説明

リザーブタンクを有する流路構造及びこれを使用した液冷システム

【課題】軽量かつ簡単な構成で、空気トラップ機能が優れたリザーブタンクを有する流路構造及びこれを使用した液冷システムを提供すること。
【解決手段】対向する対をなす流路板20U、20Lの間に、液体循環流路20を形成し、この対をなす流路板20L、20Uのうち使用状態で下方に位置する流路板20Lに、液体循環流路20に連通して下方に突出する流出用ノズル40を一体に形成し、流路板20Lの下方に、流出用ノズル40を囲む液体タンク30を設け、流路板20Lに、液体タンク30と液体循環流路20を連通させる、流出用ノズル40とは液体タンク30を介して連通する液体流入穴50を形成したリザーブタンクを有する流路構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーブタンクを有する流路構造及びこれを使用した液冷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノートPC等の携帯機器では、薄型化・軽量化が求められる一方で、高性能・多機能化が進み、デバイスの省電力化の進展がある中でも発熱量の増加がとまらない状況である。かかる熱対策として、空冷より冷却能力に優れた液冷システムの検討が進んでいる。液冷システムは、圧電ポンプの吐出ポートと吸入ポートの間を冷却液循環流路で接続し、この流路に、発熱源(例えば、ノートパソコンのCPU、GPU、チップセット等)から熱を奪う受熱部と、受熱して温度上昇した冷却液の熱を放熱する放熱部を設けた構成となっている。
【0003】
液冷システムには、冷却液循環流路にリザーブタンクが設けられており、このリザーブタンクの機能は2つに大別される。第1には、温度上昇により液体が蒸発しても循環流路内に必要量の冷却液を確保するという、まさしくリザーブタンクとしての機能である。第2には、液体の蒸発や輸送時などに上下が逆になる等が原因で液体中に混ざった空気をリザーブタンク内の一部空間でトラップするという、空気トラップとしての機能である。空気の熱伝導率は液体のそれと比べて低く、液体中に空気が混ざると冷却性能が低下してしまうので、液体中の空気をトラップする必要がある。
【特許文献1】特開平5−129673号公報
【特許文献2】特開2005−167224号公報
【特許文献3】特開2007−258241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のリザーブタンクは、冷却液循環流路とは別部材として捉えて設計されているので、重量が大きくなり構成も複雑だった。また、空気トラップ機能(第2の機能)はリザーブタンク本来の機能(第1の機能)に付随するものであって、優れた空気トラップ機能を併せ持つリザーブタンクの開発という観点からは改良の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、軽量かつ簡単な構成で、空気トラップ機能が優れたリザーブタンクを有する流路構造及びこれを使用した液冷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平面流路(冷却液循環流路)を形成する流路板が平面状であることに着眼し、この流路板に平面流路に連通して下方に突出する流出用ノズルを形成し、この流出用ノズルを囲むように液体タンクを流路板に接合した上で、流路板に流出用ノズルとは独立して液体流入穴を設けてリザーブタンクとしたものである。
【0007】
即ち、本発明のリザーブタンクを有する流路構造は、対向する対をなす流路板の間に、液体循環流路を形成し、この対をなす流路板のうち使用状態で下方に位置する流路板に、上記液体循環流路に連通して下方に突出する流出用ノズルを一体に形成し、上記下方に位置する流路板の下方に、上記流出用ノズルを囲む液体タンクを設け、上記下方に位置する流路板に、上記液体タンクと液体循環流路を連通させる、上記流出用ノズルとは液体タンクを介して連通するの液体流入穴を形成したことを特徴とする。
【0008】
上記対をなす流路板を金属板とし、該金属板の少なくとも一方をブレージングシートとすることができる。また、上記液体タンクを金属板の絞り加工で形成し、上記下方に位置する流路板に接合することができる。
【0009】
上記液体タンクは略円筒状にしてもよいし、略直方体状にしてもよい。この場合、上記流出用ノズルを略円筒状又は直方体状の液体タンクの底部の中央に向かって突出させることが好ましい。
【0010】
上記リザーブタンクを有する流路構造は液冷システムに使用でき、このような液冷システムはPC、映像機器、撮像機器又は発光機器等に搭載することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平面流路(液体循環流路)の底面をなす流路板に、平面流路に連通して下方に突出する流出用ノズルを形成し、この流出ノズルを囲んで液体タンクを流路板に接合し、流路板に液体流入穴を形成しただけの構成になっているので、平面流路の底面をなす1枚の流路板と液体タンクをなす1枚の金属板のみから軽量かつ簡単な構成のリザーブタンクを実現することができる。また、これら流出ノズルと液体流入穴はそれぞれ液体タンクを介して(独立して)平面流路に連通しているので、液体タンクの内部が平面流路を接続する空気トラップ流路として機能し、空気トラップ機能を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係るリザーブタンクを有する流路構造を使用した液冷システム1を示す系統接続平面図である。図2は、図1のI−I線に沿う断面図である。このような液冷システム1は、PC、映像機器、撮像機器又は発光機器等に搭載することができる。
【0014】
図1において、液冷システム1は、圧電ポンプ10の吐出ポート11と吸入ポート12の間を液体循環流路(以下単に「循環流路」という)20で接続し、この循環流路20に、受熱部であるチップセット21、GPU(Graphic Processing unit)22及びCPU(Central Processing Unit)23と、放熱部であるラジエータ24及びファン25と、液体タンク30とが設けられている。
【0015】
圧電ポンプ10は、ロアハウジングと、アッパハウジングと、これらの間に液密に挟着支持された圧電振動子を有しており(いずれも図示せず)、圧電振動子とロアハウジングの間にポンプ室が、圧電振動子とアッパハウジングの間に大気室がそれぞれ形成されている。圧電ポンプ10の吐出ポート11には、ポンプ室から吐出ポート11への流体流を許してその逆の流体流を許さない逆止弁が設けられ、圧電ポンプ10の吸入ポート12には、吸入ポート12からポンプ室への流体流を許してその逆の流体流を許さない逆止弁が設けられている。圧電ポンプ10は、圧電振動子が正逆に弾性変形(振動)すると、ポンプ室の容積が縮小する工程ではポンプ室から吐出ポート11に冷却液が流出し、ポンプ室の容積が拡大する工程では吸入ポート12からポンプ室に冷却液が流入する。従って、圧電振動子を正逆に連続振動させることで圧電ポンプ10のポンプ作用が得られ、循環流路20に冷却液を循環させることができる。
【0016】
循環流路20は、対向する対をなす流路板20U、20Lの間に形成されている。具体的には、一方の流路板20Lに、循環流路20を構成する流路凹部20aが形成されており、この流路板20Lと他方の流路板20Uを積層して溶着することにより、流路板20U、20Lの間に循環流路20が形成される。流路板20U、20Lは金属板とすることができ、その少なくとも一方をブレージングシートとすることができる。ブレージングシートは、金属材料(例えば、アルミニウム合金)からなるシート芯材の少なくとも表裏の片面にロウ材を付着形成したもので、プレス加工により流路板20Lに流路凹部20aを形成可能であり、一対の流路板20U、20Lを当接させて加圧下で加熱することにより、ロウ材が溶融して互いに接着される。
【0017】
対をなす流路板20U、20Lのうち使用状態で下方に位置する流路板20Lには、循環流路20に連通して下方に突出する流出用ノズル40が一体形成されている。流出用ノズル40は、流路板20Lの打ち抜きと絞り加工により形成される。
【0018】
流路板20Lの下方には、流路板20Lから突出形成された流出用ノズル40を囲むように、液体タンク30が設けられている。液体タンク30は金属板の絞り加工で形成され、底部31、円筒壁部32及びつば部33からなる略円筒状を有し、つば部33が流路板20Lにロウ付けや溶接で固定されることにより流路板20U、20Lと一体形成されている(図2、図3参照)。流出用ノズル40は、液体タンク30と非接触であり、液体タンク30の底部31の中央付近にまで延びている。尚、液体タンク30の形状は図示したような円筒状に限られず、直方体状とすることもできる。
【0019】
流路板20Lには、打ち抜き加工で形成され、液体タンク30と循環流路20を連通させる液体流入穴50が形成されている。この液体流入穴50は、流出用ノズル40とは液体タンク30を介して連通するように(循環流路20内においては流出用ノズル40と非連通で)形成されている。即ち、液体流入穴50と流出用ノズル40は、流路板20Lにおいて平面的に異なる位置に形成されており、循環流路20と液体タンク30の内部をそれぞれ独立したルートで接続している(図2及び図4参照)。液体流入穴50は、流出用ノズル40と液体タンクを介して連通するように(独立して)形成する限り、流路板20Lのうち液体タンク30の底部31と円筒壁部32に囲まれた領域内の任意の位置に形成することができる。
【0020】
本実施の形態では、循環流路20と、液体タンク30と、流出用ノズル40と、液体流入穴50が全体として、循環流路内に必要量の冷却液を確保し、冷却液に混入した空気をトラップするリザーブタンクとして機能する。
【0021】
上述のように構成された液冷システム1に冷却液が循環する場合、圧電ポンプ10の圧電振動子を連続振動させることによりポンプ作用が得られ、圧電ポンプ10のポンプ室から吐出ポート11、更に循環流路20に冷却液が流れ出す。この冷却液は循環流路20を流れながら受熱部であるチップセット21、GPU22及びCPU23から熱を奪ってラジエータ24に至り、冷却ファン25から冷却風を受けて冷却され、液体タンク30に向かう。なお、チップセット21、GPU22及びCPU23の順番や、これら熱源の個数は本発明においては特に限定されない。
【0022】
循環流路20から流れてきた冷却液は液体流入穴50を通って液体タンク30の内部に入り、液体タンク30の内部で冷却液中の空気がトラップされ、空気トラップ後の冷却液は流出用ノズル40で吸い込まれることにより液体タンク30から出て再び循環流路20を流れていく。
【0023】
具体的には、図5に示すように、空気が混入した冷却液が液体タンク30の内部に入ると、冷却液中に気泡状態で含まれる空気が浮き上がってタンク内上方にトラップされる一方、空気が除去された冷却水がタンク内下方に沈み込み、流出用ノズル40から循環流路20に流出する(冷却液中の空気の分離除去)。
【0024】
ここで、液体流入穴50と流出用ノズル40は互いに液体タンク30を介して連通するように(液体タンク30に対して独立して)形成されているので、冷却液が流れるルート(循環流路20から液体流入穴50を通って液体タンク30、液体タンク30から流出用ノズル40を通って再び循環流路20)は不変である。換言すれば、液体流入穴50と流出用ノズル40の間に設けられた液体タンク30の内部が、循環流路20の一部をなす空気トラップ流路として機能し、冷却液は必ずこの空気トラップ流路を経由するのである。従って、液体タンク30の内部における冷却液の空気トラップ能力を飛躍的に向上させることができる。
【0025】
構成的にも、循環流路20の底面をなす平面状の流路板20Lに絞り加工を入れて流出用ノズル40を下方に突出させ、この流出用ノズルを囲むように液体タンク30を流路板20Lに接合したという簡単なもの(いわば、リザーブタンクと平面流路の一体化)であり、液体流入穴50も流路板20Lに打ち抜き加工を入れるだけで容易に形成できるので、リザーブタンクを有する流路構造としては極めて軽量かつ簡単な構成である。
【0026】
また、循環流路20を形成する流路板20U、20Lを金属板とし、これらの少なくとも一方をブレージングシートとしたので、循環流路20の構造の薄肉化及び軽量化を図ることができる。
【0027】
また、液体タンク30を金属板の絞り加工で形成し、流路板20Lに接合したので、1枚の金属板から簡単に液体タンク30を作成でき、平面状の流路板20Lから突出形成した流出用ノズル40と相まって、リザーブタンクを有する流路構造の簡単化及び軽量化が図られている。
【0028】
また、液体タンク30を略円筒状又は略直方体状としたので、リザーブタンクとしての形状安定性が増し、冷却液の循環を円滑にすることができる。
【0029】
また、流出用ノズル40を液体タンク30の底部31の中央に向かって突出させたので、液体タンク30の内部に導かれた冷却液を高効率で循環流路20に戻すことができ、タンク内上方に空気トラップ領域を広く確保できる結果、空気トラップ機能を向上させることができる。
【0030】
尚、上記実施の形態では、循環流路20を2枚の流路板20L、20Uの間に形成した場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。3枚以上の流路板を積層し、その間に循環流路を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリザーブタンクを有する流路構造を適用した液例システムを示す系統接続平面図
【図2】図1のI−I線に沿う断面図
【図3】液体タンクを流路板に取り付けた状態を示す斜視図
【図4】液体タンク内における循環流路と流出ノズルと液体流入穴の関係を示す要部断面斜視図
【図5】図1の液冷システムに冷却液を循環させた場合の空気トラップ動作を示す図
【符号の説明】
【0032】
1 液冷システム
10 圧電ポンプ
20 液体循環流路
20U、20L 流路板
20a 流路凹部
30 液体タンク
40 流出用ノズル
50 液体流入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する対をなす流路板の間に、液体循環流路を形成し、
この対をなす流路板のうち使用状態で下方に位置する流路板に、上記液体循環流路に連通して下方に突出する流出用ノズルを一体に形成し、
上記下方に位置する流路板の下方に、上記流出用ノズルを囲む液体タンクを設け、
上記下方に位置する流路板に、上記液体タンクと液体循環流路を連通させる、上記流出用ノズルとは上記液体タンクを介して連通する液体流入穴を形成したことを特徴とするリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項2】
請求項1記載のリザーブタンクを有する流路構造において、
上記対をなす流路板は金属板からなり、該金属板は少なくとも一方がブレージングシートであるリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項3】
請求項1記載のリザーブタンクを有する流路構造において、
上記液体タンクは金属板の絞り加工で形成され、上記下方に位置する流路板に接合されているリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項4】
請求項1記載のリザーブタンクを有する流路構造において、
上記液体タンクは略円筒状であるリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項5】
請求項1記載のリザーブタンクを有する流路構造において、
上記液体タンクは略直方体状であるリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項6】
請求項4または5記載のリザーブタンクを有する流路構造において、
上記流出用ノズルは上記液体タンクの底部の中央に向かって突出するリザーブタンクを有する流路構造。
【請求項7】
請求項1ないし6記載のリザーブタンクを有する流路構造を使用した液冷システム。
【請求項8】
請求項7記載の液冷システムを搭載したPC、映像機器、撮像機器又は発光機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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