説明

モータまたはアクチュエータおよびポンプおよびポンプ駆動機器

【課題】形状自由度を向上させることのできる高磁気特性のモータまたはアクチュエータおよびそれを備えるポンプおよびポンプ駆動機器を得る。
【解決手段】非晶質材料粉としての金属ガラス粉を成形することにより形成されたステータコア(固定子)35を用いてクローポール型モータ(モータ)Mを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータまたはアクチュエータおよびポンプおよびポンプ駆動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非晶質金属磁性薄帯を積層して形成したロータおよびステータを用いることで、高磁気特性の電動機または発電機を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−042345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の技術では、非晶質金属磁性薄帯を積層することでロータおよびステータを形成しているため、ロータおよびステータの形状自由度の向上を図ることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、形状自由度を向上させることのできる高磁気特性のモータまたはアクチュエータおよびそれを備えるポンプおよびポンプ駆動機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、非晶質材料粉を成形することにより形成された固定子と非晶質材料粉を成形することにより形成された駆動子のうち少なくともいずれか一方を用いてモータまたはアクチュエータを形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載のモータまたはアクチュエータにおいて、前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項1に記載のモータまたはアクチュエータにおいて、前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、温間成形することで構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明にあっては、請求項1に記載のモータまたはアクチュエータにおいて、前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉と樹脂バインダとを混合した混合材料をインジェクション成形することで構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明にあっては、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のモータをクローポール型モータとして構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明にあっては、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のモータを駆動源とするポンプとしたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明にあっては、請求項6に記載のポンプを搭載したポンプ駆動機器としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、非晶質材料粉を成形することにより形成された固定子と非晶質材料粉を成形することにより形成された駆動子のうち少なくともいずれか一方を用いてモータまたはアクチュエータを形成したため、固定子または駆動子の形状自由度を向上させることができ、ひいては、モータまたはアクチュエータの形状自由度を向上させることができる。また、非晶質材料粉を用いて固定子または駆動子を形成することで、高磁気特性のモータまたはアクチュエータを得ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、固定子および駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したため、固定子または駆動子を容易に製造することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、固定子および駆動子のうち少なくともいずれか一方を、温間成形することで構成したため、高性能かつ高強度の固定子または駆動子を容易に製造することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、固定子および駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉と樹脂バインダとを混合した混合材料をインジェクション成形することで構成したため、固定子または駆動子を容易かつ低コストで製造することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、モータをクローポール型モータとすることで、構造を簡素化することができ生産性が良くなるため、製造コストを低く抑えることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、小型化されたポンプを得ることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、ポンプ駆動機器の小型化を可能とし、かつ、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかるクローポール型モータを使用したポンプの外観斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態にかかるステータの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態にかかるステータコアの分解斜視図である。
【図5】図5は、図4に示すステータコアを成形する際の型構造を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態にかかるクローポール型モータを使用したポンプの断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態にかかるステータの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態にかかるステータコアの分解斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態にかかるリニアアクチュエータの斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第4実施形態にかかる食器洗浄機の内部構造を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明の第4実施形態の第1変形例にかかる洗濯機の内部構造を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の第4実施形態の第2変形例にかかる給湯ユニットの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態では、図2に示すクローポール型モータMを駆動源として、図1に示すポンプPを構成しており、このポンプPは、液体を吸排する羽根車1と、液体を吸入する吸入口3および液体を排出する吐出口5を有するポンプケース7と、羽根車1を回転自在に収容するポンプ室9をポンプケース7と対をなして形成する分離板11と、を備えている。
【0023】
また、クローポール型モータMは、羽根車1を回転駆動させるマグネット(永久磁石)13を有するロータ15と、ロータ15に回転駆動力を伝達する爪磁極17、19を有するステータ21と、ステータ21で発生させる磁界を制御する制御基板33と、を備えている。
【0024】
そして、本実施形態では、クローポール型モータMは、分離板11の円筒部11aを間に挟んで内側(モータ中心部側)にロータ15を配置し、かつ、外側にステータ21を配置した、いわゆるインナロータ型構造をしている。
【0025】
羽根車1は、ロータ15と一体化されており、固定軸(モータ中心部)55を中心として回転し、吸入口3からポンプ室9へと吸い込んだ液体に遠心力を与えて吐出口5からポンプ外へと排出する。
【0026】
ポンプ室9は、図1に示すように、ポンプケース7の中央に開口された吸入口3と、ポンプケース7の側壁にてその外周部の接線方向に延びる吐出管4の先端に設けた吐出口5とを有したポンプケース7に、ロータ15とステータ21とを水密状態に分離(ポンプ部とモータ部を分離)する分離板11が結合されることにより形成されている。なお、ポンプケース7の外周側端部7aと、分離板11の円筒部11aの先端から径方向外側に突出している外側端部11dとの結合部分には、ポンプ室9を外部に対して水密状態に封止するためのシール部材63を介在させている。
【0027】
また、制御基板33が、分離板11の背面に設けられており、ロータ15の回転位置を検出する位置検出センサ65からの信号を受けて後述する環状コイル37で発生させる磁界を制御している。
【0028】
また、ポンプPは、ポンプケース7を除いた部位全体が不飽和ポリエステル等からなるモールド樹脂67で覆われている。このため、ステータ21および制御基板33を含めたモータ部全体をこのモールド樹脂67で保護することができると共に強度も高めることができる。
【0029】
ステータ21は、円筒体をなすロータ15の外側の磁極面としての外周面15aを分離板11の円筒部11aを間に挟んで対向配置するための孔が中央部に形成された略環状のステータコア35と、当該ステータコア35の中空部内に図示せぬ絶縁板を介して配置される環状コイル(巻線)37と、を備えている。
【0030】
ステータコア35は、軸方向(図2中で左右方向)に延在する複数個の爪磁極(クローポール)17、19を内周部に有する鉄心で構成されており、ステータコア35の内部においてモータ中心部の周囲を囲むように、図示せぬ絶縁板を介して巻き付けた環状コイル(巻線)37を配置した構成となっている。
【0031】
さらに本実施形態では、ステータ21のステータコア35は、図3および図4に示すように、互いにほぼ同形状の第1コア39と第2コア41とから構成されている。これら第1・第2コア39、41は、円筒部43、45を備えるとともに、円筒部43、45の内側に、上述した爪磁極17、19を、円周方向に等間隔にそれぞれ4個備えている。
【0032】
爪磁極17、19は、それらの基部17a、19aが連結部47、49を介して円筒部43、45の周縁に連結されて一体化している。また、爪磁極17、19の軸方向長さを、円筒部43、45の軸方向長さよりも長くしており、一方の爪磁極17の先端側を、他方の円筒部45の隣り合う爪磁極19間に配置するとともに、他方の爪磁極19の先端側を、一方の円筒部43の隣り合う爪磁極17間に配置している。
【0033】
そして、上述した第1コア39と第2コア41とを組み付けて、図3に示すステータコア35として一体化させる際には、第1コア39の爪磁極17を第2コア41の隣り合う爪磁極19間に挿入配置するとともに、第2コア41の爪磁極19を第1コア39の隣り合う爪磁極17間に挿入配置している。
【0034】
すなわち、第1コア39の爪磁極17と第2コア41の爪磁極19とが円周方向に沿って交互に配置され、その際、爪磁極17と爪磁極19との間には隙間S(図3参照)が形成される。このとき、各コア39、41の円筒部43、45の軸方向に互いに対向する周縁どうしが接触した状態となる。
【0035】
したがって、図3に示すように組み付けたステータコア35は、周方向に隣り合う爪磁極17、19どうしが軸方向に対して互いに逆方向に向けて延在することになる。なお、図2ではステータ21と分離板11の円筒部11aとを離間させているが、それぞれを面接触状態で接触させてもよい。
【0036】
このように構成したクローポール型のステータ21では、環状コイル37に通電することで発生した磁束を、爪磁極17、19とロータ15との間で効率良く伝達することができる。
【0037】
一方、ロータ15は、羽根車1の外周端部に一体的に設けられた円筒体として形成されており、その円筒体内周側の円筒状のロータヨーク51の外側に、磁気回路(磁界)を構成する円筒状のマグネット13が設けられている。このマグネット13は、周方向に沿って等間隔で、N極とS極とが交互に並ぶように配置されている。
【0038】
また、ロータ15は、ポンプケース7に設けられた軸支え部53と、分離板11に設けられた軸支え部11bに各端部を挿入嵌合させた固定軸55に対し、軸受部57を介して回転自在に支承されている。なお、固定軸55は、その両端側に取り付けられた回り止め板59、61により回転不可能になっている。
【0039】
さらに、マグネット13と分離板11の円筒部11aとの間には、ロータ15の回転時に接触しない程度の隙間(クリアランス)が確保されている。また、分離板11の円筒部11aと軸支え部11bとを、円板状の端板11cによって連結することで一体化している。
【0040】
このように構成されたポンプPでは、環状コイル37への通電により発生する磁束が爪磁極17、19からマグネット13へと伝達されることにより、そのマグネット13が吸引反発することで、ロータ15と一体的に設けられた羽根車1が、固定軸55を中心として回転する。そして、その羽根車1の回転に伴ってポンプ作用が発生し、液体が吸入口3からポンプ室9へと吸い込まれ、そのポンプ室9内で加圧されて周囲方向に圧送された液体は、吐出口5からポンプP外へと排出される。
【0041】
ここで、本実施形態では、ステータコア35を構成する第1コア39および第2コア41を、非晶質材料粉としての金属ガラス粉(高純度Feに、FeSi、FeB、FePを混合させたもの)を圧縮して成形した圧粉体で構成している。
【0042】
具体的には、金属ガラス粉を温間圧縮成形することで第1コア39および第2コア41を形成している。
【0043】
以下、第1コア39および第2コア41の製造方法について説明する。
【0044】
まず、金属ガラス(FeSiBP)を溶融させて形成した溶湯を高圧のガスにより噴霧させるとともに急冷させるガスアトマイズ法によって金属ガラス粉を形成する。
【0045】
次に、金属ガラス粉を、例えば、図5に示すような金型構造によってプレス成形する。
【0046】
この金型構造は、下型となるダイ200に対し、第1の型203、第2の型204および第3の型205が図5中で上下方向にそれぞれ個別に接近離反移動可能であり、ダイ200に形成してある環状のキャビティ201内に、金属ガラス粉を充填した後、第1の型203、第2の型204および第3の型205を順次降下させて成形品である第1コア39および第2コア41をプレス成形する。なお、プレス成形する前に金属ガラス粉の表面を無機絶縁皮膜でコーティングしてもよい。
【0047】
本実施形態では、400℃程度となるように熱した金属ガラス粉をキャビティ201内に充填し、プレス成形することで第1コア39および第2コア41を形成している。
【0048】
なお、本実施形態で用いた金属ガラスは、高純度の鉄粉と比べて比抵抗が高いため高周波での鉄損失を低くすることができ、渦電流損失を低くすることができる。また飽和磁束密度が大きくしかも耐熱性に優れるという利点を備えている。
【0049】
以上の本実施形態によれば、非晶質材料粉としての金属ガラス粉を成形することにより形成されたステータコア(固定子)35を用いてクローポール型モータ(モータ)Mを形成したため、ステータコア(固定子)35の形状自由度を向上させ、ひいては、クローポール型モータ(モータ)Mの形状自由度を向上させることができる。
【0050】
また、高純度の鉄粉と比べて比抵抗が高い金属ガラス粉を用いてステータコア(固定子)35を形成することで、渦電流損失を抑えることができるとともに、高周波数域で使用できるため、高磁気特性のクローポール型モータMを得ることができる。
【0051】
さらに本実施形態によれば、約400℃となるように熱した金属ガラス粉をプレス成形することで、ステータコア(固定子)35の密度を高めることができる(高純度の鉄粉を用いた場合、ステータコア35の体積に占める鉄粉の割合が91%であるのに対して、金属ガラス粉を用いた場合、ステータコア35の体積に占める金属ガラス粉の割合が96%にすることができる)ため、クローポール型モータMの磁気特性をより一層高めることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ステータコア(固定子)35を、金属ガラス粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したため、ステータコア(固定子)35を容易に製造することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、ステータコア(固定子)35を、温間成形することで構成したため、高性能かつ高強度のステータコア(固定子)35を容易に製造することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、モータをクローポール型モータMとしたため、構造を簡素化することができるとともに、生産性を良くすることができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0055】
また、ポンプPは、上述のクローポール型モータMを駆動源としたので、ポンプPの小型化が可能となる。
【0056】
続いて、ステータコアの構成の変形例を説明する。
【0057】
(第1変形例)
本変形例にかかるステータコア35を構成する第1コア39および第2コア41は、表面を無機絶縁皮膜でコーティングした金属ガラス粉と樹脂バインダとを混ぜ合わせた混合材料である磁性材料を、インジェクション成形することによって製造されている点が上記第1実施形態と異なっており、その他の構造は、上記第1実施形態で説明したものと同様である。
【0058】
樹脂バインダとしては、例えばナイロン(ポロアミド樹脂)やPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの熱可塑性樹脂を使用することができる。その際金属ガラス粉と樹脂バインダとの配合比率は、例えば金属ガラス粉が80〜90%重量比とするのが好適である。
【0059】
本変形例のように、インジェクション成形によってステータコア35を製造することで、上記第1実施形態の場合に比較して、金型寿命が長いなど金型コストを低く抑えることができる上、製品形状の自由度も高いので、要求される性能に対応しやすくなる。
【0060】
(第2変形例)
本変形例にかかるステータコア35を構成する第1コア39および第2コア41は、非晶質材料粉である金属ガラス粉を常温で圧縮して成形した圧粉体で構成されている点が上記第1実施形態と異なっており、その他の構造は、上記第1実施形態で説明したものと同様である。
【0061】
以上の本変形例によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態にかかるポンプPAは、液体を吸排する羽根車73と、液体を吸排させる吸入口75および図示しない吐出口を有したポンプケース77と、羽根車23を回転可能に収容するポンプ室79を前記ポンプケース77と対をなして形成する分離板81と、を備えている。
【0063】
このポンプPAは、羽根車73を回転駆動させるマグネット83を有したロータ85と、ロータ85に回転駆動力を伝達するステータ69と、ステータ69で発生させる磁界を制御する制御基板87と、を備えたクローポール型モータMAを駆動源としている。
【0064】
そして、本実施形態では、クローポール型モータMAは、分離板81を間に挟んで内側(モータ中心部側)にステータ69を配置しかつステータ69の外側にロータ85を配置した、いわゆるアウタロータ型構造をしている。
【0065】
ロータ85のさらに外側には、分離板81の内筒部81aの先端から外側に向けて折り返すようにして形成してある外筒部81bを配置し、外筒部81bの先端部81cをポンプケース77の外周側端部77aに、図示しないシール部材を介して連結固定する。
【0066】
ここでステータ69は、そのステータコア71が、円筒体をなすロータ85の内側のマグネット83の周面としての内周面83aに対し、分離板81の内筒部81aを間に挟んで対向配置されている。このステータコア71は、軸方向に延在する複数個の爪部である爪磁極(クローポール)89,91を外周部に有した鉄心で構成され、このステータコア71の内部にて、モータ中心部の周囲を囲むように絶縁板93を介して巻き付けた環状コイル(巻線)95を配置した構成としている。
【0067】
図8に示すように、ステータコア71は、第1コア97と第2コア99とをそれぞれ備えている。
【0068】
このうち第1コア97は、円板形状の連結部101を有し、この連結部101の周縁から軸方向に突出して立ち上がる前記した爪磁極89を、円周方向等間隔に3個備えるとともに、連結部101の中心部に爪磁極89と同方向に突出する、前記ステータコア71の中心に位置する円形継鉄部としての円柱形状のボス部103を備えている。
【0069】
爪磁極89とボス部103の軸方向長さはほぼ同等とし、爪磁極89の基端部89bとボス部103の軸方向一端部103aとを連結部101で連結し、これら爪磁極89,ボス部103および連結部101によって断面ほぼコ字形状としてある。
【0070】
一方第2コア99は、前記した爪磁極91の基端部91bからモータ軸の径方向内側に向けて延び、前記した第1コア97のボス部103の軸方向他端部103bに接合される底面部としての円板形状の連結部105とを備えている。そして、これら連結部105と爪磁極91とは、互いに一体化して断面ほぼL字形状を呈している。
【0071】
上記した第1コア97と第2コア99とを組み付けて、図7のようにステータコア71として一体化させる際には、第1コア97の爪磁極89を第2コア99の爪磁極91相互間に挿入配置するとともに、第2コア99の爪磁極91を第1コア97の爪磁極89相互間に挿入配置する。この際、第1コア97のボス部103の軸方向他端部103bの先端面が、第2コア99の底板105の表面に接触した状態となる。
【0072】
この状態で、第1コア97の爪磁極89と第2コア99の爪磁極91とが円周方向に沿って交互に配置され、その際爪磁極89と爪磁極91との間には隙間Sが形成される。また、上記図7のように組み付けたステータコア71は、周方向に隣接する爪磁極89,91同士が、軸方向に沿って互いに逆方向に向けて延在することになる。
【0073】
一方ロータ85は、ロータ85とともに回転する羽根車73の外周端部に一体的に設けられた円筒体として形成され、該円筒体外周側の円筒状のロータヨーク109の内壁に、磁気回路(磁界)を構成する円筒状のマグネット83を設けている。マグネット83と分離板81の内筒部81aとの間には、ロータ85の回転時に接触しない程度の隙間(クリアランス)が確保されている。
【0074】
なお、図6ではステータ69と分離板81の内筒部81aとを離間させているが面接触状態で接触させてもよい。そして、ステータ69および分離板81全体を、例えば不飽和ポリエステルなどからなるモールド樹脂111で被覆している。
【0075】
このように構成したクローポール型のステータ69では、環状コイル95に通電することで発生した磁束を、爪磁極89,91からロータ85へと効率よく伝達することができる。
【0076】
羽根車73は、ポンプ室79に設けられたモータ中心軸としての固定軸113に対し軸受け部115を介して回転自在に支承されており、固定軸113を中心に回転することにより、吸入口75からポンプ室79内へと吸い込んだ液体に遠心力を与えて図示しない吐出口からポンプ外へと排出する。なお、軸受け部115の吸入口75側の端部には、受板117が設けられている。
【0077】
上記した固定軸113の吸入口75と反対側の端部は、分離板81の端板部81dに連結固定している。この端板部81dの外周端部は前記した内筒部81aの基端側に連続しており、ステータ69は、これら内筒部81aと端板部81dに囲まれた領域に配置されることになる。
【0078】
ポンプ室79は、ポンプケース77の中央に開口された吸入口75と、ポンプケース77の側壁にてその外周部の接線方向に延びる前記図1と同様な吐出管の先端に設けた図示しない吐出口とを有したポンプケース77に、ロータ85とステータ69とを水密状態に分離(ポンプ部とモータ部を分離)する分離板81が結合されることにより形成している。
【0079】
制御基板87は、ステータ69の背面に設けられており、図示を省略した位置検出部からの信号を受けて環状コイル95で発生させる磁界を制御する。そして、この制御基板87は、前記したステータ69および分離板81と共にモールド樹脂111で被覆されている。
【0080】
このように構成したポンプにおいては、環状コイル95への通電により発生する磁束が爪磁極89,91からマグネット83へと伝達されることにより該マグネット83が吸引反発することで、ロータ85と一体的に設けられた羽根車73が、固定軸113を中心として回転する。そして、この羽根車73の回転に伴いポンプ作用が発生し、液体が吸入口75よりポンプ室79内へと吸込まれ、このポンプ室79内で加圧されて周囲方向へ圧送された液体は吐出口からポンプ外へと吐出される。
【0081】
そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ステータコア71を構成する第1コア97および第2コア99は、非晶質材料粉としての金属ガラス粉(FeSiBP)を成形することにより形成している。
【0082】
また、本実施形態においても、金属ガラス粉を温間圧縮成形することで第1コア97および第2コア99を形成している。なお、上記第1実施形態の第1及び第2変形例で示した方法で第1コア97および第2コア99を成形してもよい。
【0083】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
(第3実施形態)
本実施形態では、本発明の駆動子を振動型リニアアクチュエータに適用したものを例示する。
【0085】
本実施形態にかかる振動型リニアアクチュエータ300は、図9示すように、電磁石302とステータ(固定子)305とを有する電磁コアブロック303と、永久磁石304を有する磁性ブロック(駆動子)306と、電磁コアブロック303と磁性ブロック306とを所定の隙間を設けて連結する連結部307と、電磁コアブロック303に対する磁性ブロック306の固有振動数を主に設定する連結ばね部308と、を備えている。
【0086】
本実施形態の振動型リニアアクチュエータ300は、磁性ブロック306を複数並設して、隣接される磁性ブロック306同士を相互に逆位相で往復駆動させるようにしている。
【0087】
具体的には、本実施形態では磁性ブロック306をそれぞれ独立した第1磁性ブロック306aと第2磁性ブロック306bとで構成し、これら第1および第2磁性ブロック306a、306bを、磁性ブロック306の振動方向に対して直角方向に並設している。
【0088】
そして、磁性ブロック306、つまり、第1および第2磁性ブロック306a、306bには、それぞれ第1および第2駆動子314a、314bが取り付けられている。
【0089】
第1および第2磁性ブロック306a、306bの振動方向の両側には、それぞれ振動方向外方に向けて上方連結部327が一体に形成されており、それら上方連結部327に連結部307の一端部が一体に形成されている。そして、本実施形態では、複数の連結部307が振動方向に並設されている。
【0090】
第1および第2磁性ブロック306a、306bは、振動方向と直交する方向で、かつ、永久磁石304の磁極面と電磁石302の磁極面とが対向する方向と直交する方向に並設されており、この並設する複数の第1および第2磁性ブロック306a、306bを連結ばね部308により連結している。
【0091】
連結ばね部308は、第1および第2磁性ブロック306a、306bの振動方向にばね性を有するもので、一端部を第1磁性ブロック306aの上方連結部327に一体に結合するとともに、他端部を第2磁性ブロック306bの上方連結部327に一体に結合している。
【0092】
ここで、第1磁性ブロック306aの上方には、第2磁性ブロック306bに取り付けた第2駆動子314bを配置し、第2磁性ブロック306bの上方には、第1磁性ブロック306aに取り付けた第1駆動子314aを配置している。つまり、第1および第2駆動子314a、314bは第1および第2磁性ブロック306a、306bにたすき掛け状に取り付けられている。
【0093】
そして、電磁石302に電流を印加することにより、電磁コアブロック303に対して第1および第2磁性ブロック306a、306bを往復駆動させている。このとき、第1および第2磁性ブロック306a、306bの永久磁石304の磁極を逆にして、第1および第2磁性ブロック306a、306bを相互に逆位相で往復駆動させるようにしている。
【0094】
そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ステータ(固定子)305を、非晶質材料粉としての金属ガラス粉(FeSiBP)を成形することにより形成している。
【0095】
また、本実施形態においても、金属ガラス粉を温間圧縮成形することでステータ(固定子)305を形成している。なお、上記第1実施形態の第1及び第2変形例で示した方法でステータ(固定子)305を成形してもよい。
【0096】
本実施形態の振動型リニアアクチュエータ300は、電気カミソリの駆動源として用いることができる。
【0097】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0098】
(第4実施形態)
本実施形態では、本発明にかかるポンプを搭載したポンプ駆動機器について説明する。
【0099】
図10は、本実施形態にかかるポンプ駆動機器としての食器洗浄機400を示しており、この食器洗浄機400では、水または温水が給水口401から貯水槽402に供給されるようになっており、貯水槽402に供給された水または温水が、洗浄ポンプP1によって貯水槽402からノズル403に送られ、水または温水をノズル403から噴出することで食器洗浄機400内に配置した食器404を洗浄するようになっている。なお、本実施形態では、洗浄後の水または温水は、下方に落下して貯水槽402に溜められ、洗浄ポンプP1によって再度ノズル403に送られるようになっている。そして、所定時間循環洗浄した後に、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させることで、貯水槽402内の水が排水されるようになっている。
【0100】
次に、給水口401から再度、水または温水を貯水槽402に供給した後、洗浄ポンプP1を所定時間作動させて濯ぎを行う。その後、洗浄ポンプP1を停止して排水ポンプP2を作動させて貯水槽402の水または温水を排水する。以上の動作を数回繰り返して濯ぎを行うことで、食器洗浄機400内に配置した食器404が洗浄されるようになっている。
【0101】
ここで、本実施形態では、上述した洗浄ポンプP1および排水ポンプP2に、上記第1実施形態で例示したクローポール型モータMを駆動源としたポンプP(図1および図2参照)を用いている。
【0102】
このように、本実施形態にかかる食器洗浄機400に、本発明のクローポール型モータMを駆動源としたポンプPを用いて洗浄ポンプP1および排水ポンプP2を構成することで、低振動化および低騒音化を達成しつつ小型化を図ることが可能で、かつ、省エネを図ることができる食器洗浄機400を得ることができる。
【0103】
次に、本実施形態のポンプ駆動機器の変形例について説明する。
【0104】
図11は、上記第4実施形態の第1変形例を示しており、ポンプ駆動機器が洗濯機500である場合を例示する。
【0105】
この洗濯機500は、洗濯槽501が図示せぬモータによって回転制御されており、当該洗濯槽501を回転させるとともに、洗濯槽501内の水を循環ポンプP3で循環させることで衣類等の洗濯を行うようにしている。
【0106】
ここで、本変形例では、上述した循環ポンプP3に、第1実施形態で例示したクローポール型モータMを駆動源としたポンプP(図1および図2参照)を用いている。
【0107】
このように、本変形例にかかる洗濯機500に、本発明のクローポール型モータMを駆動源としたポンプPを用いて循環ポンプP3を構成することで、低振動化および低騒音化を達成しつつ小型化を図ることが可能で、かつ、省エネを図ることができる洗濯機500を得ることができる。
【0108】
また、本変形例では、洗濯槽501を回転させるモータとして、上記第1実施形態に示したクローポール型モータMを用いることが好ましい。
【0109】
図12は、上記第4実施形態の第2変形例を示しており、ポンプ駆動機器が給湯ユニット600である場合を例示する。
【0110】
この給湯ユニット600は、エコキュート、ガス給湯機器およびコジェネレーションなどに用いることができる。
【0111】
図12は、給湯ユニット600のエコキュートシステム概略図を示している。給湯ユニット600は、ヒートポンプユニット601、貯湯ユニット602、風呂603、床暖房604および追い焚き熱交換器605や暖房熱交換器606等を備えている。
【0112】
また、上記給湯ユニット600には、台所や洗面用の温水蛇口607やお湯をためる補助タンク608が設けられており、かつ、給水口609の下流には減圧弁610が設けられるとともに、床暖房604には熱動弁611が設けられている。更に、それぞれの配管には複数の混合弁612や安全弁613が設けられている。
【0113】
そして、複数のポンプP4、P5、P6、P7、P8を駆動させるとともに、上記各弁を制御することで、風呂603や台所や洗面用の温水蛇口607等に、水やお湯を所望の温度、流量で供給できるようにしている。
【0114】
ここで、本変形例では、上述したポンプP4〜P8に、上記第1実施形態で例示したクローポール型モータMを駆動源としたポンプP(図1および図2参照)をそれぞれ用いている。
【0115】
このように、本変形例にかかる給湯ユニット600に本発明のクローポール型モータMを駆動源としたポンプPを用いてそれぞれのポンプP4〜P8を構成することで、低振動化および低騒音化を達成しつつ小型化を図ることが可能で、かつ、省エネを図ることができる給湯ユニット600を得ることができる。
【0116】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0117】
例えば、上記各実施形態では、モータとしてクローポール型モータを用いたものを例示し、アクチュエータとして振動型リニアアクチュエータを例示したが、クローポール型モータ以外のモータや、振動型リニアアクチュエータ以外のアクチュエータにあっても本発明を実施することができる。
【0118】
また上記実施形態では、非晶質材料粉としての金属ガラス粉を用いて固定子を形成したものを例示したが、固定子の替わりに駆動子を金属ガラス粉を用いて形成してもよいし、固定子とともに駆動子を金属ガラス粉を用いて形成してもよい。
【符号の説明】
【0119】
13 マグネット
15 ロータ(駆動子)
21、69、305 ステータ(固定子)
300 振動型リニアアクチュエータ(アクチュエータ)
400 食器洗浄機(ポンプ駆動機器)
500 洗濯機(ポンプ駆動機器)
600 給湯ユニット(ポンプ駆動機器)
M、MA クローポール型モータ(モータ)
P、PA ポンプ
P1 洗浄ポンプ
P2 排水ポンプ
P3 循環ポンプ
P4〜P8 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質材料粉を成形することにより形成された固定子と非晶質材料粉を成形することにより形成された駆動子のうち少なくともいずれか一方を用いて形成されることを特徴とするモータまたはアクチュエータ。
【請求項2】
前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉を圧縮して成形した圧粉体で構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータまたはアクチュエータ。
【請求項3】
前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、温間成形することで構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータまたはアクチュエータ。
【請求項4】
前記固定子および前記駆動子のうち少なくともいずれか一方を、非晶質材料粉と樹脂バインダとを混合した混合材料をインジェクション成形することで構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータまたはアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のモータをクローポール型モータとして構成したことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のモータを駆動源としたことを特徴とするポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のポンプを搭載したことを特徴とするポンプ駆動機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−200442(P2010−200442A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40920(P2009−40920)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】