説明

モータ制御装置

【課題】モータの制御を行う専用LSIを有する制御回路からの不要輻射ノイズを抑制することができる安価で小型軽量のモータ制御装置を提供する。
【解決手段】各機能を消費電流量に基づいて複数に分割した機能ブロックAから機能ブロックDは、消費電流の平均化を図ったもので、予め動作時間を固定しておく。また、動作タイミングを検知してから機能ブロックAから機能ブロックDが順次起動するように、別々の起動遅延時間を設定しておき、各機能ブロックの重複動作を防止する(図2b)。各機能ブロックの動作が重複しないため、低い電流が一定期間流れ続ける構成となり、電流量のピークが平均化され(図2c)、不要輻射ノイズの発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御を行う専用LSIを有する制御回路が発生する不要輻射ノイズを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置は、モータの速度や位置を制御する制御回路と、交流を直流に電力変換する整流回路と、駆動モータに電流を供給する駆動回路で構成され、制御回路に搭載されているLSIが原因となり、配線パターンやLSI内部が発生源となって不要輻射ノイズが発生する。
【0003】
この不要輻射ノイズの対処方法として、ノイズの根元であるLSIの不要輻射ノイズを抑制するため、LSI自体にシールドを施し、且つこのシールドを積極的にGNDに接続するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、放射ノイズを効率よく低減するため、LSIの近傍に配設した第2のバイパスコンデンサと、第2のバイパスコンデンサに直列に接続され且つ各々の第1のバイパスコンデンサに流れる高周波充電電流を抑制する高周波チョークコイルと、第2のバイパスコンデンサと高周波チョークコイルからなる一組の直列回路と第1のバイパスコンデンサとを接続するパターン配線を備え、高周波充電電流による放射ノイズを低減する配線パターンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、従来のモータ制御装置においては、電気回路の配線パターンの引き回しや形状によって基板からのノイズを低減する、ノイズが発生する回路配線にコンデンサと抵抗とインダクタンス等からなるフィルタ回路を追加しノイズ元となる電気信号を削減し不要輻射ノイズを低減する、ノイズが発生するLSIの電源ピンとグランドピンの間にバイパスコンデンサを挿入、電源ラインにビーズ状のインダクタを挿入してノイズを低減する、など電気信号のノイズの発生部位に応じて、電気的な波形を整流することにより対策を実施している。
【0006】
さらに、モータ制御装置を金属ケースで覆う、ノイズ発生部位をフェライトや金属からなるノイズのシールド効果のあるEMC対策テープや金属小片を貼付するなどの電磁波を遮断することで外部に漏れる不要輻射ノイズを低減していた。
【特許文献1】特開平6−216480号公報
【特許文献1】特開2000−183471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、不要輻射ノイズが発生する各回路部品や基板の配線パターンにノイズ対策のためにコンデンサ、抵抗、インダクタンスやEMC対策テープを使用すると、モータ制御装置の大型化につながり、金属ケースでシールドすると、ケース分の重量が増加してしまう点である。
【0008】
追加部品を使用して不要輻射ノイズを低減する方法は、ノイズ発生源に対策を施していないため、ノイズレベルの抑制は可能であるが、根本的な対策にはならない。
【0009】
例えば、モータ制御装置の制御回路は、モータの制御が一定周期毎にモータへの駆動信号の出力や、他のICとのデータ受送信を行うため、特定周期で動作している。特にディ
ジタル制御の場合、LSIが不要輻射ノイズの発生源となり、LSIの動作クロックである特定周波数とその高次の周波数において不要輻射ノイズが発生する。
【0010】
このLSI内部あるいはLSIの出力信号から不要輻射ノイズが発生する場合、LSI内部の機能が一斉に動作することでLSIに入力される電源ピンからの電流が過渡的に増大し、LSI内部の配線やウエハ自体が電流過多になることで磁場を発生させ、これが基板の電源パターンや信号線に伝播し、不要輻射ノイズの発生源となっている。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、モータの制御を行う専用LSIを有する制御回路からの不要輻射ノイズを抑制することができる安価で小型軽量のモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に記載のモータ制御装置は、特定周期で動作してモータの制御を行う専用LSIを有する制御回路を備え、前記LSIは、制御機能を消費電流量に基づいて分割した機能ブロックを複数有し、前記機能ブロックを前記特定周期内で順番に起動させ、不要輻射ノイズを抑制する。
【0013】
また、請求項2に記載のモータ制御装置は、前記機能ブロックの動作時間を予め取り決めておき、各機能ブロックの起動遅延時間を前記特定周期のスタートから設定する。
【0014】
さらに、請求項3に記載のモータ制御装置は、前記起動遅延時間を固定して、各機能の同期性を確保する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のモータ制御装置によれば、LSIの各機能ブロックを消費電流に基づいて分割し、特定周期内で順番に起動させて消費電流を分散するので、追加部品を用いることなく不要輻射ノイズを抑制することができ、安価で小型のモータ制御装置を実現できる。
【0016】
また、請求項2に記載のモータ制御装置によれば、動作時間と起動遅延時間によって各機能ブロックの重複動作を防止することができる。
【0017】
さらに、請求項3に記載のモータ制御装置によれば、各機能ブロックの同期性を確保することができる。
【0018】
このように、不要輻射ノイズを抑制するための追加部品が必要なく、安価で小型軽量のモータ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
特定周期で動作しモータの制御を行う専用LSIを有する制御回路を備え、前記LSIは、LSIに搭載されている各機能を消費電流量に基づいて分割した機能ブロックを複数有し、前記機能ブロックを前記特定周期内で順番に起動させ、不要輻射ノイズを抑制する。以下、具体的な実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
本発明のモータの制御を行う専用LSIを有する制御回路を備えたモータ制御装置についつて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、モータ制御装置のブロック図である。図1において、モータ制御装置1は、制御部とパワー部で構成されている。制御部は、モータの制御を行う専用LSI21を有す
る制御回路2で構成され、パワー部は、交流電力を直流電力に変換する整流回路3とスイッチング素子を含む駆動回路4で構成されている。
【0021】
制御回路2は、モータの制御を行うLSI21と、モータの回転方向や回転速度などを演算し、各指令を生成するCPU22と、LSI21の動作タイミングを決定する水晶発振子23とで構成され、LSI21は、水晶発振子23のクロック周波数(特定周期)に合わせて間欠的に動作を行う。
【0022】
LSI21は、CPU22からの指令を基に、駆動回路3にPWM信号を送信する。スイッチング素子は、駆動回路4からの信号を基に整流回路3で直流に整流された電源をスイッチングすることによりモータ制御装置1に接続されたモータ5に電流を供給し、モータ5は回転する。モータ5は、回転速度などの情報を制御回路2にフィードバックし、LSI21とCPU22で監視することで、モータ5の回転を制御している。
【0023】
ここで、LSIの動作と輻射ノイズの関係について説明する。図2は、本発明のLSI21の動作タイミングと輻射ノイズを抑制する説明図、図3は、従来のLSIの動作タイミングと輻射ノイズの発生メカニズムの説明図である。
【0024】
図3において、上から(a)動作クロックの説明図、(b)機能ブロックの動作説明図、(c)消費電流の説明図、(d)輻射ノイズレベルの説明図、を同一時間軸上に図示したものである。
【0025】
水晶発振子23の発振周波数により動作クロックが決定され、LSIが動作クロックを検知から次の動作クロック検知までがLSIの動作区間となる(図3a参照)。
【0026】
各機能ブロックの動作では、動作クロックを検知後、動作区間内で処理が終了するように所定時間経過後に機能ブロックAから機能ブロックDが同時に起動し、LSI内のフリップフロップ回路が動作する(図3b参照)。フリップフロップの動作数は、各機能ブロックで使用しているフリップフロップ数の合計となる。
【0027】
上述したように、LSI内のフリップフロップが一斉に動作すると、LSIに入力される電流は突如増加する(図3c参照)。
【0028】
LSIに入力される電流が増加し、一定値を超えると、LSI内部の電源パターンやワイヤーボンディング線、ウエハの電磁的な許容値を超えて輻射ノイズが増大する(図3d参照)。また、過渡的にLSIで消費される電流が増加すると、電流は発振的になるため、ピークが数回繰り返される傾向があり、輻射ノイズもピークが数回繰り返される。この状況は、LSIの動作タイミング毎に発生するため、LSI動作タイミングの周波数とその高次の輻射ノイズが発生する。
【0029】
このため、従来は信号線にフィルタ回路を入れてノイズを遮断する、電源グランドに関してはバイパスコンデンサを入れて電源を安定させる、もしくはビースインダクタを追加しLSIから電源へノイズが伝播するのを抑制するなどの対策を行っていたが、いずれもノイズを減衰することは可能であるが、根本からノイズが出力されなくなる対策とはなり得なかった。
【0030】
次に、本発明の輻射ノイズ対策について説明する。図2において、上から(a)動作クロックの説明図、(b)機能ブロックの動作説明図、(c)消費電流の説明図、(d)輻射ノイズレベルの説明図、を同一時間軸上に図示したものである。
【0031】
本発明は、LSI21の各機能を消費電流量に基づいて複数の機能ブロックに分割した点に特徴がある。つまり、従来のLSIとは、図2(b)から図2(d)の構成および動作が異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0032】
LSI21は、制御機能を消費電流量に基づいてまとめ、複数の機能ブロックに分割したもので、実施の形態1では、機能ブロックAから機能ブロックDで構成される。例えば、PWMコントロール機能と出力電流検出機能をひとつにまとめた機能ブロックA、パルスカウント機能とシリアル通信機能をひとつにまとめた機能ブロックB、パルス出力機能とディジタルフィルタ機能をひとつにまとめた機能ブロックC、バスコントロール機能とウオッチドック機能をひとつにまとめた機能ブロックDであり、消費電流の平均化を図ったものである。
【0033】
機能ブロックAから機能ブロックDは、予め動作時間を固定しておく。また、動作タイミングを検知してから各機能ブロック(AからD)が順次起動するように、別々の起動遅延時間を設定する。起動遅延時間の設定には、各機能ブロックの起動準備と動作完了を考慮に入れておき、各機能ブロックの重複動作を防止している(図2b参照)。
【0034】
各機能ブロックの動作が重複しないため、LSI内部のフリップフロップ回路の同時起動数が削減され、同時に動作するフリップフロップ数は従来に比べて大幅に減少する。このように、従来の瞬時に最大電流を必要とする構成とは異なり、低い電流が一定期間流れ続ける構成となる(図2c参照)。
【0035】
LSI21では、電流量のピークが平均化され、不要輻射ノイズの発生レベルが抑制される(図2c参照)。また、特定周波数の高次で発生するノイズレベルも減少する。
【0036】
本発明は、従来の不要輻射ノイズの発生源であったLSIの内部構成を、制御機能を消費電流量に基づいて複数の機能ブロックに分割し、各機能ブロックが重複しないように起動遅延時間を設けて起動するように構成したものである。
【0037】
これにより、LSIの消費電流を平均化することができ、LSIから発生する不要輻射ノイズのレベルを抑制することができる。このため、従来のようにフィルタ回路などでLSI周辺にノイズ対策を追加する必要がなくなり、安価で小型のモータ制御装置が得られる。
【0038】
なお、モータ制御装置の制御回路を中心に述べたが、本発明のようにLSIの消費電流量を平均化し、重複しないように動作させれば、同様なLSIを搭載する回路にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、モータ制御装置に限らず、LSIを有する制御回路を搭載した機器の不要輻射ノイズ抑制に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のモータ制御装置のブロック回路図
【図2】(a)本発明の制御回路における動作クロックの説明図、(b)LSIにおける機能ブロックの動作説明図、(c)LSIにおける消費電流の説明図、(d)輻射ノイズレベルの説明図
【図3】(a)従来の制御回路における動作クロックの説明図、(b)LSIにおける機能ブロックの動作説明図、(c)LSIにおける消費電流の説明図、(d)輻射ノイズレベルの説明図
【符号の説明】
【0041】
1 モータ制御装置
2 制御回路
3 整流回路
4 駆動回路
5 モータ
21 LSI
22 CPU
23 水晶発振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定周期で動作してモータの制御を行う専用LSIを有する制御回路を備え、
前記LSIは、制御機能を消費電流量に基づいて分割した機能ブロックを複数有し、
前記機能ブロックを前記特定周期内で順番に起動させ、不要輻射ノイズを抑制することを特徴としたモータ制御装置。
【請求項2】
前記機能ブロックの動作時間を予め取り決めておき、
各機能ブロックの起動遅延時間を前記特定周期のスタートから設定する請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記起動遅延時間を固定して、各機能の同期性を確保する請求項2記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−63258(P2010−63258A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225530(P2008−225530)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】