説明

モータコイルの巻線方法

【課題】従来のモータにおいて、コイル形状の単純化、全体でのモータコイル構成の簡単化、また巻き線の最小半径が制限される高温超電導コイルにおいてはその制限の緩和、などの課題があった。
【解決手段】複数の鉄心(または空芯)に対して、コイルを周方向に沿って接触させること、および接触の面を外面、内面と周期的に反転し、反転の周期を鉄心(または空芯)二つごとにした一組のコイルと、反転位置を前記コイルから反周期ずらして配置した他方のコイルの二組から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル形状を単純化できる、また巻き線の最小半径の制限を緩和できるモータコイルの巻き線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータコイルの巻き線の例として特許文献1、2、3などがある。特許文献1は2相モータの巻き線方法、特許文献2は3相モータの巻き線方法をしめしている、また特許文献3は超電導コイルを複数個配列した超電導モータの構成を示している。
【特許文献1】特開平6−303731 2相モータの巻線方法
【特許文献2】特開2006−280044 3相ブラシレスモータおよび巻線方法
【特許文献3】特開平3−289344 超電導モータ
【0003】
いずれも従来のモータコイルは鉄心(場合によっては空芯)に導線(銅線)あるいは超伝導体が多数回巻かれたものが複数個必要で、構成が複雑となり、コイル全体の形状として相応の大きさが必要であった。また超電導モータにおいて、特に高温超電導体を用いたコイルの形状においてはコイル材質の物性上の問題から半径が30−50mm程度に制限され、小さな円形状のコイルは作成が困難であり、小型超電導モータを実現する場合の障害のひとつとなっていた。また逆に大きな径を有するモータを構成する場合にもコイルの数が多く、複雑となるなどの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来のモータコイルにおいて、コイル形状の単純化、全体でのモータコイル構成の簡単化、また巻き線の最小半径の制限の緩和などの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はステータの複数の鉄心(または空芯)に対して、コイルを周方向に沿って接触させること、および接触の面を外面(モータの反軸方向の面)、内面(モータの軸方向の面)と周期的に反転したものであり、反転の周期は磁極に対する鉄心(または空芯)二つごとにした一組のコイルと、反転の周期を前記コイルから反周期ずらして配置した他方のコイルの二組から構成するものである。
【0006】
上記の構成によるコイルは、ひとつの鉄心あるいは空芯で見れば、その円周上の外面と内面に互いに逆向きの電流が流れるコイルが接触しているため、通常の巻き線のコイルと同じように鉄心あるいは空芯に磁束を発生する。また二組のコイルに流す電流の向きを制御することによって磁束の方向、すなわち磁極の方向(S,N)を変えることが出来る。
【発明の効果】
【0007】
以上のようにコイル二組でモータコイルを形成するので、モータ全体の形状を小さくでき、簡単な構成とすることが出来る。さらにコイルの巻き線半径(曲率)はモータ全体の径に近くできるので従来の個々のコイルの巻き線の径に比べて大きな値となり、巻き線の最小半径が制限される高温超電導コイルにおいてその制限を緩和し、より小さな超電導モータを実現することが出来る。さらに大きな径のモータにおいても簡単にコイルを構成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の代表的実施例について説明する。図1は本発明によるモータの全体図を示し、磁石1とロータヨーク2からなるロータ3が回転軸4に取り付けられており、回転軸4はベアリング5を介してケース6に取り付けられ回転可能になっている。一方コイル7、鉄心または空芯8(以下鉄心と呼称)、ステータヨーク9からなるステータ10はケース6に取り付けられている。鉄心8は図2の8−1ないし8−12(途中省略)に示すように円周上に12ヶ所(極)に等間隔で配置されている。ロータ3の磁石はこの鉄心と対応して12個の磁石が円周上に交互にS極、N極となるように配置されている。コイル7は図3に示すように、コイルA(A1−A2)とコイルB(B1,B2)の二組で構成され、鉄心8に対して、コイルを円周方向に沿って接触させ、かつ接触の面を外面(モータの外周方向の面)、内面(モータの軸方向の面)と周期的に反転している。すなわち、コイルAはA1を巻き始めとし、鉄心二つおきにその接触面を反転している(太い実践)。一周期の終わりで方向を反転し(太い点線)、それまでの接触面と反対の面を交互に接触してA2端子(巻き終わり)に戻るようになっている。コイルBはB1を巻き始めとし、A1とは半周期ずれた位置から鉄心二つおきにその接触面を反転して巻かれている(細い実践)。一周期の終わりで方向を反転し(細い点線)、それまでの接触面と反対の面を交互に接触してB2端子(巻き終わり)に戻るようになっている。
【0009】
次に上記構成の動作を説明する。図3のコイルAのA1から電流を流しこみA2から流しだすと、たとえば8−3,4の鉄心は右回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来る。一方、8−5,8−6の鉄心は左回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来る。次にコイルBのB1から電流を流しこみB2から流しだすと、8−4,8−5の鉄心は右回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来、一方8−3,8−6の鉄心は左回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来る。この状態において、8−3と8−5はコイルAとBの磁界が逆方向のため打ち消しあって磁力はゼロとなり、8−4は強め合って上面がS極となる磁力を発生し、8−6は強め合って上面がN極となる磁力を発生する。このようにして他の磁極も同様な順で磁力が発生する。
この状態を図5で示す。図5において7−1,7−2はコイルA,Bの電流波形を示し、横軸点線の上側(H)をA1からA2の方向の電流、横軸点線下側(L)をA2からA1の方向の電流としている。コイルBについても同様である。8−3から8−9は図3の同じ番号の鉄心(その他の鉄心は省略)に対応している。したがってタイミング1(縦列)が上記説明の状態に相当する。
次に、コイルBの電流を反転しB2からB1方向に流すと、8−3,6の鉄心は右回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来、一方8−4,5の鉄心は左回りに巻いたコイルと同様の磁界が出来る。したがって8−3はコイルAとBの磁界が強めあって上面がN極となる磁力を発生し、8−4、8−6は磁界が打ち消しあって磁力はゼロとなり、8−5は強め合って上面がS極となる磁力を発生する。以降の磁極も同様な順で磁力が発生する。この状態は図5のタイミング2(縦列)で示される。
このようにコイルに流す電流の方向によって各鉄心の磁界の有り無しおよび方向(S,N)を変えることができ、図5に示すように磁界を移動することが出来る。したがって図6に示すように、磁極に対応して配置されているロータ磁石はこのステータの移動磁界に吸引および反発されて移動、回転することになる。コイルAまたはBの電流波形の極性を反転すると移動磁界の方向が逆になりロータを逆回転することが出来るのは自明である。
【0010】
以上のようにコイルを各鉄心に交互に接触して各極コイルを形成することで構成が単純でコイル半径を小さくせずにモータコイルへ適用可能となり、全体径の比較的小さなモータを実現できる。さらに、径の大きなモータに適用してその構成を簡単にすることが出来る。
【0011】
コイルと鉄心の形状は用途に応じて変形することが可能である。たとえば磁気的効率を上げるためコイルと鉄心の接触面が多くなるように、コイルを約半円にわたって接触させる(図4a)、および鉄心の形状を楕円にする(図4b)など、最適な形状に変形することができる。またコイルと鉄心を直線状に配置することも可能である。さらに巻き数、コイル組数、接触の反転する位置なども用途に応じて変形可能である。
【0012】
本発明は単純な構成を第一とするモータ、あるいは小型超電導モータ、リニアモータなどに利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】モータ全体図
【図2】鉄心配置図
【図3】コイル巻き方説明図
【図4】コイル詳細図
【図5】コイル電流のタイミング図
【図6】ロータの回転説明図
【符号の説明】
【0014】
1 磁石
2 ロータヨーク
3 ロータ
4 回転軸
5 ベアリング
6 ケース
7 コイル
8 鉄心
9 ステータヨーク
10 ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータの複数の鉄心(または空芯、以下同じ)に対して、コイルを鉄心の周方向に沿って接触させ、接触の面を外面(モータの外周方向の面)、内面(モータの軸方向の面)と周期的に反転し、反転の周期を鉄心(または空芯)数個毎とした一組のコイルと、同じ反転周期をもち前記コイルに対して反転位置をずらして配置した他のコイルで構成するモータコイルの巻き線方法。
【請求項2】
請求項1において、反転の周期は磁極に対する鉄心(または空芯)二つごとにした一組のコイルと、反転位置を反周期ずらして配置した他方のコイルの二組で構成するモータコイルの巻き線方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−189223(P2009−189223A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52629(P2008−52629)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(507258537)
【Fターム(参考)】