説明

リジン系ポリマーリンカー

本発明は、分岐鎖部分を含有するポリマーリンカーを提供する。また、ポリマーリンカーの調製方法、およびポリマーリンカーを使用して複合体を調製する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2006年9月15日に出願された米国仮特許出願第60/844,945号明細書、2006年11月27日に出願された同第60/861-349号明細書および2007年4月13日に出願された同第60/911,734号明細書の優先権の利益を主張し、それらの各内容は、参照することにより本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、薬物送達システムに関する。特に、本発明は、特定の生物活性部分の充填および送達を向上させる、複数の末端アミン基を提供する分岐鎖部分を含有するポリマー系の薬物送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
長年にわたり、治療薬を身体に送達し、また、それらの薬剤のバイオアベイラビリティを改善するための多数の方法が提唱されている。それらの試みの1つは、可溶性の輸送システムの一部に、これらの薬剤を含むことである。このような輸送システムには、恒久的な(permanent)複合体系のシステムまたはプロドラッグが含まれうる。特に、ポリマー輸送システムは、薬剤の溶解度および安定性を改善することができる。例えば、タンパク質およびポリペプチドのような治療成分(therapeutic moiety)を有する水溶性ポリアルキレンオキシドの複合体が知られている。特許文献1(その内容は、参照することにより本明細書に援用される)を参照のこと。特許文献1は、PEGで改変された生理学的に活性なポリペプチドがインビボで長期間循環し、また、低減した免疫原性および抗原性を有することを開示している。
【0004】
さらなる改善も実現されている。例えば、ベンジル基脱離システム、トリアルキルロックシステムなどを含有するポリマー系の薬物送達プラットホームシステムが、タンパク質、ペプチドおよび小分子を遊離可能に送達する手段として、エンゾン・ファーマシューティカルズ社によって、開示された。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3も参照されたい。上記文献の各内容は、参照することにより本明細書に援用される。
【0005】
小分子およびオリゴヌクレオチドなどの治療薬をポリアルキレンオキシドに結合させるためには、まず、ポリマーのヒドロキシル末端基を、反応性官能基に変換しなければならない。この工程は、多くの場合、「活性化」と称され、また、生成物は「活性化されたポリアルキレンオキシド」と呼ばれる。他のポリマーも同様に活性化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,179,337号明細書
【非特許文献1】グリーンウォルド(Greenwald)らJ.Med.Chem.第42巻、18号、3657−3667
【非特許文献2】グリーンウォルド(Greenwald)らJ.Med.Chem.第47巻、3号、726−734
【非特許文献3】グリーンウォルド(Greenwald)らJ.Med.Chem.第43巻、3号、475−487
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした試みおよび進展にもかかわらず、治療薬がより高度に充填されたポリマーのような、PEGおよびポリマーの複合体には、技術のさらなる改善が求められている。本発明は、このような必要性などに取り組むものである。
【0008】
上記の問題を克服し、薬物送達の技術を向上させることを目的として、新規の分岐鎖ポリマーおよびそれによって作製される複合体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様では、式(I):
【化1】

【0010】
の化合物が提供され、
[式中:
1は、実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
Aは、キャッピング基または:
【化2】

【0011】
であり;
1-3およびL'1-3は、独立して選択される二官能性リンカーであり;
1およびY'1は、独立してO、S、またはNR20であり;
2-7、R'2-6、およびR20は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択され;
9-10およびR'9-10は、独立して、水素、OH、脱離基、官能基、標的基、診断薬および生物活性部分の中から選択され;
(a)および(a')は、独立して0もしくは正の整数であり;
(b)および(b')は、独立して正の整数であり;
(c)、(c')、(d)、(d')、(e)および(e')は、独立して0もしくは1である]。
【0012】
本発明のある好適な態様では、ポリマー薬物送達システムは、リジンを含む。
【0013】
いくつかの好適な態様では、本発明の分岐鎖部分に結合する官能基の少なくとも1つは、標的部分に連結される。
【0014】
いくつかの好適な態様では、本発明の分岐鎖部分に結合する官能基の少なくとも1つは、生物活性部分に連結される。
【0015】
いくつかの特に好適な態様では、R1は、約5,000〜約60,000の分子量を有する直鎖または分岐鎖ポリ(エチレングリコール)残基を含み、Y1およびY'1はOであり、Y2-3およびY'2-3はNHであり、(a)および(a')は0もしくは1であり、(b)および(b')は、約2〜約4であり、(c)、(c')、(d)、および(d')は0であり、(e)および(e')は1である。1つの特定の態様では、R2-7、R'2-6およびR20は、水素、メチルおよびエチルの中から選択され、それぞれ、水素であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の別の態様では、本明細書に記載の化合物を調製する方法、および本明細書に記載の化合物を使用する治療方法が提供される。
【0017】
本明細書に記載のポリマー輸送システムを含有する分岐鎖部分の1つの利点は、技術者が薬剤の充填を増加できることである。本明細書に記載のポリマーシステムのさらなる利点は、第2の薬剤を結合可能なことである。分岐鎖部分を複数置換することにより、当業者は、治療の相乗効果を有するための第2の薬物、または選択的に標的化された送達のための標的基を結合させることができる。本明細書に記載のポリマー送達システムは、薬剤を治療部位に標的化することを可能にする。
【0018】
本明細書に記載の分岐鎖部分をベースにしたポリマー輸送システムの別の利点は、ポリマー送達システムの安定性が改善されることである。いずれの理論にもとらわれるものではないが、ポリマーと、官能基、生物活性部分および標的基のような部分との間の共有結合を取り囲む疎水性の微小環境は、共有結合を改変可能な塩基性の水性媒体または酵素に共有結合が曝露されることを阻害し、それによって、共有結合を安定化する。ポリマーシステムの安定性はまた、標的基または生物活性部分への結合前の長期間の貯蔵を可能にする。
【0019】
本発明の目的では、用語「生物活性部分」および「生物活性部分の残基」は、生物活性化合物が、輸送担体部分が結合される置換反応を経た後にも保持される、生物活性化合物の部分を意味するものと理解されるべきである。
【0020】
他に定義しない限り、本発明の目的では:
用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖、置換、例えばハロ−、アルコキシ−、およびニトロ−C1-12アルキル類、C3-8シクロアルキル類または置換シクロアルキル類などを含むものと解されるべきであり;
用語「置換された」は、官能基または化合物に付加するか、またはそれらに含有される1つ以上の原子を1つ以上の異なる原子で置換することを含むものと理解されるべきであり;
用語「置換アルキル類」は、カルボキシアルキル類、アミノアルキル類、ジアルキルアミノ類、ヒドロキシアルキル類およびメルカプトアルキル類を含み;
用語「置換シクロアルキル類」は、4−クロロシクロヘキシルのような部分を含み;アリール類は、ナフチルのような部分を含み;置換アリール類は、3−ブロモフェニルのような部分を含み;アラルキル類は、トリルのような部分を含み;ヘテロアルキル類は、エチルチオフェンのような部分を含み;
用語「置換へテロアルキル類」は、3−メトキシ−チオフェンのような部分を含み;アルコキシは、メトキシのような部分を含み;フェノキシは、3−ニトロフェノキシのような部分を含み;
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むものと解されるべきであり;
本発明の目的では、用語「十分量」および「有効量」は、効果が当業者によって理解されるような、治療効果を達成する量を意味するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1〜2に記載の合成の方法を図式的に示す。
【図2】実施例3〜8に記載の合成の方法を図式的に示す。
【図3】実施例9〜14に記載の合成の方法を図式的に示す。
【図4】実施例15〜17に記載の合成の方法を図式的に示す。
【図5】実施例18〜21に記載の合成の方法を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.概観
本発明の1つの態様では、式(I)の化合物:
【化3】

【0023】
が提供される
[式中:
1は、実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
Aは、キャッピング基または
【化4】

【0024】
であり;
1-3およびL'1-3は、独立して選択される二官能性リンカーであり;
1およびY'1は、独立してO、S、またはNR20であり;
2-3およびY'2-3は、独立してO、S、SO、SO2またはNR7であり;
2-7、R'2-6、およびR20は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択され;
9-10およびR'9-10は、独立して、水素、OH、脱離基、官能基、標的基、診断薬および生物活性部分の中から選択され;
(a)および(a')は、0もしくは正の整数、好ましくは、0もしくは1〜3の整数、およびより好ましくは、0であり;
(b)および(b')は、独立して、正の整数、好ましくは、約1〜約10、より好ましくは、約2〜約6、および最も好ましくは、4であり;
(c)、(c')、(d)、(d')、(e)および(e')は、独立して0もしくは1である]。
【0025】
本発明のその態様内では、置換が考えられる置換基(ここでは、R2-7、R'2-6、およびR20に対応する部分が置換可能であることを示す)として、例えば、アシル、アミノ、アミド、アミジン、アラアルキル、アリール、アジド、アルキルメルカプト、アリールメルカプト、カルボニル、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、イミノ、ニトロ、チオカルボニル、チオエステル、チオアセテート、チオホルメート、アルコキシ、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、シリル、スルフヒドリル、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、およびスルホニルを挙げることができる。
【0026】
本発明の別の態様では、生物学的部分として、−NH2含有部分、−OH含有部分および−SH含有部分が挙げられる。
【0027】
なお別の態様として、Aは、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシおよびC1-6アルキル類の中から選択することができる。他のいくつかの好適な実施形態では、Aは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、H、およびOHであり得る。Aは、より好ましくは、メチルまたはメトキシである。
【0028】
1つの好適な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、式(II):
【化5】

【0029】
で表される。
【0030】
より好適な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、例えば、
【化6】

【0031】
であり得る。
【0032】
より好適な実施形態では、本明細書に記載の化合物は、例えば、
【化7】

【0033】
[式中、Aは、キャッピング基または
【化8】

【0034】
であり;
他のすべての変数は、先に定義したとおりである]
であり得る。
【0035】
いくつかの好適な実施形態では、R2-7、R'2-6、およびR20は、独立して、水素またはCH3である。いくつかの特に好適な実施形態では、R2-8、R'2-8、およびR20は、すべて水素またはCH3である。他の特定の実施形態では、R3-6およびR'3-6として、水素およびCH3が挙げられる。なお他の特定の実施形態では、Y1として、OおよびNR20が挙げられ、R2-8、R'2-8、およびR4として、水素、C1-6アルキル類、シクロアルキル類、アリール類、およびアラルキル基類が挙げられる。
【0036】
B.実質的に非抗原性の水溶性ポリマー
本明細書に記載の化合物において用いられるポリマーは、好ましくは、水溶性ポリマーであり、ポリアルキレンオキシド(PAO)のように実質的に非抗原性である。
【0037】
本発明の1つの態様では、本明細書に記載の化合物は、直鎖、末端分岐鎖またはマルチアームポリアルキレンオキシドを含む。本発明のいくつかの好適な実施形態では、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。
【0038】
ポリアルキレンオキシドは、約2,000〜約100,000、好ましくは、約5,000〜約60,000の平均分子量を有する。ポリアルキレンオキシドの平均分子量は、より好ましくは、約5,000〜約25,000、あるいは、約20,000〜約45,000であり得る。いくつかの特に好適な実施形態では、本明細書に記載の化合物として、約12,000〜約20,000または約30,000〜約45,000の平均分子量を有するポリアルキレンオキシドが挙げられる。1つの特定の実施形態では、ポリマー部分は、約12,000または40,000の分子量を有する。
【0039】
ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。より好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。PEGは、一般的に、構造:
−O−(CH2CH2O)n
[式中、(n)は、ポリマーの重合度を表し、ポリマーの分子量に依存する]によって表される。あるいは、本発明のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、構造:
−Y71−(CH2CH2O)n−CH2CH2−Y71−、
−Y71−(CH2CH2O)n−CH2C(=Y72)−Y71−、
−Y71−C(=Y72)−(CH2a71−Y73−(CH2CH2O)−CH2CH2−Y73−(CH2a71−C(=Y72)−Y71−、および
−Y71−(CR7172a72−Y73−(CH2b71−O−(CH2CH2O)n−(CH2b71−Y73−(CR7172a72−Y71−、
の中から選択することができ:
[式中:
71およびY73は、独立してO、S、SO、SO2、NR73または結合であり;
72は、O、S、またはNR74であり;
71-74は、独立して、R2に用いられるのと同一の部分であり;
(a71)、(a72)、および(b71)は、独立して0もしくは正の整数、好ましくは、0〜6、およびより好ましくは、1であり;
(n)は、約10〜約2300の整数である]。
【0040】
分岐鎖またはU−PEG誘導体については、米国特許第5,643,575号明細書、同第5,919,455号明細書、同第6,113,906号明細書および同第6,566,506号明細書に説明されており、それらのそれぞれの開示内容は、参照することにより本明細書に援用される。これらの化合物の非限定的なリストは、以下の構造:
【化9−1】

【化9−2】

【0041】
[式中:
61−62は、独立してO、SまたはNR61であり;
63は、O、NR62、S、SOまたはSO2であり
(w62)、(w63)および(w64)は、独立して0もしくは正の整数であり;
(w61)は、0もしくは1であり;
mPEGは、メトキシPEGであって、
ここで、PEGは先に定義したとおりであり、ポリマー部分の総分子量は、約2,000〜約100,000であり;
61およびR62は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択される。
【0042】
さらに別の態様では、ポリマーは、参照することによりその開示内容が本明細書に援用される、日油株式会社(NOF Corp.)の薬物送達システムカタログ第8版(2006年4月)に記載される、マルチアームPEG−OH、または「スター型PEG」製品を含む。ポリマーは、米国特許第5,122,614号明細書または同第5,808,096号明細書に記載の活性化技術を使用して、適切に活性化された形態に変換することができる。具体的には、そのようなPEGは、式の化合物:
【化10】

【0043】
[式中:
(u')は、約4〜約455の整数であり;残基の3個までの末端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャップ化される]であり得る。
【0044】
いくつかの好適な実施形態では、4つすべてのPEGアームを、芳香族基への結合を可能にするための適切な活性化基に変換することができる。変換前のそのような化合物としては:
【化11−1】

【化11−2】

【0045】
が挙げられる。
【0046】
本明細書に含まれるポリマー物質は、好ましくは、室温で水溶性である。そのようなポリマーの非限定的なリストには、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール類、ポリオキシエチレン化ポリオール類のようなポリアルキレンオキシドホモポリマー、それらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマーが含まれるが、但し、ブロックコポリマーの水溶性が維持されることを条件とする。
【0047】
さらなる実施形態およびPAO系のポリマーの代替物としては、デキストラン、ポリビニルアルコール類、炭水化物系ポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシド類、および/または、それらのコポリマーなど、1つ以上の効果的な非抗原性の材料を使用することができる。また、本発明と同一の譲受人に譲渡された米国特許第6,153,655号明細書(その内容は、参照することにより本明細書に援用される)を参照のこと。当業者であれば、同じタイプの活性化が、PEGなどのPAOについても本明細書に記載のように用いられることを理解するであろう。当業者であれば、上記のリストが単なる例示であること、および本明細書に記載の性質を有するすべてのポリマー材料が考慮されることをさらに理解するであろう。本発明の目的では、「実質的にまたは効果的に非抗原性の」は、非毒性であり、かつ哺乳動物における免疫原性応答の誘発が認められないことが当該分野において理解されているすべての材料を意味する。
【0048】
いくつかの態様では、末端アミン基を有するポリマーを用いて、本明細書に記載の化合物を作製することができる。末端アミン類を含有するポリマーを高い純度で調製する方法については、米国特許出願第11/508,507号明細書および同第11/537,172号明細書(それらのそれぞれの内容は、本明細書において援用される)に記載されている。例えば、アジド類を有するポリマーは、トリフェニルホスフィンのようなホスフィン系の還元剤またはNaBH4のようなアルカリ金属ボロハイドライド還元剤と反応する。あるいは、脱離基を含むポリマーは、メチル−tert−ブチルイミドジカーボネートのカリウム塩(KNMeBoc)またはジ−tert−ブチルイミドジカーボネートのカリウム塩(KNBoc2)のような保護されたアミン塩と反応し、続いて、保護されたアミン基を脱保護する。これらのプロセスによって形成される末端アミン類を含有するポリマーの純度は、約95%より大きく、および好ましくは、99%より大きい。
【0049】
別の態様では、末端カルボン酸基を有するポリマーは、本明細書に記載のポリマー送達システムにおいて用いることができる。末端カルボン酸類を有するポリマーを高純度で調製する方法については、米国特許出願第11/328,662号明細書(その内容は、参照することにより本明細書に援用される)に記載されている。該方法は、第1に、ポリアルキレンオキシドの第三級アルキルエステルを調製すること、続いて、そのカルボン酸誘導体への変換を含む。プロセスのPAOカルボン酸類の調製の第1の工程は、ポリアルキレンオキシドカルボン酸のt−ブチルエステルのような中間体を形成することを含む。この中間体は、カリウムt−ブトキシドのような塩基の存在下で、PAOをハロ酢酸t−ブチルと反応させることによって形成される。一旦、t−ブチルエステル中間体が形成されると、ポリアルキレンオキシドのカルボン酸誘導体は、92%を超える、好ましくは、97%を超える、より好ましくは、99%を超える、および最も好ましくは、99.5%純度を超える純度で容易に提供することができる。
【0050】
C.二官能性リンカー
二官能性リンカーとして、アミノ酸またはアミノ酸誘導体が挙げられる。アミノ酸は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸のものであり得る。天然に存在するアミノ酸の誘導体および類似体、ならびに当該分野において公知のさまざまな天然に存在しないアミノ酸(DもしくはL)、疎水性または非疎水性のものもまた、本発明の範囲内にあると考えられる。天然に存在しないアミノ酸の適切な非限定的なリストには、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノ−プロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−アミノ酪酸、デスモシン、2,2−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチル−イソロイシン、6−N−メチル−リジン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、およびオルニチンが挙げられる。いくつかの好適なアミノ酸残基は、グリシン、アラニン、メチオニンまたはサルコシンから選択され、より好ましくはグリシンである。
【0051】
あるいは、L1-3およびL'1-3は、
【化12−1】

【化12−2】

【0052】
の中から独立して選択することができる
[式中:
21-29は、水素、C1-6アルキル類、C3-12分岐鎖アルキル類、C3-8シクロアルキル類、C1-6置換アルキル類、C3-8置換シクロアルキル類、アリール類、置換アリール類、アラルキル類、C1-6ヘテロアルキル類、置換C1-6ヘテロアルキル類、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの中から選択され;
(t)および(t')は、独立して0もしくは正の整数、好ましくは、0もしくは約1〜約12の整数、より好ましくは、約1〜約8の整数、および最も好ましくは、1もしくは2であり;
(v)および(v')は、独立して0もしくは1である]。
【0053】
いくつかの好適な実施形態では、L1-3およびL'1-3は:
【化13】

【0054】
−Val−Cit−、
−Gly−Phe−Leu−Gly−、
−Ala−Leu−Ala−Leu−、
−Phe−Lys−、
【化14】

【0055】
の中から独立して選択することができる
[式中、
11-19は、独立してO、SまたはNR48であり;
31-48、R50-51およびA51は、水素、C1-6アルキル類、C3-12分岐鎖アルキル類、C3-8シクロアルキル類、C1-6置換アルキル類、C3-8置換シクロアルキル類、アリール類、置換アリール類、アラルキル類、C1-6ヘテロアルキル類、置換C1-6ヘテロアルキル類、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの中から選択され;
Arは、アリールまたはヘテロアリール部分であり;
11-15は、独立して選択される二官能性スペーサーであり;
JおよびJ'は、独立して標的細胞に能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびそれらの組合せの中から選択され;
(c11)、(h11)、(k11)、(z11)、(m11)および(n11)は、独立して選択される正の整数、好ましくは、1であり;
(a11)、(e11)、(g11)、(j11)、(o11)および(q11)は、独立して0もしくは正の整数、好ましくは、1であり;
(b11)、(x11)、(x'11)、(f11)、(i11)および(p11)は、独立して0もしくは1である]。
【0056】
いくつかのより好適な実施形態では、L1-3およびL'1-3は:
【化15−1】

【化15−2】

【0057】
の中から独立して選択される
[式中、(r)および(r')は、独立して0もしくは1である]。
【0058】
さらなる実施形態および代替物として、L1-3およびL'1-3は、上記で示したものに対応するが、しかし、マレイミジルの代わりに、ビニル、スルホン、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼートなどの残基を有する構造を含む。
【0059】
D.R9-10およびR'9-10
1.脱離基および官能基
いくつかの態様では、適切な脱離基として、当業者に明らかであるようなハロゲン(Br、Cl)、活性化されたカーボネート、カルボニルイミダゾール、環状イミドチオン、イソシアネート、N−ヒドロキシスクイシンイミジル、p−ニトロフェノキシ、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、トシレート、メシレート、トレシレート(tresylate)、ノシレート(nosylate)、C1−C6アルキルオキシ、C1−C6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、o−ニトロフェノキシ、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、ペンタフルオロフェノキシ、1,3,5−トリクロロフェノキシ、および1,3,5−トリフルオロフェノキシまたは他の適切な脱離基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の目的では、脱離基は、所望の標的、即ち、生物活性部分、診断薬、標的部分、二官能性スペーサー、中間体などに見出される求核部分と反応することが可能な基として理解されるべきである。それ故、標的は、タンパク質、ペプチド、酵素、ドキソルビシンのような天然または化学的に合成された治療用分子、およびモノ−保護ジアミン類のようなスペーサー上に見出されるOH、NH2またはSH基のような置換基を含有する。
【0061】
いくつかの好適な実施形態では、ポリマー輸送システムを生物活性部分に連結するための官能基として、生物学的に活性な基にさらに結合可能なマレイミジル、ビニル、スルホン、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼートなどの残基が挙げられる。
【0062】
本発明のさらにいくつかの好適な実施形態では、R9-10およびR'9-10は、H、OH、メトキシ、tert−ブトキシ、N−ヒドロキシスクシンイミジルおよびマレイミジルの中から選択することができる。
【0063】
2.生物活性部分
本発明のいくつかの態様では、生物活性部分として、アミン−、ヒドロキシル−、またはチオール−含有化合物が挙げられる。そのような適切な化合物の非限定的なリストには、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチド、抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体またはオリゴヌクレオチドなどが含まれる。有機化合物として、カンプトテシンならびにSN38およびイリノテカンのような類似体、ならびに関連するトポイソメラーゼI阻害剤、タキサン系薬剤およびパクリタキセル誘導体、AZTを含むヌクレオシド類、ダウノルビシン、ドキソルビシンを含むアントラサイクリン化合物;p−アミノアニリンマスタード、メルファラン、Ara−C(シトシンアラビノシド)および関連する抗代謝化合物、例えば、ゲムシタビンなどのような部分が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、生物活性部分として、循環器系薬剤、抗新生物薬、抗感染薬、ナイスタチンおよびアムホテリシンBのような抗真菌薬、抗不安剤、胃腸薬、中枢神経系作用剤、鎮痛薬、妊娠促進剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿酸薬(anti-uricemic)、血管拡張剤、および血管収縮剤などを挙げることができる。特に言及しないが適切なアミン−、ヒドロキシル−またはチオール−含有基を有する他の生物学的に活性な材料もまた意図され、本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0064】
本発明の別の態様では、生物活性化合物は、例えば、ヒトを含む哺乳動物など、治療が所望される病状にある、動物の治療における医学または診断用途に適している。
【0065】
本発明に含まれるのに適切な生物活性部分の種類について唯一の限定条件は、担体部分に反応し、連結することができる利用可能な少なくとも1つのアミン−、ヒドロキシル−、またはチオール−含有部分が存在すること、および本明細書に記載のポリマー送達システムに連結された形態で実質的な生物活性の消失が認められないことである。あるいは、本発明のポリマー輸送複合体化合物への組み込みに適切な親化合物は、連結した化合物からの加水分解による遊離後に活性であってもよく、または加水分解による遊離後は活性ではないが、さらなる化学的プロセス/反応を経た後に活性になってもよい。例えば、ポリマー輸送システムによって血中に送達される抗癌薬は、癌または腫瘍細胞に進入するまで不活性を保持してもよく、この時、それは癌または腫瘍細胞化学、例えば、細胞特異性の酵素反応によって活性化される。
【0066】
本発明のさらなる態様は、随意的に、本明細書に記載のポリマー送達システムに連結した診断用タグによって調製される複合体化合物を提供し、ここで、タグは、診断または画像化目的で選択される。それ故、適切なタグは、任意の適切な部分、例えば、アミノ酸残基を、任意の当該分野において標準的な放出性同位元素、放射線負透過性標識、磁気共鳴標識、または磁気共鳴画像に適切な他の非放射性同位元素標識、蛍光タイプ標識、可視光を示すおよび/または紫外線、赤外線もしくは電気化学的刺激下で蛍光を発することが可能な標識に連結することによって調製され、外科手術中などにおいて腫瘍組織を画像化することを可能にする。随意的に、診断タグは、連結された治療用部分に、組み入れられ、および/または連結され、動物またはヒト患者内の治療用の生物学的に活性な材料の分布のモニタリングを可能にする。
【0067】
本発明のなおさらなる態様では、本タグ化複合体は、例えば、放射性同位元素標識を含む任意の適切な標識を伴う当該分野において公知の方法によって、容易に調製される。簡単な例として、これらは131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111インジウムを含んで、インビボで腫瘍細胞への選択的取り込みのための放射性免疫シンチグラフィ用剤を生成する。例えば、単なる例示に過ぎないが、参照することにより本明細書に援用される米国特許第5,328,679号明細書;同第5,888,474号明細書;同第5,997,844号明細書;および同第5,997,845号明細書に示されるものを含む、ペプチドをTc−99mに連結するための既知の方法が、当該分野において多数存在する。
【0068】
3.標的基
いくつかの態様では、本明細書に記載の化合物は、標的基を含む。標的基として、受容体リガンド、抗体または抗体フラグメント、一本鎖抗体、標的ペプチド、標的炭水化物分子またはレクチンが挙げられる。標的基は、本明細書に記載の化合物の標的組織および細胞集団への結合または取り込みを増強する。例えば、標的基の非限定的リストには、血管内皮細胞増殖因子、FGF2、ソマトスタチンおよびソマトスタチン類似体、トランスフェリン、メラノトロピン、ApoEおよびApoEペプチド、フォン・ウィルブランド因子およびフォン・ウィルブランド因子ペプチド、アデノウイルスファイバータンパク質およびアデノウイルスファイバータンパク質ペプチド、PD1およびPD1ペプチド、EGFおよびEGFペプチド、RGDペプチド、葉酸塩などが含まれる。本発明の別の態様では、標的基として、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ビオチン、細胞接着性ペプチド、細胞膜透過性ペプチド(CPP)、蛍光化合物、放射性標識化合物、およびアプタマーが挙げられる。本発明のさらなる態様では、標的剤として、セレクチン、TAT、ペネトラチン、ポリArg、および葉酸を挙げることができる。
【0069】
E.ポリマー送達システムの合成
一般的に、本明細書に記載の化合物を調製する方法には、ポリマーと分岐鎖部分とを反応させて、分岐鎖単位を有するポリマーを形成させる工程が含まれる。本発明の1つの態様では、本明細書に記載の化合物を調製する方法は、
式(III):
【化16】

【0070】
のポリマー化合物と、保護化された形態の分岐鎖部分を含有する式(IV)の化合物:
【化17】

【0071】
とを、式(V)の化合物:
【化18】

【0072】
を形成するのに十分な条件下で反応させる工程を含む
[式中、
1は、実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
1は、キャッピング基またはM1であり;
2は、キャッピング基または:
【化19】

【0073】
であり;
1は−OH、SH、または−NHR30であり;
2は、OH、またはハロゲン類、活性化されたカーボネート類、活性エステル、イソチオネート、N−ヒドロキシスクシンイミジル、トシレート、メシレート、トレシレート、ノシレート、o−ニトロフェノキシおよびイミダゾールの中から選択される脱離基であり;
3-4およびM'3-4は、独立して、t−Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)、Cbz(カルボニルオキシ)およびTROC(トリクロロ−エトキシカルボニル)の中から選択される保護基であり;
3およびL'3は、独立して選択される二官能性リンカーであり;
1およびY'1は、独立してO、S、またはNR20であり;
2-3およびY'2-3は、独立してO、S、SO、SOまたはNR7であり;
2-7、R'2-6、R20およびR30は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択され;
(a)および(a')は、0もしくは正の整数、好ましくは、0もしくは1〜3の整数、およびより好ましくは、0であり;
(b)および(b')は、独立して、正の整数、好ましくは、1〜10、より好ましくは、2〜6、および最も好ましくは、4であり;
(e)および(e')は、独立して0もしくは1である]。
【0074】
得られた式(V)の化合物を、トリフルオロ酢酸(TFA)もしくは他のハロ酢酸、HCl、硫酸などの強酸による処置、または接触水素化を使用することによって脱保護し、式(V')の化合物:
【化20】

【0075】
を形成させることができる
[式中:
3は、キャッピング基または:
【化21】

【0076】
である]。
【0077】
あるいは、本方法は、得られた脱保護された末端アミノ基と、式(VI)の化合物:
【化22】

【0078】
とを、式(VII)の化合物:
【化23】

【0079】

を形成させるのに十分な条件下で、さらに、反応させる工程を含みうることもまた、意図されている
[式中
4は、キャッピング基または:
【化24】

【0080】
であり;
各R''9は、独立して、標的基、診断薬または生物活性部分であり;
5は、−OHまたは脱離基であり;
各L''1は、独立して、二官能性リンカーであり;
各(c)は、独立して0もしくは1である]。
【0081】
分岐鎖部分のポリマー部分への結合、または分岐鎖部分を含有するポリマーシステムと式(VI)の化合物との結合は、好ましくは、カップリング剤の存在下で行われる。適切なカップリング剤の非限定的なリストには、例えばシグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)のような商業的供給源から入手可能であるか、または既知の技術を使用して合成される1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、任意の適切なジアルキルカルボジイミド類、2−ハロ−1−アルキル−ピリジニウムハロゲン化物(向山試薬)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)、およびフェニルジクロロホスホネート類などが含まれる。
【0082】
好ましくは、反応は、塩化メチレン、クロロホルム、DMFまたはそれらの混合物のような不溶性溶媒で行われる。好ましくは、反応は、生成する酸を中和するために、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミンなどのような塩基の存在下で、行うことができる。反応は、約0℃〜約22℃(室温)までの温度で行うことができる。
【0083】
本明細書に記載の方法によって調製されるいくつかの特定の実施形態は、以下を含む:
【化25−1】

【化25−2】

【化25−3】

【化25−4】

【化25−5】

【化25−6】

【化25−7】

【化25−8】

【化25−9】

【化25−10】

【0084】
[式中:
mPEGは、式CH3O(CH2CH2O)n−で表され;
PEGは、式:−O−(CH2CH2O)n−で表され、
(n)は、約10〜約2,300の整数であり;
9-10およびR'9-10は、標的基、診断薬および生物活性部分の中から独立して選択される]。
【0085】
F.治療方法
本発明の別の態様は、哺乳動物におけるさまざまな病態の治療の方法を提供する。方法は、そのような治療を必要とする哺乳動物に、本明細書に記載の化合物を有効量で投与することを含む。ポリマー複合体化合物は、とりわけ、例えば、酵素置換療法、新生物疾患など、親化合物で治療されるものに類似する疾患の治療、腫瘍量の減少、新生物の転移の防止、および哺乳動物における腫瘍の再発/新生物増殖の防止に有用である。
【0086】
投与されるポリマー複合体の量は、それに含まれる親分子の量に依存する。一般的に、治療方法において使用されるポリマー複合体の量は、哺乳動物において所望される治療結果を有効に達成する量である。当然ながら、さまざまなポリマー複合体化合物の用量は、親化合物、ポリマーの分子量、インビボでの加水分解の速度などに依存して、いくらか変動する。当業者であれば、臨床的経験および治療適応に基づいて、選択されるポリマー輸送複合体の至適投薬量を決定するであろう。正確な用量は、過度の実験を行なわなくとも、当業者には明らかであろう。
【0087】
本発明の化合物は、哺乳動物への投与のために、1つ以上の適切な医薬組成物に封入することができる。医薬組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセルなどの形で当該分野において周知の方法に従って調製してもよい。また、これらの組成物の投与は、当業者の必要に応じて、経口および/または非経口経路であって構わないことが意図されている。組成物の溶液および/または懸濁液を、例えば、当該分野において既知の任意の方法、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下注入など、組成物の注入または浸潤のための担体ビヒクルとして、利用してもよい。また、これらの投与は、身体の空間または間隙への輸注によるもの、ならびに吸入および/または鼻腔内経路によるものであってもよい。しかし、本発明の好適な態様では、ポリマー複合体は、それらを必要とする哺乳動物に非経口的に投与される。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を提供するために役立つが、決して、本発明の範囲を限定することを意味しない。実施例において説明する太字の番号は、図に示す番号に対応する。実施例を通して、DCM(ジクロロメタン)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、DMF(N,N'−ジメチルホルムアミド)、DSC(ジスクシンイミジルカーボネート)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド)、IPA(イソプロパノール)、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、PEG(ポリエチレングリコール)、SCA−SH(一本鎖抗体)、SN38(7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)、TBDPS(tert−ブチル−ジプロピルシリル)、TEA(トリエチルアミン)のような略称を使用する。
【0089】
一般的手順:
すべての反応は、乾燥窒素またはアルゴンの雰囲気下で稼動する。市販の試薬を、さらなる精製を伴わずに使用する。すべてのPEG化合物を、使用前に、減圧下またはトルエンからの共沸蒸留によって乾燥する。他で特定しない限り、バリアン・マーキュリー(Varian Mercury)(登録商標)300NMR分光計および溶媒として重クロロホルムを使用して、300MHzで1H NMRスペクトルおよび75.46MHzで13C NMRスペクトルを得た。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS)からの下方領域について、ppmで記載される。
【0090】
HPLC方法:
反応混合物ならびに中間体および最終生成物の純度を、ベックマン・コールター・システム・ゴールド(Beckman Coulter System Gold)(登録商標)HPLC機器によってモニターする。それは、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)中アセトニトリルの10〜90%の勾配を1mL/分の流速で使用する、168ダイオード・アレイ(Diode Array)UVディテクター(Detector)を伴う、ZORBAX(登録商標)300SB C8逆相カラム(150×4.6mm)またはフェノメックス・ジュピター(Phenomenex Jupiter)(登録商標)300A C18逆相カラム(150×4.6mm)を用いる。
【0091】
実施例1.PEG−[Lys(Boc)22、化合物(3)
PEG−ジアミン(化合物1、分子量20k、25g、1.25mmol)を共沸させ、トルエンを減圧下で取り出して、乾燥した。200mLのDCMに溶解し、Boc−Lys−Boc(化合物2、2.638g、5mmol)およびDMAP(610mg、5mmol)を添加し、EDC(958mg、5mmol)の添加前に、反応混合物を0℃まで、15分間、冷却した。反応混合物を、一晩、撹拌しながら、室温まで加温した。溶媒を減圧下で取り出して乾燥し、残渣を、2−プロパノールから再結晶化して、14gの生成物を得た:13C NMR δ 171.30,78.3,53.44,39.08,38.27,31.59,28.72,27.63,27.52,21.71。
【0092】
実施例2.PEG−[Lys(NH22]、化合物(4)
化合物3(14g)を、240mLのTFA/DCM(1:1)混合物に溶解し、4時間、室温で撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、エチルエーテルを添加することによって、残渣を沈殿させ、溶媒をデカントした。固体を60mLの0.1M NaHCO3に溶解し、水層が澄明になるまでDCMで抽出した。有機層を無水MgSO4上で乾燥し、溶媒を減圧下で取り出して、粗生成物を得、これを2−プロパノールから再結晶化して、13gの生成物を得た:13C NMR δ 174.4,53.79,39.13,37.9,33.55,26.90,21.71。
【0093】
実施例3.SCH AF−DGA−OH、化合物(7a)
化合物SCH−OH(化合物SCH AF、5.0g、7.135mmol)、DMAP(3.49g、28.5mmol)、およびジリコール酸無水物(化合物6、1.66g、14.3mmol)を、200mL無水DCMに溶解し、2時間、撹拌した。次いで、溶液を100mLの0.1N HClで4回洗浄し、無水MgSO4上で乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で取り出した。残渣を減圧下で一晩乾燥して、生成物(5.61g、6.87mmol、96%)を得た。13C NMR δ 10.23,17.11,22.07,37.33,38.65,48.73,50.69,53.34,55.88,60.18,68.03,68.18,68.75,70.53,71.96,83.76(JCF=4Hz),104.46(JCF=26Hz),111.18(JCF=20Hz),115.03,116.51,118.66,123.53,125.11(JCF=12Hz),125.39,128.44(JCF=7Hz),134.64,144.32,144.81,150.21,150.32,153.03,153.32,158.78(JCF=244Hz,JCF=12Hz),162.59(JCF=248Hz,JCF=12Hz),169.07,171.42。
【0094】
実施例4.SN38−TBDPS−DGA−OH、化合物(7b)
10−OTBDPS−SN38(化合物SN38−TBDPS)を、実施例3に記載の同じ条件で化合物6と反応させて、化合物7bを提供する。
【0095】
実施例5.SCH−グルタル酸−OH、化合物(9a)
化合物SCH AF(5.67g、8.10mmol)、DMAP(20.3g166mmol)、およびグルタル酸無水物(化合物8、18.9g166mmol)を、600mLの無水物DCMに溶解し、一晩、撹拌した。次いで、溶液を200mLの0.1N HClで3回洗浄し、エバポレートしてゴム状とした。次いで、それを600mLのアセトニトリル/0.1M炭酸ナトリウム=1/1溶液に溶解し、アセトニトリルをエバポレートする前に、4時間、撹拌した。生成物を抽出して、有機溶媒DCMに戻した。有機層を無水MgSO4上で乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で取り出した。残渣を減圧下で一晩乾燥して、生成物(6.09g、7.47mmol、92%)を得た。13C NMR δ 10.36,17.27,20.06,22.30,33.46,37.43,38.79,49.06,50.58,53.37,55.92,60.23,68.86,70.69,71.03,83.93(JCF=4.7Hz),104.57(JCF=26Hz),111.27(JCF=24Hz),115.10,116.59,118.50,123.50,125.13,125.48(JCF=12Hz),128.53(JCF=10Hz,JCF=5.4Hz)134.51,144.53,145.60,150.55,150.69,153.03,158.93(JCF=247Hz,JCF=12Hz),162.73(JCF=247Hz,JCF=12Hz),172.07。
【0096】
実施例6.SN38−TBDPS−グルタル酸−OH、化合物(9b)
化合物SN38−TBDPSを、実施例5に記載の同じ条件で化合物8と反応させて、化合物8bを提供する。
【0097】
実施例7.SCH−コハク酸−OH、化合物(11a)
化合物SCH AFを、実施例5に記載の同じ条件でコハク酸無水物(化合物10)と反応させて、化合物11aを提供した。
【0098】
実施例8.SN38−TBDPS−コハク酸−OH、化合物(11b)
化合物SN38−TBDPSを、実施例5に記載の同じ条件で化合物10と反応させて、化合物11bを提供する。
【0099】
実施例9.PEG−[Lys(DGA−SCH AF)22、化合物(12a)
化合物4(0.5g)を10mLの無水DCMに溶解し、化合物7a(158mg)およびDMAP(71mg)を添加した。反応混合物を氷浴中で0℃まで冷却し、続いて、EDC(74mg)を添加した。反応混合物を室温で一晩、撹拌した。溶媒を、減圧下で部分的に取り出し、残渣を、IPA、THF、およびDCM−エーテル(4:11、v/v)から記載の順に3回、再結晶化した。生成物を単離し、減圧オーブン中、45℃で一晩、乾燥して、所望される生成物(0.36g、64%収量)を得た。USアッセイによって測定されるSCH AFの量は、11%wt/wtであった:13C NMR δ 9.71,16.57,21.41,36.65,68.09,48.26,49.75,55.07,59.52,66.94,67.01,67.11,67.14,67.21,67.29,67.37,67.42,67.48,67.76,68.11,68.83,69.75,70.71,71.40,71.54,78.17,78.30,83.23,103.84,110.38,110.67,114.36,115.68,117.58,122.72,124.73,124.84,124.91,127.86,127.94,134.33,143.96,144.97,149.77,149.82,150.17,152.18,152.30,152.43,159.97,160.15,168.05,168.21,170.66。
【0100】
実施例10.PEG−[Lys(DGA−SN38−TBDPS)22、化合物(12b)
化合物7bを、実施例9に記載の同じ条件で化合物4と反応させて、化合物12bを提供する。
【0101】
実施例11.PEG−[Lys(グルタル酸−SCH AF)22、化合物(13a)
化合物8aを、実施例9に記載の同じ条件で化合物4と反応させて、化合物13aを提供する。
【0102】
実施例12.PEG−[Lys(グルタル酸−SN38−TBDPS)22、化合物(13b)
化合物8bを、実施例9に記載の同じ条件で化合物4と反応させて、化合物13bを提供する。
【0103】
実施例13.PEG−[Lys(コハク酸−SCH AF)22、化合物(14a)
化合物9aを、実施例9に記載の条件と同じ条件で化合物4と反応させて、化合物14aを提供する。
【0104】
実施例14.PEG−[Lys(コハク酸−SN38−TBDPS)22、化合物(14b)
化合物9bを、実施例9に記載の同じ条件で化合物4と反応させて、化合物14bを提供する。
【0105】
実施例15.PEG−[Lys(DGA−SN38)22、化合物(15b)
THFおよび0.05M HCl溶液(v/v)の1:1混合物中TBAF(4当量)の溶液を、化合物12bの水溶液に添加した。反応混合物を、室温で4時間、撹拌し、次いで、DCMで2回抽出する。合わせた有機層を合わせ、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下でエバポレートする。残渣を7体積当量のDMFに溶解し、37体積当量のIPAで沈殿させる。固体をろ過し、IPAで洗浄する。DMF/IPAによる沈殿を反復する。最終的に、残渣をDCMに溶解し、エーテルの添加により沈殿させた。固体をろ過し、40℃、減圧オーブン中で一晩、乾燥して、生成物を提供する。
【0106】
実施例16.PEG−[Lys(グルタル酸−SN38)22、化合物(16b)
化合物13bを、実施例15に記載の同じ条件に供して、化合物16bを提供する。
【0107】
実施例17.PEG−[Lys(コハク酸−SN38)22、化合物(17b)
化合物14bを、実施例15に記載の同じ条件に供して、化合物17bを提供する。
【0108】
実施例18.PEG2−C3−アミン、化合物(20)
PEG2−NHS(化合物18、分子量40k、0.0025mmol)を無水DCM(10mL)に溶解し、1,3−プロピルジアミン(0.01mmol)を溶液に添加する。反応混合物を室温で一晩、撹拌した。溶媒を、減圧下で部分的に取り出し、エチルエーテルを添加して、粗生成物を沈殿させ、これを、DCM−エーテルから再結晶化して、所望される生成物を得る。
【0109】
実施例19.PEG2−[Lys(NHBoc)]、化合物(21)
PEG2−アミン(化合物20、1.25mmol)を共沸させ、トルエンを減圧下で取り出して、乾燥する。共沸させたPEG2−アミンを、200mLのDCMに溶解し、Boc−Lys−Boc(化合物2、2.638g、5mmol)およびDMAP(610mg、5mmol)を添加し、EDC(958mg、5mmol)の添加前に、反応混合物を0℃まで、15分間、冷却する。反応混合物を、一晩、撹拌しながら、室温まで加温する。溶媒を減圧下で取り出して乾燥し、残渣を、IPAから再結晶化して、生成物を得る。
【0110】
実施例20.PEG2−[Lys(NH22]、化合物(22)
化合物21をDCM(10mL)に溶解し、TFA(5mL)を緩徐に溶液に添加する。溶液を2時間、室温で撹拌する。反応溶液を減圧下で濃縮し、エチルエーテルを添加して、生成物を沈殿させる。生成物をろ過によって単離し、一晩、45℃、減圧下で乾燥する。
【0111】
実施例21.PEG2−[Lys(DGA−SCH AF)2]、化合物(23)
化合物4(0.5g)を10mLの無水DCMに溶解し、化合物7a(158mg)およびDMAP(71mg)を添加する。反応混合物を氷浴中で0℃まで冷却し、続いて、EDC(74mg)を添加する。反応混合物を室温で一晩、撹拌する。溶媒を、減圧下で部分的に取り出し、残渣を、IPA、THF、およびDCM−エーテル(4:11、v/v)から記載の順に3回、再結晶化する。生成物を単離し、減圧オーブン中、45℃で一晩、乾燥して、生成物を得る。
【0112】
実施例22.PEGプロドラックの加水分解の速度の決定
(a)0.1M酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液および(b)アセトニトリルより作製した勾配移動相を使用するC8逆相カラム(ゾルバックス(Zorbax)(登録商標)SB−C8)を用いることによって、加水分解速度を得た。1mL/分の流速を使用し、UV検出器を使用して、クロマトグラムをモニターした。緩衝液中での加水分解では、PEG誘導体を0.1M pH7.4 PBSに5mg/mLの濃度で溶解した一方、血漿中での加水分解では、誘導体を蒸留水に20mg/100μLの濃度で添加し、900μLのラット血漿をこの溶液に添加した。混合物を、2分間、ボルテックス撹拌し、2mLガラスバイアルに、1バイアルあたり100μLのアリコートで分割した。溶液を、37℃でさまざまな期間、インキュベートした。メタノール−アセトニトリル(1:1、v/v、400μL)の混合物を、適切な間隔でバイアルに添加し、混合物を1分間、ボルテックス撹拌し、続いて、0.45mmフィルター膜を介してろ過した(随意的に、続いて、0.2mmフィルター膜を介して第2のろ過を行った)。20μLのろ過物のアリコートを、HPLCに注入した。ピーク面積に基づいて、生来の化合物およびPEG誘導体の量を推定し、異なる媒体における各化合物の半減期を、PEG誘導体の消失からの線形回帰分析を使用して、算出した。化合物12aを加水分解に供し、pH7.4 PBS緩衝液では、t1/2 =24時間超、ならびにラット血漿では、t1/2α=5時間およびt1/2β=15時間が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で表される化合物
[式中:
1は、実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
Aは、キャッピング基または:
【化2】

であり;
1-3およびL'1-3は、独立して選択される二官能性リンカーであり;
1およびY'1は、独立してO、S、またはNR20であり;
2-3およびY'2-3は、独立してO、S、SO、SOまたはNRであり;
2-7、R'2-6、およびR20は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、および置換アリールカルボニルオキシからなる群から選択され;
9-10およびR'9-10は、独立して、水素、OH、脱離基、官能基、標的基、診断薬および生物活性部分からなる群から選択され;
(a)および(a')は、独立して0もしくは正の整数であり;
(b)および(b')は、独立して正の整数であり;
(c)、(c')、(d)、(d')、(e)および(e')は、独立して0もしくは1である]。
【請求項2】
前記脱離基が、ハロゲン、活性エステル、イミダゾール、環状イミドチオン、N−ヒドロキシスクシンイミジル、p−ニトロフェノキシ、N−ヒドロキシフタルイミジル、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、トシレート、メシレート、トレシレート、ノシレート、C1−C6アルキルオキシ、C1−C6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、o−ニトロフェノキシ、N−ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、1,3,5−トリクロロフェノキシ、および1,3,5−トリフルオロフェノキシからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記官能基が、マレイミジル、ビニル、スルホン、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、およびカルバゼートの残基からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
9-10およびR'9-10が、独立して、OH、メトキシ、tert−ブトキシ、p−ニトロフェノキシおよびN−ヒドロキシスクシンイミジルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記生物活性部分が、−NH2含有部分、−OH含有部分および−SH含有部分からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記生物活性部分が、薬学的に活性な化合物、酵素、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体およびペプチドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
1-3およびL'1-3が、独立して、
【化3−1】

【化3−2】

からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
[式中:
21-29は、水素、C1-6アルキル類、C3-12分岐鎖アルキル類、C3-8シクロアルキル類、C1-6置換アルキル類、C3-8置換シクロアルキル類、アリール類、置換アリール類、アラルキル類、C1-6ヘテロアルキル類、置換C1-6ヘテロアルキル類、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
(t)および(t')は、独立して0もしくは正の整数であり;
(v)および(v')は、独立して0もしくは1である]。
【請求項8】
1-3およびL'1-3が、独立して、
【化4】

−Val−Cit−、
−Gly−Phe−Leu−Gly−、
−Ala−Leu−Ala−Leu−、
−Phe−Lys−、
【化5】

からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
[式中、
11-19は、独立してO、SまたはNR48であり;
31-48、R50-51およびA51は、独立して、水素、C1-6アルキル類、C3-12分岐鎖アルキル類、C3-8シクロアルキル類、C1-6置換アルキル類、C3-8置換シクロアルキル類、アリール類、置換アリール類、アラルキル類、C1-6ヘテロアルキル類、置換C1-6ヘテロアルキル類、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され;
Arは、アリールまたはヘテロアリール部分であり;
11-15は、独立して選択される二官能性スペーサーであり;
JおよびJ'は、独立して標的細胞に能動的に輸送される部分、疎水性部分、二官能性連結部分およびそれらの組合せからなる群より選択され;
(c11)、(h11)、(k11)、(z11)、(m11)および(n11)は、独立して選択される正の整数であり;
(a11)、(e11)、(g11)、(j11)、(o11)および(q11)は、独立して0もしくは正の整数であり;
(b11)、(x11)、(x'11)、(f11)、(i11)および(p11)は、独立して0もしくは1である]。
【請求項9】
1-3およびL'1-3が、独立して、
【化6−1】

【化6−2】

からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
[式中、(r)および(r')は、独立して0もしくは1である]。
【請求項10】
1-3およびL'1-3が、独立して、アミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
式(II):
【化7】

で表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Aが、H、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシおよびC1-6アルキルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
1が、直鎖、末端分岐鎖またはマルチアームポリアルキレンオキシドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記ポリアルキレンオキシドが、
−Y71−(CH2CH2O)n−CH2CH2−Y71−、
−Y71−(CH2CH2O)n−CH2C(=Y72)−Y71−、
−Y71−C(=Y72)−(CH2a71−Y73−(CH2CH2O)−CH2CH2−Y73−(CH2a71−C(=Y72)−Y71−、および
−Y71−(CR7172a72−Y73−(CH2b71−O−(CH2CH2O)n−(CH2b71−Y73−(CR7172a72−Y71−、
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13に記載の化合物
[式中:
71およびY73は、独立してO、S、SO、SO2、NR73または結合であり;
72は、O、S、またはNR74であり;
71、R72、R73、およびR74は、R2に使用し得る同じ部分から独立して選択され;
(a71)、(a72)、および(b71)は、独立して0もしくは正の整数であり;
(n)は、約10〜約2300の整数である]。
【請求項16】
前記ポリアルキレンオキシドが、式:
−O−(CH2CH2O)n
で表されるポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項13に記載の化合物
[式中、(n)は、約10〜約2,300の整数である]。
【請求項17】
1が、約2,000〜約100,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
1が、約5,000〜約60,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
1が、約5,000〜約25,000または約20,000〜約45,000の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
2-8およびR'2-8が、独立して、水素、メチル、エチルおよびイソプロピルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
【化8−1】

【化8−2】

【化8−3】

【化8−4】

【化8−5】

【化8−6】

【化8−7】

【化8−8】

【化8−9】

【化8−10】

からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
[式中:
mPEGは、式:CH3O(CH2CH2O)n−で表され;
PEGは、式:−O−(CH2CH2O)n−で表され;
(n)は、約10〜約2,300の整数であり;
9-10およびR'9-10は、独立して、標的基、診断薬および生物活性部分からなる群より選択される]。
【請求項22】
【化9−1】

【化9−2】

からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
[式中:
SCH AFは、
【化10】

であり;
mPEGは、式:CH3−O(CH2CH2O)n−で表され;
PEGは、式、−O−(CH2CH2O)n−で表され;
(n)は、約10〜約2,300の整数である]。
【請求項23】
分岐鎖部分を有するポリマー複合体の調製方法であって、
(i)式(III)の化合物と:
【化11】

式(VI)の化合物とを:
【化12】

式(V)の化合物:
【化13】

を形成するのに十分な条件下で反応させる工程と、
(ii)式(V)の化合物を、式(V')の化合物:
【化14】

を形成するのに十分な条件下で、脱保護する工程と、
[式中:
1は、実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
1は、キャッピング基またはMであり;
2は、キャッピング基または:
【化15】

であり;
3は、キャッピング基または:
【化16】

であり;
1は−OH、SH、または−NHR30であり;
2は、OHまたは脱離基であり;
3-4およびM'3-4は、独立して選択される保護基であり;
3およびL'3は、独立して選択される二官能性リンカーであり;
1およびY'1は、独立してO、S、またはNR20であり;
2-3およびY'2-3は、独立してO、S、SO、SO2またはNR7であり;
2-7、R'2-6、R20およびR30は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、および置換アリールカルボニルオキシからなる群より選択され;
(a)および(a')は、独立して0もしくは正の整数であり;
(b)および(b')は、独立して正の整数であり;
(e)および(e')は、独立して0もしくは1である]
を有してなる、方法。
【請求項24】
前記脱保護された式(V')の化合物と、式(VI)の化合物:
【化17】

とを、式(VII)の化合物:
【化18】

を形成するのに十分な条件下で反応させる工程をさらに含んでなる、請求項23に記載の方法
[式中
各R''は、独立して、標的基、診断薬または生物活性部分であり;
4は、キャッピング基または
【化19】

であり;
5は、−OHまたは脱離基であり;
各L''1は、独立して、二官能性リンカーであり;
各(c)は、独立して0もしくは1であり;
他のすべての変数は、請求項23において定義したとおりである]。
【請求項25】
式(I)の化合物を有効量で、それらを必要とする患者に投与することを含んでなる、哺乳動物を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503706(P2010−503706A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528516(P2009−528516)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/078594
【国際公開番号】WO2008/034120
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】