リグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防のための使用
本発明はリグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防用途に関わるものにして、より詳細には一般式Iで表示されるリグナン系化合物を含む炎症性疾患の治療又は予防用薬学的組成物、これを利用した炎症性疾患の治療方法及び用途に関わるものである。本発明のリグナン系化合物は炎症媒介因子であるNO、iNOS、PGE2、COX−2及びTNF−αの生成又は発現を阻害させることにより、炎症反応を抑制する効果がある。従って、本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物は炎症性疾患の治療又は予防に極めて有用に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2005年1月7日付にて出願された大韓民国特許出願番号第10−2005−0001761号を優先権として主張し、この内容はここに引用いより取込む。
【0002】
本出願はリグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防のための使用に関わるものであり、より詳細には、式Iで表示されるリグナン系化合物を含有する炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物、このリグナン系化合物を用いる炎症性疾患の治療方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症反応は、組織(細胞)の損傷や外部感染源の感染の結果生じ、局所血管と体液において種々の炎症媒介因子及び免疫細胞が関与している、酵素活性化、炎症媒介物質分泌、体液浸潤、細胞移動、組織破壊等の一連の複合的な生理的反応、および紅斑、浮腫発熱痛症等の外的症状を示す。また、ある場合には、これらの炎症反応は、急性炎症、肉芽腫(および慢性炎症(リウマチス関節炎および骨関節炎等)をもたらす(Goodwin J.S.et al.,J.Clin.ImMunol.,9:295−314,1989)。
【0004】
血液凝固と炎症に重要な影響を及ぼす酵素の中で、サイクロオキシゲナーゼ(以下「COX」と称す)は、二つの主要な産物、すなわち、プロスタグランジンおよびトロンボキサンを生成する。プロスタグランジンは、多様な生理活性を有する不飽和脂肪酸であり、ヒト体内において、炎症及疼痛伝達、血管拡張、体温調節、胃液分泌促進等の局所的ホルモン又は細胞機能調節因子として作用する(Marnett,L.J.et al.,J.Biol.Chem.,274:22903−22906,1999)。COX−1は、胃腸管保護、腎臓の血流調節及び血小板凝集のような正常な生理的応答を維持することにより、細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている。一方、外部刺激により炎症が誘発され伝達される過程において、誘導性イソ酵素であるCOX−2が一時的に発現し、炎症が生ずる個所でプロスタグランジンを過量放出する。プロスタグランジンは、炎症の主要症状である紅斑、浮腫及び疼痛を起し、内因性炎症媒介物質であるヒスタミン等の作用を増加させる活性がある。したがって炎症部位におけるプロスタグランジンの生産抑制は炎症治療に大きく役立つ。
【0005】
現在、商業的に入手できる非ステロイド抗炎症剤(NSAID)であるアスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロヘン等は、COX−2酵素の活性を抑制してプロスタグランジン生成を阻害することにより、抗炎効果を示す(Meade E.A.et al.,J.Biol.Chem.,268:6610,1993)。しかしながら、これらNSAID薬物は、炎症刺激により一時的に発現されたCOX−2の抑制に加え、胃腸管、腎臓血小板の正常機能維持に重要な役割をするCOX−1も抑制し、胃腸管出血、腎不全等の深刻な副作用を招く問題点がある(Surh Y.J.et al.,Mutation Research 480−481:243−268,2001)。従って、副作用を最小化しながら抗炎症作用を提供する天然物を見い出すことは産業上の観点から極めて重要である。
【0006】
一方、リグナン(lignan)は、n−フェニルプロパンがn−プロピール枝鎖のβ座で結合した天然化合物の群を指し、自然界に広く分布している。血糖降下作用、抗癌作用、抗喘息作用、美白作用等の、リグナンの多様な生理学的活性について研究されている。例えば、胡麻より分離されたリグナンであるセサミン、エピセサミン、セサミノール(、セサモリン及びエピセサミノールは、抗炎症効果のあることが報告されており(大韓民国公開特許公報第1997−7001043号)、辛夷(Magnoliae flos)から分離されたリグナン系化合物が抗喘息効能剤として使用できることが開示された(大韓民国登録特許第0263439号)。さらに、メイスリグナン(macelignan)はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)より発見された代表的なリグナン系化合物であり(Tuchinda P.et al.,Phytochemistry,59:169−173,2002)、アポトシスを誘導するカスパーゼ(caspase)−3の活性化(Park B.Y.et al.,Biol.Pharm.Bull.,27(8):1305−1307,2004)及び抗酸化作用(Sadhu,S.K.et al.,Chem.Pharm.Bull.,51(9):595−598,2003)等の種々の活性を有することが報告された。しかしながら、前記メイスリグナンを初め、リグナン化合物の抗炎症活性については今まで全く報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の詳細な説明)
(技術的課題)
それゆえ、本発明者らは、抗炎症活性を有する天然由来の化合物を探す、長期間の研究を行い、その結果、ミリスチカ・フラグナンス抽出物から分離され精製されたリグナン系化合物が卓越な抗炎症活性を呈することを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、リグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防のための使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(技術的解決方法)
前記の目的を達成する為に、一つの観点において、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。
【0010】
【化10】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【0011】
【化11】
である。
【0012】
さらに、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することにより、炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は炎症性疾患を予防又は治療用薬学的組成物の製造のための式Iで表示されるリグナン系化合物の使用を提供する。
【0014】
ここにおいて使用されている「有効量」は、個体に投与されたとき炎症性疾患を効果的に治療できる本発明のリグナン系化合物の量を意味する。
【0015】
さらに、ここにおいて使用されている「個体」(subject)は、哺乳動物、特にヒトを含む動物を意味する。前記個体は治療が必要な患者でもあり得る。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、ミリスチカ・フラグナンス抽出物から分離され精製されたリグナン系化合物の新規使用の提供により特徴付けられる。
【0018】
本発明によるリグナン系化合物は一般式Iで表示される。
【0019】
【化12】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、 R3は
【0020】
【化13】
である。)
本発明において、好ましいリグナン系化合物は、R1がメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【0021】
【化14】
である、化学式1のメイスリグナン[(8R,8’S)−7−(3,4−メチレンジオキイシフェニル)−7’−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−8,8’−ジメチルブタン)]であり得る。
【0022】
【化15】
【0023】
本発明によるリグナン系化合物は、塩、好ましくは薬学的に許容可能な塩の形態で使用し得る。この塩は薬学的に許容可能な遊離酸により形成された酸付加塩が好ましい。本発明において使用される遊離酸は有機酸および無機酸であり得る。これら有機酸は、これらに制限されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、蟻酸、プロピオン酸、オキサル酸、トリフルオロアセト酸、安息香酸、グルコン酸、メタスルホン酸、グリコール酸、琥珀酸、4−トルエンスルホン酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含む。さらに、これら無機酸は、これらに制限されるのではないが、塩酸、臭酸、硫酸及びリン酸を含む。
【0024】
本発明のリグナン系化合物は、物質を抽出して分離する通常の方法のいづれかにより植物又は植物の一部から収得できる。茎、根又は葉は目的とする抽出物を獲得する為に適宜脱水して柔らかくするか又は単に脱水し、当業者に知られている通常の精製方法のいずれかを用いて精製される。式Iにより表示されるリグナン系化合物に相応する合成化合物又はこれらの誘導体は、一般に購買可能な物質であり又は公知の合成方法を利用して製造し得る。
【0025】
式Iで表示される本発明のリグナン系化合物はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragnance Houtt)から分離精製できる(Jung Yun Lee et al.,Kor.J.Pharmacogn.21(4):270−273,1990;Masao Hattori et al.,Chem.Pharm.Bull.,34(9):3885−3893,1986;Masao Hattori et al.,Chem Pharm.Bull.,35(2):668−674,1987)。好ましくは、ニクズク(nutmeg)若しくは仮種皮(aril)から分離精製できる。前記ニクズクはミリスチカ・フラグナンスの成熟した果実又は果実の中にある種子をいう。さらに、本発明のリグナン系化合物はニクズクを圧搾して得たオイルから分離・精製できる。さらに、他のニクズク科(Myristicaceae)のメンバーであるミリスチカ・アルゲンチアワルブ(Myristica argentea Warb)等からも分離精製できる(Filleur,F.et al.,Natural Product Letters,16:1−7,2002)。又は、厚朴(Machilus thunbergii)(Park B.Y.et al.,Biol.Pharm. Bull.,27(8):1305−1307,2004)、レウカス・アスペラ(Leucas aspera)からでも分離精製できる(Sadhu, S.K.et al.,Chem.Pharm.Bull.,51(9):595−598,2003)。
【0026】
本発明のリグナン系化合物の分離の為の抽出溶媒としては、水又はC1−C6の有機溶媒を使用できる。抽出溶媒の好ましい例は精製水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、エテル、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等があり、これらは単独で又は混合して使用できる。より好ましくはメタノール又はヘキサンが使用され得る。ミリスチカ・フラグナンス抽出物からの本発明のリグナン系化合物の分離及び精製は、シリカゲル又は、活性化アルミナ等の各種合成樹脂を充填した、例えばカラムクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を単独で又は組み合せて使用できる。しかしながら、有効成分の抽出及び分離精製方法は、必ずしもこれらのクロマトグラフィ法に限定されるものではない。
【0027】
このように、本発明のリグナン系化合物は、純粋に分離され精製された化合物の形態で使用することができ、又は子の化合物を含む抽出物の形態で使用することができる。例えば、前述のように、ミリスチカ・フラグナンスの種子もしくは果実又は仮種皮抽出物の形態で又はミリスチカ・フラグナンスの種子を圧搾して得たオイルの形態で使用することができる。前述のように、この抽出物は、ミリスチカ・フラグナンスを水又はC1−C6の有機溶媒で抽出して得られる。好ましくはミリスチカ・フラグナンスの種子、つまりニクズクの抽出物でもあり得る。
【0028】
本発明のリグナン系化合物は、炎症反応を媒介する多様な物質等を抑制することにより抗炎症活性を有する。
【0029】
一酸化窒素(NO)は、神経伝達、血管の弛緩及び細胞媒介免疫反応に関与する物質であり、NOS(一酸化窒素合成酵素)によりL−アルギニンから生成される(Nathan and Xie,199 4;Alderton et al.,2001)。特に、大食細胞がIFN−γ又はLPS(リポポリサッカライド)により刺激されると、iNOS(誘導性一酸化窒素合成酵素)が発現され、このiNOSにより大量のNOが生成される。本発明のリグナン系化合物は、大食細胞におけるNOの生成及びNO生成に関与するiNOSの発現を濃度依存的に抑制することが示された(図8及び図9参照)。
【0030】
さらに、COX−2は体内の炎症反応に関与する物質にして、炎症性PGを生産する。COX−2は、細菌類により分泌される耐毒素であるLPSによりおよび炎症性サイトカイン類であるIL−1、TNF−α、IFN−γ等により発現が誘導される。本発明のリグナン系化合物は、COX−2の発現を抑制するのみならず、PG類の1つであるPGE2(プロスタグランジンE2)の生成もまた抑制する作用を有する(図10及び図11参照)。
【0031】
TNF−α(腫瘍壊死因子α)は、グラム陰性バクテリアおよび他の感染性微生物により引き起こされる急性炎症反応の主な媒介因子である。LPSにより刺激された大食細胞はTNF−αの合成を増加させる。生物学的作用において、TNF−αは、低濃度で白血球および内皮細胞に作用して急性炎症を誘導する。中間濃度では、TNF−αは、炎症の全身的反応を媒介し、高濃度では、敗血症ショックの病理学的異常により死亡を招く。さらに、TNF−αは、PGの合成を増加して熱を生成し、トロンボモジュリンの発現を抑制して血管閉塞を招く(Abbas and Lichtman,“Cellular and Molecular ImMunology”the fifth edition.pp.247−253,2003)。本発明のリグナン系化合物は大食細胞およびヒト単核球細胞におけるTNF−αの生成を抑制する作用を有する(図12及び図13参照)。
【0032】
本発明のリグナン系化合物を、TPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート)により処理して浮腫を誘発させたラットの耳に局所塗布した結果、濃度依存的に浮腫生成率が抑制され、現在商業的な抗炎症剤として入手可能なインドメタシンより高い浮腫抑制率を呈した(表2参照)。さらに、リグナン系化合物を含むクリームを製造後これをラットの耳に局所塗布した結果、浮腫生成率が抑制された(表4参照)。
【0033】
一方、本発明者等はミリスチカ・フラグナンス抽出物(メタノール及びヘキサン粗抽出物)を、TPA処理により浮腫を誘発させたラットの耳に局所塗布した結果、濃度依存的に浮腫生成が抑制されることを観察することができた(表5参照)。
【0034】
これらの結果は、本発明のリグナン系化合物が、COX−2のみならず、炎症反応を媒介する多様な因子を抑制して卓越な抗炎症作用を呈することを示している。さらに、ミリスチカ・フラグナンス抽出物もそれ自体同じ抗炎症効果を示し得ることをこの結果は示している。このような式Iで表示される本発明のリグナン系化合物及びミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性は本発明において初めて見い出されたものである。
【0035】
現在、商業的に入手でき得る非ステロイド抗炎症剤が大部分COX−2酵素の活性を抑制して抗炎症効果を表す事実に鑑み、本発明のリグナン系化合物は従来の抗炎症剤よりさらに優れた効果を有する抗炎症剤として使用できることを知ることができる。
【0036】
従って、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。さらに、本発明はミリスチカ・フラグナンス抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。前記ミリスチカ・フラグナンス抽出物の製造は前記の通りである。
【0037】
さらに、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与することを含む炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0038】
加えて、本発明は炎症性疾患の予防又は治療のための薬学的組成物の製造の為の、式Iで表示されるリグナン系化合物の使用を提供する。
【0039】
本発明のリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩は経口で又は非経口で投与することが可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で使用し得る。この一般的な医薬品製剤は、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、希釈剤(界面活性剤等)又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与の為の固形製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等を含み、リグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物とおよび少なくとも1つの賦形剤(例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロス又はラクトース、ゼラチン等)とを混合することにより調剤される。さらに、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアラートまたはタルクのような潤滑剤等も使用される。経口投与の為の液状製剤には懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤等が含まれる。この液体製剤は、広く使用される単純希釈剤(例えば水)、液体パラフィンおよび種々の賦形剤(例えば、湿潤剤、甘味料、芳香剤および保存剤)を含み得る。非経口投与の為の製剤の例には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、軟膏剤およびクリーム剤が含まれる。非水性溶剤および懸濁溶剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等を用いて調整することができる。
【0040】
さらに、本発明のリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩は非経口経路(皮下注射、静脈注射、筋肉内注射又は胸部内注射注入等)により投与することができる。非経口投与のために、式Iのリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物を安定剤又は緩衝剤と水中で混合して溶液又は懸濁液を調整し、これを単位投与形態をそれぞれ含むアンプル又はバイアルとして提供される。この投与単位は、例えば、個別投薬量の1、2、3又は4倍に、又は1/2、1/3又は1/4倍を含有できる。個別投薬量は好ましくは有効薬物の1回に投与される量を含み、これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する。
【0041】
本発明の式Iで表示されるリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物は、0.1−50mg/kgの、好ましくは1−10mg/kgの有効投与量において、1日1〜3回投与され得る。本発明の化合物または抽出物の用量は、特定患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度等により変化し得る。
【0042】
本発明のリグナン系化合物は、ラットへの経口投与における毒性が試験された。その結果、50%致死量(LD50)は2,000mg/kg以上であることが観察された。
【0043】
特に、リグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物を含む本発明の薬学的組成物は皮膚塗布用、すなわち軟膏およびクリームの形態で製剤化することができ、製剤物総重量に対して0.001−10.0重量%、好ましくは0.005−5.0重量%の範囲内の薬剤の形態によって適正に配合できる。この組成物が0.005重量%未満で使用される場合には、抗炎症活性が低くなり、10.0重量%を超過して添加される場合には添加量が多くなるのみで抗炎症活性において大差がない。
【0044】
本発明で「炎症性疾患」はNO、iNOS、COX−2、PGE2およびTNF−αのような一連の炎症反応を起こす多様な刺激因子により誘発される炎症に関与する疾患を言う。炎症性疾患の例には、浮腫、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性繊維症、急性気管支炎、慢性気管支炎、急性細気管支炎、慢性細気管支炎、骨関節炎、痛風、脊椎関節病症、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節症、炎症性腸疾患を伴う脊椎炎、年少者性関節症、年少者性強直性脊椎炎、反応性関節症、感染性関節炎、後−感染性関節炎、淋菌性関節炎、結核性関節炎、ウィルス性関節炎、真菌性関節炎、梅毒性関節炎、ライム病、「血管炎症候群」を伴う関節炎、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、仮性痛風、非−関節リウマチ、粘液嚢炎、乾草炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(関節血症)、ヘノッポ・シェンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、多中心性細網組織球腫、脊椎側弯症(scoliosis)、血色素症、異常血色素症、高脂蛋白血症、低減マグロブリン血症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチ性関節炎、急性肺損傷及び気管支肺形成障碍等のような一般的な炎症症状を含む(これらに制限されない。)。さらに、炎症性疾患の例は、急性、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、剥奪皮膚炎、日光皮膚炎および乾癬等炎症性皮膚疾患を含む。
【0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するのみの目的であり、本発明の範囲を制限するように解釈されるべきでないことが理解されるべきである。これらの実施例及び実験例において、特に指定されていない限り百分率は重量%を示す。活性分析は3回以上繰返し行い、その結果は平均値±標準偏差で表示した。さらに、統計分析はStudents’s t−testにより行い、p値は<0.05以下の場合に統計的に有意なものと判定した。
【実施例1】
【0046】
ミリスチカ・フラグナンスからリグナン系化合物の分離及び精製
<1−1>リグナン系化合物の分離及び精製
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に75容量%メタノール400mlを加え、溶液て常温で2日間置いた。この溶液をワットマン(Whatman)濾紙第2番に通して濾過した。この濾過段階を2回繰り返した。メタノール濾液を真空下は濃縮して凍結乾燥し、ニクズクのメタノール粗抽出物(7g)を用意した。このメタノール粗抽出物をエチルアセテート、ブタノール、水で順に分画してエチルアセテート分画物(4.2g)を得た。このエチルアセテート分画物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(Merck Kieselgel 66;70−230メッシュ)によりヘキサンとエチルアセテートを10:1(v/v)の比率で混合した溶媒を用いて溶出し、分画物III(1.0g)を得た。溶媒を真空回転蒸発器を用いて完全に除去してニクズクの粗抽出物を製造した。次いで、分画物IIIをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(Merck Kieselgel 66;70−230メッシュ)によりヘキサンとエチルアセテートを20:1(v/v)の比率で混合した溶媒を用いて溶出させ、分画物III−B(0.52g)を得た。分画物III−BをRp−18コラムクロマトグラフィー(Merck LiChroprep;25−40μm)により80%メタノールを用いて溶出させ、単一物質分画物III−B−2(0.5g)を得た。この分離工程を図1に示した。
【0047】
<1−2>構造分析
前記分離された単一物質III−B−2の構造を決定する為に、1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルをそれぞれ600MHzと150MHz(溶媒:DMSO)で測定した。その結果を図2と図3にそれぞれ示した。13C−NMRスペクトルと1H−NMRスペクトルの結果を基に1H−1Hの相関関係と1H−13Cの相関関係を測定する為に、1H−1H COSYスペクトルと1H−13C HMBCスペクトルを解析した。その結果を図4と図5にそれぞれ示した。1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、1H−13C HMBCの結果を総合的に分析して表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
<1−3>質量分析
上述の分離された単一物質の質量分析のために行われたEI/MSの結果を図6に示した。この分離された化合物は、EI/MSにおいて[M]+がm/z328で観測され、分子量328および分子式C20H24O4を有していることを示す。
【0050】
1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、1H−13C HMBC及びEI/MSの結果を、既に発表された研究報告(Woo,W.S.et al.,Phytochemistry,26:1542−1543,1987)と比較して分析した結果、分離された単一物質は下記化学式1で表示されるメイスリグナン(macelignan)であることが見い出された。
【0051】
【化16】
【実施例2】
【0052】
本発明のリグナン系化合物の細胞毒性作用の調査
<2−1>RAW264.7細胞株の培養
実施例1で得たメイスリグナンが炎症反応媒介物質の生成に及ぼす影響を調べる為に、大食細胞RAW264.7細胞を使用した。大食細胞RAW264.7細胞株(ATCC TIB−71)はAmerican Tissue Culture Collection(Rockville,MD,USA)から購入して使用した。この細胞株を、10%熱非活性化FBS(胎児ウシ血清Gibco,USA)、100U/mlペニシリンG及び100μg/mlストレプトマイシンが補充されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Gibco,USA)中で、5%CO2恒温器中37℃で培養した。
【0053】
<2−2>細胞毒性測定
本発明のメイスリグナンがRAW264.7細胞の生存率に及ぼす影響を調べる為に、ミトコンドリア脱水素酵素により紫ホルマザン生成物に変えたMTT還元を基にした分析を行った(Hayon T.et al.,Leuk.Lymphoma.44(11):1957−1962,2003)。1×106細胞/mlのRAW264.7細胞をRPMI1640培地に接種し、6時間後に、1ml当り1〜80μmまでの濃度の本発明のメイスリグナンで処理した。24時間後にMTT分析法を利用して細胞生存率を測定した。
【0054】
その結果、図7に示した通り、本発明のメイスリグナンは1−20μM濃度において、RAW264.7細胞の生存率に大きな影響を与えなかった。これら結果を基に以降の炎症実験では1−20μM濃度のメイスリグナンを使用した。
【実施例3】
【0055】
本発明のリグナン系化合物のNO抑制作用の調査
<3−1>NO生成の抑制
IFN−γ又はLPSにより刺激された大食細胞は、iNOSを高度に発現し、炎症反応の媒介物質であるNOを大量に生成する(Miyasaka and Hirata.,ImMunol.Today.,16:128−130,1995;Guzik et al.,J.Physiol.Pharmacol.,54(4):469−487,2003)。従って、本発明のメイスリグナンがLPSにより活性化されたRAW264.7細胞におけるNO生成にどのような影響を及ぼすかを調べた。
【0056】
RAW264.7細胞を、1×106細胞/mlの濃度に希釈し、次いでRPMI1640培地に接種した。5時間後、本発明のメイスリグナンを1〜20μmの各濃度で培地に添加して2時間温置した。次いで、培地をLPS(10μg/ml)で処理して24時間温置した。対照群はLPSのみで処理した。NOの生成量は細胞培養濾液を用いて、NOの反応産物であるNO2−を測定することにより定量した(Han et al.,Life Sci.,75(6):675−684,2004)。細胞培養濾液100μlおよび同一容量のGreiss試薬(0.5%スルファニリアミド(sulfanilyamide),0.05%N−(1−ナフチル)エチレンジアミン2塩酸塩/2.5%H3PO4)を96−ウェル組織培養プレート上で相互に混合して暗所で10分間反応させた。次いで、ELISAマイクロプレートリーダーを用いて試料の吸光度を550nmにて測定した。NO2−の濃度はNaNO3を用いて標準曲線を作り、これと比較してNOの生成量を測定した。全ての実験は3回繰返しそれぞれをstudent’s t−testにより定量した。
【0057】
その結果、図8に示した通り、LPS単独による処理によりNOの生成が大きく増加されたが、このNO生成は本発明のメイスリグナンの処理により濃度依存的に抑制された。特に、1μMと5μMの低い濃度においてもNO生成の優れた抑制効果を観察できた(P<0.01)。また、20μMのメイスリグナンにより処理した場合、どれにも処理されなかった群とほぼ同じ程度にNOの生成が抑制された。
【0058】
<3−2>iNOS発現の抑制
LPSで大食細胞を刺激すると、iNOSが過量発現され、多量のNOを生成する。従って、実施例<3−1>で確認された本発明のメイスリグナンのNO生成抑制とiNOSとの関係を調べる為に、メイスリグナンがiNOS発現に及ぼす影響を測定した。
【0059】
この目的のために、本発明のメイスリグナンおよびLPSにより処理されたRAW264.7細胞を溶解し、ブラッドフォード方法で蛋白質を定量した。蛋白質10μgを10%SDS−PAGE上で分離し、分離した蛋白質を転移溶液(20%メタノール、25mMTris、192mMグリシン、pH8.3)を利用してニトロセルロース膜に移した(Hall,Methods Mol.Biol.,261:167−174,2004)。このニトロセルロース膜をSDS−ポリアクリルアミドゲルと密着させ、ミニ−ゲルトランファーキッドに装着した。次に、このキットにサンプルを負荷し、100Vで1時間電気泳動させた。次いで、TBST(trisで緩衝化された生理食塩−Tween−20)溶液で1回洗滌し、前記膜を乾燥された濾紙に移して常温で乾燥させた。非特異的な反応を除去する為に、5%の非脂肪スキムミルクを含むTBST中で4℃で24時間以上十分に振りながら置いた。次いで、膜をTBST溶液で3回洗滌し、抗−iNOS抗体(1:2,000)(Calbiochem社)を注入して1時間室温で反応させた。次いで膜をTBST溶液でそれぞれの洗滌時間10分にて3回間洗滌した。洗滌された膜にHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)が取付けられた抗−ラビットIgG−HRP(1:2,000)(Calbiochem社)を注入し、1時間振盪器の上で反応させた。次いで、膜をTBST溶液で3回洗滌し、ECL(増強された化学ルミネッセンス)溶液に漬けて1分間振りながら満遍なく浸した。前記ECL溶液のは溶液A(ルミノール及び増強剤を含む)と溶液B(過酸化水素を含む)との同量を混合し、この混合液を1分間振盪することにより製造した。ECL溶液から膜を取出し水気を除去し、暗室でX線フィルムに走査した。
【0060】
その結果、図9で示した通り、本発明のメイスリグナンは大食細胞におけるiNOSの発現を濃度依存的に抑制し、5μMの濃度から顕著な抑制作用を示した(P<0.01)。
【0061】
上記結果から、本発明のメイスリグナンが炎症誘発因子であるNOの生成を抑制するのみならず、これを生成するiNOSの発現も抑制することを見出すことができた。
【実施例4】
【0062】
本発明のリグナン系化合物のCOX−2抑制作用の調査
<4−1>PEG2生成の抑制
iNOSが炎症反応と密接な関連があるのと同様に、COX−2は、炎症反応を媒介するPG類生成に必須的な酵素であり、iNOSおよびCOXの発現及び活性は相互に関連性があることが知られている(Surh et al.,Mutat.Res.,481:243−268,2001)。従って、本発明のメイスリグナンはLPSにより活性化された大食細胞においてPGE2の生成になんらかの影響を及ぼすかを調べた。
【0063】
先ず、RAW264.7細胞の1×106細胞/mlを96−ウェル組織培養プレートに接種して5時間室温に置いた。次いで、本発明のメイスリグナンをそれぞれ1〜20μMの濃度でこの細胞に添加して2時間温置した。陰性対照群は何等の処理もせず、陽性対照群はPGE2抑制活性を有すると報告されているフルクミン(curcumin)(クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)から分離された、Sigma社)にて処理した。次いで、細胞を1μg/mlLPSにて処理して18時間培養した。大食細胞におけるPGE2の生成をアッセイキット(R&D System Inc,Minneopolis,USA)によりELISA法を用いて定量した(Chen et al.,Biochem.Pharmacol.,68:1089−1100,2002)。
【0064】
その結果、図10に示した通り、LPS単独処理によりPGE2の生成は、大きく増大したが、本発明のメイスリグナンの処理により濃度依存的に抑制されることが観察された。この抑制効果は5μMででも示された。本発明のメイスリグナンのPGE2生成抑制効果は、クルクミンにて処理した場合とほぼ似ていて、実施例3において確認したNO及びiNOSの抑制効果と同じパターンを示した(P<0.05)。
【0065】
<4−2>COX−2発現抑制
本発明者等は、PGE2生成に直接的影響を有するCOX−2の発現をウェストンブロット分析を用いて調査した。1次抗体として抗−COX−2抗体(1:2,000)(Calbiochem社)を、2次抗体として抗−羊IgG−HRP(1:2,000)(Calbiochem社)を用いたことを除いて、前記実施例<3−2>に記載された方法と同じ方法で行った。
【0066】
その結果、図11に示した通り、本発明のメイスリグナンはCOX−2蛋白質の発現を濃度依存的に抑制した。特に、メイスリグナンの濃度10−20μMで有意にCOX−2蛋白質の発現量が減少した。
【0067】
上述の結果から、本発明のメイスリグナンが炎症誘発因子であるPGE2生成を抑制するのみならず、PEG2を生成するCOX−2の発現も抑制することを見出し得た。
【実施例5】
【0068】
本発明のリグナン系化合物のTNF−α抑制作用の調査
TNF−αは炎症反応に重要な作用をする炎症性サイトカインである。従って、本発明のメイスリグナンがTNF−αの生成に及ぼす影響を調査した。
【0069】
<5−1>大食細胞株におけるTNF−α生成の抑制
先ず、RAW264.7細胞の1×106細胞/mlを96−ウェル組織培養プレートに接種し、5時間常温に置いた。次いで、本発明のメイスリグナンをそれぞれ1〜20μmの濃度で細胞に添加して2時間置いた。陰性対照群には何も処理を施さず、陽性対照群にはクルクミン(Sigma社)により処理した(Araujo and Leon,Mem.Inst.Oswaldo.Cruz.,96(5):723−728,2001;Chainani−Wu,J.Altern.Complement.,9(1):161−168,2003)。次いで、細胞を1μg/mlのLPSで処理して18時間培養した。大食細胞におけるTNF−αの生成をアッセイキット(R&D System Inc,Minneopolis,USA)の方法を用いてELISA法で定量した(Chen et al.,J.Dermatol.Sci.29:97−103,2002)。
【0070】
その結果、図12に示した通り、5μMの濃度の本発明のメイスリグナン処理から開始してTNF−αの生成が有意に減少した(P<0.05)。
【0071】
<5−2>ヒト単核球細胞におけるTNF−α生成の抑制
本発明者等により、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)により活性化されたヒト単核球U937細胞におけるTNF−αの生成を実施例<5−1>と同じ方法により測定した。但し、陽性対照群はインドメタシン(Sigma社)により処理した(Walch and Morris, Endocrinology.143(9):3276−3283,2002)。
【0072】
その結果、図13に示した通り、ヒト単核球細胞におけるTNF−α生成が本発明のメイスリグナンにより濃度依存的に減少することを観察することができた(P<0.01)。
【0073】
上記の結果から、本発明のメイスリグナンが急性炎症及び炎症の全身的反応を誘導及び/又は媒介するTNF−αの生成を抑制することを知ることができた。
【実施例6】
【0074】
動物モデルにおける本発明のリグナン系化合物の抗炎症活性の調査
上述の実施例1において分離され精製されたリグナン系化合物の抗炎症活性を動物実験を通じて試験した。抗炎症活性はラットに対する浮腫抑制実験により測定した。実験動物として5週令のWistarラット(大韓バイオリンク、韓国)を使用した。これらの動物は飼料は標準ペレット形態のラット飼料(第一製糖)が供給され、飼料と水は自由給食させた。また、これら動物は12時間の光照射/12時間暗サイクル、25±2℃及び湿度60±10%の条件下で飼育された。災症誘起剤としてTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート;Sigma社)をアセトンに200μg/mlの濃度になるように溶解した。ラットの耳の浮腫はTPA溶液を局所的に耳の外面と内面にそれぞれ10μl/耳を加えて誘導した(4μg/耳)。実施例1にて精製されたメイスリグナンおよび対照物質としての非ステロイド抗炎症剤であるインドメタシンをアセトンに溶解し、20,200,2000μg/耳になるように使用した。メイスリグナンとインドメタシンはそれぞれ、TPA処理して30分後にラットの耳にそれぞれ局所塗布した。対照群はアセトンを局所塗布した。ラットの耳の厚さは各物質を処理した後、8時間後にノギスを用いて測定した。試料により処理された群の耳の厚さの増加を試料により処理されていない群のそれと比較し、浮腫抑制率を算出することにより、炎症抑制効果を測定した。その結果を表2に示した。
【0075】
【表2】
【実施例7】
【0076】
メイスリグナン含有クリームの製造及びこれの抗炎症活性の調査
<7−1>メイスリグナン含有クリームの調整
本発明のメイスリグナンを利用して表3に記載された多様な組成を有するクリームをそれぞれ製造した。先ず下記表3でBで表示された物質を75−80℃で溶解させた。また、表3でCで表示された物質の内セチルアルコールと保存料を同温度で溶解させた。Cで示された物質をBで示された物質中に乳化させた。次いで、表3でAで表示された本発明のメイスリグナンを5.0、0.5、0.05、0.005%の濃度でそれぞれ乳化物に投入して混合した。最後に、香料を入れ精製水で残部を合わせてクリームを製造した。
【0077】
【表3】
【0078】
<7−2>抗炎症活性の調査
実施例<7−1>で製造されたメイスリグナン含有クリームの抗炎症活性をラットに対する浮腫抑制実験を通じて測定した。浮腫抑制実験は実施例6と同じ方法で実施した。その結果を表4に示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表4の結果から、本発明のメイスリグナン含有クリームはクリーム内に含有されたメイスリグナンの濃度に依存的にTPAで誘発されたラットの浮腫を抑制することが分かる。
【実施例8】
【0081】
ミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性の調査
<8−1>メタノール抽出物の調製
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に95容量%メタノール400mlを加えて室温で2日間置いた。溶液をワットマン濾紙2番を用いて濾過した。この濾過を2回繰返した。メタノール濾液を真空下に濃縮して凍結乾燥し、メタノール粗抽出物(16.2g)を製造した。
【0082】
<8−2>ヘキサン抽出物製造
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に100容量%ヘキサン400mlを加えて室温で2日間置いた。この溶液をワットマン濾紙2番を用いて濾過した。濾過を2回繰返した。ヘキサン濾過液を真空下に濃縮して凍結乾燥し、ヘキサン粗抽出物(37.0g)を製造した。
【0083】
<8−3>動物モデルにおけるミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性の調査
実施例<8−1>及び<8−2>において調製されたミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性を動物モデルにおいて試験した。抗炎症活性は前記実施例6と同じ方法によりラットに対する浮腫抑制実験により測定した。その結果を表5に示した。
【0084】
【表5】
【0085】
表5に示されているように、本発明のミリスチカ・フラグナンスのメタノール粗抽出物およびヘキサン粗抽出物は全てTPAで誘発されたラット浮腫を濃度依存的に抑制することが観察できた(統計学的有意性p<0.01)。
【0086】
<調製例1>
本発明の、炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を含有する薬剤調合物の調製
<1−1>錠剤の調製
本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物の25mgを、錠剤直打用ラクトース26mgとアビセル(微結晶セルロース)3.5mg、崩解補助剤であるナトリウム澱粉グリコネート1.5mgおよび結合剤である錠剤直打用L−HPC(低ヒドロキシプロピルセルロース)8mgと共に、U型混合機に入れて20分間混合した。混合完了後滑濁剤としてマグネシウムステアレート1mgを追加して添加し、3分間混合した。定量試験と湿度含量試験に付して打錠し、膜被覆して錠剤を製造した。
【0087】
<1−2>シロップ剤の調製
本発明のメイスリグナン又はその薬学的に許容可能な塩の2%(w/v)を有効成分として含むシロップを次の方法により調製した。本発明のメイスリグナンの酸付加塩2g、サッカリン0.8g及び糖25.4gを熱水80gに溶解させた。この溶液を冷却後、これにグリセリン8.0g、香味料0.04g、エタノール4.0g、ソルビン酸0.4g及び適量の蒸留水を添加した。この混合物に水を添加して100mlにした。
【0088】
<1−3>カプセル剤の調製
本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物の50mg、乳糖50mg、澱粉50mg、タルク1mg及び適量のステアリン酸マグネシウムを混合し、これを硬質ゼラチンカプセルに充填することによりカプセル剤を調製した。
【0089】
<1−4>注射液剤の調製
有効成分10mgを含む注射液剤を次のような方法で調製した。本発明のメイスリグナンの塩酸塩1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを製造した。前記溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱滅菌した。
【0090】
<適用例1>
胃炎症性消化器疾患
胃炎症は多様な外部要因の作用と不規則な食習慣が関与するものの、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染により主に引き起こされる。ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍、胃炎だけでなく、胃癌も引き起こす。ヘリコバクター・ピロリが増殖する過程でCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)が同時に増加する(Nam N.T.etal.,Clin.Cancer Res.10(23):8105−8113,2004)。ヘリコバクターに感染すると、胃の粘膜細胞が増殖して癌細胞になるCOX−2抑制剤は胃粘膜細胞が増殖して癌細胞になるのを阻止し、正常組織が癌組織に変わるのを抑制する役割をすることが知られていた。COX−2抑制剤が投与された群は、投与されていない群に比べてアポプトシス方法により癌組織を死滅させる効果が優れていることが見出された(Nam N.T.et al.,Clin.Cancer Res.10(23):8105−8113,2004)。従って、本発明のリグナン系化合物のCOX−2抑制効果は、胃癌を早期に予防できる胃炎症治療に役立つので、十分な治療効果を有することを提示している。
【0091】
<適用例2>
関節炎
関節炎は自己免疫異常により引き起こされ、関節炎の進行の間、関節間の滑液腔に生じた慢性炎症が血管新生を誘導して軟骨が破壊される。関節炎には感染性関節炎、退行性関節炎、リウマチ性関節炎および(大腿骨頭無血管性壊死、硬直性脊椎炎および先天性奇形による)関節炎を含む。関節炎の原因を問わず、関節炎の進行の間に滑液腔に生じる慢性炎症が血管新生を誘導することが知られており、新な毛細血管が関節を侵襲して軟骨が損傷されることが特徴である(Kocb A.E.et al.,Arth.Rheum.,29:471−479,1986;Stupack D.G.et al.,J.Med.Biol.Rcs.,32:578−281,1999;Koch A.E.,Arthritis Rheum.,41:951−962,1998)。この場合、軟骨を破壊する病気の種類に依存していくつかの段階で生じる炎症反応は、この病気の進行に重要な役割をし、関節内への新生血管の形成が重要な病理メカニズムとして作用することが報告されている(Colville−Nash,P.R.et al.,Ann.Rheum.Dis.,51,919−925,1992;Eisenstein,R.,Pharmacol.Ther.,49:1−19,1991)。関節炎の治療は、原因に伴う治療よりは、疼痛を抑制し、炎症現象を抑制して、関節または筋肉の破壊速度を抑え、機能消失を最小化することを優先する。従って、本発明のリグナン系化合物又はメリスチカ・フラグランス抽出物は関節炎の進行防止と治療に極めて効果的である。
【0092】
(産業上の利用可能性)
上に述べたように、本発明のリグナン系化合物は炎症媒介因子であるNO、iNOS、PGE2、COX−2及びTNF−αの生成又は発現を阻害することにより、炎症反応を抑制する作用を有する。従って、本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物は炎症性疾患の治療又は予防に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)からリグナン系化合物を分離する工程を示す。
【図2】図2は本発明のリグナン系化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は本発明のリグナン系化合物の1H−NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は本発明のリグナン系化合物の1H−1H COSYスペクトルを示す。
【図5】図5は本発明のリグナン系化合物の1H−13C HMBCスペクトルを示す。
【図6】図6は本発明のリグナン系化合物のEI−Massスペクトルを示す。
【図7】図7は本発明のリグナン系化合物の細胞毒性作用を示す。
【図8】図8は本発明のリグナン系化合物のNO生成抑制作用を調査した結果を示す。
【図9】図9は本発明のリグナン系化合物のiNOS発現抑制作用を調査した結果を示す。A:ウェストンブロット分析結果。B:LPSにより刺激された対照群を基準にして相対的なiNOS蛋白質水準を示すグラフ。
【図10】図10は本発明のリグナン系化合物(A)及びクルクミン(B)の PGE2生成抑制作用を調査した結果を示す。
【図11】図11は本発明のリグナン系化合物のCOX−2発現抑制作用を調査した結果を示す。A:ウェストンブロット分析結果。B:LPSにより刺激された対照群を基準にして相対的なCOX−2蛋白質水準を示したグラフ。
【図12】図12は本発明のリグナン系化合物(A)及びクルクミン(B)のTNF−α生成抑制作用をLPSで刺激された大食細胞において調査した結果を示す。
【図13】図13は本発明のリグナン系化合物(A)及びインドメタシン(B)のTNF−α生成抑制作用をプロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)で刺激されたヒト単核球U937細胞において調査した結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本出願は2005年1月7日付にて出願された大韓民国特許出願番号第10−2005−0001761号を優先権として主張し、この内容はここに引用いより取込む。
【0002】
本出願はリグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防のための使用に関わるものであり、より詳細には、式Iで表示されるリグナン系化合物を含有する炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物、このリグナン系化合物を用いる炎症性疾患の治療方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症反応は、組織(細胞)の損傷や外部感染源の感染の結果生じ、局所血管と体液において種々の炎症媒介因子及び免疫細胞が関与している、酵素活性化、炎症媒介物質分泌、体液浸潤、細胞移動、組織破壊等の一連の複合的な生理的反応、および紅斑、浮腫発熱痛症等の外的症状を示す。また、ある場合には、これらの炎症反応は、急性炎症、肉芽腫(および慢性炎症(リウマチス関節炎および骨関節炎等)をもたらす(Goodwin J.S.et al.,J.Clin.ImMunol.,9:295−314,1989)。
【0004】
血液凝固と炎症に重要な影響を及ぼす酵素の中で、サイクロオキシゲナーゼ(以下「COX」と称す)は、二つの主要な産物、すなわち、プロスタグランジンおよびトロンボキサンを生成する。プロスタグランジンは、多様な生理活性を有する不飽和脂肪酸であり、ヒト体内において、炎症及疼痛伝達、血管拡張、体温調節、胃液分泌促進等の局所的ホルモン又は細胞機能調節因子として作用する(Marnett,L.J.et al.,J.Biol.Chem.,274:22903−22906,1999)。COX−1は、胃腸管保護、腎臓の血流調節及び血小板凝集のような正常な生理的応答を維持することにより、細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている。一方、外部刺激により炎症が誘発され伝達される過程において、誘導性イソ酵素であるCOX−2が一時的に発現し、炎症が生ずる個所でプロスタグランジンを過量放出する。プロスタグランジンは、炎症の主要症状である紅斑、浮腫及び疼痛を起し、内因性炎症媒介物質であるヒスタミン等の作用を増加させる活性がある。したがって炎症部位におけるプロスタグランジンの生産抑制は炎症治療に大きく役立つ。
【0005】
現在、商業的に入手できる非ステロイド抗炎症剤(NSAID)であるアスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロヘン等は、COX−2酵素の活性を抑制してプロスタグランジン生成を阻害することにより、抗炎効果を示す(Meade E.A.et al.,J.Biol.Chem.,268:6610,1993)。しかしながら、これらNSAID薬物は、炎症刺激により一時的に発現されたCOX−2の抑制に加え、胃腸管、腎臓血小板の正常機能維持に重要な役割をするCOX−1も抑制し、胃腸管出血、腎不全等の深刻な副作用を招く問題点がある(Surh Y.J.et al.,Mutation Research 480−481:243−268,2001)。従って、副作用を最小化しながら抗炎症作用を提供する天然物を見い出すことは産業上の観点から極めて重要である。
【0006】
一方、リグナン(lignan)は、n−フェニルプロパンがn−プロピール枝鎖のβ座で結合した天然化合物の群を指し、自然界に広く分布している。血糖降下作用、抗癌作用、抗喘息作用、美白作用等の、リグナンの多様な生理学的活性について研究されている。例えば、胡麻より分離されたリグナンであるセサミン、エピセサミン、セサミノール(、セサモリン及びエピセサミノールは、抗炎症効果のあることが報告されており(大韓民国公開特許公報第1997−7001043号)、辛夷(Magnoliae flos)から分離されたリグナン系化合物が抗喘息効能剤として使用できることが開示された(大韓民国登録特許第0263439号)。さらに、メイスリグナン(macelignan)はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)より発見された代表的なリグナン系化合物であり(Tuchinda P.et al.,Phytochemistry,59:169−173,2002)、アポトシスを誘導するカスパーゼ(caspase)−3の活性化(Park B.Y.et al.,Biol.Pharm.Bull.,27(8):1305−1307,2004)及び抗酸化作用(Sadhu,S.K.et al.,Chem.Pharm.Bull.,51(9):595−598,2003)等の種々の活性を有することが報告された。しかしながら、前記メイスリグナンを初め、リグナン化合物の抗炎症活性については今まで全く報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の詳細な説明)
(技術的課題)
それゆえ、本発明者らは、抗炎症活性を有する天然由来の化合物を探す、長期間の研究を行い、その結果、ミリスチカ・フラグナンス抽出物から分離され精製されたリグナン系化合物が卓越な抗炎症活性を呈することを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、リグナン系化合物の炎症性疾患の治療又は予防のための使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(技術的解決方法)
前記の目的を達成する為に、一つの観点において、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。
【0010】
【化10】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【0011】
【化11】
である。
【0012】
さらに、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩の有効量を投与することにより、炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は炎症性疾患を予防又は治療用薬学的組成物の製造のための式Iで表示されるリグナン系化合物の使用を提供する。
【0014】
ここにおいて使用されている「有効量」は、個体に投与されたとき炎症性疾患を効果的に治療できる本発明のリグナン系化合物の量を意味する。
【0015】
さらに、ここにおいて使用されている「個体」(subject)は、哺乳動物、特にヒトを含む動物を意味する。前記個体は治療が必要な患者でもあり得る。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、ミリスチカ・フラグナンス抽出物から分離され精製されたリグナン系化合物の新規使用の提供により特徴付けられる。
【0018】
本発明によるリグナン系化合物は一般式Iで表示される。
【0019】
【化12】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、 R3は
【0020】
【化13】
である。)
本発明において、好ましいリグナン系化合物は、R1がメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【0021】
【化14】
である、化学式1のメイスリグナン[(8R,8’S)−7−(3,4−メチレンジオキイシフェニル)−7’−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−8,8’−ジメチルブタン)]であり得る。
【0022】
【化15】
【0023】
本発明によるリグナン系化合物は、塩、好ましくは薬学的に許容可能な塩の形態で使用し得る。この塩は薬学的に許容可能な遊離酸により形成された酸付加塩が好ましい。本発明において使用される遊離酸は有機酸および無機酸であり得る。これら有機酸は、これらに制限されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、蟻酸、プロピオン酸、オキサル酸、トリフルオロアセト酸、安息香酸、グルコン酸、メタスルホン酸、グリコール酸、琥珀酸、4−トルエンスルホン酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含む。さらに、これら無機酸は、これらに制限されるのではないが、塩酸、臭酸、硫酸及びリン酸を含む。
【0024】
本発明のリグナン系化合物は、物質を抽出して分離する通常の方法のいづれかにより植物又は植物の一部から収得できる。茎、根又は葉は目的とする抽出物を獲得する為に適宜脱水して柔らかくするか又は単に脱水し、当業者に知られている通常の精製方法のいずれかを用いて精製される。式Iにより表示されるリグナン系化合物に相応する合成化合物又はこれらの誘導体は、一般に購買可能な物質であり又は公知の合成方法を利用して製造し得る。
【0025】
式Iで表示される本発明のリグナン系化合物はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragnance Houtt)から分離精製できる(Jung Yun Lee et al.,Kor.J.Pharmacogn.21(4):270−273,1990;Masao Hattori et al.,Chem.Pharm.Bull.,34(9):3885−3893,1986;Masao Hattori et al.,Chem Pharm.Bull.,35(2):668−674,1987)。好ましくは、ニクズク(nutmeg)若しくは仮種皮(aril)から分離精製できる。前記ニクズクはミリスチカ・フラグナンスの成熟した果実又は果実の中にある種子をいう。さらに、本発明のリグナン系化合物はニクズクを圧搾して得たオイルから分離・精製できる。さらに、他のニクズク科(Myristicaceae)のメンバーであるミリスチカ・アルゲンチアワルブ(Myristica argentea Warb)等からも分離精製できる(Filleur,F.et al.,Natural Product Letters,16:1−7,2002)。又は、厚朴(Machilus thunbergii)(Park B.Y.et al.,Biol.Pharm. Bull.,27(8):1305−1307,2004)、レウカス・アスペラ(Leucas aspera)からでも分離精製できる(Sadhu, S.K.et al.,Chem.Pharm.Bull.,51(9):595−598,2003)。
【0026】
本発明のリグナン系化合物の分離の為の抽出溶媒としては、水又はC1−C6の有機溶媒を使用できる。抽出溶媒の好ましい例は精製水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、エテル、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等があり、これらは単独で又は混合して使用できる。より好ましくはメタノール又はヘキサンが使用され得る。ミリスチカ・フラグナンス抽出物からの本発明のリグナン系化合物の分離及び精製は、シリカゲル又は、活性化アルミナ等の各種合成樹脂を充填した、例えばカラムクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を単独で又は組み合せて使用できる。しかしながら、有効成分の抽出及び分離精製方法は、必ずしもこれらのクロマトグラフィ法に限定されるものではない。
【0027】
このように、本発明のリグナン系化合物は、純粋に分離され精製された化合物の形態で使用することができ、又は子の化合物を含む抽出物の形態で使用することができる。例えば、前述のように、ミリスチカ・フラグナンスの種子もしくは果実又は仮種皮抽出物の形態で又はミリスチカ・フラグナンスの種子を圧搾して得たオイルの形態で使用することができる。前述のように、この抽出物は、ミリスチカ・フラグナンスを水又はC1−C6の有機溶媒で抽出して得られる。好ましくはミリスチカ・フラグナンスの種子、つまりニクズクの抽出物でもあり得る。
【0028】
本発明のリグナン系化合物は、炎症反応を媒介する多様な物質等を抑制することにより抗炎症活性を有する。
【0029】
一酸化窒素(NO)は、神経伝達、血管の弛緩及び細胞媒介免疫反応に関与する物質であり、NOS(一酸化窒素合成酵素)によりL−アルギニンから生成される(Nathan and Xie,199 4;Alderton et al.,2001)。特に、大食細胞がIFN−γ又はLPS(リポポリサッカライド)により刺激されると、iNOS(誘導性一酸化窒素合成酵素)が発現され、このiNOSにより大量のNOが生成される。本発明のリグナン系化合物は、大食細胞におけるNOの生成及びNO生成に関与するiNOSの発現を濃度依存的に抑制することが示された(図8及び図9参照)。
【0030】
さらに、COX−2は体内の炎症反応に関与する物質にして、炎症性PGを生産する。COX−2は、細菌類により分泌される耐毒素であるLPSによりおよび炎症性サイトカイン類であるIL−1、TNF−α、IFN−γ等により発現が誘導される。本発明のリグナン系化合物は、COX−2の発現を抑制するのみならず、PG類の1つであるPGE2(プロスタグランジンE2)の生成もまた抑制する作用を有する(図10及び図11参照)。
【0031】
TNF−α(腫瘍壊死因子α)は、グラム陰性バクテリアおよび他の感染性微生物により引き起こされる急性炎症反応の主な媒介因子である。LPSにより刺激された大食細胞はTNF−αの合成を増加させる。生物学的作用において、TNF−αは、低濃度で白血球および内皮細胞に作用して急性炎症を誘導する。中間濃度では、TNF−αは、炎症の全身的反応を媒介し、高濃度では、敗血症ショックの病理学的異常により死亡を招く。さらに、TNF−αは、PGの合成を増加して熱を生成し、トロンボモジュリンの発現を抑制して血管閉塞を招く(Abbas and Lichtman,“Cellular and Molecular ImMunology”the fifth edition.pp.247−253,2003)。本発明のリグナン系化合物は大食細胞およびヒト単核球細胞におけるTNF−αの生成を抑制する作用を有する(図12及び図13参照)。
【0032】
本発明のリグナン系化合物を、TPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート)により処理して浮腫を誘発させたラットの耳に局所塗布した結果、濃度依存的に浮腫生成率が抑制され、現在商業的な抗炎症剤として入手可能なインドメタシンより高い浮腫抑制率を呈した(表2参照)。さらに、リグナン系化合物を含むクリームを製造後これをラットの耳に局所塗布した結果、浮腫生成率が抑制された(表4参照)。
【0033】
一方、本発明者等はミリスチカ・フラグナンス抽出物(メタノール及びヘキサン粗抽出物)を、TPA処理により浮腫を誘発させたラットの耳に局所塗布した結果、濃度依存的に浮腫生成が抑制されることを観察することができた(表5参照)。
【0034】
これらの結果は、本発明のリグナン系化合物が、COX−2のみならず、炎症反応を媒介する多様な因子を抑制して卓越な抗炎症作用を呈することを示している。さらに、ミリスチカ・フラグナンス抽出物もそれ自体同じ抗炎症効果を示し得ることをこの結果は示している。このような式Iで表示される本発明のリグナン系化合物及びミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性は本発明において初めて見い出されたものである。
【0035】
現在、商業的に入手でき得る非ステロイド抗炎症剤が大部分COX−2酵素の活性を抑制して抗炎症効果を表す事実に鑑み、本発明のリグナン系化合物は従来の抗炎症剤よりさらに優れた効果を有する抗炎症剤として使用できることを知ることができる。
【0036】
従って、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。さらに、本発明はミリスチカ・フラグナンス抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を提供する。前記ミリスチカ・フラグナンス抽出物の製造は前記の通りである。
【0037】
さらに、本発明は式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与することを含む炎症性疾患を予防又は治療する方法を提供する。
【0038】
加えて、本発明は炎症性疾患の予防又は治療のための薬学的組成物の製造の為の、式Iで表示されるリグナン系化合物の使用を提供する。
【0039】
本発明のリグナン系化合物又は薬学的に許容可能な塩は経口で又は非経口で投与することが可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で使用し得る。この一般的な医薬品製剤は、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、希釈剤(界面活性剤等)又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与の為の固形製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等を含み、リグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物とおよび少なくとも1つの賦形剤(例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロス又はラクトース、ゼラチン等)とを混合することにより調剤される。さらに、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアラートまたはタルクのような潤滑剤等も使用される。経口投与の為の液状製剤には懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤等が含まれる。この液体製剤は、広く使用される単純希釈剤(例えば水)、液体パラフィンおよび種々の賦形剤(例えば、湿潤剤、甘味料、芳香剤および保存剤)を含み得る。非経口投与の為の製剤の例には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、軟膏剤およびクリーム剤が含まれる。非水性溶剤および懸濁溶剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等を用いて調整することができる。
【0040】
さらに、本発明のリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩は非経口経路(皮下注射、静脈注射、筋肉内注射又は胸部内注射注入等)により投与することができる。非経口投与のために、式Iのリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物を安定剤又は緩衝剤と水中で混合して溶液又は懸濁液を調整し、これを単位投与形態をそれぞれ含むアンプル又はバイアルとして提供される。この投与単位は、例えば、個別投薬量の1、2、3又は4倍に、又は1/2、1/3又は1/4倍を含有できる。個別投薬量は好ましくは有効薬物の1回に投与される量を含み、これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する。
【0041】
本発明の式Iで表示されるリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物は、0.1−50mg/kgの、好ましくは1−10mg/kgの有効投与量において、1日1〜3回投与され得る。本発明の化合物または抽出物の用量は、特定患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度等により変化し得る。
【0042】
本発明のリグナン系化合物は、ラットへの経口投与における毒性が試験された。その結果、50%致死量(LD50)は2,000mg/kg以上であることが観察された。
【0043】
特に、リグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物を含む本発明の薬学的組成物は皮膚塗布用、すなわち軟膏およびクリームの形態で製剤化することができ、製剤物総重量に対して0.001−10.0重量%、好ましくは0.005−5.0重量%の範囲内の薬剤の形態によって適正に配合できる。この組成物が0.005重量%未満で使用される場合には、抗炎症活性が低くなり、10.0重量%を超過して添加される場合には添加量が多くなるのみで抗炎症活性において大差がない。
【0044】
本発明で「炎症性疾患」はNO、iNOS、COX−2、PGE2およびTNF−αのような一連の炎症反応を起こす多様な刺激因子により誘発される炎症に関与する疾患を言う。炎症性疾患の例には、浮腫、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性繊維症、急性気管支炎、慢性気管支炎、急性細気管支炎、慢性細気管支炎、骨関節炎、痛風、脊椎関節病症、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節症、炎症性腸疾患を伴う脊椎炎、年少者性関節症、年少者性強直性脊椎炎、反応性関節症、感染性関節炎、後−感染性関節炎、淋菌性関節炎、結核性関節炎、ウィルス性関節炎、真菌性関節炎、梅毒性関節炎、ライム病、「血管炎症候群」を伴う関節炎、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、仮性痛風、非−関節リウマチ、粘液嚢炎、乾草炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(関節血症)、ヘノッポ・シェンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、多中心性細網組織球腫、脊椎側弯症(scoliosis)、血色素症、異常血色素症、高脂蛋白血症、低減マグロブリン血症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチ性関節炎、急性肺損傷及び気管支肺形成障碍等のような一般的な炎症症状を含む(これらに制限されない。)。さらに、炎症性疾患の例は、急性、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、剥奪皮膚炎、日光皮膚炎および乾癬等炎症性皮膚疾患を含む。
【0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示するのみの目的であり、本発明の範囲を制限するように解釈されるべきでないことが理解されるべきである。これらの実施例及び実験例において、特に指定されていない限り百分率は重量%を示す。活性分析は3回以上繰返し行い、その結果は平均値±標準偏差で表示した。さらに、統計分析はStudents’s t−testにより行い、p値は<0.05以下の場合に統計的に有意なものと判定した。
【実施例1】
【0046】
ミリスチカ・フラグナンスからリグナン系化合物の分離及び精製
<1−1>リグナン系化合物の分離及び精製
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に75容量%メタノール400mlを加え、溶液て常温で2日間置いた。この溶液をワットマン(Whatman)濾紙第2番に通して濾過した。この濾過段階を2回繰り返した。メタノール濾液を真空下は濃縮して凍結乾燥し、ニクズクのメタノール粗抽出物(7g)を用意した。このメタノール粗抽出物をエチルアセテート、ブタノール、水で順に分画してエチルアセテート分画物(4.2g)を得た。このエチルアセテート分画物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(Merck Kieselgel 66;70−230メッシュ)によりヘキサンとエチルアセテートを10:1(v/v)の比率で混合した溶媒を用いて溶出し、分画物III(1.0g)を得た。溶媒を真空回転蒸発器を用いて完全に除去してニクズクの粗抽出物を製造した。次いで、分画物IIIをシリカゲルコラムクロマトグラフィー(Merck Kieselgel 66;70−230メッシュ)によりヘキサンとエチルアセテートを20:1(v/v)の比率で混合した溶媒を用いて溶出させ、分画物III−B(0.52g)を得た。分画物III−BをRp−18コラムクロマトグラフィー(Merck LiChroprep;25−40μm)により80%メタノールを用いて溶出させ、単一物質分画物III−B−2(0.5g)を得た。この分離工程を図1に示した。
【0047】
<1−2>構造分析
前記分離された単一物質III−B−2の構造を決定する為に、1H−NMRスペクトルと13C−NMRスペクトルをそれぞれ600MHzと150MHz(溶媒:DMSO)で測定した。その結果を図2と図3にそれぞれ示した。13C−NMRスペクトルと1H−NMRスペクトルの結果を基に1H−1Hの相関関係と1H−13Cの相関関係を測定する為に、1H−1H COSYスペクトルと1H−13C HMBCスペクトルを解析した。その結果を図4と図5にそれぞれ示した。1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、1H−13C HMBCの結果を総合的に分析して表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
<1−3>質量分析
上述の分離された単一物質の質量分析のために行われたEI/MSの結果を図6に示した。この分離された化合物は、EI/MSにおいて[M]+がm/z328で観測され、分子量328および分子式C20H24O4を有していることを示す。
【0050】
1H−NMR、13C−NMR、1H−1H COSY、1H−13C HMBC及びEI/MSの結果を、既に発表された研究報告(Woo,W.S.et al.,Phytochemistry,26:1542−1543,1987)と比較して分析した結果、分離された単一物質は下記化学式1で表示されるメイスリグナン(macelignan)であることが見い出された。
【0051】
【化16】
【実施例2】
【0052】
本発明のリグナン系化合物の細胞毒性作用の調査
<2−1>RAW264.7細胞株の培養
実施例1で得たメイスリグナンが炎症反応媒介物質の生成に及ぼす影響を調べる為に、大食細胞RAW264.7細胞を使用した。大食細胞RAW264.7細胞株(ATCC TIB−71)はAmerican Tissue Culture Collection(Rockville,MD,USA)から購入して使用した。この細胞株を、10%熱非活性化FBS(胎児ウシ血清Gibco,USA)、100U/mlペニシリンG及び100μg/mlストレプトマイシンが補充されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Gibco,USA)中で、5%CO2恒温器中37℃で培養した。
【0053】
<2−2>細胞毒性測定
本発明のメイスリグナンがRAW264.7細胞の生存率に及ぼす影響を調べる為に、ミトコンドリア脱水素酵素により紫ホルマザン生成物に変えたMTT還元を基にした分析を行った(Hayon T.et al.,Leuk.Lymphoma.44(11):1957−1962,2003)。1×106細胞/mlのRAW264.7細胞をRPMI1640培地に接種し、6時間後に、1ml当り1〜80μmまでの濃度の本発明のメイスリグナンで処理した。24時間後にMTT分析法を利用して細胞生存率を測定した。
【0054】
その結果、図7に示した通り、本発明のメイスリグナンは1−20μM濃度において、RAW264.7細胞の生存率に大きな影響を与えなかった。これら結果を基に以降の炎症実験では1−20μM濃度のメイスリグナンを使用した。
【実施例3】
【0055】
本発明のリグナン系化合物のNO抑制作用の調査
<3−1>NO生成の抑制
IFN−γ又はLPSにより刺激された大食細胞は、iNOSを高度に発現し、炎症反応の媒介物質であるNOを大量に生成する(Miyasaka and Hirata.,ImMunol.Today.,16:128−130,1995;Guzik et al.,J.Physiol.Pharmacol.,54(4):469−487,2003)。従って、本発明のメイスリグナンがLPSにより活性化されたRAW264.7細胞におけるNO生成にどのような影響を及ぼすかを調べた。
【0056】
RAW264.7細胞を、1×106細胞/mlの濃度に希釈し、次いでRPMI1640培地に接種した。5時間後、本発明のメイスリグナンを1〜20μmの各濃度で培地に添加して2時間温置した。次いで、培地をLPS(10μg/ml)で処理して24時間温置した。対照群はLPSのみで処理した。NOの生成量は細胞培養濾液を用いて、NOの反応産物であるNO2−を測定することにより定量した(Han et al.,Life Sci.,75(6):675−684,2004)。細胞培養濾液100μlおよび同一容量のGreiss試薬(0.5%スルファニリアミド(sulfanilyamide),0.05%N−(1−ナフチル)エチレンジアミン2塩酸塩/2.5%H3PO4)を96−ウェル組織培養プレート上で相互に混合して暗所で10分間反応させた。次いで、ELISAマイクロプレートリーダーを用いて試料の吸光度を550nmにて測定した。NO2−の濃度はNaNO3を用いて標準曲線を作り、これと比較してNOの生成量を測定した。全ての実験は3回繰返しそれぞれをstudent’s t−testにより定量した。
【0057】
その結果、図8に示した通り、LPS単独による処理によりNOの生成が大きく増加されたが、このNO生成は本発明のメイスリグナンの処理により濃度依存的に抑制された。特に、1μMと5μMの低い濃度においてもNO生成の優れた抑制効果を観察できた(P<0.01)。また、20μMのメイスリグナンにより処理した場合、どれにも処理されなかった群とほぼ同じ程度にNOの生成が抑制された。
【0058】
<3−2>iNOS発現の抑制
LPSで大食細胞を刺激すると、iNOSが過量発現され、多量のNOを生成する。従って、実施例<3−1>で確認された本発明のメイスリグナンのNO生成抑制とiNOSとの関係を調べる為に、メイスリグナンがiNOS発現に及ぼす影響を測定した。
【0059】
この目的のために、本発明のメイスリグナンおよびLPSにより処理されたRAW264.7細胞を溶解し、ブラッドフォード方法で蛋白質を定量した。蛋白質10μgを10%SDS−PAGE上で分離し、分離した蛋白質を転移溶液(20%メタノール、25mMTris、192mMグリシン、pH8.3)を利用してニトロセルロース膜に移した(Hall,Methods Mol.Biol.,261:167−174,2004)。このニトロセルロース膜をSDS−ポリアクリルアミドゲルと密着させ、ミニ−ゲルトランファーキッドに装着した。次に、このキットにサンプルを負荷し、100Vで1時間電気泳動させた。次いで、TBST(trisで緩衝化された生理食塩−Tween−20)溶液で1回洗滌し、前記膜を乾燥された濾紙に移して常温で乾燥させた。非特異的な反応を除去する為に、5%の非脂肪スキムミルクを含むTBST中で4℃で24時間以上十分に振りながら置いた。次いで、膜をTBST溶液で3回洗滌し、抗−iNOS抗体(1:2,000)(Calbiochem社)を注入して1時間室温で反応させた。次いで膜をTBST溶液でそれぞれの洗滌時間10分にて3回間洗滌した。洗滌された膜にHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)が取付けられた抗−ラビットIgG−HRP(1:2,000)(Calbiochem社)を注入し、1時間振盪器の上で反応させた。次いで、膜をTBST溶液で3回洗滌し、ECL(増強された化学ルミネッセンス)溶液に漬けて1分間振りながら満遍なく浸した。前記ECL溶液のは溶液A(ルミノール及び増強剤を含む)と溶液B(過酸化水素を含む)との同量を混合し、この混合液を1分間振盪することにより製造した。ECL溶液から膜を取出し水気を除去し、暗室でX線フィルムに走査した。
【0060】
その結果、図9で示した通り、本発明のメイスリグナンは大食細胞におけるiNOSの発現を濃度依存的に抑制し、5μMの濃度から顕著な抑制作用を示した(P<0.01)。
【0061】
上記結果から、本発明のメイスリグナンが炎症誘発因子であるNOの生成を抑制するのみならず、これを生成するiNOSの発現も抑制することを見出すことができた。
【実施例4】
【0062】
本発明のリグナン系化合物のCOX−2抑制作用の調査
<4−1>PEG2生成の抑制
iNOSが炎症反応と密接な関連があるのと同様に、COX−2は、炎症反応を媒介するPG類生成に必須的な酵素であり、iNOSおよびCOXの発現及び活性は相互に関連性があることが知られている(Surh et al.,Mutat.Res.,481:243−268,2001)。従って、本発明のメイスリグナンはLPSにより活性化された大食細胞においてPGE2の生成になんらかの影響を及ぼすかを調べた。
【0063】
先ず、RAW264.7細胞の1×106細胞/mlを96−ウェル組織培養プレートに接種して5時間室温に置いた。次いで、本発明のメイスリグナンをそれぞれ1〜20μMの濃度でこの細胞に添加して2時間温置した。陰性対照群は何等の処理もせず、陽性対照群はPGE2抑制活性を有すると報告されているフルクミン(curcumin)(クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)から分離された、Sigma社)にて処理した。次いで、細胞を1μg/mlLPSにて処理して18時間培養した。大食細胞におけるPGE2の生成をアッセイキット(R&D System Inc,Minneopolis,USA)によりELISA法を用いて定量した(Chen et al.,Biochem.Pharmacol.,68:1089−1100,2002)。
【0064】
その結果、図10に示した通り、LPS単独処理によりPGE2の生成は、大きく増大したが、本発明のメイスリグナンの処理により濃度依存的に抑制されることが観察された。この抑制効果は5μMででも示された。本発明のメイスリグナンのPGE2生成抑制効果は、クルクミンにて処理した場合とほぼ似ていて、実施例3において確認したNO及びiNOSの抑制効果と同じパターンを示した(P<0.05)。
【0065】
<4−2>COX−2発現抑制
本発明者等は、PGE2生成に直接的影響を有するCOX−2の発現をウェストンブロット分析を用いて調査した。1次抗体として抗−COX−2抗体(1:2,000)(Calbiochem社)を、2次抗体として抗−羊IgG−HRP(1:2,000)(Calbiochem社)を用いたことを除いて、前記実施例<3−2>に記載された方法と同じ方法で行った。
【0066】
その結果、図11に示した通り、本発明のメイスリグナンはCOX−2蛋白質の発現を濃度依存的に抑制した。特に、メイスリグナンの濃度10−20μMで有意にCOX−2蛋白質の発現量が減少した。
【0067】
上述の結果から、本発明のメイスリグナンが炎症誘発因子であるPGE2生成を抑制するのみならず、PEG2を生成するCOX−2の発現も抑制することを見出し得た。
【実施例5】
【0068】
本発明のリグナン系化合物のTNF−α抑制作用の調査
TNF−αは炎症反応に重要な作用をする炎症性サイトカインである。従って、本発明のメイスリグナンがTNF−αの生成に及ぼす影響を調査した。
【0069】
<5−1>大食細胞株におけるTNF−α生成の抑制
先ず、RAW264.7細胞の1×106細胞/mlを96−ウェル組織培養プレートに接種し、5時間常温に置いた。次いで、本発明のメイスリグナンをそれぞれ1〜20μmの濃度で細胞に添加して2時間置いた。陰性対照群には何も処理を施さず、陽性対照群にはクルクミン(Sigma社)により処理した(Araujo and Leon,Mem.Inst.Oswaldo.Cruz.,96(5):723−728,2001;Chainani−Wu,J.Altern.Complement.,9(1):161−168,2003)。次いで、細胞を1μg/mlのLPSで処理して18時間培養した。大食細胞におけるTNF−αの生成をアッセイキット(R&D System Inc,Minneopolis,USA)の方法を用いてELISA法で定量した(Chen et al.,J.Dermatol.Sci.29:97−103,2002)。
【0070】
その結果、図12に示した通り、5μMの濃度の本発明のメイスリグナン処理から開始してTNF−αの生成が有意に減少した(P<0.05)。
【0071】
<5−2>ヒト単核球細胞におけるTNF−α生成の抑制
本発明者等により、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)により活性化されたヒト単核球U937細胞におけるTNF−αの生成を実施例<5−1>と同じ方法により測定した。但し、陽性対照群はインドメタシン(Sigma社)により処理した(Walch and Morris, Endocrinology.143(9):3276−3283,2002)。
【0072】
その結果、図13に示した通り、ヒト単核球細胞におけるTNF−α生成が本発明のメイスリグナンにより濃度依存的に減少することを観察することができた(P<0.01)。
【0073】
上記の結果から、本発明のメイスリグナンが急性炎症及び炎症の全身的反応を誘導及び/又は媒介するTNF−αの生成を抑制することを知ることができた。
【実施例6】
【0074】
動物モデルにおける本発明のリグナン系化合物の抗炎症活性の調査
上述の実施例1において分離され精製されたリグナン系化合物の抗炎症活性を動物実験を通じて試験した。抗炎症活性はラットに対する浮腫抑制実験により測定した。実験動物として5週令のWistarラット(大韓バイオリンク、韓国)を使用した。これらの動物は飼料は標準ペレット形態のラット飼料(第一製糖)が供給され、飼料と水は自由給食させた。また、これら動物は12時間の光照射/12時間暗サイクル、25±2℃及び湿度60±10%の条件下で飼育された。災症誘起剤としてTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセタート;Sigma社)をアセトンに200μg/mlの濃度になるように溶解した。ラットの耳の浮腫はTPA溶液を局所的に耳の外面と内面にそれぞれ10μl/耳を加えて誘導した(4μg/耳)。実施例1にて精製されたメイスリグナンおよび対照物質としての非ステロイド抗炎症剤であるインドメタシンをアセトンに溶解し、20,200,2000μg/耳になるように使用した。メイスリグナンとインドメタシンはそれぞれ、TPA処理して30分後にラットの耳にそれぞれ局所塗布した。対照群はアセトンを局所塗布した。ラットの耳の厚さは各物質を処理した後、8時間後にノギスを用いて測定した。試料により処理された群の耳の厚さの増加を試料により処理されていない群のそれと比較し、浮腫抑制率を算出することにより、炎症抑制効果を測定した。その結果を表2に示した。
【0075】
【表2】
【実施例7】
【0076】
メイスリグナン含有クリームの製造及びこれの抗炎症活性の調査
<7−1>メイスリグナン含有クリームの調整
本発明のメイスリグナンを利用して表3に記載された多様な組成を有するクリームをそれぞれ製造した。先ず下記表3でBで表示された物質を75−80℃で溶解させた。また、表3でCで表示された物質の内セチルアルコールと保存料を同温度で溶解させた。Cで示された物質をBで示された物質中に乳化させた。次いで、表3でAで表示された本発明のメイスリグナンを5.0、0.5、0.05、0.005%の濃度でそれぞれ乳化物に投入して混合した。最後に、香料を入れ精製水で残部を合わせてクリームを製造した。
【0077】
【表3】
【0078】
<7−2>抗炎症活性の調査
実施例<7−1>で製造されたメイスリグナン含有クリームの抗炎症活性をラットに対する浮腫抑制実験を通じて測定した。浮腫抑制実験は実施例6と同じ方法で実施した。その結果を表4に示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表4の結果から、本発明のメイスリグナン含有クリームはクリーム内に含有されたメイスリグナンの濃度に依存的にTPAで誘発されたラットの浮腫を抑制することが分かる。
【実施例8】
【0081】
ミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性の調査
<8−1>メタノール抽出物の調製
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に95容量%メタノール400mlを加えて室温で2日間置いた。溶液をワットマン濾紙2番を用いて濾過した。この濾過を2回繰返した。メタノール濾液を真空下に濃縮して凍結乾燥し、メタノール粗抽出物(16.2g)を製造した。
【0082】
<8−2>ヘキサン抽出物製造
乾燥粉砕したニクズク100g(乾燥重量)に100容量%ヘキサン400mlを加えて室温で2日間置いた。この溶液をワットマン濾紙2番を用いて濾過した。濾過を2回繰返した。ヘキサン濾過液を真空下に濃縮して凍結乾燥し、ヘキサン粗抽出物(37.0g)を製造した。
【0083】
<8−3>動物モデルにおけるミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性の調査
実施例<8−1>及び<8−2>において調製されたミリスチカ・フラグナンス抽出物の抗炎症活性を動物モデルにおいて試験した。抗炎症活性は前記実施例6と同じ方法によりラットに対する浮腫抑制実験により測定した。その結果を表5に示した。
【0084】
【表5】
【0085】
表5に示されているように、本発明のミリスチカ・フラグナンスのメタノール粗抽出物およびヘキサン粗抽出物は全てTPAで誘発されたラット浮腫を濃度依存的に抑制することが観察できた(統計学的有意性p<0.01)。
【0086】
<調製例1>
本発明の、炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物を含有する薬剤調合物の調製
<1−1>錠剤の調製
本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物の25mgを、錠剤直打用ラクトース26mgとアビセル(微結晶セルロース)3.5mg、崩解補助剤であるナトリウム澱粉グリコネート1.5mgおよび結合剤である錠剤直打用L−HPC(低ヒドロキシプロピルセルロース)8mgと共に、U型混合機に入れて20分間混合した。混合完了後滑濁剤としてマグネシウムステアレート1mgを追加して添加し、3分間混合した。定量試験と湿度含量試験に付して打錠し、膜被覆して錠剤を製造した。
【0087】
<1−2>シロップ剤の調製
本発明のメイスリグナン又はその薬学的に許容可能な塩の2%(w/v)を有効成分として含むシロップを次の方法により調製した。本発明のメイスリグナンの酸付加塩2g、サッカリン0.8g及び糖25.4gを熱水80gに溶解させた。この溶液を冷却後、これにグリセリン8.0g、香味料0.04g、エタノール4.0g、ソルビン酸0.4g及び適量の蒸留水を添加した。この混合物に水を添加して100mlにした。
【0088】
<1−3>カプセル剤の調製
本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物の50mg、乳糖50mg、澱粉50mg、タルク1mg及び適量のステアリン酸マグネシウムを混合し、これを硬質ゼラチンカプセルに充填することによりカプセル剤を調製した。
【0089】
<1−4>注射液剤の調製
有効成分10mgを含む注射液剤を次のような方法で調製した。本発明のメイスリグナンの塩酸塩1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを製造した。前記溶液を瓶に入れて20℃で30分間加熱滅菌した。
【0090】
<適用例1>
胃炎症性消化器疾患
胃炎症は多様な外部要因の作用と不規則な食習慣が関与するものの、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染により主に引き起こされる。ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍、胃炎だけでなく、胃癌も引き起こす。ヘリコバクター・ピロリが増殖する過程でCOX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)が同時に増加する(Nam N.T.etal.,Clin.Cancer Res.10(23):8105−8113,2004)。ヘリコバクターに感染すると、胃の粘膜細胞が増殖して癌細胞になるCOX−2抑制剤は胃粘膜細胞が増殖して癌細胞になるのを阻止し、正常組織が癌組織に変わるのを抑制する役割をすることが知られていた。COX−2抑制剤が投与された群は、投与されていない群に比べてアポプトシス方法により癌組織を死滅させる効果が優れていることが見出された(Nam N.T.et al.,Clin.Cancer Res.10(23):8105−8113,2004)。従って、本発明のリグナン系化合物のCOX−2抑制効果は、胃癌を早期に予防できる胃炎症治療に役立つので、十分な治療効果を有することを提示している。
【0091】
<適用例2>
関節炎
関節炎は自己免疫異常により引き起こされ、関節炎の進行の間、関節間の滑液腔に生じた慢性炎症が血管新生を誘導して軟骨が破壊される。関節炎には感染性関節炎、退行性関節炎、リウマチ性関節炎および(大腿骨頭無血管性壊死、硬直性脊椎炎および先天性奇形による)関節炎を含む。関節炎の原因を問わず、関節炎の進行の間に滑液腔に生じる慢性炎症が血管新生を誘導することが知られており、新な毛細血管が関節を侵襲して軟骨が損傷されることが特徴である(Kocb A.E.et al.,Arth.Rheum.,29:471−479,1986;Stupack D.G.et al.,J.Med.Biol.Rcs.,32:578−281,1999;Koch A.E.,Arthritis Rheum.,41:951−962,1998)。この場合、軟骨を破壊する病気の種類に依存していくつかの段階で生じる炎症反応は、この病気の進行に重要な役割をし、関節内への新生血管の形成が重要な病理メカニズムとして作用することが報告されている(Colville−Nash,P.R.et al.,Ann.Rheum.Dis.,51,919−925,1992;Eisenstein,R.,Pharmacol.Ther.,49:1−19,1991)。関節炎の治療は、原因に伴う治療よりは、疼痛を抑制し、炎症現象を抑制して、関節または筋肉の破壊速度を抑え、機能消失を最小化することを優先する。従って、本発明のリグナン系化合物又はメリスチカ・フラグランス抽出物は関節炎の進行防止と治療に極めて効果的である。
【0092】
(産業上の利用可能性)
上に述べたように、本発明のリグナン系化合物は炎症媒介因子であるNO、iNOS、PGE2、COX−2及びTNF−αの生成又は発現を阻害することにより、炎症反応を抑制する作用を有する。従って、本発明のリグナン系化合物又はミリスチカ・フラグナンス抽出物は炎症性疾患の治療又は予防に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1はミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)からリグナン系化合物を分離する工程を示す。
【図2】図2は本発明のリグナン系化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は本発明のリグナン系化合物の1H−NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は本発明のリグナン系化合物の1H−1H COSYスペクトルを示す。
【図5】図5は本発明のリグナン系化合物の1H−13C HMBCスペクトルを示す。
【図6】図6は本発明のリグナン系化合物のEI−Massスペクトルを示す。
【図7】図7は本発明のリグナン系化合物の細胞毒性作用を示す。
【図8】図8は本発明のリグナン系化合物のNO生成抑制作用を調査した結果を示す。
【図9】図9は本発明のリグナン系化合物のiNOS発現抑制作用を調査した結果を示す。A:ウェストンブロット分析結果。B:LPSにより刺激された対照群を基準にして相対的なiNOS蛋白質水準を示すグラフ。
【図10】図10は本発明のリグナン系化合物(A)及びクルクミン(B)の PGE2生成抑制作用を調査した結果を示す。
【図11】図11は本発明のリグナン系化合物のCOX−2発現抑制作用を調査した結果を示す。A:ウェストンブロット分析結果。B:LPSにより刺激された対照群を基準にして相対的なCOX−2蛋白質水準を示したグラフ。
【図12】図12は本発明のリグナン系化合物(A)及びクルクミン(B)のTNF−α生成抑制作用をLPSで刺激された大食細胞において調査した結果を示す。
【図13】図13は本発明のリグナン系化合物(A)及びインドメタシン(B)のTNF−α生成抑制作用をプロピオニバクテリウム・アクネス(P.acnes)で刺激されたヒト単核球U937細胞において調査した結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物。
【化1】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化2】
である。)
【請求項2】
R1がメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【化3】
である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
メリスチカ・フラグランス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記炎症性疾患が、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性繊維症、急性気管支炎、慢性気管支炎、急性細気管支炎、慢性細気管支炎、骨関節炎、痛風、脊椎関節病症、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節症、炎症性腸疾患を伴う脊椎炎、年少者性関節症、年少者性強直性脊椎炎、反応性関節症、感染性関節炎、後−感染性関節炎、淋菌性関節炎、結核性関節炎、ウィルス性関節炎、真菌性関節炎、梅毒性関節炎、ライム病、「血管炎症候群」を伴う関節炎、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、仮性痛風、非−関節リウマチ、粘液嚢炎、乾草炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(関節血症)、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、多中心性細網組織球腫、脊椎側弯症、血色素症、異常血色素症、高脂蛋白血症、低減マグロブリン血症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチ性関節炎、急性肺損傷、気管支肺形成障碍及び炎症性疾患からなる群より選ばれるいずれか一つである請求項1又は3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を、炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与して炎症性疾患を予防又は治療する方法。
【化4】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5アルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化5】
である。)
【請求項6】
R1はメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【化6】
である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物の有効量を、炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与して炎症性疾患を予防又は治療する方法。
【請求項8】
炎症性疾患の予防又は治療用薬学的組成物の製造のための、式Iで表示されるリグナン系化合物の使用。
【化7】
(R1及びR2は、それぞれ独立してC1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化8】
である。)
【請求項9】
R1はメトキシ基であり、R2はヒドロキシ基であり、R3は
【化9】
である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
炎症性疾患の予防又は治療用薬学的組成物の製造のための、ミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物の使用。
【請求項1】
式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物。
【化1】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化2】
である。)
【請求項2】
R1がメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【化3】
である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
メリスチカ・フラグランス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物を有効成分として含む炎症性疾患の治療又は予防のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記炎症性疾患が、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、膵臓炎、外傷誘発ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性繊維症、急性気管支炎、慢性気管支炎、急性細気管支炎、慢性細気管支炎、骨関節炎、痛風、脊椎関節病症、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節症、炎症性腸疾患を伴う脊椎炎、年少者性関節症、年少者性強直性脊椎炎、反応性関節症、感染性関節炎、後−感染性関節炎、淋菌性関節炎、結核性関節炎、ウィルス性関節炎、真菌性関節炎、梅毒性関節炎、ライム病、「血管炎症候群」を伴う関節炎、結節性多発動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性多発性筋肉痛、関節細胞動脈炎、カルシウム結晶沈着関節症、仮性痛風、非−関節リウマチ、粘液嚢炎、乾草炎、上顆炎(テニスエルボー)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(関節血症)、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、肥厚性骨関節症、多中心性細網組織球腫、脊椎側弯症、血色素症、異常血色素症、高脂蛋白血症、低減マグロブリン血症、家族性地中海熱、ベハト病、全身性紅斑性ループス、再帰熱、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、急性呼吸困難症候群、多発性臓器不全、慢性閉塞性肺疾患、リウマチ性関節炎、急性肺損傷、気管支肺形成障碍及び炎症性疾患からなる群より選ばれるいずれか一つである請求項1又は3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
式Iで表示されるリグナン系化合物又はその薬学的に許容可能な塩の有効量を、炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与して炎症性疾患を予防又は治療する方法。
【化4】
(R1及びR2は、それぞれ独立に、C1−5アルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化5】
である。)
【請求項6】
R1はメトキシ基であり、R2がヒドロキシ基であり、R3が
【化6】
である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物の有効量を、炎症性疾患の予防又は治療を必要とする個体に投与して炎症性疾患を予防又は治療する方法。
【請求項8】
炎症性疾患の予防又は治療用薬学的組成物の製造のための、式Iで表示されるリグナン系化合物の使用。
【化7】
(R1及びR2は、それぞれ独立してC1−5のアルコキシ又はヒドロキシ基であり、R3は
【化8】
である。)
【請求項9】
R1はメトキシ基であり、R2はヒドロキシ基であり、R3は
【化9】
である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
炎症性疾患の予防又は治療用薬学的組成物の製造のための、ミリスチカ・フラグナンス(Myristica fragrans)を水又はC1−C6の有機溶媒で抽出した抽出物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−526834(P2008−526834A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550299(P2007−550299)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000065
【国際公開番号】WO2006/073285
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507230692)ニユートウリー・インダストリー・カンパニー・リミテツド (1)
【出願人】(507230670)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000065
【国際公開番号】WO2006/073285
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507230692)ニユートウリー・インダストリー・カンパニー・リミテツド (1)
【出願人】(507230670)
【Fターム(参考)】
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