説明

ラミネート形電池

【課題】正極等が損傷し難いラミネート形電池を提供する。
【解決手段】ラミネート形電池は、正極タブ2、負極タブ3、正極11、負極12およびセパレータ13を備える。正極11および負極12は、セパレータ13を介して積層される。正極タブ2は、金属層21と被覆層22とを含む。被覆層22は、正極タブ2と正極11の正極リード11aとの溶接部23よりも正極11側に位置する一部分を覆う。そして、被覆層22の正極11側の端部22Rは、正極11側へ突出した円弧状の断面形状を有する。負極タブ3は、金属層31と被覆層32とを含む。被覆層32は、負極タブ3と負極12の負極リード12aとの溶接部33よりも負極12側に位置する一部分を覆う。そして、被覆層32の負極12側の端部32Rは、負極12側へ突出した円弧状の断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラミネート形電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、正極または負極の集電タブに保護リードを接合した非水電解質電池が知られている(特許文献1)。
【0003】
この非水電解質電池においては、保護リードは、集電タブの少なくとも一方の最外層に接合される。そして、保護リードは、集電タブの延出方向と交わる辺のうち、集電タブの最外層に近接しているコーナ部が0.2mm以上の曲率半径を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−080393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の非水電解質電池の保護リードは、カッターでカットすることにより、コーナ部が丸くされる。そして、保護リードは、60〜800μmの厚みを有する。従って、0.2mm以上の曲率半径を有するようにコーナ部をカットすることは困難である。その結果、コーナ部に丸みが形成されず、正極および負極等が損傷する虞がある。
【0006】
また、保護リードは、集電タブの最外層に近接しているコーナ部だけが0.2mm以上の曲率半径を有し、集電タブの最外層に近接していないコーナ部は、丸みを有するようにカットされていない。その結果、振動および落下等によって衝撃が非水電解質電池に印加されると、正極等を損傷する虞がある。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、正極等が損傷し難いラミネート形電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施の形態によれば、ラミネート形電池は、正極と、負極と、正極タブと、負極タブと、ラミネート部材とを備える。正極タブは、正極の正極リードに接続される。負極タブは、負極の負極リードに接続される。ラミネート部材は、正極リードと正極タブとの溶接部および負極リードと負極タブとの溶接部を内包するように正極、負極、正極タブの一部、および負極タブの一部をラミネートする。正極タブは、第1の金属層と、第1の被覆層とを含む。第1の被覆層は、正極リードと第1の金属層との第1の溶接部よりも正極側に位置する第1の金属層の一部分を被覆する。負極タブは、第2の金属層と、第2の被覆層とを含む。第2の被覆層は、負極リードと第2の金属層との第2の溶接部よりも負極側に位置する第2の金属層の一部分を被覆する。第1の被覆層の正極側の端部は、正極側に突出した円弧状の断面形状を有し、第2の被覆層の負極側の端部は、負極側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の実施の形態によるラミネート形電池においては、第1の被覆層は、正極リードと第1の金属層との第1の溶接部よりも正極側に位置する第1の金属層の一部分を被覆し、第2の被覆層は、負極リードと第2の金属層との第2の溶接部よりも負極側に位置する第2の金属層の一部分を被覆する。そして、第1の被覆層の正極側の端部は、正極側に突出した円弧状の断面形状を有し、第2の被覆層の負極側の端部は、負極側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【0010】
その結果、振動および落下等によって衝撃がラミネート形電池に加わり、正極タブおよび/または負極タブの第1の溶接部および/または第2の溶接部よりも正極および/または負極側の端部がラミネートフィルム、正極、負極およびセパレータに接触しても、ラミネートフィルム、正極、負極およびセパレータにキズが付いたり、ラミネートフィルム、正極、負極およびセパレータが切断されることはない。
【0011】
従って、ラミネートフィルム、正極、負極およびセパレータを損傷し難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明の実施の形態によるラミネート形電池の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す発電要素の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、図1に示す正極タブおよび負極タブの詳細図である。
【図4】図4は、図1に示すラミネート形電池の製造方法を示す第1の工程図である。
【図5】図4は、図1に示すラミネート形電池の製造方法を示す第2の工程図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態による他のラミネート形電池の概略図である。
【図7】図7は、図6に示す正極タブおよび負極タブの詳細図である。
【図8】図8は、図6に示すラミネート形電池の製造方法を示す第1の工程図である。
【図9】図9は、図6に示すラミネート形電池の製造方法を示す第2の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態によるラミネート形電池の構成を示す概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態によるラミネート形電池1は、発電要素1と、正極タブ2と、負極タブ3と、ラミネートフィルム4とを備える。
【0015】
発電要素1は、2枚のラミネートフィルム4a,4bによってラミネートされる。正極タブ2は、その一方端側がラミネートフィルム4の封止部4Yを介してラミネートフィルム4の外側に引き出されるとともに、その他方端が発電要素1の正極に接続される。そして、正極タブ2は、例えば、アルミニウム箔からなる。
【0016】
負極タブ3は、その一方端側がラミネートフィルム4の封止部4Yを介してラミネートフィルム4の外側に引き出されるとともに、その他方端が発電要素1の負極に接続される。そして、負極タブ3は、例えば、ニッケルによってメッキされた銅からなる。
【0017】
正極タブ2の厚みは、50〜300μmとするのが好ましい。即ち、正極タブ2の厚みを50μm以上に設定することによって、正極タブ2の溶接時において、正極タブ2が切断されるのを防止できるとともに、正極タブ2が引っ張りおよび折り曲げによって断裂するのを防止できる。また、正極タブ2の厚みを300μm以下に設定することによって、ラミネートフィルム4の封止部4Yに厚み方向の隙間が生じるのを防止できる。
【0018】
なお、正極タブ2とラミネートフィルム4との接着強度を高めるために、正極タブ2において封止部4Yに位置することが予定される箇所に、予め、樹脂製の接着層(例えば、ラミネートフィルム4を構成する金属層が有する熱融着樹脂層を構成する樹脂と同種の樹脂により構成された接着層)を設けてもよい。
【0019】
また、負極タブ3の厚みは、正極タブ2と同様に50〜300μmであることが好ましい。即ち、負極タブ3の厚みを50μm以上に設定することによって、負極タブ3の溶接時において、負極タブ3が切断されるのを防止できるとともに、負極タブ3が引っ張りおよび折り曲げによって断裂するのを防止できる。また、負極タブ3の厚みを300μm以下に設定することによって、ラミネートフィルム4の封止部4Yに厚み方向の隙間が生じるのを防止できる。
【0020】
なお、負極タブ3とラミネートフィルム4との接着強度を高めるために、負極タブ3において封止部4Yに位置することが予定される箇所に、予め、樹脂製の接着層(例えば、ラミネートフィルム4を構成する金属層が有する熱融着樹脂層を構成する樹脂と同種の樹脂により構成された接着層)を設けてもよい。
【0021】
ラミネートフィルム4は、可撓性を有し、例えば、矩形形状からなる。そして、ラミネートフィルム4は、発電要素1、正極タブ2の一部および負極タブ3の一部をラミネートする。また、ラミネートフィルム4は、周縁部に封止部4Yを有する。
【0022】
ラミネートフィルム4は、アルミニウム等の金属層と熱可塑性樹脂層とが積層された構造からなる。例えば、ラミネートフィルム4は、厚みが20〜100μmのアルミニウム層の外側に厚みが20〜50μmの熱可塑性樹脂層を設け、アルミニウム層の内側に20〜100μmの接着層を設けた構造からなる。これにより、封止部4Yは、熱溶着により確実に接合される。そして、ラミネートフィルム4の厚みは、特に限定されないが、通常は、60〜250μmである。
【0023】
このように、ラミネートフィルム4は、可撓性を有するので、特定のラミネート形電池1が何らかの理由で異常発熱して電池の内圧が上昇しても、ラミネートフィルム4が容易に破断して電池の内圧を低下させることができる。その結果、電池の重大事故を未然に防ぐことができ、ラミネート形電池1の安全性を向上できる。
【0024】
図2は、図1に示す発電要素1の構成を示す概略図である。図2を参照して、発電要素1は、複数の正極11と、複数の負極12と、複数のセパレータ13と、非水電解質とを含む。複数の正極11の各々は、正極リード11aを有する。複数の負極12の各々は、負極リード12aを有する。
【0025】
正極11は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダ等を含有する正極合剤からなる層(正極合剤層)を集電体の片面または両面に形成した構造からなる。
【0026】
正極活物質は、例えば、ラミネート形電池1がリチウムイオン二次電池である場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質からなる。このような正極活物質は、例えば、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co,Ni,Mn,Al,Mg等)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn、元素の一部を他の元素で置き換えたスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、およびLiMPO(M:Co,Ni,Mn,Fe等)で表されるオリビン型化合物等のいずれかからなる。
【0027】
そして、層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、LiCoO、LiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3,0.01≦y≦0.2)、および少なくともCo,NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3,LiMn5/12Ni5/12Co1/6,LiNi3/5Mn1/5Co1/5)のいずれかからなる。
【0028】
正極11の集電体は、例えば、アルミニウム箔、およびアルミニウム合金箔のいずれかからなる。そして、集電体の厚みは、電池の大きさおよび容量によって異なるが、例えば、0.01〜0.02mmである。
【0029】
正極11は、次の方法によって作製される。正極活物質と、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、および繊維状炭素等の導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダとを含む正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤を用いて均一に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物を調整する(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)。そして、この組成物を正極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により正極合剤層の厚みを調整する。これによって、正極11が作製される。
【0030】
なお、この発明の実施の形態においては、上述した方法以外の方法を用いて正極11を作製してもよい。
【0031】
正極11における正極合剤層の厚みは、片面当たり、30〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層における各構成成分の含有量は、正極活物質:90〜98質量%、導電助剤:1〜5質量%、バインダ:1〜5質量%とすることが好ましい。
【0032】
負極12は、例えば、ラミネート形電池1がリチウムイオン二次電池である場合、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質を含有するものからなる。このような負極活物質は、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、および炭素繊維等のリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物からなる。
【0033】
また、前記以外の負極活物質は、例えば、Si,Sn,Ge,Bi,Sb,In等の元素、Si,Sn,Ge,Bi,Sb,Inの合金、リチウム含有窒化物、およびリチウム酸化物等のリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物(LiTi12等)、リチウム金属、およびリチウム/アルミニウム合金のいずれかからなる。
【0034】
これらの負極活物質に導電助剤(正極の導電助剤と同じ材料からなる)と、バインダ(PVDF、スチレンブタジエンゴム(SBR)のようなゴム系バインダとカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合バインダ等)とを、適宜、添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたもの、または、上述した各種の合金、またはリチウム金属の箔を集電体の表面に積層したもの等が負極12として用いられる。
【0035】
そして、負極12は、次の方法によって作製される。上述した負極活物質と、バインダと、必要に応じて、黒鉛、アセチレンブラック、およびカーボンブラック等の導電助剤等を含む負極合剤を、NMP等の溶剤を用いて均一に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物を調整する(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)。そして、この組成物を負極集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により負極合剤層の厚みまたは密度を調整する。これによって、負極12が作製される。
【0036】
なお、この発明の実施の形態においては、上述した方法以外の方法を用いて負極12を作製してもよい。
【0037】
負極12の集電体としては、ニッケル、ニッケルをメッキした銅、およびニッケル−銅クラッド等の金属の箔またはリボンが好適である。そして、集電体の厚みは、電池の大きさまたは容量によるが、例えば、0.05〜0.02mmであることが好ましい。
【0038】
負極12における負極合剤層の厚みは、片面当たり、30〜100μmとすることが好ましい。また、負極合剤層における各構成成分の含有量は、負極活物質:90〜98質量%、バインダ:1〜5質量%であることが好ましい。また、導電助剤を負極に用いる場合には、負極合剤層中の導電助剤の含有量は、1〜5質量%であることが好ましい。
【0039】
セパレータ13は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの融合体、ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート等で構成された多孔質フィルムまたは不織布からなる。
【0040】
セパレータ13の厚みは、10〜50μmであることが好ましく、空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
【0041】
また、多孔質フィルムと不織布とを重ねる等、複数枚のセパレータを用いることによって、短絡を防止する効果を高め、電池の信頼性をより向上させることができる。
【0042】
ラミネート形電池1に用いられる電解液は、ラミネート形電池1がリチウムイオン二次電池である場合、例えば、高誘電率溶媒または有機溶媒にLiPF,LiBF等の溶質を溶解した溶液(非水電解液)からなる。高誘電率溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびγ−ブチロラクトン(BL)などを用いることができる。有機溶媒は、直鎖状のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびメチルエチルカーボネート(EMC)等の低粘度溶媒からなる。
【0043】
なお、電解液溶媒には、上述した高誘電率溶媒と、低粘度溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。また、上述した溶液に、PVDF、ゴム系の材料、脂環エポキシ、およびオキセタン系の三次元架橋構造を有する材料等を混合して固化し、ポリマー電解液としてもよい。
【0044】
正極リード11aおよび負極リード12aの各々は、一定の幅を有する短冊形状からなる。そして、正極リード11aは、正極11の集電体の活物質が塗布されていない一部である。また、負極リード12aは、負極12の集電体の活物質が塗布されていない一部である。
【0045】
正極リード11aは、使用機器との接続の容易さ等の関係から、アルミニウムまたはアルミニウム合金製のものが好ましい。
【0046】
負極リード12aは、ニッケル、ニッケルをメッキした銅、およびニッケル−銅クラッド等の金属の箔またはリボンからなる。
【0047】
正極リード11aが形成された正極11および負極リード12aが形成された負極12は、セパレータ13を介して積層される。これによって、発電要素1が作製される。
【0048】
このように、発電要素1は、複数の正極11および複数の負極12がセパレータ13を介して積層された構造からなる。
【0049】
そして、積層された複数の正極11に接続された複数の正極リード11aは、正極タブ2に超音波溶接され、積層された複数の負極12に接続された複数の負極リード12aは、負極タブ3に超音波溶接される。
【0050】
図3は、図1に示す正極タブ2および負極タブ3の詳細図である。図3の(a)を参照して、正極タブ2は、金属層21と、被覆層22とを含む。金属層21は、例えば、アルミニウムからなる。
【0051】
被覆層22は、錫、銅およびニッケルのいずれかからなる。被覆層22は、例えば、0.1〜100μmの厚みを有する。
【0052】
被覆層22は、正極タブ2と正極リード11aとの溶接部23よりも正極11側に位置する正極タブ2の一部分を被覆する。そして、被覆層22の正極11側の端部22Rは、正極11側に突出した円弧状の断面形状を有する。この場合、端部22Rの曲率半径は、0.25mm以上である。
【0053】
図3の(b)を参照して、負極タブ3は、金属層31と、被覆層32とを含む。金属層31は、例えば、ニッケルによってメッキされた銅からなる。被覆層32は、被覆層22と同じ材料からなり、被覆層22と同じ厚みを有する。
【0054】
被覆層32は、負極タブ3と負極リード12aとの溶接部33よりも負極12側に位置する負極タブ3の一部分を被覆する。そして、被覆層32の負極12側の端部32Rは、負極12側に突出した円弧状の断面形状を有する。この場合、端部32Rの曲率半径は、0.25mm以上である。
【0055】
このように、被覆層22は、ラミネートフィルム4(4a,4b)によって内包された正極タブ2と正極リード11aとの溶接部23よりも正極11側に位置する正極タブ2の一部分を被覆し、被覆層32は、ラミネートフィルム4(4a,4b)によって内包された負極タブ3と負極リード12aとの溶接部33よりも負極12側に位置する負極タブ3の一部分を被覆する。そして、被覆層22の正極11側の端部22Rは、正極11側に突出した円弧状の断面形状を有し、被覆層32の負極12側の端部32Rは、負極12側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【0056】
その結果、振動および落下等によって衝撃がラミネート形電池1に加わり、正極タブ2および/または負極タブ3の溶接部23,33よりも正極11および負極12側の端部22R,32Rがラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13に接触しても、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13にキズが付いたり、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13が切断されることはない。
【0057】
従って、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13を損傷し難くできる。
【0058】
図4および図5は、それぞれ、図1に示すラミネート形電池1の製造方法を示す第1および第2の工程図である。図4を参照して、ラミネート形電池1の製造が開始されると、上述した方法によって、正極11および負極12を作製する。そして、正極11および負極12をセパレータ13を介して積層し、発電要素1を作製する(工程(a))。
【0059】
そして、正極タブ2の材料であるアルミニウム箔を短冊状に裁断し、その裁断した短冊状のアルミニウム箔の一方端をピンセットで保持し、アルミニウム箔の他方端側の一部を錫、銅およびニッケルのいずれかからなる金属溶液を保持するメッキ槽に浸漬する。その後、アルミニウム箔を引き上げる。これによって、正極タブ2が作製され、金属溶液の表面張力によって、正極タブ2の端部22Rには、正極11側に突出した円弧状の断面形状が形成される。同様にして、負極タブ3を作製する(工程(b))。
【0060】
そうすると、正極タブ2を発電要素1の正極リード11aに溶接し、負極タブ3を発電要素1の負極リード12aに溶接する(工程(c))。
【0061】
そして、ラミネートフィルム4を裁断する(工程(d))。ラミネートフィルム4は、金属層41の一方の表面に樹脂42、金属層41の他方の表面に樹脂43を熱もしくは接着剤で貼り付けて作製したものである。
【0062】
その後、ラミネートフィルム4の樹脂42に接するように発電要素1をラミネートフィルム4上に置き、ラミネートフィルム4を二つ折りにする(工程(e)参照)。この場合、正極タブ2および負極タブ3は、その一部が二つ折りにしたラミネートフィルム4から露出している。
【0063】
図5を参照して、工程(e)の後、ラミネートフィルム4のうち、二つ折りにした辺4C以外の3つの辺4A,4B,4Dのうち、辺4A,4Bに沿ってラミネートフィルム4を封止し、その後、辺4Dを介して電解液をラミネートフィルム4内に注入する(工程(f))。
【0064】
そして、最後に、辺4Dに沿ってラミネートフィルム4を封止する。なお、ラミネートフィルム4の辺4Cは、ラミネートフィルム4を二つ折りにした折り曲げ部分であるので、封止してもよいし、封止しなくてもよい。これによって、ラミネート形電池1が完成する(工程(g))。
【0065】
なお、ラミネート形電池1においては、被覆層22,32の各々は、樹脂からなっていてもよい。この場合、樹脂は、電解液に溶解しなければ、特に限定されず、一般的には、ポリエチレンからなる。
【0066】
また、ラミネート形電池1においては、被覆層22,32の各々が金属からなる場合、被覆層22,32は、それぞれ、金属層21,31の全体を被覆するようにしてもよい。この場合、工程(b)において、短冊状のアルミニウム箔の全体が金属溶液に浸漬され、短冊状のアルミニウム箔は、上述した速度によって引き上げられる。
【0067】
図6は、この発明の実施の形態による他のラミネート形電池の概略図である。この発明の実施の形態によるラミネート形電池は、図6に示すラミネート形電池10Aであってもよい。
【0068】
図6を参照して、ラミネート形電池10Aは、図1に示すラミネート形電池10の正極タブ2および負極タブ3をそれぞれ正極タブ2Aおよび負極タブ3Aに代えたものであり、その他は、ラミネート形電池10と同じである。
【0069】
正極タブ2Aは、その一方端側がラミネートフィルム4の封止部4Yを介してラミネートフィルム4の外側に引き出されるとともに、その他方端が発電要素1の正極11に接続される。そして、正極タブ2Aは、正極タブ2と同じ材料からなり、正極タブ2と同じ厚みを有する。
【0070】
負極タブ3Aは、その一方端側がラミネートフィルム4の封止部4Yを介してラミネートフィルム4の外側に引き出されるとともに、その他方端が発電要素1の負極12に接続される。そして、負極タブ3Aは、負極タブ3と同じ材料からなり、負極タブ3と同じ厚みを有する。
【0071】
図7は、図6に示す正極タブ2Aおよび負極タブ3Aの詳細図である。図7の(a)を参照して、正極タブ2Aは、図3に示す正極タブ2の被覆層22を被覆層22Aに代えたものであり、その他は、正極タブ22と同じである。
【0072】
被覆層22Aは、樹脂からなる。そして、樹脂は、電解液に溶解しなければ、特に限定されず、一般的には、ポリエチレンからなる。
【0073】
被覆層22Aは、金属層21のうち、溶接部23よりも正極11側の一部分を覆うとともに正極リード11aに接着する。そして、被覆層22Aの正極11側の端部24Rは、正極11側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【0074】
図7の(b)を参照して、負極タブ3Aは、図3に示す負極タブ3の被覆層32を被覆層32Aに代えたものであり、その他は、負極タブ32と同じである。
【0075】
被覆層32Aは、被覆層22Aと同じ材料からなる。被覆層32Aは、金属層31のうち、溶接部33よりも負極12側の一部分を覆うとともに負極リード12aに接着する。そして、被覆層32Aの負極12側の端部34Rは、負極12側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【0076】
図8および図9は、それぞれ、図6に示すラミネート形電池10Aの製造方法を示す第1および第2の工程図である。
【0077】
図8および図9に示す工程図は、図4および図5に示す工程(a)〜(g)の工程(b),(c)をそれぞれ工程(b1),(c1)に代えたものであり、その他は、図4および図5に示す工程図と同じである。
【0078】
図8を参照して、ラミネート形電池10Aの製造が開始されると、上述した工程(a)が実行される。そして、正極タブ2Aに用いられるアルミニウム箔を裁断して金属層21を作製し、その作製した金属層21を正極リード11aに溶接する。同様にして、負極タブ3Aに用いられる銅(ニッケルによってメッキされている)を裁断して作製した金属層31を負極リード12aに溶接する(工程(b1)。
【0079】
その後、溶接部23よりも正極11側に位置する金属層21の一部分を覆うとともに正極リード11aに接するように樹脂を塗布し、被覆層22Aを形成する。同様にして、被覆層32Aを形成する(工程(c1))。
【0080】
そして、上述した工程(d)〜(g)が順次実行され、ラミネート形電池10Aが完成する。
【0081】
ラミネート形電池10Aにおいては、被覆層22Aは、ラミネートフィルム4(4a,4b)によって内包された正極タブ2Aと正極リード11aとの溶接部23よりも正極11側に位置する正極タブ2Aの一部分を被覆するとともに正極リード11aに接着し、被覆層32Aは、ラミネートフィルム4(4a,4b)によって内包された負極タブ3Aと負極リード12aとの溶接部33よりも負極12側に位置する負極タブ3Aの一部分を被覆するとともに負極リード12aに接着する。そして、被覆層22Aの正極11側の端部24Rは、正極11側に突出した円弧状の断面形状を有し、被覆層32Aの負極12側の端部34Rは、負極12側に突出した円弧状の断面形状を有する。
【0082】
その結果、振動および落下等によって衝撃がラミネート形電池1に加わっても、正極リード11aが変形しない限り、正極タブ2Aの正極11側の一部分が正極11、負極12、セパレータ13、およびラミネートフィルム4に接触することはない。負極タブ3Aの負極12側の一部分についても同様である。
【0083】
また、振動および落下等によって衝撃がラミネート形電池1に加わり、正極リード11aおよび/または負極リード12aが変形して、正極タブ2Aおよび/または負極タブ3Aの溶接部23,33よりも正極11および/または負極12側の端部24Rおよび/または34Rがラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13に接触しても、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13にキズが付いたり、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13が切断されることはない。このように、ラミネート形電池10Aにおいては、衝撃がラミネート形電池10Aに印加されても、正極タブ2Aおよび負極タブ3Aの発電要素1側の端部24R,34Rがラミネート形電池10よりも移動し難い。
【0084】
従って、ラミネートフィルム4、正極11、負極12およびセパレータ13を更に損傷し難くできる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明は、ラミネート形電池に適用される。
【符号の説明】
【0087】
1 発電要素、2,2A 正極タブ、3,3A 負極タブ、4,4a,4b ラミネートフィルム、4Y 封止部、10,10A ラミネート形電池、11 正極、11a 正極リード、12 負極、12a 負極リード、13 セパレータ、21,31,41 金属層、22,32 被覆層、22R,24R,32R,34R 端部、42,43 樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極の正極リードに接続された正極タブと、
前記負極の負極リードに接続された負極タブと、
前記正極の正極リードと前記正極タブとの溶接部および前記負極の負極リードと前記負極タブとの溶接部を内包するように前記正極、前記負極、前記正極タブの一部、および前記負極タブの一部をラミネートするラミネート部材とを備え、
前記正極タブは、
第1の金属層と、
前記正極リードと前記第1の金属層との第1の溶接部よりも前記正極側に位置する前記第1の金属層の一部分を被覆する第1の被覆層とを含み、
前記負極タブは、
第2の金属層と、
前記負極リードと前記第2の金属層との第2の溶接部よりも前記負極側に位置する前記第2の金属層の一部分を被覆する第2の被覆層とを含み、
前記第1の被覆層の前記正極側の端部は、前記正極側に突出した円弧状の断面形状を有し、
前記第2の被覆層の前記負極側の端部は、前記負極側に突出した円弧状の断面形状を有する、ラミネート形電池。
【請求項2】
前記第1および第2の被覆層の各々は、金属層からなる、請求項1に記載のラミネート形電池。
【請求項3】
前記第1および第2の被覆層の各々は、樹脂層からなる、請求項1に記載のラミネート形電池。
【請求項4】
前記第1の被覆層は、更に、前記正極に接着しており、
前記第2の被覆層は、更に、前記負極に接着している、請求項3に記載のラミネート形電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−129024(P2012−129024A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278348(P2010−278348)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】