説明

モータ駆動制御装置

【課題】回転数が安定な通常動作時だけでなく回転数が急変したときにも、モータの回転を検出する位置センサの出力に基づいてモータの回転数を正確に認識してモータを駆動制御する。
【解決手段】回転加速度算出部12の制御により、位置センサ7の基準信号(Z相の信号)より周期が短いパルス信号(A相、B相のパルス信号)に基づいて急変回転数算出部9が追従応答性よく算出した回転数の増減の変化量が所定値を超えない通常動作時には、前記基準信号に基づいて通常回転数算出部10が駆動モータ2の実際の回転の細かな変動の影響を受けることなく算出した回転数を認識回転数として選択部11からインバータ制御部13に出力し、急変回転数算出部9が算出した前記変化量が所定値を超えると、急変回転数算出部9が算出した回転数を認識回転数として選択部11からインバータ制御部13に出力し、インバータ制御部13により認識回転数に基づいてインバータ3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を検出する位置センサの出力に基づいてモータの回転数を認識し、認識回転数に基づいてモータを駆動制御するモータ駆動制御装置に関し、詳しくは、回転数の認識精度の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド車等の車両の駆動モータとして、ロータに永久磁石や巻線が不要で安価かつ構造が簡単なスイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータという)が注目されている。
【0003】
この車両のSRモータ構成の駆動モータを含む種々の用途のリラクタンスモータや同期モータ等のモータは、一般に、インバータで構成される駆動部から給電されて駆動制御される。前記駆動部は複数の半導体スイッチ素子(IGBT等)により形成される。
【0004】
そして、前記駆動部を制御するモータ駆動制御装置は、レゾルバ等の位置センサ(角度センサ)によるモータの回転角度の検出に基づき、所定のタイミング毎にモータの回転数を認識し、認識回転数とアクセル、ブレーキなどの操作量とに基づいて、必要なトルク指令値を算出し、トルク指令値に基づき、モータが所望のトルクを発生するように前記半導体スイッチ素子のスイッチングを制御し、モータの通電相のステータコイル等への給電を制御する。
【0005】
ところで、例えば前記駆動モータを備えた車両が凹凸のない平坦路を定速走行し、モータが一定回転で安定に回転する理想的な状況下では、モータの実際の回転数に対して前記認識回転数のずれがほとんどなく、認識回転数に基づくトルク指令値により、トルクの過不足や電源の過充電・過放電なくモータの安定した駆動制御が行なえる。
【0006】
しかしながら、実際の走行環境下においては、スリップや大きなグリップ力が発生していない通常動作時にも、路面状況等によってモータの実際の回転数が時々刻々に変化(変動)し、また、ノイズや位置センサの誤差に起因して認識回転数が変化する。この細かな変化に対しても認識回転数が追従して細かく変化すれば、モータの駆動制御が却って不安定になり、トルクの過不足や電源の過充電、過放電が発生する。
【0007】
そこで、モータの実際の回転数の移動平均を算出し、算出した移動平均の回転数(予測回転)を前記認識回転数とすることにより、モータの回転数の実際の細かな変動には影響されないようにしてモータの駆動制御の安定性を高め、トルクの過不足や電源の過充電、過放電を防止することが提案されている(例えば、特許文献1(段落[0012]−[0013]、[0093]−[0104]、図1−図7等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−185071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のように移動平均の回転数からモータの回転数を予測して認識する場合、認識回転数(予測回転数)がモータの実際の回転数の細かな変動の影響を受けないようにすることはできるが、例えば車両のスリップや大きなグリップ力が発生してモータの回転数が急変すると、このような急変には追従できないため、認識回転数がモータの実際の回転数からずれ、トルクの過不足や電源の過充電、過放電に伴う素子破壊等を引き起こすおそれがある。例えば大きなグリップ力が発生すると、モータ回転数は急激に低下するため認識回転数が相対的に大きくなってしまうので、回転数に比例するモータの誘起電圧を実際より大きく見積もった状態になり、この状態で半導体スイッチ素子を制御すると、モータに過電流が流れて駆動部や電源部の素子破壊等を引き起こすおそれがある。
【0010】
そして、車両の駆動モータ以外の種々の用途のモータの駆動を制御する場合にも、特許文献1に記載のように移動平均の回転数からモータの回転数を予測して認識するだけでは、モータの回転数が急変すると、認識回転数がモータの実際の回転数からずれてトルク過不足や電源の過充電、過放電に伴う素子破壊等を引き起こす。
【0011】
本発明は、回転数が安定な通常動作時だけでなく回転数が急変したときにも、モータの回転を検出する位置センサの出力に基づいて、モータの回転数を正確に認識し、トルクの過不足や電源の過放電、過充電に伴う素子破壊等なくモータを駆動制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のモータ駆動制御装置は、認識した回転数に基づいてモータを駆動制御するモータ駆動制御装置であって、前記モータの回転を検出して回転位置の基準信号と該基準信号より周期が短いパルス信号を出力する位置センサと、前記パルス信号に基づいて前記モータの回転数を算出する第1の回転数算出手段と、前記基準信号に基づいて前記モータの回転数を算出する第2の回転数算出手段と、前記両回転数算出手段が算出した回転数のいずれかを前記モータの認識回転数に選択し、前記認識回転数に基づいて前記モータの駆動部を制御する駆動制御手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記第1の回転数算出手段が算出した回転数の変化量が所定値を超える場合は前記第1の回転数算出手段が算出した回転数を前記認識回転数に選択して前記駆動部を制御し、前記第1の回転数算出手段が算出した回転数の変化量が前記所定値を超えない場合は前記第2の回転数算出手段が算出した回転数を前記認識回転数として前記駆動部を制御することを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明のモータ駆動制御装置の場合、制御対象が例えば電気自動車やハイブリッド車等の車両の駆動モータであれば、車両にスリップや大きなグリップ力が発生せず、第1の回転数算出手段が算出した回転数の増減の変化量が前記所定値を超えない通常動作時には、制御手段により、位置センサの基準信号に基づいて第2の回転数算出手段が算出した回転数が認識回転数として選択される。このとき、基準信号の周期は長く、選択された認識回転数により、駆動モータの実際の回転の細かな変動の影響を受けることなくそのモータの回転数が安定にかつ正確に認識される。一方、スリップや大きなグリップ力が発生して駆動モータの実際の回転数が急変し、第1の回転数算出手段が算出した回転数の増減の変化量が前記所定値を超えると、制御手段により、基準信号より周期が短いパルス信号に基づいて第1の回転数算出手段が算出した回転数が認識回転数として選択される。このとき、周期の短いパルス信号に基づいて算出される回転数は駆動モータの実際の回転数の変化に追従して応答性よく変化し、選択された認識回転数により、スリップや大きなグリップ力によって急変するモータの回転数が正確に認識される。
【0014】
したがって、制御手段により常に正確な認識回転数を選択することができる。そして、選択した認識回転に基づいて駆動部を制御するため、通常動作時だけでなく駆動モータの回転数が急変したときにも正確な認識回転数に基づいてモータの精度の高いトルク制御(電流制御)を行なうことができ、トルクの過不足を防止するとともに電源の過放電や過充電に伴う素子破壊等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のブロック図である。
【図2】(a)は図1の回転加速度算出部12の回転加速度の時間変化例を示し、(b)は図1の急変回転数算出部の認識回転数の時間変化を示し、(c)は図1の通常回転数算出部の認識回転数の時間変化を示し、(d)は図1の選択部が出力する認識回転数の時間変化を示す。
【図3】図1の急変回転数算出部による回転数の認識の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、一実施形態について、図1および図2を参照して詳述する。
【0017】
図1は本実施形態のモータ駆動制御装置の構成を示し、このモータ駆動制御装置の駆動制御対象は、例えば電気自動車、ハイブリッド車等の車両1の駆動モータ2であり、3相駆動のSRモータからなる。このSRモータは、アキシャルギャップ構造の場合、r個(例えば8個)の突極が周方向に等間隔に形成されたロータと、s個(例えば3相×4=12個)の突極が周方向に等間隔に形成されたステータとを、互いの磁極面が対向するようにモータ軸方向に間隔を設けて配置して形成され、ステータの各突極には各相のステータコイルが相順に集中巻きされる。そして、ステータとロータの突極が最も離れた非対向状態になる相が順に通電相に切り替わることにより、ステータとロータのリラクタンスが変化し、磁気的な吸引力でロータが回転する。
【0018】
このとき、電源としての車載のバッテリ3に、本発明の駆動部を形成するインバータ4が接続され、トルク指令値に基づいてインバータ4の各半導体スイッチ素子(IGBT等)が設定された制御周期(キャリア・タイミングの周期)でPWM制御され、駆動モータ2の通電相のステータコイルの給電が制御されて駆動モータ2が駆動制御される。
【0019】
駆動モータ2の回転は周知のレゾルバ5とR/Dコンバータ(レゾルバ/デジタル変換器)6が形成するデジタルの位置センサ(角度センサ)7により検出される。
【0020】
レゾルバ5は、R/Dコンバータ6からの定振幅定周波数の励磁信号の入力により、駆動モータ2のロータの回転にしたがって振幅変化するサイン(sinθ)信号と、サイン信号と90°位相のずれたコサイン(cosθ)信号をR/Dコンバータ6に出力する。
【0021】
R/Dコンバータ6は、前記のサイン信号、コサイン信号から駆動モータ2の回転角度を演算し、90°ずれたA相、B相のパルス信号および、Z相の信号を出力する。A相、B相のパルス信号は、2の10乗の分解能の場合、それぞれ駆動モータ2の1回転を1024等分した角度毎のパルス信号であり、Z相の信号は回転角度0°の位置で出力されるパルス信号である。そして、Z相の信号は本発明の回転位置の基準信号であり、前記キャリア・タイミング周期よりパルス間隔が広く長周期の信号である。また、A相、B相のパルス信号は前記キャリア・タイミング周期より十分に周期(パルス間隔)が短い信号であり、Z相の信号より短周期である。
【0022】
A相、B相のパルス信号は、Z相の信号で0°の位置毎にリセットされる駆動制御部8のカウンタ8に入力され、個別に又は合成してパルスエッジがカウントされる。A相、B相のパルス信号の個別のカウントにより駆動モータ2の回転方向を考慮した回転角度が算出され、A相、B相のパルス信号を合成したカウントにより2倍の分解能で回転角度が算出される。そして、これらの算出に基づいて得られた駆動モータ2の回転角度情報がカウンタ8から急変回転数算出部9に出力する。急変回転数算出部9は、例えば前記キャリア・タイミング周期の一定時間間の回転角度情報の変化から、その間の駆動モータ2の回転角度の変化量(増減量)を検出し、この回転角度の変化量から駆動モータ2の回転数を算出して認識することをくり返す。
【0023】
そして、カウンタ8、急変回転数算出部9は本発明の第1の回転数算出手段を形成し、車両1にスリップや大きなグリップ力が発生して駆動モータ2の回転数が急に増減変化すると、A相、B相のパルス信号の短い周期がその増減変化の影響を受けて変動し、急変回転数算出部9の認識回転数は、前記スリップや大きなグリップ力の発生に基づく駆動モータ2の実際の回転数の変化に応答性よく追従して変化し、駆動モータ2の実際の回転数に精度よく一致する。なお、本願における一致は略一致する状態を含む。
【0024】
一方、Z相の信号は通常回転数算出部10に送られ、通常回転数算出部10は、例えばZ相の信号の周期から、駆動モータ2の回転数を算出して認識することをくり返す。
【0025】
そして、通常回転数算出部10は本発明の第2の回転数算出手段を形成し、Z相の信号は周期が長く、路面状況等によって駆動モータ2の実際の回転数が細かに変動したり、ノイズや位置センサの誤差に起因して認識誤差が発生しても、Z相の信号の周期に対するその影響は少なく、通常回転数算出部10の認識回転数は、駆動モータ2の通常動作時には、駆動モータ2の実際の回転数の細かな変化の影響やノイズ・センサ誤差を受けることがなく、安定して駆動モータ2の回転数に一致する。
【0026】
急変回転数算出部9の認識回転数と通常回転数算出部10の認識回転数は選択部11に入力される。また、急変回転数算出部9の認識回転数が回転加速度算出部12に入力される。選択部11及び回転加速度算出部12は本発明の制御手段を形成し、回転加速度算出部12は、例えば前記キャリア・タイミング周期毎に、急変回転数算出部9の今回(最新)の認識回転数と、前回(直前)の認識回転数との差分を回転加速度として算出し、前記スリップや大きなグリップ力が発生して算出した回転加速度(急変回転数算出部9が算出した回転数の変化量)が所定のしきい値Athを超えると、選択部11を急変回転数算出部9の認識回転数の出力に切り替え、急変回転数算出部9が算出した認識回転数を選択して選択部11からインバータ制御部13に出力する。前記スリップや大きなグリップ力が発生せず、算出した回転加速度が前記所定のしきい値Athを超えない駆動モータ2の通常使用時は、選択部11を通常回転数算出部10の認識回転数の出力に切り替え、通常回転数算出部10が算出した認識回転数を選択して選択部11からインバータ制御部13に出力する。
【0027】
インバータ制御部13は、入力された認識回転数とアクセル、ブレーキなどの操作量とに基づいて、目標となるトルク指令値を算出し、このトルク指令値に基づき、駆動モータ2がトルク指令値のトルクを発生するようにインバータ4のIGBT等の半導体スイッチ素子のスイッチングを制御し、駆動モータ2の通電相のステータコイルへの給電を制御する。
【0028】
したがって、前記実施形態の場合は、電気自動車やハイブリッド車等の車両1の駆動モータ2の駆動制御において、レゾルバ5の検出に基づくR/Dコンバータ6の周期が長いZ相の信号(基準信号)により、駆動モータ2の実際の回転の細かな変動やノイズ・センサ誤差の影響を受けることなく通常回転数算出部(第2の回転数算出手段)10が駆動モータ2の回転数を正確に算出することができる。また、Z相の信号より周期が短いR/Dコンバータ6のA相、B相のパルス信号をカウンタ8でカウントして得られた回転角度情報により、急変回転数算出部(第1の回転数算出手段)9が、スリップや大きなグリップ力が発生したときの駆動モータ2の回転数の急変に追従して変化する駆動モータ2の回転数を応答性よく算出することができる。
【0029】
そして、スリップや大きなグリップ力が発生せず、急変回転数算出部9が算出した回転数の増減の変化量が所定のしきい値(所定値)Athを超えない駆動モータ2の通常動作時には、回転加速度算出部12による選択部11の出力切り替えにより、駆動モータ2の認識回転数として通常回転数算出部10が算出した回転数を選択して選択部11からインバータ制御部13に出力し、インバータ制御部13により、通常回転数算出部10が算出した正確で安定した認識回転数に基づいてインバータ4を制御し、駆動モータ2を安定に回転して駆動できる。
【0030】
一方、スリップや大きなグリップ力が発生して駆動モータ2の実際の回転数が急変し、急変回転数算出部9が算出した回転数の増減の変化量が前記所定のしきい値(所定値)Athを超えると、回転加速度算出部12による選択部11の出力切り替えにより、駆動モータ2の実際の回転数の急変に応答性よく追従して変化する急変回転数算出部9の回転数を、駆動モータ2の認識回転数として選択して選択部11からインバータ制御部13に出力し、インバータ制御部13により、急変回転数算出部9が算出した正確な認識回転数に基づいてインバータ(駆動部)4を制御し、スリップや大きなグリップの発生に追従して所期のトルクが発生するように駆動モータ2を駆動できる。
【0031】
図2は安定に回転していた駆動モータ2の回転数が例えばスリップによって急に大きくなる場合の回転加速度算出部12の回転加速度の時間変化例、急変回転数算出部9、通常回転数算出部10の認識回転数の時間変化例および、選択部11が出力する認識回転数の時間変化例を示し、(a)は回転加速度算出部12の回転加速度、(b)は急変回転数算出部9の認識回転数、(c)は通常回転数算出部10の認識回転数、(d)は選択部11が出力する認識回転数である。
【0032】
そして、スリップが発生する図2の時刻tαまでは駆動モータ2が安定に回転し、この間は同図(b)、(c)からも明らかなように、通常回転数算出部10の認識回転数は、路面状況等に基づく細かな変化やノイズ・センサ誤差の影響を受けず、急変回転数算出部9の認識回転数より安定している。スリップが発生して駆動モータ2の回転数が急変して大きくなり、急変回転数算出部9の認識回転数が同図の時刻tβに所定のしきい値Athを超えると、急変回転数算出部9の認識回転数は通常回転数算出部10の認識回転数より応答性よく急峻な傾きで増大する。
【0033】
そして、選択部11からインバータ制御部13に出力される駆動モータ2の認識回転数は、図2(d)に示すように、時刻tβに、通常回転数算出部10の安定した認識回転数から急変回転数算出部9の応答性の高い認識回転数に切り替わり、駆動モータ2の実際の回転数に即して変化する。
【0034】
そのため、インバータ4の制御に用いる駆動モータ2の回転数として、スリップや大きなグリップ力の発生の有無にかかわらず、常に正確な認識回転数を選択して得ることができ、選択した認識回転に基づき、駆動モータ2の通常動作時だけでなく、駆動モータ2の回転数が急変したときにも認識回転数に基づいて駆動モータ2の精度の高いトルク制御(電流制御)を行なうことができ、トルクの過不足を防止することができるとともに、バッテリ(電源)3の過放電や過充電を防止してインバータ4やバッテリ3の素子破壊等を防止することができ、駆動モータ2の制御性能が飛躍的に向上する。
【0035】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0036】
例えば、急変回転数算出部9により、カウンタ8の回転角度情報に基づいて算出した回転数及び、回転加速度算出部12の回転加速度(認識回転数の差分)をもとに、認識回転数を推定して算出するようにしてもよい。
【0037】
図3は前記認識回転数の推定の具体例の説明図であり、図中のn−1、n、n+1、n+2は前記キャリア・タイミング周期毎の時系列の回転数認識タイミングを示し、nは今回(最新)のタイミングであり、n−1は前回(直前)のタイミングである。また、Nnは今回算出された認識回転数、Nn−1は前回算出された認識回転数である。
【0038】
そして、今回の認識回転数Nnと、今回と前回の認識回転数の差(Nn−Nn−1)に基づき、急変回転数算出部9により、つぎの数1の式(1)の計算から、キャリア・タイミング周期で例えば1.5周期先の認識回転数Nestを推定して算出し、この認識回転数Nestを選択部11に出力するようにしてもよい。
【0039】
【数1】

【0040】
なお、1.5周期先の認識回転数Nestを推定するのは、今回の認識回転数Nnに基づくトルク指令値が駆動モータ2の回転数に反映されるのが、タイミングn+1、n+2の間のタイミングであり、平均すると今回のタイミングnから1.5周期先になると考えられるためである。また、式(1)の認識回転数Nnは、カウンタ8の回転角度情報に基づいて算出した回転数のタイミングnにおける移動平均の回転数または、この移動平均の回転数にその変化量に比例した補正回数を加えた回転数として、キャリア・タイミング周期以下の細かく小さな変動の影響を除去するようにしてもよい。
【0041】
つぎに、位置センサ(角度センサ)7は、レゾルバ5とR/Dコンバータ6の構成でなくてもよく、駆動モータ2の回転を検出して、Z相の信号のような駆動モータ2の1回転毎あるいは1/2回転毎程度の比較的周期が長い基準信号と、A相、B相のパルス信号のような基準信号より短い周期の少なくとも1つのパルス信号とを出力する種々の構成のセンサであってよいのは勿論である。
【0042】
また、駆動部としてのインバータ4の半導体スイッチの構成等は駆動モータ2に応じた適当な構成であってよく、駆動部はインバータ構成でなくてもよい。
【0043】
さらに、R/Dコンバータ6、カウンタ8、算出部10、11、13、選択部11等は、どのような構成であってもよく、マイクロコンピュータのプログラム(ソフトウェア処理)で形成されていてもよい。
【0044】
また、駆動モータ2の電源は車載のバッテリ3に限るものではなく、種々の構成の電源であってよい。
【0045】
つぎに、駆動制御対象の駆動モータ2は、ラジアルギャップ構成のSRモータや、その他の構成のリラクタンスモータを含む各種のモータであってもよい。
【0046】
そして、本発明は、電気自動車やハイブリッド車のような車両の駆動モータだけでなく、種々の用途のモータのモータ駆動装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
2 駆動モータ
3 バッテリ
4 インバータ
7 位置センサ
8 カウンタ
9 急変回転数算出部
10 通常回転数算出部
11 選択部
12 回転加速度算出部
13 インバータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識した回転数に基づいてモータを駆動制御するモータ駆動制御装置であって、
前記モータの回転を検出して回転位置の基準信号と該基準信号より周期が短いパルス信号を出力する位置センサと、
前記パルス信号に基づいて前記モータの回転数を算出する第1の回転数算出手段と、
前記基準信号に基づいて前記モータの回転数を算出する第2の回転数算出手段と、
前記両回転数算出手段が算出した回転数のいずれかを前記モータの認識回転数に選択し、前記認識回転数に基づいて前記モータの駆動部を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の回転数算出手段が算出した回転数の変化量が所定値を超える場合は前記第1の回転数算出手段が算出した回転数を前記認識回転数に選択して前記駆動部を制御し、前記第1の回転数算出手段が算出した回転数の変化量が前記所定値を超えない場合は前記第2の回転数算出手段が算出した回転数を前記認識回転数として前記駆動部を制御することを特徴とするモータ駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−70495(P2012−70495A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211543(P2010−211543)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】