説明

モータ

【課題】片側のみに軸受けを設ける構造において、容易に組み付け精度を高めることができるモータを提供する。
【解決手段】ロータの回転軸であるシャフト3と、シャフト3を軸支する軸受け10と、を有するステッピングモータにおいて、軸受け10をシャフト3の片側にのみ設け、少なくとも、フロントプレート7およびエンドプレート8のうち軸受け10側のプレート7と、軸受け10とを樹脂にて一体成形して成る一体成形部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関し、詳しくは、軸受け構造に特徴を有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの軸受け構造としては、軸方向両側のそれぞれに軸受けを設け、この2つの軸受けによって、回転軸であるシャフトを回動可能に軸支している。
【0003】
これに対し、特許文献1では、軸方向の片側にのみ軸受けを設ける構造を開示している。この片側のみの軸受け構造(以下「片持ち軸受け」とも言う)は、軸方向に長く形成して片側のみを支持することによって、軸受けが1つで済み、部品点数を削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−225510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の片側のみの軸受けは、その内周で回転軸を支持し、その外周はモータケースに圧入あるいはカシメによって固定される構造である。
【0006】
このように、特許文献1に記載のモータでは、軸受けがモータケースに圧入あるいはカシメによって固定されているため、ロータとステータとを組み付ける際、ステータヨーク内周面に対するロータの位置精度が出しにくいという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載のモータでは、モータ出力軸と、モータを取り付ける対象物との同軸を取ることが困難であり、同軸を取るためには何らかの基準を設けなければならないが、そうなると部品点数や工数の増加につながってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、片側のみに軸受けを設ける構造において、容易に組み付け精度を高めることができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、ロータの回転軸であるシャフトと、前記シャフトを軸支する軸受けと、を有するモータにおいて、前記軸受けを前記シャフトの片側にのみ設け、少なくとも、フロントプレートおよびエンドプレートのうち前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、を樹脂にて一体成形して成る一体成形部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記一体成形部材が、前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、さらに軸方向外側に突出する基準ボスと、を樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記一体成形部材が、前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、さらにステータアッシーと、を樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【0012】
また本発明は、前記軸受けの長さLと、前記シャフトの直径Dとの関係が、
2D≦L
であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記軸受けの内周と前記シャフトの外周との間に金属軸受けを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明によれば、モータステータ内径と軸受け内径との同軸を一体成形で取ることができるので、モータの軸に同軸ズレによるコギングトルクの増加を抑えることができる。
【0016】
また、本発明によれば、フロントプレートとエンドプレートとの同軸ずれによる、ロータの倒れを抑制し、フリクションロス(摩擦)を低減することができる。
【0017】
また、本発明によれば、基準ボスを軸受けやプレートと一体成形することにより、組み付け精度の向上や組み立てコストの低減をすることができる。例えば、車両のスピードメータ等の指針(ポインタ)等を回動させるメータ用のモータに適用する場合にあっては、基板あるいはメータの表示板にモータを直接固定することができ、同時に位置決めができる。すなわち、基準ボスとシャフトとの芯出しが容易であり、指針(ポインタ)等の位置を精度よく決められ、指針(ポインタ)等による正確な指示をすることができる。
【0018】
また、シャフトの長さを所定の範囲にすることにより、精度良く位置決めが行える。
【0019】
また、ロータとステータとの同軸度を高めることができるので、容易にロータ外周面とステータとの接触を防止することが可能である。
【0020】
また、モータ取付側の軸受けを片持ち軸受けにすることにより、軸方向で軸受けと反対側のプレートは、フラット構造にすることができ、密閉性のよいモータにすることも可能である。
【0021】
すなわち、本願発明によれば、片側のみに軸受けを設ける構造において、容易に組み付け精度を高めることができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるモータの第一の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【図2】図1に示した軸受け部10とフロントプレート7と基準ボス9とから成る一体成形部材を示す側断面図である。
【図3】図1に示したステッピングモータを組み付ける様子を示す側断面図である。
【図4】本発明によるモータの第二の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【図5】本発明によるモータの第三の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【図6】本発明によるモータの第四の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明によるモータの第一の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。なお、本実施の形態では、モータの例としてステッピングモータについて説明するが、本発明が、ステッピングモータ以外のモータにも適用可能であることは言うまでもない。
【0025】
本実施の形態のステッピングモータは、例えば、スピードメータ、タコメータ等の指示計器の可動部にアクチュエータ部品として用いることができる。
【0026】
このステッピングモータは、回転軸であるシャフト3と、シャフト3に固定されたスリーブ2と、スリーブ2を介してシャフト3に固定されるロータマグネット1とから成るロータを備え、さらに、内ヨーク5および外ヨーク6を有するステータヨークにコイル4を巻回して成るステータを備えて構成する。
【0027】
スリーブ2は、樹脂製、金属製など、その材質を特に問わない。
【0028】
基準ボス9は、その貫通孔と外周とが例えば同軸に形成してあり、本実施の形態のステッピングモータを、外部装置等に組み付ける際に、同軸を取る基準とすることができ、組み付け工程を、余計な工数をかけずにスムーズに行うことができる。
【0029】
本実施の形態では、シャフト3を軸支する軸受け部10と、モータのフロントプレート7と、フロントプレート7から軸方向外側に突出する基準ボス9とを、樹脂にて一体成形し、一体成形部材としている。
【0030】
図1において、8はエンドプレートであり、シャフト3は、一体成形部材の貫通孔(基準ボス9、フロントプレート7および軸受け部10)、およびエンドプレート8の貫通孔を貫通する。エンドプレート8の貫通孔は、シャフト3を軸支するものではなく、シャフト3は軸受け部10によってのみ軸支される。
【0031】
図2は、図1に示した軸受け部10とフロントプレート7と基準ボス9とから成る一体成形部材を示す側断面図である。
【0032】
なお、本実施の形態では、一体成形部材として基準ボス9も一体成形しているが、本発明はこれに限られるものではなく、軸受け部10とフロントプレート7とを一体成形するものであってもよい。
【0033】
図2に示すように、軸受け部10は、貫通孔であってその長さ(軸支の有効長)はLである(ここでは、基準ボス9の貫通孔の長さは除外している)。また、この貫通孔の直径、すなわちシャフト3の直径はDである。
【0034】
このLとDとの関係は、本発明の発明者らによる実験の結果、2D≦Lとすることが望ましいことがわかった。この2D≦Lとすることにより、十分な同軸精度を確保することができ、シャフト3を片持ち軸受けにより安定して回動させることができる。
【0035】
すなわち、本発明によれば、モータステータ内径と軸受け内径との同軸を、軸受け部10とフロントプレート7とを一体成形することで取ることができるので、モータの軸に同軸ズレによるコギングトルクの増加を抑えることができる。
【0036】
また、本発明によれば、フロントプレート7とエンドプレート8との同軸ずれによる、ロータの倒れを抑制し、フリクションロス(摩擦)を低減することができる。
【0037】
また、本発明によれば、基準ボス9を軸受け部10やフロントプレート7と一体成形することにより、組み付け精度の向上や組み立てコストの低減をすることができる。例えば、車両のスピードメータ等の指針(ポインタ)等を回動させるメータ用のモータに適用する場合にあっては、基板あるいはメータの表示板にモータを直接固定することができ、同時に位置決めができる。すなわち、基準ボス9とシャフト3との芯出しが容易であり、指針(ポインタ)等の位置を精度よく決められ、指針(ポインタ)等による正確な指示をすることができる。
【0038】
また、シャフト3の長さを所定の範囲にすることにより、精度良く位置決めが行える。
【0039】
また、ロータとステータとの同軸度を高めることができるので、容易にロータ外周面とステータとの接触を防止することができる。
【0040】
すなわち、本願発明によれば、片側のみに軸受けを設ける構造において、容易に組み付け精度を高めることができるステッピングモータを提供することができる。
【0041】
ここで、図1に示した本実施の形態のステッピングモータの組み付けについて、さらに説明する。
【0042】
図3は、図1に示したステッピングモータを組み付ける様子を示す側断面図である。
【0043】
軸受け部10と一体成形されたフロントプレート7とエンドプレート8との組み付けは、特に限定するものではなく、カシメ、接着、バンド固定などで行うことができる。例えばエンドプレート8とステータとを一体化した後、ロータ挿入時にフロントプレート7を組み付けてカシメあるいはバンド固定等を行うようにしてもよい。あるいは、軸受け部10と一体成形されたフロントプレート7とステータとを一体化した後、ロータ挿入時にエンドプレート8を組み付けてカシメあるいはバンド固定等を行うようにしてもよい。
【0044】
本発明によれば、軸が精度良く配置でき組み付け工数がかからない方法が可能な構造を提供していている。
【0045】
図4は、本発明によるモータの第二の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【0046】
本実施の形態のステッピングモータは、金属製の軸受け(メタル軸受け)12を有する点のほかは、図1に示した第一の実施の形態のステッピングモータと同様であるので、同じ構成要素には同じ参照番号を付して、詳しい説明は省略する。
【0047】
本実施の形態では、図1に示した軸受け部10の貫通孔にメタル軸受け12を嵌挿し、このメタル軸受け12の貫通孔にてシャフト3を軸支する。軸受け部10へのメタル軸受け12の嵌挿は、インサートモールドによる一体成形でもよいし、接着剤による固定、圧入であってもよい。
【0048】
図5は、本発明によるモータの第三の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【0049】
本実施の形態のステッピングモータは、シャフト3がエンドプレート8を貫通せずに、スラストプレート11を有する点のほかは、図1に示した第一の実施の形態のステッピングモータと同様であるので、同じ構成要素には同じ参照番号を付して、詳しい説明は省略する。
【0050】
本実施の形態では、エンドプレート8は、シャフト3が貫通する貫通孔を有さずに、フラットな構造にしている。シャフト3のエンドプレート8側の端部は、スラストプレート11に当接し、軸方向の位置を規定している。
【0051】
本発明のように片持ち軸受けにすることにより、本実施の形態のように、軸方向で軸受けと反対の側は、フラット構造にすることができ、密閉性のよいモータにすることも可能である。
【0052】
図6は、本発明によるモータの第四の実施の形態を示す、回転軸位置での側断面図である。
【0053】
本実施の形態のステッピングモータは、金属製の軸受け(メタル軸受け)12を有するとともに、シャフト3がエンドプレート8を貫通せずに、スラストプレート11を有する点のほかは、図1に示した第一の実施の形態のステッピングモータと同様であるので、同じ構成要素には同じ参照番号を付して、詳しい説明は省略する。
【0054】
すなわち、本実施の形態は、上述の第二の実施の形態と第三の実施の形態とを組み合わせた構成であり、両者の長所を併せ持つものである。
【0055】
次に、本発明によるモータの第五の実施の形態について説明する。
【0056】
上述の各実施の形態では、フロントプレートと軸受けと(あるいはさらに基準ボスも)を一体成形したが、本発明はこれに限られるものではなく、さらに別の構成も一体成形するようにしてもよい。
【0057】
この第五の実施の形態では、内ヨークおよび外ヨークのステータヨークを内包するステータアッシーを、フロントプレートや軸受けと(あるいはさらに基準ボスも)一体成形する。これは、例えばステータヨークに対してインサートモールドによって一体成形することができる。
【0058】
以上、本発明によるモータを説明したが、本発明は、この説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で数々の変形および組み合わせが出来ることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 ロータマグネット
2 スリーブ
3 シャフト
4 コイル
5 内ヨーク
6 外ヨーク
7 フロントプレート
8 エンドプレート
9 基準ボス
10 軸受け部
11 スラストプレート
12 メタル軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転軸であるシャフトと、
前記シャフトを軸支する軸受けと、
を有するモータにおいて、
前記軸受けを前記シャフトの片側にのみ設け、
少なくとも、フロントプレートおよびエンドプレートのうち前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、を樹脂にて一体成形して成る一体成形部材を設けた
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記一体成形部材が、前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、さらに軸方向外側に突出する基準ボスと、を樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記一体成形部材が、前記軸受け側のプレートと、該軸受けと、さらにステータアッシーと、を樹脂にて一体成形して成ることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受けの長さLと、前記シャフトの直径Dとの関係が、
2D≦L
であることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記軸受けの内周と前記シャフトの外周との間に金属軸受けを有することを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載のモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157148(P2012−157148A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13625(P2011−13625)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】