説明

モータ制御装置

【課題】3相分のモータコイルの誘起電圧の検出信号を絶縁して制御部に出力する際に、絶縁素子(フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らす。
【解決手段】本発明のモータ制御装置10では、3相ブラシレスモータ1を惰性で回転させるフリーラン状態とし、高電圧系の回路(電圧比較回路21と波形合成回路22等)において、U、V、W相のモータコイルに発生する誘起電圧を各相ごとにそれぞれ検出(例えば、ゼロクロス点の発生タイミングを検出)し、この3相分の検出信号を低電圧系の制御回路(制御部30)に出力する際に、高電圧系の回路において、上記3相分の検出信号を基に、各相の検出信号に含まれるそれぞれの検出情報(例えば、ゼロクロス点の発生タイミングの情報)を含む1つの信号を合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、低電圧系の制御回路(制御部30)に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相交流モータのモータ制御装置に関し、特に、ロータ回転位置検出用の位置センサ(ホール素子等)を備え、フリーラン状態における各相のモータコイルの誘起電圧を検出して、位置センサから出力されるロータ回転位置の信号を補正する、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相交流モータの制御装置において、モータ駆動系(例えば、3相ブリッジ回路や、この3相ブリッジ回路のスイッチング素子を駆動するドライバー回路等)の電源が高電圧系(例えば、54V以上)であり、制御回路系(例えば、CPU等)の電源が低電圧系(例えば、24V以下)である場合は、モータの駆動系と制御回路系とを絶縁する必要がある。
【0003】
図7は、従来のモータ制御装置の構成を示す図である。この図に示すモータ制御装置10Aは、直流電源装置(バッテリ5)に繋がる高電圧系の回路として、3相ブリッジ回路11と電圧比較回路21とを有し、低電圧系の回路として、制御部(例えば、CPU)30を有し、また、高電圧系の回路と低電圧系の回路とを絶縁するための絶縁回路23Aを有している。
【0004】
この図7に示す回路において、3相のブラシレスモータ(単に「モータ」とも呼ぶ)1は、U,V,Wの各相コイル(鉄心に巻かれているコイル)を有するステータ2と、2極の永久磁石(1対のN、S極)からなるロータ(インナ・ロータ型のロータ)3とで構成されている。ステータ2には3相(U,V,W)のコイルが周方向に順番に巻装されている。また、ステータ2には、このステータ2の3相(U,V,W相)のコイルに対応して、ロータ3の回転位置を検出するための位置センサ(ホール素子等)4u、4v、4wが設けられている。
【0005】
モータ制御装置10内には、Nch型のFET(Field Effect Transistor)のスイッチング素子Q1〜Q6で構成される3相ブリッジ回路11が設けられている。この3相ブリッジ回路11において、上アーム側のスイッチング素子Q1,Q2,Q3のそれぞれのドレイン端子は、直流電源装置となるバッテリ5の+側端子(バッテリ(+))に共通に接続されている。また、下アーム側のスイッチング素子Q4、Q5、Q6のそれぞれのソース端子は、直流電源装置となるバッテリ5の−側端子(バッテリ(−))に共通に接続されている。また、バッテリ5の−側端子(バッテリ(−))は、高電圧系の回路グランドGに接続されている。すなわち、バッテリ5の−側端子(バッテリ(−))と、高電圧系の回路グランドGとは同電位になる。
【0006】
そして、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q4のドレイン端子と回路グランドG(バッテリ(−)と同電位)との間には、この間のU相電圧VUGを検出するための抵抗R11と抵抗R12の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続されており、この抵抗R11と抵抗R12の接続点は、コンパレータCP1の入力端子(+)に接続される。また、スイッチング素子Q4のドレインと回路グランドGとの間には、抵抗R41と抵抗R42の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続されており、この抵抗R41と抵抗R42の接続点は、コンパレータCP2の入力端子(−)に接続される。
【0007】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q5のドレイン端子と回路グランドGとの間には、この間のV相電圧VVGを検出するための抵抗R21と抵抗R22の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続されており、この抵抗R21と抵抗R22の接続点は、コンパレータCP2の入力端子(+)に接続される。また、スイッチング素子Q5のドレインと回路グランドGとの間には、抵抗R51と抵抗R52の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続されており、この抵抗R51と抵抗R52の接続点は、コンパレータCP3の入力端子(−)に接続される。
【0008】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q6のドレインと回路グランドGとの間には、この間のW相電圧VWGを検出するための抵抗R31と抵抗R32の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続されており、この抵抗R31と抵抗R32の接続点は、コンパレータCP3の入力端子(+)に接続される。また、スイッチング素子Q6のドレインと回路グランドGとの間には、抵抗R61と抵抗R62の抵抗直列回路が接続されており、この抵抗R61と抵抗R62の接続点は、コンパレータCP1の入力端子(−)に接続される。
【0009】
上記構成により、コンパレータCP1は、U相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)とW相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較し、コンパレータCP2は、V相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)とU相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較し、コンパレータCP3は、W相電圧VWG(W相コイル端−回路グランドG間電圧)とV相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較する。
【0010】
そして、コンパレータCP1の出力端子は、トランジスタTr1のベース端子に接続され、コンパレータCP1の出力信号(VUG>VWGの場合のH状態の出力信号)によりトランジスタTr1が駆動される(オンになる)。このトランジスタTr1が駆動されることにより、フォトカプラPC1が駆動され、このフォトカプラPC1によりU相の電圧センサ信号(L状態の信号)Suが生成され、このU相の電圧センサ信号(L状態の信号)Suが制御部30に出力される。
また、コンパレータCP2の出力端子は、トランジスタTr2のベース端子に接続され、コンパレータCP2の出力信号(VVG>VUGの場合のH状態の出力信号)によりこのトランジスタTr2が駆動される(オンになる)。このトランジスタTr2が駆動されることにより、フォトカプラPC2が駆動され、このフォトカプラPC2によりV相の電圧センサ信号(L状態の信号)Svが生成され、このV相の電圧センサ信号Svが制御部30に出力される。
【0011】
また、コンパレータCP3の出力端子は、トランジスタTr3のベース端子に接続され、コンパレータCP3の出力信号(VWG>VVGの場合のH状態の出力信号)によりこのトランジスタTr3が駆動される(オンになる)。このトランジスタTr3が駆動されることにより、フォトカプラPC3が駆動され、このフォトカプラPC3によりW相の電圧センサ信号(L状態の信号)Swが生成され、このW相の電圧センサ信号Swが制御部30に出力される。
【0012】
図8は、図7に示す回路をブロック化して示した図である。この図8において、電圧比較回路21は、図7に示す抵抗分圧回路(抵抗R11〜R62)と、コンパレータCP1,CP2,CP3とを含む回路の部分であり、U,V,W相のモータコイル電圧(コイル端子の回路グランドGに対する電圧)の大小関係を比較するための回路である。絶縁回路23Aは、コンパレータCP1,CP2,CP3から出力される信号を、フォトカプラPC1,PC2,PC3によりそれぞれ絶縁し、電圧センサ信号Su,Sv,Swを生成して制御部30に出力する回路である。
【0013】
また、図9は、図7に示す回路における各部の信号波形を示す図である。この図9は、横方向に時間tの経過をとり、縦方向に、モータのフリーラン状態におけるU,V,W相電圧(モータコイル端子−回路グランドG間電圧)VUG,VVG,VWGと、U,V,W相の電圧センサ信号(絶縁回路23Aの出力信号)Su,Sv,Swと、位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwとの、それぞれの波形を並べて示した図である。
そして、図9(A)に示すように、時刻t1において、W相電圧VWGとU相電圧VUGとが等しくなると、この時刻t1において、絶縁回路23Aから出力されるU相の電圧センサ信号SuがH状態からL状態に遷移する。同様にして、時刻t2において、絶縁回路23Aから出力されるV相の電圧センサ信号SvがH状態からL状態に遷移し、また時刻t3において、絶縁回路23Aから出力されるW相の電圧センサ信号SwがH状態からL状態に遷移する。
【0014】
一方、図9(C)に示すように、時刻tuにおいて、U相位置センサ4uによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、U相位置センサ4uの出力信号PuがH状態からL状態に遷移する。また、時刻tvにおいて、V相位置センサ4vによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、V相位置センサ4vの出力信号PvがH状態からL状態に遷移する。さらに、時刻twにおいて、W相位置センサ4wによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、W相位置センサ4wの出力信号PwがH状態からL状態に遷移する。
【0015】
そして、制御部30では、上記電圧センサ信号Su,Sv,SwがH状態からL状態に遷移する時刻t1,t2,t3と、位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,PwがH状態からL状態に遷移する時刻tu,tv,twとを取得し、この取得した時刻を基に、位置センサ4u,4v,4wから出力される信号が示すロータ位置(角度位置)を補正する。これにより、電圧センサ信号Su,Sv,Swを基にして、位置センサ4u,4v,4wから出力される信号Pu,Pv,Pwに対して角度補正処理を行うことができる。
【0016】
なお、関連するモータドライバ装置がある(特許文献1を参照)。この特許文献1に記載のモータドライバ装置は、ホール素子の設置位置を変更したりすることなく電気的に進角の調整を行うことができるモータドライバ装置を提供することを目的としている。この特許文献1に記載のモータドライバ装置では、モータのホール素子から出力される各ホール信号電圧を、基準Gmアンプ(固定ゲイン)と進み角Gmアンプ(可変ゲイン)で増幅する。そして、基準Gmアンプからは電流信号IA、IA’、IA’’が、進み角Gmアンプからは電流信号Ib、Ib’、Ib’’が出力される。波形合成回路は、IA〜IA’’とIb〜Ib’’のうち位相の異なるものどうしの差分電流を生成することで位相の進んだ三相電流信号を生成する。この三相電流信号の進角αは、進み角Gmアンプのゲインを変化させることで調整することができる。これにより、進み角Gmアンプ(可変ゲイン)におけるゲインを調整することにより、モータ駆動電流の進角を調整することができる。
【0017】
また、関連するコンバータ装置がある(特許文献2を参照)。この特許文献2に記載のコンバータ装置は、高調波規制に対応できる低コスト三相コンバータ装置を提供することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−089514号公報
【特許文献2】特開2011−055568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、図7示す回路においては、3相ブラシレスモータ1のフリーラン状態において、U,V,W相のモータコイルの誘起電圧から位置センサ4u,4v,4wに相当する信号(例えば、モータコイルの誘起電圧における磁極の切換りを示す信号)を検出し、この信号を電圧センサ信号Su,Sv,Swとして制御部30に出力している。この場合に、高電圧系の回路(電圧比較回路21等)と低電圧系の回路(制御部30)とを絶縁する必要があるため、絶縁回路23Aを使用し、コンパレータCP1,CP2,CP3から出力される信号を、フォトカプラPC1,PC2,PC3によりそれぞれ絶縁して、電圧センサ信号Su,Sv,Swを生成している。
このように、3相交流モータを駆動するモータ制御装置10Aにおいては、電圧センサ信号Su,Sv,Swを生成するために、絶縁回路23A内に、3個の絶縁素子(フォトカプラPC1,PC2,PC3)を設けることが必要になる。従って、この高価な絶縁素子の部品点数を減らし、コストの低減を図ることが望まれていた。
【0020】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高電圧系の回路において3相分のモータコイルの誘起電圧を検出し、この3相分の検出信号を絶縁して低電圧系の制御回路に出力する際に、絶縁素子の個数を3個から1個に減らすることができ、モータ制御装置の小型化、およびコスト低減を図ることができる、モータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のモータ制御装置は、直流電源装置から出力される直流電圧を3相交流電圧に変換して3相交流モータを駆動するモータ制御装置であって、前記3相交流モータの駆動回路を含む高電圧系の回路と、前記高電圧系の回路の動作を制御する低電圧系の制御回路とを有し、前記高電圧系の回路と前記低電圧系の制御回路とが絶縁されて構成されるモータ制御装置において、前記3相交流モータへの通電を停止しロータを惰性で回転させるフリーラン状態とし、前記高電圧系の回路において、各相のモータコイルに発生する誘起電圧を各相ごとにそれぞれ検出し、この誘起電圧の検出信号を前記低電圧系の制御回路に出力する際に、前記各相ごとに検出された3相分の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子を介して、前記低電圧系の制御回路に出力することを特徴とする。
【0022】
また、本発明のモータ制御装置は、前記3相交流モータのフリーラン状態において、U,V,Wの各相のモータコイル端子と前記直流電源装置の負極側との間に発生する電圧を検出して比較することにより、U,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングを検出し、この所定位相点の発生タイミングの検出信号を各相ごとにそれぞれ生成する電圧比較回路と、前記電圧比較回路により生成されたU,V,Wの3相分の検出信号を基に、各相の検出信号に含まれるそれぞれの所定位相点の発生タイミングの情報を内包する1つの信号を合成する波形合成回路と、前記波形合成回路により合成された1つの信号を、1つの絶縁素子を介して絶縁し、前記制御回路に電圧センサ信号として出力する絶縁回路と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のモータ制御装置は、前記直流電源装置の負極側が前記高電圧系の回路の回路グランドと接続され、前記電圧比較回路は、前記U相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記W相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第1のコンパレータと、前記V相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記U相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第2のコンパレータと、前記W相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記V相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第3のコンパレータと、を備え、前記波形合成回路は、前記第1のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第1の微分回路と、前記第2のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第2の微分回路と、前記第3のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第3の微分回路と、前記第1、第2および第3の微分回路の出力信号を合成して1つの信号を生成する信号合成回路と、を備え、前記絶縁回路は、前記波形合成回路により合成された1つの信号を絶縁して、前記制御回路に電圧センサ信号として出力する1つの絶縁素子を、備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のモータ制御装置は、前記第1の微分回路は、第1のコンデンサと第1の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第1のコンデンサは一端が第1のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第1の抵抗の一端に接続され、該第1の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、前記第2の微分回路は、第2のコンデンサと第2の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第2のコンデンサは一端が第2のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第2の抵抗の一端に接続され、該第2の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、前記第3の微分回路は、第3のコンデンサと第3の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第3のコンデンサは一端が第3のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第3の抵抗の一端に接続され、該第3の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、また、前記第1のコンデンサと第1の抵抗との接続点が第1のダイオードのアノード側に接続され、前記第2のコンデンサと第2の抵抗との接続点が第2のダイオードのアノード側に接続され、前記第3のコンデンサと第3の抵抗との接続点が第3のダイオードのアノード側に接続され、前記第1のダイオードのカソード側と、前記第2のダイオードのカソード側と、前記第3のダイオードのカソード側とが共通に接続されて、構成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のモータ制御装置は、前記3相交流モータのロータの回転位置をU,V,W相の各相モータコイルに対応して配置された位置センサにより検出し、この位置センサにより検出したロータの回転位置を基にして前記モータコイルへの通電を制御するモータ制御装置であって、前記3相交流モータへの通電を停止しロータを惰性で回転させるフリーラン状態において、前記各位置センサから出力される信号のH状態とL状態との間における遷移タイミングと、前記電圧センサ信号に含まれるU,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングとを比較することにより、前記各位置センサから出力される信号が示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行うことを特徴とする。
【0026】
また、本発明のモータ制御装置は、前記3相交流モータのフリーラン状態において、前記3相交流モータのU相モータコイルの誘起電圧と、V相モータコイルの誘起電圧と、W相モータコイルの誘起電圧とにおける所定位相点の発生タイミングを検出してバッファ部に記録するとともに、前記U相モータコイルに対応する位置に配置されるU相位置センサの出力信号と、V相モータコイルに対応する位置に配置されるV相位置センサの出力信号と、W相モータコイルに対応する位置に配置されるW相位置センサの出力信号とにおいて、これらの出力信号がH状態とL状態との間で遷移するタイミングを検出してバッファ部に記録するキャプチャ部と、前記バッファ部に記録されたU、V、W相のモータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングの情報と、U、V、W相の位置センサにおける出力信号がH状態とL状態との間で遷移するタイミングの情報とを基に、前記U、V、W相の位置センサの出力信号が示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行う角度補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明のモータ制御装置においては、3相交流モータをフリーラン状態とし、高電圧系の回路内において3相分のモータコイルの誘起電圧を検出し、この3相分の検出信号を絶縁して低電圧系の制御回路に出力する際に、上記3相分の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子を介して、低電圧系の制御回路に出力する。
これにより、高電圧系の回路により3相分のモータコイルの誘起電圧を検出し、この検出信号を絶縁して低電圧系の制御回路に出力する際に、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができる。このため、モータ制御装置の小型化と、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係わるモータ制御装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す回路をブロック化して示した図である。
【図3】制御部に入力される電圧センサ信号の波形を示す図である。
【図4】位置センサに対する角度補正制御について説明するための図である。
【図5】U相位置センサに対する角度補正処理について説明するための図である。
【図6】位置センサの角度補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】従来のモータ制御装置の構成を示す図である。
【図8】図7に示す回路をブロック化して示した図である。
【図9】図7に示す回路における各部の信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
3相交流モータの制御装置において、モータ駆動系(例えば、3相ブリッジ回路や、この3相ブリッジ回路のスイッチング素子を駆動するドライバー回路等)の電源が高電圧系(例えば、54V以上)であり、制御回路系(例えば、CPU等)の電源が低電圧系(例えば、24V以下)である場合、モータの駆動系と制御回路系とを絶縁する必要がある。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係わるモータ制御装置の構成を示す図であり、本発明に直接関係する部分のみを示したものである。この図1に示すモータ制御装置10は、3相交流モータとして3相ブラシレスモータを使用する場合の例である。このモータ制御装置10は、3相ブラシレスモータ1が惰性で回転するフリーラン状態におおいて、モータコイル誘起電圧から位置センサ(ホール素子等のロータ回転位置検出用の位置センサ)に相当する信号を検出する。なお、「モータコイルの誘起電圧から検出される位置センサに相当する信号」を「電圧センサ信号」とも呼ぶことがある。
【0032】
そして、この電圧センサ信号により、位置センサ(ホール素子等)から出力される信号が示すロータ回転位置を補正する。すなわち、位置センサの取り付け位置は、製品ごとにバラツキが発生するため、3相ブラシレスモータ1のフリーラン回転時におけるモータコイル誘起電圧から位置センサに相当する電圧センサ信号を検出し、この電圧センサ信号により、位置センサから出力されるロータ回転位置を示す出力信号(ロータ位置の信号)を補正する。すなわち、位置センサの設置位置を変更することなく、位置センサの出力信号に対して電気的に進角または遅角の調整を行う。
【0033】
(モータ制御装置の構成の説明)
この図1に示すモータ制御装置10において、3相ブラシレスモータ(単に「モータ」とも呼ぶ)1は、例えば、図示しない内燃機関(エンジン)のスタータモータとなるモータである。この3相ブラシレスモータ1は、U,V,Wの各相コイル(鉄心に巻かれているコイル)を有するステータ2と、2極の永久磁石(1対のN、S極)からなるロータ(インナ・ロータ型のロータ)3とで構成されている。ステータ2には3相(U,V,W)のコイルが周方向に順番に巻装されている。また、ステータ2には、このステータ2の3相(U,V,W相)のコイルに対応する位置に、ロータ3の回転位置を検出するためのホール素子(位置センサ)4u、4v、4wが設けられている。
【0034】
なお、この図1に示す例において、ロータ3については、2極の永久磁石(1対のN、S極)からなる例を示しているが、このロータ3は多極で構成される場合がある。例えば、ロータ3が、4極の永久磁石(2対のN、S極)から構成される場合がある。また、3相ブラシレスモータ1は、インナ・ロータ型のモータの例を示しているが、この3相ブラシレスモータ1は、アウタ・ロータ型のモータであってもよい。
また、ロータ3の回転位置を検出する位置センサ(ホール素子等)4u、4v、4wの取り付け位置については、図1に示す例では、U,V,Wの各相モータコイルに対応する位置(モータ周回方向においてほぼ同じ位置)に配置する例を示しているが、これに限定されない。例えば、所望の場合には、モータコイル間(周回方向において隣り合うモータコイルの中間位置)に位置センサを配置することも可能である(この場合には、モータコイルと位置センサの取付け位置の差(周回方向における取付け位置の角度差)を予め考慮してモータ制御を行うことが必要になる)。
【0035】
モータ制御装置10内には、Nch型のFET(Field Effect TrAnsistor)のスイッチング素子Q1〜Q6で構成される3相ブリッジ回路11が設けられている。この3相ブリッジ回路11において、上アーム側のスイッチング素子Q1、Q2、Q3のそれぞれのドレイン端子は、直流電源装置となるバッテリ5の+側端子(バッテリ(+))に共通に接続されている。また、下アーム側のスイッチング素子Q4、Q5、Q6のそれぞれのソース端子は、直流電源装置となるバッテリ5の−側端子(バッテリ(−))に共通に接続されている。なお、バッテリ5の−側端子(バッテリ(−))は、高電圧系の回路の回路グランドGに接続されている。すなわち、バッテリ5の−側端子(バッテリ(−))と回路グランドGとは同電位になる。
【0036】
そして、上アーム側のスイッチング素子Q1のソース端子と、下アーム側のスイッチング素子Q4のドレイン端子とが接続され、このスイッチング素子Q1とQ4の接続点が、3相ブラシレスモータ1のU相コイル端子に接続されている。また、上アーム側のスイッチング素子Q2のソース端子と、下アーム側のスイッチング素子Q5のドレイン端子とが接続され、このスイッチング素子Q2とQ5の接続点が、3相ブラシレスモータ1のV相コイル端子に接続されている。
【0037】
また、上アーム側のスイッチング素子Q3のソース端子と、下アーム側のスイッチング素子Q6のドレイン端子とが接続され、このスイッチング素子Q3とQ6の接続点が、3相ブラシレスモータ1のW相コイル端子に接続されている。なお、スイッチング素子Q1〜Q6のそれぞれには、フライホイールダイオードDxが、図に示すようにカソードがバッテリ5の+側端子方向に、アノードがバッテリ5の−側端子方向となるように並列に接続されている。なお、スイッチング素子Q1〜Q6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、または、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0038】
そして、このモータ制御装置10では、バッテリ5に繋がる高電圧系の回路として、電圧比較回路21と、波形合成回路22とを有している。また、低電圧系の回路として制御部30を有し、高電圧系の回路と低電圧系の回路を絶縁するための絶縁回路23を有している。
【0039】
この高電圧系の回路(より正確には電圧比較回路21)において、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q4のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R11と抵抗R12の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R11の一端がスイッチング素子Q4のドレイン端子に接続され、抵抗R11の他端が抵抗R12の一端に接続され、抵抗R12の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R11と抵抗R12の接続点は、コンパレータCP1の入力端子(+)に接続される。
【0040】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q4のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R41と抵抗R42の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R41の一端がスイッチング素子Q4のドレイン端子に接続され、抵抗R41の他端が抵抗R42の一端に接続され、抵抗R42の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R41と抵抗R42の接続点は、コンパレータCP2の入力端子(−)に接続される。
【0041】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q5のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R21と抵抗R22の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R21の一端がスイッチング素子Q5のドレイン端子に接続され、抵抗R21の他端が抵抗R22の一端に接続され、抵抗R22の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R21と抵抗R22の接続点は、コンパレータCP2の入力端子(+)に接続される。
【0042】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q5のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R51と抵抗R52の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R51の一端がスイッチング素子Q5のドレイン端子に接続され、抵抗R51の他端が抵抗R52の一端に接続され、抵抗R52の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R51と抵抗R52の接続点は、コンパレータCP3の入力端子(−)に接続される。
【0043】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q6のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R31と抵抗R32の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R31の一端がスイッチング素子Q6のドレイン端子に接続され、抵抗R31の他端が抵抗R32の一端に接続され、抵抗R32の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R31と抵抗R32の接続点は、コンパレータCP3の入力端子(+)に接続される。
【0044】
また、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q6のドレイン端子と回路グランドGとの間には、抵抗R61と抵抗R62の抵抗直列回路(抵抗分圧回路)が接続され、この抵抗直列回路において、抵抗R61の一端がスイッチング素子Q6のドレイン端子に接続され、抵抗R61の他端が抵抗R62の一端に接続され、抵抗R62の他端が回路グランドGに接続される。また、抵抗R61と抵抗R62の接続点は、コンパレータCP1の入力端子(−)に接続される。
【0045】
上記構成により、コンパレータCP1は、U相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)とW相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較し、コンパレータCP2は、V相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)とU相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較し、コンパレータCP3は、W相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)とV相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)との大小関係を比較する。
【0046】
そして、コンパレータCP1の出力端子は、「U相電圧VUG<V相電圧VWG」の場合はL状態であり、「U相電圧VUG>V相電圧VWG」の場合にH状態となる。また、コンパレータCP2の出力端子は、「V相電圧VVG<U相電圧VUG」の場合はL状態であり、「V相電圧VVG>U相電圧VUG」の場合にH状態となる。また、コンパレータCP3の出力端子は、「W相電圧VWG<V相電圧VVG」の場合はL状態であり、「W相電圧VWG>V相電圧VVG」の場合にH状態となる。
【0047】
そして、コンパレータCP1,CP2,CP3の出力端子は、それぞれ、波形合成回路22内のコンデンサC1,C2,C3に接続される。すなわち、コンパレータCP1の出力端子は、抵抗R101を介して回路電源(電圧Vcc)にプルアップされ、また、コンパレータCP1の出力端子は、コンデンサC1の一端に接続される。そして、コンデンサC1の他端は抵抗R102の一端に接続されるとともに、ダイオードD1のアノード側に接続される。抵抗R102の他端は回路グランドGに接続される。なお、上記回路電源(Vcc)と、以下に示す回路電源(Vdd)は、バッテリ5から生成される電源であり、高電圧系の回路で使用される電源である。
【0048】
また、コンパレータCP2の出力端子は、抵抗R201を介して回路電源(電圧Vcc)にプルアップされ、また、コンパレータCP2の出力端子は、コンデンサC2の一端に接続される。そして、コンデンサC2の他端は抵抗R202の一端に接続されるとともに、ダイオードD2のアノード側に接続される。抵抗R202の他端は回路グランドGに接続される。
【0049】
コンパレータCP3の出力端子は、抵抗R301を介して回路電源(電圧Vcc)にプルアップされ、また、コンパレータCP3の出力端子は、コンデンサC3の一端に接続される。そして、コンデンサC3の他端は抵抗R302の一端に接続されるとともに、ダイオードD3のアノード側に接続される。抵抗R302の他端は回路グランドGに接続される。
【0050】
そして、ダイオードD1、ダイオードD2、およびダイオードD3のそれぞれのカソード側は、ノードN1において共通接続され、このノードN1において、コンデンサC1,C2,C3から出力される信号(H状態の信号)がワイヤードオアされて合成される。そして、このノードN1は、抵抗R401を介してNch型のMOSFETで構成されるトランジスタTr11のゲート端子に接続され、このトランジスタTr11のゲート端子とソース端子間には抵抗R402が接続される。
【0051】
また、トランジスタTr11のドレイン端子にはフォトカプラPC1内の発光ダイオードPDのカソード側が接続され、発光ダイオードPDのアノード側は、抵抗R71を介して、回路電源(電圧Vdd)に接続される。また、フォトカプラPC1内のフォトトランジスタPtrのエミッタ端子は低電圧系のグランドEに接続され、フォトトランジスタPtrのコレクタ端子は、抵抗R72を介して回路電源(電圧+5V)に接続されるとともに、このフォトトランジスタPtrのコレクタ端子から出力される信号が、電圧センサ信号Scとして制御部30に出力される。なお、このフォトトランジスタPtrのエミッタ端子が接続されるグランドEは、低電圧系の回路(制御部30等)の電源(例えば、+5V)の回路グランドである。
【0052】
図2は、図1に示す回路をブロック化して示した図である。この図2において、電圧比較回路21は、図1において、抵抗分圧回路(例えば、抵抗R11〜R62)とコンパレータCP1,CP2,CP3とを含む回路であり、U,V,W相の電圧VUG,VVG,VWG(回路グランドGに対する電圧)の大小関係を比較する。そして、前述したように、コンパレータCP1の出力端子は、「U相電圧VUG<V相電圧VWG」の場合はL状態であり、「U相電圧VUG>V相電圧VWG」の場合にH状態となる。また、コンパレータCP2の出力端子は、「V相電圧VVG<U相電圧VUG」の場合はL状態であり、「V相電圧VVG>U相電圧VUG」の場合にH状態となる。また、コンパレータCP3の出力端子は、「W相電圧VWG<V相電圧VVG」の場合はL状態であり、「W相電圧VWG>V相電圧VVG」の場合にH状態となる。
【0053】
なお、コンパレータCP1,CP2,CP3の出力信号が、L状態からH状態、またはH状態からL状態に遷移する信号は、U、V,W相のモータコイルの誘起電圧(モータコイル端子−中性点間電圧)のゼロクロス点のタイミングで発生する信号であり、磁極の切換り点により発生する信号である。このため、この信号を位置センサに相当する信号として使用できるものである。
【0054】
波形合成回路22は、図1において、コンデンサC1,C2,C3と抵抗R102,R202,R203とで構成される微分回路と、ダイオードD1,D2,D3とを含む回路である。この波形合成回路22では、コンパレータCP1,CP2,CP3から出力されるそれぞれの信号(L状態からH状態に遷移する信号)を、コンデンサC1,C2,C3により微分信号(正パルス信号)に変換し、この微分信号(正パルス信号)を、ダイオードD1,D2,D3を通してワイヤードオア回路により合成する。
【0055】
また、絶縁回路23は、トランジスタTr11と、フォトカプラPC1とを含む回路である。この絶縁回路23では、波形合成回路22から出力される合成された信号(正パルス信号)によトランジスタTr11を駆動し(オンにし)、このトランジスタTr11に繋がるフォトカプラPC1を駆動することにより、このフォトカプラPC1を介して絶縁された電圧センサ信号(負パルス信号)Scを出力する。
【0056】
なお、図2に示すように、制御部30は、マイクロコンピュータやマイクロコントローラなど、CPU(Central Processing Unit)を含む回路であり、この制御部30には、位置センサ角度補正部31が設けられ、この位置センサ角度補正部31には、キャプチャ部32と、バッファ部33と、角度補正処理部34とが含まれる。また、キャプチャ部32には、取得(キャプチャ)した信号の時間間隔を計数(カウント)するカウント部32Aが含まれる。
【0057】
キャプチャ部32は、後述するように電圧センサ信号ScがH状態からL状態へ遷移するタイミング(時刻)を検出(取得)してバッファ部33に記録する。また、キャプチャ部32は、U相モータコイルに対応する位置に配置されるU相位置センサ4uの出力信号Puと、V相モータコイルに対応する位置に配置されるV相位置センサ4vの出力信号Pvと、W相モータコイルに対応する位置に配置されるW相位置センサ4wの出力信号Pwとにおいて、これらの出力信号Pu,Pv,PwがH状態とL状態との間で遷移するタイミングを検出してバッファ部33に記録する。
【0058】
なお、上述したように制御部30内にはマイクロコンピュータ(又はマイクロコントローラ)が搭載されており、位置センサ角度補正部31や、キャプチャ部32や、角度補正処理部34や、その他の回路について、ソフトウェアプログラムを実行することにより、その処理機能を実現することができるものについては、ソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。勿論、ハードウェアにより構成するようにしてもよい。
【0059】
また、上記CPUには、入出力ポートや、時間を計測するためのタイマやカウンタが内蔵されている(所望の場合は、A/D、D/A変換器も内蔵される)。また、このCPUは、ハードウェア割込(およびソフトウェア割込機能)を備えており、例えば、このハードウェア割込機能を使用することにより、電圧センサ信号Scの信号(例えば、信号がH状態からL状態に遷移する遷移する場合の立下りエッシのタイミング)の取り込み、位置センサ4u,4v,4wの出力信号(信号が遷移する場合のタイミング)の取り込みをハードウェア割込みにより行うことができる。
【0060】
このハードウェア割込機能を使用する場合に、電圧センサ信号用のハードウェア割込端子と、U相位置センサ4u用のハードウェア割込端子と、V相位置センサ4v用のハードウェア割込端子と、W相位置センサ4u用のハードウェア割込端子とを用意する。そして、例えば、電圧センサ信号Scの信号の立下りエッジをハードウェア割込端子により検出することにより割り込み処理(割込み処理プログラム)を作動させ、キャプチャ部32により、この電圧センサ信号Scの立下りエッジの発生タイミング(時刻)を検出して、この発生タイミング(時刻)の情報をバッファ部33に記録する。
【0061】
位置センサ4u,4v,4wの出力信号を検出する場合も同様であり、位置センサ4u,4v,4wの出力信号が遷移(H状態からL状態へ遷移、または、L状態からH状態に遷移)した場合に、この信号の遷移をハードウェア割込端子により検出することにより割り込み処理(割込み処理プログラム)を作動させ、キャプチャ部32により、位置センサ4u,4v,4wの信号レベルの遷移のタイミング(時刻)を検出して、この発生タイミング(時刻)の情報をバッファ部33に記録する。
【0062】
(電圧センサ信号の波形の例)
また、図3は、制御部30に入力される電圧センサ信号Scの波形を示す図であり、ロータ3がステータ2に対して「U相コイル→V相コイル→W相コイル」の方向(図1に示す3相ブラシレスモータ1において反時計方向)に回転する場合の例である。この図3においては、横方向に時間tの経過をとり、縦方向に、モータコイルに誘起される相電圧(モータコイル端子−回路グランドG間電圧)VUG,VVG,VWGの波形と、電圧センサ信号Sc(フォトカプラPC1から出力される信号)の波形とを並べて示している。
【0063】
なお、図(A)に示す相電圧VUG,VVG,VWGは、モータ制御装置10において、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q1〜Q6を一括オフし、3相ブラシレスモータ1をフリーラン状態にした場合のモータコイル端子電圧(コイル端子−回路グランドG間電圧)の波形である。本実施形態のモータ制御装置10では、3相ブラシレスモータ1を一定回転まで加速した後に、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子Q1〜Q6を一括オフさせて、3相ブラシレスモータ1をフリーラン状態にした後に、U、V、W相のモータコイルに誘起される相電圧VUG,VVG,VWGを検出する。
【0064】
そして、図3(A)に示すように、時刻t1において、W相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)とU相電圧VVG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t1において、コンパレータCP1の出力信号がL状態からH状態に遷移し、この信号が波形合成回路(微分回路)23を通して絶縁回路23に伝達され、絶縁回路23から電圧センサ信号a(電圧センサ信号ScにおいてL状態になるパルス信号)が出力される。
【0065】
この電圧センサ信号aは、U相モータコイルの誘起電圧(U相モータコイル端子−中性点間電圧)のゼロクロス点のタイミングで発生する信号であり、このゼロクロス点は、U相モータコイルの誘起電圧が、モータコイルの中性点の電位に対して負(−)側から正(+)側に移行する際に発生するゼロクロス点である。すなわち、この電圧センサ信号aの発生するタイミングにおいて、U相モータコイル上でロータ3の磁極の切り替わりが発生するものである。これにより、U相モータコイルによりロータ位置の検出が行えることになり、この電圧センサ信号aにより、U相の位置センサ4uの出力信号Puが示すロータ位置(ロータ回転位置)に対して補正を行うことができる。
【0066】
また、時刻t2において、U相電圧VUG(U相コイル端子電圧−回路グランドG)とV相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t2において、絶縁回路23から電圧センサ信号bが出力される。
この電圧センサ信号bは、V相モータコイルの誘起電圧(V相モータコイル端子−中性点間電圧)のゼロクロス点のタイミングで発生する信号であり、このゼロクロス点は、V相モータコイルの誘起電圧が、モータコイルの中性点の電位に対して負(−)側から正(+)側に移行する際に発生するゼロクロス点である。すなわち、この電圧センサ信号bの発生するタイミングにおいて、V相モータコイル上でロータ3の磁極の切り替わりが発生するものである。これにより、V相モータコイルによりロータ位置の検出が行えることになり、この電圧センサ信号bにより、V相の位置センサ4vの出力信号が示すロータ位置(ロータ回転位置)に対して補正を行うことができる。
【0067】
また、時刻t3において、V相電圧(V相コイル端子電圧−回路グランドG)とW相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t3において、絶縁回路23から電圧センサ信号cが出力される。
この電圧センサ信号cは、W相モータコイルの誘起電圧(W相モータコイル端子−中性点間電圧)のゼロクロス点のタイミングで発生する信号であり、このゼロクロス点は、W相モータコイルの誘起電圧が、モータコイルの中性点の電位に対して負(−)側から正(+)側に移行する際に発生するゼロクロス点である。すなわち、この電圧センサ信号cの発生するタイミングにおいて、W相モータコイル上でロータ3の磁極の切り替わりが発生するものである。これにより、W相モータコイルによりロータ位置の検出が行えることになり、この電圧センサ信号cにより、W相の位置センサ4wの出力信号が示すロータ位置(ロータ回転位置)に対して補正を行うことができる。
【0068】
(位置センサに対する角度補正制御についての説明)
次に、本実施形態のモータ制御装置10における位置センサ4u,4v,4wに対する角度補正制御について説明する。図4は、位置センサ4u,4v,4wに対する角度補正制御について説明するための図であり、図1に示す回路における各部の信号波形を並べて示した図である。なお、図4に示す例は、ロータ3がステータ2に対して「U相コイル→V相コイル→W相コイル」の方向(図1に示す3相ブラシレスモータ1において反時計方向)に回転する例である。
【0069】
この図4においては、横方向に時間tの経過を取り、縦方向に、モータフリーラン時におけるU,V,W各相の相電圧VUG,VVG,VWG(コイル端子−回路グランドG間電圧)の波形と、電圧センサ信号Sc(フォトカプラPC1から出力される位置センサ補正信号)の波形と、U,V,W各相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwと、キャプチャカウント値(期間T1〜T10等におけるカウント値)と、バッファ部33に格納されるデータのイメージとを、並べて示した図である。
【0070】
そして、図(A)に示す波形は、U,V,W各相の相電圧VUG,VVG,VWG(コイル端子−回路グランドG間電圧)の波形を示している。また、図(B)に示す電圧センサ信号Scと、図(c)に示す位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwは、制御部30に入力される信号の波形を示し、図(D)および図(E)は、制御部30において行われる処理のイメージを示している。
【0071】
この図4において、図(A)に示すように、時刻t1において、W相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)と、U相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t1において、図(B)に示すように、絶縁回路23から電圧センサ信号(L状態のパルス信号)aが出力される。この電圧センサ信号aは、制御部30に向けて出力される。制御部30では、この電圧センサ信号aの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻t1を取得(キャプチャ)する。なお、この時刻t1の取得は、制御部30に設けた位置センサ角度補正部31内のキャプチャ部32により行われる(以下に示す時刻t2,t3を取得する場合においても同様である)。
【0072】
また、時刻t2において、U相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)と、V相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t2において、図(B)に示すように、絶縁回路23から電圧センサ信号(L状態のパルス信号)bが出力される。この電圧センサ信号bは、制御部30に向けて出力される。制御部30では、この電圧センサ信号bの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻t2を取得(キャプチャ)する。
【0073】
また、時刻t3において、V相電圧VVG(V相コイル端子−回路グランドG間電圧)と、W相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t3において、図(B)に示すように、絶縁回路23から電圧センサ信号(L状態のパルス信号)cが出力される。この電圧センサ信号cは、制御部30に向けて出力される。制御部30では、この電圧センサ信号cの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻t3を取得する。
【0074】
また、時刻t4において、U相電圧VUG(U相コイル端子−回路グランドG間電圧)と、W相電圧VWG(W相コイル端子−回路グランドG間電圧)とが等しくなると、この時刻t4において、図(B)に示すように、絶縁回路23から電圧センサ信号(L状態のパルス信号)dが出力される。この電圧センサ信号dは、制御部30に向けて出力される。制御部30では、この電圧センサ信号dの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻t4を取得する。
【0075】
一方、図(C)に示す位置センサの信号については、時刻tv0において、V相位置センサ4vによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、V相位置センサ4uの出力信号PuがH状態からL状態に遷移する。このV相位置センサ4uの出力信号Puは、制御部30に入力され、制御部30では、V相位置センサ4uの出力信号Puの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tv0を取得する。なお、キャプチャ部32では、時刻tv0の取得するととともに、この取得した時刻tv0をバッファ部33へ記録する(以下に示す時刻tu1,tw0,tv1,tu0,tw1,tv0’を取得する場合においても同様である)。
【0076】
また、時刻tu1において、U相位置センサ4uによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、U相位置センサ4uの出力信号PuがL状態からH状態に遷移する。このU相位置センサ4uの出力信号Puは、制御部30に入力され、制御部30では、U相位置センサ4uの出力信号Puの立上りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tu1を取得する。
【0077】
また、時刻tw0において、W相位置センサ4wによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、W相位置センサ4wの出力信号PwがH状態からL状態に遷移する。このW相位置センサ4wの出力信号Pwは、制御部30に入力され、制御部30では、W相位置センサ4wの出力信号Pwの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tw0を取得する。
【0078】
また、時刻tv1において、V相位置センサ4vによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、V相位置センサ4vの出力信号PvがL状態からH状態に遷移する。このV相位置センサ4vの出力信号Pvは、制御部30に入力され、制御部30ではV相位置センサ4vの出力信号Pvの立上りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tv1を取得する。
【0079】
また、時刻tu0において、U相位置センサ4uによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、U相位置センサ4uの出力信号PuがH状態からL状態に遷移する。このU相位置センサ4uの出力信号Puは、制御部30に入力され、制御部30では、U相位置センサ4uの出力信号Puの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tu0を取得する。
【0080】
また、時刻tw1において、W相位置センサ4wによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、W相位置センサ4wの出力信号PwがL状態からH状態に遷移する。このW相位置センサ4wの出力信号Pwは、制御部30に入力され、制御部30では、W相位置センサ4wの出力信号Pwの立上りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tw1を取得する。
【0081】
また、時刻tv0’において、V相位置センサ4vによりロータ3の磁極位置の切り替わりが検出され、V相位置センサ4vの出力信号PvがH状態からL状態に遷移する。このV相位置センサ4vの出力信号Pvは、制御部30に入力され、制御部30では、V相位置センサ4vの出力信号Pvの立下りエッジにより割り込み処理を作動させ、キャプチャ部32によりこの時刻tv0’を取得する。
【0082】
そして、制御部30では、上記取得(キャプチャ)した時刻をもとに、各期間(例えば、図(D)に示す期間T1〜T10)の長さ(継続時間)をカウントする。この時間のカウントは、上記時刻を取得(キャプチャ)するごとに行われ、新たな時刻を取得すると、この新たに取得した時刻と前回取得した時刻との間の期間をカウントする。なお、各期間(例えば、期間T1〜T10)の時間のカウントは、キャプチャ部32内のカウント部32Aにおいて行われる。そして、この期間T1〜T10のカウント値(キャプチャカウント値)は、期間(計数時間)の長さを底辺とし、カウント値を頂点とした場合に、図(D)に示すように、相似な三角波形のイメージで示すことができる。
【0083】
そして、図(E)の楕円で囲む部分に示すように、V相位置センサ4vの出力信号PvがH状態からL状態に遷移する時刻tv0(V相Low時刻)と、U相位置センサ4uの出力信号PuがL状態からH状態に遷移する時刻tu1(U相High時刻)と、電圧センサ信号aがL状態に立下がる時刻t1(角度補正に使用する補正時刻)とが、制御部(CPU)30に取り込まれる。そして、制御部30内の位置センサ角度補正部31では、上記時刻tv0(V相Low時刻)と、時刻tu1(U相High時刻)と、時刻t1(角度補正に使用する補正時刻)とを基に、U相位置センサ4uに対する角度補正処理を行う。
【0084】
(U相位置センサの角度補正処理についての説明)
図5は、U相位置センサ4uに対する角度補正処理について説明するための図である。なお、以下の説明においては、「U相位置センサ4uの出力信号Pu」を「U相位置センサ信号Pu」と呼び、「V相位置センサ4vの出力信号Pv」を「V相位置センサ信号Pv」と呼び、「W相位置センサ4Wの出力信号Pw」を「W相位置センサ信号Pw」と呼ぶことがある。
【0085】
そして、この図5に示す例は、図4(E)において、バッファ部33に記憶された時刻tv0(V相位置センサ信号PvのL状態遷移時刻)と、時刻tu1(U相位置センサ信号PuのH状態遷移時刻)と、時刻t1(電圧センサ信号Scの立下り時刻(補正時刻))とを基に、U相位置センサ4uに対する角度補正処理部を行う例である。なお、図5に示す角度補正処理は、制御部30内に設けた位置センサ角度補正部31内の角度補正処理部34で行われるものである。
【0086】
この図5に示すように、U相の位置センサ4uの出力信号の角度を補正する場合は、期待値としての「V相位置センサ信号PvのL状態遷移」の後の信号取得(キャプチャ)の順番は、「V相位置センサ信号PvのL状態遷移」→「U相位置センサ信号PuのH状態遷移」の順番、または、「V相位置センサ信号PvのL状態遷移」→「電圧センサ信号aの発生(電圧センサ信号ScにおいてL状態となる信号aの発生)」の順番となることから、これを検出して補正時間を抽出することができる。
【0087】
すなわち、U相位置センサ4uは、U相のモータコイルとほぼ同じ位置(モータ周回方向において同じ位置)に配置されていることから(図1の3相ブラシレスモータ1を参照)、ロータ3がステータ2に対して「U相コイル→V相コイル→W相コイル」の方向に回転する場合は、「V相位置センサ信号PvのL状態遷移」の次には、「U相位置センサ信号PuのH状態遷移」または「電圧センサ信号aの発生」が期待される。
【0088】
この場合において、電圧センサ信号Scは1つの信号であり、制御部30では、電圧センサ信号Scにおいて発生したL状態の電圧センサ信号aがU、V、W相のいずれのモータコイルに相当する信号であるかを区別することができないが、上述のようにU相位置センサ4uは、U相のモータコイルとほぼ同じ位置に配置されていることから、「V相位置センサ信号PvのL状態遷移」の次には、「U相位置センサ信号PuのH状態遷移」または「電圧センサ信号aの発生」が期待できるものである。
【0089】
そして、図5(A)は、以下に示すように補正角度を「進角」として算出する例を示し、図5(B)は、補正角度を「遅角」として算出する例を示している。
最初に、図5(A)に示す、補正角度を「進角」として算出する例について説明する。なお、図5(A)に示す波形は、図4に示す波形(時刻tv0〜時刻t1間における電圧センサ信号Sc、U相位置センサ信号Pu、およびV相位置センサ信号Pvの波形)と同じである。
【0090】
図5(A)において、時刻tv0は、V相位置センサ信号Pvが、H状態からL状態に遷移するタイミングであり、補正開始タイミング(U相位置センサ4uの角度補正処理を開始するタイミング)を示している。そして、時刻t1は、電圧センサ信号aがH状態からL状態に遷移するタイミングを示している。また、時刻tu1は、U相の位置センサ信号Puが、L状態からH状態に遷移するタイミングを示している。
【0091】
この図5(A)に示す例では、補正開始タイミング(tv1)からU相位置センサ信号PuのH状態遷移タイミング(tu1)までの期間T1が、補正開始タイミング(tv1)から電圧センサ信号aのL状態遷移タイミング(t1)までの期間T2よりも短い例である(T1−T2>0)。この例では、V相位置センサ信号PvがH状態からL状態に遷移する角度を0°とし、U相位置センサ信号PuがL状態からH状態に遷移する角度を60°とした場合に、その補正角度は、「60°×(T1−T2)/T1」となり、この補正角度の分だけU相位置センサ4uの位置(出力信号Puが示すロータ3の回転位置)が遅れているので、図上において、U相位置センサ4uの位置(出力信号Puが示すロータ3の回転位置)を上記補正角度の分だけ進めるように補正する。これにより、位置センサ4uの設置位置を変更することなく電気的に進角の調整を行うことができる。
【0092】
また、図5(B)において、時刻tv0は、V相位置センサ信号PvがH状態からL状態に遷移するタイミングであり、補正開始タイミング(U相位置センサ4uの角度補正処理を開始するタイミング)を示している。そして、時刻tu1は、U相位置センサ信号PuがL状態からH状態に遷移するタイミングを示し、時刻t1は、電圧センサ信号aがH状態からL状態に遷移するタイミングを示している。
【0093】
この図5(B)に示す例では、補正開始タイミング(tv0)からU相位置センサ信号PuのH状態遷移タイミング(tu1)までの期間T1が、補正開始タイミング(tv0)から電圧センサ信号aのL状態遷移タイミング(t1)までの期間T2よりも短い例である(T1−T2<0)。この例では、V相位置センサ信号PvがL状態に遷移する角度を0°とし、U相位置センサ信号PuがH状態に遷移する角度を60°とした場合に、その補正角度は、「60°×(T2−T1)/T1」となり、この補正角度の分だけU相位置センサ4uの位置(出力信号Puが示すロータ3の回転位置)が進んでいるので、図上において、U相位置センサ4uの位置(出力信号Puが示すロータ3の回転位置)を上記補正角度の分だけ遅らせるように補正する。これにより、位置センサ4uの設置位置を変更することなく電気的に遅角の調整を行うことができる。
【0094】
また、V相の位置センサ4vの角度を補正する場合は、期待値としての「W相位置センサ信号PwのL状態遷移」の後の信号の取得(キャプチャ)の順番が、「W相位置センサ信号PwのL状態遷移」→「V相位置センサ信号PvのH状態遷移」の順番、または、「W相位置センサ信号PwのL状態遷移」→「電圧センサ信号bのL状態遷移」の順番となることから、これを検出して補正時間を抽出することができる。
【0095】
同様にして、W相の位置センサ4wの角度を補正する場合は、期待値としての「U相位置センサ信号PuのL状態遷移」の後の信号の取得(キャプチャ)の順番が、「U相位置センサ信号PuのL状態遷移」→「W相位置センサ信号PwのH状態遷移」の順番、または、「U相位置センサ信号PuのL状態遷移」→「電圧センサ信号cのL状態遷移」の順番となることから、これを検出して補正時間を抽出することができる。
【0096】
なお、上記図5に示す場合において、「補正角度」が60°を超える場合は、角度補正制御が不可能となる。これは、補正角度が60°を超える場合は、他相の論理領域と重なるためである。例えば、U相補正が遅角70°、V相補正が進角70°の場合には、制御が不能になるので、制御部30では、その旨の情報(例えば、エラー情報)を出力する。
【0097】
また、図6は、上述した位置センサの角度補正処理の流れをフローチャートで示したものであり、図6(A)は、図7に示す従来の回路における位置センサの出力信号に対する角度補正処理の流れを示し、図6(B)は、本実施形態における位置センサの出力信号に対する角度補正処理の流れを示している。
【0098】
まず、図6(A)を参照して、従来回路における位置センサの角度補正処理について説明する。この図6(A)では、図7および図8の従来の回路に示すように、U,V,W相の各相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwが制御部30に入力される。また、電圧センサ信号ついてもU,V,W相の各相の電圧センサ信号Su,Sv,Swが個別に、制御部30に入力される。
【0099】
そして、図6(A)に示すフローチャートにおいて、最初に、制御部30は、3相ブラシレスモータ1のモータ回転数が一定回転数以上であるか否かを判定する(ステップS101)。これは、モータ回転数が所定の回転数以上でなければ、このモータをフリーランにした場合においてモータコイルに一定以上の電圧が誘起されず、位置センサの角度補正処理を行うために必要な電圧センサ信号Su,Sv,Swを検出できないためである。このため、モータ回転数が一定回転数以下の場合は(ステップS101:No)、角度補正処理を終了する。
【0100】
一方、モータ回転数が一定回転数以上の場合は(ステップS101:Yes)は、ステップS102に移行し、3相ブリッジ回路11のスイッチング素子(FET)Q1〜Q6を一括オフにし、モータをフリーラン状態にする(ステップS102)。
【0101】
その後、制御部30内のキャプチャ部32では、モータ回転に応じて、U,V,W相の位置センサ4u,4v,4wから入力される信号Pu,Pv,Pwの信号レベルが遷移(H状態からL状態およびL状態からH状態に遷移)する時刻(タイミング)を検出してバッファ部33に記録する(ステップS103)。また、制御部30内のキャプチャ部32では、モータ回転に応じて、U,V,Wの各相の電圧センサ信号Su,Sv,SwのレベルがH状態からL状態に遷移する時刻をバッファ部33に記録する(ステップS104)。
【0102】
そして、制御部30では、バッファ部33に記録された時刻、すなわち、U,V,W相の位置センサ4u,4v,4wから入力される信号Pu,Pv,Pwの信号レベルが遷移(H状態からL状態およびL状態からH状態に遷移)する時刻と、U,V,Wの各相の電圧センサ信号Su,Sv,Swの信号レベルがH状態からL状態に遷移する時刻とを基に、U,V,W相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwに対する補正角度を算出する(ステップS105)。これにより、U,V,W相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwに対して角度補正を行うことができる。
【0103】
次に、図6(B)を参照して、本実施形態における位置センサの角度補正処理について説明する。この図6(B)では、図1および図2の回路に示すように、制御部30には、U,V,Wの各相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwが制御部30に入力されるが、電圧センサ信号については、波形合成回路22により合成され絶縁回路23から出力される1つの電圧センサ信号Scのみが入力される。
【0104】
そして、図6(B)に示すフローチャートにおいて、最初に、制御部30は、モータ回転数が一定回転数以上であるか否かを判定する(ステップS201)。そして、モータ回転数が一定回転数以下の場合は(ステップS201:No)、電圧センサ信号Scを生成できないため、角度補正処理を終了する。
【0105】
一方、モータ回転数が一定回転数以上の場合は(ステップS201:Yes)は、ステップS202に移行し、3相ブリッジ回路のスイッチング素子(FET)Q1〜Q6を一括オフにし、モータをフリーラン状態にする(ステップS202)。
【0106】
その後、制御部30内のキャプチャ部32では、モータ回転に応じて、U,V,Wの各相の位置センサ4u,4v,4wから入力される信号Pu,Pv,Pwの信号レベルが遷移(H状態からL状態およびL状態からH状態に遷移)する時刻(タイミング)をバッファ部33に記録する(ステップS203)。また、制御部30内のキャプチャ部32では、波形合成回路22において合成され絶縁回路23を通して入力される電圧センサ信号ScのレベルがH状態からL状態に遷移する時刻をバッファ部33に記録する(ステップS204)。
【0107】
そして、制御部30では、電圧センサ信号Scから、図4(B)に示すように、U相電圧センサ信号aの位置(時間軸上での電圧センサ信号aの発生位置)を特定し(ステップS205)、また、V相電圧センサ信号bの位置(時間軸上での電圧センサ信号bの発生位置)を特定し(ステップS206)、さらに、W相電圧センサ信号cの位置(時間軸上での電圧センサ信号cの発生位置)を特定する(ステップS207)。
【0108】
その後、制御部30内の角度補正処理部34では、図5に示したように、V相位置センサ信号PvがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)と、U相位置センサ信号PuがH状態に遷移する位置(時間軸上での位置)と、U相電圧センサ信号aの信号レベルがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)とをバッファ部33から読み出し、これらを基に、U相位置センサ4uの出力信号Puに対する補正角度を算出する(ステップS208)。
【0109】
また、制御部30内の角度補正処理部34では、W相位置センサ信号Pwの信号レベルがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)と、V相位置センサ信号PvがH状態に遷移する位置(時間軸上での位置)と、V相電圧センサ信号bの信号レベルがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)とをバッファ部33から読み出し、これらを基に、V相位置センサ4vの出力信号Pvに対する補正角度を算出する(ステップS208)。
【0110】
また、制御部30内の角度補正処理部34では、U相位置センサ信号PuがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)と、W相位置センサ信号PwがH状態遷移する位置(時間軸上での位置)と、W相電圧センサ信号cの信号レベルがL状態に遷移する位置(時間軸上での位置)とをバッファ部33から読み出し、これらを基に、W相位置センサ4wの出力信号Pwに対する補正角度を算出する(ステップS208)。
【0111】
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置10においては、高電圧系の回路(電圧比較回路21と波形合成回路22等)において、3相分のモータコイルの誘起電圧の検出信号(例えば、モータコイルの誘起電圧のゼロクロス点の信号)を生成するとともに、この3相分の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(例えば、フォトカプラ)を介して、電圧センサ信号Scとして低電圧系の制御部30に出力する。
これにより、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らことができる。このため、モータ制御装置10の小型化と、コストの低減を図ることができる。
また、制御部30では、1個の絶縁素子(例えば、フォトカプラPC1)から出力される1つの電圧センサ信号Scを基にして、各相の位置センサ4u,4v,4wから出力される信号Pu,Pv,Pwが示すロータ角度位置に対して角度補正を行うことができる
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで、本発明と上記実施形態との対応関係について補足して説明する。
すなわち、上記実施形態において、本発明における3相交流モータは、図1に示す3相ブラシレスモータ1が対応し、本発明における直流電源装置は、バッテリ5が対応し、本発明におけるモータ制御装置は、モータ制御装置10が対応する。また、本発明における高電圧系の回路は、図1に示す、電圧比較回路21と波形合成回路22等が対応する。また、本発明における低電圧系の制御回路は、制御部30が対応する。また、本発明における絶縁素子は、フォトカプラPC1が対応し、本発明における絶縁回路は、絶縁回路23が対応する。
【0113】
(1)そして、上記実施形態において、本発明のモータ制御装置10は、直流電源装置(バッテリ5)から出力される直流電圧を3相交流電圧に変換して3相ブラシレスモータ1を駆動するモータ制御装置10であって、3相ブラシレスモータ1の駆動回路を含む高電圧系の回路(電圧比較回路21と波形合成回路22等)と、高電圧系の回路の動作を制御する低電圧系の制御部30とを有し、高電圧系の回路と低電圧系の制御部30とが絶縁されて構成されるモータ制御装置10において、3相ブラシレスモータ1への通電を停止しロータ3を惰性で回転させるフリーラン状態とし、高電圧系の回路において、各相のモータコイルに発生する誘起電圧を各相ごとにそれぞれ検出し、この誘起電圧の検出信号を低電圧系の制御部30に出力する際に、各相ごとに検出された3相分の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、低電圧系の制御部30に出力する。
【0114】
このような構成のモータ制御装置10では、高電圧系の回路(電圧比較回路21と波形合成回路22等)において、3相分のモータコイルの誘起電圧の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、低電圧系の制御部30に出力する。
これにより、絶縁素子(フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができる。このため、モータ制御装置10の小型化と、コストの低減を図ることができる。
【0115】
(2)また、上記実施形態において、モータ制御装置10は、3相ブラシレスモータ1のフリーラン状態において、U,V,Wの各相のモータコイル端子と直流電源装置(バッテリ5)の負極側(バッテリ(−))との間に発生する電圧を検出して比較することにより、U,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングを検出し、この所定位相点の発生タイミングの検出信号を各相ごとにそれぞれ生成する電圧比較回路21と、電圧比較回路21により生成されたU,V,Wの3相分の検出信号を基に、各相の検出信号に含まれるそれぞれの所定位相点の発生タイミングの情報を内包する1つの信号を合成する波形合成回路22と、波形合成回路22により合成された1つの信号を、1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して絶縁し、制御部30に電圧センサ信号Scとして出力する絶縁回路23と、を備える。
【0116】
このような構成のモータ制御装置10では、3相ブラシレスモータ1のフリーラン状態において、電圧比較回路21は、U、V、W相のモータコイル端子と直流電源装置(バッテリ5)の負極側(バッテリ(−))との間に発生する電圧VUG,VVG,VWG(コイル端子−バッテリ(−)間電圧)を比較することにより、U,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点(例えば、コイル誘起電圧におけるゼロクロス点)の発生タイミングの検出信号をそれぞれの相ごとに生成する。そして、波形合成回路22は、電圧比較回路21により生成された3相分の検出信号を基に、各相の検出信号に含まれるそれぞれの所定位相点の発生タイミングの情報を内包する1つの信号を合成する。そして、絶縁回路23は、波形合成回路22により合成された1つの信号を、1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して絶縁し、制御部30に電圧センサ信号Scとして出力する。
これにより、3相分のモータコイルの誘起電圧VUG,VVG,VWGの検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、電圧センサ信号Scとして制御部30に出力できる。このため、絶縁素子(フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができ、モータ制御装置10の小型化と、コストの低減を図ることができる。
【0117】
(3)また、上記実施形態において、モータ制御装置10は、直流電源装置(バッテリ5)の負極側(バッテリ(−))が高電圧系の回路の回路グランドGと接続され、電圧比較回路21は、U相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VUGと、W相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VWGと、を比較する第1のコンパレータCP1と、V相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VVGと、U相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VUGと、を比較する第2のコンパレータCP2と、W相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VWGと、V相モータコイル端子と回路グランドGとの間に発生する電圧VVGと、を比較する第3のコンパレータCP3と、を備え、波形合成回路22は、第1のコンパレータCP1の出力信号の微分信号を生成して出力する第1の微分回路(コンデンサC1と抵抗R102)と、第2のコンパレータCP2の出力信号の微分信号を生成して出力する第2の微分回路(コンデンサC2と抵抗R202)と、第3のコンパレータCP3の出力信号の微分信号を生成して出力する第3の微分回路(コンデンサC3と抵抗R302)と、第1、第2および第3の微分回路の出力信号を合成して1つの信号を生成する波形合成回路(ダイオードD1とダイオードD2とダイオードD3により構成されるワイヤードオア回路等)22と、を備え、絶縁回路23は、波形合成回路22により合成された1つの信号を絶縁して、制御部30に電圧センサ信号Scとして出力する1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を、備える。
これにより、3相分のモータコイルの誘起電圧VUG,VVG,VWGの検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、電圧センサ信号Scとして制御部30に出力できる。このため、絶縁素子(フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができ、モータ制御装置10の小型化と、コストの低減を図ることができる。
【0118】
(4)また、上記実施形態において、モータ制御装置10では、第1の微分回路は、第1のコンデンサC1と第1の抵抗R102とで構成されるCR微分回路で構成され、第1のコンデンサC1は一端が第1のコンパレータCP1の出力端子に接続され、他端が第1の抵抗R102の一端に接続され、第1の抵抗R102の他端は回路グランドGに接続され、第2の微分回路は、第2のコンデンサC2と第2の抵抗R202とで構成されるCR微分回路で構成され、第2のコンデンサC2は一端が第2のコンパレータCP2の出力端子に接続され、他端が第2の抵抗R202の一端に接続され、該第2の抵抗R202の他端は回路グランドGに接続され、第3の微分回路は、第3のコンデンサC3と第3の抵抗R302とで構成されるCR微分回路で構成され、第3のコンデンサC3は一端が第3のコンパレータCP3の出力端子に接続され、他端が第3の抵抗R302の一端に接続され、該第3の抵抗R302の他端は回路グランドGに接続され、また、第1のコンデンサC1と第1の抵抗R102との接続点が第1のダイオードD1のアノード側に接続され、第2のコンデンサC2と第2の抵抗R202との接続点が第2のダイオードD2のアノード側に接続され、第3のコンデンサC3と第3の抵抗R302との接続点が第3のダイオードD3のアノード側に接続され、第1のダイオードD1のカソード側と、第2のダイオードD2のカソード側と、第3のダイオードD3のカソード側とが共通に接続されて、構成される。
これにより、各相モータコイルの誘起電圧の検出信号を制御部30に出力する際に、簡易な方法により、U,V,Wの各相の検出信号(3相分の検出信号)から1つの信号を合成することができる。このため、3相分の検出信号を合成した信号を1つの絶縁素子(フォトカプラPC1)を介して、低電圧系の制御部30に出力することができる。
【0119】
(5)また、上記実施形態において、モータ制御装置10は、3相ブラシレスモータ1のロータ3の回転位置をU,V,W相の各相モータコイルに対応して配置された位置センサ4u,4v,4wにより検出し、この位置センサ4u,4v,4wにより検出したロータ3の回転位置を基にしてモータコイルへの通電を制御するモータ制御装置10であって、3相ブラシレスモータ1への通電を停止しロータ3を惰性で回転させるフリーランの状態において、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号のH状態とL状態との間における遷移タイミングと、電圧センサ信号Scに含まれるU,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングとを比較することにより、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号が示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行う。
【0120】
このような構成のモータ制御装置10では、3相ブラシレスモータ1への通電を停止しロータ3を惰性で回転させるフリーランの状態において、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号のH状態とL状態との間における遷移タイミングと、電圧センサ信号Scに含まれるU,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミング(例えば、コイル誘起電圧のゼロクロス点の発生タイミング)とを比較することにより、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号Pu,Pv,Pwが示すロータ角度位置に対して角度補正を行う。
これにより、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができる効果に加えて、1個の絶縁素子(例えば、フォトカプラPC1)から出力される電圧センサ信号Scにより、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号Pu,Pv,Pwが示すロータ角度位置に対して角度補正を行うことができる。すなわち、位置センサ4u,4v,4wの設置位置を変更することなく、位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwに対して電気的に角度の補正を行うことができる。
【0121】
(6)また、上記実施形態において、モータ制御装置10は、3相ブラシレスモータ1のフリーラン状態において、3相ブラシレスモータ1のU相モータコイルの誘起電圧と、V相モータコイルの誘起電圧と、W相モータコイルの誘起電圧とにおける所定位相点の発生タイミングを検出してバッファ部33に記録するとともに、U相モータコイルに対応する位置に配置されるU相位置センサ4uの出力信号Puと、V相モータコイルに対応する位置に配置されるV相位置センサ4vの出力信号Pvと、W相モータコイルに対応する位置に配置されるW相位置センサ4wの出力信号Pwとにおいて、これらの出力信号がH状態とL状態との間で遷移するタイミングを検出してバッファ部33に記録するキャプチャ部32と、バッファ部33に記録されたU、V、W相のモータコイルの誘起電圧における所定位相点(例えば、コイル誘起電圧におけるゼロクロス点)の発生タイミングの情報と、U、V、W相の位置センサ4u,4v,4wにおける出力信号Pu,Pv,PwがH状態とL状態との間で遷移するタイミングの情報とを基に、U、V、W相の位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwが示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行う角度補正処理部34と、を備える。
【0122】
これにより、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)の個数を3個から1個に減らすことができる効果に加えて、1個の絶縁素子(例えば、フォトカプラPC1)から出力される電圧センサ信号Scにより、各位置センサ4u,4v,4wから出力される信号Pu,Pv,Pwが示すロータ角度位置に対して角度補正を行うことができる。すなわち、位置センサ4u,4v,4wの設置位置を変更することなく、位置センサ4u,4v,4wの出力信号Pu,Pv,Pwに対して電気的に角度の補正を行うことができる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のモータ制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0124】
例えば、上記実施形態では、3相交流モータとして3相ブラシレスモータを例にとり説明したが、これに限定されず、3相交流モータとしては、例えば、ロータ位置検出用の位置センサ(ホール素子等)を備える3相誘導モータであってもよい。3相誘導モータにおいても、一定回転数まで加速した後にフリーラン状態に移行した直後には、モータ内部の残留磁束によりモータコイルに電圧が誘起されるので、これを検出して位置センサの角度補正を行うことができる。
【0125】
また、上記実施形態では、各相のモータコイル端子と回路グランドG間に発生する電圧VUG,VVG,VWGを検出する例を示しているが、モータコイルに中性点の端子が設けられている場合には、各相のモータコイル端子と中性点間に発生する誘起電圧を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…3相ブラシレスモータ
2…ステータ
3…ロータ
4u,4v,4w…位置センサ
5…バッテリ
10…モータ制御装置
11…3相ブリッジ回路
21…電圧比較回路
22…波形合成回路
23…絶縁回路
30…制御部
31…位置センサ角度補正部
32…キャプチャ部
32A…カウント部
33…バッファ部
34…角度補正処理部
C1,C2,C3…コンデンサ
CP1,CP2,CP3…コンパレータ
D1,D2,D3…ダイオード
PC1,PC2,PC3…フォトカプラ
Q1〜Q6…スイッチング素子
Sc…電圧センサ信号
Pu,Pv,Pw…位置センサの出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置から出力される直流電圧を3相交流電圧に変換して3相交流モータを駆動するモータ制御装置であって、前記3相交流モータの駆動回路を含む高電圧系の回路と、前記高電圧系の回路の動作を制御する低電圧系の制御回路とを有し、前記高電圧系の回路と前記低電圧系の制御回路とが絶縁されて構成されるモータ制御装置において、
前記3相交流モータへの通電を停止しロータを惰性で回転させるフリーラン状態とし、前記高電圧系の回路において、各相のモータコイルに発生する誘起電圧を各相ごとにそれぞれ検出し、この誘起電圧の検出信号を前記低電圧系の制御回路に出力する際に、
前記各相ごとに検出された3相分の検出信号を1つの信号に合成し、この合成された信号を1つの絶縁素子を介して、前記低電圧系の制御回路に出力する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記3相交流モータのフリーラン状態において、U,V,Wの各相のモータコイル端子と前記直流電源装置の負極側との間に発生する電圧を検出して比較することにより、U,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングを検出し、この所定位相点の発生タイミングの検出信号を各相ごとにそれぞれ生成する電圧比較回路と、
前記電圧比較回路により生成されたU,V,Wの3相分の検出信号を基に、各相の検出信号に含まれるそれぞれの所定位相点の発生タイミングの情報を内包する1つの信号を合成する波形合成回路と、
前記波形合成回路により合成された1つの信号を、1つの絶縁素子を介して絶縁し、前記制御回路に電圧センサ信号として出力する絶縁回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記直流電源装置の負極側が前記高電圧系の回路の回路グランドと接続され、
前記電圧比較回路は、
前記U相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記W相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第1のコンパレータと、
前記V相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記U相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第2のコンパレータと、
前記W相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、前記V相モータコイル端子と前記回路グランドとの間に発生する電圧と、を比較する第3のコンパレータと、
を備え、
前記波形合成回路は、
前記第1のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第1の微分回路と、
前記第2のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第2の微分回路と、
前記第3のコンパレータの出力信号の微分信号を生成して出力する第3の微分回路と、
前記第1、第2および第3の微分回路の出力信号を合成して1つの信号を生成する信号合成回路と、
を備え、
前記絶縁回路は、
前記波形合成回路により合成された1つの信号を絶縁して、前記制御回路に電圧センサ信号として出力する1つの絶縁素子を、
備えることを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第1の微分回路は、第1のコンデンサと第1の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第1のコンデンサは一端が第1のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第1の抵抗の一端に接続され、該第1の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、
前記第2の微分回路は、第2のコンデンサと第2の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第2のコンデンサは一端が第2のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第2の抵抗の一端に接続され、該第2の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、
前記第3の微分回路は、第3のコンデンサと第3の抵抗とで構成されるCR微分回路で構成され、前記第3のコンデンサは一端が第3のコンパレータの出力端子に接続され、他端が前記第3の抵抗の一端に接続され、該第3の抵抗の他端は前記回路グランドに接続され、
また、前記第1のコンデンサと第1の抵抗との接続点が第1のダイオードのアノード側に接続され、
前記第2のコンデンサと第2の抵抗との接続点が第2のダイオードのアノード側に接続され、
前記第3のコンデンサと第3の抵抗との接続点が第3のダイオードのアノード側に接続され、
前記第1のダイオードのカソード側と、前記第2のダイオードのカソード側と、前記第3のダイオードのカソード側とが共通に接続されて、
構成されることを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記3相交流モータのロータの回転位置をU,V,W相の各相モータコイルに対応して配置された位置センサにより検出し、この位置センサにより検出したロータの回転位置を基にして前記モータコイルへの通電を制御するモータ制御装置であって、
前記3相交流モータへの通電を停止しロータを惰性で回転させるフリーラン状態において、
前記各位置センサから出力される信号のH状態とL状態との間における遷移タイミングと、前記電圧センサ信号に含まれるU,V,Wの各相モータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングとを比較することにより、前記各位置センサから出力される信号が示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行う
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記3相交流モータのフリーラン状態において、
前記3相交流モータのU相モータコイルの誘起電圧と、V相モータコイルの誘起電圧と、W相モータコイルの誘起電圧とにおける所定位相点の発生タイミングを検出してバッファ部に記録するとともに、
前記U相モータコイルに対応する位置に配置されるU相位置センサの出力信号と、V相モータコイルに対応する位置に配置されるV相位置センサの出力信号と、W相モータコイルに対応する位置に配置されるW相位置センサの出力信号とにおいて、これらの出力信号がH状態とL状態との間で遷移するタイミングを検出してバッファ部に記録するキャプチャ部と、
前記バッファ部に記録されたU、V、W相のモータコイルの誘起電圧における所定位相点の発生タイミングの情報と、U、V、W相の位置センサにおける出力信号がH状態とL状態との間で遷移するタイミングの情報とを基に、前記U、V、W相の位置センサの出力信号が示すロータ角度位置に対して角度補正処理を行う角度補正処理部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85352(P2013−85352A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222851(P2011−222851)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】