モーター、ロボットハンドおよびロボット
【課題】高出力が得られるコアを備えるコイルと、コアを備えない配線と、を備え電流の切換頻度を少なくすることにより、ブラシの長寿命化を実現する小型モーターを提供する。
【解決手段】回転可能に支持された回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定される回転体と、基体に固定され円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、前記回転体は、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線に接続された第2整流子と、を備え、前記第1整流子に接触し、電力を供給する第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する第2ブラシと、を備え、前記渦巻状導体配線は、前記回転軸の軸方向の平面視において、前記駆動配線と重ならないモーター。
【解決手段】回転可能に支持された回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定される回転体と、基体に固定され円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、前記回転体は、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線に接続された第2整流子と、を備え、前記第1整流子に接触し、電力を供給する第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する第2ブラシと、を備え、前記渦巻状導体配線は、前記回転軸の軸方向の平面視において、前記駆動配線と重ならないモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター、ロボットハンドおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型モーターとしては、ブラシモーターと呼ばれるDCモーターが良く知られている。このDCモーターでは、ローターに巻かれている巻線に流れる電流の向きを、ステーターに配置された永久磁石のNS極に対応して、変化させてローターを回転させている。巻線の電流の向きはモーターに配置されたブラシと整流子によって機械的に切り替えることができ、簡単な構造による低コストのモーターを実現した(特許文献1)。
【0003】
しかし、上述の特許文献1では、磁石の極数を増やすことで安定した出力を得られるモーターを実現できるが、そのことが頻繁な電流の向きの切換を必要とし、その結果、ブラシの寿命を短くするという課題が有った。この課題を解決する手段として無整流子モーター、すなわちブラシレスモーターとして、基板面に閉ループの巻線を形成したアーマチュアコイルによってローターマグネットを回転させる直流モーターが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−26354号公報
【特許文献2】特開平11−220864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献2では、高トルクモーターを得ることが困難であり、しかも、モーターの動作を制御するために、回転検出手段としての検出回路、あるいは回転制御のための制御回路などを外部に備えなければならず、小型で高性能なモーターが得られない、という課題が有った。
【0006】
そこで、高出力が得られるコアを備えるコイルと、コアを備えない配線と、を備え電流の切換頻度を少なくすることにより、ブラシの長寿命化を実現する小型モーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0008】
〔適用例1〕本適用例によるモーターは、対向配置された基体と、前記基体に回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定され前記基体の対向領域内で回転可能に配置される円柱状の回転体と、前記基体の対向する一方の面、または両方の面に固定され、前記回転体と前記基体との間に配置される、前記回転軸の中心に対して円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、前記回転体は、前記磁石に対向する第1の面および第2の面のどちらか一方、または両方に、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、前記回転軸の中心に対して円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線と前記渦巻状導体配線との外周領域に形成される、前記駆動配線の端部と電気的に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線と電気的に接続された第2整流子と、を備え、前記基体に固定され、前記第1整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第2ブラシと、を備え、前記渦巻状導体配線と、前記駆動配線と、は平面視において重ならないことを特徴とする。
【0009】
上述の適用例によれば、磁界中において回転軸を通る直線に平行に延伸された駆動配線に電流を流すことで得られる回転力と、電磁石を構成する渦巻状導体配線による磁極間の斥力と引力とによって得られる回転力と、を合成させた高い出力(トルク)のモーターを得ることができる。また、駆動配線における出力のピークは、対向配置される磁石の磁極中心近傍で発生させることができ、その時、渦巻状導体配線の出力のピークは、磁石の磁極境界近傍で発生させることができる。これにより、出力変動の少ない安定した回転性能を有するモーターを得ることができる。
【0010】
さらに、駆動配線および渦巻状導体配線は回転体へ形成される構成となっているため、いわゆる回路基板あるいは半導体装置などに用いられる微細な配線形成技術の適用が可能であり、これにより小型モーターを容易に得ることができる。また、駆動配線に対応する整流子と、渦巻状導体配線に対応する整流子と、を備えることで、磁石の極数に対する整流子数を少なくすることができるため、電流の切換機会が少なくなり、その結果、ブラシの寿命を長くすることができる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記駆動配線を複数備える前記回転体において、前記回転軸の軸方向平面視において、延伸方向が異なる前記駆動配線を1以上含むことを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、一方の駆動配線に接続する隣り合う整流子に同時に一方のブラシが接触することで、駆動配線に電流が流れない状態にあっても、延伸方向の異なる駆動配線には、所定の方向に電流を流すことができる。これによって、滑らかに回転するモーターを得ることができる。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記回転体は、2以上の基板を前記回転軸の軸方向に積層して形成され、少なくとも1以上の前記基板に前記駆動配線が形成され、および/または、前記基板の接合部の少なくとも1以上に、基板間渦巻状導体配線が配置され、前記渦巻状導体配線と前記基板間渦巻状導体配線とは、電気的に接続され、前記渦巻状導体配線および前記基板間渦巻状導体配線の配置面内に前記コアが配置されていることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、複数の基板面に駆動配線を形成し、積層することにより実質的に駆動配線の断面積の総和を大きくし、所定方向に流すことができる電流量を大きくすることができる。従って、大きな出力(トルク)を発生するモーターを得ることができる。また、渦巻状導体配線を複数の基板面に形成し、積層されることにより、コアを取り巻く渦巻状導体配線の巻線数を多くすることができ、電磁石を形成するコアからの磁力線を、より強くすることができる。従って、高いトルクを発生するモーターを得ることができる。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記駆動配線と、前記回転軸中心に円弧状に形成された前記駆動配線の両端を繋ぐ接続配線と、が渦巻状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
上述の適用例によれば、接続配線を円弧状とすることにより、接続配線に流れる電流によって発生する力を回転中心向き、もしくは放射方向に発生させることで、駆動配線に発生させた回転方向の力を減少させることが無い。従って、効率の良いモーターを得ることができる。
【0017】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記コアは、前記回転体に設けた前記回転軸方向の凹部、または貫通孔に挿通、固定されている、ことを特徴とする。
【0018】
上述の適用例によれば、渦巻状導体配線を流れる電流による磁力線の発生の効率を高め、より高いトルクを発生するモーターを得ることができる。
【0019】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記コアは、前記回転体の平面視において、前記渦巻状導体配線を覆う鍔部を備えることを特徴とする。
【0020】
上述の適用例によれば、鍔部によって、渦巻状導体配線の磁束をコアに集中させることができ、トルク性能を高めることができる。
【0021】
〔適用例7〕上述の適用例のモーターを備えるロボットハンド。
【0022】
本適用例によるロボットハンドは、小型のモーターを用いることで、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットに適用することができる。
【0023】
〔適用例8〕上述の適用例のロボットハンドを備えるロボット。
【0024】
本適用例によるロボットによれば、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係るモーターの、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略組立断面図。
【図2】第1実施形態に係る回転体の、(a),(c)は平面図、(b)は断面図。
【図3】第1実施形態に係る渦巻状導体配線のその他の形態を示す平面図。
【図4】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図5】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図6】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図7】第2実施形態に係る回転体の断面図。
【図8】第2実施形態に係る配線の一例を説明する概略斜視図。
【図9】第1,第2実施形態に係るコアのその他の例を示す図。
【図10】第3実施形態に係るロボットハンドを示す外観図。
【図11】第4実施形態に係るロボットを示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るモーター100を示す、(a)は分解状態での概略斜視図、(b)は組み立て状態を模式図的に示す断面図、である。
【0028】
図1(a)に示すように、モーター100は基体61に固定された磁石11と、基体62に固定された磁石12と、が対向配置されている。対向配置される磁石11と12の間には、円板状の回転体20が配置されている。また回転体20は、回転軸30に固定され回転子40が形成されている。回転子40は、回転軸30の一方の側を基体61に、他方の側を基体62に、例えばボールベアリングなどにより、回転可能に支持されている。
【0029】
また、基体61,62には、後述する回転体20に形成された整流子を介して回転体20に形成された配線へ駆動用の電流を送るブラシとして、基体61には第1ブラシ51a,51bと第2ブラシ53a,53bと、が各1対、固定され、基体62には第1ブラシ52a,52bと第2ブラシ54a,54bと、が各1対、固定されている。
【0030】
また、磁石11,12は、回転軸30を中心とする円周方向にN極とS極が交互に配置されるが、本形態においてはN極、S極が1極ずつ、すなわち2極の磁石を例示している。具体的には、図1(a)に示す、第2ブラシ53a,53b方向における断面を表わす図1(b)にも示すように、磁石11,12の対向する面側の磁極は互いに異なる磁極となるように配置される。すなわち、基体61に固定される磁石11では、回転体20に対向する面、すなわち磁石12と対向する面側のN極に対して、基体62に固定される磁石12の回転体20に対向する面、すなわち磁石11と対向する面の磁極がS極となるように磁石11,12が配置される。従って、他の一方の磁極である、基体61に固定される磁石11の磁石12と対向する面側のS極に対して、基体62に固定される磁石12の磁石11と対向する面の磁極がN極となるように磁石11,12が配置される。
【0031】
次に、図2により回転体20の詳細について説明する。図2は、モーター100に備える回転子40を示し、図2(a)は平面図、(b)は(a)に置けるA−A´部の断面図、(c)は(b)における矢印S方向の透視図、である。
【0032】
図2(b)に示すように、回転子40は回転軸30と、回転体20と、を含み、回転軸30と回転体20は固着されている。回転体20は後述する導電体の配線を形成するため、例えば回路基板に用いられるポリイミドなどの樹脂材料、あるいは無機材料のガラス、などの電気絶縁性を有する材料により形成されることが好ましい。また、内部配線を形成するため、複数の基板を積層して形成することが好ましい。
【0033】
図2(a)は、回転体20の一方の面20aの平面図である。回転体20の面20aには、半月状のパターン配線71,72が形成されている。パターン配線71とパターン配線72は回転軸30の中心に対して点対称の形状となっている。パターン配線71は、回転軸30の回転中心を通る直線に平行な駆動配線71aと、駆動配線71aの端部を繋ぎ円弧状の接続配線71bと、回転軸30を回避する回避配線71cと、を備え、各配線を渦巻状に、本例では2重巻きに形成されている。同様に、パターン配線72も、駆動配線72aと、接続配線72bと、回避配線72cと、を備えている。
【0034】
パターン配線71,72の接続端部71e,71f,72e,72fは、パターン配線71,72の外周に円周状に形成された第1整流子75と接続されている。なお、パターン配線71,72の渦巻内周と接続端部71f,72fとは、接続配線71b,72bとの電気的な短絡(ショート)防止のため、回転体20の内部を通る内部パターン配線71g,72gにより接続されている。
【0035】
パターン配線71,72の渦巻状の内側には、渦巻状導体配線81が形成されている。渦巻状導体配線81は、後述する回転体20の他の一方の面20bに形成されるパターン配線73,74と、面20aに形成されるパターン配線71,72と、平面視において重ならない位置、大きさで形成されている。渦巻状導体配線81の渦巻の内部にはコア90を備えている。
【0036】
コア90は渦巻状導体配線81に電流を流すことで生じる磁界の密度(磁束密度)を高くする、いわゆる磁心であり、軟磁性材料の、例えば、鉄に数%のケイ素を含む電磁鋼板、MnZn系フェライトコア、NiZn系フェライトコアなどが好適に用いられる。
【0037】
渦巻状導体配線81は、回転体20の内部接続配線81aを介して、第1整流子75の外側外周に形成された第2整流子83と接続されている。本実施形態のモーター100においては、第1整流子75および第2整流子83は、磁石11および磁石12の極数の2n倍(n:1以上の整数)に分割され、本例では磁石11,12は2極であるので4分割の整流子を備えている。パターン配線71の接続端部71e,71fは隣り合う第1整流子75b,75aと繋がり、パターン配線72の接続端部72e,72fは隣り合う第1整流子75d,75cと繋がっている。また渦巻状導体配線81では、内部接続配線81aを介して隣り合う第2整流子83と、に接続される。
【0038】
図3に、渦巻状導体配線81のパターンの詳細を示す。図3(a)に示すように、渦巻状導体配線81は、渦巻部81bと、電流の入力端部としての一方の端部81cと、他方の端部81dと、を備えている。端部81dには、渦巻部81bと交差して接続する配線部81eが繋がり、渦巻部81bとの電気的な短絡(ショート)を防止するため、回転体20の内部に配線部81eは形成される。なお、渦巻状導体配線81は、円形を基本形状とする図3(a)の形態に限定されず、図3(b)に示すような、四角形、もしくは図示する六角形のような多角形の形状を基本としても良い。その場合、コア90に効率よく磁界を発生させるために正多角形を基本とすることが好ましい。
【0039】
次に、回転体20の一方の面20bに形成される配線について説明する。図2(c)が、回転体20の面20bに形成される配線を示す平面図であるが、便宜上、図2(b)に示す矢印S方向の透視図で描いている。従って、図示方向は図2(a)と同じであり、図2(a)の図示上下左右と、図2(c)の図示上下左右は同じ方向である。
【0040】
面20bに形成される配線の構成は、上述した面20aに形成された配線と同じである。すなわち、駆動配線73a、接続配線73b、回避配線73cを備えるパターン配線73と、駆動配線74a、接続配線74b、回避配線74cを備えるパターン配線74と、渦巻状導体配線82と、を備えている。また、パターン配線73,74の外側に円弧状に第1整流子76と第2整流子84とが形成され、パターン配線73,74は第1整流子76と一端を内部パターン配線73g,74gを介して接続され、渦巻状導体配線82は第2整流子84と内部接続配線82aを介して接続されている。
【0041】
このように構成された面20bに形成された配線は、面20aに形成された配線が回転軸30中心を中心に略角度90度回転した配置となっている。このように配置されて、渦巻状導体配線81と渦巻状導体配線82とは、平面視において略一致するようにも配置されている。また、渦巻状導体配線81,82は、平面視において略直交するように配置される駆動配線71a,72a,73a,74aに重ならないように、避けて配置されている。
【0042】
次に、本実施形態に係るモーター100の動作について説明する。説明の便宜上、パターン配線71,72,73,74による動作と、渦巻状導体配線81,82による動作と、を分けて説明する。図4は、パターン配線71,72,73,74と、第1整流子75,76と、第1ブラシ51,52と、の配置および動作を説明する図であり、図1(b)に示す配置面M1,20a,20b,M2を矢印T方向からの透視矢視図として、図示上段から面M1、面20a、面20b、面M2の順に配置し、渦巻状導体配線81,82は図示を省略してある。
【0043】
先ず、図4(a)に示すように、面20aにおいて、第1ブラシ51aは第1整流子75cと第1整流子75dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ51bは第1整流子75aと第1整流子75bの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。また、面20bにおいても、第1ブラシ52aは第1整流子76aと第1整流子76dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ52bは第1整流子76bと第1整流子76cの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。
【0044】
直流電源Baより、面20aの第1ブラシ51aおよび面20bの第1ブラシ52aにはプラス(+)の電圧が、面20aの第1ブラシ51bおよび面20bの第1ブラシ52bにはマイナス(−)の電圧が付加される。面20aにおいて、第1ブラシ51aと接触する第1整流子75c,75dにはパターン配線72の接続端部72e,72fが接続され、同相のプラス(+)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線72には電流は流れない。同様に、第1ブラシ51bと接触する第1整流子75a,75bにはパターン配線71の接続端部71e,71fが接続され、同相のマイナス(−)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線71には電流は流れない。よって、面20aに形成されたパターン配線71,72の駆動配線71a,72aには電流が流れず、駆動力は発生しない。
【0045】
一方、面20bにおいては、パターン配線73の一方の接続端部73fは第1ブラシ52aと接触する第1整流子76aと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部73eは第1ブラシ52bと接触する第1整流子76bと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線73の渦巻状の配線によって駆動配線73aには図示矢印方向の電流Idが流れる。また、パターン配線74の一方の接続端部74eは第1ブラシ52aと接触する第1整流子76dと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部74fは第1ブラシ52bと接触する第1整流子76cと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線74の渦巻状の配線によって駆動配線74aには図示矢印方向の電流Idが流れる。
【0046】
磁石11および磁石12の極性は、図4(a)に示すように、磁石11では、図示上側にS極、下側にN極が回転体20に対向し、磁石12では、磁石11の極性とは逆の、図示上側にN極、下側にS極が回転体20に対向して配置されている。この極性の配置と、パターン配線73,74の駆動配線73a,74aに流れる電流Idの方向と、がフレミングの左手の法則に従って駆動配線73a,74aに反時計回りの力FUWを発生させる。そして、この反時計回りの力FUWによって回転体20は反時計回りのRUW方向に回転する。
【0047】
上述のように、磁石11,12の磁極の境界では磁束密度が低く、駆動力を得難い領域であり、また弱いながらも逆方向への駆動力を発生する可能性があるため、磁極境界と平面視で重なる領域の駆動配線には電流を流さない構成とする。
【0048】
図4(b)は、図4(a)の状態より、回転体が反時計回りに角度90度回転した状態を示す。図4(b)に示すように、面20aにおいて、第1ブラシ51aは第1整流子75bと第1整流子75cの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ51bは第1整流子75aと第1整流子75dの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。また、面20bにおいても、第1ブラシ52aは第1整流子76cと第1整流子76dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ52bは第1整流子76aと第1整流子76bの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。
【0049】
面20bにおいて、第1ブラシ52aと接触する第1整流子76c,76dにはパターン配線74の接続端部74e,74fが接続され、同相のプラス(+)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線74には電流は流れない。同様に、第1ブラシ52bと接触する第1整流子76a,76bにはパターン配線73の接続端部73e,73fが接続され、同相のマイナス(−)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線73には電流は流れない。よって、面20bに形成されたパターン配線73,74の駆動配線73a,74aには電流が流れず、駆動力は発生しない。
【0050】
一方、面20aにおいては、パターン配線72の一方の接続端部72fは第1ブラシ51aと接触する第1整流子75cと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部72eは第1ブラシ51bと接触する第1整流子75dと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線72の渦巻状の配線によって駆動配線72aには図示矢印方向の電流Idが流れる。また、パターン配線71の一方の接続端部71eは第1ブラシ51aと接触する第1整流子75bと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部71fは第1ブラシ51bと接触する第1整流子75aと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線71の渦巻状の配線によって駆動配線71aには図示矢印方向の電流Idが流れる。
【0051】
そして、磁石11,12の極性の配置と、パターン配線71,72の駆動配線71a,72aに流れる電流Idの方向と、がフレミングの左手の法則に従って駆動配線71a,72aに反時計回りの力FUWを発生させる。そして、この反時計回りの力FUWによって回転体20は反時計回りのRUW方向に回転する。
【0052】
更に、図4(b)の状態から回転体20が角度90度回転すると、図4(a)と実質的に同じ状態となり、上述の動作を繰り返して回転体20が回転し続ける。なお、電源Baの電位を逆にすることによって、上述とは逆の時計回りの回転を容易に得ることができる。
【0053】
次に、渦巻状導体配線81,82による動作を説明する。図5は、渦巻状導体配線81,82と、第2整流子83,84と、第2ブラシ53,54と、の配置および動作を説明する図である。図5では、回転体20の面20aの平面図を図示上段に、面20bの平面図を図示下段に配置し、パターン配線71,72,73,74は模式的に描き、第1整流子75,76と共に想像線(2点鎖線)にて描いてある。
【0054】
次に、渦巻状導体配線81,82によるモーター100の動作を図5および図6を用いて説明する。図5(a)は、回転体20の面20a側の平面図を示し、図5(b)は、回転体20の面20b側の平面図を示す。従って、図示上、図5(a)に示すX方向に対して図5(b)のX方向は反対となる。
【0055】
図5(a)に示すように、回転体20の面20aに形成された渦巻状導体配線81は4つの渦巻状導体配線81A,81B,81C,81Dを備えている。そして、各配線の端部は第2整流子83に接続されている。例えば、渦巻状導体配線81Aの一方の接続端部は、第2整流子83aと、他方の接続端部は第2整流子83bと、に接続されている。同様に、渦巻状導体配線81Bは第2整流子83b,83cと接続され、渦巻状導体配線81Cは第2整流子83c,83dと接続され、渦巻状導体配線81Dは第2整流子83d,83aと接続されている。すなわち、渦巻状導体配線81A,81B,81C,81Dは第2整流子83を介して直列に接続されている。また、第2整流子83には、第2ブラシ53が接触し駆動用の電源が第2整流子83を介して渦巻状導体配線81に供給される。
【0056】
図5(b)に示す、回転体20の面20bにおける渦巻状導体配線82および第2整流子84は、面20aの形成された渦巻状導体配線81および第2整流子83に対して、面20a側からの平面視において互いに重なるように配置されている。例えば、渦巻状導体配線81Aに対して渦巻状導体配線82Aが、回転体20の平面視において重なるように配置されている。このように配置されて、渦巻状導体配線82は第2整流子84を介して直列に繋がれ、第2ブラシ54から駆動用の電源が供給される。ここで、電源Baより、第2ブラシ53aおよび第2ブラシ54aにプラス(+)の電位、第2ブラシ53bおよび第2ブラシ54bにはマイナス(−)の電位の電流が供給される場合、次のようにモーター100は動作する。
【0057】
回転体20の面20a側においては、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81A、第2整流子83b、渦巻状導体配線81B、そして第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81A,81Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20a側の端部をN極とする磁石となる。
【0058】
渦巻状導体配線81Aは、対向配置される磁石11の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f1aが生まれる。また渦巻状導体配線81Bは、対向配置される磁石11の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部から反発する力f1bが生まれる。
【0059】
また、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81D、第2整流子83d、渦巻状導体配線81C、そして第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81D,81Cには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20a側の端部をS極とする磁石となる。
【0060】
渦巻状導体配線81Dは、対向配置される磁石11の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部と反発する力f1dが生まれる。また渦巻状導体配線81Cは、対向配置される磁石11の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f1cが生まれる。こうして発生した、力f1a,f1b,f1c,f1dにより、回転体20には図示する反時計回りRUW方向に回転させる力が発生する。
【0061】
一方、回転体20の面20b側においては、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82A、第2整流子84b、渦巻状導体配線82B、そして第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82A,82Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20b側の端部をS極とする磁石となる。
【0062】
渦巻状導体配線82Aは、対向配置される磁石12の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f2aが生まれる。また渦巻状導体配線82Bは、対向配置される磁石12の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に反発する力f2bが生まれる。
【0063】
また、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82D、第2整流子84d、渦巻状導体配線82C、そして第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82D,81Cには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20b側の端部をN極とする磁石となる。
【0064】
渦巻状導体配線82Dは、対向配置される磁石12の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部と反発する力f2dが生まれる。また渦巻状導体配線82Cは、対向配置される磁石12の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f2cが生まれる。こうして発生した、力f2a,f2b,f2c,f2dにより、回転体20には図示する時計回りR´CW方向に回転させる力が発生する。すなわち、この回転方向R´CWは図5(a)におけるRUWと同方向の回転方向であり、上述の面20aにおける力f1a,f1b,f1c,f1dと面20bにおける力f2a,f2b,f2c,f2dとが加わり、回転体20を、図5(a)で示すRUW方向へ回転させる。
【0065】
図6は、上述の図5に示す状態からRUW方向に角度45度回転した状態を示す。図5同様に、図6(a)は、回転体20の面20a側の平面図を示し、図6(b)は、回転体20の面20b側の平面図を示す。従って、図示上、図6(a)に示すX方向に対して図6(b)のX方向は反対となる。
【0066】
図6(a)に示すように、回転体20がRUW方向に45度回転すると、第2ブラシ53aは第2整流子83a,83bの両方と接触する状態となる。同様に、第2ブラシ53bは第2整流子83c,83dの両方と接触する。従って、第2整流子83aと第2整流子83bとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線81Aは、両端子に電源Baからのプラス(+)の電位が付加され、渦巻状導体配線81Aには電流は流れない。また、第2整流子83cと第2整流子83dとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線81Cは、両端子に電源Baからのマイナス(−)の電位が付加され、渦巻状導体配線81Cには電流は流れない。
【0067】
渦巻状導体配線81Bは、一方の接続端部を第2整流子83bに接続され、他方の接続端部を第2整流子83cに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83bから、渦巻状導体配線81B、第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20a側の端部をN極とする磁石となる。
【0068】
渦巻状導体配線81Bは、対向配置される磁石11の磁極境界に対向しているので、磁石11のS極側に引寄せられる力と、磁石11のN極側と反発する力が合成された力f1bが発生する。
【0069】
渦巻状導体配線81Dは、一方の接続端部を第2整流子83aに接続され、他方の接続端部を第2整流子83dに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81D、第2整流子83dを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81Dには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20a側の端部をS極とする磁石となる。
【0070】
渦巻状導体配線81Dは、対向配置される磁石11の磁極境界に対向しているので、磁石11のN極側に引寄せられる力と、磁石11のS極側と反発する力が合成された力f1dが発生する。このように発生した力f1b,f1dによって、回転体20は反時計方向のRUW方向に回転する。
【0071】
一方、図6(b)に示すように、回転体20が図6(a)におけるRUW方向、すなわち、R´CW方向に45度回転すると、第2ブラシ54aは第2整流子84a,84bの両方と接触する状態となる。同様に、第2ブラシ54bは第2整流子84c,84dの両方と接触する。従って、第2整流子84aと第2整流子84bとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線82Aは、両端子に電源Baからのプラス(+)の電位が付加され、渦巻状導体配線82Aには電流は流れない。また、第2整流子84cと第2整流子84dとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線82Cは、両端子に電源Baからのマイナス(−)の電位が付加され、渦巻状導体配線82Cには電流は流れない。
【0072】
渦巻状導体配線82Bは、一方の接続端部を第2整流子84bに接続され、他方の接続端部を第2整流子84cに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84bから、渦巻状導体配線82B、第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20b側の端部をS極とする磁石となる。
【0073】
渦巻状導体配線82Bは、対向配置される磁石12の磁極境界に対向しているので、磁石12のN極側に引寄せられる力と、磁石12のS極側と反発する力が合成された力f2bが発生する。
【0074】
渦巻状導体配線82Dは、一方の接続端部を第2整流子84aに接続され、他方の接続端部を第2整流子84dに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82D、第2整流子84dを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82Dには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20b側の端部をN極とする磁石となる。
【0075】
渦巻状導体配線82Dは、対向配置される磁石12の磁極境界に対向しているので、磁石12のS極側に引寄せられる力と、磁石12のN極側と反発する力が合成された力f2dが発生する。このように発生した力f2b,f2dによって、回転体20は時計方向のR´CW方向に回転する。すなわち、この回転方向R´CWは図6(a)におけるRUWと同方向の回転方向であり、上述の面20aにおける力f1b,f1dと面20bにおける力f2b,f2dとが加わり、回転体20を、図6(a)で示すRUW方向へ回転させる。
【0076】
上述した、パターン配線71,72,73,74に電流を流すことにより得られる駆動力と、渦巻状導体配線81,82に電流を流すことにより得られる駆動力と、が合成され、モーター100に高出力(高トルク)で安定した回転を与えることができる。また、渦巻状導体配線81,82は、平面視におけるパターン配線71,72,73,74の配置されない領域に配置されることで、回転体20の配線面となる面20a,20bのスペースを効率よく使うことができる。また、パターン配線においては、最も高いトルクを発揮する領域が磁石の磁極中心近傍に駆動配線が重なる状態であり、渦巻状導体配線においては、磁石の磁極境界にコアが重なる状態で最も高いトルクを得ることができるので、本実施形態に係るモーター100のパターン配線と渦巻状導体配線の配置によって、トルク変動の少ない安定した回転性能を備えるモーターを得ることができる。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るモーターは、第1実施形態に係るモーター100における回転体20の構成が異なるものであり、モーター100と同じ構成についての説明は省略する。図7は、第2実施形態に係る回転体21を示す断面図である。
【0078】
図7に示すように、回転体21は両面にパターン配線および渦巻状導体配線を形成した基板21a,21b,21cを積層して形成され、基板21aと基板21bとの間、および基板21bと基板21cとの間に配置される渦巻状導体配線は基板間渦巻状導体配線となる。各基板間には基板を接着固定する接合層21dを備えている。接合層21dは、配線間の電気的な短絡(ショート)を防止するため、電気絶縁性を有する材料により形成される。また、回転体21の配線形成面21e,21fには、第1整流子75,76と第2整流子83,84も形成されている。
【0079】
各基板21a,21b,21cに形成されている各配線は、第1実施形態に係る回転体20と同じ配置がされ、各配線は平面視において略一致するように基板21a,21b,21cは積層される。各基板21a,21b,21cの渦巻状導体配線の内側には、回転体21の面21eから面21fに至るコア91が挿通され、固着されている。
【0080】
各基板21a,21b,21cに形成されている各配線の電気的な接続は、直列に接続しても良く、並列で接続しても良い。図8は、接続の1例として渦巻状導体配線で例示する模式的な斜視図であり、(a)は直列に接続し、(b)は並列に接続された渦巻状導体配線の例を示す。なお、接続方法は本例に限定されず、例えば、図8では1系統の配線であるが2系統の配線としても良く、2系統配線に直列と並列とを用いても良い。
【0081】
(その他の例)
第1実施形態および第2実施形態に係る回転体20に備えるコア90,91の、その他の形態を図9に示す。図9(a)は、第1実施形態に係る回転体20において鍔部を備えるコア92を用いた形態を示す断面図、(b)は回転体20において、2体構成のコア93を示す断面図である。
【0082】
図9(a)に示すように、コア92は渦巻状導体配線81,82を平面的に覆う鍔部92bを備え、挿入部92aを回転体20に挿入し固定される。このようにコア92の鍔部92bにより渦巻状導体配線81,82を平面視において覆うことにより、渦巻状導体配線81から発生する磁束の発散を防ぐことができ、トルク性能を高めることができる。
【0083】
図9(b)に示すように、回転体20には面20a側に凹部20c、面20b側に凹部20dが設けられ、凹部20cにはコア93a、凹部20dにはコア93bが挿入され固着されている。本例のように、未貫通の凹部20c,20dにコア93a,93bを配置することにより、回転体20の加工時間を短くすることができ、また凹部20c,20dの底部20eによって、貫通孔を設けた場合に対して回転体の強度低下を緩和することができる。
【0084】
上述した、第1実施形態、および第2実施形態に係る回転体20および21は、回転面である面20a,20b、および面21e,21fに第1整流子75,76および第2整流子83,84を備える構成とし、それに対応する第1ブラシ51,52および第2ブラシ53,54を、回転体の面20a,20b、および面21e,21fに配置した。しかし、本願はこれに限定されず、回転体20および21の内部配線によって、面20aまたは面20bのどちらか1面、および面21eもしくは面21fのどちらか1面に整流子およびブラシを配置することもできる。
【0085】
(第3実施形態)
図10は、本実施形態のモーター100を備えるロボットハンド1000の構成を示す図である。ロボットハンド1000は、基部1100と、基部1100に接続された指部1200とを備えている。基部1100と指部1200との接続部と、指部1200の間接部とには、モーター100が設けられている。モーター100が駆動することによって、指部1200が屈曲し、物体を把持することができる。超小型モーターであるモーター100を用いることによって、小型でありながら多数のモーターを備えるロボットハンドを実現することができる。
【0086】
(第4実施形態)
図11は、ロボットハンド1000を備えるロボット2000の構成を示す図である。ロボット2000は、本体部2100、アーム部2200およびロボットハンド1000等から構成されている。本体部2100は、例えば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。アーム部2200は、本体部2100に対して可動に設けられており、本体部2100にはアーム部2200を回転させるための動力を発生させる図示しないアクチュエーターや、アクチュエーターを制御する制御部等が内蔵されている。
【0087】
アーム部2200は、第1フレーム2210、第2フレーム2220、第3フレーム2230、第4フレーム2240および第5フレーム2250から構成されている。第1フレーム2210は、回転屈折軸を介して、本体部2100に回転可能または屈折可能に接続されている。第2フレーム2220は、回転屈折軸を介して、第1フレーム2210および第3フレーム2230に接続されている。第3フレーム2230は、回転屈折軸を介して、第2フレーム2220および第4フレーム2240に接続されている。第4フレーム2240は、回転屈折軸を介して、第3フレーム2230および第5フレーム2250に接続されている。第5フレーム2250は、回転屈折軸を介して、第4フレーム2240に接続されている。アーム部2200は、制御部の制御によって、各フレーム2210〜2250が各回転屈折軸を中心に複合的に回転または屈折し動く。
【0088】
アーム部2200の第5フレーム2250のうち第4フレーム2240が設けられた他方には、ロボットハンド1000が取り付けられており、対象物を把持することができる。
ロボットハンド1000を用いることによって、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットを提供することができる。
【0089】
以上のように実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、モーター、ロボットハンドおよびロボットの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0090】
11,12…磁石、20…回転体、30…回転軸、40…回転子、51,52…第1ブラシ、53,54…第2ブラシ、61,62…基体、100…モーター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター、ロボットハンドおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型モーターとしては、ブラシモーターと呼ばれるDCモーターが良く知られている。このDCモーターでは、ローターに巻かれている巻線に流れる電流の向きを、ステーターに配置された永久磁石のNS極に対応して、変化させてローターを回転させている。巻線の電流の向きはモーターに配置されたブラシと整流子によって機械的に切り替えることができ、簡単な構造による低コストのモーターを実現した(特許文献1)。
【0003】
しかし、上述の特許文献1では、磁石の極数を増やすことで安定した出力を得られるモーターを実現できるが、そのことが頻繁な電流の向きの切換を必要とし、その結果、ブラシの寿命を短くするという課題が有った。この課題を解決する手段として無整流子モーター、すなわちブラシレスモーターとして、基板面に閉ループの巻線を形成したアーマチュアコイルによってローターマグネットを回転させる直流モーターが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−26354号公報
【特許文献2】特開平11−220864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献2では、高トルクモーターを得ることが困難であり、しかも、モーターの動作を制御するために、回転検出手段としての検出回路、あるいは回転制御のための制御回路などを外部に備えなければならず、小型で高性能なモーターが得られない、という課題が有った。
【0006】
そこで、高出力が得られるコアを備えるコイルと、コアを備えない配線と、を備え電流の切換頻度を少なくすることにより、ブラシの長寿命化を実現する小型モーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0008】
〔適用例1〕本適用例によるモーターは、対向配置された基体と、前記基体に回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定され前記基体の対向領域内で回転可能に配置される円柱状の回転体と、前記基体の対向する一方の面、または両方の面に固定され、前記回転体と前記基体との間に配置される、前記回転軸の中心に対して円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、前記回転体は、前記磁石に対向する第1の面および第2の面のどちらか一方、または両方に、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、前記回転軸の中心に対して円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線と前記渦巻状導体配線との外周領域に形成される、前記駆動配線の端部と電気的に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線と電気的に接続された第2整流子と、を備え、前記基体に固定され、前記第1整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第2ブラシと、を備え、前記渦巻状導体配線と、前記駆動配線と、は平面視において重ならないことを特徴とする。
【0009】
上述の適用例によれば、磁界中において回転軸を通る直線に平行に延伸された駆動配線に電流を流すことで得られる回転力と、電磁石を構成する渦巻状導体配線による磁極間の斥力と引力とによって得られる回転力と、を合成させた高い出力(トルク)のモーターを得ることができる。また、駆動配線における出力のピークは、対向配置される磁石の磁極中心近傍で発生させることができ、その時、渦巻状導体配線の出力のピークは、磁石の磁極境界近傍で発生させることができる。これにより、出力変動の少ない安定した回転性能を有するモーターを得ることができる。
【0010】
さらに、駆動配線および渦巻状導体配線は回転体へ形成される構成となっているため、いわゆる回路基板あるいは半導体装置などに用いられる微細な配線形成技術の適用が可能であり、これにより小型モーターを容易に得ることができる。また、駆動配線に対応する整流子と、渦巻状導体配線に対応する整流子と、を備えることで、磁石の極数に対する整流子数を少なくすることができるため、電流の切換機会が少なくなり、その結果、ブラシの寿命を長くすることができる。
【0011】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記駆動配線を複数備える前記回転体において、前記回転軸の軸方向平面視において、延伸方向が異なる前記駆動配線を1以上含むことを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、一方の駆動配線に接続する隣り合う整流子に同時に一方のブラシが接触することで、駆動配線に電流が流れない状態にあっても、延伸方向の異なる駆動配線には、所定の方向に電流を流すことができる。これによって、滑らかに回転するモーターを得ることができる。
【0013】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記回転体は、2以上の基板を前記回転軸の軸方向に積層して形成され、少なくとも1以上の前記基板に前記駆動配線が形成され、および/または、前記基板の接合部の少なくとも1以上に、基板間渦巻状導体配線が配置され、前記渦巻状導体配線と前記基板間渦巻状導体配線とは、電気的に接続され、前記渦巻状導体配線および前記基板間渦巻状導体配線の配置面内に前記コアが配置されていることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、複数の基板面に駆動配線を形成し、積層することにより実質的に駆動配線の断面積の総和を大きくし、所定方向に流すことができる電流量を大きくすることができる。従って、大きな出力(トルク)を発生するモーターを得ることができる。また、渦巻状導体配線を複数の基板面に形成し、積層されることにより、コアを取り巻く渦巻状導体配線の巻線数を多くすることができ、電磁石を形成するコアからの磁力線を、より強くすることができる。従って、高いトルクを発生するモーターを得ることができる。
【0015】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記駆動配線と、前記回転軸中心に円弧状に形成された前記駆動配線の両端を繋ぐ接続配線と、が渦巻状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
上述の適用例によれば、接続配線を円弧状とすることにより、接続配線に流れる電流によって発生する力を回転中心向き、もしくは放射方向に発生させることで、駆動配線に発生させた回転方向の力を減少させることが無い。従って、効率の良いモーターを得ることができる。
【0017】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記コアは、前記回転体に設けた前記回転軸方向の凹部、または貫通孔に挿通、固定されている、ことを特徴とする。
【0018】
上述の適用例によれば、渦巻状導体配線を流れる電流による磁力線の発生の効率を高め、より高いトルクを発生するモーターを得ることができる。
【0019】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記コアは、前記回転体の平面視において、前記渦巻状導体配線を覆う鍔部を備えることを特徴とする。
【0020】
上述の適用例によれば、鍔部によって、渦巻状導体配線の磁束をコアに集中させることができ、トルク性能を高めることができる。
【0021】
〔適用例7〕上述の適用例のモーターを備えるロボットハンド。
【0022】
本適用例によるロボットハンドは、小型のモーターを用いることで、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットに適用することができる。
【0023】
〔適用例8〕上述の適用例のロボットハンドを備えるロボット。
【0024】
本適用例によるロボットによれば、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係るモーターの、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略組立断面図。
【図2】第1実施形態に係る回転体の、(a),(c)は平面図、(b)は断面図。
【図3】第1実施形態に係る渦巻状導体配線のその他の形態を示す平面図。
【図4】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図5】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図6】第1実施形態に係るモーターの動作を説明する動作説明図。
【図7】第2実施形態に係る回転体の断面図。
【図8】第2実施形態に係る配線の一例を説明する概略斜視図。
【図9】第1,第2実施形態に係るコアのその他の例を示す図。
【図10】第3実施形態に係るロボットハンドを示す外観図。
【図11】第4実施形態に係るロボットを示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るモーター100を示す、(a)は分解状態での概略斜視図、(b)は組み立て状態を模式図的に示す断面図、である。
【0028】
図1(a)に示すように、モーター100は基体61に固定された磁石11と、基体62に固定された磁石12と、が対向配置されている。対向配置される磁石11と12の間には、円板状の回転体20が配置されている。また回転体20は、回転軸30に固定され回転子40が形成されている。回転子40は、回転軸30の一方の側を基体61に、他方の側を基体62に、例えばボールベアリングなどにより、回転可能に支持されている。
【0029】
また、基体61,62には、後述する回転体20に形成された整流子を介して回転体20に形成された配線へ駆動用の電流を送るブラシとして、基体61には第1ブラシ51a,51bと第2ブラシ53a,53bと、が各1対、固定され、基体62には第1ブラシ52a,52bと第2ブラシ54a,54bと、が各1対、固定されている。
【0030】
また、磁石11,12は、回転軸30を中心とする円周方向にN極とS極が交互に配置されるが、本形態においてはN極、S極が1極ずつ、すなわち2極の磁石を例示している。具体的には、図1(a)に示す、第2ブラシ53a,53b方向における断面を表わす図1(b)にも示すように、磁石11,12の対向する面側の磁極は互いに異なる磁極となるように配置される。すなわち、基体61に固定される磁石11では、回転体20に対向する面、すなわち磁石12と対向する面側のN極に対して、基体62に固定される磁石12の回転体20に対向する面、すなわち磁石11と対向する面の磁極がS極となるように磁石11,12が配置される。従って、他の一方の磁極である、基体61に固定される磁石11の磁石12と対向する面側のS極に対して、基体62に固定される磁石12の磁石11と対向する面の磁極がN極となるように磁石11,12が配置される。
【0031】
次に、図2により回転体20の詳細について説明する。図2は、モーター100に備える回転子40を示し、図2(a)は平面図、(b)は(a)に置けるA−A´部の断面図、(c)は(b)における矢印S方向の透視図、である。
【0032】
図2(b)に示すように、回転子40は回転軸30と、回転体20と、を含み、回転軸30と回転体20は固着されている。回転体20は後述する導電体の配線を形成するため、例えば回路基板に用いられるポリイミドなどの樹脂材料、あるいは無機材料のガラス、などの電気絶縁性を有する材料により形成されることが好ましい。また、内部配線を形成するため、複数の基板を積層して形成することが好ましい。
【0033】
図2(a)は、回転体20の一方の面20aの平面図である。回転体20の面20aには、半月状のパターン配線71,72が形成されている。パターン配線71とパターン配線72は回転軸30の中心に対して点対称の形状となっている。パターン配線71は、回転軸30の回転中心を通る直線に平行な駆動配線71aと、駆動配線71aの端部を繋ぎ円弧状の接続配線71bと、回転軸30を回避する回避配線71cと、を備え、各配線を渦巻状に、本例では2重巻きに形成されている。同様に、パターン配線72も、駆動配線72aと、接続配線72bと、回避配線72cと、を備えている。
【0034】
パターン配線71,72の接続端部71e,71f,72e,72fは、パターン配線71,72の外周に円周状に形成された第1整流子75と接続されている。なお、パターン配線71,72の渦巻内周と接続端部71f,72fとは、接続配線71b,72bとの電気的な短絡(ショート)防止のため、回転体20の内部を通る内部パターン配線71g,72gにより接続されている。
【0035】
パターン配線71,72の渦巻状の内側には、渦巻状導体配線81が形成されている。渦巻状導体配線81は、後述する回転体20の他の一方の面20bに形成されるパターン配線73,74と、面20aに形成されるパターン配線71,72と、平面視において重ならない位置、大きさで形成されている。渦巻状導体配線81の渦巻の内部にはコア90を備えている。
【0036】
コア90は渦巻状導体配線81に電流を流すことで生じる磁界の密度(磁束密度)を高くする、いわゆる磁心であり、軟磁性材料の、例えば、鉄に数%のケイ素を含む電磁鋼板、MnZn系フェライトコア、NiZn系フェライトコアなどが好適に用いられる。
【0037】
渦巻状導体配線81は、回転体20の内部接続配線81aを介して、第1整流子75の外側外周に形成された第2整流子83と接続されている。本実施形態のモーター100においては、第1整流子75および第2整流子83は、磁石11および磁石12の極数の2n倍(n:1以上の整数)に分割され、本例では磁石11,12は2極であるので4分割の整流子を備えている。パターン配線71の接続端部71e,71fは隣り合う第1整流子75b,75aと繋がり、パターン配線72の接続端部72e,72fは隣り合う第1整流子75d,75cと繋がっている。また渦巻状導体配線81では、内部接続配線81aを介して隣り合う第2整流子83と、に接続される。
【0038】
図3に、渦巻状導体配線81のパターンの詳細を示す。図3(a)に示すように、渦巻状導体配線81は、渦巻部81bと、電流の入力端部としての一方の端部81cと、他方の端部81dと、を備えている。端部81dには、渦巻部81bと交差して接続する配線部81eが繋がり、渦巻部81bとの電気的な短絡(ショート)を防止するため、回転体20の内部に配線部81eは形成される。なお、渦巻状導体配線81は、円形を基本形状とする図3(a)の形態に限定されず、図3(b)に示すような、四角形、もしくは図示する六角形のような多角形の形状を基本としても良い。その場合、コア90に効率よく磁界を発生させるために正多角形を基本とすることが好ましい。
【0039】
次に、回転体20の一方の面20bに形成される配線について説明する。図2(c)が、回転体20の面20bに形成される配線を示す平面図であるが、便宜上、図2(b)に示す矢印S方向の透視図で描いている。従って、図示方向は図2(a)と同じであり、図2(a)の図示上下左右と、図2(c)の図示上下左右は同じ方向である。
【0040】
面20bに形成される配線の構成は、上述した面20aに形成された配線と同じである。すなわち、駆動配線73a、接続配線73b、回避配線73cを備えるパターン配線73と、駆動配線74a、接続配線74b、回避配線74cを備えるパターン配線74と、渦巻状導体配線82と、を備えている。また、パターン配線73,74の外側に円弧状に第1整流子76と第2整流子84とが形成され、パターン配線73,74は第1整流子76と一端を内部パターン配線73g,74gを介して接続され、渦巻状導体配線82は第2整流子84と内部接続配線82aを介して接続されている。
【0041】
このように構成された面20bに形成された配線は、面20aに形成された配線が回転軸30中心を中心に略角度90度回転した配置となっている。このように配置されて、渦巻状導体配線81と渦巻状導体配線82とは、平面視において略一致するようにも配置されている。また、渦巻状導体配線81,82は、平面視において略直交するように配置される駆動配線71a,72a,73a,74aに重ならないように、避けて配置されている。
【0042】
次に、本実施形態に係るモーター100の動作について説明する。説明の便宜上、パターン配線71,72,73,74による動作と、渦巻状導体配線81,82による動作と、を分けて説明する。図4は、パターン配線71,72,73,74と、第1整流子75,76と、第1ブラシ51,52と、の配置および動作を説明する図であり、図1(b)に示す配置面M1,20a,20b,M2を矢印T方向からの透視矢視図として、図示上段から面M1、面20a、面20b、面M2の順に配置し、渦巻状導体配線81,82は図示を省略してある。
【0043】
先ず、図4(a)に示すように、面20aにおいて、第1ブラシ51aは第1整流子75cと第1整流子75dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ51bは第1整流子75aと第1整流子75bの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。また、面20bにおいても、第1ブラシ52aは第1整流子76aと第1整流子76dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ52bは第1整流子76bと第1整流子76cの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。
【0044】
直流電源Baより、面20aの第1ブラシ51aおよび面20bの第1ブラシ52aにはプラス(+)の電圧が、面20aの第1ブラシ51bおよび面20bの第1ブラシ52bにはマイナス(−)の電圧が付加される。面20aにおいて、第1ブラシ51aと接触する第1整流子75c,75dにはパターン配線72の接続端部72e,72fが接続され、同相のプラス(+)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線72には電流は流れない。同様に、第1ブラシ51bと接触する第1整流子75a,75bにはパターン配線71の接続端部71e,71fが接続され、同相のマイナス(−)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線71には電流は流れない。よって、面20aに形成されたパターン配線71,72の駆動配線71a,72aには電流が流れず、駆動力は発生しない。
【0045】
一方、面20bにおいては、パターン配線73の一方の接続端部73fは第1ブラシ52aと接触する第1整流子76aと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部73eは第1ブラシ52bと接触する第1整流子76bと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線73の渦巻状の配線によって駆動配線73aには図示矢印方向の電流Idが流れる。また、パターン配線74の一方の接続端部74eは第1ブラシ52aと接触する第1整流子76dと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部74fは第1ブラシ52bと接触する第1整流子76cと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線74の渦巻状の配線によって駆動配線74aには図示矢印方向の電流Idが流れる。
【0046】
磁石11および磁石12の極性は、図4(a)に示すように、磁石11では、図示上側にS極、下側にN極が回転体20に対向し、磁石12では、磁石11の極性とは逆の、図示上側にN極、下側にS極が回転体20に対向して配置されている。この極性の配置と、パターン配線73,74の駆動配線73a,74aに流れる電流Idの方向と、がフレミングの左手の法則に従って駆動配線73a,74aに反時計回りの力FUWを発生させる。そして、この反時計回りの力FUWによって回転体20は反時計回りのRUW方向に回転する。
【0047】
上述のように、磁石11,12の磁極の境界では磁束密度が低く、駆動力を得難い領域であり、また弱いながらも逆方向への駆動力を発生する可能性があるため、磁極境界と平面視で重なる領域の駆動配線には電流を流さない構成とする。
【0048】
図4(b)は、図4(a)の状態より、回転体が反時計回りに角度90度回転した状態を示す。図4(b)に示すように、面20aにおいて、第1ブラシ51aは第1整流子75bと第1整流子75cの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ51bは第1整流子75aと第1整流子75dの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。また、面20bにおいても、第1ブラシ52aは第1整流子76cと第1整流子76dの2箇所の整流子に同時に接触し、第1ブラシ52bは第1整流子76aと第1整流子76bの2箇所の整流子に同時に接触するように配置されている。
【0049】
面20bにおいて、第1ブラシ52aと接触する第1整流子76c,76dにはパターン配線74の接続端部74e,74fが接続され、同相のプラス(+)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線74には電流は流れない。同様に、第1ブラシ52bと接触する第1整流子76a,76bにはパターン配線73の接続端部73e,73fが接続され、同相のマイナス(−)電圧が付加されることとなる。従って、パターン配線73には電流は流れない。よって、面20bに形成されたパターン配線73,74の駆動配線73a,74aには電流が流れず、駆動力は発生しない。
【0050】
一方、面20aにおいては、パターン配線72の一方の接続端部72fは第1ブラシ51aと接触する第1整流子75cと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部72eは第1ブラシ51bと接触する第1整流子75dと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線72の渦巻状の配線によって駆動配線72aには図示矢印方向の電流Idが流れる。また、パターン配線71の一方の接続端部71eは第1ブラシ51aと接触する第1整流子75bと繋がっており、プラス(+)の電位が付加され、他方の接続端部71fは第1ブラシ51bと接触する第1整流子75aと繋がっており、マイナス(−)の電位が付加されている。従って、パターン配線71の渦巻状の配線によって駆動配線71aには図示矢印方向の電流Idが流れる。
【0051】
そして、磁石11,12の極性の配置と、パターン配線71,72の駆動配線71a,72aに流れる電流Idの方向と、がフレミングの左手の法則に従って駆動配線71a,72aに反時計回りの力FUWを発生させる。そして、この反時計回りの力FUWによって回転体20は反時計回りのRUW方向に回転する。
【0052】
更に、図4(b)の状態から回転体20が角度90度回転すると、図4(a)と実質的に同じ状態となり、上述の動作を繰り返して回転体20が回転し続ける。なお、電源Baの電位を逆にすることによって、上述とは逆の時計回りの回転を容易に得ることができる。
【0053】
次に、渦巻状導体配線81,82による動作を説明する。図5は、渦巻状導体配線81,82と、第2整流子83,84と、第2ブラシ53,54と、の配置および動作を説明する図である。図5では、回転体20の面20aの平面図を図示上段に、面20bの平面図を図示下段に配置し、パターン配線71,72,73,74は模式的に描き、第1整流子75,76と共に想像線(2点鎖線)にて描いてある。
【0054】
次に、渦巻状導体配線81,82によるモーター100の動作を図5および図6を用いて説明する。図5(a)は、回転体20の面20a側の平面図を示し、図5(b)は、回転体20の面20b側の平面図を示す。従って、図示上、図5(a)に示すX方向に対して図5(b)のX方向は反対となる。
【0055】
図5(a)に示すように、回転体20の面20aに形成された渦巻状導体配線81は4つの渦巻状導体配線81A,81B,81C,81Dを備えている。そして、各配線の端部は第2整流子83に接続されている。例えば、渦巻状導体配線81Aの一方の接続端部は、第2整流子83aと、他方の接続端部は第2整流子83bと、に接続されている。同様に、渦巻状導体配線81Bは第2整流子83b,83cと接続され、渦巻状導体配線81Cは第2整流子83c,83dと接続され、渦巻状導体配線81Dは第2整流子83d,83aと接続されている。すなわち、渦巻状導体配線81A,81B,81C,81Dは第2整流子83を介して直列に接続されている。また、第2整流子83には、第2ブラシ53が接触し駆動用の電源が第2整流子83を介して渦巻状導体配線81に供給される。
【0056】
図5(b)に示す、回転体20の面20bにおける渦巻状導体配線82および第2整流子84は、面20aの形成された渦巻状導体配線81および第2整流子83に対して、面20a側からの平面視において互いに重なるように配置されている。例えば、渦巻状導体配線81Aに対して渦巻状導体配線82Aが、回転体20の平面視において重なるように配置されている。このように配置されて、渦巻状導体配線82は第2整流子84を介して直列に繋がれ、第2ブラシ54から駆動用の電源が供給される。ここで、電源Baより、第2ブラシ53aおよび第2ブラシ54aにプラス(+)の電位、第2ブラシ53bおよび第2ブラシ54bにはマイナス(−)の電位の電流が供給される場合、次のようにモーター100は動作する。
【0057】
回転体20の面20a側においては、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81A、第2整流子83b、渦巻状導体配線81B、そして第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81A,81Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20a側の端部をN極とする磁石となる。
【0058】
渦巻状導体配線81Aは、対向配置される磁石11の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f1aが生まれる。また渦巻状導体配線81Bは、対向配置される磁石11の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部から反発する力f1bが生まれる。
【0059】
また、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81D、第2整流子83d、渦巻状導体配線81C、そして第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81D,81Cには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20a側の端部をS極とする磁石となる。
【0060】
渦巻状導体配線81Dは、対向配置される磁石11の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部と反発する力f1dが生まれる。また渦巻状導体配線81Cは、対向配置される磁石11の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石11の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f1cが生まれる。こうして発生した、力f1a,f1b,f1c,f1dにより、回転体20には図示する反時計回りRUW方向に回転させる力が発生する。
【0061】
一方、回転体20の面20b側においては、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82A、第2整流子84b、渦巻状導体配線82B、そして第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82A,82Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20b側の端部をS極とする磁石となる。
【0062】
渦巻状導体配線82Aは、対向配置される磁石12の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f2aが生まれる。また渦巻状導体配線82Bは、対向配置される磁石12の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に反発する力f2bが生まれる。
【0063】
また、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82D、第2整流子84d、渦巻状導体配線82C、そして第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82D,81Cには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生する。この磁界は、アンペールの法則に従ってコア90の回転体20の面20b側の端部をN極とする磁石となる。
【0064】
渦巻状導体配線82Dは、対向配置される磁石12の磁極のN極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部と反発する力f2dが生まれる。また渦巻状導体配線82Cは、対向配置される磁石12の磁極のS極範囲と対向していることで、磁石12の磁束密度の高い磁石中心部に引寄せられる力f2cが生まれる。こうして発生した、力f2a,f2b,f2c,f2dにより、回転体20には図示する時計回りR´CW方向に回転させる力が発生する。すなわち、この回転方向R´CWは図5(a)におけるRUWと同方向の回転方向であり、上述の面20aにおける力f1a,f1b,f1c,f1dと面20bにおける力f2a,f2b,f2c,f2dとが加わり、回転体20を、図5(a)で示すRUW方向へ回転させる。
【0065】
図6は、上述の図5に示す状態からRUW方向に角度45度回転した状態を示す。図5同様に、図6(a)は、回転体20の面20a側の平面図を示し、図6(b)は、回転体20の面20b側の平面図を示す。従って、図示上、図6(a)に示すX方向に対して図6(b)のX方向は反対となる。
【0066】
図6(a)に示すように、回転体20がRUW方向に45度回転すると、第2ブラシ53aは第2整流子83a,83bの両方と接触する状態となる。同様に、第2ブラシ53bは第2整流子83c,83dの両方と接触する。従って、第2整流子83aと第2整流子83bとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線81Aは、両端子に電源Baからのプラス(+)の電位が付加され、渦巻状導体配線81Aには電流は流れない。また、第2整流子83cと第2整流子83dとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線81Cは、両端子に電源Baからのマイナス(−)の電位が付加され、渦巻状導体配線81Cには電流は流れない。
【0067】
渦巻状導体配線81Bは、一方の接続端部を第2整流子83bに接続され、他方の接続端部を第2整流子83cに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83bから、渦巻状導体配線81B、第2整流子83cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20a側の端部をN極とする磁石となる。
【0068】
渦巻状導体配線81Bは、対向配置される磁石11の磁極境界に対向しているので、磁石11のS極側に引寄せられる力と、磁石11のN極側と反発する力が合成された力f1bが発生する。
【0069】
渦巻状導体配線81Dは、一方の接続端部を第2整流子83aに接続され、他方の接続端部を第2整流子83dに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ53aを通して、第2整流子83aから、渦巻状導体配線81D、第2整流子83dを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ53bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線81Dには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20a側の端部をS極とする磁石となる。
【0070】
渦巻状導体配線81Dは、対向配置される磁石11の磁極境界に対向しているので、磁石11のN極側に引寄せられる力と、磁石11のS極側と反発する力が合成された力f1dが発生する。このように発生した力f1b,f1dによって、回転体20は反時計方向のRUW方向に回転する。
【0071】
一方、図6(b)に示すように、回転体20が図6(a)におけるRUW方向、すなわち、R´CW方向に45度回転すると、第2ブラシ54aは第2整流子84a,84bの両方と接触する状態となる。同様に、第2ブラシ54bは第2整流子84c,84dの両方と接触する。従って、第2整流子84aと第2整流子84bとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線82Aは、両端子に電源Baからのプラス(+)の電位が付加され、渦巻状導体配線82Aには電流は流れない。また、第2整流子84cと第2整流子84dとに接続端部が繋がれた渦巻状導体配線82Cは、両端子に電源Baからのマイナス(−)の電位が付加され、渦巻状導体配線82Cには電流は流れない。
【0072】
渦巻状導体配線82Bは、一方の接続端部を第2整流子84bに接続され、他方の接続端部を第2整流子84cに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84bから、渦巻状導体配線82B、第2整流子84cを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82Bには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20b側の端部をS極とする磁石となる。
【0073】
渦巻状導体配線82Bは、対向配置される磁石12の磁極境界に対向しているので、磁石12のN極側に引寄せられる力と、磁石12のS極側と反発する力が合成された力f2bが発生する。
【0074】
渦巻状導体配線82Dは、一方の接続端部を第2整流子84aに接続され、他方の接続端部を第2整流子84dに接続されているので、プラス(+)電位の第2ブラシ54aを通して、第2整流子84aから、渦巻状導体配線82D、第2整流子84dを経由し、マイナス(−)電位の第2ブラシ54bへと電流が流れる。このとき、渦巻状導体配線82Dには図示矢印方向に電流が流れ、渦巻部では図示における反時計回りに電流が流れ、コア90に磁界が発生し、コア90の回転体20の面20b側の端部をN極とする磁石となる。
【0075】
渦巻状導体配線82Dは、対向配置される磁石12の磁極境界に対向しているので、磁石12のS極側に引寄せられる力と、磁石12のN極側と反発する力が合成された力f2dが発生する。このように発生した力f2b,f2dによって、回転体20は時計方向のR´CW方向に回転する。すなわち、この回転方向R´CWは図6(a)におけるRUWと同方向の回転方向であり、上述の面20aにおける力f1b,f1dと面20bにおける力f2b,f2dとが加わり、回転体20を、図6(a)で示すRUW方向へ回転させる。
【0076】
上述した、パターン配線71,72,73,74に電流を流すことにより得られる駆動力と、渦巻状導体配線81,82に電流を流すことにより得られる駆動力と、が合成され、モーター100に高出力(高トルク)で安定した回転を与えることができる。また、渦巻状導体配線81,82は、平面視におけるパターン配線71,72,73,74の配置されない領域に配置されることで、回転体20の配線面となる面20a,20bのスペースを効率よく使うことができる。また、パターン配線においては、最も高いトルクを発揮する領域が磁石の磁極中心近傍に駆動配線が重なる状態であり、渦巻状導体配線においては、磁石の磁極境界にコアが重なる状態で最も高いトルクを得ることができるので、本実施形態に係るモーター100のパターン配線と渦巻状導体配線の配置によって、トルク変動の少ない安定した回転性能を備えるモーターを得ることができる。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るモーターは、第1実施形態に係るモーター100における回転体20の構成が異なるものであり、モーター100と同じ構成についての説明は省略する。図7は、第2実施形態に係る回転体21を示す断面図である。
【0078】
図7に示すように、回転体21は両面にパターン配線および渦巻状導体配線を形成した基板21a,21b,21cを積層して形成され、基板21aと基板21bとの間、および基板21bと基板21cとの間に配置される渦巻状導体配線は基板間渦巻状導体配線となる。各基板間には基板を接着固定する接合層21dを備えている。接合層21dは、配線間の電気的な短絡(ショート)を防止するため、電気絶縁性を有する材料により形成される。また、回転体21の配線形成面21e,21fには、第1整流子75,76と第2整流子83,84も形成されている。
【0079】
各基板21a,21b,21cに形成されている各配線は、第1実施形態に係る回転体20と同じ配置がされ、各配線は平面視において略一致するように基板21a,21b,21cは積層される。各基板21a,21b,21cの渦巻状導体配線の内側には、回転体21の面21eから面21fに至るコア91が挿通され、固着されている。
【0080】
各基板21a,21b,21cに形成されている各配線の電気的な接続は、直列に接続しても良く、並列で接続しても良い。図8は、接続の1例として渦巻状導体配線で例示する模式的な斜視図であり、(a)は直列に接続し、(b)は並列に接続された渦巻状導体配線の例を示す。なお、接続方法は本例に限定されず、例えば、図8では1系統の配線であるが2系統の配線としても良く、2系統配線に直列と並列とを用いても良い。
【0081】
(その他の例)
第1実施形態および第2実施形態に係る回転体20に備えるコア90,91の、その他の形態を図9に示す。図9(a)は、第1実施形態に係る回転体20において鍔部を備えるコア92を用いた形態を示す断面図、(b)は回転体20において、2体構成のコア93を示す断面図である。
【0082】
図9(a)に示すように、コア92は渦巻状導体配線81,82を平面的に覆う鍔部92bを備え、挿入部92aを回転体20に挿入し固定される。このようにコア92の鍔部92bにより渦巻状導体配線81,82を平面視において覆うことにより、渦巻状導体配線81から発生する磁束の発散を防ぐことができ、トルク性能を高めることができる。
【0083】
図9(b)に示すように、回転体20には面20a側に凹部20c、面20b側に凹部20dが設けられ、凹部20cにはコア93a、凹部20dにはコア93bが挿入され固着されている。本例のように、未貫通の凹部20c,20dにコア93a,93bを配置することにより、回転体20の加工時間を短くすることができ、また凹部20c,20dの底部20eによって、貫通孔を設けた場合に対して回転体の強度低下を緩和することができる。
【0084】
上述した、第1実施形態、および第2実施形態に係る回転体20および21は、回転面である面20a,20b、および面21e,21fに第1整流子75,76および第2整流子83,84を備える構成とし、それに対応する第1ブラシ51,52および第2ブラシ53,54を、回転体の面20a,20b、および面21e,21fに配置した。しかし、本願はこれに限定されず、回転体20および21の内部配線によって、面20aまたは面20bのどちらか1面、および面21eもしくは面21fのどちらか1面に整流子およびブラシを配置することもできる。
【0085】
(第3実施形態)
図10は、本実施形態のモーター100を備えるロボットハンド1000の構成を示す図である。ロボットハンド1000は、基部1100と、基部1100に接続された指部1200とを備えている。基部1100と指部1200との接続部と、指部1200の間接部とには、モーター100が設けられている。モーター100が駆動することによって、指部1200が屈曲し、物体を把持することができる。超小型モーターであるモーター100を用いることによって、小型でありながら多数のモーターを備えるロボットハンドを実現することができる。
【0086】
(第4実施形態)
図11は、ロボットハンド1000を備えるロボット2000の構成を示す図である。ロボット2000は、本体部2100、アーム部2200およびロボットハンド1000等から構成されている。本体部2100は、例えば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。アーム部2200は、本体部2100に対して可動に設けられており、本体部2100にはアーム部2200を回転させるための動力を発生させる図示しないアクチュエーターや、アクチュエーターを制御する制御部等が内蔵されている。
【0087】
アーム部2200は、第1フレーム2210、第2フレーム2220、第3フレーム2230、第4フレーム2240および第5フレーム2250から構成されている。第1フレーム2210は、回転屈折軸を介して、本体部2100に回転可能または屈折可能に接続されている。第2フレーム2220は、回転屈折軸を介して、第1フレーム2210および第3フレーム2230に接続されている。第3フレーム2230は、回転屈折軸を介して、第2フレーム2220および第4フレーム2240に接続されている。第4フレーム2240は、回転屈折軸を介して、第3フレーム2230および第5フレーム2250に接続されている。第5フレーム2250は、回転屈折軸を介して、第4フレーム2240に接続されている。アーム部2200は、制御部の制御によって、各フレーム2210〜2250が各回転屈折軸を中心に複合的に回転または屈折し動く。
【0088】
アーム部2200の第5フレーム2250のうち第4フレーム2240が設けられた他方には、ロボットハンド1000が取り付けられており、対象物を把持することができる。
ロボットハンド1000を用いることによって、汎用性が高く、複雑な電子機器の組み立て作業や検査等が可能なロボットを提供することができる。
【0089】
以上のように実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、モーター、ロボットハンドおよびロボットの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0090】
11,12…磁石、20…回転体、30…回転軸、40…回転子、51,52…第1ブラシ、53,54…第2ブラシ、61,62…基体、100…モーター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された基体と、
前記基体に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定され前記基体の対向領域内で回転可能に配置される円柱状の回転体と、
前記基体の対向する一方の面、または両方の面に固定され、前記回転体と前記基体との間に配置される、前記回転軸の中心に対して円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、
前記回転体は、前記磁石に対向する第1の面および第2の面のどちらか一方、または両方に、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、前記回転軸の中心に対して円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線と前記渦巻状導体配線との外周領域に形成される、前記駆動配線の端部と電気的に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線と電気的に接続された第2整流子と、を備え、
前記基体に固定され、前記第1整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第2ブラシと、を備え、
前記渦巻状導体配線と、前記駆動配線と、は平面視において重ならない、
ことを特徴とするモーター。
【請求項2】
前記駆動配線を複数備える前記回転体において、前記回転軸の軸方向平面視において、延伸方向が異なる前記駆動配線を1以上含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモーター。
【請求項3】
前記回転体は、2以上の基板を前記回転軸の軸方向に積層して形成され、
少なくとも1以上の前記基板に前記駆動配線が形成され、
および/または、前記基板の接合部の少なくとも1以上に、基板間渦巻状導体配線が配置され、前記渦巻状導体配線と前記基板間渦巻状導体配線とは、電気的に接続され、前記渦巻状導体配線および前記基板間渦巻状導体配線の配置面内に前記コアが配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモーター。
【請求項4】
前記駆動配線と、前記回転軸中心に円弧状に形成された前記駆動配線の両端を繋ぐ接続配線と、が渦巻状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載にモーター。
【請求項5】
前記コアは、前記回転体に設けた前記回転軸方向の凹部、または貫通孔に挿通、固定されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項6】
前記コアは、前記回転体の平面視において、前記渦巻状導体配線を覆う鍔部を備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のモーターを備えるロボットハンド。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットハンドを備えるロボット。
【請求項1】
対向配置された基体と、
前記基体に回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸の中心に直交し、前記回転軸に固定され前記基体の対向領域内で回転可能に配置される円柱状の回転体と、
前記基体の対向する一方の面、または両方の面に固定され、前記回転体と前記基体との間に配置される、前記回転軸の中心に対して円周方向にN極とS極とが交互に配置された磁石と、を備え、
前記回転体は、前記磁石に対向する第1の面および第2の面のどちらか一方、または両方に、前記回転軸の回転中心を通る放射状の直線に平行に延伸された1以上の駆動配線と、前記回転軸の中心に対して円周状に配置された複数の渦巻状導体配線と、前記渦巻状導体配線内に配置されたコアと、前記駆動配線と前記渦巻状導体配線との外周領域に形成される、前記駆動配線の端部と電気的に接続された第1整流子と、前記渦巻状導体配線と電気的に接続された第2整流子と、を備え、
前記基体に固定され、前記第1整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第1ブラシと、前記第2整流子に接触し、電力を供給する少なくとも1対の第2ブラシと、を備え、
前記渦巻状導体配線と、前記駆動配線と、は平面視において重ならない、
ことを特徴とするモーター。
【請求項2】
前記駆動配線を複数備える前記回転体において、前記回転軸の軸方向平面視において、延伸方向が異なる前記駆動配線を1以上含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のモーター。
【請求項3】
前記回転体は、2以上の基板を前記回転軸の軸方向に積層して形成され、
少なくとも1以上の前記基板に前記駆動配線が形成され、
および/または、前記基板の接合部の少なくとも1以上に、基板間渦巻状導体配線が配置され、前記渦巻状導体配線と前記基板間渦巻状導体配線とは、電気的に接続され、前記渦巻状導体配線および前記基板間渦巻状導体配線の配置面内に前記コアが配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のモーター。
【請求項4】
前記駆動配線と、前記回転軸中心に円弧状に形成された前記駆動配線の両端を繋ぐ接続配線と、が渦巻状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載にモーター。
【請求項5】
前記コアは、前記回転体に設けた前記回転軸方向の凹部、または貫通孔に挿通、固定されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項6】
前記コアは、前記回転体の平面視において、前記渦巻状導体配線を覆う鍔部を備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のモーター。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のモーターを備えるロボットハンド。
【請求項8】
請求項7に記載のロボットハンドを備えるロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−135076(P2012−135076A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282738(P2010−282738)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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