説明

モンテルカストの新規結晶塩

本出願は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩に関する。これらの塩は、ロイコトリエン媒介疾患および障害の治療のための治療薬として有用である。本出願は、また、前記塩、ならびに塩および任意選択で他の治療薬を含む医薬組成物を調製するための方法ならびに中間体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
モンテルカストナトリウムは、選択的ロイコトリエンD4受容体拮抗薬であり、錠剤および経口顆粒剤として世界中で市販されてきたSingulair(登録商標)の活性成分である。Singulair(登録商標)は、喘息の予防および長期的治療、ならびに季節性および通年性アレルギー性鼻炎の症状緩和のために処方されている。この化合物は、米国特許第5,565,473号明細書に開示され、モンテルカストナトリウムの結晶形は、米国特許第6,320,052号明細書および国際公開第2004/091618号に開示されている。結晶性のモンテルカスト遊離酸は、国際公開第2004108679号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第5,565,473号明細書
【特許文献2】米国特許第6,320,052号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/091618号
【特許文献4】国際公開第2004/108679号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、モンテルカストの新規の結晶性1,2−エタンジスルホン酸塩およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩に関し、これらの塩は、ロイコトリエン媒介疾患および障害の治療のための治療薬として有用である。本発明は、また、このような結晶性化合物を含むまたはこのような結晶性化合物から調製される医薬組成物、このような結晶性化合物を調製するための方法および中間体、ならびにロイコトリエン媒介疾患または障害を治療するための、このような結晶性化合物の使用方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態A)の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図1B】モンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態A)のTG分析を示す図である。
【図2A】結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態B)の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2B】モンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態B)のTG分析を示す図である。
【図3A】結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態C)の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3B】モンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態C)のTG分析を示す図である。
【図4A】結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4B】モンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩のTG分析を示す図である。
【図5A】結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態A、BおよびC)、ならびにモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩の粉末X線回折ピークを示す簡略一覧表である。
【図5B】結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩(形態A、BおよびC)、ならびにモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩の粉末X線回折ピークを示す簡略一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
1つの態様において、本発明は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩を提供する。1つの実施形態において、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩は、図1Aにおおむね示されているように、粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。第2の実施形態において、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩は、図2Aにおおむね示されているように、粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。第3の実施形態において、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩は、図3Aにおおむね示されているように、粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0006】
第2の態様において、本発明は、結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩を提供する。1つの実施形態において、結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩は、図4Aにおおむね示されているように、粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0007】
第3の態様において、本発明は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩、ならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。1つの実施形態において、本医薬組成物は経口投与に適しており、第2の実施形態において、本医薬組成物は経皮投与に適しており、第3の実施形態では、本医薬組成物は吸入投与に適している。
【0008】
第4の態様において、本発明は、呼吸器障害の治療方法を提供し、この方法は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量を、これを必要とする患者に投与することを含む。1つの実施形態において、結晶性のモンテルカスト塩は、吸入により患者に投与される。
【0009】
第5の態様において、本発明は、β2アドレナリン受容体作動薬、ステロイド性抗炎症薬、PDE−IV阻害薬およびムスカリン受容体拮抗薬から選択される第2の治療薬、ならびに薬学的に許容される担体を組み合わせた、吸入のための医薬組成物(結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩を含む。)を提供する。1つの実施形態において、第2の治療薬はコルチコステロイドである。別の実施形態において、第2の治療薬はPDE−IV阻害薬である。
【0010】
第6の態様において、本発明は、結晶性のモンテルカスト塩(結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される。)の治療有効量と、第2の治療薬(β作用薬、コルチコステロイド、PDE−IV阻害薬および抗コリン作用薬から選択される。)の治療有効量を、吸入により同時に、順次にまたは個別に、これを必要とする患者に投与することを含む、呼吸器障害の治療方法を提供する。1つの実施形態において、第2の治療薬はコルチコステロイドである。別の実施形態において、第2の治療薬はPDE−IV阻害薬である。
【0011】
モンテルカストは、[R−(E)]−1−[[[1−[3−[2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル]フェニル]−3−[2−(1−ヒドロキシ−1−エチルエチル)フェニル]プロピル]チオ]メチル]シクロプロパン酢酸として化学的に知られている化合物であり、
【0012】
【化1】

の構造を有している。モンテルカストナトリウムは、喘息およびアレルギー性鼻炎の治療のために、SINGULAIR(登録商標)の商品名で、世界中に販売されている。モンテルカストナトリウムは、米国特許第5,565,473号明細書および同第6,320,052号明細書に開示されている。
【0013】
用語「治療有効量」は、これを必要とする患者に投与する場合、治療を施すために十分な量を意味する。
【0014】
本明細書で使用されている用語「治療する」または「治療」は、(a)疾患もしくは病状の発生を予防すること、すなわち患者の予防的処置、(b)疾患もしくは病状を寛解させること、すなわち、患者の疾患もしくは病状を消失させるまたは軽減させること、(c)疾患もしくは病状を鎮静させること、すなわち、患者の疾患もしくは病状の進展を遅延させるまたは阻止することまたは(d)患者の疾患もしくは病状の症状を緩和させることを含む、ヒトにおける疾患もしくは病状を治療するまたはこれらの治療を意味する。
【0015】
用語「呼吸器障害」は、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支炎、慢性気管支炎、急性気管支炎、鼻炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性気管支炎、肺気腫、成人呼吸窮迫症候群、ウイルス(呼吸器合胞体ウイルスなど)性気管支炎に続発する喘鳴、静脈洞炎および鼻のポリープの1つまたは複数を含むが、これらだけに限定されない。
【0016】
用語「微粒子化」は、他に特に指定されていなければ、粒子の少なくとも90%が約10ミクロン未満の径を有していることを意味する。
【0017】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩は、周囲温度において、有機溶媒中で、モンテルカストの遊離酸またはナトリウム塩を1,2−エタンジスルホン酸と接触させることにより調製することができる。1,2−エタンジスルホン酸またはこの水和物を、典型的な場合には、モンテルカストに対して約0.5から約2モル当量において使用してよい。反応は、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの有機溶媒、酢酸エチルなどのエステルまたはこれらを組み合わせた中で行われる。結晶性の物質は、濾過により集められ、洗浄され乾燥される。粒子径は、ジェットミル(これに限定されないが)などの微粒子化技術を用いて縮小させることができる。
【0018】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩の3つの形態が得られた。形態Aは、エタノール(これだけに限定されないが)などの溶媒中のモンテルカストの酸の懸濁液を、1,2−エタンジスルホン酸の1当量の水和物と処理することにより調製することができる。混合物を20−25℃において、典型的な場合には18時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過すると、モンテルカストのヘミ−1,2−エタンジスルホン酸塩が得られた。形態AのEDSA塩が、最大約20μmの、不規則な形をとるフレーク状の粒子から成る黄色粉末として得られた。この化合物の結晶性は、粉末X線回折によって測定された、2θが5.1°、5.5°、8.4°、13.5°、17.2°および26.0°における特徴的な反射ピークを有するX線によって示された。XRPDパターンは、図1Aに示されている。DTA曲線(図1B)において、TG/MASSおよび溶液NMRによって確認された化合物の化学的脱水に起因する、約2−3%の1段階の重量損失が、142℃(ピーク)における吸熱遷移とともに生じているのが、110−180℃の間で観察された。
【0019】
形態Bは、エタノール(これだけに限定されないが)などの溶媒中のモンテルカストナトリウムの懸濁液を、1,2−エタンジスルホン酸の2当量の水和物と処理することにより調製することができる。混合物を20−25℃において、典型的な場合には18時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過すると、モンテルカストのヘミ−1,2−エタンジスルホン酸塩が得られた。形態BのEDSA塩が、最大約10μmの不規則な形をとる均等化された粒子から成る黄色粉末として得られた。この化合物の結晶性は、粉末X線回折によって測定された、2θが5.5°、12.8°、16.6°、23.0°、25.6°および26.8°における特徴的な反射ピークを有するX線によって示された。XRPDパターンは、図2Aに示されている。DTA曲線(図2B)において、TG/MASSによって確認された脱水に起因する、0.75%(60−90℃)と約2%(120−180℃)の2段階の重量損失が、74℃および146℃(ピーク)における2つの吸熱遷移とともにそれぞれ生じているのが観察された。第2の重量損失は、溶液NMRによって確認された化学的脱水が原因であった。
【0020】
形態Cは、エタノール(これだけに限定されないが)などの溶媒中のモンテルカストの酸の懸濁液を、1,2−エタンジスルホン酸の0.5当量の水和物と処理することにより調製することができる。混合物を20−25℃において、典型的な場合には18時間撹拌し、得られた沈殿物を濾過すると、モンテルカストのヘミ−1,2−エタンジスルホン酸塩が得られた。形態CのEDSA塩が、最大約10μmの不規則な形をとる塊状で均等化された粒子から成る黄色粉末として得られた。この化合物の結晶性は、粉末X線回折によって測定された、2θが5.5°、12.8°、13.8°、16.6°、18.5°、20.8°、26.8°における特徴的な反射ピークを有するX線によって示された。XRPDパターンは、図3Aに示されている。DTA曲線(図3B)において、TG/MASSおよび溶液NMRによって確認された化学的脱水に起因する、3%(120−180℃)の1段階の重量損失が、147℃(ピーク)における吸熱遷移とともに生じているのが観察された。
【0021】
結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩は、モンテルカストの遊離酸またはナトリウム塩を、周囲温度において、有機溶媒中でN,N’−ジベンジルエチレンジアミンと接触させることにより調製することができる。この反応は、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの有機溶媒、酢酸エチルなどのエステルまたはこれらを組み合わせた中で行われる。結晶物質は、濾過により集められ、洗浄され乾燥される。粒子径は、ジェットミル(これに限定されないが)などの微粒化技術を用いて縮小させることができる。形態1のジベンジルエチレンジアミン塩は、凝集した不規則な形をとる針状の粒子から成る白色粉末として得られた。この化合物の結晶性は、粉末X線回折によって測定された、2θが4.5、6.1、12.7、14.9、17.7、18.8および20.8°2θにおける特徴的な反射ピークを有するX線によって示された。XRPDパターンは、図4Aに示されている。DTA曲線(図4B)において、約0.6%(60−120℃)の重量損失が、開始温度が90℃の吸熱遷移とともに生じているのが観察された。
【0022】
本発明の結晶性のモンテルカスト塩は、システイニルロイコトリエンに媒介された、疾患および障害の治療のための薬剤を調製する際の使用に適している。このような疾患および障害は、喘息、アレルギー性鼻炎(季節性および通年性を含む)、慢性および急性気管支炎、肺気腫、成人呼吸窮迫症候群、アトピー性皮膚炎、慢性じん麻疹、静脈洞炎、鼻のポリープ、慢性閉塞性肺疾患、鼻結膜炎を含む結膜炎、片頭痛、嚢胞性線維症、ならびにウイルス(呼吸器合胞体ウイルスなど)性気管支炎に続発する喘鳴を含むが、これらだけに限定されない。
【0023】
本発明の医薬組成物は、典型的な場合には、本発明の塩を、薬学的に許容される担体および第2治療薬などの1つまたは複数の場合による成分と、十分および密接に混合または混和することにより調製される。結果として生じる均一に混和された混合物は、次に、従来の方法および装置を用いて成形または充填し、錠剤、カプセル、丸薬、キャニスター、薬包、ディスペンサーなどにすることができる。しかし、いったん本発明の結晶塩が製剤化された後、特定の製品製剤しだいで、この結晶塩は結晶形であってもよくまたは結晶形でなくてもよく、例えば、この塩は適切な担体中に溶解され得ることが当業者には理解される。
【0024】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は吸入投与に適している。吸入投与に適切な医薬組成物は、典型的な場合には、エアロゾルまたは粉末の形態である。このような組成物は、一般に、噴霧吸入器、加圧定量吸入器(pMDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)などの、よく知られた送達デバイスまたは類似の送達デバイスを使用して投与される。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、活性剤を含む医薬組成物は、噴霧吸入器を使用した吸入により投与される。このような噴霧器は、典型的な場合には、高速の気流を発生し、活性剤を含む医薬組成物を、患者の気道内に送られるミストとして噴霧させる。したがって、噴霧吸入器において使用するために製剤化する場合には、活性剤を、典型的な場合には、適当な担体に溶解し溶液を作る。適切な噴霧吸入器は、例えば、PARI GmbH(Starnberg、ドイツ)により、市販されている。他の噴霧器としては、レスピマット(ベーリンガーインゲルハイム)ならびに、例えば、米国特許第6,123,068号明細書および国際公開第97/12687号に開示されている吸入器が挙げられる。噴霧吸入器において使用するための典型的な医薬組成物は、活性剤を約0.05g/mLから約10mg/mL含んだ水溶液を含む。
【0026】
別の特定の実施形態において、吸入可能な組成物は、各作動時に薬剤の計量された用量を放出する加圧定量吸入器で使用するのに適している。pMDI用の製剤は、ハロゲン化炭化水素の噴射剤中の溶液または懸濁液の形態にしてもよい。pMDIで使用されている噴射剤のタイプは、クロロフルオロカーボン類(フレオンまたはCFCとしても知られている。)の使用が廃止されるにつれて、ハイドロフルオロアルカン類(HFA)(ハイドロフルオロカーボン類(HFC)としても知られている。)に移ってきている。特に、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)は、現在販売されている数種の吸入用医薬品において使用されている。組成物は、エタノール、オレイン酸、ポリビニルピロリドンなどの、吸入用途のための他の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
【0027】
加圧MDIは、典型的には2つの部品を有している。まず第1に、薬物粒子が、懸濁液または溶液の形態で、加圧下で貯蔵されるキャニスター部品がある。第2に、キャニスターを保持し作動させるために使用される受け口部品がある。典型的な場合には、キャニスターは、製剤の複数回の用量を収容するが、単回投与量のキャニスターを有することも可能である。キャニスター部品は、典型的な場合には、出口弁を含み、この出口弁からキャニスターの内容物を排出させることができる。キャニスター部品に力を加えて受け口部品へ押し込み、それにより出口弁を開き、薬剤粒子を出口弁から受け口部品を通って搬送させ、受け口の出口から放出させることによりエアロゾル薬剤がpMDIから分配される。キャニスターから放出される際に、薬剤粒子は、「霧状」となり、エアロゾルを形成する。患者は、エアロゾル化された薬剤の放出をその患者の吸息に協調させ、その結果、薬剤粒子が患者の吸気流に入り肺に搬出されることが、意図される。典型的な場合には、pMDIは、キャニスターの内容物を加圧し受け口部品の出口から薬剤粒子を噴出させるために、噴射剤を用いる。
【0028】
pMDIにおいては、製剤は、液状で提供され、噴射剤と一緒に容器の内部にある。噴射剤は、様々な形態をとることができる。例えば、噴射剤は、圧縮ガスまたは液化ガスを含むことができる。このような組成物は、典型的な場合には、冷却または加圧されたハイドロフルオロアルカンを、活性剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適当な容器に加えることにより調製される。懸濁液を調製するために、活性剤は微粒化され、次に噴射剤と混合される。製剤は、次に、定量吸入器の一部を構成するエアロゾルキャニスター内に装填される。HFA噴射剤とともに使用するために、特に開発された定量吸入器の例は、米国特許第6,006,745号明細書および同第6,143,277号明細書に提供されている。別法として、懸濁液の製剤は、微粒化された活性剤粒子上に界面活性剤被膜を噴霧乾燥することにより、調製することができる。例えば、国際公開第99/53901号および国際公開第00/61108号を参照されたい。
【0029】
別の特定の実施形態において、吸入可能な組成物は、ドライパウダー吸入器と使用するように適合される。DPIで使用するために適切な吸入組成物は、典型的な場合には、微粒化された活性成分の粒子と薬学的に許容される担体の粒子を含む。活性物質の粒子径は、約0.1μmから約10μmに変化させてもよいが、効果的な遠位肺への送達目的では、活性剤粒子の少なくとも95%は5μm以下である。活性剤は0.01−99%の濃度で存在し得る。しかし、典型的な場合には、活性剤は組成物の全重量に対して、約0.05から50%の濃度で存在し、より典型的な場合には約1−25%で存在する。
【0030】
上記のように、活性成分に加えて、好ましくは、吸入可能粉末は薬学的に許容される担体を含み、この担体は、吸入に対して許容される、薬理学的に不活性な任意の物質または物質の組合せから成るものとすることができる。担体粒子は、1つまたは複数の結晶性の糖から成ると有利であり、担体粒子は、1つまたは複数の糖アルコールまたは糖ポリオールから成るものとしてもよい。好ましくは、担体粒子は、デキストロースまたは乳糖の粒子であり、とりわけ乳糖である。Rotohaler、DiskhalerおよびTurbohalerなどの、従来のドライパウダー吸入器を利用する本発明の実施形態において、担体粒子の粒子径は、約10ミクロンから約1000ミクロンに分布し得る。これらの実施形態のある形態では、担体粒子の粒子径は、約20ミクロンから約120ミクロンに分布し得る。これらの実施形態の他のいくつかの形態では、担体粒子の少なくとも90重量%の径が、1000ミクロン未満であり、好ましくは、60ミクロンから1000ミクロンの間にある。これらの担体粒子の比較的大きな径により、良好な流動性および飛沫同伴性が得られる。存在する場合の担体粒子の量は、粉末の全重量を基準として最大約99重量%、例えば、最大90重量%、最大80重量%または最大50重量%であってよい。存在する場合のいずれの微細な賦形剤物質の量も、粉末の全重量を基準として最大約50%であってよい。
【0031】
粉末は、また、賦形剤物質の微粒子を含有することもでき、賦形剤物質は、例えば、担体物質としての使用に適している上記物質(特にデキストロースまたは乳糖などの結晶性の糖)中の1つのような物質であってよい。両剤が存在する場合、微細な賦形剤物質は、担体粒子と同じものであっても異なる物質であってもよい。微細な賦形剤物質の粒子径は、一般に、30μmを超えず、好ましくは20μmを超えない。いくつかの状況では、例えば、存在するいずれかの担体粒子および/またはいずれかの微細な賦形剤物質が、口腔咽頭領域内の感覚を誘発することができる物質自体の場合、担体粒子および/または微細な賦形剤物質は、指標物質を構成することができる。例えば、担体粒子および/またはいずれかの細粒賦形剤は、マンニトールを含んでよい。
【0032】
本明細書に記載されたドライパウダー組成物は、また、場合によって、1つまたは複数の添加剤を、約0.1重量%から約10重量%の量で含んでもよい。添加剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ロイシン、レシチンおよびフマル酸ステアリルナトリウムを挙げることができる。
【0033】
本発明によるドライパウダー医薬組成物は、標準的な方法を用いて調製することができる。薬理学的に活性な薬剤、担体粒子およびもし存在すれば他の賦形剤を、タンブルミキサーなどのいずれかの適当なブレンド装置を用いて、密接に混合することができる。製剤の特定の各成分は、任意の順序で混合することができる。特定の各成分を前もって混合すると、特定の状況では、有利であることが分かることもある。次に、ドライパウダー吸入器とともに使用するために、粉末混合物を用いてカプセル、ブリスター、リザーバまたは他の貯蔵器具に充填する。
【0034】
ドライパウダー吸入器において、投与される用量は、非加圧の乾燥粉末の形状で貯蔵され、吸入器の作動時に粉末の粒子が患者により吸引される。DPIは、粉末が個々のカプセルに収容される単位容量器具としてもよく、複数のカプセルまたはブリスターが使用される複数の単位用量および投与時に貯蔵容器から粉末が計量されるリザーバ器具としてもよい。ドライパウダー吸入器は、粉末を分散させて肺に送達させるために、患者の吸気を用いる「受動的な」器具にすることができ、または粉末を分散させるために、吸気動作以外の機構が用いられる「能動的な」器具とすることができる。「受動的な」ドライパウダー吸入器の例としては、Spinhaler、Handihaler、Rotahaler、Diskhaler、Diskus、Turbuhaler、Clickhalerなどが挙げられる。能動的な吸入器の例としては、Nektar Pulmonary Inhaler(Nektar Therapeutics)、Vectura LimitedのAspirair(商標)装置、Microdose DPI(MicroDose)およびOriel DPI(Oriel)が挙げられる。しかし、本発明の組成物は、受動的または能動的な吸入器のどちらでも投与することができることを理解されたい。
【0035】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与に適している。経口投与に適する医薬組成物は、各々が本発明の塩の所定量を活性成分として含有する、カプセル、錠剤、丸薬、ロゼンジ、カシェ、糖剤、粉末、顆粒の形状、水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液としての形状、水分中の油もしくは油中の水分の液状乳剤としての形状またはエリキシル剤もしくはシロップとしての形状およびその他としてよい。
【0036】
固形剤形(すなわち、カプセル、錠剤、丸薬など)の経口投与を対象とする場合には、本発明の医薬組成物は、典型的な場合には、本発明の塩を活性成分として含み、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む。場合によって、このような固形剤形は、また、(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールおよび/またはケイ酸などの、充填剤または増量剤、(2)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアラビアゴムなどの結合剤、(3)グリセロールなどの湿潤剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および/または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶液緩染剤、(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)セチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、(8)カオリンおよび/またはベントナイト粘土などの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはこれらの混合物などの潤滑剤、(10)着色剤および(11)緩衝剤も含み得る。
【0037】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、本発明の第Iの医薬組成物中に存在することができる。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、(2)パルミチン酸コルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性の抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤を含む。錠剤、カプセル、丸薬およびその他のためのコーティング剤は、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)などの腸溶性のコーティングとして使用される物質を含む。
【0038】
所望する場合、本発明の医薬組成物は、また、例として様々な割合におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリ乳酸(PLA)もしくはポリラクチド−co−グリコリド(PLGA)などの他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して、活性成分の持続放出または制御放出を実現するように製剤化してもよい。
【0039】
さらに、本発明の医薬組成物は、場合によって乳白剤を含有し、活性成分を消化管の特定の部分において、場合によって遅延させた方法で、選択的に放出するように製剤化してもよい。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。活性成分は、適切な場合には、上述の賦形剤の1つまたは複数を用いてマイクロカプセル化された形のものとすることもできる。
【0040】
経口投与のために適切な液状剤形は、例示として、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。このような液状剤形は、典型的な場合には、活性成分、例えば水または他の溶媒などの不活性な希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(具体的には、l綿実油、アメリカホドイモ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルなどの溶解補助剤および乳化剤、ならびにこれらの混合物を含む。懸濁液は、活性成分に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびポリオキシエチレンソルビタンのエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントなどの懸濁化剤、ならびにこれらの混合物を含有してもよい。
【0041】
本発明の塩は、また、既知の経皮送達システムおよび賦形剤を用いて経皮投与することもできる。例えば、本発明の化合物は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなどの透過促進剤と混合して、パッチまたは同様な送達システム内に組み込むことができる。所望する場合、ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含む追加の賦形剤を、このような経皮性組成物中に使用してもよい。
【0042】
本発明の医薬組成物は、また、モンテルカスト塩と組み合わせて、1つまたは複数の他の治療薬も含有してよい。例えば、本発明の医薬組成物は、コルチコステロイド、ホスホジエステラーゼIV阻害剤、抗ヒスタミン剤、β2アドレナリン受容体作動薬、ムスカリン受容体拮抗薬(すなわち、抗コリン剤)などのステロイド性抗炎症薬から選択される、1つまたは複数の治療薬をさらに含んでもよい。他の治療薬は、薬学的に許容される塩または溶媒和物の形で使用することができる。さらに、適切な場合は、他の治療薬を光学的に純粋な立体異性体として使用することができる。
【0043】
本発明のモンテルカスト塩と組み合わせて使用できる、代表的なβ2アドレナリン受容体作動薬は、サルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、サルメファモール、フェノテロール、テルブタリン、アルブテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ビトルテロール、ピルブテロール、レバルブテロールその他またはこれらの薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。典型的な場合には、β2アドレナリン受容体作動薬は、用量当たり約0.05μgから約500μgを付与するのに十分な量で存在する。
【0044】
本発明のモンテルカスト塩と組み合わせて使用できる、代表的なステロイド性抗炎症薬は、メチルプレドニソロン、プレドニソロン、デキサメタゾン、フルチカゾンプロピオネート、6,9−ジフルオロ−17−[(2フラニルカルボニル)オキシ]−11−ヒドロキシ−16−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6,9−ジフルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3−オキソ−17−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17−カルボチオ酸S−(2−オキソテトラヒドロフラン−3S−イル)エステル、ベクロメタゾンエステル類(例えば、17−プロピオネートエステルまたは17,21−ジプロピオネートエステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル類(例えば、フロエートエステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポナイド、シクレソニド、ブチクソコートプロピオネート、RPR−106541、ST−126その他またはこれらの薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、ステロイド性抗炎症薬は、モメタゾンフロエートまたはシクレソニドである。典型的な場合には、ステロイド性抗炎症薬は、用量あたり約0.05μgから約500μgを付与するのに十分な量で存在する。
【0045】
本発明の化合物とともに使用され得る、代表的なホスホジエステラーゼ−4(PDE−4)阻害剤は、シロミラスト、ロフルミラスト、AWD−12−281(Elbion)、NCS−613(1NSERM)、D−4418(Chiroscience and Schering−Plough)、CI−1018またはPD−168787(Pfzer)、国際公開第99/16766号に開示されているベンゾジオキソール化合物(協和発酵キリン株式会社)、K−34(協和発酵キリン株式会社)、V−11294A(Napp)、ロフルミラスト(Byk−Gulden、現在のAltana)、国際公開第99/47505号(Byk−Gulden)に開示されているフタラジノン化合物、Pumafentrine(Byk−Gulden、現在のAltana)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(田辺三菱製薬株式会社)およびT2585(田辺三菱製薬株式会社)を含むが、これらに限定されない。本発明のモンテルカスト塩と組み合わせて使用するために適切な、さらなるPDE4阻害剤は、国際公開第2004/048374(Merck Frosst)および国際公開第2003/018579(Merck Frosst)に開示されている阻害剤である。
【0046】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる、代表的なムスカリン受容体拮抗薬(すなわち、抗コリン剤)は、アトロピン、硫酸アコピン(akopine)、アトロピン酸化物、硝酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒオスシアミン(d、l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、グリコピロレート、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクトラミンもしくはこれらの薬学的に許容される塩または塩として列挙されたこれらの化合物のための、薬学的に許容されるこれらの代替の塩を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の化合物と組み合わせて使用することのできる、代表的な抗ヒスタミン剤(すなわち、H1受容体拮抗薬)は、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナートなどのエタノールアミン類、マレイン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミンなどのエチレンジアミン類、クロルフェニラミンおよびアクリバスチンなどのアルキルアミン類、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジンなどのピペラジン類、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはこの脱カルボエトキシアナログ、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジンなどのピペリジン類、塩酸アゼラスチンその他もしくはこれらの薬学的に許容される塩または塩として列挙されたこれらの化合物のための、薬学的に許容されるこれらの代替の塩を含むが、これらに限定されない。
【0048】
医薬組成物の組合せの1つの実施形態において、本発明の結晶性のモンテルカスト塩、ならびにコルチコステロイドおよびPDEIV阻害剤から選択される第2の活性成分を含む吸入組成物が提供されている。より具体的な実施形態において、第2の活性成分は、シクレソニドおよびモメタゾンフロエートから選択される。別のより具体的な実施形態において、第2の活性成分は、式(1)
【0049】
【化2】

のPDEIV阻害剤またはこの薬学的に許容される塩である。
【0050】
式(1)の化合物は、国際公開第2003/018579号および国際公開第2004/048377号に開示されている。
【0051】
モンテルカストは、ロイコトリエン受容体拮抗薬であり、したがって、ロイコトリエン媒介疾患および障害の治療や予防のために使用することができる。ロイコトリエン拮抗薬は、とりわけ、喘息、アレルギー性鼻炎(季節性および通年性を含む)、アトピー性皮膚炎、慢性じん麻疹、静脈洞炎、鼻のポリープ、慢性閉塞性肺疾患、鼻結膜炎を含む結膜炎、片頭痛、嚢胞性線維症およびウイルス(呼吸器合胞体ウイルスなど)性気管支炎に続発する喘鳴の疾患の治療に有用である。したがって、1つの実施形態において本発明は、ロイコトリエン媒介疾患または障害を治療するための方法に関し、この方法は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量を、これを必要とする患者に投与することを含む。別の実施形態において、本発明は、ロイコトリエン媒介疾患または障害を治療するための方法を提供し、この方法は、モンテルカストの1,2−エタンジスルホン酸塩およびモンテルカストのN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択されるモンテルカスト塩の治療有効量を含む医薬組成物を、これを必要とする患者に投与することを含む。より具体的な実施形態において、本発明は、ロイコトリエン媒介疾患または障害を治療するための方法を提供し、この方法は、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストのN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量を含む医薬品の吸入組成物を、これを必要とする患者に投与することを含む。
【0052】
肺障害の治療に使用する場合、本発明の塩は、1日あたり複数回の投与または毎日1回の服用で投与される。喘息治療のためのモンテルカストナトリウムの経口用量は、毎日1回4mg(小児患者用)から毎日1回10mg(成人患者用)の範囲に及ぶ。本発明の吸入組成物を使用して喘息を治療するための用量は、典型的な場合には経口用量未満であり、1日当たり約100μgから約10mgに及ぶ範囲としてよく、1つの実施形態においては、用量は1日当たり約200μgから約5mg、別の実施形態では1日当たり約250μgから約2mg、別の実施形態では1日当たり約600μgから約4mgである。吸入される本発明のモンテルカスト塩は、1日当たり1回、2回または3回投与してもよく、各投与においては、投与される剤形、器具および用量により2回以上の吸込み動作を必要としてもよい。COPD、肺線維症、咳および他のロイコトリエン媒介の肺の病変を治療するために吸入される用量は、喘息で使用される用量と同様であり、必要以上の実験を行わないで、当技術分野の通常の技量を有する医師により判断してよい。
【0053】
別の実施形態において、治療方法は、結晶性のモンテルカストの1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストのN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量、ならびにβ作用薬、コルチコステロイド、PDE−IV阻害剤および抗コリン作用薬から選択される第2の治療薬の治療有効量の、これらを必要とする患者に対する吸入による同時投与、順次投与または個別投与を含む。1つの特定の実施形態において、第2の治療薬はコルチコステロイドである。別の特定の実施形態において、第2の治療薬はPDE−IV阻害剤である。活性剤は、一定の用量の組合せ(すなわち、単位剤形中に含まれる。)において投与してもよくまたはそれらの活性剤は物理的に一緒に混合されていないが、個別の組成物として同時にもしくは順次投与される。例えば、本発明のモンテルカスト塩は、各治療薬のために個別の区画(例えば、ブリスターパック)を採用する吸入送達器具を用いて、コルチコステロイドなどのステロイド性抗炎症薬を、吸入により同時にまたは連続して投与することができる。別法として、活性剤は、混合物中で賦形剤と組み合わせてもよく、この混和物を、同じ区画から送達させることができる。
【0054】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、いかなる方法でも、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0055】
【化3】

酸1(1.17g)をエタノール(25ml)中に懸濁させた。エタノール(5ml)中に溶解した1,2−エタンジスルホン酸一水和物(0.416g)を1回で加えた。混合物を20−25℃で18時間撹拌する間に、沈殿物が形成した。固形物を濾過により集めて乾燥すると、1.2gの塩2が得られた。
H NMR(400MHz,DMSO):δ 8.53(d,1H)、8.06(m,3H)、7.97(d,1H)、7.73(s,1H)、7.66(m,2H)、7.51(d,1H)、7.44−7.33(m,3H)、7.12−7.06(m,3H)、3.99(t,1H)、3.03(td,1H)、2.73(td,1H)、2.63(s,4H)、2.30(s,2H)、2.14(m,2H)、1.42(s,6H)、0.46−0.32(m,4H);13C NMR(101MHz,DMSO):δ 173.56、156.11、148.50、147.20、144.38、140.23、136.60、135.57、136.02、131.54、130.75、129.87、129.66、128.34、127.72、126.91、126.84、126.19、125.85、125.73、120.60、72.11、49.78、48.50、40.62、40.41、39.87、38.98、32.34、32.16、32.13、17.18、12.63、12.41。
【実施例2】
【0056】
【化4】

ナトリウム塩3(608mg)および1,2−エタンジスルホン酸一水和物(416.4mg)をエタノール(25ml)に加えた。混合物を20−25℃で18時間放置する間に沈殿物が形成した。固形物を濾過により集めて乾燥すると、598mgの塩4が得られた。
H NMR(400MHz,DMSO):δ 8.53(d,1H)、8.06(m,3H)、7.97(d,1H)、7.73(s,1H)、7.66(m,2H)、7.51(d,1H)、7.44−7.33(m,3H)、7.12−7.06(m,3H)、3.99(t,1H)、3.03(td,1H)、2.73(td,1H)、2.63(s,4H)、2.30(s,2H)、2.14(m,2H)、1.42(s,6H)、0.46−0.32(m,4H);13C NMR(101MHz,DMSO):δ 173.56、156.11、148.50、147.20、144.38、140.23、136.60、135.57、136.02、131.54、130.75、129.87、129.66、128.34、127.72、126.91、126.84、126.19、125.85、125.73、120.60、72.11、49.78、48.50、40.62、40.41、39.87、38.98、32.34、32.16、32.13、17.18、12.63、12.41。
【実施例3】
【0057】
【化5】

酸1(5.86g)および1,2−エタンジスルホン酸一水和物(1.24g)をエタノール(150ml)中に懸濁させた。混合物を20−25℃で18時間撹拌する間に沈殿物が形成した。固形物を濾過により集めて乾燥すると、6.1gの塩5が得られた。
H NMR.(400MHz,DMSO):δ 8.53(d,1H)、8.06(m,3H)、7.97(d,1H)、7.73(s,1H)、7.66(m,2H)、7.51(d,1H)、7.44−7.33(m,3H)、7.12−7.06(m,3H)、3.99(t,1H)、3.03(td,1H)、2.73(td,1H)、2.63(s,4H)、2.30(s,2H)、2.14(m,2H)、1.42(s,6H)、0.46−0.32(m,4H);13C NMR(101MHz,DMSO):δ 173.56、156.11、148.50、147.20、144.38、140.23、136.60、135.57、136.02、131.54、130.75、129.87、129.66、128.34、127.72、126.91、126.84、126.19、125.85、125.73、120.60、72.11、49.78、48.50、40.62、40.41、39.87、38.98、32.34、32.16、32.13、17.18、12.63、12.41。
【実施例4】
【0058】
【化6】

酸1(582mg)およびN,N’−ジベンジルエチレンジアミン(240mg)をエタノール(5ml)中に懸濁させた。混合物を20−25℃で18時間撹拌する間に沈殿物が形成した。固形物を濾過により集めて乾燥すると、375mgの塩6が得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ 8.31(d,1H)、8.00(d,1H)、7.91(t,2H)、7.81(d,1H)、7.72(s,1H)、758(m,1H)、7.52(dd,1H)、7.44−7.32(m,9H)、7.14−7.04(m,3H)、4.03(t,1H)、3.91(s,2H)、3.13−3.07(td,1H)、2.92(s,2H)、2.85−2.79(td,1H)、2.54(dd,2H)、2.37(dd,2H)、2.27−2.11(m,2H)、1.52(s,3H)、1.51(s,3H)、0.51−0.35(m,4H);13C NMR(126MHz,DMSO):δ 173.65、157.35、148.53、147.59、147.21、144.17、141.16、140.24、137.05、136.58、135.57、134.80、131.51、130.28、129.42、128.85、128.54、128.43、127.69、127.28、127.17、127.00、126.86、126.37、126.10、125.82、125.67、120.83、72.09、53.27、49.90、48.52、39.05、32.37、32.15、32.11、17.27、12.62、12.39。
【実施例5】
【0059】
Respitose SV003(DMV International Pharma、オランダによって製造された、吸入用の分級乳糖)および実施例1のモンテルカストの1/2EDSA塩を、80:20の重量比で、Turbulaタンブルミキサー(T2F型、S/N.980542)内で、32rpmで15分間混和した。カプセルを、薬物の5mg(遊離酸として計算した)に相当する、25mgの混和物で充填した。
【0060】
モンテルカストの1/2EDSA塩の空気力学的な粒子堆積を、プレセパレーターと最終フィルターを有する、8個の段から成るAndersen Cascade Impactor(ACI)(Copley、英国)を用いて、約25%の制御された相対湿度の下で調べた。カプセル当たり5mg(遊離酸として計算した)のモンテルカストの名目用量に相当する、約25mgの乾燥粉末の混和物を含有するカプセルを、Spinhalerの装置内に設置した。カプセルに穴をあけ、約60L/minの空気流速で約4秒間にわたり、カプセルから乾燥粉末を、ACIを通して排出させた。吸入装置、カプセル内に残留した薬物および、8個の段、プレセパレーターおよびフィルター上の堆積物を、分析のためにメタノールを用いて集めた。薬剤含量は、UV−VIS分光光度法により波長346nmで測定した。
【0061】
調べた3つのカプセルの吸入性は、表1にまとめてある。39±4.3%の平均微粒子割合(FPF)が達成され、一方、モンテルカストのACIに対する平均排出量は2.3±0.2mg、平均微粒子量(FPD)は、モンテルカストの1/2EDSAカプセルに対して0.89±0.4mgである。空気流速28.3L/minにおける空気力学的カットオフ径にもとづいて計算した、空気動力学的中央粒子径(MMAD)および幾何学的標準偏差(GSD)は、それぞれ3.6ミクロンと1.9である。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩。
【請求項2】
結晶性のモンテルカストN,N−ジベンジルエチレンジアミン塩。
【請求項3】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩、ならびに薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
吸入による投与に適合した、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
コルチコステロイドおよびPDE−IV阻害剤から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量を、これを必要とする患者に投与することを含む、ロイコトリエン媒介疾患または障害の治療方法。
【請求項7】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される結晶性のモンテルカスト塩、ならびに薬学的に許容される担体を含む吸入組成物を、これを必要とする患者に投与することを含む、呼吸器障害の治療方法。
【請求項8】
前記呼吸器障害が喘息である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記吸入組成物が、コルチコステロイドおよびPDE−IV阻害剤から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記吸入組成物が、コルチコステロイドおよびPDE−IV阻害剤から選択される第2の治療薬をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の治療薬がシクレソニドである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の治療薬がモメタゾンフロエートである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の治療薬がPDE−IV阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の治療薬がPDE−IV阻害剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩および結晶性のモンテルカストN,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩から選択される、結晶性のモンテルカスト塩の治療有効量、ならびにβ作用薬、コルチコステロイド、PDE−IV阻害剤および抗コリン作用薬から選択される第2の治療薬の治療有効量の、これらを必要とする患者に対する吸入による同時投与、順次投与または個別投与を含む、呼吸器障害の治療方法。
【請求項16】
呼吸器障害の治療のための医薬品の製造における、結晶性のモンテルカスト1,2−エタンジスルホン酸塩の使用。
【請求項17】
呼吸器障害の治療のための医薬品の製造における、結晶性のモンテルカストN,N−ジベンジルエチレンジアミン塩の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2011−500732(P2011−500732A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530234(P2010−530234)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001875
【国際公開番号】WO2009/052625
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】