説明

モータ駆動制御システム

【課題】インバータと3相交流モータ間に電流センサの設置スペースを不要としてシステム全体の小型化を図ることができるモータ駆動制御システムを提供する。
【解決手段】n相(U相、V相、W相)のすべてのコイル巻き終わり部側が集約された中性点7を有する3相交流モータ2と、この3相交流モータ2の各相に交流電力を供給するインバータ3と、インバータ3から3相交流モータのU相、W相に流れる相電流をそれぞれ検出する電流センサ5a,5bと、を備え、電流センサ5aを中性点7手前のU相のコイル巻き終わり部に配置し、電流センサ5bを中性点7手前のW相のコイル巻き終わり部に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相交流モータの駆動を制御するモータ駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インバータのスイッチング素子のオンオフ動作により電力変換された3相交流電力を3相交流モータに供給して3相交流モータを駆動し、更に、3相交流モータの駆動を、3相交流モータの各相(U相、V相、W相)の各コイルに流れる相電流に基づいてフィードバック制御するモータ駆動制御システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−125186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1のモータ制御装置では、3相交流モータの各相(U相、V相、W相)の各コイルに流れる相電流を検出する3つの電流センサを有し、各電流センサをインバータと3相交流モータとの間に配置している。このように、各電流センサをインバータと3相交流モータ間に配置しているので、インバータと3相交流モータ間に各電流センサを配置するための設置スペースが必要となり、装置全体の小型化を図ることが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、インバータと3相交流モータ間に電流センサの設置スペースを不要としてシステム全体の小型化を図ることができるモータ駆動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明係るモータ駆動制御システムは、n相(ただし、nは3以上)のすべてのコイル巻き終わり部側が集約された中性点を有する多相交流モータと、前記多相交流モータの各相に交流電力を供給する電力変換器と、前記電力変換器から前記多相交流モータの少なくとも(n−1)相に流れる相電流をそれぞれ検出する電流検出手段と、を備えている。そして、前記各電流検出手段を、前記中性点手前の少なくとも(n−1)相のコイル巻き終わり部にそれぞれ配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るモータ駆動制御システムによれば、各相電流検出手段を、中性点手前の少なくとも(n−1)相のコイル巻き終わり部にそれぞれ配置したことにより、電力変換器と多相交流モータ間に各電流検出手段を配置するための設置スペースが不要となり、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1に係るモータ駆動制御システムの電気回路構成を示す概略図。
【図2】本発明の実施形態2に係るモータ駆動制御システムの3相交流モータとインバータの配置構成を示す模式図。
【図3】端面に中性点と電流センサを設けた3相交流モータの側面を示す概略図。
【図4】本発明の実施形態3における中性点と電流センサの配置構成を模式図。
【図5】本発明の実施形態4における中性点と電流センサの配置構成を模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係るモータ駆動制御システムの電気回路構成を示す概略図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るモータ駆動制御システム1は、3相交流モータ2と、PWM制御により3相交流モータ2を回転駆動する電力変換器としてのインバータ3と、インバータ3に接続された直流電源4と、3相交流モータ2の各相のうちのU相、V相に流れる相電流をそれぞれ検出する2つの電流センサ5a,5bと、少なくとも電流センサ5a,5bでそれぞれ検出された相電流値に基づいて、3相交流モータ2の回転駆動をフィードバック制御するようにインバータ3を制御する制御部6とを備えている。
【0011】
3相交流モータ2は、本実施形態では不図示のステータ(固定子)に15個のティースを有し、各相(U相、V相、W相)に対応して各ティースにコイルUc、Vc、Wcがそれぞれ巻回されている。即ち、この3相交流モータ2は、各相(U相、V相、W相)にそれぞれ5つのコイルUc、Vc、Wcが並列に配置されており、各相(U相、V相、W相)の各コイルUc、Vc、Wcの巻き終わり部は中性点(U相、V相、W相の接続点)7にて結合されている。
【0012】
インバータ3は、直列接続された上下アームの各スイッチング素子8a,8bを1スイッチングレグとして、1相当たり5つのスイッチングレグをそれぞれ持つことで、1つのコイルに1スイッチングレグを有している。なお、各スイッチング素子8a,8bには、ダイオード9a,9bがそれぞれ並列に接続されている。
【0013】
即ち、このインバータ3は、U相アーム10の5つのスイッチングレグ11には3相交流モータ2のU相の各コイルUcが電気的に接続され、V相アーム12の5つのスイッチングレグ13には3相交流モータ2のV相の各コイルVcが電気的に接続され、W相アーム14の5つのスイッチングレグ15には3相交流モータ2のW相の各コイルWcが電気的に接続されている。各スイッチング素子8a,8bとしては、例えば、MOS−FETを用いることができる。
【0014】
U相アーム10、V相アーム12、W相アーム14には、直流電源4が接続されている。また、U相アーム10、V相アーム12、W相アーム14の各スイッチングレグ11、13、15には、各スイッチング素子8a,8bに供給される直流電力の平滑化を行う平滑コンデンサ16が並列にそれぞれ接続されている。
【0015】
電流センサ5aは、中性点7手前の3相交流モータ2のU相の各コイルUcを束ねたコイル巻き終わり部に配置されており、3相交流モータ2のU相に流れる合計の電流(U相電流)を検出する。また、電流センサ5bは、中性点7手前の3相交流モータ2のW相の各コイルWcを束ねたコイル巻き終わり部に配置されており、3相交流モータ2のW相に流れる合計の電流(W相電流)を検出する。
【0016】
なお、3相交流モータ2では、各相(U相、V相、W相)に流れる電流の和が0(零)になる。よって、制御部6は、U相に流れる(U相電流)をIu、W相に流れる電流(W相電流)をIwとしたときに、残りのV相に流れる合計の電流(V相電流)Iwを以下の式(1)から算出することができる。
Iv=0−(Iu+Iw) …(1)
【0017】
次に、上記のように構成された本実施形態に係るモータ駆動制御システム1の動作について説明する。
【0018】
このモータ駆動制御システム1を、例えば、電気自動車(燃料電池自動車も含む)やハイブリット車両などの駆動系に設置される走行駆動用モータの駆動制御に適用した場合においては、制御部6は、各種センサから入力されるアクセル開度情報(アクセルペダルの踏込み量)や車速情報等に基づいて走行駆動用モータである3相交流モータ2の要求駆動力に対応するトルク指令値を算出する。
【0019】
そして、算出したトルク指令値に対応したデューティ比のPWM信号をインバータ3のU相アーム10、V相アーム12、W相アーム14の各スイッチング素子8a,8bに出力し、各スイッチング素子8a,8bをオンオフ制御する。各スイッチング素子8a,8bのオンオフ制御により、バッテリ(リチウムイオン電池等の高圧系の二次電池)である直流電源4から供給される直流電力が3相交流電力に変換され、3相交流モータ2の各相(U相、V相、W相)に3相交流電力が供給される。3相交流モータ2は、各相(U相、V相、W相)に供給される3相交流電力により前記トルク指令値に基づいた回転数で回転駆動される。
【0020】
この際、電流センサ5aで3相交流モータ2のU相に流れる合計の電流を検出し、電流センサ5bで3相交流モータ2のW相に流れる合計の電流を検出する。そして、制御部6は、電流センサ5a,5bでそれぞれ検出したU相とW相に流れる各電流値及び前記式(1)で算出したV相に流れる電流値と、前記トルク指令値に対応する各相の目標電流値とが一致するようにフィードバック制御を行い、3相交流モータ2を走行状況に応じた要求駆動力で精度良く回転駆動させるようにしている。
【0021】
このように、本実施形態のモータ駆動制御システム1によれば、中性点7手前のU相の各コイルUcを束ねたコイル巻き終わり部、及び中性点7手前のW相の各コイルWcを束ねたコイル巻き終わり部にそれぞれ電流センサ5a,5bを配置する構成により、従来のようにインバータ3と3相交流モータ2の間に電流センサを配置するスペースを設ける必要がないので、インバータ3と3相交流モータ2を一体的に連結することが可能となり、システム全体の小型化を図ることができる。
【0022】
また、前記3相交流モータ2のように、1相当たり5つのコイルが巻回されている3相15ティース構成のモータでも、中性点7手前に配置した電流センサ5a,5bだけで3相交流モータ2の各相の電流を検出することができ、また、電流センサの数が大幅に減ることにより低コスト化を図ることができる。
【0023】
〈実施形態2〉
図2は、本発明の実施形態2に係るモータ駆動制御システムの3相交流モータとインバータの配置構成を示す模式図である。なお、図1に示した実施形態1と同一機能を有する部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
本実施形態においても、前記実施形態1と同様に中性点7手前のU相の各コイルUcを束ねたコイル巻き終わり部、及び中性点7手前のW相の各コイルWcを束ねたコイル巻き終わり部にそれぞれ電流センサ5a,5bを配置している。これにより、図2に示すように、本実施形態に係るモータ駆動制御システムでは、3相交流モータ2の一方側(図2では左側)の軸方向端面にインバータ3を一体的に連結し、他方側(図2では右側)の軸方向端面に各相の各コイルの中性点7を配置している。なお、本実施形態のモータ駆動制御システムの電気回路構成は、図1に示した実施形態1と同様である。
【0025】
中性点7は、図2、図3に示すように、3相交流モータ2の他方側の軸方向端面に配置した各相のコイルのコイルエンド17とステータ18の端面との間に形成される空間(バックヨーク部とティース間の空間)に配置されている。また、U相、W相の電流をそれぞれ検出する前記電流センサ5a,5bは、コイルエンド17とステータ18の端面に配置した中性点7直前のU相、V相の各コイル(不図示)を束ねたコイル巻き終わり部近傍に配置されている。このように、3相交流モータ2の中性点7を、インバータ3の各スイッチングレグに接続される各コイルの取り出し端面側とは逆側の端面に設けている。
【0026】
また、モータ軸(不図示)が嵌合されているロータ19の中性点7が配置された側の端面には、ロータ19の回転角を検出するレゾルバやエンコーダなどの回転角センサ20が配置されている。
【0027】
このように、本実施形態では、3相交流モータ2の軸方向両端面において各相のコイルのコイルエンド厚みにより形成されるバックヨーク部の空間を利用するようにして、3相交流モータ2の一方側の軸方向端面にインバータ3を一体的に連結し、他方側の軸方向端面に各相の各コイルの中性点7を配置することにより、無駄な空間をなくしてシステム全体の小型化を図ることが可能となる。
【0028】
また、電流センサ5a,5bをインバータ3と反対側の端面に配置したことにより、電流センサ5a,5bには、インバータ3にて発生するスイッチングノイズの影響をなくすことができる。よって、電流センサ5a,5bは、3相交流モータ2の回転駆動によって発生するノイズの影響を防止するためのノイズ対策だけで済むので、ノイズ対策を簡略化することができる。
【0029】
更に、3相交流モータ2の他方側の端面(インバータ3を配置した端面と反対側の端面)に、中性点7、電流センサ5a,5b及び回転角センサ20を配置することにより、3相交流モータ2の他方の端面側の空間を有効利用して無駄な空間をなくすことができるので、システム全体の小型化を図ることが可能となる。
【0030】
〈実施形態3〉
本実施形態では、3相交流モータの他方側の端面(インバータを配置した端面と反対側の端面)において、図4に示すように、各相(U相、V相、W相)はそれぞれ円環状のU相バスバー21、V相バスバー22、W相バスバー23を備え、3相交流モータ内に等間隔に巻かれた各コイルの取り出し部を接続し、各相毎にまとめた母線を形成している。他の構成は実施形態1、2と同様である。
【0031】
また、各相のバスバー21、22、23のうちのV相バスバー22が中性点を兼ねることとした。そして、この中性点を兼ねるV相バスバー22とそれ以外のバスバー(U相バスバー21、W相バスバー23)との間を接続線24、25でそれぞれ接続して、各接続線23、24に前記電流センサ5a,5bを配置している。電流センサ5aは、3相交流モータ2のU相バスバー21に流れるU相電流を検出し、電流センサ5bは、W相バスバー23に流れるW相電流を検出する。
【0032】
このように、本実施形態では、各相(U相、V相、W相)はそれぞれ円環状のU相バスバー21、V相バスバー22、W相バスバー23を備えているので、各相のバスバーを備えずにコイルのみで形成する場合に比べ、各相毎の母線断面積を小さくすることができ、これにより、中性点を省スペースで形成することができる。
【0033】
また、各相のバスバー21、22、23のうちのV相バスバー22が中性点を兼ねることにより、各相毎にまとめた後に中性点を新たに形成するよりも省スペース化を図ることができる。更に、この中性点を兼ねるV相バスバー22とそれ以外のバスバー(U相バスバー21、W相バスバー23)との間を接続線24、25でそれぞれ接続することにより、接続線を1本削減することができ、省スペース化を図ることができる。これにより、本実施形態では、省スペース化を図ることができるので、システム全体の小型化が可能となる。
【0034】
〈実施形態4〉
前記実施形態3の構成に対して、本実施形態では、図5に示すように、中性点を兼ねるV相バスバー22以外のバスバー(U相バスバー21、W相バスバー23)に切り欠き部26、27をそれぞれ設けて、各切り欠き部26、27を通して中性点を兼ねるV相バスバー22とそれ以外のバスバー(U相バスバー21、W相バスバー23)との間を接続線24、25でそれぞれ接続し、各切り欠き部26、27に前記電流センサ5a,5bをそれぞれ配置した構成である。電流センサ5aは、3相交流モータ2のU相バスバー21に流れるU相電流を検出し、電流センサ5bは、W相バスバー23に流れるW相電流を検出する。
【0035】
このように、本実施形態では、U相バスバー21とW相バスバー23に設けた各切り欠き部26、27に電流センサ5a,5bをそれぞれ配置することにより、電流センサ5a,5bをより省スペースで配置することができるので、システム全体の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 モータ駆動制御システム
2 3相交流モータ(多相交流モータ)
3 インバータ(電力変換器)
4 直流電源
5a、5b 電流センサ(電流検出手段)
6 制御部
7 中性点
8a、8b スイッチング素子
10 U相アーム
12 V相アーム
14 W相アーム
18 ステータ
19 ロータ
20 回転角センサ
21 U相バスバー
22 V相バスバー
23 W相バスバー
24、25 接続線
26、27 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n相(ただし、nは3以上)のすべてのコイル巻き終わり部側が集約された中性点を有する多相交流モータと、前記多相交流モータの各相に交流電力を供給する電力変換器と、前記電力変換器から前記多相交流モータの少なくとも(n−1)相に流れる相電流をそれぞれ検出する電流検出手段と、を備え、前記各電流検出手段を、前記中性点手前の少なくとも(n−1)相のコイル巻き終わり部にそれぞれ配置したことを特徴とするモータ駆動制御システム。
【請求項2】
前記多相交流モータの一方側の軸方向端面に前記電力変換器を配置して、前記多相交流モータの他方側の軸方向端面に前記中性点を配置することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項3】
前記多相交流モータの前記中性点を配置した側の軸方向端面に、前記多相交流モータのロータの回転角を検出する回転角センサを配置することを特徴とする請求項2に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項4】
前記各相のコイル巻き終わり端部分を前記各相毎にバスバーとしてまとめ、前記各バスバーのうちの1つのバスバーが前記中性点を兼ねるようにし、前記中性点を兼ねたバスバーと他の各バスバーとの間を接続した各接続線に前記電流検出手段をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項5】
前記中性点を兼ねたバスバー以外の前記他の各バスバーに切り欠き部をそれぞれ設けて、前記電流検出手段をそれぞれ設けた前記各接続線を前記切り欠き部に配置することを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−252534(P2010−252534A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99625(P2009−99625)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】