説明

ラミネート外装電池

【課題】ラミネート外装体の封止部におけるタブの横断領域での封止信頼性が高く、安定した品質を有するラミネート外装電池を提供する。
【解決手段】電極体10は、ラミネート外装体20の内部空間に収納されている。電極体10の正極板、負極板には、それぞれ正極タブ、負極タブ15が接続されている。正極タブ、負極タブ15は、ラミネート外装体20の封止部20cを横断して、一部が外部へ延出されている。負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する横断領域では、負極タブ15の厚み方向(X軸方向)において、Z軸方向左側の延出先端側での外表面同士の間隔tが、根元側での間隔tよりも狭くなっている。換言すると、ラミネート外装体20における横断部分での一方の面20c21は水平であるのに対し、他方の面20c22はZ軸方向左側よりも右側がX軸方向に高くなるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート外装電池に関し、特に、タブの延出部におけるラミネート外装体の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器などの普及に伴い金属ラミネートシートからなるラミネート外装体を備えたラミネート外装電池が普及している。ラミネート外装電池は、正極板と負極板とが間にセパレータを介して構成された電極体が、金属ラミネートシートがプレス加工および曲折加工されることで構成されたラミネート外装体に収納された構成を有する。
電極体における正極板には正極タブが接続され、負極板には負極タブが接続されている。正極タブおよび負極タブは、それぞれラミネート外装体における外縁部を封止してなる封止部の一部を横断して外部に延出されている。負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する領域の従来構成について、図7を用い説明する。
【0003】
図7に示すように、ラミネート外装体920は、Al層921の両主面が樹脂層922,923で被覆された構成を有する。そして、電極体910の正極板および負極板には、それぞれ正極タブおよび負極タブ915が接続されており、これら正極タブおよび負極タブ915がラミネート外装体920における封止部を横断する領域では、ラミネート外装体920における内側樹脂層922と正極タブおよび負極タブ915との各間に、タブ樹脂932が介挿されている。このタブ樹脂932は、正極タブおよび負極タブ915が横断する領域における封止性を確保するために介挿されており、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)から構成されている。
【0004】
また、ラミネート外装体920の封止部における正極タブおよび負極タブ915の横断領域においては、タブの厚みを逃がすために、当該部分をブリスター状に膨らませる構成が採用されている(外表面920f、920f)。これにより、熱溶着による封止の際に、ラミネート外装体のAl層921と正極タブおよび負極タブ915とが直接接触するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−348695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術に係るラミネート外装電池では、ラミネート外装体920の封止部におけるタブの横断部分において、封止信頼性が低いという問題があった。この問題について、本発明者が原因について検討したところ、タブの延出方向における根元側、即ち、封止部分における収納空間に近い側(図7の矢印Cで指し示す部分)での封止厚みが不安定になることがあり、このように封止厚みの不安定さが封止信頼性の低下に結びついていることを究明した。
【0007】
このように封止信頼性が低いラミネート外装電池においては、電池性能の低下にも繋がり、改善が必要となる。
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、ラミネート外装体の封止部におけるタブの横断領域での封止信頼性が高く、安定した品質を有するラミネート外装電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、次のような構成を特徴とする。
本発明に係るラミネート外装電池は、電極体とラミネート外装体と正極タブおよび負極タブを備える。
電極体は、正極板および負極板を有し構成されている。
ラミネート外装体は、金属層と樹脂層とが積層されてなる金属ラミネートシートが、電極体を収納する内部空間を有し、電極体が収納された状態で外縁部を封止する封止部を有する。
【0009】
正極タブおよび負極タブは、各々が導電材料からなり、正極板および負極板の各々に接続され、ラミネート外装体の封止部を横断して各一部が外部へと延出されている。
本発明に係るラミネート外装電池では、正極タブおよび負極タブの少なくとも一方がラミネート外装体の封止部を横断する横断領域では、当該タブの厚み方向におけるラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出の方向における根元側よりも延出端側で狭くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るラミネート外装電池では、正極タブおよび負極タブの少なくとも一方がラミネート外装体の封止部を横断する横断領域において、当該タブの厚み方向におけるラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出の方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている、という構成を採用している。これにより、上記少なくとも一方のタブに対応する横断領域では、タブの延出端側に対して根元側でのタブの応力が緩和された状態となっている。このため、上記横断領域の根元側における封止厚みの安定化を図り、封止信頼性の低下を抑制することができる。
【0011】
従って、本発明に係るラミネート外装電池では、ラミネート外装体の封止部における上記少なくとも一方のタブの横断領域での封止信頼性が高く、安定した品質を有する。
本発明に係るラミネート外装電池では、一例として次のようなバリエーション構成を採用することもできる。
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、上記少なくとも一方のタブがラミネート外装体の封止部を横断する横断領域では、当該タブの厚み方向におけるラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出の方向における根元側から延出端側に向けて漸減している、という構成を採用することもできる。
【0012】
このように、上記少なくとも一方のタブに対応する横断領域では、当該タブの厚み方向におけるラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出の方向における根元側から延出端側に向けて漸減している、という構成を採用する場合には、上記横断領域に段差を有さず、なだらかに間隔の変化を実現することができ、さらに高い封止信頼性を得ることができる。
【0013】
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、上記少なくとも一方のタブがラミネート外装体の封止部を横断する横断領域において、当該タブの厚み方向におけるラミネート外装体の外表面同士の間隔が漸減することにより構成されるテーパ部分のテーパ角を1°〜3°とすることができる。
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、負極タブが正極タブよりも厚い板材を以って構成されており、ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっているという構成を採用するのが、負極タブに対応する横断領域である、という構成を採用することができる。
【0014】
従来技術に係るラミネート外装電池の構成では、正極タブに対して板材の厚みが相対的に厚い負極タブにおいて、封止時における横断領域の根元側での応力が高くなる。これに対して、上記のように本発明に係る構成を負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する横断領域に適用すれば、負極タブの横断領域における封止信頼性を確実に高くすることができる。よって、ラミネート外装電池全体としての信頼性向上を図ることができる。
【0015】
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、タブの延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている横断領域において、ラミネート外装体における内側の樹脂層の圧縮度合いが、延出端側よりも根元側で緩和されている、という構成を採用することもできる。このような構成の採用により、横断領域の根元側におけるタブの応力についても緩和することができ、封止信頼性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、正極タブおよび負極タブの各々がラミネート外装体の封止部を横断する各横断領域において、当該タブと金属ラミネートシートとの各間に、ラミネート外装体における樹脂層とは異なる樹脂材料からなる樹脂シートが介挿されており、ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている横断領域では、樹脂シートの圧縮度合いが、延出端側よりも根元側で緩和されている、という構成を採用することもできる。このように樹脂シートの圧縮度合いについて、横断領域の延出端側よりも根元側で緩和されている構成とすれば、横断領域の根元側でのタブの応力についても緩和することができる。よって、さらに封止信頼性の向上を図ることができる。
【0017】
本発明に係るラミネート外装電池では、上記構成において、ラミネート外装体では、金属層に対し、少なくとも内側に樹脂層が積層されており、正極タブおよび負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する横断領域において、各タブは、その厚み方向の両側をラミネート外装体における内側の樹脂層で密に被覆されている、という構成を採用することもできる。これにより、さらに高い封止信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るラミネート外装電池1の構成を示す模式斜視図(一部切り欠き)である。
【図2】ラミネート外装電池1における負極タブ15の延出部構成を示す模式断面図である。
【図3】ラミネート外装電池1の製造過程の一部を示す模式工程図である。
【図4】ラミネート外装電池1の製造過程の内、負極タブ15の延出部周辺の封止に係る工程を示す模式工程図である。
【図5】実施例および比較例に係るラミネート外装電池について、保存日数と電池膨れとの関係を示す特性図である。
【図6】(a)は、変形例1に係るラミネート外装電池の製造に用いるラミネート成形型521,522の構成を示す模式断面図であり、(b)は、変形例2に係るラミネート外装電池の製造に用いるラミネート成形型531の構成を示す模式断面図であり、(c)は、変形例3に係るラミネート外装電池の製造に用いるラミネート成形型541の構成を示す模式断面図である。
【図7】従来技術に係るラミネート外装電池の構成の内、負極タブ915の延出部構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明を実施するための形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で示す具体例は、本発明の構成およびその構成から奏される作用・効果を分かりやすく説明するために用いる一例であって、本発明は、発明の本質とする構成部分以外について、以下の具体例に何ら限定を受けるものではない。
[実施の形態]
1.全体構成
本実施の形態に係るラミネート外装電池1の構成について、図1を用い説明する。
【0020】
図1に示すように、ラミネート外装電池1は、正極板11、負極板12およびセパレータ13からなる電極体10が、金属ラミネートシートからなるラミネート外装体20の内部に構成された空間(収納空間)に収納された構成を有する。本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、電極体10は、セパレータ13を間に挟んで正極板11と負極板12とが対向配置され、当該状態で渦巻き状に巻回された巻回体構造を有する。
【0021】
ここで、電極体10における正極板11は、アルミニウム箔にコバルト酸リチウム(LiCoO)を塗布することで構成されており、負極板12は、銅箔に黒鉛(グラファイト)粉末を塗布することで構成されている。また、セパレータ13としては、例えば、厚みが0.03mmの多孔質ポリエチレンで構成されている。
また、図1では図示を省略しているが、ラミネート外装体20の収納空間に収納された電極体10には、ポリマー電解質が含浸されている。本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、ポリマー電解質として、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートとEC/DEC混合物(質量比が30:70)とを、1:10の比率で混合し、これにLiPFを1mol/L添加して、加熱重合することでゲル化させたものを採用することができる。
【0022】
ラミネート外装体20は、一枚の金属ラミネートシートをプレス加工および曲折加工して形成されており、Z軸方向下側のボトム部20aを除く、三方の外縁部が熱溶着により封止され、三方に封止部20b,20c,20dを有する、所謂、三方封止の構成を有する。
電極体10の正極板11に対しては、正極タブ14が接続され、負極板12に対しては、負極板15が接続されている。正極タブ14および負極タブ15は、ラミネート外装体20におけるZ軸方向上側の封止部20cを横断して外方に延出されている。各タブ14,15とラミネート外装体20の内面との間には、接着強度を確保して封止性を高くするため、および、ラミネート外装体20における端辺に露出するラミネート外装体20の金属層(Al層)との間の絶縁性確保のために、タブ樹脂31,32がそれぞれ介挿されている。
【0023】
ここで、正極タブ14は、例えば、アルミニウム(Al)またはその合金からなり、また、負極タブ15は、銅(Cu)またはニッケル(Ni)、あるいはそれらの合金からなる。負極タブ15の板厚は、正極タブ14の板厚に対して厚くなっている。
ラミネート外装体20におけるZ軸方向上側の封止部20cにおいては、正極タブ14および負極タブ15が横断する領域において、正極タブ14および負極タブ15をその厚み方向(X軸方向)に逃がすためのタブ逃がし部20c,20cが設けられている。タブ逃がし部20c,20cは、正極タブ14および負極タブ15をその厚み方向に逃がすためにブリスター状に加工された部分である。
【0024】
2.負極タブ15が封止部20cを横断する領域の構成
負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域の構成について、図2を用い説明する。図2は、図1の矢印Aで指し示す部分の構成を示す模式断面図である。
図2に示すように、ラミネート外装体20は、金属層(Al層)21の両主面が内側樹脂層22と外側樹脂層23とで被覆された構成を有する。なお、図示を省略しているが、ラミネート外装体20においては、金属層21と外側樹脂層23との間に、例えば、厚みが5μm程度のドライラミネート接着層(接着剤層)が介挿されている。
【0025】
負極タブ15がラミネート外装体20における封止部20cを横断する領域においては、負極タブ15とラミネート外装体20における内側樹脂層22との間に、タブ樹脂32が介挿されている。このタブ樹脂32は、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)から構成されており、封止性の確保および絶縁性の確保を目的として介挿されている。
負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域では、ラミネート外装体20のX軸方向下側の表面20c21は、Z軸に沿って水平となっているのに対して、上側の表面20c22は、Z軸方向の左側から右側に行くに従ってX軸方向上側に高くなるよう傾斜がついている。換言すると、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域において、ラミネート外装体20の表面20c21と表面20c22との間の間隔が、延出端側での間隔tに対して根元側での間隔tが大きくなっている。即ち、次式の関係を有する。
【0026】
[数1]t<t
また、本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域において、ラミネート外装体20における内側樹脂層22およびタブ樹脂32について、負極タブ15の延出方向における延出端側での圧縮率よりも、根元側での圧縮率の方がそれぞれ低い状態となっている。
【0027】
本実施の形態では、間隔tの規定箇所と間隔tの規定箇所との間の、Z軸方向の離間距離をLとするとき、例えば、次式の関係を満足する。
[数2]1°≦tan−1((t−t)/L)≦3°
3.効果
本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域において、図2に示すように、負極タブ15の延出方向における根元側の間隔tが、延出端側での間隔tより広くなっている(上記(数1))。これにより、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域では、負極タブ15の延出端側に対して根元側(図2の矢印Bで指し示す部分)での負極タブ15の応力が緩和された状態となっている。
【0028】
また、本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域において、ラミネート外装体20の一方の表面20c22が上記(数2)の関係を満たすように、1°〜3°のテーパ角がついている。このため、負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域において、ラミネート外装体20の表面20c21と表面20c22との間の間隔がなだらかに変化している。
【0029】
以上より、本実施の形態に係るラミネート外装電池1では、ラミネート外装体20の封止部20cにおける負極タブ15の横断領域での封止信頼性が高く、安定した品質を有する。
なお、本実施の形態においては、正極タブ14がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域については、特に言及しなかったが、図2に示すのと同様の構成を採用することもできる。ただし、負極タブ15に比べて板厚が薄い正極タブ14については、必ずしも図2に示すのと同様の構成を採用しなくても、正極タブ14の応力が問題にならない場合もあり、封止信頼性に影響しない場合がある。
【0030】
4.製造方法
本実施の形態に係るラミネート外装電池1の製造方法について、図3を用い説明する。なお、以下では、ラミネート外装電池1の製造工程の一部を抽出して説明する。
先ず、図3(a)に示すように、電極体10に正極タブ14および負極タブ15を接続する。そして、正極タブ14および負極タブ15のそれぞれに対して、タブ樹脂31,32を被着する。
【0031】
次に、金属ラミネートシート200のカップ状に形成された凹部200gに対し、正極タブ14および負極タブ15などが接続された電極体10を収納する。このとき、正極タブ14および負極タブ15と金属ラミネートシート200のトップ側の外縁部200cとの間には、タブ樹脂31,32が挟まる状態となる。
次に、折り線Lを境として、主面部200fを主面部200eへと折り返す。これにより、主面部200fの外縁部が外縁部200b,200c,200dに重なり、凹部200gが主面部200fにより覆われる。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、電極体10が収納され、折り曲げ加工された金属ラミネートシート201を、ラミネート成形型501の凹部501aの内部に収容し、ラミネート成形型502により上からプレスする。このとき、ラミネート成形型501,502における金属ラミネート201の外縁部201b,201c,201dに相当する領域には、ヒーターが内蔵されており、外縁部201b,201c,201dにおいて、金属ラミネートシート201の内側樹脂層22同士が溶着する。
【0033】
なお、金属ラミネートシート201の正極タブ14および負極タブ15の横断領域においては、金属ラミネートシート201の内側樹脂層22がタブ樹脂31,32に対してそれぞれ溶着する。
図3(b)に示すラミネート成形工程の内、負極タブ15がラミネート外装体201の外縁部201cを封止してなる封止部を横断する領域の詳細について、図4を用い説明する。
【0034】
図4(a)に示すように、プレス加工前の負極タブ15は、Z軸に沿って略直線状に延伸した状態になっている。そして、この状態においては、負極タブ15に対しX軸方向上側に被さる金属ラミネートシート201についても、略平板状となっている。
ラミネート成形型502は、金属ラミネートシート201の封止部に対応する部分の面502fが、Z軸に平行な水平面となっている。即ち、ポイントPとポイントPとは、X軸方向における高さが同一となっている。
【0035】
一方、ラミネート成形型501は、金属ラミネートシート201の封止部に対応する部分の面501fが、Z軸に平行な水平ではなく、Z軸方向左側から右側へと行くに従ってX軸方向上側となるテーパ状となっている。即ち、ポイントPは、ポイントPに対して、X軸方向における高さが高い位置にある。
図4(a)に示すような配置状態から、ラミネート成形型501,502を閉じて行く。これにより、図4(b)に示すように、封止されてなる封止部20cを有するラミネート外装体20が完成する。そして、負極タブ15とラミネート外装体20との相互の関係は上述の通りである。
【0036】
5.効果の確認
上記効果の確認のため、本実施の形態に係るラミネート外装電池1を実施例とし、図7に示す従来技術に係るラミネート外装電池を比較例として、準備した。その構成は、各々、次の通りである。
[実施例]
負極タブ15がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域の構成は、図2に示す構成とした。なお、上記実施の形態に係るラミネート外装電池1とは異なり、正極タブ14がラミネート外装体20の封止部20cを横断する領域についても、図2に示すのと同様の構成を採用した。
【0037】
電池寸法;縦110.0mm×横68.0mm×厚3.7mm
封止部の幅;1.5mm
ラミネート外装体;電池外表面側から、ナイロン(25μm)/接着剤層(3μm)/アルミニウム層(40μm)/ポリプロピレン層(45μm)
なお、上記(数2)におけるテーパ角については、2°とした。
【0038】
[比較例]
正極タブおよび負極タブ915がラミネート外装体920の封止部を横断する領域の構成は、図7に示す構成とした。電池寸法およびラミネート外装体の構成については、上記実施例と同様とした。
なお、横断領域における正極タブおよび負極タブ915の延出端側での表面920fと表面920fとの間隔については、次の関係を満たすものとした。
【0039】
[数3]t91=t92
[数4]t91≒t
なお、負極タブ15,915がラミネート外装体20,920の封止部をそれぞれ横断する領域を除き、実施例と比較例とは同一構成とした。
(1)タブ横断部での寸法
実施例と比較例とにおいて、タブ横断部における間隔t、t、t91、t92を、n=5のサンプルについて測定した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】


(2)高温高湿保存での影響
実施例に係るラミネート外装電池1と、比較例に係るラミネート外装電池とを、それぞれ5個用意し、温度が80℃、湿度が90%の環境下で20日間保存した時の、各ラミネート外装電池における電池膨れを測定し、その結果を図5に示す。なお、図5のデータは、実施例および比較例の各々における平均値である。
【0041】
図5に示すように、高温高湿保存における電池膨れについては、実施例に係るラミネート外装電池1では、全てのデータにおいて比較例に係るラミネート外装電池よりも優れた結果となった。具体的には、保存日数が20日の場合、比較例に係るラミネート外装電池の電池膨れが0.47mmであるのに対して、実施例に係るラミネート外装電池1では、0.38mmに抑えられた。比率では、20%以上膨れが抑えられている。
【0042】
(3)剥離強度への影響
実施例に係るラミネート外装電池1と、比較例に係るラミネート外装電池とについて、正極タブ14,・・および負極タブ15,915が横断する領域でのラミネート外装体20,920の剥離強度を、それぞれ5個測定した。
剥離強度については、上記高温高湿保存した電池を解体し、正極タブおよび負極タブとラミネート外装体の封止部を切り離し、各タブを固定した後、ラミネートシートを挟み、ラミネートシートの主面に対して180°方向に5mm/min.の速度で引っ張った時の、各タブとラミネートシートとがはがれる際の強度を測定したものである。
【0043】
各5個測定して得た結果のうち、それぞれの最低強度を表2に示す。
【0044】
【表2】


表2に示すように、正極タブに対応する部分での剥離強度については、実施例と比較例とで差異がなかった。即ち、負極タブに比べて板厚が薄い正極タブについては、図2に示すような構成を採用するか否かは大きな影響を及ぼすものではなかった。
【0045】
一方、負極タブに対応する部分での剥離強度については、比較例に係るラミネート外装電池で6.3N/mmであったのに対して、実施例に係るラミネート外装電池1では7.5N/mmであり、19%以上優れた値となった。これより、正極タブに比べて板厚が厚い負極タブに対応する部分において、図2に示すような構成を採用することで、封止時におけるタブの応力を緩和することができ、剥離強度を高めることができたものと考えられる。
【0046】
(3)考察
上記2つの評価結果について、表3にまとめたものを示す。
【0047】
【表3】


表3に示すように、実施例に係るラミネート外装電池1では、高温高湿保存での影響、および剥離強度での影響の両評価項目について、比較例に係るラミネート外装電池よりも優れた結果となった。剥離強度での影響に関しては、特に負極タブ15に対応する強度が、比較例に対して19%優れていた。
【0048】
以上の結果より、図2に示す構成を採用する実施例に係るラミネート外装電池1では、高い封止信頼性を有し、優れた品質を保証することができる。
[変形例1]
変形例1に係るラミネート外装電池の構成について、図6(a)を用い、ラミネート成形型521,522の構成により説明する。なお、図6(a)では、ラミネート成形型521,522の構成の内、負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する領域に対応する部分だけを抜き出して描いている。
【0049】
図6(a)に示すように、変形例1に係るラミネート外装電池を成形するためのラミネート成形型521,522では、X軸方向上側のラミネート成形型521については、上記実施の形態のラミネート成形型502と同様に表面521fにテーパがつけられており、ポイントP21よりもポイントP22の方がX軸方向の上側に位置している。
本変形例においては、X軸方向下側のラミネート成形型522についても、負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する領域の表面522fにテーパがつけられており、ポイントP23よりもポイントP24の方が、X軸方向の下側に位置している。
【0050】
このようなラミネート成形型521,522を用いラミネート外装体の外縁部の封止を行った場合には、負極タブの横断部分において、延出方向における延出端側の間隔d21に対して、根元側の間隔d22が広くなる。なお、ラミネート成形型521の表面521fのテーパ角、即ち、Z軸に平行な仮想線L21に対する表面521fがなす角度と、ラミネート成形型522の表面のテーパ角、即ち、Z軸に平行な仮想線L22に対する表面522fがなす角度とは、それらの和が1°〜3°となっていればよい。
【0051】
本変形例に係るラミネート成形型521,522を用い成形されたラミネート外装電池においても、上記実施の形態に係るラミネート外装電池1と同様の効果を得ることができる。
[変形例2]
変形例2に係るラミネート外装電池の構成について、図6(b)を用い、ラミネート成形型531の構成により説明する。なお、図6(b)では、ラミネート成形型531の構成の内、負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する領域に対応する部分だけを抜き出して描いている。また、対応するX軸方向下側のラミネート成形型については、上記実施の形態に係るラミネート成形型501をそのまま用いることができる。
【0052】
図6(b)に示すように、本変形例に係るラミネート成形型531は、負極タブの延出方向における延出端側のポイントP31から中程のポイントP35までの間の表面531fは、水平面(Z軸に水平)となっている。そして、ポイントP35から負極タブの延出方向における根元側のポイントP32までの間の表面531fにテーパがつけられている。
【0053】
Z軸に平行な仮想線L31からポイントP32までの間隙d31は、ポイントP31とポイントP32とを結ぶ仮想線を引いたときに、当該仮想線と仮想線L31とがなす角度が、1°〜3°となるように設定することができる。
本変形例に係るラミネート成形型531を用い成形されたラミネート外装電池においても、上記実施の形態に係るラミネート外装電池1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
[変形例3]
変形例3に係るラミネート外装電池の構成について、図6(c)を用い、ラミネート成形型541の構成により説明する。なお、図6(c)においても、ラミネート成形型541の構成の内、負極タブがラミネート外装体の封止部を横断する領域に対応する部分だけを抜き出して描いている。また、上記変形例2と同様に、対応するX軸方向下側のラミネート成形型については、上記実施の形態に係るラミネート成形型501をそのまま用いることができる。
【0055】
図6(c)に示すように、本変形例に係るラミネート成形型541においても、負極タブの延出方向における延出端側のポイントP41から中程のポイントP45までの間の表面541fは、水平面(Z軸に水平)となっている。そして、本変形例では、ポイントP45から負極タブの延出方向における根元側のポイントP42までの間の表面541fが曲率をもって加工されている。
【0056】
Z軸に平行な仮想線L41からポイントP42までの間隙d41については、上記変形例2と同様に、ポイントP41とポイントP42とを結ぶ仮想線を引いたときに、当該仮想線と仮想線L41とがなす角度が、1°〜3°となるように設定することができる。
本変形例に係るラミネート成形型541を用い成形されたラミネート外装電池においても、上記実施の形態に係るラミネート外装電池1と同様の効果を得ることができる。また、表面541fと表面541fとが交わるポイントP45において、角が形成されないので、封止時における応力集中などの問題を生じ難い。
【0057】
[その他の事項]
上記実施の形態および変形例1〜3では、ラミネート外装体20の封止部20cを横断して正極タブ14および負極タブ15が延出された構成のラミネート外装電池1を一例として採用したが、正極タブおよび負極タブが必ずしも同じ封止部20cを横断して延出されている必要はない。例えば、正極タブ14または負極タブ15が、他の封止部20b,20dを横断して延出された形態を採用することもできる。その場合においては、負極タブが封止部を横断する領域について、上記実施の形態あるいは変形例1〜3の各形態を採用するようにすれば、上記同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記実施の形態および変形例1〜3においては、負極タブ15が横断する領域について、ラミネート外装体20の一方の表面にテーパなどをつける構成としたが、必ずしも負極タブ15に対応する部分だけに限定しなくてもよい。経験的に、正極タブの横断領域での封止性等が問題となっている場合には、上記構成を正極タブが横断する領域について適用することができ、上記同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、上記実施の形態では、正極タブ14および負極タブ15とラミネート外装体20との間に、タブ樹脂31,32が各々介挿された構成を採用したが、タブ樹脂の介挿は必須の要件ではない。封止性などに問題がなければ、省略してコストの低減を図ることができる。
また、ラミネート成形型の形状については、上記実施の形態に係るラミネート成形型501,502、変形例1に係るラミネート成形型521,522、変形例2に係るラミネート成形型531、変形例3に係るラミネート成形型541を適宜組み合わせて成形することもできる。例えば、上型としてラミネート成形型502またはラミネート成形型521を採用し、下型としてラミネート成形型531の上下対称な形態を有するラミネート成形型を採用すること、あるいは、下型としてラミネート成形型541の上下対称な形態を有するラミネート成形型を採用することなどもできる。
【0060】
また、上記実施の形態に係るラミネート外装電池1では、三方封止型の構成も電池を採用したが、これ以外にも、四方封止型の形態の電池に採用することができる。
さらに、ラミネート外装体を構成する金属ラミネートシートについては、上記実施の形態で採用した、金属層をその厚み方向に挟むように樹脂層が積層された構成のものだけでなく、例えば、金属層の内側主面にだけ樹脂層が積層された構成のものを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、携帯電話機などのモバイル機器の電源として採用することができ、高い信頼性を有するラミネート外装電池を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0062】
1.ラミネート外装電池
10.電極体
11.正極
12.セパレータ
13.負極
14.正極タブ
15.負極タブ
20.ラミネート外装体
21.金属層
22.内側樹脂層
23.外側樹脂層
31,32.タブ樹脂
200,201.金属ラミネートシート
501,502,521,522,531,541.ラミネート成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板および負極板を有し構成された電極体と、
金属層と樹脂層とが積層されてなる金属ラミネートシートが、前記電極体を収納する内部空間を有し、前記電極体が収納された状態で、前記金属ラミネートシートの外縁部を封止する封止部を有するラミネート外装体と、
各々が導電材料からなり、前記正極板および前記負極板の各々に接続され、前記ラミネート外装体の前記封止部を横断して各一部が外部へと延出された正極タブおよび負極タブと、
を備え、
前記正極タブおよび前記負極タブの少なくとも一方が前記ラミネート外装体の前記封止部を横断する横断領域では、当該タブの厚み方向における前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、前記延出の方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている
ことを特徴とするラミネート外装電池。
【請求項2】
前記正極タブおよび前記負極タブの少なくとも一方が前記ラミネート外装体の前記封止部を横断する前記横断領域では、当該タブの厚み方向における前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、前記延出の方向における根元側から延出端側に向けて漸減している
ことを特徴とする請求項1に記載のラミネート外装電池。
【請求項3】
前記正極タブおよび前記負極タブの少なくとも一方が前記ラミネート外装体の前記封止部を横断する前記横断領域において、当該タブの厚み方向における前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が漸減することにより構成されるテーパ部分のテーパ角は、1°〜3°である
ことを特徴とする請求項2に記載のラミネート外装電池。
【請求項4】
前記負極タブは、前記正極タブよりも厚みが厚い板材を以って構成されており、
前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、前記延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっているのは、前記負極タブに対応する前記横断領域である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のラミネート外装電池。
【請求項5】
前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、前記延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている前記横断領域では、前記ラミネート外装体における内側の樹脂層の圧縮度合いが、前記延出端側よりも前記根元側で緩和されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のラミネート外装電池。
【請求項6】
前記正極タブおよび前記負極タブの各々が前記ラミネート外装体の前記封止部を横断する各横断領域においては、当該タブと前記ラミネート外装体との各間に、前記ラミネート外装体における前記樹脂層とは異なる樹脂材料からなる樹脂シートが介挿されており、
前記ラミネート外装体の外表面同士の間隔が、前記延出方向における根元側よりも延出端側で狭くなっている前記横断領域では、前記樹脂シートの圧縮度合いが、前記延出端側よりも前記根元側で緩和されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のラミネート外装電池。
【請求項7】
前記ラミネート外装体では、金属層に対し、少なくとも内側に前記樹脂層が積層されており、
前記正極タブおよび前記負極タブが前記ラミネート外装体の前記封止部を横断する前記横断領域において、各タブは、その厚み方向の両側を前記ラミネート外装体における内側の樹脂層で密に被覆されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のラミネート外装電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−26173(P2013−26173A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162803(P2011−162803)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】