説明

モータ安全弁

【課題】従来のモータ安全弁では弁体を吸着して開弁するので、閉弁する際に電磁石への通電を停止せずに、モータを逆転させて弁体を弁口に近づければ流量を絞ることができる。ただし、実際には火力をある程度絞ることは可能であっても、最小燃焼状態ではガスの流量が非常に少ないので、弁口と弁体との距離が少しでも変動すると流量が大きく変化し、最小燃焼状態を安定して保持することは非常に難しい。
【解決手段】オリフィス部61が設けられた絞り部材6を弁体5の先端に設けると共に、弁口13より下流側に第2弁口14を設け、弁体5が弁口13を閉弁する前の状態で絞り部材6が第2弁口14に着座し、絞り部材6のオリフィス部61を通してガスをガス通路12に供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナの最小燃焼状態に相当する流量に絞ることのできる絞り手段を備えたモータ安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ安全弁は、ガスの通路となる弁口を開閉する弁体を備えており、この弁体をバネで常時閉弁方向に付勢している。また、モータにより進退する電磁石を設け、この電磁石で弁体に連なるアーマチュアを吸着し、弁体をバネの付勢力に抗して移動させることにより弁口を開弁するように構成されている。そして、例えばバーナが失火した場合には電磁石への通電を停止し、アーマチュアに対する吸着力を消滅させる。すると、弁体はバネの付勢力で直ちに弁口を閉弁し、バーナへのガスの供給が遮断される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなモータ安全弁は弁口を開閉するために用いられるため、バーナの火力を変えるにためには、さらに下流に火力調節用の制御弁を設ける必要がある。例えばバーナの火力を強弱2段階に切り替える場合には、モータ安全弁の下流に開閉式の電磁弁と、この電磁弁をバイパスする通路とを設けると共に、バイパス通路にオリフィスを設けたものがある。このものでは電磁弁を開弁すればバーナは強火になり、電磁弁を閉弁するとオリフィスのみを通ってガスが供給されるので弱火になる。
【0004】
また、火力を連続して変更する場合には、モータで進退するロッドの先端に弁体を取り付け、弁口と弁体との距離を連続して変更することにより火力を調節する火力調節弁が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−278321号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−232462号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記モータ安全弁では弁体を吸着して開弁するので、閉弁する際に電磁石への通電を停止せずに、モータを逆転させて弁体を弁口に近づければ流量を絞ることができる。ただし、実際には火力をある程度絞ることは可能であっても、バーナの最小燃焼状態まで絞ることは非常に難しい。すなわち、最小燃焼状態ではガスの流量が非常に少ないので、弁口と弁体との距離が少しでも変動すると流量が大きく変化し、最小燃焼状態を安定して保持することができないからである。
【0006】
なお、弁体の形状を上記特許文献2のように先端が尖ったテーパ状にすれば流量の安定性は増すが、最小燃焼自体を安定して保持するには至らない。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、流量を最小燃焼状態に相当する流量に安定して絞ることのできるモータ安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるモータ安全弁は、バーナへガスを供給するガス通路に介設され、閉弁方向に常時付勢されている弁体でガス通路に連なる弁口を閉弁すると共に、磁極がモータによって進退する電磁石を設けて、この磁極で弁体を吸着し、付勢力に抗して弁口から離すことにより弁口を開弁するモータ安全弁において、弁体が開弁状態で、ガス通路に流れるガス量をガスバーナの最小燃焼状態に相当する流量に絞ることのできる絞り手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
最小燃焼状態に相当する流量を弁体の開度によって実現するのではなく、弁体自体は開弁状態にしておき、別途設けた絞り手段により流量を絞るように構成した。
【0010】
なお、オリフィス部が設けられた絞り部材を弁体の先端に設けると共に、上記弁口より下流側に第2弁口を設け、モータを駆動させて弁体が弁口を閉弁する前の状態で絞り部材が第2弁口に着座し、絞り部材のオリフィス部を通してガスをガス通路に供給することにより上記絞り手段を構成することができる。
【0011】
また、上記電磁石の磁極と共に進退するロッド部材を設け、このロッド部材の先端にオリフィス部が設けられた絞り部材を設けると共に、上記弁口より下流側に第2弁口を設けることにより上記絞り手段を構成し、さらに上記弁体をロッド部材を囲繞する環状に設け、弁体が開弁状態で電磁石への通電を停止すると、ロッド部材の位置に関係なく弁体が付勢力に押されて閉弁するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、弁体ではなく絞り手段によってガス通路に流れるガス量をガスバーナの最小燃焼状態に相当する流量に絞るので、バーナに対して最小燃焼状態に相当するガス量を安定して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明によるモータ安全弁の内部構造を示している。このモータ安全弁1の上部にはモータ2が取り付けられている。このモータ2の出力軸21は円筒形状であり内側に内ねじが切ってある。その内ネジに対して上下軸3が螺合している。この上下軸3には磁性体からなるコア4が固定されている。このコア4には励磁コイル41が取り付けられており、励磁コイル41に通電するとコア4の下面が磁極となって磁性体を吸着する状態になる。
【0014】
一方、上下軸3にはカバー31が連結されており、カバー31から突出された羽根部32によって上下軸3の回り止めがなされる。したがって、出力軸21を正逆両方向に各々回転させると、コア4は出力軸21の回転に応じて上昇および下降する。
【0015】
ガスの流入口11からこのモータ安全弁1内に流入したガスは弁口13および流出管路12を通ってバーナに供給される。本実施の形態では、弁口13の下流に更に第2弁口14を形成した。弁口13はゴム製の弁体5によって閉弁され、また弁口13から弁体5が離れることにより弁口13が開弁される。なお、弁体5はバネ53によって常時下方に向かって付勢されている。また弁体5には上方に延びる弁軸51が連結されており、弁軸51の上端にはアーマチュア52が取り付けられている。
【0016】
また、弁体5の下端には金属製の絞り部材6を取り付けた。この絞り部材6にはバーナの最小燃焼状態に相当する流量を流すためのオリフィス部61が形成されている。この絞り部材6が第2弁口14に着座すると、ガスはオリフィス部61のみを通ってバーナに供給されるので、バーナは最小燃焼状態になる。
【0017】
上述のように、励磁コイル41に通電するとコア4が帯磁するので、コア4にアーマチュア52が吸着されることになる。図1に示す状態では上下軸3が上昇端に位置し、かつアーマチュア52がコア4に吸着されているので、弁体5および絞り部材6は共に弁口13および第2弁口14から離れた位置にある。
【0018】
この状態では、ガスは弁口13および第2弁口14を通ってバーナに供給されるので、バーナの火力は強火状態、すなわち最大燃焼状態になる。このモータ安全弁1はバーナが失火した際などに直ちにバーナへのガスの供給を停止させるものであるが、バーナの火力を最小燃焼状態に切り替えることができる。バーナの火力を最小燃焼状態に切り替えるには、モータ2を作動させて上下軸3を下降させる。すると、図2(a)に示すように、弁体5が弁口13を閉鎖する前に、絞り部材6が第2弁口14に着座し、上述のようにバーナへのガスの供給量を絞ってバーナの火力を最小燃焼状態にする。バーナの火力を最大燃焼状態に戻す場合には、モータ2を逆転させて上下軸3を引き上げればよいが、消火する場合には、モータ2を更に回転させて上下軸3を下降させ、図2(b)に示すように、弁体5を弁口13に着座させて弁口13を閉鎖すればよい。なお、このようにモータ2を作動させて弁体5を閉弁状態にしてよいが、図2(a)に示す状態で励磁コイル41への通電を停止し、アーマチュア52に対する吸着力を消滅させ、弁体5をバネ53の付勢力により弁口13を閉鎖する位置まで移動させてもよい。
【0019】
ところで、上記図1に示す全開状態で例えばバーナが失火すると、励磁コイル41への通電を停止する。すると、上述のようにアーマチュア52はコア4から離れ、バネ53の付勢力により降下し、図3に示すように、弁体5が弁口13を閉鎖し閉弁状態になり、バーナへのガスの供給が遮断される。
【0020】
ただし、このように全開状態から緊急に閉弁させる際には、弁体5が弁口13を閉鎖する前に金属製の絞り部材6が勢いよく第2弁口14に着座し、衝突音が生じる。このような衝突音を生じさせないことが要望される場合には、図4に示す構成を採用することができる。
【0021】
図4を参照して、この第2の実施の形態ではモータ2の出力軸22の外周にねじを切り、その出力軸22に螺合するナット部71を設けた。このナット部71の下端にはロッド部材である軸部7が延設されており、さらにこの軸部7の下端に絞り部材6を取り付けた。一方、ナット部71および軸部7を囲繞する筒状のホルダ8を設け、そのホルダ8の下端に、リング状の弁体72を取り付けると共に、弁体72を下方に付勢するバネ73を設けた。そしてナット部71およびホルダ8を磁性材料で形成すると共に、ホルダ8の上端部を囲繞するように励磁コイル74を設けた。
【0022】
励磁コイル74に通電すると、ナット部71およびホルダ8を磁束線が通過するので、ナット部71の下端が磁極71aとなって、ホルダ8をこの磁極71aに吸着させる。なお、図示しないがナット部71は回り止めされている。図4に示す状態では、ナット部71は上昇端まで引き上げられているので、弁体72および絞り部材6は共に弁口13および第2弁口14から上方に離れた位置に保持されており、ガスは弁口13および弁口14を通って供給される全開状態にある。なお、図4に示す構成で、図示しないが軸部7とホルダ8との間にはシールが設けられており、ホルダ8の内部を通ってガスが下方に抜けることはない。
【0023】
バーナの火力を最大燃焼状態から最小燃焼状態に絞る場合には、図1に示したものと同様に、モータ2を作動させて絞り部材6を降下させ、図5(a)に示すように、第2弁口14に着座させればよい。そして、バーナを消火させるにはナット部71をさらに降下させて図5(b)に示すように弁体72を弁口13に着座させ、弁口13を閉鎖すればよい。あるいは、図5(a)に示す状態で励磁コイル74への通電を停止すれば、ナット部71とホルダ8との間に作用していた吸着力が消滅し、弁体72はバネ73の付勢力によって下方に移動し弁口13を閉鎖する。
【0024】
ところで、バーナの失火等により図4に示す状態から励磁コイル74への通電を停止すると、図6に示すように、弁体72はバネ73の付勢力によって弁口13を閉鎖するが、絞り部材6は図4に示した位置から移動しない。すなわち、絞り部材6は第2弁口14に衝突することが無く、したがって衝撃音が発生しない。
【0025】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態での全開状態を示す図
【図2】(a)第1の実施の形態での最小開度の状態を示す図、(b)同じく全閉状態を示す図
【図3】第1の実施の形態での安全弁として作動した場合の全閉状態を示す図
【図4】第2の実施の形態での全開状態を示す図
【図5】(a)第2の実施の形態での最小開度の状態を示す図、(b)同じく全閉状態を示す図
【図6】第2の実施の形態での安全弁として作動した場合の全閉状態を示す図
【符号の説明】
【0027】
1 モータ安全弁
2 モータ
2 出力軸
3 上下軸
4 コア
5 弁体
6 絞り部材
8 ホルダ
13 弁口
14 第2弁口
21 出力軸
22 出力軸
41 励磁コイル
52 アーマチュア
72 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナへガスを供給するガス通路に介設され、閉弁方向に常時付勢されている弁体でガス通路に連なる弁口を閉弁すると共に、磁極がモータによって進退する電磁石を設けて、この磁極で弁体を吸着し、付勢力に抗して弁口から離すことにより弁口を開弁するモータ安全弁において、弁体が開弁状態で、ガス通路に流れるガス量をガスバーナの最小燃焼状態に相当する流量に絞ることのできる絞り手段を設けたことを特徴とするモータ安全弁。
【請求項2】
オリフィス部が設けられた絞り部材を弁体の先端に設けると共に、上記弁口より下流側に第2弁口を設け、モータを駆動させて弁体が弁口を閉弁する前の状態で絞り部材が第2弁口に着座し、絞り部材のオリフィス部を通してガスをガス通路に供給することにより上記絞り手段を構成したことを特徴とする請求項1に記載のモータ安全弁。
【請求項3】
上記電磁石の磁極と共に進退するロッド部材を設け、このロッド部材の先端にオリフィス部が設けられた絞り部材を設けると共に、上記弁口より下流側に第2弁口を設けることにより上記絞り手段を構成し、さらに上記弁体をロッド部材を囲繞する環状に設け、弁体が開弁状態で電磁石への通電を停止すると、ロッド部材の位置に関係なく弁体が付勢力に押されて閉弁することを特徴とする請求項1に記載のモータ安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228785(P2009−228785A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74750(P2008−74750)
【出願日】平成20年3月22日(2008.3.22)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】