説明

ランタニド錯体、調製及びその使用方法

本発明は、化合物に、前記化合物がランタニドを含んで形成する錯体に、及び蛍光マーキング用又はNMR画像法用の錯体の使用方法に関する。
本錯体は、Lnイオン及び配位子R2-C(X-R1)(R3)-NR4R5から成る。R1は、官能基であり、Xは単結合又は随意に少なくとも1個のヘテロ原子若しくはアリーレンを含む少なくとも1個のアルキレン若しくはアルケニレン基から成る炭化水素系鎖である。R2は、アニオン性基A2、又は少なくとも1個の前記の基A2を持ち、随意に少なくとも1個のヘテロ原子を含むC1-C4アルキレン若しくはアルケニレン基である。R3は、H、又は随意に少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、随意に少なくとも1個のアニオン性基A3を持つC1-C5アルキレン若しくはアルケニレン基である。R4は、吸光特性を持ちLnを含むキレート環を形成する置換基である。R5は、Lnを含むキレート環を形成する置換基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランタニドを含む錯体を生成できる化合物に、得られる錯体に及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性マーカーは、医用画像法及び免疫の分野で広く使用されてきた。これらのマーカーの欠点のために、これらのマーカーは蛍光マーカーによって大半は置き換えられてきた。
【0003】
しかしながら、蛍光マーカーを使用すると、特に、研究対象の生物学的媒体の自己蛍光により及び機械の中での光散乱により多くの欠点が見られる。ランタニドイオン錯体は、これらの欠点を解消する時間分解取得(time-resolved aquisition)が可能であることが提案されてきた。時間分解発光マーカーとして使用されるために、ランタニドイオン錯体は多くの特性を持たなければならず、これらの特性のうちで最も重要なものは、親水性、水中での安定性、アンテナ効果を発現できる発色団の存在(サバチィーニ・エヌ(Sabbatini,N.)等、コード(Coord)、ケミカル・レビュー(Chemical Review)、1990年、第123巻、p.201)、優れた光物理的特性(高吸収、容易に達成可能なエネルギー領域での励起、長い寿命の励起状態及び高いルミネセンス量子収率)及び共有結合による接合が可能である反応性官能基である。
【0004】
最近提案された化合物は、これらの基準を必ずしも全て組み合わせていると限らない。例えば、デルフィア・キレート(Delfia Chelate)の名称でワラック・オイ(Wallac Oy)社により開発された最初の錯体(へミラー・アイ(Hemmilae, I.)等、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、1984年、第137巻、p.335)は、優れた光物理的特性を持たず、その発光を測定するためにランタニド抽出工程を行なうことが必要である。シー・アイ・エス・バイオ・インターナショナル(CIS Bio International)により開発された化合物はクリプテートであり、発光を増すためにフッ化物アニオンの使用が必要である(へミラー・アイ(Hemmilae, I.)等、ドラッグ・ディスカバリー・ツデイ(Drug Discovery Today)、1997年、第2巻、p.373)。化合物の安定性も深刻な問題を持ちかける。従って、ビー・シー・ピー・デー・エイ(BCPDA)の名称でサイバー・フルオール(CyberFluor)により開発された化合物だけが高濃度で安定な発光錯体を生成する(マリオット・ジー(Marriott, G.)等.,バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)、1994年、第67巻、p.957)。
【0005】
ランタニド錯体、特にガドリニウム錯体は、NMR医用画像法の緩和剤又は造影剤として使用されている(キャラバン・ピー(Caravan, P.)等、ケミカル・レビュー(Chemical Review)、1999年、第99巻、p.2293)。これを使用することは、ランタニドの第1配位圏が必ずしも水溶液の中で配位子で充分に飽和される訳ではなく、従って、水分子が配位圏を完全なものにできると言う事実によって認められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術のランタニド錯体を超えて改良された特性を有するランタニド錯体を提案することである。従って、本発明の1つの主題は、新規の化合物、ランタニドイオンを含む錯体の調製のためのそれらの化合物の使用、及びNMR用に又はNMR画像法用に、得られた錯体を蛍光マーカーとしての、及び緩和剤としての使用方法でもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による化合物は式(I)に相当する
【0008】
【化1】


式中、
- R1は、タンパク質、抗体又は鉱物物質若しくは有機物質上に存在する官能基と反応できる官能基である;
- Xは、単結合、又は随意に少なくとも1個のヘテロ原子を含むアルキレン基及びアルケニレン基から、並びにアリーレン基から選ばれる少なくとも1個の基から成る炭化水素系鎖を表す;
- R2は、中性pHでアニオン性である基A2、又は1〜4個の炭素原子を含有し少なくとも1個の前記基A2を持つアルキレン若しくはアルケニレン基であり、前記アルキレン若しくはアルケニレン基は随意に鎖の中に少なくとも1個のヘテロ原子を含むこと;
- R3は、H、又は1〜5個の炭素原子含有し、随意に鎖の中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有するアルキレン若しくはアルケニレン基を表し、前記基は随意に中性pHでアニオン性である少なくとも1個の基A3を持つこと;
- R4は、式-(C)n-C-Z1-C-C-Z2-C-A4に対応する基であり、式中、nは1又は2に等しく、Z1及びZ2は、互いに独立して、O及びNから選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも1個は、窒素原子を囲む2個の炭素原子と芳香族複素環の一部を形成する窒素原子である、並びにA4は中性pHでアニオン性である基であり、前記式ではアニオン電荷を持つ原子はZ2に対してγ位にあること;
-R5は、R4に対して定義された基から、又は炭化水素系鎖-C-C-E1-C-C-E2-C-A5から選ばれる基であり、式中、E1及びE2は、互いに独立してO及びNから選ばれるヘテロ原子を表し、並びにA5は、中性pHでアニオン性である基であり、前記式では、アニオン電荷を持つ原子はE2に対してγ位にあること。
【0009】
置換基X、R2及びR3のヘテロ原子は、特にO又はNが可能である。
【0010】
置換基R1は、例えば、アミノ、チオ、シアノ、イソシアノ、アクリジニル、ヒドラジノ、ハロアセテート、無水物、トリアゾ、カルボニル、ニトロベンゾイル、スルホニル、チオニル、ハロゲン化物、エポキシド、アルデヒド、イミダゾール、ヒドロキシフェニル、メルカプト、N-スクシンイミジルエステル、N-スルホスクシンイミジルエステル、マレイミド、ヒドロキシル、カルボキシル、チオシアノ、及びイソチオシアノの各基から選ばれることが可能である。アミノ、チオ、カルボキシル、マレイミド、N-スクシンイミジルエステル、N-スルホスクシンイジミルエステル及びイソチオシアノの各基が好ましい。
【0011】
基Xがアルキレン又はアルケニレン基であるとき、その基は1〜10個の炭素原子を含有するのが好ましい。Xがアリーレン基であるとき、その基は5〜10個の炭素原子を含有するのが好ましい。本明細書では、“アリーレン基”と言う用語は、1個以上の縮合又は非縮合芳香核を含む基を意味し、前記核(核類)は、随意に1個以上の脂肪族炭化水素系基を持つ。言及してもよいアリーレン基の例には、基-C6H4-、-CH2-C6H4-CH2-、-C6H4-CH2-、-C6H4-CH2-C6H4-、-C6H3(CH3)-が挙げられる。Xは、単結合、又は2若しくは3個の炭素原子を含有するアルキレン若しくはアルケニレン基から選ばれるのが有利である。
【0012】
置換基R2は基A2であるのが好ましい。
【0013】
置換基R3は、H、又C1〜C3アルキルであるのが好ましい。
【0014】
本発明の化合物のなかで、置換基R4及びR5の各々は一価の置換基である。置換基R4及びR5は一緒に二価の基を形成しない。
【0015】
置換基R4は、吸光性を有する置換基であり、それによって3個のキレート環がランタニドによって形成され得る。nが1に等しい置換基R4が好ましい。Z1及びZ2のうちから1個だけが芳香族複素環の一部を形成する窒素原子である置換基R4の例として、セグメント-C-Zi-C-の1つが、ピリジル、ピリミジニル、キノリル及びイソキノリルの各基から選ばれる複素環基の一部を形成する置換基を挙げることが可能である。Z1及びZ2が芳香族複素環基の一部を形成する置換基R4は、特に有利である。そのような置換基の例には、セグメント-C-Z1-C-及び-C-Z2-C-の各々がピリジル、ピリミジニル、キノリル及びイソキノリルの各基から選ばれる複素環基の一部を形成する置換基が挙げられ、2個の複素環基は、Z1及びZ2を分離する少なくとも2個の炭素原子によって結合されている。言及してもよいそのようなセグメント-C-Z1-C-C-Z2-C-の例には、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリニル、2,2'-ビスキノリル、2,2'-ビスイソキノリル及び2,2'-ビピリミジニル基が挙げられ、前記基は、複素環の少なくとも1個の炭素原子上にアルキル又はアルコキシ置換基、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有するアルキル又はアルコキシ基を持つと考えられる。例の積りで、下記の式は、各々、カルボキシルを持つ2,2'-ビピリジル基、モノアルキルホスホネート、モノアリールホスホネート及びホスホニル、又はカルボキシル基を持つフェナントロリニル基を表す。
【0016】
【化2】

【0017】
置換基R5は、ランタニドによって形成できる3個のキレート環を持つ置換基である。炭化水素系鎖-C-C-E1-C-C-E2-C-A5から成る置換基R5のうちで、次の基に言及することが可能である:
【0018】
【化3】


式中、R6及びR7は、好ましくは1〜5個の炭素原子を含有し、随意に1個以上のヘテロ原子を含有するアルキル鎖を表す。R4及びR5が同じである化合物が特に好ましい。
【0019】
本明細書で使用されるように、“中性pHでアニオン性である基”と言う表現は、中性pHでアニオン性の形態である、即ち、陰電荷を持つ官能基を意味する。本発明の化合物のなかで、中性pHでアニオン性である基A2、A3、A4又はA5は、互いに独立して、-CO2H、-SO3H、-P(O)(OR)OH、-P(O)R(OH)及び-P(O)(OH)2の各基から選ばれることが可能であり、式中、Rはアルキル基(好ましくはC1〜C3)又はアリール基(好ましくはC5〜C9)である。反応媒体のpHによって決まるが、化合物(I)は、カチオン性、双性イオン性又はアニオン性の形態で得られる。酸性媒体では、窒素を持つ置換基R4及びR5、並びに随意にヘテロ原子Z1、Z2、E1及びE2もプロトン付加された形態であり、化合物はカチオン性の形態である。塩基性媒体では、種々の基Aiは塩の形態であり、化合物はアニオン性の形態である。約6〜8の中間pH値では、化合物は双性イオン性の形態である。
【0020】
本発明による錯体は、前記の式(I)に相当する配位子で錯化されたランタニドイオンLnから成る。ランタニドイオンは、ユウロピウム、テルビウム、サマリウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ネオジム及びガドリニウムの各イオンから選ばれる。錯体が蛍光マーキング用に使用されることが意図されるならば、ユウロピウム、テルビウム、サマリウム又はジスプロシウムが使用されるのが好ましく、一方、錯体がNMRI用の造影剤として使用されることが意図される時は、ユウロピウム、ジスプロシウム又はガドリニウムが使用されるのが好ましい。
【0021】
R4が-C-C-Z1-C-C-Z2-C-A4である、本発明による錯体では、3個のキレート環は、ランタニドカチオンと、各々、次の要素との間に形成する:
- N原子を持つR4及びR5、それらを分離するZ1及び炭素原子;
- Z1、Z2及びそれらを分離する2個の炭素原子;
- 末端セグメントZ2-C-A4
【0022】
R5がR4と同じタイプであるとき、R5は、R4により形成されるタイプと同じタイプのランタニドイオンキレートによって形成する。R5がタイプ-C-C-E1-C-C-E2-C-A5であるとき、3個の5-員キレート環は、ランタニドカチオンと、各々、次の要素との間に形成する:
- N原子を持つR4及びR5、それらを分離するE1及び2個の炭素原子;
- E1、E2及びそれらを分離する2個の炭素原子;
- 末端セグメントE2-C-A5
【0023】
化合物(I)は、次のスキームにより文献の中に記載されている市販品又は製品から、当業者にはよく知られているプロセスにより得ることが可能である:
【0024】
【化4】


式中、X、R1、R2、R3、R4及びR5は前記の意味を有し、並びにR1'、R2'、R3'、R4'及びR5'は、各々、R1、R2、R3、R4及びR5の前駆体である基を表す。
【0025】
化合物ICを得るために、最初の2段階で基R4'及びR5'は、連続的にX並びに基R1'、R2'及びR3'を含有する分子IAに導入される。
【0026】
次の段階で、化合物ICの基R1'、R2'、R3'、R4'及びR5'は、各々、基R1、R2、R3、R4及びR5に転化される。
【0027】
同一の基R4及びR5を得るため、基R4'及びR5'が同じであるとき、これらの基は第1段階で同時に導入される。これらの基が異なるとき、これらの基は、分子IAを2種類の異なる試薬と連続的反応により任意の順序で導入される。
【0028】
化合物(I)が基R1及びR2はカルボキシル官能基である化合物であるとき、基R3は水素原子であり、基Xは、単結合、メチレン基又はエチレン基であり、有利に選べる出発原料IAは、各々、アミノマロン酸ジエチル、アスパラギン酸ジメチル及びグルタミン酸ジメチルであり、これらは市販品である。
【0029】
化合物(I)が、次に示す化合物であるとき:
- 基R1及びR2はカルボキシル官能基である、
- 基R3は水素原子である、及び
- 基Xはプロピレン又はパラ−置換ベンゼンである、
使用可能な出発原料IAは、各々、2-アミノアジピン酸ジメチル(レルヒ・イー(Lerch, E.)等により記載されている調製物、ヘルベチカ・キミカ・アクタ(Helvetica Chimica Acta)、1974年、第57巻、p.1584)、及びメチル(α-アミノ-4-メトキシカルボニル)ベンゼンアセテート(ショウベル・イー(Chauvel, E.)等により記載されている調製物,ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journalof Medicinal Chemistry)1994年、第37巻、p.1339)である。
【0030】
基R4及びR5が同じであり、これらのセグメント-C-C-Z1-C-C-Z2-C-が2,2'-ビピリジンから誘導されるとき、ジブロモ化合物ICを得るために、出発原料は第1段階の過程で6-ブロモメチル-6'-ブロモ-2,2'-ビピリジンと反応される。6-ブロモメチル-6'-ブロモ-2,2'-ビピリジンは、ベンゼンの中の6-メチル-6'-ブロモ-2,2'-ビピリジンとN-ブロモ-スクシンイミドとのラジカルブロム化反応により得ることが可能であり、6-メチル-6'-ブロモ-2,2'-ビピリジンは、ホートン・エム(Houghton M.)等によって記載されている方法により得られる(ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティー、ダルトン・トランザクションズ(Journalof Chemical Society, Dalton Transactions)1997年、p.2725)。この特種なケースの第1段階の反応スキームは下記に示される。
【0031】
【化5】

【0032】
ジブロモ化合物ICが、NaOHよるけん化とHClによる酸性化を伴うカルボアルコキシル化にかけられるとき、基A4及びA5が、カルボキシル基である化合物(I)が得られる。カルボアルコキシル化は、エル−ガーユーリー(El-Ghayoury)等によって記載されている方法により行なうことが可能である(ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)、2000年、第65巻、p.7757)。
【0033】
ジブロモ化合物ICを、ジアルキルホスファイトと反応させる(ペニコード(Penicaud)等により記載されている方法による、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)1998年、第39巻、p.3689)と、ジアルキルホスホネートが得られ、各臭素原子は基P(O)(OR)2で置換される。ジアルキルホスホネートからは、水中でのNaOHによるけん化に続くHClによる酸性化により、基A4及びA5が基P(O)(OH)ORである化合物(I)が得られる。
【0034】
加水分解を伴う、ジアルキルホスホネートP(O)(OR)2とトリメチルシリルブロマイドとの反応(マッケンナ・シー(McKenna C.)等によって記載されている方法による、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)、1977年、第18巻、p.155)により、2個のアニオン基A4及びA5がP(O)(OH)2基である化合物(I)が得られる。同様な結果は、ジアルキルホスホネートP(O)(OR)2のHClによる酸加水分解により得ることが可能である。
【0035】
前記の3個の操作モードの反応スキームは下記に示される。
【0036】
【化6】


【0037】
基R4及びR5は同じであり、それらのセグメント-C-C-Z1-C-C-Z2-C-が1,10-フェナントロリンから誘導されるとき、出発原料は、第1段階の過程で、2-ブロモメチル-9-エトキシカルボニル-1,10-フェナントロリンと反応される。2-ブロモメチル-9-エトキシカルボニル-1,10-フェナントロリンの調製は、ウルリッチ・ジー(Ulrich G.)等によって記載されている(テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)、2001年、第42巻、p.6113)。得られたジエステル化合物をNaOHによるけん化に続いて稀HCLによる酸性化にかけることより、基A4及びA5がカルボキシルである化合物(I)が得られる。反応スキームは下記に示される。
【0038】
【化7】

【0039】
所望の置換基R1は、置換基R1を持つ出発化合物か、又は所望の置換基の前駆体R1'を持つ出発化合物のどちらかを選択することにより得ることが可能である。置換基R1が前駆体R1'から得られるとき、所望の置換基の生成は、式(IC)の前駆体を含有する化合物について、又はランタニドカチオン及び前駆体を含有する式(I)の化合物によって形成される錯体について行なうことが可能である。
【0040】
カルボキシルタイプの置換基R1は、カルボキシルエステル官能基を含有する前駆体基R1'を出発とするけん化反応により得ることが可能である。アミノタイプの置換基R1は、ニトロ官能基を含有する前駆体基R1'の還元から得ることが可能である。イソチオシアノタイプの置換基R1は、アミノ官能基を含有する前駆体R1'とチオホスゲンとの反応により得ることが可能である。マレイミドタイプの置換基R1は、アミノ官能基を含有する前駆体R1'と4-マレイミド酪酸のN-スクシンイミジルエステルとの反応により得ることが可能である。
【0041】
N-スクシンイミジルエステルタイプの置換基R1は、N-ヒドロキシスクシンイミドとの反応を伴う、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミドによるカルボキシル前駆体の活性化による錯体から得ることが可能である。
【0042】
本発明による錯体は、ランタニドカチオンを発生する化合物と式(I)の化合物との反応により得ることが可能である。ランタニドカチオンを発生するのに言及可能である化合物の例には、ランタニドハロゲン化物水和物、ランタニドナイトレート水和物、ランタニドカーボネート水和物及びランタニドトリフラートが挙げられる。反応は溶媒の中の溶液の中で行なわれる。溶媒は、水、メタノール、エタノール及びアセトニトリルから選ばれるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
1つの好ましい実施態様では、化合物(I)をランタニドイオン前駆体と、メタノールと水との混合物の中で、3〜5の範囲のpHで、10分間〜24時間、及び25℃〜80℃の温度で、反応させる。次いで、生成した錯体を分離する前に、溶液のpHを7.0に上げてメタノールを留去する。
【0044】
本発明の錯体は、とりわけ、蛍光マーキング用に、又は核磁気共鳴画像法用に使用可能である。これらの適用に対して、好ましい基R1は、アミノ、チオ及びカルボキシル基(マーキング対象の分子との共有結合の前に活性化されなければならない)、及びマレイミド、N-スクシンイミジルエステル及びイソチオシアノ基(マーキング対象の分子と直接結合できる)である。
【0045】
本発明の錯体は、化合物のマーキングによる化合物の分析又は検定には有用である。本方法は、検定対象の化合物と共有結合すること、本発明による錯体から成るマーカー、及びマーカーの発光特性により標識化合物の存在を検出すること又は定量することにある。ユウロピウム、テルビウム、サマリウム又はジスプロシウムの各錯体は、この適用に対して特に好ましい。
【0046】
本発明によるランタニドイオン錯体が、核磁気共鳴用の緩和剤として使用されることが意図されるとき、ガドリニウム、ユウロピウム又はジスプロシウムの各錯体が使用されるのが好ましい。
【0047】
本発明は、例示としての、下記の実施例によって更に詳細に説明される、しかしながら、本発明はこれらには限定されない。
【実施例1】
【0048】
化合物1の調製
化合物1を下記の合成スキームによって得た。選ばれたグルタミンエステルの異性体(S)は、異性体(R)又は2種類の異性体の混合物で置換可能である。
【0049】
【化8】

【0050】
化合物2の調製
化合物2を、エス・マメリ(S. Mameri)等により記載されている方法により調製した(シンセシス(Synthesis)、2003年、第17巻、p.2713)。250 mLの丸底フラスコの中の90 mLのベンゼンの中に、1.5 g(6.0ミリモル)の6-メチル-6'-ブロモ-2,2'-ビピリジン、66 mg(0.4ミリモル)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び1.3 g(7.3ミリモル)のN-ブロモスクシンイミドを入れる。溶液を、2時間30分、100 Wの標準ハロゲンランプを使って照射することにより還流する。溶媒を減圧下で留去し、固体残留物を、50/50〜100/0の勾配のCH2Cl2/ヘキサンを使いシリカ担体のクロマトグラフにかける。940 mg(2.9ミリモル)の化合物2が得られ(48%の収率に相当する)、この化合物は次の特性を有する:
Rf = 0.42, SiO2, CH2Cl2
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 4.61 (s, 2H), 7.48 (d, 1H, 3J=7.5 Hz), 7.50 (d, 1H, 3J=7.5 Hz), 7.68 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.83 (t, 1H, 3J=8.0 Hz), 8.33 (d, 1H, 3J=8.0 Hz), 8.44 (d, 1H, 3J=8.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz):δ 34.0, 120.1, 120.7, 124.0, 128.2, 138.1, 139.3, 141.6, 154.3, 156.4, 156.9。
C11H8N2Br2に対する分析計算値: C 40.28, H 2.46, N 8.54。測定値: C 40.12, H 2.34, N 8.44。
FAB+/MS: 327 (50%), 329 (100%), 331(50%, [2+H]+)。
【0051】
化合物3の調製
シュレンクチューブ(Schlenk tube)の中の、P2O5の上で新たに蒸留した100 mLのアセトニトリルの中に、アルゴン雰囲気下で、470 mg(2.22ミリモル)のL-グルタミン酸ジメチル塩酸塩及び1.23 gのK2CO3(8.90ミリモル)を入れる。溶液を、80℃で30分間加熱する。1.60 g(4.88ミリモル)の化合物2を加えて混合物を80℃で23時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発し、残留物を100 mLのCH2Cl2及び20 mL水で再溶解する。水相を、2分割の20 mLのCH2Cl2で洗浄し、組み合わせる有機相を、MgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。固体残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH(100/0〜97/3)混合物を使いシリカ担体のフラッシュクロマトグラフィー(φ=5 cm, h=12 cm)にかける。995 mg(1.49ミリモル)の化合物3が得られ(67%の収率に相当する)、この化合物は次の特性を有する:
Rf = 0.34, SiO2, CH2Cl2/MeOH (98/2)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 2.06-2.20 (m, 2H), 2.39-2.68 (m, 2H), 3.50 (s, 3H), 3.54-3.62 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.99-4.16 (m, 4H), 7.43-7.48 (m, 4H), 7.63 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.71 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.23 (d, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.39 (d, 2H, 3J=8.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 24.8, 30.3, 51.5, 57.2, 62.1, 119.6, 119.7, 123.5, 127.8, 137.3, 139.1, 141.5, 153.8, 157.4, 159.1, 173.1, 173.4。
C29H27N5O4Br2に対する分析計算値: C 52.04, H 4.07, N 10.46。測定値: C 51.81, H 3.85, N 10.19。
FAB+/MS: 670.2 ([3+H]+, 100%)。
【0052】
化合物4の調製
250 mLの二口丸底フラスコの中の50 mLのエタノール及び50 mLのトリエチルアミンの中に、995 mg(1.49ミリモル)の化合物3及び150 mg(0.21ミリモル)の[Pd(PPh3)2Cl2]を入れる。CO気流の散布により、溶液を70℃で15時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発し、得られる固体を100 mLのCH2Cl2に再溶解し、セライトで濾過し、次いで、有機相を20 mL水で抽出する。水相を2分割の20 mLのCH2Cl2で洗浄し、組み合わせる有機相をMgSO4上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH(99/1〜90/10)混合物を使いシリカ担体のフラッシュクロマトグラフィー(φ=5 cm, h=10 cm)にかける。僅かにオレンジ色の油状物の形態で588 mg(0.90ミリモル)の4が得られ(60%の収率に相当する)、この化合物は次の特性を有する:
Rf = 0.30, SiO2, CH2Cl2/MeOH (95/5)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ1.46 (t, 6H, 3J=7.0Hz), 2.06-2.19 (m, 2H), 2.38-2.65 (m, 2H), 3.49 (s, 3H), 3.55-3.63 (m, 1H), 3.76 (s, 3H), 4.02-4.19 (m, 4H), 4.48 (q, 4H, 3J=7.0 Hz), 7.47 (d, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.75 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.92 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.10 (d, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.40 (d, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.62 (d, 2H, 3J=8.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ14.3, 24.8, 30.4, 51.5, 57.2, 61.8, 62.0, 119.9, 123.5, 124.2, 124.8, 137.3, 137.7, 147.8, 154.6, 156.5, 159.0, 165.4, 173.2, 173.5。
C35H37N5O8としての分析計算値: C 64.11, H 5.69, N 10.68。
測定値: C 64.07, H 5.55, N 10.53。
FAB+/MS: 656.2 ([4+H]+, 100%)。
【0053】
化合物1の調製
凝縮器付きの丸底フラスコの中の50 mLのMeOHと15 mLの水との混合物の中に、588 mg(0.90ミリモル)の4及び144 mg(3.60ミリモル)のNaOHを溶解する。混合物を、70℃で5時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発し、固体を10 mLの水に溶解し、それに、ゆっくりと2N HCl溶液を加えてpH 2-3にする。生成する沈殿物を遠心分離により分離し、真空下で乾燥する。411 mg(0.60ミリモル)の化合物1が、淡黄色の塩酸塩1.3HClの形態で得られ(67%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
1H-NMR (CD3OD, 300 MHz): δ 2.26-2.48 (m, 2H), 2.80-2.84 (m, 2H), 3.95-3.99 (m, 1H), 4.53-4.81 (m, 4H), 7.47 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.63 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.90 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.02 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 8.42 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 8.58 (d, 2H, 3J=7.5 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 75 MHz): δ 23.1, 32.1, 57.0, 67.0, 122.3, 125.1, 125.9, 126.1, 139.7, 140.1, 149.0, 154.1, 155.5, 156.1, 168.0, 173.7, 176.4。
C29H25N5O8.3HClに対する分析計算値: C 51.15, H 4.14, N 10.28。測定値: C 51.01, H 4.43, N 9.95。
FAB+/MS: 572.5 ([1+H]+, 100%)。
【実施例2】
【0054】
式 [Eu.(1-4H).H2O]Naの錯体5の調製
【0055】
【化9】

【0056】
60 mg(88μモル)の1.3 HClを、30 mLのMeOHと30 mLの水との混合物に溶解する。この溶液に、3 mLのMeOHに溶解した36 mg(98μモル)のEuCl3.6H2Oと3 mL水との混合物を加える。溶液を70℃で1時間、加熱する。冷却後、5%のNaOH水溶液で溶液のpHを7.4に上げる。僅かな曇りが現われるまで、溶液を回転式蒸発器で濃縮する。次いで、実質的な沈殿物が生成するまで、THFを加える。沈殿物を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥すると、ベージュ色の固体の形態で62 mg(74μモル)の化合物5が得られ(85%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
1H-NMR (D2O/t-BuOH, 200 MHz, 全ての信号は、ブロードな一重項の形態である): δ−9.40 (1H), -8.95 (1H), -4.23 (2H), -3.17 (1H), -2.21 (1H), 1.88 (1H), 2.73 (1H), 4.17 (1H), 6.06 (1H), 7.12 (1H), 7.80 (1H), 7.88 (1H), 8.90 (1H), 9.60 (1H), 9.89 (1H), 11.08 (1H), 11.38 (1H), 12.01 (1H)。
C29H21NaN5O8Eu.5H2Oに対する分析計算値: C 41.84, H 3.75, N 8.41.測定値: C 41.93, H 3.62, N 8.44。
FAB+/MS: 720.2 (80%), 722.2 (100%), [5-H2O-Na+2H]+
IR (KBr錠剤、cm-1) : 3420, 1619, 1574, 1460, 1384, 1274。
水の中での光物理特性:
吸収、λmax [nm] (εmax [M-1.cm-1]) : 320 (肩), 308 (19 700), 276 (8700), 267 (9700), 253 (14 400)。
発光:ユウロピウム化合物に固有の次の微細バンドを持つ:581, 594, 615, 650及び701 nm。励起状態の寿命: 0.62 ms. 量子収率 (標準物質;水中の[Ru(bipy)3]2+): 8%。重水素化水の中の励起状態の寿命: 2.48 ms。重水素化水の中の量子収率: 35%。
【実施例3】
【0057】
下式の錯体6の調製
【0058】
【化10】

【0059】
40 mg(48μモル)の錯体5及び12 mg(63μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を、6 mLのDMSOの中に懸濁する。この溶液に7.0 mg(61μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミドを加える。溶液を室温で66時間攪拌すると、その期間に錯体5が溶解し、次いで、白色沈殿物が生成する。固体を遠心分離により分離し、真空下で50℃で2時間乾燥する。31 mg(34μモル)の6が得られ(71%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
C33H25EuN6O10.5H2Oに対する分析計算値: C 43.67, H 3.89, N 9.26。測定値: C 43.60, H 3.80, N 9.16。
FAB+/MS: 720.1, 722.1 ([6-H2O-C4H4NO2+2H]+, 100%), 817.1, 819.1 ([6-H2O+H]+, 30%).
IR (KBr錠剤、cm-1): 3420, 1739, 1629, 1573, 1459, 1384。
水の中での光物理特性:
吸収、λmax [nm] (εmax [M-1.cm-1]) : 320 (肩), 309 (20 000), 276 (10 000), 267 (10 500), 253 (16 000)。
発光: ユウロピウム化合物に固有の次の微細バンドを持つ:581, 593, 615, 649及び701 nm。励起状態の寿命: 0.63 ms。量子収率 (標準物質:水中の[Ru(bipy)3]2+): 8%.重水素化水の中の励起状態の寿命: 2.47 ms。重水素化水の中の量子収率: 34%。
【実施例4】
【0060】
錯体5によるアミンのマーキング
10 mgの錯体5(13.1μモル)を5 mLの水に中に懸濁する。3.5 mg(18.3μモル)のEDCI.HCl、次いで、1.7μL(13.2μモル)の(+)-α-メチルメチルベンジルアミンを加える。15分後、次いで、1時間後、各時間に、室温で 1.7μLの(+)-α-メチルベンジルアミンを加える。攪拌を15時間続ける。水相を10 mLのCH2Cl2 で2回洗浄し、次いで、乾燥するまで蒸発させると、14 mgの淡黄色の固体が得られる。MeOH/Et2O混合物からの再結晶化後、遠心分離及び真空下で乾燥し、錯体7(8.0 mg, 9.5μモル)を、クリーム色の粉末の形態で回収する(73%)。
ISI-TOF/MS: 847.0513 ([7-H2O+Na]+, 60%), 825.0912 ([7-H2O+H]+, 28%)。錯体7の式を下に示している。
【0061】
【化11】

【実施例5】
【0062】
錯体6によるウシ血清アルブミンBSAのマーキング
モル比が30:1の6/ASBを得るために、錯体6(2.0 mg)を、1 mLのホウ酸塩緩衝液(水中で50 mM、pH = 7.0)の中のBSA(5.4 mg)の溶液に加える。溶液を室温で攪拌すると、2時間後に6が全て溶解する。24時間の攪拌後、溶液を遠心分離フィルター(セントリコン、ミリポア(Cetricon,Millipore)、30 KDaフィルター)上に置き、溶液の容量を濾過により 200-300μLまで減らす。溶液を3 mLの水で稀釈し、前記容量を濾過により再び200-300μLまで減らす。濾過水が、UV照射のもとで最早、発光しなくなるまで(ユウロピウムが存在しない)、この直前の操作を3〜4回繰り返す。標識タンパク質を含有し、フィルターの上に残る200-300μLの残留溶液を回収し、冷蔵庫の中に4℃で保管する。
【0063】
標識BSAのキャラクタリゼーション
標識BSAの水溶液の紫外−可視(UV-Vis)吸収スペクトルは、ユウロピウム錯体により強い吸収を示し、この吸収は、タンパク質による吸収(λmax= 278 nm、εmax = 38 000 M-1.cm-1)と部分的に重なっている。ビピリジンの吸収バンド(308 nm)での溶液の励起では、ユウロピウム化合物の典型的な発光スペクトルが観察され、励起状態の平均寿命は1.1 msであり(減少は純粋な単一指数的(mono-exponential)ではない)、13%の発光量子収率が観察される。
【0064】
MALDI-TOFモード(マトリックス支援レーザー脱着イオン化−飛行時間(Matrice Assisted Laser Desorption Ionization-Time Of Fly))での質量分析法によるキャラクタリゼーションを、次の方法で行なう。標識BSAの水溶液を、1%のトリフルオロ酢酸で処理すると、ユウロピウムの脱錯化が起こり、次いで、タンパク質は、疎水性固相がC4鎖から成るクロマトグラフィーカラムに吸着される。水で洗浄後、タンパク質をアセトニトリルで遊離させ、次いで、MALDI-TOF (α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸マトリックス)により分析する。ユウロピウムを含まない標識タンパク質で得られた平均質量は、71 700 Da(BSA、M = 66 610 Da)であり、標識タンパク質中のマーカー/BSAモルは9/1となる。
【実施例6】
【0065】
式[Tb.(1-4H).H2O]Naの錯体8の調製
【0066】
【化12】

【0067】
凝縮器付きの250 mLの丸底フラスコの中の30 mLのMeOHと30 mLの水との混合物の中に、40 mg(59μモル)の化合物1.3HClを溶解する。この溶液に、5 mLのMeOHの中に溶解したTbCl3.6H2O 25 mg(67μモル)及び5 mLの水を加える。溶液を70℃で1時間、加熱する。冷却後、溶液のpHを、1%のNaOH水溶液で7.2に上げる。僅かな曇りが現われるまで、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、次いで、実質的な沈殿物が生成するまで、THFを加える。淡黄色固体を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥する。46 mg(56μモル)の錯体8が得られ(95%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
C29H21NaN5O8Tb.4H2Oに対する分析計算値: C 42.40, H 3.56, N 8.53.測定値: C 42.28, H 3.31, N 8.38。
FAB-/MS: 668.2 ([8-H2O-CH2COONa]-, 100%), 726.2 ([8-H2O-Na]-, 30%)。
IR (KBr錠剤、cm-1) : 3428, 1592, 1574, 1466, 1416, 1387。
水の中での光物理特性:
吸収、λmax [nm] (εmax [M-1.cm-1]) : 320 (肩), 308 (20 800), 277 (8900), 267 (10 400), 253 (15 000)。
発光: テルビウム化合物に固有の次の微細バンドを持つ: 487, 543, 583及び621 nm。励起状態の寿命: 1.48 ms。量子収率 (標準物質: 1N H2SO4中のキニーネ硫酸塩): 31%。重水素化水中の励起状態の寿命: 2.53 ms。重水素化水の中の量子収率: 53%。
【実施例7】
【0068】
次式の錯体9の調製
【0069】
【化13】

【0070】
10 mLの丸底フラスコの中の5 mLのDMSOの中に、50 mg(61μモル)の錯体8を懸濁する。この溶液に、9 mg(78μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミド及び13 mg(68μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl) を加える。溶液を、室温で138時間攪拌すると、その期間に錯体8が溶解し、次いで、白色沈殿物が生成する。固体を遠心分離により分離し、THFで洗浄し、真空下で乾燥する。母液へのTHFの添加によって更に沈殿物が生成し、それを遠心分離により回収する。全部で49 mg(55μモル)の錯体9が得られ(90%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
C33H25N6O10Tb.4H2Oに対する分析計算値: C 44.21, H 3.71, N 9.29.測定値: C 44.01, H 3.42, N 9.29。
FAB+/MS: 726.2 ([9-H2O-C4H4NO2]+, 15%), 825.5 ([9-H2O+H]+, 100%)。
IR (KBr錠剤、cm-1): 3433, 1741, 1624, 1594, 1574, 1464, 1419, 1375。
【0071】
水の中での光物理特性
吸収、λmax [nm] (ε max [M-1.cm-1]) : 308 (18 700), 276, 267, 253。
発光: テルビウム化合物に固有の次の微細バンドを持つ:487, 543, 583及び621 nm。
励起状態の寿命: 1.50 ms。量子収率 (標準物質: 1N H2SO4中のキニーネ硫酸塩): 34%。重水素化水の中の励起状態の寿命: 2.42 ms。重水素化水の中の量子収率: 62%。
【実施例8】
【0072】
錯体9によるウシ血清アルブミン BSAのマーキング、及び時間分解発光顕微鏡による新事実
ウシ血清アルブミンのマーキングを、実施例5に記載の方法により行うが、錯体6を錯体9に置き換えた。
【0073】
マーカー/BSAのモル比の測定
マーカー/BSAのモルの比(BSAに共有結合した錯体9の数)を、308 nmでの示差吸収により測定する。生得BSAの及び標識BSAの各モル吸収係数を308 nmで測定する。これらの2個の数値の差異を、308 nmにおける9のモル吸収係数で割り算すると、標識タンパク質の中のマーカー/BSA モル比6/1が得られる。
【0074】
図1は、化合物9で標識されたBSA(各画像の左列及び右列)及び標準物質(製品コードF-123で、ダコ−イムノグロブリン(Dako-Immunoglobuline)によって製造されるフルオレセイン-標識ウサギ免疫グロブリン)としての役割をするフルオレセイン-標識抗体(各画像の中央列)を含有する直径約750ミクロンの小滴物を示している。従来の蛍光顕微鏡法によって得られる画像(左)は、2種類の化合物の蛍光を示している。時間分解発光顕微鏡法によって得られる画像(遅延時間 = 0.5 ms,積分時間= 5.0 ms)は、標準化合物の蛍光の消滅を示し、一方、標識BSAの発光は持続している。
【実施例9】
【0075】
式[Gd.(1-4H).H2O]Naの錯体10の調製
【0076】
【化14】

【0077】
凝縮器付きの100 mLの丸底フラスコの中の25 mLのMeOHと25 mL水との混合物の中に、30 mg(44μモル)の化合物1.3HClを溶解する。この溶液に、5 mLのMeOHに溶解した19 mg(51μモル)のGdCl3.6H2O及び5 mL水を加える。溶液を、70℃で1時間、加熱する。冷却後、0.5%のNaOH水溶液で溶液のpHを7.5に上げる。僅かな曇りが現われるまで、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、次いで、実質的な沈殿物が生成するまでTHFを加える。淡黄色固体を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥すると、30 mg(37μモル)の錯体10(85%の収率に相当する)が得られ、その特性は次の通りである:
C29H21GdNaN5O8.3H2Oに対する分析計算値: C 43.44, H 3.39, N 8.73.測定値: C 43.35, H 3.17, N 8.55。
FAB-/MS: 667.2 ([10-H2O-CH2COONa]-, 100%), 725.2 ([10-H2O-Na]-, 45%)。
IR (KBr錠剤、cm-1): 3422, 1637, 1592, 1459, 1419, 1385。
【実施例10】
【0078】
次式の錯体11の調製
【0079】
【化15】

【0080】
10 mLの丸底フラスコの中の5 mLのDMSOの中に、50 mg(62μモル)の化合物10を懸濁する。この溶液に、9 mg(78μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミド及び15 mg(78μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を加える。溶液を室温で48時間攪拌すると、その期間に錯体10が溶解し、次いで、白色沈殿物が生成する。固体を遠心分離により分離し、THFで洗浄して真空下で乾燥する。母液にTHFを加えると、更に沈殿物が生成し、この沈殿物を遠心分離により回収する。合計で45 mg(51μモル)の錯体11が得られ(82%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
C33H25GdN6O10.3H2Oに対する分析計算値: C 45.20, H 3.56, N 9.37.測定値: C 45.02, H 3.18, N 9.21。
FAB+/MS: 726.5 ([11-H2O-C4H4NO2+2H]+, 20%), 824.2 ([11-H2O+H]+, 100%)。
IR (KBr錠剤、cm-1): 3435, 1741, 1623, 1573, 1465, 1420, 1376。
【実施例11】
【0081】
化合物12の調製
【0082】
【化16】

【0083】
この化合物は、次の合成スキームによって化合物3から2段階で得られる:
【0084】
【化17】

【0085】
化合物13の調製
シュレンクチューブの中の10 mLのトルエンの中に、アルゴン雰囲気下で、200 mg(0.30ミリモル)の化合物3、90μL(0.70ミリモル)のジエチルホスファイト、78 mg(0.30ミリモル)のPPh3及び300μLの新たに蒸留したジイソプロピルエチルアミンを入れる。溶液を、アルゴンで20分間、脱ガスする。34 mg(0.03ミリモル)のPd(PPh3)4を加えて、溶液を100℃で16時間、加熱する。40μL(0.31ミリモル)のジエチルホスファイト及び34 mg(0.03ミリモル)のPd(PPh3)4を加えて溶液を再び100℃で16時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発させる。固体残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH混合物(99/1〜95/5)を使いシリカ担体のフラッシュクロマトグフィー(φ = 3 cm, h = 15 cm)により精製する。純粋な画分を蒸発させ、30 mLのCH2Cl2に溶解し、10 mLの水で洗浄する。有機相をMgSO4上で乾燥し、濾過し、蒸発させる。油状物の形態で72 mg(0.09ミリモル)の化合物13が得られ(31%の収率に相当する)、次の特性を有する:
Rf = 0.56, SiO2, CH2Cl2/MeOH (90/10)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 1.35 (t, 12H, 3J=7.0 Hz), 2.02-2.22 (m, 2H), 2.37-2.71 (m, 2H), 3.47 (s, 3H), 3.54-3.61 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 4.01-4.17 (m, 4H), 4.18-4.36 (m, 8H), 7.47 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.73 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.81-7.97 (m, 4H), 8.32 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 8.59 (dt, 2H, 3JH-H=7.0 Hz, 3JH-P=4JH-H=2.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 16.3, 16.4, 24.7, 30.3, 51.4, 57.1, 61.9, 63.0, 63.1, 119.6, 123.2 (2), 123.4, 127.4, 127.9, 136.7, 137.0, 137.2, 149.0, 153.5, 154.5, 156.5, 156.9, 159.0, 173.1, 173.4。
31P-NMR (CDCl3, 162 MHz): δ 11.73。
【0086】
化合物12の調製
凝縮器付きの50 mLの丸底フラスコの中で、51 mg(65μモル)の化合物13を6 mLの0.05 NのNaOH水溶液に溶解する。混合物を100℃で19時間、加熱する。冷却後、水相を4分割の5 mLのCH2Cl2で抽出し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。生成物はH2O/THF混合物から沈殿する。クリーム色の粉末の形態で45 mg(51μモル)の化合物12が得られ(79%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
1H-NMR (D2O/tBuOH, 300 MHz): δ 1.18 (t, 6H, 3J=7.0 Hz), 2.06-2.27 (m, 2H), 2.37-2.58 (m, 2H), 3.50 (t, 3H, 3J=7.5 Hz), 3.86-3.99 (m, 4H), 4.02-4.24 (m, 4H), 7.48 (d, 2H, 3J=7.0 Hz), 7.59-7.81 (m, 10H)。
13C-NMR (D2O/tBuOH, 75 MHz): δ 16.4, 16.5, 27.8, 35.6, 59.8, 62.4, 62.5, 71.6, 121.2, 124.0, 124.1, 125.7, 127.1, 127.4, 138.0, 138.2, 138.5, 154.6, 155.0, 156.3, 156.6, 157.8, 160.6, 181.1, 183.6。
31P-NMR (D2O, 162 MHz): δ 10.17。
C31H31N5Na4O10P2.5H2Oに対する分析計算値: C 42.43, H 4.71, N 7.98。測定値: C 42.35, H 4.55, N 7.78。
FAB+/MS : 764.2 ([12-Na]+, 10%)。
【実施例12】
【0087】
次式の錯体14の調製
【0088】
【化18】

【0089】
凝縮器付きの50 mLの丸底フラスコの中で、19 mg(22μモル)の化合物12を、35 mL水に溶解する。希HCl 溶液でpHを3.1に調整する。この溶液に、5 mLの水に溶解した9 mg(25μモル)のEuCl3.6H2Oを加える。溶液を、80℃で1時間、加熱する。冷却後、溶液をセライトで濾過し、0.5%のNaOH水溶液でpHを7.1に上げる。溶液を乾燥するまで蒸発させ、生成物がH2O/THF混合物から沈殿する。淡黄色固体を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥すると、9 mg(10μモル)の錯体14が得られ(47%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
FAB+/MS: 848.2 ([14-H2O-Na]+, 35%)。
【実施例13】
【0090】
化合物15の調製
【0091】
【化19】

【0092】
この化合物は、次の合成スキームにより3段階で得られる:
【0093】
【化20】

【0094】
化合物16の調製
500 mLの丸底シュレンクフラスコの中の新たに蒸留した150 mLのアセトニトリルの中に、アルゴン雰囲気下で、450 mg(2.13ミリモル)のアミノマロン酸ジエチル塩酸塩及び1.18 g(8.54ミリモル)のK2CO3を入れる。溶液を80℃で1時間、加熱する。1.46 g(4.45ミリモル)の化合物2を加え、混合物を80℃で21時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を 100 mLの CH2Cl2及び20 mLの水で再溶解する。水相を2分割の20 mLのCH2Cl2で洗浄し、組み合わせる有機相をMgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。固体残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH混合物(100/0〜99/1)を使いシリカ担体のフラッシュクロマトグフィー(φ= 4 cm, h = 14 cm)により精製する。次の特性を有する淡黄色の粉末の形態で794 mg(1.19ミリモル)の化合物16が得られる(56%収率に相当する):
Rf = 0.57, SiO2, CH2Cl2/MeOH (97/3)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 1.26 (t, 6H, 3J=7.0 Hz), 4.22 (s, 4H), 4.23 (q, 4H, 3J=7.0 Hz), 4.47 (s, 1H), 7.43 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=0.5 Hz), 7.60 (t, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.62 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.75 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.22 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=1.0 Hz), 8.37 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=1.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 14.1, 58.0, 61.4, 67.1, 119.7, 123.4, 127.7, 137.4, 139.0, 141.4, 153.5, 157.4, 158.9, 168.1。
C29H27Br2N5O4に対する分析計算値: C 52.04, H 4.07, N 10.46。測定値: C 51.93, H 3.93, N 10.31。
FAB+/MS: 670.2 (100%), 672.2 (50%), [16+H]+
【0095】
化合物17の調製
250 mLの二口丸底フラスコの中の75 mLのエタノール及び75 mLのトリエチルアミンの中に、778 mg(1.16ミリモル)の化合物16及び82 mg(0.12 ミリモル)の[Pd(PPh3)2Cl2]を入れる。CO気流を散布しながら、溶液を70℃で16時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発させ、得られる固体を75 mLのCH2Cl2に再溶解し、セライトで濾過し、次いで、有機相を15 mLの水で洗浄する。水相を、2分割の20 mLのCH2Cl2で抽出し、組み合わせる有機相をMgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH混合物(99.5/0.5〜90/10)を使いシリカ担体のフラッシュクロマトグフィー((φ= 3 cm, h = 16 cm)により精製する。トリフェニルホスフィンオキシドを含む化合物17を含有する画分を40 mLのCH2Cl2に溶解し、4分割のHCl 3Nで抽出する。組み合わせる水相をNaOHで中和し、次いで、3分割の30 mLのCH2Cl2で抽出する。組み合わせる有機相をMgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。無色の油状物の形態で522 mg(0.80ミリモル)の化合物17が得られ(68%の収率に相当する)、その化合物は次の特性を有する:
Rf = 0.55, SiO2, CH2Cl2/MeOH (90/10)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 1.26 (t, 6H, 3J=7.0 Hz), 1.45 (t, 6H, 3J=7.0 Hz), 4.23 (q, 4H, 3J=7.0 Hz), 4.24 (s, 4H), 4.47 (q, 4H, 3J=7.0 Hz), 4.48 (s, 1H), 7.64 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=0.5 Hz), 7.80 (t, 2H, 3J=8.0 Hz), 7.91 (t, 2H, 3J=7.5 Hz), 8.09 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=1.0 Hz), 8.40 (dd, 2H, 3J=7.5 Hz, 4J=0.5 Hz), 8.62 (dd, 2H, 3J=8.0 Hz, 4J=1.5 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 14.1, 14.3, 58.0, 61.4, 61.8, 67.1, 120.0, 123.4, 124.2, 124.7, 137.5, 137.7, 147.7, 154.4, 156.5, 158.8, 165.3, 168.2。
C35H37N5O8に対する分析計算値: C 64.11, H 5.69, N 10.68。測定値: C 63.81, H 5.43, N 10.43。
FAB+/MS: 496.2 (35%), 656.1 ([17+H]+, 100%)。
【0096】
化合物15の調製
凝縮器付きの50 mLの丸底フラスコの中の10 mLのMeOHと5 mLの水との混合物の中に、103 mg(0.16ミリモル)の化合物17及び50 mg(1.25ミリモル)のNaOHを溶解する。混合物を70℃で5時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発させ、固体を8 mLの水に溶解し、それに、生成物の充分な沈殿物が得られるまで、0℃で、1N HCl溶液をゆっくりと加える(pH = 4-5)。沈殿物を遠心分離により分離し、真空下で乾燥する。白色粉末の形態で59 mg(0.08ミリモル)の15.3HCl塩酸塩水和物が得られ(53%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
1H-NMR (NaOD/tBuOH, 300 MHz: δ 3.75 (s, 4H), 4.04 (s, 1H), 6.84 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.15-7.26 (m, 4H), 7.32 (d, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.42 (t, 2H, 3J=7.5 Hz), 7.56 (d, 2H, 3J=7.5 Hz)。
13C-NMR (NaOD/tBuOH, 75 MHz): δ 60.3, 79.4, 119.9, 122.9, 124.1, 124.4, 138.2, 138.6, 152.8, 153.7, 154.0, 158.7, 168.6, 172.3, 177.3。
C27H21N5O8.3HCl.3H2Oに対する分析計算値: C 45.87, H 4.28, N 9.91。測定値: C 45.75, H 4.09, N 9.78。
FAB+/MS: 544.2 ([15+H]+, 20%)。
【実施例14】
【0097】
次式の錯体18の調製
【0098】
【化21】

【0099】
10 mLの丸底フラスコの中の10 mLのMeOHと10 mL水との混合物の中に、15 mgの15.3HCl.3H2O(21μモル)を分散する。この溶液に、5 mLのMeOHに溶解した10 mg(27μモル)のEuCl3.6H2O及び5 mLの水を加える。溶液を70℃で1時間、加熱する。冷却後、0.5%のNaOH水溶液で、溶液のpHを7.3に上げる。沈殿物が生成するまで、溶液を回転式蒸発器で濃縮する。白色固体を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥すると、14 mg(19μモル)の化合物18が得られ(90%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
FAB-/MS: 692.3 ([18-H2O-Na)]-, 100%)。
IR (KBr錠剤、cm-1): 3442, 1626, 1588, 1460, 1411, 1373。
【実施例15】
【0100】
次式の錯体19の調製:
【0101】
【化22】

【0102】
10 mLの丸底フラスコの中の5 mLのDMSOに18 mg(22μモル)の錯体5を懸濁する。この溶液に、6 mg(26μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミド-3-スルホン酸一ナトリウム塩水和物及び5 mg(26μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を加える。溶液を室温で46時間、攪拌すると、その期間に錯体5が溶解する。溶液にTHFを加えると、沈殿物が生成し、その沈殿物を遠心分離により回収する。白色粉末の形態で15 mg(15μモル)の錯体19が得られる(68%の収率に相当する)。
【実施例16】
【0103】
次式の錯体20の調製:
【0104】
【化23】

【0105】
50 mLの丸底フラスコの中の10 mLのDMSOに45 mg(55μモル)の錯体8を懸濁する。この溶液に、14 mg(60μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミド-3-スルホン酸一ナトリウム塩水和物及び12 mg(63μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を加える。溶液を室温で92時間、攪拌すると、その期間に錯体8が溶解する。溶液にTHFを加えると、沈殿物が生成し、その沈殿物を遠心分離により回収する。黄色粉末の形態で45 mg(44μモル)の錯体20が得られ(81%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
C33H24N6NaO13STb.5H2Oに対する分析計算値: C 38.99, H 3.37, N 8.27。測定値: C 39.20, H 3.56, N 8.39。
FAB+/MS: 682.2 ([20-H2O-C5H3NNaO7S]+, 95%), 727.2 ([20-H2O-C4H3NNaO5S+H]+, 55%)。
【実施例17】
【0106】
次式の錯体21の調製:
【0107】
【化24】

【0108】
10 mLの丸底フラスコの中の5 mLのDMSOに19 mg(24μモル)の錯体10を懸濁する。この溶液に、7 mg(30μモル)のN-ヒドロキシスクシンイミド-3-スルホン酸一ナトリウム塩水和物及び5 mg(26μモル)のエチル-N,N-ジメチル-3-アミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl)を加える。溶液を、室温で24時間、攪拌すると、その期間に錯体10が溶解する。溶液にTHFを加えると、沈殿物が生成し、その沈殿物を遠心分離により回収する。黄色粉末の形態で19 mg(19μモル)の錯体21が得られ(80%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
FAB+/MS: 681.2 ([21-H2O-C5H3NNaO7S]+, 100%), 726.3 ([21-H2O-C4H3NNaO5S+H]+, 40%)。
【実施例18】
【0109】
化合物25の調製
化合物25を、次のスキームによる4段階で得る:
【0110】
【化25】

【0111】
化合物22の調製
シュレンクチューブの中のP2O5上で新たに蒸留した60 mlのアセトニトリルの中に、2.04 g(7.6ミリモル)の7-ヒドロキシ-9-カルボメトキシ-2-メチルフェナントロリン(ハインデル・エヌ(Heindel, N.)等によって得られる、(ジャーナル・オブ・ヘテロサイクル・ケミストリー(Journal of Heterocycle Chemistry)、1968年、第5巻、p.869))、2.11 g(15.2ミリモル)のK2CO3及び950μL(15.3ミリモル)のヨウ化メチルを、アルゴン雰囲気下で入れる。溶液を、80℃で19時間、加熱する。溶液を乾燥するまで蒸発させ、残留物を100 mLのCH2Cl2及び15 mL水に溶解する。水相を4分割の15 mLのCH2Cl2で抽出し、組み合わせる有機相をMgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH混合物(99/1)を使いアルミナ担体のクロマトグラフィー(φ= 5 cm, h = 12 cm)により精製する。黄色粉末の形態で2.05 g(7.3ミリモル)の化合物22が得られ(95%の収率に相当する)、次の特性を有する:
Rf = 0.54, Al2O3, CH2Cl2/MeOH (98/2)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 2.91 (s, 3H), 4.06 (s, 3H), 4.12 (s, 3H), 7.47 (d, 1H, 3J=8.5 Hz), 7.77 (d, 1H, 3J=9.0 Hz), 7.83 (s, 1H), 8.08 (d, 1H, 3J=7.5 Hz), 8.12 (d, 1H, 3J=9.0 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 25.8, 52.8, 56.2, 102.9, 118.7, 122.2, 123.9, 126.9, 127.4, 136.0, 145.2, 146.1, 148.6, 160.1, 163.2, 166.5。
C16H14N2O3に対する分析計算値: C 68.07, H 5.00, N 9.92。測定値: C 67.92, H 4.93, N 9.78。
FAB+/MS: 283.2 ([22+H]+, 100%)。
【0112】
化合物23の調製
250 mLの丸底フラスコの中の10 mLのベンゼンの中に、1 g(3.5ミリモル)の化合物22、630 mg(3.5ミリモル)のN-ブロモスクシンイミド及び30 mg(0.2ミリモル)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を入れる。溶液を、100 Wの標準ハロゲンランプで30分間照射する。溶媒を減圧下で留去し、残留物を、溶離液としてCH2Cl2/ヘキサン(50/50)の混合物を使い10%の水を含有するアルミナ担体のクロマトグラフィーにより精製する。灰色粉末の形態で468 mg(1.3ミリモル)の化合物23が得られ(37%の収率に相当する)、次の特性を有する:
Rf = 0.71, Al2O3, CH2Cl2/MeOH (98/2)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 4.06 (s, 3H), 4.12 (s, 3H), 4.93 (s, 2H), 7.77 (d, 1H, 3J=9.0 Hz), 7.83 (s, 1H), 7.87 (d, 1H, 3J=8.5 Hz), 8.17 (d, 1H, 3J=9.0 Hz), 8.21 (d, 1H, 3J=8.5 Hz)。
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): δ 34.6, 53.0, 56.3, 103.3, 120.2, 122.4, 123.7, 127.0, 128.1, 137.1, 144.5, 145.9, 148.9, 157.6, 163.3, 166.2。
C16H13BrN2O3に対する分析計算値: C 53.21, H 3.63, N 7.76。測定値: C 52.94, H 3.26, N 7.51。
FAB+/MS: 281.2 ([23-Br]+, 30%), 361.2 (100%), 363.2 (100%), [23+H]+
【0113】
化合物24の調製
シュレンクチューブの中の、P2O5の上で新たに蒸留した15 mLのアセトニトリルの中に、96 mg(0.45ミリモル)のDL-グルタミン酸ジメチル塩酸塩及び250 mg(1.81ミリモル)のK2CO3を、アルゴン雰囲気下で入れる。溶液を、80℃で10分間、加熱する。360 g(1ミリモル)の化合物23を加えて、混合物を80℃で18時間、加熱する。別の一部の化合物23(52 mg, 0.14ミリモル)を加え、混合物を80℃で24時間、加熱する。乾燥するまで溶液を蒸発させ、残留物を30 mlのCH2Cl2及び10 mL水に溶解する。水相を4分割の30 mLのCH2Cl2で抽出し、組み合わせる有機相をMgSO4の上で乾燥し、濾過し、次いで、乾燥するまで蒸発させる。残留物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH(100/0〜99.3/0.7)の混合物を使い10%の水を含有するアルミナ担体のクロマトグラフィーにより精製する。46 mg(0.06ミリモル)の化合物24が得られ(37%の収率に相当する)、この生成物は次の特性を有する:
Rf = 0.16, Al2O3, CH2Cl2/MeOH (98/2)。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 2.17-2.28 (m, 2H), 2.61 (t, 2H, 3J=7.5 Hz), 3.44 (s, 3H), 3.71 (t, 1H, 3J=7.5 Hz), 3.83 (s, 3H), 4.06-4.19 (m, 12H), 4.45-4.70 (m, 4H), 7.82 (d, 2H, 3J=9.0 Hz), 7.86 (s, 2H), 8.13 (d, 2H, 3J=8.0 Hz), 8.18 (d, 2H, 3J=9.0 Hz), 8.24 (d, 2H, 3J=8.5 Hz)。
【0114】
化合物25.3HClの調製
50 mLの丸底フラスコの中の9 mLのMeOHと3 mL水との混合物の中に、46 mg(0.06ミリモル)の24及び10 mg(0.25ミリモル)のNaOHを溶解する。混合物を75℃で21時間、加熱する。溶媒を減圧下で留去し、固体を5 mLの水に溶解し、得られる溶液をセライトで濾過する。媒体を希塩酸溶液で酸性化し、乾燥するまで溶液を蒸発させる。残留物を2分割の2 mLの水で洗浄する。橙黄色粉末の形態で19 mg(0.02ミリモル)の25.3HCl塩酸塩が得られ(39%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
1H-NMR (CD3OD, 200 MHz): δ 2.38-2.52 (m, 2H), 2.84 (t, 2H, 3J=7.0 Hz), 4.17 (t, 1H, 3J=7.5 Hz), 4.35 (s, 6H), 4.81-4.85 (m, 4H), 7.87 (d, 2H, 3J=9.5 Hz),7.89 (s, 2H), 8.16 (d, 2H, 3J=9.0 Hz), 8.18 (d, 2H, 3J=8.5 Hz), 8.65 (d, 2H, 3J=9.0 Hz)。
【実施例19】
【0115】
次式[Eu.(25-4H).H2O]Naの化合物26の調製
【0116】
【化26】

【0117】
50 mLの丸底フラスコの中の15 mLのMeOHと15 mのL水との混合物の中に、19 mgの25.3HCl(24μモル)を溶解する。この溶液に、2.5 mLのMeOHに溶解した10 mg(27μモル)のEuCl3.6H2O及び2.5 mL水を加える。溶液を70℃で1時間、加熱する。冷却後、0.5%のNaOH水溶液で溶液のpHを7.0に上げる。僅かな曇りが現われるまで、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、次いで、沈殿物が生成するまでTHFを加える。黄色固体を遠心分離により分離し、次いで、真空下で乾燥すると、7 mg(8μモル)の化合物26が得られ(33%の収率に相当する)、その特性は次の通りである:
FAB-/MS: 791.2 (30%), 828.2 ([26-H2O-Na])-, 50%)。
【実施例20】
【0118】
錯体9を用いる抗ジゴキシゲニン(anti-digoxigenine)抗体のマーキング及び質量分析法によるキャラクタリゼーション
500μLの緩衝溶液(50 mMのホウ酸塩緩衝溶液、pH = 7.0)に溶解した1.0 mgの抗体を含有する抗ジゴキシゲニン抗体の溶液に、0.5 mgの錯体9を加えると、錯体9/抗体の比が30:1に相当する。溶液を室温で24時間、攪拌し、次いで、標識抗体を実施例5に記載の手順によって精製し、4℃で保管する。
【0119】
MALDI-TOF質量分析計によるキャラクタリゼーションを、実施例5に記載の手順によって行なうと、標識抗体では49 220 Daの質量(遊離抗体では47 880 Da)、即ち、2.5の接合度(degree of grafting)となる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】標識されたBSA及び標準物質の蛍光分析画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に相当する化合物
【化1】


式中、
- R1は、タンパク質、抗体又は鉱物物質若しくは有機物質上に存在する官能基と反応できる官能基である;
- Xは、単結合、又は随意に少なくとも1個のヘテロ原子を含むアルキレン基及びアルケニレン基から、並びにアリーレン基から選ばれる少なくとも1個の基から成る炭化水素系鎖を表す;
- R2は、中性pHでアニオン性である基A2、又は1〜4個の炭素原子を含有し少なくとも1個の前記基A2を持つアルキレン若しくはアルケニレン基であり、前記アルキレン若しくはアルケニレン基は随意に鎖の中に少なくとも1個のヘテロ原子を含むこと;
- R3は、H、又は1〜5個の炭素原子含有し、随意に鎖の中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有するアルキレン若しくはアルケニレン基を表し、前記基は随意に中性pHでアニオン性である少なくとも1個の基A3を持つこと;
- R4は、式-(C)n-C-Z1-C-C-Z2-C-A4に対応する基であり、式中、nは1又は2に等しく、Z1及びZ2は、互いに独立して、O及びNから選ばれるヘテロ原子を表し、少なくとも1個は、窒素原子を囲む2個の炭素原子と芳香族複素環の一部を形成する窒素原子である、並びにA4は中性pHでアニオン性である基であり、前記式ではアニオン電荷を持つ原子はZ2に対してγ位にあること;
- R5は、R4に対して定義された基から、又は式-C-C-E1-C-C-E2-C-A5に相当する基からから選ばれる基であり、式中、E1及びE2は、互いに独立してO及びNから選ばれるヘテロ原子を表し、並びにA5は、中性pHでアニオン性である基であり、前記式では、アニオン電荷を持つ原子はE2に対してγ位にあること。
【請求項2】
前記置換基R1が、アミノ、チオ、シアノ、イソシアノ、アクリジニル、ヒドラジノ、ハロアセテート、無水物、トリアゾ、カルボニル、ニトロベンゾイル、スルホニル、チオニル、ハロゲン化物、エポキシド、アルデヒド、イミダゾール、ヒドロキシフェニル、メルカプト、N-スクシンイミジルエステル、N-スルホスクシンイミジルエステル、マレイミド、ヒドロキシル、カルボキシル、チオシアノ、及びイソチオシアノの各基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記置換基R2が、中性pHでアニオン性である基A2であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記置換基R3が、H又はC1〜C3アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R4の基Z1及びZ2が、芳香族複素環基の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
nが1に等しいことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
セグメント-C-Z1-C-又は-C-Z2-C-のうちの1種が、ピリジル、ピリミジニル、キノリル及びイソキノリルの各基から選ばれる複素環基の一部を形成することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
セグメント-C-Z1-C-C-Z2-C-が、2,2'-ビピリジニル、1,10-フェナントロリニル、2,2'-ビスキノリル、2,2'-ビスイソキノリル及び2,2'-ビピリミジニルの各基から選ばれ、前記基は、複素環の少なくとも1個の炭素原子上にアルキル又はアルコキシ置換基を持つと考えられることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R5が、次の基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物:
【化2】


式中、R6及びR7は、1〜5個の炭素原子を含有し、随意に1個以上のヘテロ原子を含有するアルキル鎖を表す。
【請求項10】
R4及びR5が同じであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
中性pHでアニオン性である基A2、A3、A4又はA5が、互いに独立して、-CO2H、-SO3H、-P(O)(OR)OH、-P(O)R(OH)及び-P(O)(OH)2の各基から選ばれる(式中、Rはアルキル基又はアリール基である)ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、カチオン性の形態であり、窒素を持つ置換基R4及びR5、並びにヘテロ原子Z1、Z2、E1及びE2もプロトン付加の形態であると考えられることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物がアニオン性の形態であり、種々の基Aiが塩の形態であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、双性位イオンの形態であり、窒素を持つ置換基R4及びR5、並びにへテロ原子Z1、Z2、E1及びE2もプロトン付加の形態であり、種々の基Aiは塩の形態であると考えられることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Xが、1個以上の縮合又は非縮合芳香核を含むアリーレン基であり、前記核(核類)は、随意に1個以上の脂肪族炭化水素系基を持つことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
基Xが、1〜10個の炭素原子を含有するアルキレン又はアルケニレン基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
基Xが、5〜10個の炭素原子を含有するアリーレン基であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
ランタニド錯体の調製方法において、前記方法が、請求項1〜17のいずれかの1項に記載の化合物(I)を、ランタニドカチオンを発生する化合物と反応させることにあることを特徴とする前記方法。
【請求項19】
ランタニドカチオンを発生する化合物が、ランタニドハロゲン化物水和物、ランタニドナイトレート水和物、ランタニドカーボネート水和物及びランタニドトリフラートから選ばれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が、水、メタノール、エタノール及びアセトニトリルから選ばれる溶媒の中の溶液の中で行なわれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物(I)が、ランタニドイオン前駆体と、メタノールと水との混合物の中で、3〜5の範囲のpHで、10分間〜24時間、25℃〜80℃の温度で反応され、その後、溶液のpHが7.0に調整されてメタノールが留去されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
式(I)に相当する配位子で錯化されたランタニドイオンLnから成る、請求項18に記載の方法により得られる錯体。
【請求項23】
前記ランタニドイオンが、ユウロピウム、テルビウム、サマリウム、ジスプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ネオジム及びガドリニウムの各イオンから選ばれることを特徴とする請求項22に記載の錯体。
【請求項24】
化合物(I)の前記置換基R4が、-C-C-Z1-C-C-Z2-C-A4であり、前記3個のキレート環は、ランタニドカチオンと、各々、次の要素との間に形成されることを特徴とする請求項22に記載の錯体:
- N原子を持つR4及びR5、それらを分離するZ1及び炭素原子;
- Z1、Z2及びそれらを分離する2個の炭素原子;
- 末端セグメントZ2-C-A4
【請求項25】
前記置換基R5が、前記置換基R4と同じタイプであることを特徴とする請求項24に記載の錯体。
【請求項26】
前記置換基R5が、タイプ-C-C-E1-C-C-E2-C-A5であり、前記3個の5-員キレート環は、ランタニドカチオンと、各々、次の要素との間に形成されることを特徴とする請求項24に記載の錯体:
- N原子を持つR4及びR5、それらを分離するE1及び2個の炭素原子;
- E1、E2及びそれらを分離する2個の炭素原子;
- 末端セグメントE2-C-A5
【請求項27】
化合物の定量又は定性分析方法において、前記方法が、前記化合物を、請求項25〜29のうちの1項に記載の錯体から成るマーカーと共有結合することにある、及びマーカーの発光特性により標識化合物の存在を検出又は定量することにあることを特徴とする前記方法。
【請求項28】
前記錯体が、ユウロピウム、テルビウム、サマリウム又はジスプロシウムの各錯体であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
錯体の前記置換基R1が、アミノ、チオ及びカルボキシルの各基から、又はマレイミド、N-スクシンイジミルエステル及びイソチオシアノの各基から選ばれることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項22〜26の1項に記載の錯体から成る、核磁気共鳴用の緩和剤。
【請求項31】
前記緩和剤が、ガドリニウム、ユウロピウム又はジスプロシウムの各錯体から成ることを特徴とする請求項30に記載の緩和剤。
【請求項32】
前記緩和剤が、置換基R1はアミノ、チオ及びカルボキシルの各基から、又はマレイミド、N-スクシンイミジルエステル及びイソチオシアノの各基から選ばれる錯体から成ることを特徴とする請求項30に記載の緩和剤。

【図1】
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【公表番号】特表2006−528934(P2006−528934A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521610(P2006−521610)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001921
【国際公開番号】WO2005/014581
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500356876)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (9)
【出願人】(506027996)ユニベルシテ・ルイ・パストゥール・ド・ストラスブール (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LOUIS PASTEUR DE STRASBOURG
【Fターム(参考)】