説明

ラベルシート

【課題】 複雑な工程を経ることなく製造でき、かつどの部分にも自在に重剥離領域を形成することができるラベルシートを提供する。
【解決手段】 本発明に係るラベルシート1では、端辺部分11が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域30とされている。それにより、プリンタ内をラベルシート1が搬送される際に、プリンタ内部の熱やローラの押圧によってラベルシートの端辺部分11から粘着剤層4の糊がはみ出てしまうのを防止できる。従って、ラベルシート1からはみ出た糊がプリンタ内部のドラムやローラといった部材に付着するのを確実に防止でき、用紙の給紙トラブルやプリンタの故障等の問題が発生するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルを有するラベルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタにより印刷されるラベルと、ラベルの粘着剤層に剥離可能に貼り合わされた剥離紙とを有するプリンタ用のラベルシートが知られているが、プリンタ内をラベルシートが搬送される際に、プリンタ内部の熱やローラの押圧によってラベルシートの端辺から糊がはみ出てしまうことがあった。そして、このはみ出た糊がプリンタ内部のドラムやローラといった部材に付着することにより、用紙の給紙トラブルやプリンタの故障等の問題が発生していた。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に示すプリンタ用タック紙が提案されている。特許文献1に係るプリンタ用タック紙は、ラベル紙と、ラベル紙の粘着面に貼り合わされた剥離紙とを備え、ラベル紙の粘着面には、粘着剤が塗布された塗布部、またこの塗布部に沿って粘着剤が塗布されていない非塗布部が形成されている。このプリンタ用タック紙は、ラベル紙に粘着剤の塗布部と非塗布部とから構成される粘着面を形成した後、ラベル紙と剥離紙との貼り合わせ工程を経て製造されるようになっている。そしてこのプリンタ用タック紙では、非塗布部が形成されていることによってラベル紙全体の透気性が高められるので、プリンタでの搬送過程でラベル紙の端辺から粘着剤がはみ出してしまうのを確実に防止できるという効果を得ることができる。
【特許文献1】 特開平6−55878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に係る発明のプリンタ用タック紙は、ラベル紙と剥離紙とを貼り合わせる前工程にて粘着剤の塗布部と非塗付部とを形成しなくてはならず、製造工程が煩雑であるという問題があった。また、プリンタ用タック紙を成形した後は、粘着剤の分布を一切変更することができないという問題があった。ここで、ラベルシートにおいては、ラベルの捲り上げのきっかけをできるだけ軽くしたいというニーズがあるが、上記文献に係る技術をラベルシートに適用した場合、捲り始めの箇所を粘着剤の非塗付部にしておけば軽く捲り上げることができる。しかしながら、ラベル紙を捲り取った後のそのラベルの使用時に、部分的に被着体に粘着しない箇所が生じるという問題が発生することになる。また、ラベルシートにおいては、プリンタ内で誤ってラベルが剥がれないようにする必要があり、ラベルの周縁部をしっかりとシートに止めておきたいというニーズもある。そのような用途に対して上記文献に係る技術をラベルシートに適用した場合、ラベル単体の周縁部にはしっかりと粘着剤を塗付しておき、それ以外の箇所を粘着剤の非塗付部とすることが考えられるが、ラベル紙を捲り取った後のそのラベルの使用時に、部分的に被着体に粘着しない箇所が生じるという問題が発生することになる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、複雑な工程を経ることなく製造でき、かつどの部分にも自在に重剥離領域を形成することができるラベルシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るラベルシートは、基材層と粘着剤層とが一体的に積層された基材シートと、該基材シートの粘着剤層側に剥離可能に重ね合わされた剥離層を有する剥離シートとを備え、前記基材シートを貫通した切れ目によって形成された粘着ラベルを有するものであって、前記ラベルシートの端辺およびその近傍が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされていることを特徴とする。また、好適には、前記重剥離領域の剥離強度を、50N/m以上とすることが望ましい。
【0007】
また、本発明に係るラベルシートは、基材層と粘着剤層とが一体的に積層された基材シートと、該基材シートの粘着剤層側に剥離可能に重ね合わされた剥離層を有する剥離シートとを備え、前記基材シートを貫通した切れ目によって形成された粘着ラベルを有するものであって、前記粘着ラベルの縁部分が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされていることを特徴とする。また、好適には、前記粘着ラベルの重剥離領域の剥離強度を、5N/m〜50N/mとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るラベルシートでは、端辺およびその近傍が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされている。それにより、プリンタ内をラベルシートが搬送される際に、プリンタ内部の熱やローラの押圧によってラベルシートの端辺から糊がはみ出てしまうのを防止できる。従って、ラベルシートからはみ出た糊がプリンタ内部のドラムやローラといった部材に付着するのを確実に防止でき、用紙の給紙トラブルやプリンタの故障等の問題が発生するのを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係るラベルシートでは、基材シートを貫通した切れ目によって形成された粘着ラベルの縁部分が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされているので、プリンタ内をラベルシートが搬送される際に、粘着ラベルが誤って剥がれ落ちてしまうのを確実に防止できる。従って、用紙の給紙トラブルやプリンタの故障等を防止できる。また、使用者が粘着ラベルを捲り取る際も、最初は剥離が重く感じるものの、重剥離領域を通過すればその後はラベルを従来どおり軽く剥がし取ることができるので、ラベルの剥がし取り作業に悪影響が及ぶことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化したラベルシートの一実施形態について図を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、ラベルシート1の全体構造について説明する。ここで、図1は、ラベルシート1の斜視図であり、図2は、図1におけるA−A線矢視方向断面図である。尚、以下に示すラベルシートの剥離強度とは、ラベルシートを、180°ピール力、剥離速度0.3m/分の条件で剥離させたときの粘着力をいう。図1および図2に示すように、ラベルシート1は、所定厚を有する略長方形状で、紙製の基材層3と粘着性を有する粘着剤層4とが一体的に積層された基材シート5と、基材シート5の直下に積層されたシリコン樹脂からなる剥離層7と紙製の剥離基材層8とを備えた剥離シート10とから構成されている。また、基材シート5を貫通するように、平面視長方形状の閉じたループ状の切れ目13が形成されており、当該切れ目13によってラベルシート1には10枚の粘着ラベル14が形成されている。
【0011】
尚、基材シート5の基材層3および剥離シート10の剥離基材層8の材質としては、上質紙、中質紙、クラフト紙、アート紙、コート紙などを採用することができ、必要に応じてポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムをラミネートしてもよい。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルのような高分子フィルム等を基材として使用することもできる。
【0012】
また、ラベルシート1の端辺部分11およびその近傍には、周りよりも剥離強度の高い重剥離領域30(図2において網状のハッチングで示す。)が形成されている。この重剥離領域30は、ラベルシート1に例えば電子線を照射して、電気的な改質処理を施すことによって形成されるようになっている。また、図3に示すように、ラベルシート1の長手方向(図1中奥行き方向)側の両端辺部分11においても同様に、重剥離領域30が形成されている。即ち、ラベルシート1では、その4つの端辺部分11の全てが重剥離領域30とされており、周りの部分(シートの中央部分)よりも剥離強度が高い状態となっている。
【0013】
また、ラベルシート1の重剥離領域30では、通常のラベルシートの剥離強度(端辺部分を含む)が例えば0.5N/m〜20N/mに設定されているのに対して、剥離強度を50N/m以上としている。これにより、粘着剤層4および当該層の糊と剥離層7とを確実に結合させて、糊が粘着剤層4にて動くのを拘束している。従って、ラベルシート1の端辺部分11からの糊のはみ出しを防止することができるので、ラベルシート1からはみ出た糊が図示外のプリンタ内部のドラムやローラといった部材に付着するのを確実に防止でき、用紙(ラベルシート)の給紙トラブルやプリンタの故障等の問題が発生するのを未然に防ぐことができる。また、本実施形態のラベルシート1では、電気的な改質処理を施すことによってシート端辺部分の剥離強度を高くするようにしたので、複雑な工程を経ることなく製造ができ、またシートの成形後にも所望箇所の剥離強度を自在に高くすることができ、非常に成形性に優れている。
【0014】
次に、本発明に係るラベルシートの他の実施形態について、図4を参照して説明する。図4は、ラベルシート50の断面図(図1におけるA−A線矢視方向断面を示す)である。尚、本実施形態において、上記実施形態と同じ構成部材には同符号を付け、詳細な説明は省略する。本実施形態のラベルシート50では、そのシート端辺部分11ではなく、個々の粘着ラベル14の左右両縁部分24,24に重剥離領域30が形成されている点が上記実施形態のラベルシート1とは異なる。図4に示すように、ラベルシート50は、ラベルシート1と略同一の形状及び積層形態となっており、基材シート5を貫通した切れ目13によって粘着ラベル14が形成されている。そして、粘着ラベル14の左右両縁部分24,24が重剥離領域30(図4の網状ハッチング部分)となっており、粘着ラベル14の周りの部分(横方向の中央部分)よりも剥離強度が高い状態となっている。この重剥離領域30は、上記実施形態と同様に、ラベルシート50の該当部分に例えば電子線を照射して、電気的な改質処理を施すことによって形成されるようになっている。
【0015】
粘着ラベル14の左右両縁部分24,24、即ち重剥離領域30の剥離強度は、およそ15N/mに設定されており、これに対してその縁部分24,24に挟まれた左右方向中央部分の剥離強度はおよそ2N/mとなっている。ここで、従来のラベルシートの粘着ラベルは、ラベルシートから個々のラベルが剥がれ落ちてしまうのを防止する目的でその剥離強度がおよそ5N/m〜15N/mと比較的高めに設定されていたので、ラベルの捲り初めから剥がし終わりまで一定して剥離が重い感じがした。これに対し、本実施形態のラベルシート50では、左右両縁部分24,24のみを重剥離領域30としたので、シートからラベルが誤って剥がれ落ちてしまうのを確実に防止できると共に、粘着ラベル14の捲り初めはやや重く感じるものの、重剥離領域30を通過した後は従来の粘着ラベルよりも軽く捲り取ることができる。
【0016】
以上説明したように、本実施形態のラベルシート50では、粘着ラベル14がプリンタ内部等において誤って剥がれてしまうのを確実に防止でき、用紙(ラベルシート)の給紙トラブルやプリンタの故障等の問題が発生するのを未然に防ぐことができる。また、本実施形態のラベルシート50では、電気的な改質処理を施すことによってシート端辺部分の剥離強度を高くするようにしたので、複雑な工程を経ることなく製造ができ、またシートの成形後にも所望箇所の剥離強度を自在に高くすることができ、非常に成形性に優れている。
【0017】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ラベルシートを矩形とし、粘着ラベルも同様に矩形としたが、シートおよびラベルの形状はこれらに限られず、用途等に合わせて適宜変更可能である。また、上記実施形態では、粘着ラベルの左右両縁部分に重剥離領域を形成した例を挙げたが、粘着ラベルの縁部分であれば、この左右両縁部分に限られず重剥離領域を形成することが可能である。さらに、上記実施形態では、重剥離領域を形成するのに、電子線照射によって電気的な改質処理を施したが、コロナ放電等の方法を用いて改質処理を施してもよい。ただし、コロナ放電処理は、一旦基材シートを剥離して剥離層を露出させた状態で行う必要がある。加えて、上記実施形態では、端辺部分に重剥離領域を形成したラベルシート、個々の粘着ラベルの縁部分に重剥離領域を形成したラベルシートをそれぞれ個別に説明したが、これら両構成を何れも備えたラベルシートを提供できることはいうまでもない。例えば図5に示すように、ラベルシート75として、シート自身の端辺部分11および粘着ラベル14の左右両縁部分24,24の両方を重剥離領域30とすることができる。これにより、上記した各実施形態のラベルシートによる効果の両方を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 ラベルシート1の斜視図である。
【図2】 図1におけるA−A線矢視方向断面図である。
【図3】 図1におけるB−B線矢視方向断面図である。
【図4】 ラベルシート50の断面図である。
【図5】 ラベルシート75の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ラベルシート
3 基材層
4 粘着剤層
5 基材シート
7 剥離層
8 剥離基材層
10 剥離シート
11 端辺部分
24 縁部分
50 ラベルシート
75 ラベルシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層とが一体的に積層された基材シートと、該基材シートの粘着剤層側に剥離可能に重ね合わされた剥離層を有する剥離シートとを備え、前記基材シートを貫通した切れ目によって形成された粘着ラベルを有するラベルシートであって、
前記ラベルシートの端辺およびその近傍が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされていることを特徴とするラベルシート。
【請求項2】
前記重剥離領域の剥離強度が、50N/m以上であることを特徴とする請求項1に記載のラベルシート。
【請求項3】
基材層と粘着剤層とが一体的に積層された基材シートと、該基材シートの粘着剤層側に剥離可能に重ね合わされた剥離層を有する剥離シートとを備え、前記基材シートを貫通した切れ目によって形成された粘着ラベルを有するラベルシートであって、
前記粘着ラベルの縁部分が、電気的な改質処理によって剥離強度の高い重剥離領域とされていることを特徴とするラベルシート。
【請求項4】
前記粘着ラベルの重剥離領域の剥離強度が、5N/m〜50N/mであることを特徴とする請求項3に記載のラベルシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−309091(P2006−309091A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154573(P2005−154573)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(501244200)ヒサゴレーベル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】