説明

ランプアニール装置及びその温度制御方法

【課題】 パイロメーターを備えたランプアニール装置において、パイロメーターに処理対象物を透過した光が入射する場合であっても、精度よく温度検出を行え、もって処理対象物の温度制御を精度よく行えるようにする。
【解決手段】 加熱処理を行うに先立ち、処理対象物11の透過率を求める。処理対象物11が存在しない状態で上部ランプ12からの光が入射したときのパイロメーター14の出力を基準として、処理対象物11を透過した光が入射したときのパイロメーターの出力の比を求め、透過率とする。求めた透過率を記憶部17に記憶させ、加熱処理を行う際、パイロメーター14の出力を透過率に基づいて補正する。これにより、高精度の温度検出及び温度制御が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプアニール装置に関し、特に、その温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のランプアニール装置では、初期段階では、予め定められた加熱制御パターンにしたがって温度制御を行う開ループ制御を行い、その後、検出温度に基づいて温度制御を行う閉ループ制御を行うようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−5588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のランプアニール装置では、通常、使用する高温計の測定可能最低温度よりも低い温度では開ループ制御を行い、それ以上になると閉ループ制御を行うようにしている。
【0005】
しかしながら、高温計として(光学)パイロメーターを用いるランプアニール装置では、Siウェハ等の処理を行う場合に、処理対象物の温度がパイロメーターの測定可能範囲内であるにもかかわらず、正確な温度検出ができず、温度制御異常が発生したとして処理を停止してしまうおそれがある。
【0006】
詳述すると、ランプアニール装置では、処理対象物の表面側(上方)及び裏面側(下方)に加熱ランプ(上部ランプ及び下部ランプ)を配置するとともに、裏面側(下方)にパイロメーターを配置している。そして、パイロメーターは、入射する光(の輝度)を検出し、温度情報に変換して出力する。このときパイロメーターには、処理対象物を透過した上部ランプからの光(透過光)、処理対象物で反射された下部ランプからの光(反射光)及び処理対象物から放射された光(放射光)の3つの光が入射する可能性がある。
【0007】
パイロメーターに入射する3つの光のうち、放射光は、処理対象物の温度に直接関係するものであり、その変化は処理対象物の温度変化を表している。したがって、理想的には、この放射光のみを検出できればよい。また、反射光は、処理対象物の反射率に依存するものであって、処理対象物が半導体ウェハ等の場合は、一定とみなすことができる。したがって、反射光による検出温度への影響は容易に除去することができる。
【0008】
一方、透過光は、検出温度に影響を与えるが、その影響を除去することは困難である。
【0009】
例えば、処理対象物がSiウェハの場合、約600℃以上の温度領域で黒体化し、加熱ランプからの光を通さなくなる。この状態では、パイロメーターに入射する光は、反射光と放射光になるので、正確に温度を測定することができる。Siウェハの全面にメタル膜が形成されている場合も同様である。
【0010】
これに対して、約600℃以下の温度領域では、Siウェハは、加熱ランプの光を透過する。このとき、パイロメーターに入射する透過光は、Siウェハの状態、即ち、メタル膜等の有無や、その面積によって変化し、一定ではない。しかも、ランプアニール装置では、加熱を均一に行うために処理対象物を回転させているため、測定のタイミングによっても、パイロメーターに入射する透過光が変化する。
【0011】
具体例を挙げると、温度測定を所定の周期で行っている場合に、ある測定タイミングでメタル膜によって透過光がさえぎられると、Siウェハが黒体化したと判断し、閉ループ制御が開始される。それにもかかわらず、それ以後の測定タイミングで、透過光がメタル膜に遮られることなくパイロメーターに入射すると温度異常が発生したと判定されてしまう。
【0012】
以上のように、従来のパイロメーターを備えたランプアニール装置では、パイロメーターの測定可能範囲においても、開ループ制御を行わなければならず、正確な温度制御ができないという問題点がある。
【0013】
そこで、本発明は、パイロメーターを備えたランプアニール装置において、パイロメーターに処理対象物を透過した光が入射する場合であっても、精度よく温度検出を行え、もって処理対象物の温度制御を精度よく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、パイロメーターを用いて処理対象物の温度を検出し、検出した温度に基づいて温度制御を行うランプアニール装置において、前記パイロメーターを用いて前記処理対象物のランプ光に対する透過率を求める手段と、求めた透過率を記憶する手段と、前記処理対象物の温度測定を行ったときに、測定した温度を前記透過率に基づいて補正する手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、パイロメーターを用いて処理対象物の温度を検出し、検出した温度に基づいて温度制御を行うランプアニール装置の温度制御方法において、予め、前記処理対象物のランプ光に対する透過率を検出して記憶部に記憶させておき、前記パイロメーターを用いて検出した温度を前記透過率に基づいて補正することを特徴とする。
【0016】
本発明のランプアニール装置の温度制御方法は、前記透過率の検出を、前記パイロメーターを用いて行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め、パイロメーターを用いて処理対象物のランプ光に対する透過率を求め、処理対象物の温度測定を行ったときに、透過率に基づいて測定した温度を補正するようにしたことで、精度よく処理対象物の温度測定を行うことができ、それによって、処理対象物の温度制御を高い精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
図1に、本発明の一実施の形態に係るランプアニール装置10の概略構成図を示す。
【0020】
ランプアニール装置10は、Siウェハ等の処理対象物11を保持し、その中心軸を中心として処理対象物11を回転させる保持回転機構(図示せず)と、処理対象物11の上面に加熱光を照射する複数の上部ランプ12と、処理対象物11の下面に加熱光を照射する1以上の下部ランプ13と、処理対処物11の下面に向けられたパイロメーター14と、ランプアニール装置10全体を制御する制御装置15とを有している。
【0021】
制御装置15は、制御部16と記憶部17とを備える。制御部16は、上部ランプ12及び下部ランプ13を制御して、処理対象物11に加熱光を照射する。また、制御部16は、保持回転機構を制御して、処理対象物11を所定の回転速度で、あるいは所定の周期で一定角度ずつ回転させる。さらに、制御部16は、パイロメーター14からの出力に基づき、所定の演算等を行う。記憶部17は、制御部16の動作に必要なプログラムやデータを記憶する。
【0022】
次に、図1のランプアニール装置の動作について説明する。
【0023】
まず、処理対象物11が導入され、保持回転機構に保持されると、制御部16は、処理対象物11の透過率を求める。
【0024】
透過率を求めるために、制御部16は、上部ランプ12を点燈させる。このとき、処理対象物11の温度を変化させないように、例えば複数の上部ランプ12のうちの1つだけを極めて短時間点燈させる。そして、制御部16は、そのときのパイロメーター14の出力を得る。
【0025】
次に、制御部16は、得られたパイロメーター14の出力と、予め測定しておいた透過率100%のときのパイロメーター14の出力との比を求め、処理対象物11の透過率とする。なお、透過率100%のときのパイロメーターの出力は、処理対象物11が存在しない状態で、上述のように上部ランプを点燈させて得られる出力である。
【0026】
処理対象物11がSiウェハの場合、その上面には、図2に示されるように、メタル膜21が形成された領域と、それ以外の領域が存在する。したがって、透過率の測定をどの領域で行うかによってその結果が異なる。そこで、本実施例では、Siウェハに形成されているノッチ22を基準位置(角度0度)として、Siウェハを所定の角度ずつ回転させ透過率の測定を行う。例えば、所定の角度を30度とすれば、測定箇所は12箇所である。あるいは、複数のパイロメーターをSiウェハの周方向に均等に配置して、複数個所の透過率の測定を同時に行うようにしてもよい。
【0027】
制御部16は、上述のようにして得た透過率をその測定位置(回転角度)と関連付けて記憶部17に記憶させる。
【0028】
その後、制御部16は、上部及び下部ランプ12,13を制御して、処理対象物11の加熱処理を実行する。そのとき、制御部16は、正確な温度制御を実現するために、パイロメーター14の出力を、先に測定した透過率に基づいて補正する。
【0029】
即ち、制御部16は、温度測定タイミングにおいて、処理対象物11の回転角度に応じた透過率を記憶部17より読み出す。そして、パイロメーター14からの出力値から、処理対象物11がないとした場合にパイロメーター14に入射するであろう上部ランプ12からの光に相当する分に透過率を乗算した値を減算する。それから制御部16は、減算後の値を温度に換算して、処理対象物11の温度制御を行う。
【0030】
以上のようにして、本実施の形態に係るランプアニール装置では、処理対象物を透過してパイロメーターに入射する透過光の影響を除去し、精度よく温度測定を行うことができ、それによって精度の高い温度制御を行うことができる。
【0031】
以上、本発明のランプアニール装置について一実施の形態に即して説明したが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
例えば、処理対象物を所定の角度ずつ回転させて、複数のパイロメーターを用いて透過率測定を行い、得られた複数の透過率の平均を求めて、各回転位置の透過率としてもよい。このようにすることで、透過率測定時(1ランプ点燈時)と加熱時(複数ランプ点燈時)とにおける各パイロメーターへの入射光の違いの影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係るランプアニール装置の概略構成図である。
【図2】図1のランプアニール装置における透過率の測定を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ランプアニール装置
11 処理対象物
12 上部ランプ
13 下部ランプ
14 パイロメーター
15 制御装置
16 制御部
17 記憶部
21 メタル膜
22 ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロメーターを用いて処理対象物の温度を検出し、検出した温度に基づいて温度制御を行うランプアニール装置において、
前記パイロメーターを用いて前記処理対象物のランプ光に対する透過率を求める手段と、
求めた透過率を記憶する手段と、
前記処理対象物の温度測定を行ったときに、測定した温度を前記透過率に基づいて補正する手段と、
を備えることを特徴とするランプアニール装置。
【請求項2】
請求項1に記載のランプアニール装置において、
前記透過率を求める手段が、前記処理対象物を所定角度ずつ回転させ、前記処理対象物の複数個所で前記透過率を求めることを特徴とするランプアニール装置。
【請求項3】
請求項1に記載のランプアニール装置において、
前記透過率を求める手段が、前記パイロメーターを複数備え、前記処理対象物の複数個所で前記透過率を求めることを特徴とするランプアニール装置。
【請求項4】
パイロメーターを用いて処理対象物の温度を検出し、検出した温度に基づいて温度制御を行うランプアニール装置の温度制御方法において、
予め、前記処理対象物のランプ光に対する透過率を検出して記憶部に記憶させておき、前記パイロメーターを用いて検出した温度を前記透過率に基づいて補正することを特徴とするランプアニール装置の温度制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のランプアニール装置の温度制御方法において、
前記透過率の検出が、前記パイロメーターを用いて行われることを特徴とするランプアニール装置の温度制御方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載のランプアニール装置の温度制御方法において、
前記透過率の検出が、前記処理対象物の複数個所に対して行われることを特徴とするランプアニール装置の温度制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のランプアニール装置の温度制御方法において、
前記処理対象物の形状が円板状であり、その中心軸を回転の中心として所定の角度ずつ回転させながら、前記透過率の検出を行うことを特徴とするランプアニール装置の温度制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載のランプアニール装置の温度制御方法において、
前記透過率の検出が、複数のパイロメーターを用いて行われることを特徴とするランプアニール装置の温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−84898(P2008−84898A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259858(P2006−259858)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】