説明

ラコサミドの改良された合成スキーム

本発明は、式(I)の化合物をO-メチル化して式(II)の化合物を1段の反応で生成することを含む(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)の改良された生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(推奨INN:ラコサミド)はてんかんや疼痛の治療に有用な抗けいれん薬である。
【背景技術】
【0002】
この化合物を生成するための2つの方法が米国特許第6048899号に開示されている。
【0003】
米国特許第6048899号のスキーム2は、O-メチル化の前にベンジルアミドの生成を行っている。しかし、この反応スキームは種々の不純物を生成し、それは、工業規模では実用的でないクロマトグラフィーで除去しなければならない。また、個々のステップの収率も80%から85%しかない。
【0004】
米国特許第6048899号のスキーム1は、ベンジルアミドの生成、N-脱保護およびN-アセチル化の前にN-保護されたD-セリンのO-メチル化を行う。この製造スキームはスケールアップのためにはより有望な出発点であるが、大きな欠点がある。最も重要なことは、酸化銀(I)とヨウ化メチルを用いるN-保護されたD-セリンのO-メチル化は、実用的でなく高価であり、部分ラセミ化(約15%)がもたらされる結果となり、これはこのステップの収率を79%に低下させことである。また、(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドの生成の際のS-鏡像異性体の除去も非常に困難である。
【特許文献1】米国特許第6048899号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
驚くべきことに、例えば、相間移動触媒作用を用いるO-メチル化、または有機リチウム、および硫酸ジメチルなどの適切なメチル化剤を用いるO-メチル化などの代替のO-メチル化法を用いることによって、ラセミ化を回避することができることをここに見出した。
【0006】
また、本発明は、O-メチル化法が、N-保護されたD-セリンのアルコールのヒドロキシ基に選択的な改良されたラコサミド合成経路も提供する。したがって、カルボキシル基のエステル化も招く米国特許第6048899号のスキーム1に提案されている非特異的メチル化と比較して、本発明は、経路が短縮された、より効率的な合成をもたらし、そこでは続く、中間体のメチルエステル基を加水分解するステップが省かれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、式Iの化合物
【0008】
【化1】

【0009】
をO-メチル化して、
式IIの化合物
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、RxはN-保護基である)
を生成することを含む(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドを生成するための改良された方法に関し、
O-メチル化を1段反応で実施し、ラセミ化を回避し、それによって少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95、96、97、98または99%の鏡像異性体純度のR-鏡像異性体として式IIの化合物が得られることを特徴とする方法である。
【0012】
本特許出願で用いる「1段反応」という用語は、式Iの化合物を式IIの化合物に転換させる場合に、別個のステップで加水分解する必要のある有意の量(すなわち5モル%以上の量)のカルボキシル基のエステルが生成されないことを意味する。通常、1モル%未満のエステルが生成しても、これは、以下にさらに説明するように、続くラコサミドへのさらなる処理の間に除去され、追加の加水分解ステップを必要としない。
【0013】
本発明のO-メチル化は、例えばN-Boc-D-セリンなどの式Iの化合物に、有機金属化合物、好ましくは有機リチウム化合物の存在下で、メチル化剤を加えて実施することができる。適切なメチル化剤は、例えば硫酸ジメチル、リン酸トリメチルまたはヨウ化メチルである。硫酸ジメチルが特に好ましい。有機リチウム化合物は、好ましくはブチルリチウム、メチルリチウムまたはヘキシルリチウムなどのアルキルリチウム化合物あるいはフェニルリチウムなどのアリールリチウム化合物である。より好ましくは、有機リチウム化合物はt-ブチルリチウムまたはn-ブチルリチウムである。n-ブチルリチウムが特に好ましい。あるいは、金属-炭素結合を含む他の有機金属化合物、例えば有機亜鉛ハライドを含む有機亜鉛化合物、有機アルミニウムハライドを含む有機アルミニウム化合物、有機スズハライドを含む有機スズ化合物および/または有機マグネシウムハライド(グリニャール化合物)を含む有機マグネシウム化合物を用いることができる。ただし、ハライドはCl、Brおよび/またはIを含む。有機部分はアリールまたはアルキルであってよい。グリニャール化合物のアルキル-Mg-Yまたはアリール-Mg-Y(YはCl、BrまたはIである)が好ましい。THF/2-メトキシエチルエーテル混合物、ジエトキシメタンまたは好ましくはTHFを溶媒として用いることができる。反応は通常少なくとも0〜10℃で5時間、好ましくは0〜10℃で7〜24時間、最も好ましくは0〜5℃で9〜18時間進行させる。また、反応は、反応時間をそれに応じてかければ、-10〜+25℃の任意の温度などのより高いかまたはより低い温度で実施することができる。
【0014】
式Iの化合物のN-保護基RxがN-Bocである場合、典型的な反応は以下のスキーム(ステップ1-A)によって示すことができる。
【0015】
【化3】

【0016】
驚くべきことに、この方法は、メチルエステルが生成しないか、または生成物のラセミ化をそれほどもたらさない。実験による収率は91%であり、主な不純物はN-メチル化物である(例えば、実施例1)。したがって、有機金属化合物を用いた本発明によるメチル化の収率は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%である。
【0017】
一般に、有機金属、好ましくは有機リチウム化合物を用いたメチル化後、特にステップ1a後でのエステル不純物の量は、1モル%を大きく下回り、好ましくは0.1モル%未満であり、通常検出限界未満である。
【0018】
代替の経路では、相間移動触媒作用(「PTC」)によってN-保護されたD-セリンのアルコール基の選択的O-メチル化を実施する。PTCは不均一2相系を用いて実施する方法である。その1相は、水相または固相であり、反応性アニオン、または有機アニオンを生成させるための塩基の保存相である。他方、有機反応物および触媒は第2の有機相内に存在する。
【0019】
通常、例えばテトラアルキルアンモニウムハライドなどの四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩またはスルホニウム塩を相間移動触媒として用いる。適切な触媒およびPTC試薬は、例えばSigma-AldrichまたはHawks Chemicalなどの多くの供給業者から購入することができる。
【0020】
したがって、本発明の一実施形態は、相間移動触媒作用による反応を行って、式Iの化合物をO-メチル化して式IIの化合物を得ることを特徴とするラコサミドを生成する方法に関する。
【0021】
一般に、この方法は、硫酸ジメチル、ヨウ化メチルまたはリン酸トリメチルなどのメチル化試薬を、式Iの化合物、水相、有機相および相間移動触媒を含む相間移動反応系に加えることを含む。
【0022】
本発明のPTCでは以下のことが好ましい。
(a)メチル化剤は硫酸ジメチル、ヨウ化メチルまたはリン酸トリメチルから選択される。硫酸ジメチルが特に好ましい。
(b)第1の(水)相は水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液または炭酸カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液である。水酸化ナトリウム水溶液が特に好ましい。
(c)第2の(有機)相はトルエン、ヘキサン、塩化メチレンまたはメチルt-ブチルエーテルから選択される。トルエンが特に好ましい。
(d)相間移動触媒は、式IVのアンモニウム塩もしくはホスホニウム塩、式Vのスルホニウム塩または式VIのピリジニウム塩である。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R、R'、R"およびR"'は独立に、アルキル、アリールまたはアラルキル基から選択することができ、Qは窒素またはリンであり、Xはハライド、酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、水酸化物、過塩素酸、硫酸水素、チオシアン酸またはテトラフルオロホウ酸である)
【0025】
適切な相間移動触媒の例は、テトラエチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、テトラプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、セチルピリジニウムブロミド、トリフェニルメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ブチルトリエチルアンモニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、メチルトリオクチルアンモニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムパークロレート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウム水素サルフェート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムチオシアネート、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミドおよびトリブチルメチルアンモニウムクロリドである。テトラブチルアンモニウム塩、特にテトラブチルアンモニウムハライド、例えばブロミドが特に好ましい。
【0026】
本発明のPTCでは、上記に定義した成分(a)〜(d)の適切な濃度は以下の通りである。
(a)メチル化剤の量は、式Iの化合物に対して1〜5モル当量であり、
(b)アルカリ水溶液は5〜50重量/重量%溶液として、式Iの化合物に対して1.1〜10モル当量の量で提供され、
(c)式Iの化合物に対する有機溶媒の量は、好ましくは3〜20容、具体的には3〜20I/kg式I化合物であり、
(d)相間移動触媒の量は式Iの化合物の0.01〜0.1モル当量である。
【0027】
本発明において、特に式IV〜VIでは、「アリール」は、6個から18個の環炭素原子および最大で合計25個の炭素原子を含み、かつ多核芳香族を含む1個または複数の置換基で置換されているかまたは置換されていない芳香族基を指す。これらのアリール基は単環、二環、三環または多環式であってよく、縮合した環であってもよい。本明細書で用いる多核芳香族化合物は、10〜18個の環炭素原子および最大で合計25個の炭素原子を含む二環縮合芳香族環系を包含することを意味する。アリール基では、1〜6個の炭素原子は、酸素、イオウおよび/または窒素などのヘテロ原子で置換されていてよい。「アリール」は、非置換フェニル;非置換ナフチル;例えばヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、アミノから選択される1個または複数の置換基で置換されたフェニルまたはナフチル;ピロイルなどの置換または非置換のヘテロアリール;チエニル、インドリル等を含む。本発明において、特に式IVでは、「アリール」は非置換フェニルまたは置換フェニル、例えば2,6-ジフルオロフェニル、p-ニトロフェニルまたはp-トルイルから選択されることが好ましい。非置換フェニルが特に好ましい。
【0028】
本発明において、特に式IV〜VIでは、「アルキル」は分岐または直鎖の飽和炭化水素鎖を含む。「アルキル」は、最大で20個の炭素原子、より好ましくは最大で6個の炭素原子、最も好ましくは最大で4個の炭素原子を有する分岐または直鎖炭化水素であることが好ましい。炭化水素は1個または複数の置換基で置換されていても置換されていなくてもよい。「アルキル」の好ましい例は、セチル、オクチル、ヘプチル、ペンチル、ブチル、プロピル、エチルおよびメチルである。
【0029】
本発明において、特に式IV〜VIでは、「アラルキル」は基アリール-アルキルを意味する。ただし、「アリール」および「アルキル」は上記定義と同様である。「アラルキル」はベンジルであることが好ましい。
【0030】
本発明では、置換は例えばヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、アミノによるH原子の置換を指す。
【0031】
PTC反応は、通常0〜10℃で少なくとも30分間、例えば0.5〜24時間、好ましくは少なくとも45分間、より好ましくは少なくとも1時間進行させる。
【0032】
例えば実施例2(ステップ1-B)の特定の条件下で、本発明のPTCは96%の収率である。したがって、本発明のPTCの収率は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%または96%である。
【0033】
式Iの化合物は、多くの供給業者、例えばSigma-AldrichまたはLancasterから入手することができる。N-Boc-D-セリンは、試薬としてメチル化剤の代わりにジ-t-ブチルジカーボネートを用いること以外は、本質的に上記した条件(例えば、アルカリ、溶媒、PCT-触媒、温度、反応時間等の選択および濃度/量)を用いる相間移動触媒作用反応で、D-セリンをジ-t-ブチルジカーボネートと反応させてN-Boc-D-セリンにすることによって得ることもできる。
【0034】
式Iの化合物のN-保護基がBoc(t-ブトキシカルボニル)である場合、好ましいPTC反応は以下のスキーム(ステップ1-B)で示すことができる。
【0035】
【化5】

【0036】
この反応では、生成物のラセミ化またはエステル化は起こらない。収率もさらに改良され、不純物はわずか約1%のレベルである。
【0037】
一般に、PTCによるメチル化後、特に、ステップ1-Bの後でのエステル不純物の量は1モル%よりずっと低く、好ましくは0.1モル%未満、通常検出限界未満である。
【0038】
本発明の方法は、式IIの化合物を処理して式IIIの化合物にするステップ(ステップ2)をさらに含むことができる。
【0039】
【化6】

【0040】
ベンジルアミドの生成は、式IIの化合物に、
(a)トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、炭酸水素カリウムまたはモルホリン誘導体、好ましくは4-メチルモルホリンなどの塩基と、
(b)カルボジイミドまたはクロロギ酸アルキル、好ましくはクロロギ酸イソブチルなどのカルボキシル基活性化剤
の存在下で、ある量のベンジルアミンを加えることによって実施することができる。
【0041】
実験的には、例えば実施例3(ステップ2)の条件下でのベンジルアミド生成の収率は一般に90%〜99%である。したがって、本発明のベンジルアミドの生成の収率は、少なくとも85%から99.9%の範囲、好ましくは少なくとも90%〜99%生成物の範囲である。
【0042】
このステップ2は基本的には米国特許第6048899号に記載されている。この特許を参照により本明細書に組み込む。
【0043】
本発明の方法における適切な保護基は、例えばt-ブトキシカルボニル(Boc)またはカルボベンズオキシ(Cbz)である。Boc基が特に好ましい。
【0044】
式IIIの化合物では、当業界で周知の適当な手段によって、保護基Rxを切断して(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドを得ることができる。例えば、保護基Rxがカルボベンズオキシ基である場合、米国特許第6048899号に記載のようにして、H2、Pd/Cを用いてRxを切断することができる。保護基がBoc基である場合、この基は通常塩酸などの酸で、例えば室温で好都合に除去することができる(ステップ3)。
【0045】
【化7】

【0046】
実験的には、例えば実施例3、ステップ3の条件下でのアミンの生成で、一般に95%〜100%の範囲の量の生成物を得る。したがって、本発明の方法でのアミン生成ステップは、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の生成物を得る。
【0047】
次いで、(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドを、無水酢酸を用いたN-アセチル化によって(ステップ4)ラコサミドに転換させることができる。
【0048】
【化8】

【0049】
実験的には、例えば実施例3、ステップ4の条件下でのアセチル化で、一般に81%〜95%の収率が得られる。したがって、本発明の方法でのアセチル化ステップの収率は少なくとも70%〜99%の範囲、好ましくは少なくとも80%〜95%の範囲である。
【0050】
このステップも米国特許第6048899号に記載されている。しかし、米国特許第6048899号は塩基、例えばピリジンの存在下での無水酢酸の使用を提案している。予想外なことに、毒性のピリジンを反応混合物から除いた場合でも、純粋な(R)-鏡像異性体を効率的に得ることができることをここに見出した。
【0051】
したがって、本発明の一実施形態は塩基、特にピリジンの不在下での、無水酢酸を用いた(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドのN-アセチル化のステップを含むラコサミドの製造である。塩基の存在しない反応の利点は、ピリジンなどの毒性の塩基を排除することができることである。
【0052】
最終的に、酢酸エチルなどの適当な溶媒で結晶化させることによって、ラコサミドを、ステップ4の反応混合物から高い純度で単離することができる。
【0053】
実験的には、ラコサミドは、実施例1〜4の特定の条件下で、一般に63%〜70%(ステップ1-Aでブチルリチウムを用いて)または66%〜75%(ステップ1-BでPTCを用いて)の収率で得られた。したがって、本発明の方法によって、ラコサミドを、少なくとも50%〜90%、好ましくは少なくとも60%〜80%の総合収率で得ることができる。有機金属化合物を用いる場合、ラコサミドの総合収率は、より好ましくは少なくとも60%〜70%の範囲、最も好ましくは少なくとも63%〜70%の範囲である。PTCを用いる場合、ラコサミドの総合収率は、より好ましくは少なくとも60%〜75%の範囲、最も好ましくは少なくとも66%〜75%である。
【0054】
式Iの化合物からの式IIの化合物の生成は上記ラコサミド合成の方法に含まれる。したがって、本発明の対象は、本質的にメチルエステルの生成または有意のラセミ化の起こらない上記O-メチル化による、式(I)の化合物からの式(II)の化合物の製造方法である。
【0055】
D-セリン誘導体またはL-セリン誘導体、あるいはD-セリン誘導体とL-セリン誘導体の任意の割合の混合物を、本発明の方法で用いることができる。
【0056】
本発明の方法におけるD-セリン誘導体および/またはL-セリン誘導体のアルコールのOH-基のO-メチル化の際に、生成物のメチルエステル生成と有意のラセミ化が本質的に起こらないため、式(II)の化合物および/またはラコサミドの製造のための本発明の方法は、収率の向上と、生成物の鏡像異性体純度の向上をもたらす。
【0057】
本発明は、本方法の重要な中間体にも関する。
【0058】
最も重要な中間体の(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)は、本発明によるO-メチル化ステップの改良によって得られる(図1を参照されたい)。この化合物は、フリーの酸として、または、例えばシクロヘキシルアンモニウム塩などの塩を形成させることによって、反応混合物から容易に単離することができる。適切なC-936塩も本発明の一部とみなすものとする。
【0059】
また、ベンジルアミド生成(図1のステップ2)により得られる(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)も本発明の一部を構成する。
【0060】
本発明の他の態様は、(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)を製造する方法における、付加体または中間体としてのC-936またはC-937あるいはその任意の塩の使用に関する。
【0061】
本発明のさらに他の態様は、次の
(a)本発明による方法によってラコサミドを生成するステップと、
(b)ラコサミドを、薬剤として許容される賦形剤と混合するステップ
による薬剤配合物の製造方法に関する。
【0062】
本発明の他の態様は、
【0063】
【化9】

【0064】
をO-メチル化して式VIIIの化合物
【0065】
【化10】

【0066】
(式中、R4はH、N-保護基であるか、および/または0〜30個のC原子を有する基であり、R1、R2およびR3は独立に、Hおよび0〜30個のC原子を有する基から選択される)
を生成することを含む式VIIIの化合物の生成方法であって、O-メチル化を1段反応で実施し、式VIIIの化合物を化合物VIIと同一構造で、少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の鏡像異性体純度で得ることを特徴とする方法である。
【0067】
R1、R2およびR3は独立に、水素、-OH、-SH、-NH2、-NO2、-CN、-COOH、-SOH、-SO2H、-SO3H、ハロゲン、-OR10、-SR10、-NR10R11、-SOR10、-SO2R10、-SO3R10、上記定義の置換または非置換のアルキル、置換または非置換のC2〜C6-アルケニル、置換または非置換のC2〜C6-アルキニル、-(CO)-R10、-(CO)-O-R10、-O-(CO)-R10、上記定義の置換または非置換のアリール、N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC3〜C13-ヘタリール、上記定義の置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のC7〜C15-アルカリール、N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC4〜C14-ヘタラルキル;N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC4〜C14-アルクヘタリール;あるいは、N、S、Oから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC3〜C12-シクロアルキルであることが好ましい。
【0068】
R1はHであり、R2はHであるか、かつ/またはR3はHであることがより好ましい。R1はHであり、R2はHであり、R3はHであることが最も好ましい。
【0069】
R4はR1およびN-保護基から選択されることが好ましい。R4は上記説明のN-保護基Rxであることがより好ましい。
【0070】
R1はHであり、R2はHであり、R3はHであり、R4は上記説明のRxであることがさらにより好ましい。
【0071】
置換基R4、R1、R2、R3では、基R10およびR11は独立に、水素、上記定義の置換または非置換のアルキル、置換または非置換のC2〜C6-アルケニル、置換または非置換のC2〜C6-アルキニル、上記定義の置換または非置換のアリール、N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC3〜C13-ヘタリール、上記定義の置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のC7〜C15-アルカリール、N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC4〜C14-ヘタラルキル;N、S、Oから独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC4〜C14-アルクヘタリール;あるいはN、S、Oから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する置換または非置換のC3〜C12-シクロアルキルである。
【0072】
基R4、R1、R2、R3、R10およびR11における置換は、1個または複数の上記定義の置換、例えばヒドロキシ、カルボキシ、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、アミノ等による置換を指す。
【0073】
化合物VIIIが化合物VIIと「同一構造」であるということは、本質的にラセミ化が起こらないか、あるいは、化合物VIIIが化合物VIIと同一構造で上記定義の鏡像異性体純度で得られることを意味する。化合物VIIがR構造である場合、化合物VIIIもR構造である。化合物VIIがS構造である場合、化合物VIIIもS構造である。
【0074】
化合物VIIはR構造であることが好ましい。
【0075】
鏡像異性体純度のパラメータは、必要な変更を加えて、鏡像異性体混合物に適用することができる。化合物VIIがR構造とS構造の混合物である場合、化合物VIIIは本質的にR構造とS構造の同じ混合物、すなわち、R構造とS構造の比が本質的に変わらないままであるか、あるいは、以下のような鏡像異性体の比が得られる。得られる化合物VIIIの鏡像異性体の比は、少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95、96、97、98または99%の化合物VIIの鏡像異性体比である。
【0076】
「1段反応」は以下で論じるのと同じ意味を有する。
【0077】
化合物VIIから化合物VIIIへの反応スキーマは、上記したようにして式IIの化合物を生成するための式Iの化合物の本発明によるO-メチル化の一般化である。化合物VIIがR構造である場合、R1はHであり、R2はHであり、R3はHであり、R4はRxであり、化合物VIIIは式IIの化合物に対応しており、例えば、上記のような反応ステップによるラコサミドの生成に用いることができる。化合物IIまたはVIIから出発して、N-ベンジルアミド基およびN-アセチル基を導入する適切な任意の方法によってラコサミドを生成することができる。したがって、特に好ましい実施形態では、化合物VIIはR構造であり、R4はRxである。R4がRxであり、R1がHであり、R2がHであり、R3がHであり、化合物VIIがR構造であることが最も好ましい。
【0078】
化合物VIIの本発明のO-メチル化は、有機金属化合物、特に上記定義の有機リチウム化合物の存在下で、式VIIの化合物にメチル化剤を加えて実施することができる。適切なメチル化剤は上記定義と同様である。代替の経路では、アルコール基の選択的O-メチル化は、上記定義の相間移動触媒作用によって実施することができる。
【0079】
式VIIの化合物のO-メチル化の具体的な実施形態は、上記式Iの化合物のO-メチル化を含むラコサミドの生成方法の具体的な実施形態、特に相間移動触媒作用、特に式IV、VおよびVIで定義の相間移動触媒、相間移動反応系およびその成分、有機金属化合物、相間移動触媒作用の際または有機金属化合物の存在下での反応条件、N-ベンジルアミド生成、N-脱保護およびN-アセチル化を含むラコサミドをもたらすさらなる反応ステップおよび反応条件等に関する具体的な実施形態に対応する。
【0080】
本発明の方法による化合物VIIのメチル化の収率は、有機金属化合物を用いた場合、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%である。PTCを用いた場合、化合物VIIのメチル化の収率は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%または96%である。
【0081】
本発明の方法におけるD-および/またはL-セリン誘導体のO-メチル化の際、本質的にメチルエステル生成や生成物の有意のラセミ化が起こらないため、式VIIの化合物のメチル化による式VIIIの化合物の生成のための本発明の方法は、生成物の収率と鏡像異性体純度が改良される結果となる。
【0082】
本発明を図1(代替のステップ1aまたは1bを含む)と以下の実施例によりさらに説明する。
【0083】
(実施例)
(実施例1)
ブチルリチウムを用いた(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)の生成(ステップ1a)
脱水テトラヒドロフラン(352ml)中のN-Boc-D-セリン(22g、0.107モル)の溶液を窒素雰囲気下で<-10℃に冷却した。これに、乾燥した添加漏斗で、温度を<10℃に保持しながらヘキサン中の15重量/重量%のn-ブチルリチウム(134ml、0.216モル)を加えた。得られたスラリーを0〜5℃で1時間熟成した。温度を0〜5℃に保持しながら硫酸ジメチル(12.1ml、0.128モル)を加え、反応混合物を0〜5℃で9時間熟成した。水(110ml)を加えて反応をクエンチさせ、30%水酸化ナトリウム(3ml)でpH10〜13に塩基性化し、テトラヒドロフラン/ヘキサンを真空下で蒸発させた。残留物をトルエン(44ml)で洗浄し、次いで50%クエン酸でpH<3.5に酸性化させた。酸性化した水相を塩化メチレン(2×91ml、1×66ml)で抽出し、一緒にしたC936抽出物を共沸蒸留で脱水した。蒸発させて23.7g、100%を得た。HPLC純度90.0%、キラル純度100%。
【0084】
(実施例2)
PTCを用いた(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)の生成(ステップ1b)
トルエン(110ml)中のN-Boc-D-セリン(22g、0.107モル)とテトラブチルアンモニウムブロミド(1.3g、0.004モル)の懸濁液を<10℃に冷却した。これに、温度を<10℃に保持しながら20%水酸化ナトリウム(17.6ml、0.107モル)を加え、得られた混合物を<10℃で30分間熟成した。温度を<10℃に保持しながら硫酸ジメチル(40.6ml、0.429モル)と50%水酸化ナトリウム(25.4ml、0.485モル)を加え、反応混合物を10℃で1時間熟成した。混合物に水(66ml)を加えて相を分離させた。水層を50%クエン酸でpH<3.5に酸性化して塩化メチレン(2×91ml、1×66ml)で抽出し、一緒にしたC936抽出物を共沸蒸留で脱水した。(蒸発により27.5g、100%、HPLC純度96.3%、キラル純度98.1%を得る)
【0085】
(実施例3)
ステップ2〜4
(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)溶液(ステップ2)
上記実施例2と同様にして生成したC936溶液を<-10℃に冷却し、クロロギ酸イソブチル(14.2ml、0.107モル)<-5℃で冷却した。N-メチルモルホリン(11.8ml、0.17モル)を<-5℃で加え、混合物を<-5℃で30分間熟成した。塩化メチレン中のベンジルアミン(12.2ml、0.11モル)の溶液を<-5℃で加え、混合物を室温に加温した。1時間熟成した後、混合物を水(44ml)、1N HCl(44ml)、8%重炭酸ナトリウム(44ml)および水(44ml)で洗浄して塩化メチレン中のC937溶液を得た。
【0086】
(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド溶液(ステップ3)
上記のようにして生成したC937溶液に36%HCl(46.5ml、0.541モル)を加え、混合物を1時間熟成した。水(66ml)を加え、相を分離させた。有機相を水(22ml)で抽出し、水層を一緒にした。水層を<35℃で30%水酸化ナトリウムでpH10〜12に塩基性化し、塩化ナトリウム(8.8g)を加えた。水層を塩化メチレン(2×110ml)で抽出し、一緒にした有機層を水(44ml)で洗浄して(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドの塩化メチレン溶液を得た。
【0087】
ラコサミド(ステップ4)
上記生成の(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド溶液を<5℃に冷却し、<15℃で無水酢酸(10ml、0.106モル)を加えた。反応混合物を30分間かけて室温に加温し、さらに30分間熟成した。次いで、混合物を水(44ml)、8%重炭酸ナトリウム(44ml)および水(44ml)で洗浄した。蒸留によって塩化メチレンを酢酸エチルに交換して、115mlの体積になるまで溶液を蒸留した。溶液を0〜5℃に冷却して生成物を結晶化させ、純粋なラコサミドをろ過により単離した(18.7g、69.8%)。HPLC純度99.98%、キラル純度99.8% ee。
【0088】
(実施例4)
(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)の単離
実施例1で生成した(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)溶液を真空下で蒸発させて(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)をワックス状の固形物(23.7g、100%)として得た。HPLC純度90.0%。元素分析:C9H17NO5の計算値49.31%C;7.82%H;6.39%N。分析値49.12%C;7.72%H;8.97%N。
【0089】
(実施例5)
(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)の単離
上記実施例3で生成した(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)溶液を真空下で蒸発させて粗C937を油状固形物として得た。粗製固形物(2g)を60℃でヘキサン(30ml)中の10%クロロホルム中に溶解し、室温に冷却してこの温度で1時間放置した。得られた固形物をろ過により単離して粗C937(1.1g)を得た。この粗製固形物をさらに、10倍容積のヘキサン中の10%クロロホルムで2回再結晶化させて(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)を白色結晶性固形物(0.28g、14%)として得た。HPLC純度97.3%。元素分析:C16H24N2O5の計算値62.32%C;7.84%H;9.08%N。分析値62.19%C;7.79%H;9.04%N。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

をO-メチル化して式IIの化合物
【化2】

(式中、RxはN-保護基である)
を生成することを含む(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)の生成方法であって、
O-メチル化を1段反応で実施し、式IIの化合物を少なくとも88%純度のR-鏡像異性体として得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
(a)相間移動触媒作用によるか、または(b)式Iの化合物にメチル化剤および有機リチウム化合物を加えることによって実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物、水相、有機相および相間移動触媒を含む相間移動反応系へのメチル化剤の添加を含む請求項1または2の一項に記載の方法。
【請求項4】
相間移動触媒としてピリジニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩またはスルホニウム塩を用いる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
相間移動触媒が、
(a)一般式IV
【化3】

(b)一般式V
【化4】

または
(c)一般式VI
【化5】

(式中、存在する場合、R、R'、R"およびR"'は独立に、アルキル、アリールまたはアラルキル基から選択され、
式IVの化合物中のQは窒素またはリンであり、
Xはハライド、酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、水酸化物、過塩素酸、硫酸水素、チオシアン酸またはテトラフルオロホウ酸の基である)
の化合物から選択される請求項3または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
相間移動触媒がテトラブチルアンモニウムブロミドである請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
相間移動触媒作用において用いるメチル化剤が硫酸ジメチル、リン酸トリメチルまたはヨウ化メチルから選択される請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水相が水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液または炭酸カリウム水溶液である請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒がトルエン、ヘキサン、塩化メチレンまたはメチルt-ブチルエーテルである請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
相間移動触媒作用を0〜10℃で少なくとも30分間実施する請求項2から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機リチウム化合物と共に用いるメチル化剤が硫酸ジメチルである請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
有機リチウム化合物がブチルリチウムである請求項2または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
有機リチウム化合物の存在下でのO-メチル化を、0〜10℃の温度で少なくとも5時間実施する請求項2または11から12に記載の方法。
【請求項14】
化合物IIをベンジルアミンと反応させて式IIIの化合物
【化6】

を得、次いで保護基Rxをメチルカルボニルで置換して、(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)を得ることをさらに含む請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式IIの化合物とベンジルアミンの反応を、カルボキシル基の活性化剤および塩基の存在下で実施する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
塩基が4-メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1.8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンまたは炭酸水素カリウムであり、カルボキシル基の活性化剤がクロロギ酸アルキルまたはカルボジイミドである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
逐次、(a)(i)鉱酸または(ii)H2/Pd-Cの添加によって式IIIの化合物から保護基Rxを離脱させて(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドを得るステップと、
(b)(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドと無水酢酸の反応によって、メチルカルボニル基を(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドに付加するステップ
を行うことによって、N-保護基Rxをメチルカルボニルで置換する請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)を、ピリジンの不在下で実施する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ラコサミドを、結晶化によって最終反応ミックスから単離する請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
N-保護基がt-ブチオキシカルボニル(Boc)である請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ピリジンの不在下での(R)-2-アミノ-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミドの無水酢酸によるN-アセチル化ステップを含む、(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)の生成方法。
【請求項22】
(R)-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロパン酸(C-936)およびその塩。
【請求項23】
(R)-N-ベンジル-2-N-Boc-アミノ-3-メトキシプロピオンアミド(C-937)。
【請求項24】
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド(ラコサミド)の生成方法における請求項22または23に記載の化合物の使用。
【請求項25】
(a)請求項1から24のいずれか一項によってラコサミドを生成するステップと、
(b)ラコサミドを薬剤として許容される賦形剤と混合するステップ
によってラコサミドを含む医薬製剤を製造する方法。
【請求項26】
相間移動反応で、D-セリンをジ-t-ブチルジカーボネートと反応させることによってN-Boc-D-セリンを生成する方法。
【請求項27】
式VIIの化合物
【化7】

をO-メチル化して式VIIIの化合物
【化8】

(式中、R4はH、N-保護基および/または0〜30個のC原子を有する基であり、R1、R2およびR3は独立に、Hおよび0〜30個のC原子を有する基から選択される)
を生成することを含む式VIIIの化合物の生成方法であって、O-メチル化を1段反応で実施し、式VIIIの化合物を化合物VIIと同じ構造で、少なくとも88%純度で得ることを特徴とする方法。
【請求項28】
(a)相間移動触媒作用によるか、または(b)式VIIの化合物にメチル化剤および有機リチウム化合物を加えることによって実施することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
R1がHであり、R2がHであり、R3がHであり、R4がN-保護基である請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
化合物VIIがR-構造である請求項27から29のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−514669(P2008−514669A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533955(P2007−533955)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010603
【国際公開番号】WO2006/037574
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507038467)シュヴァルツ・ファーマ・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】