調節して、モノマーと分散媒の水圧差から、それぞれの流量バランスを調節する方法が挙げられる。
【0049】
モノマーと分散媒とのそれぞれの流れに脈流が発生すると、得られるモノマー液滴の単分散性が影響を受けるため、できるだけ脈流を抑えた方法を取ることが好ましい。重力を利用して水圧をもって供給する方法は、脈流を発生し難いため好適である。また、プランジャーポンプやダイヤフラムポンプ等では、脈流を抑えるために、ポンプ出口にアキュームレーターや、流量バッファーを設けたり、チューブポンプではローラーやポンプヘッドを増やしたりすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
(気体供給量)
事前にポンプにおける供給量の検量線を引き、それを元に気体供給量を設定する。
検量線は次のように引く。即ち、水中に50mlのメスフラスコをさかさまに水没させ、そこへポンプから各設定量で気体を供給する。6分間の供給量を測定し1時間分の供給量に換算し、1時間分の供給量と対応する設定量とから検量線を引く。
【0051】
(分子量(MW))
分子量は次のように測定する。まず、試料約30mgをクロロホルム10mlに溶解し、得られた溶液を非水系0.45μmクロマトディスクで濾過する。この後、濾液をWaters社製HPLC(Detector 484、Pump 510)にかけることで、ポリスチレン換算分子量を得る。分子量のHPLCによる測定条件は、カラムとして昭和電工社製Shodex GPC K−806L(φ8.0×300mm)2本を用い、カラム温度を40℃とし、移動相としてクロロホルムを用い、移動相流量を1.2ml/minとし、注入・ポンプ温度を室温とし、検出をUV(254nm)で行い、注入量を50μlとし、検量線用標準PSとして昭和電工社製(Shodex)分子量1,030,000のPSと、東ソー社製分子量5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630及び495のPSを用いる。
【0052】
(MWの変化割合)
MWの変化割合は、重合時間0時間と10時間の重合体粒子のMWを用いて以下の式にて算出した割合である。なお、重合時間0時間の重合体粒子のMWとは、一番初めに連続重合装置から得られた重合体粒子のMWを意味する。
MWの変化割合(%)=(0時間MW−10時間MW)/0時間MW×100
(エマルジョンの流量)
メスフラスコにて6分間の流量を実測し、1時間の流量に換算する。
【0053】
(モノマー液滴及び重合体粒子のサイズ、変動係数(C.V.値))
ベックマン・コールター社製、粒度分布測定装置「Multisizer3」を使用して、測定を行う。その際、100μm、200μm、280μm、400μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。得られた結果のうち、100μmアパチャーで測定したものは、体積統計値(算術平均)で求められる、10〜30μmの間における平均径を体積平均粒子径(μm)とし、C.V.を変動係数(%)とする。また、200μmアパチャーで測定したものについては、体積統計値(算術平均)で求められる、50〜120μmの間における平均径を体積平均粒子径(μm)とし、280μmアパチャーで測定したものについては、体積統計値(算術平均)で求められる、80〜160μmの間における平均径を体積平均粒子径(μm)とし、C.V.を変動係数(%)とし、400μmアパチャーで測定したものは、体積統計値(算術平均)で求められる、100〜200μmの間における平均径を体積平均粒子径(μm)とし、C.V.を変動係数(%)とする。
【0054】
実施例1
(1)エマルジョンの製造
モノマーとして、イソボルニルアクリレート(共栄社化学社製ライトアクリレートIB−XA)を70重量%、メチルメタクリレート(三菱レーヨン社製アクリエステルM)を30重量%混合することで得られるモノマー混合物を使用した。モノマー混合物100重量部に、光重合開始剤としてイルガキュア819(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を3重量部溶解させて混合組成物を得た。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム25%水溶液(日本油脂社製ニューレックスR−25)を0.4重量%含む水溶液(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム純分0.1重量%)を水系媒体として用意した。
【0055】
1cm2に23000個の非対称矩形型マイクロチャネル(細孔径10μm、深さ68μm、スリット状孔短幅10μm、長幅50μm、深さ32μm)を形成したマイクロチャネル基板(イーピーテック社製WMS1−3)をエマルジョン作製用の平行流型モジュール(図6(b))にセットした。このモジュールを使用して、混合組成物を水系媒体へ分散させることでエマルジョンを製造温度22℃で連続的に作製した。エマルジョンの作製量は約915ml/hrであった。
混合組成物の供給条件は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−540を用いて、混合組成物流量を15ml/hrとした。水系媒体は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−500とポンプ出口に脈流防止ダンパーを接続した状態で供給され、水系媒体流量を900ml/hrとした。
【0056】
(2)エマルジョンの重合
内径4mmのパイレックス(登録商標)ガラス管1.5mを内径120mmで螺旋状に巻いた螺旋状ガラス管を3個作製し、それぞれを直列に接続して総延長4.5mの螺旋状反応管とした。その螺旋状反応管を直立させた状態でその中心にハリソン東芝社製UVランプ H400PQをセットすることで、連続重合装置を製作した(図2参照)。UVランプから螺旋状反応管までの距離は約50mmであった。上記(1)の条件で連続的に製造したエマルジョンを連続重合装置へ供給するためのシリコンチューブの途中に、Y型チューブジョイントを用いて気体をエマルジョンに供給した。気体の供給速度は、ATTO社製ペリスタポンプSJ−1211Lを用いて、34ml/hr(エマルジョン流量の3.7容量%)とした。この供給速度とすることで、気体が混入したエマルジョンを滞留させることなく連続的に連続重合装置内の螺旋状反応管上部口から流した。流されるエマルジョンが螺旋状反応管内を通過する間にUVを照射し、エマルジョン中のモノマー液滴を重合させて重合体粒子を得た。重合体粒子は、螺旋状反応管下部口からスラリーの形態で得た。UV照射時間は約220秒間であった。エマルジョン製造の開始時点から2時間毎に連続重合装置から出てくるスラリーサンプルを採取した。得られたサンプル中の重合体粒子の分子量(MW)を測定した。10時間後までの重合体粒子の分子量(MW)の変化を図8(a)に示す。また、得られた重合体粒子の10時間までの平均粒子径は、28.6μm、変動係数は、7.4%であった。
【0057】
実施例2
(1)エマルジョンの製造
実施例1と同様にして混合組成物及び水系媒体を得た。
0.36cm2に13184個の非対称矩形型マイクロチャネル(細孔径6μm、深さ79μm、スリット状孔短幅6.6μm、長幅42μm、深さ21μm)を形成したエリアを10箇所同一基板上に有する非対称矩形型マイクロチャネル基板(イーピーテック社製WMS5−2、総マイクロチャネル数131840個)をエマルジョン作製用の平行流型モジュール(図7)にセットした。このモジュールを使用して、混合組成物を水系媒体へ分散させることでエマルジョンを製造温度22℃で連続的に作製した。エマルジョンの作製量は約6180ml/hrであった。
混合組成物の供給条件は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−540を用いて、混合組成物流量を180ml/hrとした。水系媒体は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−700とポンプ出口に脈流防止ダンパーを接続した状態で供給され、水系媒体流量を6000ml/hrとした。
【0058】
(2)エマルジョンの重合
内径4mmのパイレックス(登録商標)直線状ガラス管0.5mを50本平行に並べ、各ガラス管を同内径のパイレックス(登録商標)U字ガラス管で交互に接続して直線状部の総延長25mのヒダ状反応管とした。そのヒダ状反応管を水平に設置した状態で直線状ガラス管の管長に直交するように直上にハリソン東芝社製UVランプ H2000Lの2灯用ランプハウスCH−20204を設置することで、連続重合装置を製作した(図3(a)及び(b))。UVランプからヒダ状反応管までの距離は約200mmであった。上記(1)の条件で連続的に製造したエマルジョンを連続重合装置へ供給するためのシリコンチューブの途中に、Y型チューブジョイントを用いて気体をエマルジョンに供給した。気体の供給速度は、ATTO社製ペリスタポンプSJ−1211Lを用いて、71ml/hr(エマルジョン流量の1.1容量%)とした。この供給速度とすることで、気体が混入したエマルジョンを滞留させることなく連続的に連続重合装置内のヒダ状反応管片側入口から流した。流されるエマルジョンがヒダ状反応管内を通過する間にUVを照射し、エマルジョン中のモノマー液滴を重合させて重合体粒子を得た。重合体粒子は、ヒダ状反応管片側出口からスラリーの形態で得た。UV照射時間は約180秒間であった。エマルジョン製造の開始時点から2時間毎に連続重合装置から出てくるスラリーサンプルを採取した。得られたサンプル中の重合体粒子の分子量(MW)を測定した。10時間後までの重合体粒子の分子量(MW)の変化を図8(a)に示す。また、得られた重合体粒子の10時間までの平均粒子径は、17.3μm、変動係数は、8.1%であった。
【0059】
実施例3
(1)エマルジョンの製造
モノマーとして、イソボルニルアクリレート(共栄社化学社製ライトアクリレートIB−XA)のみを使用した。モノマー100重量部に、光重合開始剤としてダロキュアTPO(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を3重量部溶解させて混合組成物を得た。実施例1と同様にして水系媒体を得た。
【0060】
1cm2に753個の非対称矩形型マイクロチャネル(細孔径48μm、深さ350μm、スリット状孔短幅50μm、長幅350μm、深さ120μm)を形成したマイクロチャネル基板(イーピーテック社製WMS3−4)をエマルジョン作製用の平行流型モジュール(図6(b))にセットした。このモジュールを使用して、混合組成物を水系媒体へ分散させることでエマルジョンを製造温度22℃で連続的に作製した。エマルジョンの作製量は約6090ml/hrであった。
混合組成物の供給条件は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−540を用いて、混合組成物流量を90ml/hrとした。水系媒体は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−700とポンプ出口に脈流防止ダンパーを接続した状態で供給され、水系媒体流量を6000ml/hrとした。
【0061】
(2)エマルジョンの重合
実施例2と同様のヒダ状反応管を用いて重合体粒子を得た。但し、気体の供給速度は、ATTO社製ペリスタポンプSH−1211Lを用いて、225ml/hr(エマルジョン流量の3.7容量%)とした。この供給速度とすることで、気体が混入したエマルジョンを滞留させることなく連続的に連続重合装置内のヒダ状反応管片側入口から流した。実施例2と同様にしてスラリーサンプルを採取した。得られたサンプル中の重合体粒子の分子量(MW)を測定した。10時間後までの重合体粒子の分子量(MW)の変化を図8(b)に示す。また、得られた重合体粒子の10時間までの平均粒子径は、134μm、変動係数は、6.3%であった。
【0062】
実施例4
気体の供給速度を、590ml/hr(エマルジョン流量の9.7容量%)としたこと以外は実施例3と同様にしてスラリーサンプルを採取した。得られたサンプル中の重合体粒子の分子量(MW)を測定した。10時間後までの重合体粒子の分子量(MW)の変化を図8(b)に示す。また、得られた重合体粒子の10時間までの平均粒子径は、135μm、変動係数は、6.7%であった。
【0063】
比較例1
(1)エマルジョンの作製
以下の条件以外は、実施例1と同様にエマルジョンを連続的に作製した。
エマルジョンの作製量は、約908ml/hrであった。混合組成物の供給条件は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−540を用いて、混合組成物流量を17g/hrとした。水系媒体は、日本精密化学社製パーソナルポンプNP−KX−500とポンプ出口に脈流防止ダンパーを接続した状態で供給され、水系媒体流量を890g/hrとした。
【0064】
(2)エマルジョンの重合
気体を混合させないことを除き、実施例1と同様に連続重合装置へエマルジョンを供給した。また、エマルジョンが螺旋状反応管内を通過する間UVを照射し、エマルジョン中のモノマー液滴を重合させて重合体粒子を得た。重合体粒子は、螺旋状反応管下部口からスラリーの形態で得た。UV照射時間は約230秒間であった。エマルジョン製造の開始時点から2時間毎に連続重合装置から出てくるスラリーサンプルを採取した。10時間後までの重合体粒子の分子量(MW)の変化を図8(a)に示す。また、得られた重合体粒子の10時間までの平均粒子径は、27.8μm、変動係数は、6.5%であった。
【0065】
比較例2
気体の供給速度を、ATTO社製ペリスタポンプSH−1211Lを用いて、824ml/hr(エマルジョン流量の13容量%)としたこと以外は実施例2と同様にして重合を行った。1時間連続で重合体粒子を製造できたが、重合が不十分なためか、その後徐々に重合体粒子が反応管内壁に付着して、反応管が閉塞してしまったため、閉塞後は重合できなくなった。最初に得られた重合体粒子も重合不足により凝集してしまい、重合体粒子として単離できなかった。
実施例1〜4及び比較例1〜2の気体のエマルジョン流量に対する流量割合及びMWの変化割合を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から、エマルジョンと共に気体を流すことにより、反応管内でのモノマー液滴及び重合体粒子の滞留が防止されるため、時間が経過しても重合体粒子のMWの変化が抑制できていることがわかる。
【符号の説明】
【0068】
a 気体
b 反応管
c エマルジョン
A 反応管
B 活性エネルギー線照射手段
C エマルジョン供給部
D 重合体粒子を含むスラリー出口
E 冷却水入口
F 冷却水出口
G 冷却水タンク
H 活性エネルギー線照射手段保護管
1 モノマー
2 スリット状孔
3 ネック
4 球形のモノマー
5 モノマー液滴
6 細孔
12 分散媒注入口
13 モノマー注入口
14a、14b ガラス盤
15 マイクロチャネル
16a、16b パッキン
17 エマルジョン取り出し口
21 モノマータンク
22 分散媒タンク
23、24 ポンプ
25 脈流防止装置
26 マイクロチャネルを含むエマルジョン製造用モジュール
27 反応管及び活性エネルギー照射手段
28 リザーバタンク
29 気体供給ポンプ(気体供給部)
30 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン供給部と、気体供給部と、反応管と、活性エネルギー線照射手段とを備え、
前記エマルジョン供給部が、前記反応管に1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有するモノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に供給しうる構成を有し、
前記気体供給部が、前記反応管に供給されるエマルジョンに気体を連続的又は断続的に供給しうる構成を有し、
前記活性エネルギー線照射手段が、前記モノマー液滴を重合させるための活性エネルギー線を、前記反応管中のモノマー液滴に連続的に照射しうる構成を有することを特徴とするモノマー液滴の連続重合装置。
【請求項2】
前記反応管が、1〜10mmの内径を有する請求項1に記載のモノマー液滴の連続重合装置。
【請求項3】
前記反応管が、1〜50mの長さを有する請求項1又は2に記載のモノマー液滴の連続重合装置。
【請求項4】
前記反応管は、前記活性エネルギー線照射手段の周りを囲うように螺旋状に巻かれた構成を有し、前記エマルジョンの供給される端部が最も上に位置するように設置される請求項1〜3のいずれか1つに記載のモノマー液滴の連続重合装置。
【請求項5】
前記反応管は、複数の直線管と、隣接する直線管を接続する連結管とからなるヒダ状の構成を有し、前記複数の直線管中のエマルジョンの流れ方向が重力の方向に直交するよう設置され、かつ前記エマルジョンの供給される端部が最も上に位置するように設置される請求項1〜3のいずれか1つに記載のモノマー液滴の連続重合装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の連続重合装置と、エマルジョン連続形成装置とを少なくとも備え、前記エマルジョン連続形成装置が、マイクロチャネルモジュールにより、モノマー液滴を含むエマルジョンを連続的に形成し、かつ前記連続重合装置を構成するエマルジョン供給部に前記エマルジョンを連続的に供給しうる構成を有していることを特徴とする重合体粒子の連続製造装置。
【請求項7】
反応管内に、連続的に供給される1種のモノマー又は複数種のモノマー混合物を有するモノマー液滴を含むエマルジョンと共に、前記エマルジョンの流量の1〜10容量%の流量で気体を連続的又は断続的に供給する工程と、前記エマルジョンが前記反応管を通過する間に、前記エマルジョンに活性エネルギー線を照射することにより、前記エマルジョン中のモノマー液滴を重合させる工程とを含むことにより重合体粒子を連続で得ることを特徴とする重合体粒子の連続重合方法。
【請求項8】
前記反応管が、1〜10mmの内径を有する請求項7に記載の重合体粒子の連続重合方法。
【請求項9】
前記モノマー液滴が光重合開始剤を含み、前記活性エネルギー線が紫外線である請求項7又は8に記載の重合体粒子の連続重合方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図2】
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【図7a】
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【公開番号】特開2010−195863(P2010−195863A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39512(P2009−39512)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】