説明

リサイクル可能なポリウレタンフォーム、再生ポリオールの製造方法及び再生ポリオールを用いるポリウレタンフォームの製造方法

【課題】ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造し、再びポリウレタンフォームの製造に使用できるようにしてポリウレタンフォームのリサイクル性を向上させる。
【解決手段】ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、アミン触媒、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する遅延触媒を含むポリウレタン原料からリサイクル可能なポリウレタンフォームを製造する。また、リサイクル可能なポリウレタンフォームを、グリコール又はグリセリンの一方又は両方との存在下、100℃〜250℃の温度で加熱することにより再生ポリオールを製造し、ポリウレタンフォームの原料として再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル可能なポリウレタンフォーム、該リサイクル可能なポリウレタンフォームを用いる再生ポリオールの製造方法及び該再生ポリオールを用いるポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒等を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタンフォームは、種々の分野で用いられている。例えば、自動車や家具等のクッション等には軟質ポリウレタンフォームが使用され、また冷蔵庫等の断熱材には硬質ポリウレタンフォームが使用されている。
【0003】
近年、石油資源の枯渇の問題、廃棄物による環境汚染の問題等からポリウレタンフォームを化学的に分解して再生ポリオールを製造する方法が提案されている。
従来、再生ポリオールの製造方法として、グリコシス法、アミノリシス法、アルカリ分解法が提案されている(特許文献1、2における従来の技術欄)。
【0004】
グリコシス法は、ポリウレタンフォームをジエチレングリコールなどの低分子グリコールを用いて加熱分解し、ポリウレタンフォーム中のウレタン結合や尿素結合を低分子化する方法である。
アミノリシス法は、ポリウレタンフォームをモノエタノールアミンで分解してポリウレタンフォーム中のウレタン結合や尿素結合を切断し、低分子化する方法である。
アルカリ分解法は、グリコシス法において苛性ソーダ水溶液等を使用してポリウレタンフォーム中のウレタン結合や尿素結合を分解する方法である。
【0005】
また、硬質ポリウレタンフォームを粉末状にして炭素数2〜4のグリコール類又はアミン類を混合し、100〜250℃で加熱して液状化させた後、前記液状化物と高温高圧水とを反応させることによりポリウレタン原料を製造する方法が提案されている(特許文献3の請求項4)。
【0006】
しかし、従来の方法においては、ポリウレタンフォームを分解するために、分解触媒としてアミン又は塩基を加えており、前記アミン、塩基がその後の再生原料に混入し、再生ポリウレタンフォームの反応発泡時に、反応の不具合を生じるため、アミン又は塩基を除去する精製工程が必要であり、工程が複雑になってコストが上昇する問題がある。
【0007】
また、廃棄冷蔵庫から分離された硬質ポリウレタンフォームを、炭素数2〜4のグリコール類又はアミン類と混合し、100〜250℃で加熱して液状化した後、この液状化物と高温高圧状態の水とを190〜400℃、10〜25MPaで反応させてポリウレタン原料とし、このポリウレタン原料にアルキレンオキサイドを付加重合してポリウレタン原料ポリオールとする方法が提案されている(特許文献3の請求項7)。しかし、この方法においては、ポリオール鎖も分解するため、重合工程が必要であり、工程が複雑になってコストが上昇する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−126344号公報
【特許文献2】特開2001−106763号公報
【特許文献3】特開2003−11122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、再生ポリオールの製造時に精製工程を不要にでき、製造工程を簡略にできるリサイクル可能なポリウレタンフォーム及び再生ポリオールの製造方法、並びに再生ポリオールを使用してポリウレタンフォームを製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタンフォームにおいて、前記触媒としてアミン触媒と、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する遅延触媒とを含むことを特徴とするリサイクル可能なポリウレタンフォームに係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記遅延触媒が50℃〜250℃の温度でアミンと酸に分解するアミンの塩からなることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する方法において、請求項1又は2に記載のリサイクル可能なポリウレタンフォームを、グリコール又はグリセリンの一方又は両方の存在下、100℃〜250℃の温度で加熱して再生ポリオールとすることを特徴とする再生ポリオールの製造方法に係る。
【0013】
請求項4の発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料を混合し、発泡させるポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリウレタン原料には、請求項3に記載の再生ポリオールの製造方法により得られた再生ポリオールを含み、前記触媒としてアミン触媒と、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する遅延触媒を含むことを特徴とする再生ポリオールを用いるポリウレタンフォームの製造方法に係る。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び2の発明によれば、ポリウレタン原料中の遅延触媒は50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用するものであり、ポリウレタンフォームを発泡させる際の通常の初期発熱温度(20℃〜50℃未満)では作用せず、ウレタン反応に影響を与えることなく、そのままポリウレタンフォーム中に残存する。そのため、良好な発泡状態のポリウレタンフォームが得られる。さらに、本発明のリサイクル可能なポリウレタンフォームが製品として使用された後に再生ポリオールの製造に使用される際、リサイクル可能なポリウレタンフォーム中に含まれる遅延触媒を利用してポリウレタンフォームを分解して再生ポリオールにすることができ、ポリウレタンフォームの効率的なリサイクルが可能となる。また、遅延触媒をアミンの塩とすれば、グリコシス法によりポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する際に、リサイクル可能なポリウレタンフォームに含まれている遅延触媒(アミンの塩)がポリウレタンフォームの加熱によって分解されてアミンと酸になり、そのアミンによってポリウレタンフォーム中のウレタン結合を分解し、しかもポリオール鎖を分解することがないため、ポリウレタンフォームの分解後に重合工程が不要であり、簡略な工程で再生ポリオールを製造することができるようになる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明によって製造されたリサイクル可能なポリウレタンフォームが製品として使用された後に、リサイクル可能なポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する際、グリコール又はグリセリンの一方又は両方を用いるグリコシス法によりポリウレタンフォームを分解して低分子化し、再生ポリオールとしている。その際、ポリウレタンフォームを100℃〜250℃に加熱することによって、ポリウレタンフォーム中の遅延触媒をポリウレタンフォームの分解触媒として作用させるため、効率よくポリウレタンフォームを分解することができる。しかも、得られた再生ポリオールに含まれる遅延触媒は、その後にこの再生ポリオールを用いてポリウレタンフォームを製造する際の初期発熱温度(20℃〜50℃未満)では触媒作用を発揮せず、ウレタン反応への影響が無いことから、再生ポリオールの製造時におけるポリウレタンフォームの分解後に、遅延触媒等を除去する精製工程が不要である。さらに、前記のようにリサイクル可能なポリウレタンフォームの製造時に遅延触媒としてアミンの塩を用いた場合、リサイクル可能なポリウレタンフォームが製品として使用された後に該ポリウレタンフォームの分解によって得られた再生ポリオールは、リサイクル可能なポリウレタンフォームの製造時に使用された遅延触媒が再びアミンの塩となるため、その後に再生ポリオールを使用してポリウレタンフォームを製造する際に影響を与えることがない。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項1又は2の発明によって得られたリサイクル可能なポリウレタンフォームから請求項3の発明によって得られた再生ポリオールを用いてポリウレタンフォームを製造することができ、リサイクル性に優れる効果がある。さらに、請求項4の発明で製造したポリウレタンフォームを用いて請求項3の発明により再生ポリオールを再び製造することができ、トータルシステムとしてリサイクル性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明におけるリサイクル可能なポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたものである。
前記ポリオールとしては、ポリウレタンフォームに用いられる公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れか一つが単独で又は二以上が混合して用いられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。なお、ポリオール類としては、熱溶融後の固化の促進に優れる、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールを含むものが好ましい。クッション特性、歪特性の要求から中でも、ポリエーテルエステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用したものが好ましい。
【0019】
ポリイソシアネートとしては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のポリイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0020】
例えば、2官能のポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0021】
また、3官能以上のポリイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。なお、その他ウレタンプレポリマーも使用することができる。また、ポリイソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。イソシアネートインデックスは、95〜120が好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリウレタンの分野で使用される指数であって、原料中の活性水素基(例えばポリオール類の水酸基及び発泡剤としての水等の活性水素基等に含まれる活性水素基)に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値である。
【0022】
発泡剤としては水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。発泡剤が水の場合、添加量は目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましい。発泡剤の量が0.1重量部未満では発泡が不十分になり、発泡剤の量が5重量部を超えると、発泡過剰となって発泡体の硬さ、強度等が低下する。
【0023】
触媒としては、アミン触媒と遅延触媒が用いられる。アミン触媒としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものが使用でき、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等を挙げることができる。なお、ポリウレタンフォームに多用されている金属触媒は、ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する際、さらには再生ポリオールを用いてポリウレタンフォームを再発泡する際に影響を与えるおそれがあるため本発明では触媒として用いないのが好ましい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜2.0重量部が好ましい。アミン触媒の量が0.1重量部未満の場合、反応が不十分になってポリウレタンフォームの機械的物性が低下するようになる。一方、触媒の量が2.0重量部を超えると、反応の進行が急激になって、ウレタン反応と泡化反応のバランスが崩れ、良好なポリウレタンフォームを得られなくなるおそれがある。
【0024】
遅延触媒は、感温性触媒とも称され、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用するもの、すなわちポリウレタンフォームの分解触媒としての触媒開始温度が50℃〜250℃のもの、好ましくは50℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜80℃のものであり、ポリウレタンフォームの通常における製造時の初期発熱温度(20℃〜50℃未満)ではウレタン反応に影響を与えず、一方、ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する際の温度(100℃〜250℃)ではポリウレタンフォームの分解触媒として作用する。なお、触媒開始温度は、触媒として作用を開始する温度であり、触媒開始温度以上の温度で触媒として作用する。遅延触媒としては、50℃〜250℃、好ましくは50℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜80℃の触媒開始温度(この場合分解温度とも称される)でアミンと酸に分解するアミンの塩がより好ましい。アミンの塩の分解により生じるアミンは、ポリウレタンフォーム中のウレタン結合を化学的に分解して液状化し、しかもその際にポリオール鎖を分解することがない。
【0025】
遅延触媒として好適なアミンの塩としては、アミンのフェノール塩、ギ酸塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩等の誘導体のような環状アミン化合物の有機酸塩等を挙げることができる。これらのうち、感温性触媒として触媒活性の高いジアザビシクロアルケンのフェノール塩、オクチル酸塩等の塩が好ましい。
また、アミンとしては、ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン系アミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のモルホリン系アミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7(略称DBU)、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−ノネン−5(略称DBN)、1,8−ジアザビシクロ−[5,3,0]−デセン−7(略称DBD)、1,4−ジアザビシクロ−[3,3,0]オクテン−4(略称DBO)等のDBU同属体と称されるアミン等を挙げることができる。なお、本発明に好適な遅延触媒として市販されているものとして、例えば、ジアザビシクロノネン(アミン)とオクチル酸との塩からなる1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−オクチル酸塩(品番:U−CAT 1102、サンアプロ(株)製、触媒開始温度70−80℃)、ジアザビシクロウンデセン(アミン)とフェノールとの塩からなる1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−フェノール塩(品番:U−CAT SA1、サンアプロ(株)製、触媒開始温度70−80℃)、3級アミン塩(品番:TOYOCAT−NCT、東ソー(株)製、触媒開始温度50−70℃)、3級アミン塩、(品番:TOYOCAT−DB−70、東ソー(株)製、触媒開始温度50−70℃)、3級アミン塩、(品番:TOYOCAT−DB−30、東ソー(株)製、触媒開始温度50−70℃)などを挙げることができる。触媒開始温度(分解温度)は、DSC(10℃/min、測定範囲30℃〜)により確認した。遅延触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。0.1重量部よりも少ないと分解が進行しにくくなり、10重量部よりも多いとポリオールまで分解が進んでしまう。
【0026】
前記ポリウレタン原料には、メインポリオール以外に架橋剤として、水酸基価900〜1500mgKOH/g(好ましくは1000〜1400mgKOH/g)のポリオールを含むことが好ましい。前記範囲の水酸基価を有する架橋剤を含むことにより、後記の再生ポリオールを用いてポリウレタンフォームを製造する際、前記架橋剤を再生ポリオールに代替するだけで、その他の処方を前記リサイクル可能なポリウレタンフォームの場合から変更することなくポリウレタンフォームを製造することが可能になり、再生ポリオールを用いて製造したポリウレタンフォームを、再生ポリオールの製造に用いたリサイクル可能なポリウレタンフォームと同様の物性とすることができ、再び同様の用途に適したものにすることができ、トータル的なリサイクル性に優れる。
【0027】
前記ポリウレタン原料を用いるリサイクル可能なポリウレタンフォームの製造は、公知のポリウレタンフォームの製造方法によって行われる。具体的には、前記ポリウレタン原料を所定温度(20℃〜30℃)で混合攪拌することによりポリオールとポリイソシアネートを反応させて発泡させることによりポリウレタンフォームを製造する。その際、前記遅延触媒は分解することなく存在し、製造されたポリウレタンフォーム中に残存する。また、前記リサイクル可能なポリウレタンフォームの発泡は、モールド発泡あるいはスラブ発泡の何れでもよい。モールド発泡は、ポリウレタン原料をモールド(成形型)内に充填してモールドの内面形状に発泡させる方法である。一方、スラブ発泡は、ポリウレタン原料を公知のポリウレタン発泡成形装置で混合して、コンベア上の紙又はフィルム上に吐出し、あるいはコンベア以外の上方が開放された空間に吐出して、大気圧下、常温で発泡硬化させることにより行われる。スラブ発泡の場合、発泡後に裁断等で所定寸法、形状とされる。
【0028】
本発明における再生ポリオールの製造方法は、前記リサイクル可能なポリウレタンフォームを、グリコール又はグリセリンの一方又は両方との存在下、100℃〜250℃の温度で加熱して再生ポリオールを製造するものである。
【0029】
本発明において使用する前記リサイクル可能なポリウレタンフォームには、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する前記遅延触媒が含まれている。前記リサイクル可能なポリウレタンフォームは、分解が容易なように粉砕して使用するのが好ましい。
【0030】
グリセリン又はグリコールは、ポリウレタンフォームを分解して低分子化するものであり、何れか一方又は両者が使用される。グリコールとしては、炭素数2〜4の低分子グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。グリセリンとグリコールの何れか一方又は両方の使用量は、ポリウレタンフォーム100重量部に対して100〜300重量部が好ましい。
【0031】
再生ポリオールの製造時における加熱温度は、100℃よりも低い場合、ポリウレタンフォームの分解が遅くなって効率が悪く、一方250℃よりも高い場合には、ポリオールが分解する。また加熱時間は、1〜10時間が好ましい。さらに、撹拌しながら加熱するのが好ましい。本発明によって、900〜1500mgKOH/g(特に1000〜1400mgKOH/g)の水酸基価を有する再生ポリオールが得られる。
【0032】
本発明における再生ポリオールを用いるポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒、再生ポリオールを含むポリウレタン原料を混合し、発泡させることによりポリウレタンフォームを製造するものである。
【0033】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤は、前記リサイクル可能なポリウレタンフォームで説明したものと同様である。また、触媒についても、前記リサイクル可能なポリウレタンフォームで説明したものと同様であり、アミン触媒と遅延触媒の両方が用いられる。アミン触媒の量と遅延触媒の量についても、前記リサイクル可能なポリウレタンフォームで説明した量と同様である。
【0034】
再生ポリオールは、前記再生ポリオールの製造方法によって得られたものである。再生ポリオールの量は、ポリオール100重量部に対して2〜10重量部が好ましい。2重量部よりも少ないと十分な強度が得られない、10重量部よりも多いと架橋密度が高くなってポリウレタンフォームがガスを含むようになる。
【0035】
前記再生ポリオールを含むポリウレタン原料を用いるポリウレタンフォームの製造は、公知のポリウレタンフォームの製造方法によって行われる。具体的には、前記再生ポリオールを含むポリウレタン原料を所定温度(20℃〜30℃)で混合攪拌することによりポリオールとポリイソシアネートを反応させて発泡させる。その際、前記遅延触媒は分解することなく存在し、製造されたポリウレタンフォーム中に残存する。また、ポリウレタンフォームの発泡は、モールド発泡あるいはスラブ発泡の何れでもよい。
【実施例】
【0036】
以下にリサイクル可能なポリウレタンフォームを製造する例、リサイクル可能なポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する例、さらには得られた再生ポリオールを用いてポリウレタンフォームを製造する例について示す。
【0037】
(実施例1)
1A.リサイクル可能なポリウレタンフォームの製造
ポリオールとしてポリエーテルポリオール、品番:PML7001、旭硝子ウレタン(株)製、水酸基価28mgKOH/g、分子量6000を80重量部、発泡剤として水を0.5重量部、アミン触媒として33LV、中京油脂(株)製を1重量部、遅延触媒として、ジアザビシクロノネン(アミン)とオクチル酸との塩からなる1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−オクチル酸塩、品番:U−CAT 1102、サンアプロ(株)製、触媒開始温度70−80℃を1重量部、架橋剤として、品番:1,4−BD、三菱化学(株)製、水酸基価1247mgKOH/gを5重量部配合し、これにポリイソシアネートとしてMDI、品番:MR200、BASF(株)製を44.1重量部(イソシアネートインデックス105)を配合し、25℃で混合撹拌して発泡させることによりリサイクル可能なポリウレタンフォームを製造した。得られたリサイクル可能なポリウレタンフォームは、密度150kg/m、アスカーC硬度25であり、制振・防振材用あるいは遮音用として使用可能なものである。
【0038】
1B.再生ポリオールの製造
1Aで製造したリサイクル可能なポリウレタンフォームを5〜30mmに粉砕し、その粉砕物8gとグリセリン16g(ポリウレタンフォーム100重量部に対して200重量部)を容器に投入し、撹拌しながら200℃で5時間加熱し、19.5gの液体を得た。この液体は、KOH滴定により測定した結果、水酸基価1191mgKOH/gのポリオール(再生ポリオール)であった。また、再生ポリオールの粘度は粘度5000mPa・s(25℃)であった。再生ポリオールの収率は、[19.5÷(8+16)]×100=81%である。
【0039】
1C.再生ポリオールを用いたポリウレタンフォームの製造
ポリオールとしてポリエーテルポリオール、品番:PML7001、旭硝子ウレタン(株)製、水酸基価28mgKOH/g、分子量6000を80重量部、発泡剤として水を0.5重量部、アミン触媒として33LV、中京油脂(株)製を1重量部、前記1Aで使用した遅延触媒を1重量部、前記1Bで製造した再生ポリオール(水酸基価1191mgKOH/g)を5重量部配合し、これにポリイソシアネートとしてMDI、品番:MR200、BASF(株)製を44重量部配合し、液温25℃で混合攪拌して発泡させることによりポリウレタンフォームを製造した。得られたポリウレタンフォームは、密度150kg/m、アスカーC硬度25であり、防振・制振材用あるいは遮音材用として使用可能なものであった。
【0040】
(実施例2)
2A.リサイクル可能なポリウレタンフォームの製造
実施例1の1Aと同様にしてリサイクル可能なポリウレタンフォームを製造した。
【0041】
2B.再生ポリオールの製造
前記2Aで製造したリサイクル可能なポリウレタンフォームを5〜30mmに粉砕し、その粉砕物8gとエチレングリコール16g(ポリウレタンフォーム100重量部に対して200重量部)を容器に投入し、撹拌しながら200℃で5時間加熱し、19.5gの液体を得た。この液体は、KOH滴定により測定した結果、水酸基価1191mgKOH/gのポリオール(再生ポリオール)であった。また、再生ポリオールの粘度は粘度5000mPa・s(25℃)であった。再生ポリオールの収率は、[19.5÷(8+16)]×100=81%である。
【0042】
2C.再生ポリオールを用いたポリウレタンフォームの製造
ポリオールとしてポリエーテルポリオール、品番:PML7001、旭硝子ウレタン(株)製、水酸基価28mgKOH/g、分子量6000を80重量部、発泡剤として水を0.5重量部、アミン触媒として33LV、中京油脂(株)製を1重量部、前記1Aで使用した遅延触媒を1重量部、前記2Bで製造した再生ポリオール(水酸基価1191mgKOH/g)を5重量部配合し、これにポリイソシアネートとしてMDI、品番:MR200、BASF(株)製を44重量部配合し、液温25℃で混合攪拌して発泡させることによりポリウレタンフォームを製造した。得られたポリウレタンフォームは、密度150kg/m、アスカーC硬度25であり、防振・制振材用あるいは遮音材用として使用可能なものであった。
【0043】
(実施例3)
3A.リサイクル可能なポリウレタンフォームの製造
実施例1の1Aと同様にしてリサイクル可能なポリウレタンフォームを製造した。
【0044】
3B.再生ポリオールの製造
前記3Aで製造したリサイクル可能なポリウレタンフォームを5〜30mmに粉砕し、その粉砕物8gとグリセリン8g(ポリウレタンフォーム100重量部に対して100重量部)とエチレングリコール8g(ポリウレタンフォーム100重量部に対して100重量部)を容器に投入し、撹拌しながら200℃で5時間加熱し、19.5gの液体を得た。この液体は、KOH滴定により測定した結果、水酸基価1191mgKOH/gのポリオール(再生ポリオール)であった。また、再生ポリオールの粘度は粘度5000mPa・s(25℃)であった。再生ポリオールの収率は、[19.5÷(8+16)]×100=81%である。
【0045】
3C.再生ポリオールを用いたポリウレタンフォームの製造
ポリオールとしてポリエーテルポリオール、品番:PML7001、旭硝子ウレタン(株)製、水酸基価28mgKOH/g、分子量6000を80重量部、発泡剤として水を0.5重量部、アミン触媒として33LV、中京油脂(株)製を1重量部、前記1Aで使用した遅延触媒を1重量部、前記2Bで製造した再生ポリオール(水酸基価1191mgKOH/g)を5重量部配合し、これにポリイソシアネートとしてMDI、品番:MR200、BASF製を44重量部配合し、液温25℃で混合攪拌して発泡させることによりポリウレタンフォームを製造した。得られたポリウレタンフォームは、密度150kg/m、アスカーC硬度25であり、防振・制振材用あるいは遮音材用として使用可能なものであった。
【0046】
このように本発明によれば、製品として使用されたポリウレタンフォームを再生ポリオールとし、さらにその再生ポリオールを用いて再びポリウレタンフォームを製造することができるため、リサイクル性に優れる効果がある。しかも、本発明の再生ポリオールの製造方法によれば、ポリウレタンフォームの分解後に精製工程が不要であり、再生ポリオールを簡略な工程で容易に得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されたポリウレタンフォームにおいて、
前記触媒としてアミン触媒と、50℃〜250℃の温度でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する遅延触媒とを含むことを特徴とするリサイクル可能なポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記遅延触媒が50℃〜250℃の温度でアミンと酸に分解するアミンの塩からなることを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能なポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する方法において、請求項1又は2に記載のリサイクル可能なポリウレタンフォームを、グリコール又はグリセリンの一方又は両方の存在下、100℃〜250℃の温度で加熱して再生ポリオールとすることを特徴とする再生ポリオールの製造方法。
【請求項4】
ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料を混合し、発泡させるポリウレタンフォームの製造方法において、
前記ポリウレタン原料には、請求項3に記載の再生ポリオールの製造方法により得られた再生ポリオールを含み、
前記触媒としてアミン触媒と、50℃〜250℃でポリウレタンフォームの分解触媒として作用する遅延触媒とを含むことを特徴とする再生ポリオールを用いるポリウレタンフォームの製造方法。


【公開番号】特開2011−246569(P2011−246569A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120100(P2010−120100)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】